(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】発泡性着色樹脂粒子、その製造方法及び発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
C08J9/18 CET
(21)【出願番号】P 2019167571
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小見山 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】島 昌臣
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-319366(JP,A)
【文献】特開2012-197357(JP,A)
【文献】特開2012-082380(JP,A)
【文献】特開2014-177540(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1571811(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂を含む基材樹脂と、
緑色染料及び紫色染料を含む着色料と、
発泡剤と、を含み、
前記着色料の配合量は、前記基材樹脂100質量部に対して0.05質量部以上0.30質量部以下であり、
前記緑色染料の配合量に対する前記紫色染料の配合量の比は0.2以上2.0以下である、発泡性着色樹脂粒子。
【請求項2】
前記緑色染料及び前記紫色染料はアントラキノン染料である、請求項1に記載の発泡性着色樹脂粒子。
【請求項3】
前記緑色染料はC.I. Solvent Green 3及びC.I. Solvent Green28のうち少なくとも一方であり、前記紫色染料はC.I. Solvent Violet 13である、請求項1または2に記載の発泡性着色樹脂粒子。
【請求項4】
発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体であって、
前記発泡粒子は、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性着色樹脂粒子を発泡させてなり、
JIS Z8722:2009に規定された方法により前記発泡粒子成形体の表面を測定して得られるb*値が-30以上-10以下であり、かつ、a*値が-10以上0以下である、発泡粒子成形体。
【請求項5】
密閉容器内において、樹脂粒子に発泡剤及び着色料を含浸させて発泡性着色樹脂粒子を製造する発泡性着色樹脂粒子の製造方法であって、
前記樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂を含む基材樹脂を有しており、
前記着色料は、緑色染料および紫色染料を含み、
前記着色料の添加量は、前記基材樹脂100質量部に対して0.05質量部以上0.30質量部以下であり、
前記緑色染料の添加量に対する前記紫色染料の添加量の比は0.2以上2.0以下である、発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性着色樹脂粒子、その製造方法及び発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子成形体は、魚箱、食品容器などの包装材や輸送容器として幅広く使用されている。これらの用途に用いられる発泡粒子成形体は、他の容器との識別性や意匠性を高めることを目的として、種々の色に着色されることがある。発泡粒子成形体を青色に着色しようとする場合、例えばC.I. Solvent Blue 35等の青色染料が使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、C.I. Solvent Blue 35は、酸性の環境下や微生物の存在下に長期間おくと、酪酸やブタノールなどの分解生成物が生じるおそれがある。分解生成物は、臭いの原因となるおそれがある。そのため、C.I. Solvent Blue 35を含む発泡粒子成形体は、前述した特定の条件下で容器として使用する際に、分解生成物に起因する臭気が生じることがあり、臭いの改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、青色を呈し、臭気の原因となる着色料の分解生成物の発生を抑制することができる発泡性着色樹脂粒子、その製造方法及び発泡粒子成形体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ポリスチレン系樹脂を含む基材樹脂と、
緑色染料及び紫色染料を含む着色料と、
発泡剤と、を含み、
前記着色料の配合量は、前記基材樹脂100質量部に対して0.05質量部以上0.30質量部以下であり、
前記緑色染料の配合量に対する前記紫色染料の配合量の比は0.2以上2.0以下である、発泡性着色樹脂粒子にある。
【0007】
本発明の他の態様は、発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体であって、
前記発泡粒子は、前記の態様の発泡性着色樹脂粒子を発泡させてなり、
JIS Z8722:2009に規定された方法により前記発泡粒子成形体の表面を測定して得られるb*値が-30以上-10以下であり、かつ、a*値が-10以上0以下である、発泡粒子成形体にある。
【発明の効果】
【0008】
前記発泡性着色樹脂粒子(以下、適宜「発泡性粒子」という。)における着色料の配合量の合計及び着色料中に含まれる緑色染料と紫色染料との配合量の比は、それぞれ前記特定の範囲内である。これにより、青色を呈する発泡性粒子を得ることができる。
【0009】
また、緑色染料及び紫色染料は、C.I. Solvent Blue 35に比べて酸性環境下や微生物の存在下において分解しにくい性質を有している。さらに、緑色染料及び紫色染料は、分解しても酪酸やブタノールなどの臭気を有する分解生成物が生じるおそれがない。それ故、前記発泡性粒子、及び、この発泡性粒子を用いて作製された発泡粒子成形体によれば、保管中や使用中における、臭気の原因となる着色料の分解生成物(以下、単に「分解生成物」ともいう。)の発生を抑制することができる。
【0010】
