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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20230508BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20230508BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/74 B
B60N2/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021150240
(22)【出願日】2021-09-15
(62)【分割の表示】P 2017226769の分割
【原出願日】2017-11-27
(65)【公開番号】P2021185084
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201244(JP,A)
【文献】特開2016-196267(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137290(WO,A1)
【文献】特開2016-147610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/00-74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションパッドと、
前記シートクッションパッドを覆う表皮と、
抵抗加熱体と、当該抵抗加熱体を支持するシート状の支持体とを有してなり、前記シートクッションパッドと前記表皮の間に設けられた面状発熱体と、を備え、
前記シートクッションパッドは、左右方向の中央に配置された座面部と、前記座面部の左右外側に配置され、乗員の側部を支持するために乗員側に張り出した張り出し部と、前記表皮が吊り込まれる吊込み溝とを有し、当該吊込み溝は、前記座面部と前記張り出し部の間に配置された、前後方向に延びる区画部を含み、
前記面状発熱体は、前記座面部に配置された前記抵抗加熱体である第1ヒータと、前記張り出し部に配置された前記抵抗加熱体である第2ヒータと、前記第1ヒータと前記第2ヒータを接続する接続部とを有し、当該接続部は、前記区画部よりも前または後を通って前記第1ヒータと前記第2ヒータを接続していることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記接続部は、前記第1ヒータの前端から下方に延びるとともに、前記第2ヒータの前端から下方に延び、前記シートクッションパッドの前側の側面を通って前記第1ヒータと前記第2ヒータを接続していることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記区画部は、前記シートクッションパッドの後端まで延びていることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記区画部は前後方向に延び、
前記接続部は、前記シートクッションパッドの上面に位置し、前記区画部よりも後を通って前記第1ヒータと前記第2ヒータを接続していることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項5】
シートバックパッドと、
前記シートバックパッドを覆う表皮と、
抵抗加熱体と、当該抵抗加熱体を支持するシート状の支持体とを有してなり、前記シートバックパッドと前記表皮の間に設けられた面状発熱体と、を備え、
前記シートバックパッドは、左右方向の中央に配置された座面部と、前記座面部の左右外側に配置され、乗員の側部を支持するために乗員側に張り出した張り出し部と、前記表皮が吊り込まれる吊込み溝とを有し、当該吊込み溝は、前記座面部と前記張り出し部の間に配置された、上下方向に延びる区画部を含み、
前記面状発熱体は、前記座面部に配置された前記抵抗加熱体である第1ヒータと、前記張り出し部に配置された前記抵抗加熱体である第2ヒータと、前記第1ヒータと前記第2ヒータを接続する接続部とを有し、当該接続部は、前記区画部よりも上または下を通って前記第1ヒータと前記第2ヒータを接続していることを特徴とする乗物用シート。
【請求項6】
ヘッドレストと、
シートクッションフレームと、
シートバックフレームと、
前記シートバックフレームに被さるシートバックパッドと、
前記シートバックパッドを覆う第2表皮と、
前記シートバックパッドと前記第2表皮の間に設けられた第2面状発熱体と、
をさらに備え、
前記シートクッションパッドは、前記シートクッションフレームに被さっていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
ヘッドレストと、
シートクッションフレームと、
シートバックフレームと、
前記シートクッションフレームに被さるシートクッションパッドと、
前記シートクッションパッドを覆う第3表皮と、
前記シートクッションパッドと前記第3表皮の間に設けられた第3面状発熱体と、
をさらに備え、
前記シートバックパッドは、前記シートバックフレームに被さっていることを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座面を加熱可能な面状発熱体を備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
