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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20230508BHJP
   F27B 21/10 20060101ALI20230508BHJP
   C22B 1/16 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C22B1/20 D
F27B21/10 A
C22B1/16 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019146148
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021025112
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】石山 理
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-252541(JP,A)
【文献】特開平01-201427(JP,A)
【文献】特開2013-253281(JP,A)
【文献】特開2002-266037(JP,A)
【文献】特開平01-172529(JP,A)
【文献】特開昭63-282216(JP,A)
【文献】特開2000-336434(JP,A)
【文献】特開2012-031450(JP,A)
【文献】特開平05-001335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
F27B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結用の配合原料を、原料装入装置を介して下方吸引焼結機に供給し、前記下方吸引焼結機のパレット上に原料充填層を形成して焼成する焼結鉱の製造方法において、
前記原料装入装置は、層厚方向の粒度偏析を形成する篩機能を有する篩部材を備えた粒度偏析形成装入装置であり、
前記配合原料中の石灰石は、粒度区分3mmを超え5mm以下の石灰石の割合が、全石灰石に対し10質量%以上30質量%以下であり、
前記配合原料は、低アルミナ鉄鉱石を除いて前記配合原料として使用される全鉄鉱石の平均アルミナ濃度よりもアルミナ濃度が1.0質量%以上低い低アルミナ鉄鉱石を予め造粒した造粒物である低アルミナ造粒物を、前記配合原料に対して6質量%以上25質量%以下含み、
前記配合原料は、前記原料装入装置により、前記原料充填層の下層に向けて粒度が大きくなるように、前記パレット上に装入される、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の焼結鉱の製造方法において、
前記低アルミナ造粒物の原料として、前記低アルミナ鉄鉱石を、前記低アルミナ造粒物の90質量%以上使用し、
前記低アルミナ造粒物の原料として、前記配合原料として使用される全鉄鉱石の平均アルミナ濃度よりもアルミナ濃度の高い鉄鉱石は使用しない、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の焼結鉱の製造方法において、
前記低アルミナ鉄鉱石は、アルミナ濃度が0.8質量%以下である、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の焼結鉱の製造方法において、
前記低アルミナ鉄鉱石はペレットフィードである、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の焼結鉱の製造方法において、
前記配合原料は、粒度区分3mmを超え5mm以下の橄欖岩の割合が全橄欖岩に対し20質量%以上40質量%以下である、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱の製造方法、特に、被還元性を向上させる焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高炉製銑の主原料は、焼結鉱である。この焼結鉱は、例えば一段装入一段点火焼結法では、次のように製造される。まず、原料となる鉄鉱石(粉)、製鋼ダスト等の含鉄雑原料、橄欖岩等のMgO含有副原料、石灰石等のCaO含有副原料、返鉱、および燃焼熱によって焼結鉱を焼結(凝結)させる燃料となる炭材(凝結材ともいう)を所定の割合で混合し、混合物(配合原料)を造粒する。次に、造粒した配合原料を、ホッパなどにより、下方吸引式のドワイトロイド(DL)式焼結機のパレット上に装入して、原料充填層を形成する。形成した原料充填層の上部から、原料充填層の表面層中の炭材に点火する。そして、パレットを連続的に移動させながらパレットの下方から空気を吸引する。原料充填層中の炭材に酸素を供給し、層厚方向の上部から下部に向けて燃焼させることにより、順次、炭材の燃焼熱により原料充填層を焼結させる。得られた焼結ケーキは、所定の粒度に粉砕され、篩分け等により整粒されて高炉の原料である焼結鉱となる。