以上のように、前記の態様によれば、青色を呈し、臭気の原因となる着色料の分解生成物の発生を抑制することができる発泡性着色樹脂粒子及び発泡粒子成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発泡性粒子]
・基材樹脂
前記発泡性粒子は、ポリスチレン系樹脂を含む基材樹脂を有している。ここで、前述したポリスチレン系樹脂とは、スチレン系単量体に由来する成分の含有量が50モル%を超える樹脂をいう。ポリスチレン系樹脂の成形加工性と機械的物性とをバランスよく向上させる観点からは、ポリスチレン系樹脂におけるスチレン系単量体に由来する成分の含有量は80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
【0012】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体及びスチレン系単量体を含む共重合体を使用することができる。より具体的には、ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン(GPPS)やスチレンを主成分とするスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-メチルスチレン共重合体、スチレン-ジメチルスチレン共重合体、スチレン-エチルスチレン共重合体、スチレン-ジエチルスチレン共重合体等であってもよい。ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレンからなることが好ましい。
【0013】
また、基材樹脂は、ポリスチレン系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。ポリスチレン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。なお、前述したポリエチレン系樹脂とは、エチレン単独重合体、及び、エチレン単量体成分と他の単量体成分とからなり、エチレン単量体に由来する成分の含有量が50モル%以上の共重合体をいう。また、前述したポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単独重合体、及び、プロピレン単量体成分と他の単量体成分とからなり、プロピレン単量体に由来する成分の含有量が50モル%以上の共重合体をいう。これらの樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
基材樹脂中のポリスチレン系樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%、つまり、基材樹脂がポリスチレン系樹脂のみからなることが特に好ましい。
【0015】
・着色料
前記発泡性粒子中には、緑色染料と紫色染料とが着色料として含まれている。着色料の配合量の合計は、基材樹脂100質量部に対して0.05質量部以上0.30質量部以下とする。着色料の配合量が多すぎる場合には、発泡性粒子間の色の濃さのバラつきが大きくなりやすい。また、このような発泡性粒子を用いて作製された発泡粒子成形体は、表面に存在する発泡粒子の色のバラつきが大きくなりやすい。その結果、発泡粒子成形体の表面に、比較的色の濃い発泡粒子と、比較的色の薄い発泡粒子とが混在することによって構成された染みのような色ムラが発生しやすくなるおそれがある。発泡粒子成形体の色ムラをより効果的に抑制する観点からは、着色料の配合量の合計は基材樹脂100質量部に対して0.20質量部以下であることが好ましく、0.15質量部以下であることがより好ましい。
【0016】
一方、着色料の配合量が少なすぎる場合には、発泡性粒子を用いて作製された発泡粒子成形体の色が薄くなり、目視において青色を呈する発泡性粒子及び発泡粒子成形体を得ることが難しくなりやすい。発泡粒子成形体の色を適度に濃くする観点からは、着色料の配合量の合計は、基材樹脂100質量部に対して0.06質量部以上であることが好ましく、0.08質量部以上であることがより好ましい。
【0017】
また、緑色染料の配合量に対する紫色染料の配合量の比(質量比)は0.2以上2.0以下とする。緑色染料の配合量に対する紫色染料の配合量の比率が小さすぎる場合、発泡性粒子及び発泡粒子成形体が黄色味を帯びやすくなり、発泡性粒子及び発泡粒子成形体の色調が青色から離れやすくなるおそれがある。発泡粒子成形体の色調をより青色に近づける観点からは、緑色染料の配合量に対する紫色染料の配合量の比率は、質量比において0.4以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましい。
【0018】
一方、緑色染料の配合量に対する紫色染料の配合量の比率が大きすぎる場合、発泡性粒子及び発泡粒子成形体の赤味を帯びやすくなり、発泡性粒子及び発泡粒子成形体の色調が青色から離れやすくなるおそれがある。発泡粒子成形体の色調をより青色に近づける観点からは、緑色染料の配合量に対する紫色染料の配合量の比率は、質量比において1.8以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
【0019】
緑色染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、アジン染料、キノリン染料等を使用することができる。より具体的には、緑色染料としては、C.I. Solvent Green 3、C.I. Solvent Green 28等を使用することができる。これらの緑色染料は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
緑色染料は、アントラキノン染料、つまり、分子構造中にアントラキノン骨格を有する染料であることが好ましい。アントラキノン染料は、ポリスチレン系樹脂との相溶性に優れているため、発泡性粒子及び発泡粒子成形体の色ムラをより低減することができる。
【0021】
緑色染料は、C.I. Solvent Green 3及びC.I. Solvent Green 28のうち少なくとも一方であることがより好ましい。これらの緑色染料は、分子構造中にアントラキノン骨格を有するため、発泡性粒子及び発泡粒子成形体の色ムラをより低減することができる。また、これらの緑色染料は、化学的な安定性が高いため、酸性環境下や微生物の存在下における分解生成物の発生をより効果的に抑制することができる。
