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  • 特許-低温靱性に優れる圧力容器用鋼板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】低温靱性に優れる圧力容器用鋼板
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230508BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20230508BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C22C38/00 301B
C22C38/58
C21D8/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019123450
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021008653
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 仁秀
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 洋志
(72)【発明者】
【氏名】古谷 仁志
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105603323(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102392195(CN,A)
【文献】特開2014-201815(JP,A)
【文献】特開昭60-162758(JP,A)
【文献】特開2012-188747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.201~0.300%、Si:0.10~0.50%、Mn:1.00~1.80%、P:0.0200%以下、S:0.0100%以下、Ni:0.10~0.80%、Cr:0.10~0.80%、Mo:0.10~0.80%、Al:0.010~0.050%、N:0.0080%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなり、Cの含有量[C]とCrの含有量[Cr]とMoの含有量[Mo]とがH=1000×([C]-0.3×[Mo])/(1+10×[Cr])+[Cr]<5.0を満足し、650℃×30時間の溶接後熱処理後の粗大炭化物が2.0μm以下、-20℃でのJIS4号シャルピー衝撃吸収エネルギーの平均値が30J以上、降伏応力が485MPa以上、引張強さが620MPa以上795MPa以下であり、板厚120mm以上であることを特徴とする圧力容器用鋼板。
【請求項2】
さらに質量%で、Cu:0.05~0.500%、Nb:0.01~0.10%、V:0.005~0.100%、Ti:0.005~0.100%、Ca:0.0003~0.0050%、Mg:0.0003~0.0050%、REM:0.0003~0.0100%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の圧力容器用鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温靱性に優れる圧力容器用鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は圧力容器、橋梁、建築、造船などの大型構造体に使用され、650℃×30時間後の溶接後熱処理後の-20℃でのJIS4号シャルピー衝撃吸収エネルギーの平均値が30J以上、降伏応力が485MPa以上、引張強さが620MPa以上795MPa以下であり、板厚120mm以上の高強度厚鋼板に関わり、特に低温靭性に優れるものに関する。
【0003】
用いられる鋼板は強度に加えて低温靭性が要求される。施工溶接時の残留応力を除去するための溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment 以下、PWHT)後の靭性が要求される。近年では圧力容器、構造体の大型化に伴い鋼板の高強度化、厚手化が求められており、PWHT後の靭性を確保することは難しくなっている。
【0004】
この種類の圧力容器用鋼の製造にあたっては、熱間圧延後の再加熱焼入れ、焼戻し熱処理が適用され厚手化に伴う板内の強度、靭性を確保するために合金元素を多く添加する。特許文献1には、ミクロ組織の平均旧オーステナイト粒径が50μm以下で、マルテンサイトおよび/またはベイナイト組織が面積分率で80%以上である板厚100mm以上の厚肉高靭性高張力鋼板に関する記載がある。
【0005】