【0003】
(焼結鉱に求められる品質)
高炉による銑鉄製造の主原料である焼結鉱の品質を管理することは、高炉操業にとって重要なことである。焼結鉱の品質としては、焼結鉱の冷間強度、被還元性、還元粉化性がある。
品質の指標として、焼結鉱の冷間強度は、一般に、SI(シャッターインデックス)、又は、TI(タンブラーインデックス)が用いられる。また、焼結鉱の被還元性は、JIS-RIが用いられ、還元粉化性は、還元粉化率(RDI)が用いられる。
【0004】
焼結鉱の冷間強度(SI又はTI)は、焼結機から焼結鉱を高炉に輸送する過程、又は高炉内に装入する際の耐粉化性を示す指標であり、冷間強度(SI又はTI)の高い焼結鉱が望まれる。
焼結鉱の還元粉化率(RDI)は、高炉に装入された焼結鉱の、シャフト上部の500℃程度の還元雰囲気での粉化されやすさを示す指標であり、還元粉化率(RDI)の低い焼結鉱が望まれる。
焼結鉱のJIS-RIは、高炉内のシャフト部における焼結鉱の還元されやすさを示す指標であり、JIS-RIの高い焼結鉱が望まれる。
【0005】
焼結鉱の冷間強度(SI又はTI)と還元粉化率(RDI)は、共に、高炉内での焼結鉱の耐粉化性を管理する指標であり、高炉内のガスの通気性を確保し、高炉の生産性を確保するための重要な焼結鉱品質である。
一方、焼結鉱の被還元率性は、高炉の銑鉄製造量に対する還元材比(コークス比+微粉炭比)を低減するための重要な焼結鉱品質である。
焼結鉱の冷間強度(SI又はTI)、被還元性、還元粉化率(RDI)は、焼結用の原料の組成や配合割合だけでなく、焼結鉱製造工程における温度や圧力などの様々な条件の影響を相関的に受けるため、それぞれを個別に管理することは難しい。
【0006】
焼結鉱は、高炉の通気性の確保のために、冷間強度(SI)が高いことが望まれる一方で、高炉の還元材比(コークス比+微粉炭比)を低減するために、被還元性も、高いことが望まれる。
【0007】
焼結鉱の被還元性の指標として用いられているJIS-RIは、900℃における定温還元率であって、これまでその改善のための研究がなされている。基礎的知見として、JIS-RIは、焼結鉱の気孔率およびカルシウムフェライト量に、主に支配されることが知られている。焼成前の焼結用の配合原料の化学成分で言えば、塩基度(CaO/SiO比)が高い方が好ましいとされる。CaO濃度が高いと、焼結鉱中に晶出するカルシウムフェライトの生成量が増え、焼結鉱中に晶出する還元性の低いケイ酸塩鉱物の生成量が抑えられるからである。
また、原料充填層層厚方向の焼結鉱のJIS-RI分布に関しては、下層ほど燃焼温度が高くなり焼結が進行して気孔率が減少するので、下層ほどJIS-RIが低下することも知られている。
【0008】
(層高方向の偏析制御技術)
層高方向の成分偏析を好適化する粒度偏析制御技術としては、以下の開示がある。
特許文献1には、焼結ケーキ層高方向における成分系の分布について、粒度偏析を保ちつつ特に冷間強度に影響を及ぼすMgOの偏差を縮小し、冷間強度の目標値に対する偏差、又はケーキ内の冷間強度偏差を縮小する発明の記載がある。
特許文献2には、焼結層高方向における歩留分布について、最も劣位となる表層を改善する発明の記載がある。
特許文献3には、焼結生産性改善並びに余剰下層熱源原単位を削減する発明の記載がある。
特許文献4には、焼結鉱強度を改善し、最適なカーボン濃度を制御出来る発明の記載がある。
特許文献5、6には、石灰石の粒度偏析によって焼結生産性を改善する発明の記載がある。
【0009】
(低アルミナ濃度微粉原料の事前造粒技術)
低アルミナ濃度微粉原料を予め造粒する技術には、次の開示がある。
特許文献7には、配合原料、特にペレットフィード等の微粉原料についてパンペレタイザーを用いて粗大造粒物製造の製造を実現する発明の記載がある。
【0010】
(還元特性値を測定する方法)
鉄系原料の還元特性値(被還元性)を測定する代表的な方法として、JIS-RI(JIS M8713)が知られている。この方法は、製鉄業界で広く知られた方法であり、鉄系原料を900℃の温度下で一定時間(3時間)CO還元を行うことで鉄系原料の被還元性を測定する。
【0011】