【0022】
紫色染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、アジン染料、キノリン染料等を使用することができる。より具体的には、紫色染料としては、C.I. Solvent Violet 13、C.I. Solvent Violet 31等を使用することができる。これらの紫色染料は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
紫色染料は、アントラキノン染料、つまり、分子構造中にアントラキノン骨格を有する染料であることが好ましい。前述したように、アントラキノン染料は、ポリスチレン系樹脂との相溶性に優れているため、発泡性粒子及び発泡粒子成形体の色ムラをより低減することができる。
【0024】
紫色染料は、C.I. Solvent Violet 13及びC.I. Solvent Violet 31のうち少なくとも一方であることがより好ましい。これらの紫色染料は、分子構造中にアントラキノン骨格を有するため、発泡性粒子及び発泡粒子成形体の色ムラをより低減することができる。また、これらの紫色染料は、化学的な安定性が高いため、酸性環境下や微生物の存在下における分解生成物の発生をより効果的に抑制することができる。
【0025】
また、C.I. Solvent Green 3、C.I. Solvent Green 28、C.I. Solvent Violet 13及びC.I. Solvent Violet 31は、発泡粒子内部まで含浸されにくく、発泡粒子の表層部に偏在しやすい。そのため、発泡粒子や発泡粒子成形体の表面の色調を所望の色調としつつ、着色料の使用量の合計をより低減することができる。また、これらの緑色染料及び紫色染料は、発泡粒子の表層部に偏在しやすいため、発泡性粒子の発泡を阻害しにくい。それ故、これらの緑色染料及び紫色染料を用いることにより、発泡粒子の平均気泡径をより容易に適正な範囲にすることができる。その結果、発泡粒子の色調をより改善するとともに、発泡粒子成形体の色ムラをより効果的に抑制することができる。
【0026】
なお、発泡粒子における着色料の分布状態は、以下のようにして評価することができる。まず、発泡粒子を概ね2等分になるように分割する。分割によって露出した切断面の中央部における色調と、発泡粒子の表面の色調とを測定し、両者の色座標を取得する。そして、発泡粒子の表面の色座標の値と切断面の中央部の色座標の値とに基づき、発泡粒子の表面と発泡粒子の中心部、つまり、切断面の中央部との色差(ΔE*)を算出する。前記測定においては、発泡粒子の表面の色調と発泡粒子の中心部の色調との違いが大きいほどΔE*の値が大きくなる。発泡粒子の表層部に着色料が偏在している場合には、発泡粒子の表層部の色調が発泡粒子の中心部の色調よりも濃くなるため、ΔE*の値が大きくなると考えらえる。
【0027】
発泡粒子の表層部に着色料を偏在させ、着色料の使用量をより低減する観点から、発泡粒子の表面の色座標の値と発泡粒子を2等分した発泡粒子の中央部の色座標の値とに基づいて算出される色差ΔE*が3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。なお、色調の測定には、色差計(例えば、日本電色工業株式会社製「ハンディ型分光色差計 NF333」)を使用することができる。また、前述した色差ΔE*の値は、JIS Z8781-4:2013に規定された、CIE 1976 L*a*b*表色系における色差である。
【0028】
発泡粒子及び発泡粒子成形体の色調をより青色に近づける観点からは、緑色染料としてC.I. Solvent Green 3を使用し、紫色染料としてC.I. Solvent Violet 13を使用することが特に好ましい。
【0029】
発泡性粒子中には、前述した作用効果を損なわない範囲で、緑色染料及び紫色染料以外の染料及び顔料が着色料として含まれていてもよい。緑色染料及び紫色染料以外に着色料として使用し得る染料としては、例えば、C.I. Solvent Yellow 93、C.I. Solvent Green 5等の黄色染料がある。
【0030】
着色料中の緑色染料及び紫色染料以外の染料の比率は、緑色染料の配合量と紫色染料との配合量との合計100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、0質量部、つまり、着色料中の染料が緑色染料と紫色染料とから構成されていることが特に好ましい。
【0031】
前記発泡性粒子は、前述したように、緑色染料と紫色染料とを組み合わせることによって、青色の色調を実現することができる。そのため、前記発泡性粒子に、着色剤として青色染料を使用する必要はない。かかる青色染料としては、C.I. Solvent Blue 78、C.I. Solvent Blue 35、C.I. Solvent Blue 36、C.I. Solvent Blue 87、C.I. Disperse Blue 26、C.I. Disperse Blue 35、C.I. Disperse Blue 102、C.I. Disperse Blue 106、C.I. Disperse Blue 124、C.I. Disperse Blue 165、C.I. Disperse Blue 79等がある。
【0032】
前記発泡性粒子は、これらの中でも、C.I. Solvent Blue 35、C.I. Solvent Blue 78及びC.I. Solvent Blue 36を含んでいないことが好ましい。C.I. Solvent Blue 35は、前述したように、酸性環境下や微生物の存在下で長期間保管すると分解しやすく、臭気の原因となると考えられる。そのため、発泡性粒子にC.I. Solvent Blue 35を配合しないことにより、分解生成物の発生をより確実に抑制することができる。
【0033】
また、C.I. Solvent Blue 78及びC.I. Solvent Blue 36は、Ames試験により変異原性を有することが確認された物質である。従って、発泡性粒子にC.I. Solvent Blue 78及びC.I. Solvent Blue 36を配合しないことにより、環境への負荷をより確実に低減することができる。
