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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】表面処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20230508BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C09K3/18 104
C09K3/18 103
C09D171/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022133886
(22)【出願日】2022-08-25
(65)【公開番号】P2023036547
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2021143178
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】片岡 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝史
(72)【発明者】
【氏名】高野 真也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 章広
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕介
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/213486(WO,A1)
【文献】特開2017-014452(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130973(WO,A1)
【文献】特開2019-116097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
C09D 1/00-201/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B05D 1/00- 7/26
C08G 5/00- 67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリエーテル基及びシリル基を有するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤であって、該表面処理剤中に含まれる、シリル基のSi原子に結合するSi結合基は、加水分解性基から選択される少なくとも2種の基を含み、
前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、下記式(1)又は(2):
【化1】
[式中:
F1 は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf -R -O -であり;
F2 は、-Rf -R -O -であり;
Rf は、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC 1-16 アルキル基であり;
Rf は、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC 1-6 アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC 12 -(OC 10 -(OC -(OC Fa -(OC -(OCF
[式中、R Fa は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのR Fa が水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
Si は、それぞれ独立して、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化2】
[式中:
11 は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
12 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n1は、(SiR 11 n1 12 3-n1 )単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
11 は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり;
13 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり;
14 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X 11 -SiR 11 n1 12 3-n1 であり;
15 は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
a1 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -SiR 21 p1 22 q1 23 r1 であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
21 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z 1’ -SiR 21’ p1’ 22’ q1’ 23’ r1’ であり;
22 は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p1、q1、及びr1の合計は、SiR 21 p1 22 q1 23 r1 単位において、3であり;
1’ は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
21’ は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z 1” -SiR 22” q1” 23” r1” であり;
22’ は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23’ は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p1’、q1’、及びr1’の合計は、SiR 21’ p1’ 22’ q1’ 23’ r1’ 単位において、3であり;
1” は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
22” は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23” は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1”及びr1”の合計は、SiR 22” q1” 23” r1” 単位において、3であり;
b1 は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
c1 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、1~3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
k1、l1及びm1の合計は、SiR a1 k1 b1 l1 c1 m1 単位において、3であり;
d1 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -CR 31 p2 32 q2 33 r2 であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
31 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z 2’ -CR 32’ q2’ 33’ r2’ であり;
32 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -SiR 34 n2 35 3-n2 であり;
33 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p2、q2、及びr2の合計は、SiR 31 p2 32 q2 33 r2 単位において、3であり;
2’ は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
32’ は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -SiR 34 n2 35 3-n2 であり;
33’ は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2’、及びr2’の合計は、SiR 32’ q2’ 33’ r2’ 単位において、3であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
34 は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
35 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
e1 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -SiR 34 n2 35 3-n2 であり;
f1 は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
k2、l2及びm2の合計は、CR d1 k2 e1 l2 f1 m2 単位において、3であり;
g1 及びR h1 は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z -SiR 11 n1 12 3-n1 、-Z -SiR a1 k1 b1 l1 c1 m1 、又は-Z -CR d1 k2 e1 l2 f1 m2 であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)及び(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。]
で表される基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;
前記加水分解性基は、それぞれ独立して、-OR 、-OR -OR 、-OCOR 、-O-N=CR 、-NR 、-NHR 、-NCO、及びハロゲン(式中、R は、置換又は非置換のC 1-10 アルキル基であり、R は、置換又は非置換のC 1-10 アルキレン基である。)からなる群から選択される。]
で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物である、
表面処理剤。
【請求項2】
前記Si結合基は、前記加水分解性基に加え、さらに水酸基を含む、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-16パーフルオロアルキル基であり、
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-6パーフルオロアルキレン基である、
請求項に記載の表面処理剤。
【請求項4】
Faは、フッ素原子である、請求項に記載の表面処理剤。
【請求項5】
は、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは、0又は1である。]
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化3】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項に記載の表面処理剤。
【請求項6】
α、β、及びγは、1である、請求項に記載の表面処理剤。
【請求項7】
前記式(S1)で表される基は、下記式(S1-b):
【化4】
[式中、R11、R12、R13、X11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
で表される基である、請求項に記載の表面処理剤。