特許文献8及び特許文献9には、鉄系原料の融液生成を伴う挙動を再現して高温還元率等を測定する方法が開示されている。特許文献9に開示された測定方法は、大型の高温荷重軟化試験装置を用いて高炉の還元条件を模擬する測定方法であり、JIS-RI法では測定できない溶融から滴下までの焼結鉱の挙動を追跡できる試験法であって、高温性状試験とも称される。この測定方法では、竪型炉で使用する塊状の鉄鉱石類をるつぼに装入し、該るつぼを電気炉内に配設し、電気炉の下方より還元ガスを導入して鉄鉱石類の加熱還元を行う。具体的には、特許文献9では、電気炉を上下2段に配設し、両電気炉間の継目をフランジで結合し、下段電気炉の下方より還元ガスを導入し、該下段電気炉を空塔のまま昇温するとともに、上段電気炉に鉄鉱石類を装入したるつぼを配設する。そして、上段電気炉の温度とるつぼ内鉄鉱石類の温度とを同時に測定し、該温度の差をあらかじめ設定した一定の値となるように上段電気炉の電力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2000-336434号公報
【文献】特開2000-96156号公報
【文献】特開昭62-130229号公報
【文献】特開昭64-52030号公報
【文献】特開平1-201427号公報
【文献】特開平7-252541号公報
【文献】特開2013-253281号公報
【文献】特開2006-249507号公報
【文献】特開平7-27623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(問題点)
特許文献1~6に記載の層高方向の偏析制御技術に関する発明は、焼結歩留や焼結生産性の向上を目指すものであって、被還元性への対応や被還元性劣位部(焼結ケーキ下部)を考慮したものではない。
特許文献7に記載の低アルミナ濃度微粉原料の事前造粒技術は、原料の微粉化に伴う焼結の生産性低下を改善することを目的とするものであり、焼結鉱の被還元性の改善に対応出来るものではない。
【0014】
(技術課題)
本発明の目的は、層高方向(以下、層厚方向ともいう)の成分偏析を好適化することによって、最近JIS-RIより高炉操業への対応が高いとされている高温還元率の改善を可能とする焼結鉱の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下を構成要件とする。
(1)焼結用の配合原料を、原料装入装置を介して下方吸引焼結機に供給し、原料充填層を形成して焼成する焼結鉱の製造方法において、
前記原料装入装置は、層厚方向の粒度偏析を形成する篩機能を有する篩部材を備えた粒度偏析形成装入装置であり、
前記配合原料中の石灰石は、粒度区分3mmを超え5mm以下の石灰石の割合が、全石灰石に対し10質量%以上30質量%以下であり、
前記配合原料は、前記配合原料として使用される全鉄鉱石の平均アルミナ(Al23)濃度よりも低い低アルミナ鉄鉱石を造粒した造粒物である低アルミナ造粒物を、前記配合原料に対して6質量%以上25質量%以下含み、
前記配合原料は、前記原料装入装置により、前記原料充填層の下層に向けて粒度が大きくなるように、前記下方吸引焼結機のパレット上に装入される、
ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
ここで、配合原料とは、焼結機に装入される全原料(鉄鉱石、雑原料、副原料からなる新原料と、返鉱と、粉コークスなどの炭材)をいう。
(2)(1)に記載の焼結鉱の製造方法において、
前記低アルミナ造粒物の原料として、前記低アルミナ鉄鉱石を、前記低アルミナ造粒物の90質量%以上使用し、
前記低アルミナ造粒物の原料として、前記配合原料として使用される全鉄鉱石の平均アルミナ濃度よりもアルミナ濃度の高い鉄鉱石は使用しない、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(3)(1)又は(2)に記載の焼結鉱の製造方法において、
前記低アルミナ鉄鉱石は、アルミナ濃度が0.8質量%以下である、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の焼結鉱の製造方法において、
前記低アルミナ鉄鉱石は微粉鉱石である、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(5)(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の焼結鉱の製造方法において、
前記配合原料は、粒度区分3mmを超え5mm以下の橄欖岩の割合が全橄欖岩に対し20質量%以上40質量%以下である、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