座面を加熱可能な面状のヒータ(面状発熱体)を備えるシートが知られている。このようなシートにおいては、面状発熱体は、パッドと表皮の間に配置されている。また、ヒータは、シートの左右方向中央の座面部と、座面部の左右両側で、乗員側に張り出した張り出し部に設けられている(特許文献1)。
【0003】
座面部と張り出し部の間には、シートの表皮を吊り込むための吊込み溝が設けられている。座面部と張り出し部の表皮は、縫い合わせ部分に剛性を持たせるプラスチックコードが設けられ、このプラスチックコードが吊込み溝に入っている。そして、プラスチックコードは、溝の底に設けられた金属ワイヤに、C字形状の部材や、フック、面ファスナなどによって引っ掛けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-185760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、座面部の面状発熱体と張り出し部の面状発熱体を接続する場合、この接続部分を吊込み溝に入れるとすると、プラスチックコードと干渉しないように溝の一部を深くしたり、接続部分が金属ワイヤの影響を受けないように、金属ワイヤを迂回させるように屈曲させるなど、複雑な構成をとる必要がある。
【0006】
また、座面部と張り出し部の間にある、前後方向(シートクッションの場合)または上下方向(シートバックの場合)に延びる吊込み溝の部分は、乗員が膝をついたり、手をつくなどして、大きな荷重が掛けられる可能性がある。そのため、この吊込み溝にヒータの接続部分を入れると、接続部分が傷む可能性がある。特に、シートクッションの場合には、車内清掃などの際に、膝をつかれる可能性が高い。
【0007】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、面状発熱体が傷みにくい乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する本発明の乗物用シートは、パッドと、パッドを覆う表皮と、抵抗加熱体と、当該抵抗加熱体を支持するシート状の支持体とを有してなり、パッドと表皮の間に設けられた面状発熱体と、を備える。パッドは、左右方向の中央に配置された座面部と、座面部の左右外側に配置され、乗員の側部を支持するために乗員側に張り出した張り出し部と、表皮が吊り込まれる吊込み溝とを有し、当該吊込み溝は、座面部と張り出し部の間に配置された、左右方向に直交する方向に延びる区画部を含み、面状発熱体は、座面部に配置された第1ヒータと、張り出し部に配置された第2ヒータと、第1ヒータと第2ヒータを接続する接続部とを有し、当該接続部は、区画部を避けた部分を通って第1ヒータと第2ヒータを接続していることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、第1ヒータと第2ヒータを接続する接続部が、吊込み溝のうちの区画部を避けた位置を通っていることで、簡易な構成で面状発熱体が傷みにくい乗物用シートを提供することができる。
【0010】
前記した乗物用シートにおいて、パッドは、シートクッションパッドであり、区画部は前後方向に延びている構成とすることができる。この場合、接続部は、区画部の後側を通って第1ヒータと第2ヒータを接続していてもよい。
【0011】
このような構成によれば、区画部の後側の荷重が掛かりにくい部分を通って、第1ヒータと第2ヒータを接続することができる。
【0012】
また、前記した乗物用シートにおいて、パッドは、シートクッションパッドであり、区画部は前後方向に延び、接続部は、区画部の前側で、パッドの前側の側面を通って第1ヒータと第2ヒータを接続していてもよい。
【0013】
このような構成によれば、接続部が区画部の前側を通る場合でも、パッドの前側の側面を通ることで、大きな負荷を受けることが少ない。また、接続部がヒータからなる場合には、乗員のふくらはぎを温めることもでき、快適さを向上することができる。
【0014】
前記した乗物用シートにおいて、パッドは、シートバックパッドであり、区画部は上下方向に延び、接続部は、区画部の上側または下側を通って第1ヒータと第2ヒータを接続していてもよい。
【0015】
このような構成によれば、シートバックにおいて、接続部が、区画部の上側または下側を通って第1ヒータと第2ヒータを接続することで、荷重が掛かりにくい部分を通って第1ヒータと第2ヒータを接続することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1ヒータと第2ヒータを接続する接続部が、吊込み溝のうちの区画部を避けた位置を通っていることで、簡易な構成で面状発熱体が傷みにくい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る乗物用シートの一実施形態を示す車両用シートの斜視図である。
図2】シートフレームの斜視図である。
図3】シートクッションパッド、面状発熱体、表皮の分解斜視図である。
図4】シートクッションパッドと面状発熱体の位置関係を示す図である。
図5】シートクッションの、図4のX-X断面に相当する図である。
図6】シートクッションの、図4のY-Y断面に相当する図である。
図7】シートバックパッドと面状発熱体の位置関係を示す図である。