【0034】
発泡性粒子中には、前述した作用効果を損なわない範囲で、顔料が着色料として含まれていてもよい。着色料中の顔料の比率は、緑色染料の配合量と紫色染料との配合量との合計100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、0質量部、つまり、着色料が染料から構成されていることが特に好ましい。
【0035】
・発泡剤
前記発泡性粒子中には、発泡剤が含まれている。発泡剤としては、例えば、炭素数3以上5以下の鎖式脂肪族炭化水素等を使用することができる。より具体的には、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等を発泡剤として使用することができる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
・その他の添加剤
また、前記発泡性粒子中には、前述した作用効果を損なわない範囲で、可塑剤、核剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤などの他の添加剤が含まれていてもよい。
【0037】
[発泡性粒子の製造]
前記発泡性粒子の製造方法は、種々の態様を取り得る。具体的には、基材樹脂からなるポリスチレン系樹脂粒子を水などの水性媒体中に分散させた後、水性媒体内で着色料及び発泡剤をポリスチレン系樹脂粒子に含浸させるウェット含浸法、ポリスチレン系樹脂粒子に大気中で着色料及び発泡剤を含浸させるドライ含浸法、発泡剤を含む樹脂粒子に大気中で着色料を付着させるブレンド法、押出成形機内で染料を基材樹脂に練り込むことにより染料が練り込まれたポリスチレン系樹脂粒子樹脂粒子を作製し、次いでポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡性粒子を得る押出法などの方法によって発泡性粒子を得ることができる。
【0038】
製造コスト及び着色の均一性の観点からは、密閉容器内において、樹脂粒子に発泡剤及び着色料を含浸させて発泡性着色樹脂粒子を製造する方法、つまり、ウェット含浸法またはドライ含浸法により発泡性粒子を作製することが好ましく、ウェット含浸法により発泡粒子を作製することがより好ましい。これらの方法において、樹脂粒子としては、ポリスチレン系樹脂を含む基材樹脂を有するポリスチレン系樹脂粒子を使用することができる。また、着色料としては、緑色染料および紫色染料を含む着色料を使用することができる。着色料の添加量は、基材樹脂100質量部に対して0.05質量部以上0.30質量部以下であることが好ましい。また、緑色染料の添加量に対する前記紫色染料の添加量の比は0.2以上2.0以下であることが好ましい。
【0039】
ウェット含浸法は、ポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させる分散工程と、水性媒体中に着色料及び発泡剤を添加する添加工程と、密閉容器中で水性媒体を加熱して発泡性粒子中に着色料及び発泡剤を含浸させる加熱工程と、を有している。
【0040】
分散工程及び添加工程は、加熱工程において着色料及び発泡剤が浸透し始める前に完了していればよい。また、分散工程と添加工程との順序は、特に限定されることはない。すなわち、分散工程、添加工程及び加熱工程をこの順序で行ってもよいし、添加工程、分散工程及び加熱工程の順に行ってもよい。また、分散工程と添加工程をと並行して行うこともできる。製造上の利便性の観点からは、分散工程を添加工程よりも先に行うことが好ましい。
【0041】
分散工程においては、密閉容器中にポリスチレン系樹脂粒子と水性媒体とを投入する。この際、必要に応じて、懸濁剤や界面活性剤等を水性媒体に添加してもよい。ポリスチレン系樹脂粒子は、例えば、懸濁重合法などの従来公知の方法によって作製することができる。水性媒体としては、水等を使用することができる。水性媒体を使用することにより、加熱工程におけるポリスチレン系樹脂粒子の加熱を均一に行うことができ、着色料の含浸も均一に行い易くなる。
【0042】
分散工程においては、ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下の懸濁剤を水性媒体に添加することが好ましい。懸濁剤としては、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の親水性高分子や、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、酸化アルミニウム、タルク、カオリン、ベントナイト等の難水溶性無機塩等を用いることができ、さらに必要に応じて界面活性剤を併用することもできる。
【0043】
懸濁剤として、難水溶性無機塩を使用する場合には、アルキルスルホン酸ナトリウムやαオレフィンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を併用することが好ましい。この場合には、難水溶性無機塩の配合量をポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.050質量部以上30質量部以下とし、アニオン系界面活性剤の配合量をスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.00010質量部以上0.50質量部以下とすることが好ましい。
【0044】
添加工程においては、密閉容器内に発泡剤を含む揮発性有機化合物と、着色料とを添加する。揮発性有機化合物としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の、大気圧での沸点が90℃以下の有機化合物を用いることができる。これらの揮発性有機化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
添加工程における揮発性有機化合物の配合量は、ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上9質量部以下であることがさらに好ましい。
【0046】