粗粒化した石灰石と低アルミナ造粒物との両方を同時に偏析装入して粒度の粗いものを下層側に誘導することで、歩留を低下させることなく、焼結鉱の還元率(RI)を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】焼結ケーキの層高方向におけるCaO成分の濃度分布を示す図である。
図2】焼結ケーキの層高方向におけるAl成分の濃度分布を示す図である。
図3】焼結ケーキの層高方向におけるRIの値の分布を示す図である。
図4】焼結ケーキの層高方向におけるR1200℃の値の分布を示す図である。
図5】焼結ケーキの層高方向におけるMgO成分の濃度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者は、焼結鉱の高温還還元率がより良好となる、原料充填層層厚方向における配合原料の化学成分偏析について検討した。そして、下層におけるCaO濃度の上昇とAl23濃度の低減を同時に行なうことで、下層のRIが各段に向上することを発見した。本発明は、CaOを主成分とする石灰石を粗粒化するとともに、低アルミナ(Al23)鉄鉱石を予め造粒して粗粒化したものを配合原料とし、粒度偏析を形成する篩機能を有する篩部材を備えた粒度偏析形成装入装置を用いて装入することで、CaO濃度とAl23濃度の両方の原料充填層層厚方向偏析を同時に強めることを骨子とする。
【0019】
本発明によれば、上層においては、CaO濃度の低下とAl23濃度の上昇を招くものの、本来、下層に比べて燃焼温度が低く層厚方向の荷重が小さいため、気孔率を高く維持できるので、高温還元率への悪影響は少ない。一方、下層では、CaO濃度の上昇とAl23濃度の低減の相乗効果により、高温還元率向上効果が得られる。これらにより、上層と下層とを合わせた平均の高温還元率(焼結鉱全体の高温還元率)を大きく改善することができる。
【0020】
<定義>
(焼結鉱のJIS還元率:RI(JIS M8713))
焼結鉱のJIS還元率(RI)は、焼結鉱を900℃の温度下で一定時間(3時間)CO還元を行って、下式(1)に従って計算される。
還元率(質量%)
=(除去された酸素(質量%))/(初期被還元酸素(質量%))*100 ・・・(1)
除去された酸素は、反応(還元)過程の排ガス分析から得る場合、反応後の試料を回収して、反応前後の試料の化学分析によって得る場合と、反応前後の試料の重量変化から得る場合があり、測定する方法に応じて、任意に算出方法を選択しても良い。除去された酸素は、試料の総質量に対する割合(質量%)として示される。
初期被還元酸素は、反応前の試料の化学分析から得られる。具体的には、以下の式(2)により得られる。
初期被還元酸素(質量%)=(T.Fe-M.Fe-FeO*(55.85)/
(55.85+16))*16*1.5/55.85+16/
(55.85+16)*FeO ・・・(2)
ここで、T.Feは、試料に含まれる全鉄の割合(質量%)であり、M.Feは試料に含まれる金属鉄の割合(質量%)であり、FeOは、試料に含まれるFeOの割合(質量%)である。初期被還元酸素は、反応(還元)前に鉄と結合していた酸素の試料の総質量に対する割合(質量%)として示される。
(高温還元率:R1100℃、R1200℃)
高炉のガス利用率、高炉の還元材比は、融着帯上面での焼結鉱の還元率(以下、高温還元率)で決まる(山岡ら/NKK(株)、日本鉄鋼協会討論会1981、622.341.1-185:622.785「焼結鉱に要求される性状とその製造技術」)ので、原料の被還元性の評価指標として、通例のJIS-RIより、高温還元率の方が好ましいとされる。高温還元率は、実際の高炉内で原料が受ける条件を精緻に模擬できる荷重軟化試験装置(細谷ら/新日本製鐵(株)、鉄と鋼,Vol.83(1997)No.2、p.97-102「焼結鉱の軟化溶融性状評価法の開発」)を用いて測定される。
(高温還元率の測定方法)
高温還元率の測定方法については、特許文献9にその一例が開示されている。まず、測定対象の原料をるつぼに装入する。ついで、該るつぼを電気炉内に配設し、電気炉の下方より還元ガスを導入して鉄鉱石類の加熱還元を行う。電気炉は上下2段から構成され、両電気炉間の継目をフランジで結合し、下段電気炉の下方より還元ガスを導入し、該下段電気炉を空塔のまま昇温するとともに、上段電気炉に鉄鉱石類を装入したるつぼを配設する。そして、上段電気炉の温度とるつぼ内鉄鉱石類の温度とを同時に測定し、該温度の差をあらかじめ設定した一定の値となるように上段電気炉の電力を調整する。試料の還元は、実際の高炉内で原料が受ける昇温速度、還元ガス組成、荷重を模擬した条件で行われる。そして、所定の温度(通常1100℃または1200℃、実施例では1200℃)に到達した時点での還元率(R1100℃またはR1200℃)を測定する。