図8】第2実施形態に係るシートクッションパッドと面状発熱体を示す斜視図である。
図9】第3実施形態に係るシートバックパッドと面状発熱体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る乗物用シートの第1実施形態について説明する。第1実施形態の乗物用シートは、例えば図1に示すように、自動車に搭載される車両用シートSとして構成されている。この車両用シートSは、シートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を備えている。
【0019】
シートクッションS1は、左右中央に配置された、乗員の臀部および太ももを下から接触して支える座面部S11と、座面部S11の左右両方の外側に配置され、乗員の太ももおよび臀部の側部を支持するために乗員側に張り出した張り出し部S12を有する。
また、シートバックS2も同様に、左右中央に配置された、乗員の背中に接触して背中を後から支える座面部S21と、座面部S21の左右両方の外側に配置され、乗員の上体の側部を支持するために乗員側に張り出した張り出し部S22を有する。
【0020】
図2に示すように、シートフレームFは、シートクッションフレームF1と、シートクッションフレームF1に支持されたシートバックフレームF2とを備えている。
【0021】
図3に示すように、シートクッションS1は、シートクッションフレームF1に被さるパッドの一例としてのシートクッションパッドP1と、シートクッションパッドP1を覆う表皮K1と、シートクッションパッドP1と表皮K1の間に挟まれた状態で設けられた面状発熱体100とを備えている。
シートバックS2も、シートクッションS1と同様に、シートバックフレームF2に被さるパッドの一例としてのシートバックパッドP2(図7参照)と、シートバックパッドP2を覆う表皮K2(図1参照)と、シートバックパッドP2と表皮K2の間に挟まれた状態で設けられた面状発熱体200(図7参照)とを備えている。
【0022】
シートクッションパッドP1は、座面部S11に対応する座面部P11と、張り出し部S12に対応する張り出し部P12とを有する。具体的には、シートクッションパッドP1は、左右方向の中央に配置された座面部P11と、座面部P11の左右外側に配置され、乗員の側部を支持するために乗員側に張りだした張り出し部P12とを有している。シートクッションパッドP1の上面には、表皮K1が吊り込まれる吊込み溝30(31~33)が形成されている。
【0023】
吊込み溝30は、座面部P11と張り出し部P12の間に配置された、左右方向に直交する方向、ここでは前後方向に延びる2つの区画部31と、2つの区画部31の各後端部を左右方向に繋ぐ第1横溝32と、第1横溝32よりも前の位置で2つの区画部31を左右方向に繋ぐ第2横溝33とを含む。また、シートクッションパッドP1は、吊込み溝30とは別に、区画部31と第1横溝32の接続部分から、後方斜めに延びる浅溝35を有する。浅溝35は、吊込み溝30より浅く、表皮K1の縫い代を受け入れるが、C字形状の部材や、フック、面ファスナーなどにより表皮K1が吊り込まれることがない溝である。また、シートクッションパッドP1は、前側の側面39に区画部31の前端から下方に延びる浅溝36を有する。浅溝36も、表皮K1の縫い代を受け入れるが、C字形状の部材や、フック、面ファスナーなどにより表皮K1が吊り込まれることがない溝である。
【0024】
面状発熱体100は、抵抗加熱体100A(110,120,130)と、抵抗加熱体100Aを支持するシート状の支持体100Bとを有してなる。
抵抗加熱体100Aは、例えばニクロム線を細かく蛇行させたものであってもよいし、高抵抗の金属板や、シート状や布状のカーボンなどであってもよい。すなわち、パッドと表皮の間に挟み込める薄いシート状のものであれば、具体的な形状や材料は任意である。
支持体100Bは、抵抗加熱体100Aを支持するシート状の物であり、材料は問わない。例えば、支持体100Bは、不織布である。抵抗加熱体が支持体に含浸されている場合などのように、支持体100Bが抵抗加熱体100Aと一体になっていてもよい。
【0025】
抵抗加熱体100Aは、座面部P11に配置された第1ヒータ110と、張り出し部P12に配置された2つの第2ヒータ120と、第1ヒータ110と第2ヒータ120を接続する接続部130とを有する。
第1ヒータ110は、第2横溝33より前側に位置する前部111と、第2横溝33より後側に位置する後部112と、前部111と後部112を接続する第1ヒータ接続部113とを有する。第1ヒータ接続部113は、前部111および後部112よりも、左右方向の幅が小さい。
【0026】
第2ヒータ120は、張り出し部P12の形状に合わせて前後に長い形状を有する。
【0027】
接続部130は、第2ヒータ120の後端同士を接続し、左右に長く延びる左右接続部131と、左右接続部131の左右方向の中央部と、第1ヒータ110の後部112とを接続する前後接続部132とを有する。本実施形態において、接続部130は、ニクロム線などの抵抗加熱線からなるヒータであるが、抵抗が小さくほとんど発熱しない配線であっても構わない。
【0028】