【請求項8】
一分子中に加水分解性基から選択される2種以上のSi結合基を有するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項9】
加水分解性基から選択される異なるSi結合基をそれぞれ有する、2種以上のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項10】
前記表面処理剤中に存在する加水分解性基は、2種である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項11】
前記加水分解性基は、-OR及び-OR-ORである、請求項1項に記載の表面処理剤。
【請求項12】
前記表面処理剤中の各Si結合基の含有量は、全Si結合基に対して、10~90モル%である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項13】
含フッ素オイル、シリコーンオイル、及び触媒から選択される1種又はそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項14】
さらに溶媒を含む、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項15】
防汚性コーティング剤又は防水性コーティング剤として使用される、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。
【請求項17】
基材と、該基材上に、請求項1~15のいずれか1項に記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
【請求項18】
前記基材は、ガラス基材である、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
光学部材である、請求項17に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。フルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層(以下、「表面処理層」とも言う)は、いわゆる機能性薄膜として、例えばガラス、プラスチック、繊維、衛生用品、建築資材など種々多様な基材に施されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-218639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、優れた機能を有する表面処理層を与えることができるが、より高い摩耗耐久性を有する表面処理層が求められている。
【0005】
本開示は、摩耗耐久性がより高い表面処理層を与えることができる表面処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] フルオロポリエーテル基及びシリル基を有するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤であって、該表面処理剤中に含まれる、シリル基のSi原子に結合するSi結合基は、加水分解性基から選択される少なくとも2種の基を含む、表面処理剤。
[2] 前記Si結合基は、前記加水分解性基に加え、さらに水酸基を含む、上記[1]に記載の表面処理剤。
[3] 前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、下記式(1)又は(2):
【化1】
[式中:
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物である、上記[1]又は[2]に記載の表面処理剤。
[4] Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-16パーフルオロアルキル基であり、
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、C1-6パーフルオロアルキレン基である、
上記[3]に記載の表面処理剤。
[5] Rは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中、RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である、上記[3]又は[4]に記載の表面処理剤。
[6] RFaは、フッ素原子である、上記[5]に記載の表面処理剤。
[7] Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは、0又は1である。]
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化2】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[3]又は[4]に記載の表面処理剤。
[8] RSiは、それぞれ独立して、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化3】
[式中:
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり;
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり;
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1であり;
15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’であり;
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p1、q1、及びr1の合計は、SiR21 p122 q123 r1単位において、3であり;
1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”であり;
22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p1’、q1’、及びr1’の合計は、SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’単位において、3であり;
1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基であり;
22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1”及びr1”の合計は、SiR22” q1”23” r1”単位において、3であり;
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、1~3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
k1、l1及びm1の合計は、SiRa1 k1b1 l1c1 m1単位において、3であり;
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’であり;
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
p2、q2、及びr2の合計は、SiR31 p232 q233 r2単位において、3であり;
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2’、及びr2’の合計は、SiR32’ q2’33’ r2’単位において、3であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
e1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
f1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
k2、l2及びm2の合計は、CRd1 k2e1 l2f1 m2単位において、3であり;
g1及びRh1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、又は-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)及び(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。]
で表される基である、上記[3]~[7]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[9] α、β、及びγは、1である、上記[3]~[8]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[10] 前記式(S1)で表される基は、下記式(S1-b):
【化4】
[式中、R11、R12、R13、X11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
で表される基である、上記[8]又は[9]に記載の表面処理剤。
[11] 一分子中に、加水分解性基から選択される2種以上のSi結合基を有するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[12] 加水分解性基から選択されるそれぞれ異なるSi結合基を有する、2種以上のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[13] 前記加水分解性基は、それぞれ独立して、-OR、-OR-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、及びハロゲン(式中、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキル基であり、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキレン基である。)からなる群から選択される、上記[1]~[12]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[14] 前記表面処理剤中に存在する加水分解性基は、2種である、上記[1]~[13]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[15] 前記加水分解性基は、-OR及び-OR-ORである、上記[1]~[14]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[16] 前記表面処理剤中の各Si結合基の含有量は、全Si結合基に対して、10~90モル%である、上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[17] 含フッ素オイル、シリコーンオイル、及び触媒から選択される1種又はそれ以上の他の成分をさらに含有する、上記[1]~[16]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[18] さらに溶媒を含む、上記[1]~[17]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[19] 防汚性コーティング剤又は防水性コーティング剤として使用される、上記[1]~[18]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[20] 上記[1]~[19]のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。
[21] 基材と、該基材上に、上記[1]~[19]のいずれか1項に記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
[22] 前記基材は、ガラス基材である、上記[21]に記載の物品。