昨今は更に使用環境の過酷化でPWHT条件の厳格化が進んでいる。例えば今回の「650℃×30時間」がそれにあたる。しかし板厚120mm以上で厳格化されたPWHT後における低温靭性条件(650℃×30時間後の溶接後熱処理後の-20℃でのJIS4号シャルピー衝撃吸収エネルギー(vE-20)の平均が30J以上)を満足している鋼板は言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5928654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、低温靱性低下による脆性破壊は、瞬時に構造物全体を崩壊させるため、避けるべき破壊形態である。PWHT後は不純物元素の濃化や合金炭化物の粗大化等により低温靱性が低下する。PWHT後の低温靱性を確保するためには、PWHTによる低温靱性低下を抑制する対策が必要となる。
この種類の高強度鋼板は、熱間圧延後の再加熱焼入、焼戻熱処理によって製造され、厚手化に伴う板内の強度、靱性を確保するために合金元素を多く添加する必要がある。一方で、鋼材合金コスト抑制、溶接部健全性確保の観点から合金元素の添加抑制が望まれている。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点を解決するものであって、合金元素を抑制しつつ、厳格化した650℃×30時間のPWHT後の強度、低温靱性を確保する低温靱性に優れる圧力容器用鋼板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、橋梁、建築、造船、圧力容器等の大型構造体向け引張強さ620MPa以上で板厚120mm以上の高強度厚鋼板について検討した。その結果、C、Cr、Moの添加を適正範囲にすることで、粗大炭化物サイズを制御し、上記目的を達成することができることを見出した。
【0010】
本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
【0011】
(1)質量%で、C:0.201~0.300%、Si:0.10~0.50%、Mn:1.00~1.80%、P:0.0200%以下、S:0.0100%以下、Ni:0.10~0.80%、Cr:0.10~0.80%、Mo:0.10~0.80%、Al:0.010~0.050%、N:0.0080%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなり、Cの含有量[C]とCrの含有量[Cr]とMoの含有量[Mo]とがH=1000×([C]-0.3×[Mo])/(1+10×[Cr])+[Cr]<5.0を満足し、650℃×30時間の溶接後熱処理後の粗大炭化物が2.0μm以下、-20℃でのJIS4号シャルピー衝撃吸収エネルギーの平均値が30J以上、降伏応力が485MPa以上、引張強さが620MPa以上795MPa以下であり、板厚120mm以上であることを特徴とする圧力容器用鋼板。
【0012】
(2)さらに質量%で、Cu:0.05~0.50%、Nb:0.01~0.10%、V:0.005~0.100%、Ti:0.005~0.100%、Ca:0.0003~0.0050%、Mg:0.0003~0.0050%、REM:0.0003~0.0100%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の圧力容器用鋼板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、厳格化したPWHT後でも、低温靭性が安定した圧力容器用鋼板を提供することができ、本発明は産業上の貢献が極めて顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】パラメータHと粗大炭化物サイズの関係を示すグラフである。
図2】靭性と粗大炭化物サイズの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、鋼板のPWHT後の靭性を向上させるために検討を行い、以下の(A)~(C)の知見を得た。以下に、本発明に係る鋼板及びその製造方法について説明する。以下、各化学成分の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
【0016】
(A)化学組成
C:0.201~0.300%
Cは、母材の強度確保のために必要な元素であり、本発明ではC量を0.201%以上とする。また、C量が0.201%未満であると、焼入性が低下し強度が不足する。一方、C量が0.300%を超えると、母材に加え、溶接熱影響部であるHAZ、なかでもFL近傍のHAZの靭性劣化が著しくなる。また強度が過大となる傾向も出てくる。したがって、C量の上限を0.300%とする。C量の好ましい上限は0.280%である。
【0017】
Si:0.10~0.50%
Siは、脱酸剤かつ強度確保のための元素であり、効果を得るためにSi量を0.10%以上とする。また、Siは、焼戻工程や溶接後熱処理で、過飽和に固溶しているマルテンサイト中からのセメンタイトへの分解析出反応を抑制する元素でもあり、好ましくはSi量を0.20%以上、より好ましくは0.25%以上とする。一方、Si量が0.50%を超えると、島状マルテンサイトが生成し、靭性が低下するため、上限を0.50%とする。好ましくは、Si量の上限を0.40%とし、より好ましくは0.35%とする。
【0018】
Mn:1.00~1.80%