添加工程において使用する着色料は、100メッシュの篩を通過可能な粒径を有していることが好ましい。この場合には、着色料をポリスチレン系樹脂粒子中により容易に含浸させ、色ムラの発生をより効果的に抑制することができる。
【0047】
加熱工程においては、密閉容器内の温度が例えば80℃以上となるように加熱した後、この温度を保持すればよい。加熱工程においては、密閉容器内の温度が所望の温度に到達した後、当該温度を0.5~10時間程度保持することが好ましい。保持時間を前記特定の範囲とすることにより、着色料及び発泡剤をポリスチレン系樹脂粒子中に十分に含浸させることができる。
【0048】
また、加熱工程では、密閉容器内のポリスチレン系樹脂粒子および着色料等を含む水性媒体を撹拌しつつ加熱することが好ましい。撹拌を行うためには、例えば撹拌装置が内蔵された密閉容器を使用すれば良い。
【0049】
[発泡粒子]
発泡粒子は、発泡性粒子を、例えば従来公知の方法により発泡させることにより得られる。発泡は、例えば発泡性粒子にスチーム等の加熱媒体を供給し、発泡性粒子を加熱することにより行うことができる。具体的には、例えば撹拌装置の付いた円筒形の発泡機を用いて、スチーム等により発泡性粒子を加熱して発泡させる方法がある。
【0050】
発泡粒子の平均表層膜厚は、1μm以上5μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下であることがより好ましい。発泡粒子の表層膜厚は、色の濃淡に影響を及ぼす。平均表層膜厚を前記特定の範囲内とすることにより、発泡粒子成形体の表面の色ムラをより低減し、発泡粒子成形体を均一に着色することができる。従来用いられているC.I. Solvent Blue 35などの青色染料は、発泡性粒子内部まで含浸されやすいため発泡粒子の表層膜厚による色の濃淡への影響が小さいと考えられる。一方、前記発泡性粒子に用いられる緑色染料及び紫色染料は、発泡性粒子内部まで含浸されにくく、発泡粒子の表層部に偏在しやすい。そのため、前記発泡性粒子を発泡させてなる発泡粒子においては、表層膜厚により色の濃淡がより変化しやすい。このように、緑色染料及び紫色染料を含む着色料を用いた発泡粒子においては、発泡粒子成形体の表面の色ムラを抑制する観点から、発泡粒子の平均表層膜厚を前記範囲とすることが重要となる。発泡粒子成形体の表面の色ムラをさらに低減する観点からは、発泡粒子の表層膜厚の変動係数が0.6未満であることがさらに好ましい。
【0051】
発泡粒子の平均表層膜厚及び表層膜厚の変動係数の算出方法は以下のとおりである。まず、発泡粒子を概ね2等分となるように分割する。走査型電子顕微鏡を用い、分割によって露出した切断面における発泡粒子の表面付近の拡大写真を取得する。得られた拡大写真において、発泡粒子の最表面に存在する気泡を無作為に10個以上選択し、各気泡の厚みを測定する。これらの値の算術平均値を個々の発泡粒子の表層膜の厚みとする。以上の操作を30個以上の発泡粒子について行い、得られた発泡粒子の表層膜の厚みの算術平均値を平均表層膜厚とする。また、30個以上の発泡粒子の表層膜の厚みに基づいて算出した不偏分散の平方根の値を表層膜厚の標準偏差とし、標準偏差を平均表層膜厚で除した値を表層膜厚の変動係数とする。
【0052】
発泡粒子の平均表層膜厚は、水性媒体中でスチレンを懸濁重合させる途中で、水性媒体に電解質を添加して重合を進め、発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得た後、重合体のガラス転移温度付近に保持し、発泡剤の一部を逸散させる方法や発泡時の雰囲気温度を高い温度とする方法、発泡時の昇温速度を速くする方法などにより調整することができる。発泡粒子の表層膜厚の変動係数は、前記の平均表層膜厚の調整方法と同様の方法にて調整可能である。
【0053】
発泡粒子の平均気泡径は、50μm以上100μm以下であることが好ましく、60μm以上90μm以下であることがより好ましい。発泡粒子の平均気泡径を前記特定の範囲内とすることにより、発泡粒子及び発泡粒子成形体の色調をより改善するとともに、発泡粒子成形体の色ムラをより効果的に抑制することができる。
【0054】
発泡粒子の平均気泡径は、以下の方法により測定することができる。まず、発泡粒子を概ね2等分となるように分割する。走査型電子顕微鏡を用い、分割により露出した切断面の拡大写真を取得する。得られた拡大写真上に、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、4本の線分を隣り合う線分同士のなす角度が等しくなるように引く。このようにして得られた4本の線分の長さの合計を、線分と交差する気泡の総数で割ることにより、気泡径を算出する。以上の操作を30個以上の発泡粒子について行い、得られた発泡粒子の気泡径の算術平均値を平均気泡径とする。
【0055】
発泡粒子の嵩密度は、10kg/m3以上150kg/m3以下であることが好ましく、15kg/m3以上100kg/m3以下であることがより好ましい。この場合には、発泡粒子を成形して得られる発泡成形体の機械的強度を確保しつつ質量をより低減することができる。
【0056】
発泡粒子の嵩密度の測定方法は以下のとおりである。まず、容積1Lのメスシリンダーを準備する。発泡粒子の静電気を除去しながら、自然堆積状態となるようにメスシリンダーの1Lの標線まで発泡粒子を充填する。このメスシリンダー内の発泡粒子の質量、つまり、体積1L当たりの発泡粒子の質量を体積1m3当たりの質量(kg/m3)に換算することにより、発泡粒子の嵩密度(kg/m3)を算出することができる。
【0057】
[発泡粒子成形体]
発泡粒子成形体は、例えば次のようにして製造される。まず、所望する成形体の形状に対応したキャビティを有する金型内に発泡粒子を充填し、スチームなどの加熱媒体により金型内で多数の発泡粒子を加熱する。キャビティ内の発泡粒子は、加熱によってさらに発泡すると共に、相互に融着する。これにより、多数の発泡粒子が一体化し、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。
【0058】
発泡粒子成形体の嵩密度は、15kg/m3以上150kg/m3以下であることが好ましい。発泡粒子成形体の嵩密度は、発泡粒子成形体の質量を、外形寸法に基づいて算出した体積で除することにより算出される値である。
【0059】