[23] 光学部材である、上記[21]又は[22]に記載の物品。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より高い摩耗耐久性を有する表面処理層を与えることができる表面処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、1価の有機基を意味する。また、「2~10価の有機基」とは、炭素を含有する2~10価の基を意味する。かかる2~10価の有機基としては、特に限定されないが、有機基からさらに1~9個の水素原子を脱離させた2~10価の基が挙げられる。例えば、2価の有機基としては、特に限定されるものではないが、有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0011】
本開示の表面処理剤は、フルオロポリエーテル基及びシリル基を有するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤であって、該表面処理材中に、加水分解性基から選択される少なくとも2種のSi結合基を含む。本開示の表面処理剤は、2種以上のSi結合基を含むことにより、高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0012】
本開示の表面処理剤は、Si結合基として、さらに水酸基を含み得る。
【0013】
(フルオロポリエーテル基含有シラン化合物)
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、フルオロポリエーテル基及びシリル基を有する。
【0014】
上記シリル基は、加水分解性基から選択されるSi結合基を有し得る。かかる加水分解性基から選択されるSi結合基は、基材との反応部位を与える。
【0015】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、下記式(1)又は(2):
【化5】
[式中:
F1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-であり;
F2は、-Rf -R-O-であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり;
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり;
pは、0又は1であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1であり;
Siは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
αは、1~9の整数であり;
βは、1~9の整数であり;
γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物である。
【0016】
上記式(1)において、RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf-R-O-である。
【0017】
上記式(2)において、RF2は、-Rf -R-O-である。
【0018】
上記式において、Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0019】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0020】
上記Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCFH-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0021】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、又は-CFCFCFである。
【0022】
上記式において、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0023】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0024】
上記Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0025】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF-、-CFCF-、又は-CFCFCF-である。
【0026】
上記式において、pは、0又は1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0027】
上記式において、qは、各出現においてそれぞれ独立して、0又は1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0028】
上記式(1)及び(2)において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基である。
【0029】
は、好ましくは、下記:
-(OCh1Fa 2h1h3-(OCh2Fa 2h2-2h4
[式中:
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
h1は、1~6の整数であり、
h2は、4~8の整数であり、
h3は、0以上の整数であり、
h4は、0以上の整数であり、
だたし、h3とh4の合成は、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上であり、h3及びh4を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]
で表される基を含み得る。
【0030】
一の態様において、Rは、直鎖状、又は分枝鎖状であり得る。Rは、好ましくは、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上である。a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である。
【0031】
Faは、好ましくは、水素原子又はフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。
【0032】
a、b、c、d、e及びfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0033】
a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下又は30以下であってもよい。
【0034】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよい。例えば、-(OC12)-は、-(OCFCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC10)-は、-(OCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-及び-(OCFCF(C))-のいずれであってもよい。-(OC)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-及び-(OCFCF(CF))-のいずれであってもよい。-(OC)-は、-(OCFCF)-及び-(OCF(CF))-のいずれであってもよい。
【0035】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩耗耐久性等を向上させることができる。
【0036】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0037】
一の態様において、Rは、環構造を含み得る。
【0038】
上記環構造は、下記三員環、四員環、五員環、又は六員環であり得る。
【化6】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0039】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、又は六員環、より好ましくは四員環、又は六員環であり得る。
【0040】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【化7】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0041】
一の態様において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは0又は1である。];
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
添字c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化8】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
のいずれかで表される基である。
【0042】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。一の態様において、eは、1である。別の態様において、eは0である。上記式(f1)において-(OC-は、好ましくは、-(OCFCFCF-又は-(OCF(CF)CF-で表される基であり、より好ましくは、-(OCFCFCF-で表される基である。
【0043】
上記式(f2)において、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは5~200、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCFCFCFCF-(OCFCFCF-(OCFCF-(OCF-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC-(OCF-で表される基であってもよい。
【0044】
上記式(f3)において、Rは、好ましくは、OCである。上記(f3)において、Rは、好ましくは、OC、OC及びOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC及びOCから選択される基である。OC、OC及びOCから独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、及び-OCOCOC-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC、OC、OC、OC10及びOC12は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC-OC-又は-(OC-OC-である。
【0045】
上記式(f4)において、R、R及びgは、上記式(f3)の記載と同意義であり、同様の態様を有する。R6’、R7’及びg’は、それぞれ、上記式(f3)に記載のR、R及びgと同意義であり、同様の態様を有する。Rは、好ましくは、
【化9】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【化10】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0046】
上記式(f5)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0047】
上記式(f6)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0048】
一の態様において、上記Rは、上記式(f1)で表される基である。
【0049】
一の態様において、上記Rは、上記式(f2)で表される基である。
【0050】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)又は(f4)で表される基である。
【0051】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)で表される基である。
【0052】
一の態様において、上記Rは、上記式(f4)で表される基である。
【0053】
一の態様において、上記Rは、上記式(f5)で表される基である。
【0054】
一の態様において、上記Rは、上記式(f6)で表される基である。
【0055】
上記Rにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、この化合物から得られる表面処理層の滑り性、摩耗耐久性及び耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)がより向上する。e/f比がより小さいほど、表面処理層の滑り性及び摩耗耐久性はより向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0056】