【0021】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る焼結鉱の製造方法について説明する。
本発明においては、原料装入装置として粒度偏析形成装入装置を用い、一段装入法により下方吸引式焼結機に装入して、一段点火焼結法により焼結鉱を製造する。なお、一段装入一段点火焼結法については上述したので、説明を省略する。
【0022】
(原料装入装置)
本実施形態においては、従来の単純な板状のスローピングシュートに比較して、下層に向けて粒度が大きくなる層厚方向粒度偏析を強化する篩機能を持った篩部材を有する原料装入装置(粒度偏析形成装入装置)を用いる。篩部材は、例えば、スリットバー式の偏析強化型シュートや、整流分散式の確率分級篩等である。スリットバー式は、パレット進行方向と反対方向に下方に傾斜して装備され、パレット幅方向に平行なワイヤ(又はロッド)が、パレットの上部から下部に向かうにつれてその間隔が広くなるように設けられているものである(鉄と鋼, 87(2001), S846)。整流分散式は、多数のバーを原料流れに沿って並べ、かつ上流から下流にむけて隣接のバー同士を互いに下流に向かうほど段差が大きくなるように設置して構成される(鉄と鋼, 77(1991), p.63-70)。
【0023】
(石灰石の粒度調整)
配合原料のうち、石灰石は、粒度区分3mmを超え5mm以下の石灰石の割合が、全石灰石に対し10質量%以上30質量%以下となるように、好ましくは15質量%以上25質量%以下となるように、粒度調整したものを使用する。ここで、石灰石の粒度区分は、篩分け法による篩の目開き寸法で定義されるものである。
石灰石の粒度調整は、石灰石破砕処理工程における最終篩の目開きを通常採用されている3mmから5mm程度に拡大変更することにより行う。粒度区分3mmを超え5mm以下の石灰石の割合を、石灰石の全質量に対し、10質量%以上30質量%以下と規定した。粒度区分3mmを超え5mm以下の石灰石の割合が10質量%未満では、石灰石を粗粒化する効果が小さく、30質量%を超えると石灰石の下層偏析が過大となり、むしろ歩留の低下を招くためである。
なお、この粒度調整の場合、実用上3質量%程度の+5mm(5mm篩上)の粒度の石灰石を含むが、それは本発明の効果を著しく損なうものではない。
【0024】
(低Al23造粒物の事前造粒)
配合原料の鉄鉱石のうち、低アルミナ鉄鉱石は、他の原料と混合する前に事前造粒する。本発明において、低アルミナ鉄鉱石とは、それを除いて配合原料として使用される全鉄鉱石の平均アルミナ濃度よりもアルミナ濃度が1.0質量%以上低いものをいい、好ましくは、アルミナ濃度が0.8質量%以下の鉄鉱石をいう。
表1に、代表的な鉄鉱石の平均粒径(直径)とアルミナ濃度(質量%)を示す。平均粒径は、篩分け法による篩の目開き寸法による粒度区分の中央値を、粒度区分毎の質量分率で荷重して算出した平均値である。ここで、PFFTはペレットフィードと呼ばれる微粉鉱石であり、アルミナ濃度が0.52質量%と少ない。ペレットフィードは、本発明の低アルミナ(Al23)造粒物を製造するための原料対象となる鉱石の一例である。ペレットフィードは表1に示すように平均粒径の小さい微粉鉱石であるため粉砕する必要がなく、また、凝集し易く造粒しやすい。なお、低アルミナ鉄鉱石が塊状である場合には、造粒前に粉砕する必要がある。
【0025】
【表1】
【0026】
微粉状の低アルミナ鉄鉱石は、予め、造粒剤(例えば、消石灰または生石灰など)が加えられ、パンペレタイザーや高速撹拌ミキサー等を用いて造粒されて、低アルミナ造粒物とされる。低アルミナ造粒物の原料としては、低アルミナ鉄鉱石を、低アルミナ造粒物の90質量%以上使用することが好ましい。また、低アルミナ造粒物の原料としては、配合原料として使用される全鉄鉱石の平均アルミナ濃度よりもアルミナ濃度の高い鉄鉱石は使用しないことが望ましい。
【0027】
低アルミナ造粒物は、その他の原料を別途造粒した疑似粒子と混合されて、上述した粒度偏析形成装入装置を介して下方吸引焼結機に供給される。低アルミナ造粒物の粒度は、その他の原料を造粒した擬似粒子の平均粒度(通常2mm以上3mm以下の範囲)に対し同等又は大きいことが好ましい。粒度が大きいことにより低アルミナ造粒物は下層に偏析しやすくなる。また、粒度が同等であっても、低アルミナ造粒物は鉄分が相対的に高く比重が大きいため、下層に偏析し易くなる。一方、低アルミナ造粒物が5mmを超えて過大なものは焼成が不十分となる。したがって、低アルミナ造粒物は、3mmを超え5mm以下の粒度の収率が多くなるように調整する。例えば、粒度区分3mmを超え5mm以下の低アルミナ造粒物の割合が、低アルミナ造粒物全体に対し、70質量%以上となるように造粒する。