前記発泡粒子成形体における、JIS Z8722:2009に準拠した反射物体色の測定方法により前記発泡粒子成形体の表面を測定して得られるb*値が-30以上-10以下であり、かつ、a*値が-10以上0以下であることが好ましい。これにより、目視において青色を呈する発泡粒子成形体を得ることができる。なお、前述したb*値及びa*値は、JIS Z8781-4:2013に規定された、CIE 1976 L*a*b*表色系における色座標である。
【0060】
また、前記発泡粒子成形体は、JIS Z8722:2009に準拠した反射物体色の測定方法により前記発泡粒子成形体の表面を測定して得られるL*値が60以上80以下であることが好ましく、65以上75以下であることがより好ましい。前記特定の範囲のa*値及びb*値の範囲に加えて、更に、L*値の範囲を前記特定の範囲とすることにより、発泡粒子成形体の色調をより青色に近づけることができる。なお、a*値、b*値及びL*値の測定には、色差計(例えば、日本電色工業株式会社製「ハンディ型分光色差計 NF333」)を使用することができる。
【実施例】
【0061】
以下に、前記発泡性粒子の実施例及び比較例について説明する。本例では、以下の方法により、表1の実施例及び表2の比較例に示す発泡性粒子を製造した。なお、本発明に係る発泡性粒子、発泡粒子及び発泡粒子成形体の具体的な態様は、以下に示す実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない範囲において適宜構成を変更することができる。
【0062】
(実施例1)
撹拌装置の付いた内容積が約3Lのオートクレーブ内に、脱イオン水1100g、懸濁剤4.4g、界面活性剤0.04g、ポリスチレン系樹脂粒子1000g、緑色染料0.95g及び紫色染料0.95gを投入した。なお、表1及び表2には、界面活性剤及び各着色料の配合量として、ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対する比率を記載した。
【0063】
本例で使用したポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレンを基材樹脂として含む樹脂粒子である。また、ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径(d63)は約1.0mmである。ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径(d63)は、日機装株式会社の粒度分布測定装置「ミリトラック JPA」により測定した。
【0064】
懸濁剤は、具体的には濃度20.5質量%の第三リン酸カルシウムスラリー(太平化学産業株式会社製)である。界面活性剤は、具体的にはラウリルスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製「ラテムル(登録商標)PS」)である。緑色染料は、具体的にはC.I. Solvent Green 3(紀和化学工業株式会社製「KP Plast Green G」)である。紫色染料は、具体的にはC.I. Solvent Violet 13(紀和化学工業株式会社製「KP Plast Violet 2R」)である。C.I. Solvent Green 3及びC.I. Solvent Violet 13は、Ames試験において陰性、つまり、変異原性を有しないと判断されている。
【0065】
オートクレーブ内を密閉した後、オートクレーブ内の温度を30℃とした。次いで、オートクレーブ内を撹拌しながら60分かけて90℃まで昇温させた。90℃に到達した後、揮発性有機化合物として、ペンタン(ノルマルペンタン80%とイソペンタン20%との混合物)12gを10分間かけてオートクレーブ内に添加し、次いでブタン(ノルマルブタン約70%とイソブタン約30%との混合物)62gを10分間かけてオートクレーブ内に添加した。
【0066】
揮発性有機化合物の添加が完了した後、90℃の温度を3時間保持した。次いで、オートクレーブ内を60分かけて100℃まで昇温させ、100℃の温度を6時間保持した。その後、オートクレーブ内の温度を35℃まで冷却し、オートクレーブの内容物から発泡性粒子を取り出した。遠心分離機を用いて発泡性粒子の脱水を行い、さらに気流乾燥装置を用いて発泡性粒子の表面に付着した水分を除去した。
【0067】
このように乾燥させた発泡性粒子100質量部に対して0.05質量部の帯電防止剤(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミン)を添加した。そして、発泡性粒子を攪拌することによって、発泡性粒子の表面に帯電防止剤を付着させた。さらに、発泡性粒子100質量部に対して0.1質量部のステアリン酸亜鉛、0.05質量部のグリセリントリステアレート、0.05質量部のグリセリンモノステアレートを添加した。そして、発泡性粒子を攪拌することによって、発泡性粒子の表面をこれらの物質で被覆した。以上により、実施例1の発泡性粒子を得た。
【0068】
(実施例2、6、7及び比較例1、4、5)
緑色染料及び紫色染料のポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対する配合量を表1及び表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして発泡性粒子を作製した。
【0069】
(実施例3)
緑色染料として、C.I. Solvent Green 3に替えてC.I. Solvent Green 28(紀和化学工業株式会社製「KP Plast Green HG」)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性粒子を作製した。なお、C.I. Solvent Green 28は、Ames試験において陰性と判断されている。
【0070】
(実施例4)
紫色染料として、C.I. Solvent Violet 13に替えてC.I. Solvent Violet 31(紀和化学工業株式会社製「KP Plast Violet R」)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性粒子を作製した。C.I. Solvent Violet 31は、Ames試験において陰性と判断されている。