一の態様において、上記e/f比は、好ましくは0.2~0.95であり、より好ましくは0.2~0.9である。
【0057】
一の態様において、耐熱性の観点から、上記e/f比は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.0~2.0である。
【0058】
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RF1及びRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0059】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0060】
別の態様において、RF1及びRF2部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0061】
上記式(1)及び(2)において、RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり、少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0062】
好ましい態様において、RSiは、水酸基又及び加水分解性基から選択されるSi結合基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0063】
好ましい態様において、RSiは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)、又は(S5):
【化11】
[式中:
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は二価の有機基であり;
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1であり;
15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数であり;
a1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は二価の有機基であり;
21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’であり;
22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は二価の有機基であり;
21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”であり;
22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は二価の有機基であり;
22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
b1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
c1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は二価の有機基であり;
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’であり;
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は二価の有機基であり;
32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は二価の有機基であり;
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
e1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり;
f1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
g1及びRh1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、又は-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2であり;
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は二価の有機基であり;
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)及び(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。]
で表される基である。
【0064】
上記式中、R11は、Si結合基であり、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0065】
上記加水分解性基とは、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。
【0066】
11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0067】
上記加水分解性基は、好ましくは、-OR、-OR-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲンである。Rは、置換又は非置換のC1-10アルキル基(好ましくは、C1-4アルキル基)であり、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキレン基(好ましくは、C1-4アルキレン基)である。
【0068】
11は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OR-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(式中、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキル基であり、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキレン基である。)であり、より好ましくは-OR又は-OR-ORである。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。Rとしては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-などの非置換アルキレン基が挙げられる。
【0069】
上記式中、R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0070】
12において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0071】
上記式中、n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S1)又は(S2)で表される基である場合、式(1)及び式(2)の末端のRSi部分(以下、単に式(1)及び式(2)の「末端部分」ともいう)において、n1が1~3である(SiR11 n112 3-n1)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn1が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0072】
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0073】
上記式中、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくは-R28-O-R29-(式中、R28及びR29は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、xは0又は1である。)である。かかるC1-20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1-20アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基である。
【0074】
一の態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキレン-又は-O-C1-6アルキレン-である。
【0075】
好ましい態様において、X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合又は直鎖のC1-6アルキレン基であり、好ましくは単結合又は直鎖のC1-3アルキレン基、より好ましくは単結合又は直鎖のC1-2アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖のC1-2アルキレン基である。
【0076】
上記式中、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基である。かかるC1-20アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0077】
好ましい態様において、R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は直鎖のC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子又は直鎖のC1-3アルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0078】
上記式中、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2以上の整数である。
【0079】
好ましい態様において、tは、各出現においてそれぞれ独立して、2~10の整数、好ましくは2~6の整数である。
【0080】
上記式中、R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。
【0081】
上記式中、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0082】
一の態様において、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0083】
好ましい態様において、R15は、単結合である。
【0084】
一の態様において、式(S1)は、下記式(S1-a)である。
【化12】
[式中、
11、R12、R13、X11、及びn1は、上記式(S1)の記載と同意義であり;
t1及びt2は、各出現においてそれぞれ独立して、1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは2~10の整数、例えば1~5の整数又は2~5の整数であり;
t1及びt2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0085】
好ましい態様において、式(S1)は、下記式(S1-b)である。
【化13】
[式中、R11、R12、R13、X11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
【0086】
上記式中、Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1である。
【0087】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR21 p122 q123 r1)に結合する。
【0088】
好ましい態様において、Zは、2価の有機基である。
【0089】