図4に示すように、接続部130は、シートクッションパッドP1の区画部31を避けた位置を通って第1ヒータ110と第2ヒータ120を接続している。具体的には、接続部130は、左右接続部131が区画部31の後側を通って左右の第2ヒータ120を繋ぎ、前後接続部132が、2つの区画部31の間を通って第1ヒータ110の後部112と左右接続部131を接続している。
【0029】
図5に示すように、座面部S11に対応する表皮K1の座面部K11と、張り出し部S12に対応する表皮K1の張り出し部K12の縫い合わせ部分には、プラスチックコード51が設けられている。プラスチックコード51は、例えば、座面部K11および張り出し部K12の素材とともに縫い合わされている。
【0030】
プラスチックコード51には、適宜な間隔で取付部材52が設けられている。取付部材52は、C字形状の金具であり、シートクッションパッドP1に埋め込まれた金属ワイヤ53に引っ掛けられている。なお、取付部材52は、フックや、面ファスナであってもよい。面ファスナを使用する場合、例えば、金属ワイヤ53とプラスチックコード51の対向面にそれぞれ面ファスナの片方をこていしておくとよい。このようにして、表皮K1の座面部K11と張り出し部K12の縫い合わせ部分が吊込み溝30の区画部31に吊り込まれている。上述したように、第1ヒータ110と第2ヒータ120は、区画部31を避けた位置を通って接続されているので、区画部31の中に面状発熱体100は入り込んでいない。
【0031】
図6に示すように、座面部P11の吊込み溝30のうち、第1横溝32は、プラスチックコード51が入るのに十分な深さの吊込み溝部32Aと、吊込み溝部32Aより深く形成された深溝部32Bとを含む。深溝部32Bには、前後接続部132が入り込んでいる。このため、前後接続部132とプラスチックコード51との干渉が抑制されている。また、深溝部32Bが形成されている断面においては、金属ワイヤ53は深溝部32Bに対して後ろにずれて配置されており、金属ワイヤ53が前後接続部132に影響を与えないようになっている。
【0032】
第2横溝33も同様に、プラスチックコード51が入るのに十分な深さの吊込み溝部33Aと、吊込み溝部33Aより深く形成された深溝部33Bとを含む。深溝部33Bには、第1ヒータ接続部113が入り込んでいる。このため、第1ヒータ接続部113とプラスチックコード51との干渉が抑制されている。また、深溝部33Bが形成されている断面においては、金属ワイヤ53は深溝部33Bに対して後ろにずれて配置されており、金属ワイヤ53が第1ヒータ接続部113に影響を与えないようになっている。
【0033】
図7に示すように、シートバックS2についても、シートクッションS1と同様にしてシートバックパッドP2に面状発熱体200が設けられている。
【0034】
シートバックパッドP2は、左右方向の中央に配置された座面部P21と、座面部P21の左右外側に配置され、乗員の側部を支持するために乗員側に張りだした張り出し部P22とを有している。シートバックパッドP2の前面には、表皮K2が吊り込まれる吊込み溝40(41~43)が形成されている。
【0035】
吊込み溝40は、座面部P21と張り出し部P22の間に配置された、左右方向に直交する方向、ここでは上下方向に延びる2つの区画部41と、2つの区画部41の各下端部を左右方向に繋ぐ第1横溝42と、第1横溝42よりも上の位置で2つの区画部41を左右方向に繋ぐ2本の第2横溝43とを含む。
【0036】
面状発熱体200は、抵抗加熱体200A(210,220,230)と、抵抗加熱体200Aを支持するシート状の支持体200Bとを有してなる。抵抗加熱体200Aは、抵抗加熱体100Aと同様の構成を採用することができ、支持体200Bは、支持体100Bと同様の構成を採用することができる。
【0037】
抵抗加熱体200Aは、座面部P21に配置された第1ヒータ210と、張り出し部P22に配置された2つの第2ヒータ220と、第1ヒータ210と第2ヒータ220を接続する接続部230とを有する。
【0038】
第1ヒータ210は、シートクッションS1の第1ヒータ110と同様に、複数箇所に分割され、その接続部が第2横溝43に入っているが、その構成は、シートクッションS1と同様であるので説明を省略する。
【0039】
第2ヒータ220は、張り出し部P22の形状に合わせて上下に長い形状を有する。
【0040】
接続部230は、第2ヒータ220の下端同士を接続し、左右に長く延びる左右接続部231と、左右接続部231の左右方向の中央部と、第1ヒータ210の下部とを接続する上下接続部232とを有する。接続部230は、シートバックパッドP2の区画部41を避けた位置を通って第1ヒータ210と第2ヒータ220を接続している。具体的には、接続部230は、左右接続部231が区画部41の下側を通って左右の第2ヒータ220を繋ぎ、上下接続部232が、2つの区画部41の間を通って第1ヒータ210の下部と左右接続部231を接続している。
【0041】
上下接続部232は、シートクッションS1と同様に、第1横溝42に形成された深溝部(図示省略)に入り込んでいる。
【0042】
以上のような構成の車両用シートSによれば、シートクッションS1において、第1ヒータ110と第2ヒータ120を接続する接続部130が、吊込み溝30のうちの区画部31を避けた位置、具体的には、区画部31の後側を通っていることで、簡易な構成でありながら面状発熱体100が傷みにくい。
【0043】