Mnは、脱酸剤であり、また、焼入れ性を向上させる元素である。本発明では、母材及びHAZの強度を確保するために、Mn量を1.00%以上とする。好ましくはMn量を1.25%以上、より好ましくは1.35%以上とする。一方、Mn量が1.80%を超えると、偏析の増加、焼入れ性が過剰となるため強度が上昇、靱性が低下するため、Mn量の上限を1.80%とする。好ましくはMn量を1.70%以下、より好ましくは1.65%以下とする。
【0019】
P:0.0200%以下
Pは不純物であり、粒界に偏析して靭性を低下させるため、P量を0.0200%以下とする。好ましくはP量を0.0080%以下とする。P量は少ないほど好ましいため、下限は特に規定しないが、製造コストの観点から、0.0010%以上を含有してもよい。
【0020】
S:0.0100%以下
Sは不純物であり、中心偏析を助長し、脆性破壊の起点となる延伸形状のMnSが生成する原因となることがあるため、S量を0.0100%以下とする。好ましくはS量を0.0050%以下とする。S量は少ないほど好ましいため、下限は特に規定しないが、製造コストの観点から、0.0010%以上を含有してもよい。
【0021】
Ni:0.10~0.80%
Niは、靭性を確保するために重要な元素であり、0.10%以上を含有させる必要がある。より好ましくは、0.20%以上とする。一方、Niを過剰に含有させると、製造コストが上昇するのに加えて、焼入れ性が過剰となり却って母材の靭性が低下することがあるため、Ni量の上限は0.80%とする。好ましくはNi量を0.65%以下とし、より好ましくは0.60%以下とする。
【0022】
Cr:0.10~0.80%
Crは焼入れ性の向上に寄与し、強度に影響を与える元素であり、0.10%以上を含有させる必要がある。より好ましくは、0.15%以上とする。一方、Crを過剰に含有させると、焼入れ性が過剰となり却って母材の靭性が低下することがあるため、Ni量の上限は0.80%とする。好ましくはCr量を0.75%以下とし、より好ましくは0.70%以下とする。
【0023】
Mo:0.10~0.80%
Moは、母材の強度と靭性を向上させる元素であり、0.10%以上を含有させる必要がある。より好ましくはMo量を0.15%以上とする。一方、Mo量が過剰であると、母材の強度が上昇し、靱性を損なうことがあるため、Mo量を0.80%とする必要がある。好ましくは、Mo量を0.75以下とする。より好ましくは、Mo量を0.70以下とする。
【0024】
Al:0.010~0.050%
Alは脱酸およびセメンタイト生成を抑制する元素であり、さらにピン止め粒子AlNとして細粒化にする。その効果を得るため0.010%以上とする。0.050%を超えると介在物が多くなり、靱性低下を招くことがあるためAl量は0.050%以下とする必要がある。
【0025】
N:0.0080%以下
Nは不純物であり、靭性を低下させるため、N量を0.0080%以下とする。好ましくは、N量を0.0060%以下、より好ましくは0.0050%以下とする。Nは、可能な範囲で低減することが好ましいが、脱窒のコストの観点から、N量を0.0001%以上としてもよい。
【0026】
更に、必要に応じて、Cu、Nb、V、Ti、Ca、Mg、REMの1種又は2種以上を含有してもよい。
【0027】
Cu:0.05~0.50%
Cuは、強度の上昇に寄与する元素であり、0.05%以上を含有させてもよい。より好ましくは、Cu量を0.15%以上とする。一方、Cuを過剰に含有させると、母材の靱性が低下することがあるため、Cu量の上限は0.50%とする。より好ましくはCu量を0.40%以下とする。
【0028】
Nb:0.01~0.10%
Nbは、ピン止め効果により組織を微細化し、低温靱性を向上させる元素であり、0.01%以上を含有させてもよい。より好ましくはNb量を0.02%以上とする。一方、過剰なNbを添加するとピン止め効果が飽和し、粗大な炭化物や窒化物析出による靱性劣化を招くことがあるためNb量は0.10%以下とする。好ましくは、Nb量を0.08%以下、より好ましくは、0.05%以下とする。
【0029】
V:0.005~0.100%
Vは、母材の強度の向上に寄与する元素であり、0.005%以上を含有させてもよい。より好ましくはV量を0.020%以上とする。一方、過剰なVを添加しても効果が飽和し、靱性劣化を招くことがあるためV量は0.100%以下とする。好ましくは、V量を0.070以下、より好ましくは、0.060%以下とする。
【0030】
Ti:0.005~0.100%
Tiは、脱酸に利用すると、Al、Ti、Mnからなる酸化物相を形成し、組織を微細化し強度に影響を与える効果が得られることから、0.005%以上のTiを含有させてもよい。より好ましくはTi量を0.007%以上とし、更に好ましくはTi量を0.010%以上とする。一方、Ti量が0.100%を超えると、Ti酸化物やTi-Al酸化物が形成されて靭性が低下することがあるため、Ti量は0.100%以下とする。より好ましくはTi量を0.080%以下とする。
【0031】
Ca:0.0003~0.0050%
Caは、酸化物や硫化物の形態を制御する元素であり、好ましくは、Ca量を、0.0003%以上とする。より好ましくは、Ca量を、0.0005%以上、更に好ましくは0.0010%以上とする。Caは、過剰に添加すると効果が飽和し、介在物の形成によって靭性を損なうことがあるため、Ca量を0.0050%以下とする。