好ましい態様において、Zは、Zが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0090】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1-O-(CHz2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3-フェニレン-(CHz4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0091】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz3-フェニレン-(CHz4-、好ましくは-フェニレン-(CHz4-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0092】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0093】
上記R21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’である。
【0094】
上記Z1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1’として記載する構造は、右側が(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)に結合する。
【0095】
好ましい態様において、Z1’は、2価の有機基である。
【0096】
好ましい態様において、Z1’は、Z1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1’-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0097】
上記Z1’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1’-O-(CHz2’-(式中、z1’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-(式中、z3’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0098】
好ましい態様において、Z1’は、C1-6アルキレン基又は-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-、好ましくは-フェニレン-(CHz4’-である。Z1’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0099】
別の好ましい態様において、上記Z1’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CHCH-であり得る。
【0100】
上記R21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”である。
【0101】
上記Z1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1”として記載する構造は、右側が(SiR22” q1”23” r1”)に結合する。
【0102】
好ましい態様において、Z1”は、2価の有機基である。
【0103】
好ましい態様において、Z1”は、Z1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1”-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0104】
上記Z1”は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1”-O-(CHz2”-(式中、z1”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-(式中、z3”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0105】
好ましい態様において、Z1”は、C1-6アルキレン基又は-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-、好ましくは-フェニレン-(CHz4”-である。Z1”がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0106】
別の好ましい態様において、上記Z1”は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1”は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CHCH-であり得る。
【0107】
上記R22”は、Si結合基であり、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0108】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0109】
上記R22”は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OR-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(式中、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキル基であり、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキレン基である。)であり、より好ましくは-OR又は-OR-ORである。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。Rとしては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-などの非置換アルキレン基が挙げられる。
【0110】
上記R23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0111】
上記R23”において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0112】
上記q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q1”とr1”の合計は、(SiR22” q1”23” r1”)単位において、3である。
【0113】
上記q1”は、(SiR22” q1”23” r1”)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0114】
上記R22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0115】
22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0116】
22’は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OR-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(式中、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキル基であり、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキレン基である。)であり、より好ましくは-OR又は-OR-ORである。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。Rとしては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-などの非置換アルキレン基が挙げられる。
【0117】
上記R23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0118】
23’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0119】
上記p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p’、q1’とr1’の合計は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位において、3である。
【0120】
一の態様において、p1’は、0である。
【0121】
一の態様において、p1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0122】
一の態様において、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0123】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0124】
上記R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0125】
22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0126】
22は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OR-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(式中、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキル基であり、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキレン基である。)であり、より好ましくは-OR又は-OR-ORである。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。Rとしては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-などの非置換アルキレン基が挙げられる。
【0127】
上記R23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0128】
23において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0129】
上記p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p1、q1とr1の合計は、(SiR21 p122 q123 r1)単位において、3である。
【0130】
一の態様において、p1は、0である。
【0131】
一の態様において、p1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0132】
一の態様において、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0133】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0134】
上記式中、Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0135】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0136】
上記Rb1は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OR-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(式中、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキル基であり、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキレン基である。)であり、より好ましくは-OR又は-OR-ORである。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。Rとしては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-などの非置換アルキレン基が挙げられる。
【0137】
上記式中、Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0138】