なお、接続部130は、前後接続部132が第1横溝32を渡っており、深溝部32Bに入り込んでいるが、この点は従来と同様である。第1横溝32は、区画部31に比較すると、乗員が膝をつくなどの大きな負荷が掛かる可能性が低いので、接続部130が傷む可能性は低い。従来のように、左右の第2ヒータ120と中央の第1ヒータ110を、区画部31を渡るようにして接続する場合には、第1ヒータ110と第2ヒータ120を接続するのに、深溝部を通す構造が2箇所余分に必要になるが、本実施形態では、この構造が不要であるので構成が簡易となる。
【0044】
また、シートバックS2においても、第1ヒータ210と第2ヒータ220を接続する接続部230が、吊込み溝40のうちの区画部41を避けた位置、具体的には、区画部41の下側を通っていることで、簡易な構成でありながら面状発熱体100が傷みにくい。
【0045】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る乗物用シートについて説明する。
第2実施形態においては、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の部分については、図面に第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
第2実施形態の車両用シートのシートクッションS1は、吊込み溝30の区画部331が前後方向に延びるとともに、シートクッションパッドP1の後端まで延びている。
【0046】
そして、面状発熱体400は、接続部430が、区画部331の前側で、シートクッションパッドP1の前側の側面39を通って第1ヒータ110と第2ヒータ120を接続している。具体的には、接続部430は、第2ヒータ120の前端から下方に延び、シートクッションパッドP1の前面の浅溝36を渡って2つの第2ヒータ120を左右方向に接続する左右接続部431と、第1ヒータ110の前端から第1ヒータ110と同じ幅で下方に延び、左右接続部431に繋がる上下接続部432とを有している。接続部430は、抵抗発熱体、すなわちヒータからなっている。
【0047】
このような構成のシートクッションS1を有する車両用シートによれば、シートクッションパッドP1の前側の側面39を通ることで、大きな負荷を受けずに簡素な構成で第1ヒータ110と第2ヒータ120を接続することができる。また、接続部430が、乗員のふくらはぎを温めることもでき、快適さを向上することができる。
【0048】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る乗物用シートについて説明する。
第3実施形態においては、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の部分については、図面に第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
第3実施形態の車両用シートのシートバックS2は、吊込み溝40の区画部541が上下方向に延びるとともに、シートバックパッドP2の下端まで延びている。また、吊込み溝40は、区画部541の上端同士を左右方向に繋ぐ横溝542を含む。
【0049】
そして、面状発熱体600は、接続部630が、区画部541の上側を通って第1ヒータ210と第2ヒータ220を接続している。具体的には、接続部630は、左右の第2ヒータ220を左右方向に接続する左右接続部631と、第1ヒータ210の上端と左右接続部631の左右方向中央部を接続する上下接続部632とを有している。上下接続部632は、横溝542を渡って左右接続部631と第1ヒータ210を接続している。
【0050】
このような構成のシートバックS2を有する車両用シートによれば、接続部630が、区画部541の上側を通って第1ヒータ210と第2ヒータ220を接続することで、荷重が掛かりにくい部分を通って第1ヒータ210と第2ヒータ220を接続することができる。
【0051】
以上に本発明に係る乗物用シートの実施形態としての車両用シートSについて説明したが、本発明の乗物用シートは、実施形態の車両用シートSに限定されるものではなく、その構造は適宜変更することができる。
【0052】
例えば、前記実施形態においては、乗用車の運転席に採用されるような独立タイプのシートを例示したが、乗用車の後部座席によく採用されるようなベンチタイプのシートに採用することもできる。
【0053】
前記実施形態においては、乗物用シートとして自動車の車両用シートを例示したが、鉄道車両の車両用シートであってもよく、船舶用や航空機用のシートとして構成することもできる。
【0054】
また、前記した各実施形態および各変形例で説明した構成は、適宜、組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
30 吊込み溝
31 区画部
39 側面
40 吊込み溝
41 区画部
100 面状発熱体
100A 抵抗加熱体
100B 支持体
110 第1ヒータ
120 第2ヒータ
130 接続部
200 面状発熱体
200A 抵抗加熱体
200B 支持体
210 第1ヒータ
220 第2ヒータ
230 接続部
331 区画部
K1,K2 表皮
P1 シートクッションパッド
P2 シートバックパッド
P11,P21 座面部
P12,P22 張り出し部
S 車両用シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9