【0032】
Mg:0.0003~0.0050%
Mgは、酸化物や硫化物の形態を制御する元素であり、好ましくは、Mg量を、0.0003%以上とする。より好ましくは、Mg量を、0.0005%以上、更に好ましくは0.0010%以上とする。Mgは、過剰に添加すると効果が飽和し、介在物の形成によって靭性を損なうことがあるため、Mg量を0.0050%以下とする。
【0033】
REM:0.0003~0.0100%
REMは、酸化物や硫化物の形態を制御する元素であり、好ましくは、REMの総量を、0.0003%以上とする。より好ましくは、REMの総量を、0.0005%以上、更に好ましくは0.0010%以上とする。REMは、過剰に添加すると効果が飽和し、介在物の形成によって靭性を損なうことがあるため、REMの総量を0.0100%以下とする。なお、REMは入手の容易さなどから、Y,La、Ce、Nd,Pr,Smの1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0034】
また、PWHTによる靭性劣化を抑制するには粗大炭化物サイズの抑制が重要であり、H=1000×([C]-0.3×[Mo])/(1+10×[Cr])+[Cr]と特定されるパラメータHがH<5.0となるように、好ましくはH<4.5となるようにC、Cr、Moの添加量を適正範囲に収める必要がある。図1にパラメータHと粗大炭化物サイズの関係を示す。なお、式中の[C]、[Cr]、[Mo]は各元素の含有量(質量%)である。
【0035】
本発明の圧力容器用鋼板は、上記の成分のほか、残部がFeと不純物からなるものである。ここで、不純物とは、圧力容器用鋼板を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0036】
(B)金属組織
650℃×30時間の溶接後熱処理後の粗大炭化物が2.0μm以下
鋼板中の粗大な炭化物は脆性破壊の起点となり、靱性を低下させる。粗大な炭化物が2.0μmを超えると靱性に悪影響である。図2に靭性と粗大炭化物サイズの関係を示す。ここで粗大炭化物サイズは、電解研磨後のx5000倍の走査型電子顕微鏡写真を10視野(視野サイズは20μm×15μm)以上観察し、炭化物の短径のうち上位10個の平均値とした。
【0037】
C.製造方法
本発明の圧力容器用鋼板の製造方法の一例について説明する。当該鋼板は造塊法によって製造した鋼塊あるいは連続鋳造法によって製造した鋳片を、圧延工程―焼入処理工程―焼戻工程(工程1~3)で製造することができ、以下、詳細に説明する。尚、熱間圧延に供する鋼片については、本発明の成分範囲であれば、格別にその鋳造条件を規定するものではなく、造塊-分塊スラブを鋼塊として用いてもよいし、連続鋳造スラブを用いてもよい。製造効率、歩留り及び省エネルギーの観点からは、連続鋳造スラブを用いることが好ましい。
【0038】
C-1.圧延工程(工程1)
鋼片を再度1000~1250℃に加熱した後、圧下率50%以上で熱間圧延することが好ましい。熱間圧延前の加熱工程での加熱温度は組織粗大化の抑制のため1250℃以下とすることが好ましく、かつ圧延ロール負荷低減のため1000℃以上とすることが好ましい。圧延後は特に制約はなく空冷とする。
【0039】
C-2.焼入処理工程(工程2)
熱間圧延後に一旦150℃以下まで冷却して800℃以上に再加熱してから、800-500℃間の冷却速度が1℃/ sec.以上の冷却速度で200℃以下まで冷却する。1℃/sec.未満での冷却もしくは200℃より高温での冷却停止では十分な焼入組織を得ることが困難となり強度を確保できない場合がある。
【0040】
C-3.焼戻工程(工程3)
焼入後、鋼板を650~730℃以下に加熱する焼戻しを行う。焼戻し後の冷却速度は特に制約はなく空冷とする。
【実施例
【0041】
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明する。
【0042】
表1に示す化学組成を有する鋼1~48の鋼片を用い、表2に示す製造条件にて、表3に示す板厚120~210mmの圧力容器用鋼材を作製した。なお、熱間圧延は50%以上の圧下率で製造した。その後650℃×30時間の溶接後熱処理を施した。そして、鋼材中の粗大炭化物サイズを測定した。母材特性として引張特性(降伏強度、引張強さ)を、靭性として-20℃の2mmVノッチシャルピー衝撃吸収エネルギー(vE-20)を評価した。得られた測定値を表3に示す。なお各試験片は板厚1/4tから採取した。評価は降伏強度(YP)が485MPa未満、引張強度(TS)が620MPa未満もしくは795MPaを超える場合を不合格とした。また、-20℃でのJIS4号シャルピー衝撃吸収エネルギー(vE-20)を3本測定し、平均値が30J未満の場合を不合格とした。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
表3から、本発明例に係る圧力容器用鋼材は、母材強度、靭性に優れており、圧力容器用材料として優れていることが分かる。
【0047】
これに対して、本発明で規定する条件を満足しない比較例では、母材強度、靭性において目的とする特性が得られないことが分かる。
図1
図2