上記Rc1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0139】
上記k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位において、3である。
【0140】
一の態様において、k1は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。
【0141】
上記式(1)及び(2)において、RSiが式(S3)で表される基である場合、好ましくは、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0142】
好ましい態様において、式(S3)で表される基は、-Z-SiR22 q123 r1(式中、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1は、0~2の整数である。)、-Z1’-SiR22’ q1’23’ r1’(式中、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1’は、0~2の整数である。)、又は-Z1”-SiR22” q1”23” r1”(式中、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1”は、0~2の整数である。)のいずれか1つを有する。Z、Z1’、Z1”、R22、R23、R22’、R23’、R22”、及びR23”は、上記と同意義である。
【0143】
好ましい態様において、式(S3)において、R21’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21’において、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0144】
好ましい態様において、式(S3)において、R21が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21において、p1’は、0であり、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0145】
好ましい態様において、式(S3)において、Ra1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、p1は、0であり、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0146】
好ましい態様において、式(S3)において、k1は2又は3、好ましくは3であり、p1は0であり、q1は2又は3、好ましくは3である。
【0147】
d1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2である。
【0148】
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(CR31 p232 q233 r2)に結合する。
【0149】
好ましい態様において、Zは、2価の有機基である。
【0150】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5-O-(CHz6-(式中、z5は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7-フェニレン-(CHz8-(式中、z7は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0151】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7-フェニレン-(CHz8-、好ましくは-フェニレン-(CHz8-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0152】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0153】
31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’である。
【0154】
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2’として記載する構造は、右側が(CR32’ q2’33’ r2’)に結合する。
【0155】
上記Z2’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5’-O-(CHz6’-(式中、z5’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-(式中、z7’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0156】
好ましい態様において、Z2’は、C1-6アルキレン基又は-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-、好ましくは-フェニレン-(CHz8’-である。Z2’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0157】
別の好ましい態様において、上記Z2’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CHCH-であり得る。
【0158】
上記R32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。
【0159】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR34 n235 3-n2)に結合する。
【0160】
一の態様において、Zは酸素原子である。
【0161】
一の態様において、Zは2価の有機基である。
【0162】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5”-O-(CHz6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0163】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-、好ましくは-フェニレン-(CHz8”-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0164】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0165】
上記R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0166】
34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、加水分解性基である。
【0167】
34は、好ましくは、各出現においてそれぞれ独立して、-OR、-OR-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、又はハロゲン(式中、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキル基であり、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキレン基である。)であり、より好ましくは-OR又は-OR-ORである。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rは、メチル基であり、別の態様において、Rは、エチル基である。Rとしては、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-などの非置換アルキレン基が挙げられる。
【0168】
上記R35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0169】
上記R35において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0170】
上記式中、n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S4)で表される基である場合、式(1)及び式(2)の末端部分において、n2が1~3である(SiR34 n235 3-n2)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn2が同時に0になることはない。換言すれば、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0171】
n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0172】
上記R33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0173】
上記R33’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(C2st1-(O-C2st2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0174】
一の態様において、R33’は、水酸基である。
【0175】
別の態様において、R33’は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0176】
上記q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q2’とr2’の合計は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位において、3である。
【0177】
q2’は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0178】
32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0179】
上記R33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0180】
上記R33において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(C2st1-(O-C2st2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0181】
一の態様において、R33は、水酸基である。
【0182】
別の態様において、R33は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0183】
上記p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p2、q2及びr2の合計は、(CR31 p232 q233 r2)単位において、3である。
【0184】
一の態様において、p2は、0である。
【0185】
一の態様において、p2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p2は、3である。
【0186】
一の態様において、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0187】
一の態様において、p2は0であり、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0188】
上記Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0189】
上記Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0190】
上記Rf1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(C2st1-(O-C2st2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0191】
一の態様において、Rf1は、水酸基である。
【0192】