本発明では、低アルミナ造粒物を、配合原料に対して、6質量%以上25質量%以下の割合、好ましくは10質量%以上20質量%以下の割合で使用する。低アルミナ造粒物の割合が6質量%未満では十分な効果が得られず、25質量%を超えると上層のアルミナ濃度上昇の影響が大きくなり、むしろ歩留の低下を招く。
【0028】
(作用・効果)
以上、説明したように、本実施形態によれば、石灰石を粗粒化することによって、転動分級作用により装入時に斜面をよく転がり、石灰石が比較的下層に集中して装入される。さらに、粒度偏析形成装入装置を用いることにより、偏析形成を強化することができる。これに伴って、下層部のCaO濃度が増加し、下層部の被還元性(JIS-RIや高温還元率)を改善することができる。
また、直径3mm以上の低アルミナ造粒物は、その他の原料を造粒した擬似粒子より粒度が大きくかつ球形に近くなるので、転動分級作用により装入時に斜面をよく転がり、さらに、粒度偏析形成装入装置を用いることにより、低アルミナ造粒物の多くが下層に集中して装入される。これに伴って、下層部のアルミナ濃度を低減でき、下層部の高温還元率を改善することができる。これは、焼結鉱の高温還元性が、Al23に代表される還元前の焼結鉱中の脈石量の悪影響を大きく受けるためである。
【0029】
一方、上層部では、これらの偏析の変化は焼結鉱の高温還元率には悪影響に働く。しかし、上層部はもともと低温で焼成されるため、十分な気孔を含む焼結鉱となるので、上述したCaO、Al23の成分偏析の悪影響は顕在化しない。
以上から、上層から下層にわたる全層平均の焼結鉱の高温還元率は改善する。
【0030】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態に係る焼結鉱の製造方法について説明する。第2の実施形態においては、第1の実施形態での石灰石および低アルミナ造粒物の粒度偏析に加え、MgO成分を含有する副原料も粗粒化して粒度偏析を形成させる。
【0031】
(含MgO副原料)
焼結鉱製造には、MgO成分の調整を目的として、焼結用の原料の一部にMgO成分を含有する副原料(含MgO副原料)が用いられる。含MgO副原料には、蛇紋岩、橄欖岩、ニッケルスラグ、およびドロマイトがある。前3者は、MgOとSiO2を主成分とし、これらの含有量は概ね等しい。そこで、以下では橄欖岩を用いた例で説明するが、蛇紋岩、ニッケルスラグも同様に適用できる。ただし、ドロマイトは、MgOとCaOを主成分とする副原料であるので、本発明の対象外である。
【0032】
(橄欖岩の粒度調整)
橄欖岩の粒度調整は、橄欖岩破砕処理工程における最終篩の目開きを通常採用されている3mmから5mm程度に拡大変更することにより行う。粒度区分3mmを超え5mm以下の橄欖岩の割合を、橄欖岩全質量に対し20質量%以上40質量%以下と規定した。粒度区分3mmを超え5mm以下の橄欖岩の割合が、20%未満では、橄欖岩を粗粒化する効果が小さく、40%質量を超えると橄欖岩の下層偏析が過大となり、上層の高温性状の大幅な低下を招くためである。
この粒度調整の場合、実用上3%質量程度の+5mm(5mm篩上)を含むが、それは本発明の効果を著しく損なうものではない。
【0033】
(作用・効果)
以上、説明したように、本実施形態によれば、上述した第1の実施形態による効果に加え、以下に示す効果も得られる。第2の実施形態によれば、橄欖岩を粗粒化することによって、石灰石同様に転動分級作用により装入時に斜面をよく転がり、橄欖岩が比較的下層部に集中して装入される。これに伴って、下層部のMgO濃度が増加する。下層部のMgOの増加によって、下層部の高温還元率をより改善することができる。
【0034】
一方、上層部では、これらの偏析の変化は焼結鉱の高温還元率、例えば、焼結鉱1200℃まで到達した時点の還元率R1200℃には悪影響に働く。しかし、上層部はもともと低温で焼成されるため、十分な気孔を含む焼結鉱となるので、CaO、Al23、MgOの成分偏析の悪影響は顕在化しない。
以上から、上層から下層にわたる全層平均の焼結鉱の高温還元率も改善する。
【実施例
【0035】