【0071】
(実施例5)
緑色染料及び紫色染料のポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対する配合量を表1に示すように変更するとともに、オートクレーブ内に黄色染料0.09gを添加した以外は、実施例1と同様にして発泡性粒子を作製した。なお、黄色染料としては、C.I. Solvent Yellow 93(紀和化学工業株式会社製「KP Plast Yellow G」)を使用した。C.I. Solvent Yellow 93は、Ames試験において陰性と判断されている。
【0072】
(実施例8)
界面活性剤として、ラウリルスルホン酸ナトリウムに替えてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして発泡性粒子を作製した。
【0073】
(比較例2)
緑色染料を使用せず、紫色染料のポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対する配合量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして発泡性粒子を作製した。
【0074】
(比較例3)
紫色染料を使用せず、緑色染料のポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対する配合量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして発泡性粒子を作製した。
【0075】
(比較例6)
緑色染料及び紫色染料を使用せず、オートクレーブ内に青色染料であるC.I. Solvent Blue 35(紀和化学工業株式会社製「KP Plast Blue BR」)1.9gを添加した以外は、実施例1と同様にして発泡性粒子を作製した。
【0076】
(比較例7)
青色染料としてC.I. Solvent Blue 35に替えてC.I. Solvent Blue 78(紀和化学工業株式会社製「KP Plast Blue G」)を使用した以外は、比較例6と同様にして発泡性粒子を作製した。なお、C.I. Solvent Blue 78は、Ames試験において陽性、つまり、変異原性を有していると判断されている。
【0077】
上記のようにして作製した発泡性粒子中の発泡剤の含有量を、下記の方法で測定した。
【0078】
「発泡剤の含有量の測定」
精秤した発泡性粒子1gをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶解させ、ガスクロマトグラフィー(GC)による測定を行い、発泡性粒子中の発泡剤(ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン)の含有量を定量した。なお、ガスクロマトグラフィーの測定条件は次の通りである。また、表1及び表2における「C4化合物量」欄にはノルマルブタンの含有量とイソブタンの含有量との合計、「C5化合物量」欄にはノルマルペンタンの含有量とイソペンタンの含有量との合計を記載した。
測定装置:株式会社島津製作所製ガスクロマトグラフGC-9A
カラム材質:内径3mm、長さ3000mmのガラスカラム
カラム充填剤:
〔液相名〕PEG-20M
〔液相含浸率〕25質量%
〔担体粒度〕60/80メッシュ
〔担体処理方法〕AW-DMCS(水洗、焼成、酸処理、シラン処理)
キャリアガス:N2
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
定量方法:内部標準法
【0079】
次に、容積30Lのバッチ式発泡機を用いて発泡性粒子を発泡させ、嵩密度20kg/m3、直径略1.6mmの発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を用いて平均表層膜厚、表層膜厚の変動係数、嵩密度、平均気泡径及び発泡粒子表面と中心部との色差の測定を行った。
【0080】
「平均表層膜厚及び表層膜厚の変動係数の測定」
まず、発泡粒子を概ね2等分となるように分割した。走査型電子顕微鏡を用い、分割によって露出した切断面における発泡粒子の表面付近を観察し、倍率2000倍の拡大写真を取得した。得られた拡大写真において、発泡粒子の最表面、つまり、分割面の外周端に存在する気泡を無作為に10個選択し、各気泡の厚みを測定した。これらの値の算術平均値を個々の発泡粒子の表層膜の厚みとした。無作為に選択した30個の発泡粒子について上記の操作を行い、得られた発泡粒子の表層膜の厚みの算術平均値を発泡粒子の平均表層膜厚とした。また、これらの発泡粒子の表層膜の厚みに基づいて算出した不偏分散の平方根を表層膜厚の標準偏差とした。そして、標準偏差を平均表層膜厚で除することにより、表層膜厚の変動係数を算出した。
【0081】
「発泡粒子の嵩密度の測定」
容積1Lのメスシリンダーを準備し、発泡粒子の静電気を除去しながら、自然堆積状態となるようにメスシリンダーの1Lの標線まで発泡粒子を充填した。メスシリンダー内に収容された体積1Lあたりの発泡粒子の質量(g/L)を体積1m3当たりの質量(kg/m3)に換算することにより、発泡粒子の嵩密度(kg/m3)を算出した。
【0082】
「平均気泡径の測定」
まず、発泡粒子を概ね2等分となるように分割した。走査型電子顕微鏡を用い、分割により露出した切断面の拡大写真を取得した。得られた拡大写真に、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、隣り合う線分同士のなす角度が等しくなるように4本の線分を引いた。すなわち、隣り合う線分同士のなす角度は45°となる。このようにして得られた4本の線分の長さの合計を、線分と交差する気泡の総数で割ることにより、気泡径を算出した。以上の操作を30個の発泡粒子について行い、得られた発泡粒子の気泡径の算術平均値を平均気泡径とした。
【0083】
「発泡粒子の表面と中心部との色差」
発泡粒子を概ね2等分になるように分割した。分割によって露出した切断面の中央部、つまり、発泡粒子の中心部における色調と、発泡粒子の表面の色調とを日本電色工業株式会社製「ハンディ型分光色差計 NF333」を用いて測定し、両者の色座標を取得した。そして、発泡粒子の表面の色座標の値と切断面の中央部の色座標の値とに基づき、発泡粒子の表面と発泡粒子の切断面の中央部との色差(ΔE*)を算出した。