別の態様において、Rf1は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0193】
上記k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり、m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k2、l2及びm2の合計は、(CRd1 k2e1 l2f1 m2)単位において、3である。
【0194】
上記式(1)及び(2)において、RSiが式(S4)で表される基である場合、好ましくは、式(1)及び式(2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0195】
一の態様において、RSiが式(S4)で表される基である場合、n2が1~3、好ましくは2又は3、より好ましくは3である(SiR34 n235 3-n2)単位は、式(1)及び式(2)の各末端部分において、2個以上、例えば2~27個、好ましくは2~9個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~3個、特に好ましくは3個存在する。
【0196】
好ましい態様において、式(S4)において、R32’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32’において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0197】
好ましい態様において、式(S4)において、R32が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0198】
好ましい態様において、式(S4)において、Re1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0199】
好ましい態様において、式(S4)において、l2、q2及びq2’の合計は、2以上である。
【0200】
好ましい態様において、式(S4)において、k2は0であり、l2は2又は3、好ましくは3であり、n2は、2又は3、好ましくは3である。
【0201】
上記Rg1及びRh1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2である。ここに、R11、R12、Ra1、Rb2、Rc1、Rd1、Re1、Rf1、n1、k1、l1、m1、k2、l2、及びm2は、上記と同意義である。
【0202】
好ましい態様において、Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1である。
【0203】
上記Zは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR11 n112 3-n1)に結合する。
【0204】
一の態様において、Zは酸素原子である。
【0205】
一の態様において、Zは2価の有機基である。
【0206】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5”-O-(CHz6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0207】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-、好ましくは-フェニレン-(CHz8”-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0208】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0209】
一の態様において、RSiは、式(S2)、(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、高い表面滑り性を有する表面処理層を形成することができる。
【0210】
一の態様において、RSiは、式(S1)、(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に複数の加水分解性基を有することから、基材に強く密着し、高い摩耗耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0211】
一の態様において、RSiは、式(S1)、(S3)又は(S4)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に複数の加水分解性基を有することから、基材に強く密着し、高い摩耗耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0212】
一の態様において、RSiは、式(S3)又は(S4)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に、一のSi原子又はC原子から分岐した複数の加水分解性基を有し得ることから、さらに高い摩耗耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0213】
一の態様において、RSiは、式(S1)で表される基である。
【0214】
一の態様において、RSiは、式(S2)で表される基である。
【0215】
一の態様において、RSiは、式(S3)で表される基である。
【0216】
一の態様において、RSiは、式(S4)で表される基である。
【0217】
一の態様において、RSiは、式(S5)で表される基である。
【0218】
上記式(1)及び(2)において、Xは、主に撥水性及び表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部(RF1及びRF2)と基材との結合能を提供する部(RSi)とを連結するリンカーと解される。従って、当該Xは、式(1)及び(2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であってもよく、いずれの基であってもよい。
【0219】
上記式(1)において、αは1~9の整数であり、βは1~9の整数である。これらα及びβは、Xの価数に応じて変化し得る。α及びβの和は、Xの価数と同じである。例えば、Xが10価の有機基である場合、α及びβの和は10であり、例えばαが9かつβが1、αが5かつβが5、又はαが1かつβが9となり得る。また、Xが2価の有機基である場合、α及びβは1である。
【0220】
上記式(2)において、γは1~9の整数である。γは、Xの価数に応じて変化し得る。即ち、γは、Xの価数から1を引いた値である。
【0221】
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の有機基であり;
【0222】
上記Xにおける2~10価の有機基は、好ましくは2~8価の有機基である。一の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは2~4価の有機基であり、より好ましくは2価の有機基である。別の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは3~8価の有機基、より好ましくは3~6価の有機基である。
【0223】
一の態様において、Xは、単結合又は2価の有機基であり、αは1であり、βは1である。
【0224】
一の態様において、Xは、単結合又は2価の有機基であり、γは1である。
【0225】
一の態様において、Xは3~6価の有機基であり、αは1であり、βは2~5である。
【0226】
一の態様において、Xは3~6価の有機基であり、γは2~5である。
【0227】
一の態様において、Xは、3価の有機基であり、αは1であり、βは2である。
【0228】
一の態様において、Xは、3価の有機基であり、γは2である。
【0229】
が、単結合又は2価の有機基である場合、式(1)及び(2)は、下記式(1’)及び(2’)で表される。
【化14】
【0230】
一の態様において、Xは単結合である。
【0231】
別の態様において、Xは2価の有機基である。
【0232】
一の態様において、Xとしては、例えば、単結合又は下記式:
-(R51p5-(X51q5
[式中:
51は、単結合、-(CHs5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHs5-であり、
s5は、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数、さらにより好ましくは1又は2であり、
51は、-(X52l5-を表し、
52は、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R53-、-(Si(R53O)m5-Si(R53-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-及び-(CHn5-からなる群から選択される基を表し、
53は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基を表し、好ましくはフェニル基又はC1-6アルキル基であり、より好ましくはメチル基であり、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、
m5は、各出現において、それぞれ独立して、1~100の整数、好ましくは1~20の整数であり、
n5は、各出現において、それぞれ独立して、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
l5は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の有機基が挙げられる。ここに、X(典型的にはXの水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、Xは、これらの基により置換されていない。
【0233】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、-(R51p5-(X51q5-R52-である。R52は、単結合、-(CHt5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHt5-である。t5は、1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。ここに、R52(典型的にはR52の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、R56は、これらの基により置換されていない。
【0234】
好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-R51-X53-R52-、又は
-X54-R
[式中、R51及びR52は、上記と同意義であり、
53は、
-O-、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-Si(R53-、
-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(R53-O-Si(R53-CHCH-Si(R53-O-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(OCHOSi(OCH-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R53
(式中、R53、R54及びm5は、上記と同意義であり、
u5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。)を表し、
54は、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R54O)m5-Si(R54-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R54
(式中、各記号は、上記と同意義である。)
を表す。]
であり得る。
【0235】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、
-(CHs5-X53-(CHt5
-X54-、又は