以下、本発明の実施例について説明する。実施例においては、実際の下方吸引焼結機での焼成を模した焼成鍋を用いた試験を行ったので、その結果を説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではない。また、以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」の記載は、下端点であるAは含まず、上端点であるBを含む数値範囲である「Aを超えB以下」を表すものとする。
【0036】
(試験水準)
試験水準を表2に示す。石灰石の粗粒化の有無および低アルミナ造粒物の有無の組み合わせの4水準(参考例、比較例1、比較例2、および実施例1)に、実施例1の試験条件に橄欖岩の粗粒化したもの(実施例2)を追加して、5水準とした。
【0037】
【表2】
【0038】
(原料調製方法)
石灰石の粒度調整:表3に示すように、粒度分布の異なる石灰石を2種類用意した。表3の上段は、通常粒度分布を有する石灰石の粒度分布を示す。また、表3の下段は、予め粒度区分ごとに篩い分けられた石灰石を、表3に示す比率で再配合して、所望の粒度分布に調整したものである。粗粒化した石灰石の3~5mmの粒度区分の比率は22.5質量%であった。
【0039】
【表3】
【0040】
橄欖岩の粒度調整:表4に示すように、粒度分布の異なる橄欖岩を2種類用意した。表4の上段は、通常粒度分布を有する橄欖岩の粒度分布を示す。また、表4の下段は、予め粒度区分ごとに篩い分けられた橄欖岩を、表4に示す比率で再配合して、所望の粒度分布に調整したものである。粗粒化した橄欖岩の3~5mmの粒度区分の比率は29.2質量%であった。
【0041】
【表4】
【0042】
低アルミナ(Al23)造粒物の製造:表5に示すように、低アルミナ造粒物の原料として、PFFT(Al23濃度:0.52質量%)と造粒材としての消石灰を使用した。PFFTおよび消石灰を、PFFTおよび消石灰に対し水分10質量%の割合で高速撹拌ミキサーを用いて造粒した。低アルミナ造粒物の粒度区分の比率は、1mm以下が15質量%、1~3mmが32質量%、3~5mmが38質量%、5mm以上が15質量%であった。
【0043】
原料配合:配合原料の原料配合の割合を表5に示す。表5に示すように、返鉱およびコークスを除いた原料(低アルミナ造粒物、鉄鉱石、橄欖岩、石灰石、および生石灰)を100質量%として、返鉱とコークスの配合割合を、それぞれ外数で、15.0質量%、4.5質量%とした。上述の低アルミナ造粒物に用いたPFFT以外に、原料として使用した鉄鉱石(62.5質量%)のアルミナ(Al23)濃度は、1.77質量%であり、配合原料として使用した全鉄鉱石の平均アルミナ濃度は、1.47質量%であった。
【0044】
【表5】
【0045】
実験は以下の方法で行った。実験に使用した。主要な実験装置は表6に示す通りである。
【0046】
【表6】
【0047】
(実験方法)
配合原料の造粒:低アルミナ造粒物(以下、PFFT造粒物ともいう)以外の原料を、ドラムミキサーで、PFFT造粒物以外の原料に対して7.5質量%の水分を加えて、5分間造粒した。そのあと、ドラムミキサーの中に、さらに、PFFT造粒物を加えて1分混合し、配合原料造粒物とした。配合原料造粒物に対するPFFT造粒物の比率は、返鉱およびコークスを除いた原料(低アルミナ造粒物、鉄鉱石、橄欖岩、石灰石、および生石灰)を100質量%として、21質量%(=PFFT+消石灰)とした。
【0048】
原料装入:上述の粒度偏析形成装入装置を用いて配合原料造粒物の装入を模すために、本試験での焼結鍋への装入は、新たに製造した偏析給鉱型大型鍋焼結シミュレーターを用いた。この偏析給鉱型大型鍋焼結シミュレーターは、焼結鍋に偏析を付与しつつ配合原料を投入する焼結実験用の偏析装置であり、その詳細は、鉄と鋼「偏析給鉱型大型焼結シミュレーターの開発」石山ら、早期公開TETSU-2017-007に記載されているので、ここでの説明は省略する。
長辺650mm×短辺350mmの箱型試験鍋(焼結鍋)内に、まず、床敷鉱5.0kgをロストル上に敷設した。次に、上述の配合原料造粒物を、偏析給鉱型大型鍋焼結シミュレーターを用いて装入した。このとき、床敷鉱の厚みは20mmであったので、原料層厚みは500mmとなった。
【0049】
焼結処理:装入した配合原料造粒物の表面に、LPGバーナーを用いて60秒間着火後に、圧力マイナス15kPaで空気を吸引し、焼成を実施した。
【0050】
(測定)
焼成完了後、焼結ケーキの下面から層厚方向上方に向かっての位置(ケーキ高さ)が50mm、190mm、300mm、450mmの4箇所において、コアボーリングマシンを用いて抜き取った焼結ケーキから分割し、それらを落下強度試験機によって落下破砕した焼結鉱粒子の中から15mmを超え20mm以下の焼結鉱を試料として採取した。採取した試料について、X線蛍光分析により、CaO,Al,MgOについて成分分析を行った。また、被還元性指標であるRI(JIS_M8713(2009)「鉄鉱石-被還元性試験方法」に規定された試験による)、およびR1200℃(上述した特許文献9に開示された測定方法による)を評価した。