【0084】
なお、色差ΔE*の値は、以下の式により算出される値である。また、以下の式におけるΔL*は発泡粒子の表面のL*値と発泡粒子の中心部のL*値との差を示す記号であり、Δa*は発泡粒子の表面のa*値と発泡粒子の中心部のa*値との差を示す記号であり、Δb*は発泡粒子の表面のb*値と発泡粒子の中心部のb*値との差を示す記号である。
ΔE*={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2
【0085】
次に、以下の方法により発泡粒子成形体を作製し、得られた発泡粒子成形体を用いて色調、色ムラ及び臭気の評価を行った。
【0086】
「発泡粒子成形体の作製方法」
前述の方法により得られた発泡粒子を室温で1日熟成させた後、型物成型機の金型に充填した。そして、金型内にゲージ圧0.07MPa(G)のスチームを供給し、20秒間加熱して型内成形を行った。金型内で発泡粒子成形体を所定時間冷却した後、金型から発泡粒子成形体を取り出した。発泡粒子成形体の嵩密度は20kg/m3であった。なお、発泡粒子成形体の嵩密度は、発泡粒子成形体の質量を外形寸法に基づいて算出した体積で除した値である。
【0087】
「色調の目視評価」
目視により発泡粒子成形体の色調を評価した。目視による評価においては、青色染料であるC.I. Solvent Blue 35を用いた比較例6の発泡粒子成形体を基準として用い、基準からの実施例及び比較例の発泡粒子成形体の色調のずれを目視により評価した。表1及び表2の「目視」欄には、基準からの色調のずれが小さい場合に記号「A」、基準からの色調のずれがやや大きい場合に記号「B」、基準からの色調のずれが大きい場合に記号「C」、基準からの色調のずれがさらに大きい場合に記号「D」を記載した。
【0088】
「色差計による色差の評価」
色差計を用い、比較例6の色調を基準とした色差を算出した。具体的には、日本電色工業株式会社製「ハンディ型分光色差計 NF333」を用い、発泡粒子成形体の表面の色調を測定した。表1及び表2に、CIE 1976 L*a*b*表色系における発泡粒子成形体の表面の色座標の値と、色座標に基づいて算出した、比較例6との色差ΔE*とを示す。なお、色差ΔE*の値は、以下の式により算出される値である。また、以下の式におけるΔL*は評価対象のL*値と比較例6のL*値との差を示す記号であり、Δa*は評価対象のa*値と比較例6のa*値との差を示す記号であり、Δb*は評価対象のb*値と比較例6のb*値との差を示す記号である。
ΔE*={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2
【0089】
「色ムラの評価」
発泡粒子成形体の表面を目視観察し、色の濃い発泡粒子の周囲が当該発泡粒子よりも色の薄い発泡粒子で取り囲まれることにより、染みが形成されたように見える部分を特定した。そして、色の薄い発泡粒子で取り囲まれた部分の内側に存在する色の濃い発泡粒子の総数を発泡粒子成形体の表面100cm2当たりの数に換算した。すなわち、発泡粒子成形体の表面100cm2当たりの色の濃い発泡粒子の数(個/100cm2)は、色の濃い発泡粒子の総数N(個)及び発泡粒子成形体の表面積S(cm2)を用い、以下の式により算出される。
100cm2当たりの色の濃い発泡粒子の数=N/S×100
【0090】
表1及び表2の「色ムラの評価」欄には、色の濃い発泡粒子の数が1個/100cm2以下の場合に「Good」と記載し、1個/100cm2を超える場合に「Poor」と記載した。色ムラの評価においては、色の濃い発泡粒子の数が1個/100cm2以下の場合を色ムラが少ないため合格と判断し、1個/100cm2を超える場合を色ムラが多いため不合格と判断した。
【0091】
「臭気の評価」
金型から取り出した発泡粒子成形体を乾燥させずに包装袋に封入し、6℃の低温倉庫内で60日間保管した。その後、包装袋から取り出した発泡粒子成形体の臭気を官能試験により評価し、臭気を有する場合には分解生成物が多く生成していると判断した。表1及び表2の「臭気の評価」欄には、発泡粒子成形体が酪酸臭を有しない場合に「Good」と記載し、酪酸臭を有する場合に「Poor」と記載した。
【0092】
【0093】
【0094】
表1に示すように、実施例1~8の発泡性粒子における着色料の配合量の合計、緑色染料の配合量と紫色染料の配合量との比は前記特定の範囲内である。そのため、実施例1~8の発泡性粒子は、青色を呈するとともに、悪臭の発生を抑制することができた。また、実施例において使用した着色料は、いずれもAmes試験において陰性を示すことが確認されているため、環境への負荷を低減することができる。
【0095】
表2に示すように、比較例1における緑色染料の配合量に対する紫色染料の配合量の比は前記特定の範囲よりも大きい。そのため、発泡粒子成形体の表面のa*値が大きく、目視において赤みが強い色調となり、青色を呈する発泡粒子成形体が得られなかった。
【0096】
比較例2においては、着色料として紫色染料のみを添加したため、得られる発泡粒子及び発泡粒子成形体の色調が紫色となった。また、比較例2の発泡粒子成形体は、実施例1~8に比べて色ムラが目立っていた。
【0097】
比較例3においては、着色料として緑色染料のみを添加したため、得られる発泡粒子及び発泡粒子成形体の色調が緑色となった。
【0098】
比較例4における着色料の配合量の合計は前記特定の範囲よりも少ない。そのため、発泡粒子成形体の色が白色に近づき、目視により青色を呈する発泡粒子成形体が得られなかった。
【0099】
比較例5における着色料の配合量の合計は前記特定の範囲よりも多い。そのため、発泡性粒子に含浸されなかった着色料により、発泡性粒子の色の濃さのバラつきが大きくなりやすい。それ故、比較例5の発泡性粒子から作製した発泡粒子成形体は、色ムラが目立ちやすいという問題がある。
【0100】
比較例6は、酸性の環境下や微生物の存在下で長期間保管した場合に、青色染料として用いたC.I. Solvent Blue 35に由来する分解生成物が生じるおそれがある。
【0101】
比較例7は、青色染料として用いたC.I. Solvent Blue 78がAmes試験において陽性を示す。