【0051】
(試験結果)
表7、表8に、上記測定の結果を示す。表7は、焼成した原料層全体(床敷層を除く)の生産率、JIS-RI、およびR1200℃の数値を示すものであり、基準とする参考例の値からの増加分を、増分として示している。表8は、焼結用配合原料の充填層(焼結ケーキ)について、CaO、Al23およびMgOの濃度分布と、JIS-RIおよびR1200℃の分布を示す。ここに、空欄は測定していない。
【0052】
【表7】
【0053】
【表8】
【0054】
表7に示すように、焼結実験から生産率、焼結鉱の被還元性について、以下の結果が得られた。
(実施例1)
焼結生産率は、石灰石の粗粒化(比較例1)、低アルミナ造粒物の使用(比較例2)ともに基準(参考例)に対して向上した。さらに、両条件を同時に行う本願発明(実施例1)では、各条件の向上効果の和に相当する向上効果が確認された。
焼結鉱の被還元性(JIS-RIおよびR1200℃)については、石灰石の粗粒化(比較例1)、低アルミナ造粒物の使用(比較例2)ともに基準(参考例)に対して向上した。さらに、両条件を同時に行う本願発明(実施例1)では、それぞれの向上効果の和以上の向上効果が確認された。すなわち、被還元性では、石灰石の粗粒化と低アルミナ造粒物の使用とが相乗効果を有することが分かった。
【0055】
(実施例2)
焼結生産率は、橄欖岩の粗粒化(実施例2)で基準(参考例)、比較例1~2、および実施例1に対して向上した。また焼結鉱のJIS-RIは、橄欖岩の粗粒化(実施例2)で実施例1に対して変わらなかったものの、R1200℃については、橄欖岩の粗粒化(実施例2)で基準(参考例)および実施例1に対して向上した。すなわち、橄欖岩の粗粒化によって、JIS-RIを維持しながら更に高温還元率が向上することが分かった。
【0056】
(考察:各成分の層厚方向分布と被還元性との関連)
図1図5は、表8に示す値に基づいた、各試験水準における層厚方向の成分濃度分布や被還元性を示すグラフである。
図1および図2は、焼結用配合原料の充填層(焼結ケーキ)における、CaOおよびAl23の濃度分布を示す。粗粒化した石灰石を使用したケース(比較例1および実施例1)では粗粒石灰石の下層への偏析が助長されることによって下層のCaO濃度が増大すること、低アルミナ造粒物を使用したケース(比較例2および実施例1)では低アルミナ造粒物の下層への偏析が助長されることによって下層のアルミナ濃度が低下することが確認できた。
【0057】
図3は、層厚方向のJIS-RIの分布を示す。上層では、条件によらずJIS-RIの変化は大きくないのに対して、下層では、石灰石の粗粒化(比較例1)、低アルミナ造粒物の使用(比較例2)、および両条件の同時実施(実施例1)の順に、しだいに大きな改善幅で向上し、層厚方向においてJIS-RI値が均一化されることが分かった。これより、JIS-RIにおける本発明の相乗効果は、以下のように発現されると考えられる。すなわち、元来より熱量が過剰でJIS-RIの低い下層において、CaOとAl23の一方で効果を十分享受出来なかったところに対し、同時に存在する条件を得たことで焼結塊成化に必要なカルシウムフェライト融液の生成が確保され、加えて高被還元率鉱物カルシウムフェライトの生成領域も増大し、単独の効果の合算値よりも向上したと考えられる。
【0058】
図4は、層厚方向の高温還元率R1200℃の分布を示す。また、図5は、焼結用配合原料の充填層(焼結ケーキ)における、MgOの濃度分布を示す。図5に示すように、橄欖岩の粗粒化により、MgOの濃度偏析が形成され、下層においてMgO濃度が上昇している。また、R1200℃については、図4に示すように、上層では、条件によらず値が変化していないのに対して、下層では、橄欖岩の粗粒化(実施例2)も粗粒化して同時に比較的下層に誘導することで、より向上していることが分かった。これより、R1200℃における本発明の効果は、以下のように発現されると考えられる。すなわち、元来より熱量が過剰で被還元率の低い下層において、CaOの濃度上昇とAl23の濃度低下の双方で効果を十分享受出来たところに加え、図5に示す通り下層にMgOが同時に多く存在する条件を得たことで、高温での軟化溶融を抑制出来る特性が確保され、高温における被還元性が更に向上したと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5