-X54-(CHt5
[式中、X53、X54、s5及びt5は、上記と同意義である。]
である。
【0236】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-(CHt5-、又は
-X54-(CHt5
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0237】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、又は
-(CHs5-X53-(CHt5
[式中、
53は、-O-、-CONR54-、又は-O-CONR54-であり、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0238】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
-(CHs5-O-(CHt5
-CONR54-(CHt5
[式中、
54は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0239】
一の態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-O-(CHt5-、
-(CHs5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、
-(CHs5-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、又は
-(CHs5-O-(CHt5-Si(R53-(CHu5-Si(R53-(Cv2v)-
[式中、R53、m5、s5、t5及びu5は、上記と同意義であり、v5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。]
である。
【0240】
上記式中、-(Cv2v)-は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、例えば、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)-、-CH(CH)CH-であり得る。
【0241】
上記Xは、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基(好ましくは、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。一の態様において、Xは、非置換である。
【0242】
尚、上記Xは、各式の左側がRF1又はRF2に結合し、右側がRSiに結合する。
【0243】
一の態様において、Xは、それぞれ独立して、-O-C1-6アルキレン基以外であり得る。
【0244】
別の態様において、Xとしては、例えば下記の基が挙げられる:
【化15】
【化16】
[式中、R41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、又はC1-6アルコキシ基、好ましくはメチル基であり;
Dは、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、及び
【化17】
(式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基又はC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。)
から選択される基であり、
Eは、-(CH-(nは2~6の整数)であり、
Dは、分子主鎖のRF1又はRF2に結合し、Eは、RSiに結合する。]
【0245】
上記Xの具体的な例としては、例えば:
単結合、
-CHOCH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-CHOCFCHFOCF-、
-CHOCFCHFOCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF-、
-CHOCHCFCFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-CH-、
-CHOCH(CHCHSi(OCHOSi(OCH(CHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-CO-、
-CONH-、
-CONH-CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-S-(CH-、
-(CHS(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-CH-、
-OCH-、
-O(CH-、
-OCFHCF-、
【化18】

などが挙げられる。
【0246】
さらに別の態様において、Xは、それぞれ独立して、式:-(R16x1-(CFR17y1-(CHz1-で表される基である。式中、x1、y1及びz1は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、x1、y1及びz1の和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0247】
上記式中、R16は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、-NR18-(式中、R18は、水素原子又は有機基を表す)又は2価の有機基である。好ましくは、R18は、酸素原子又は2価の極性基である。
【0248】
上記「2価の極性基」としては、特に限定されないが、-C(O)-、-C(=NR19)-、及び-C(O)NR19-(これらの式中、R19は、水素原子又は低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1~6のアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピルであり、これらは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0249】
上記式中、R17は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は低級フルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。当該「低級フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0250】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【化19】
[式中、
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、又はC1-6アルコキシ基好ましくはメチル基であり;
各X基において、Tのうち任意のいくつかは、分子主鎖のRF1又はRF2に結合する以下の基:
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、又は
【化20】
[式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基又はC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。]
であり、別のTのいくつかは、分子主鎖のRSiに結合し、存在する場合、残りのTは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、C1-6アルコキシ基又はラジカル捕捉基又は紫外線吸収基である。
【0251】
ラジカル捕捉基は、光照射で生じるラジカルを捕捉できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、安息香酸エステル類、サリチル酸フェニル類、クロトン酸類、マロン酸エステル類、オルガノアクリレート類、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類、又はトリアジン類の残基が挙げられる。
【0252】
紫外線吸収基は、紫外線を吸収できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾフェノン類、置換及び未置換安息香酸もしくはサリチル酸化合物のエステル類、アクリレート又はアルコキシシンナメート類、オキサミド類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、ベンゾキサゾール類の残基が挙げられる。
【0253】
好ましい態様において、好ましいラジカル捕捉基又は紫外線吸収基としては、
【化21】
が挙げられる。
【0254】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0255】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【化22】
[式中、R25、R26及びR27は、それぞれ独立して2~6価の有機基であり、
25は、少なくとも1つのRF1に結合し、R26及びR27は、それぞれ、少なくとも1つのRSiに結合する。]
【0256】
一の態様において、上記R25は、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、C5-20アリーレン基、-R57-X58-R59-、-X58-R59-、又は-R57-X58-である。上記、R57及びR59は、それぞれ独立して、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、又はC5-20アリーレン基である。上記X58は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-又は-COO-である。
【0257】
一の態様において、上記R26及びR27は、それぞれ独立して、炭化水素、又は炭化水素の端又は主鎖中にN、O及びSから選択される少なくとも1つの原子を有する基であり、好ましくは、C1-6アルキル基、-R36-R37-R36-、-R36-CHR38 -などが挙げられる。ここに、R36は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1~6のアルキル基、好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。R37は、N、O又はSであり、好ましくはN又はOである。R38は、-R45-R46-R45-、-R46-R45-又は-R45-R46-である。ここに、R45は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基である。R46は、N、O又はSであり、好ましくはOである。
【0258】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の有機基であり得る。
【0259】
上記式(1)又は式(2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、特に限定されるものではないが、5×10~1×10の平均分子量を有し得る。かかる範囲のなかでも、2,000~32,000、より好ましくは2,500~12,000の平均分子量を有することが、摩耗耐久性の観点から好ましい。なお、かかる「平均分子量」は、数平均分子量を言い、「平均分子量」は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0260】
一の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、式(1)で表される化合物である。
【0261】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、式(2)で表される化合物である。
【0262】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物である。
【0263】
本開示の表面処理剤中、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対して、式(2)で表される化合物が、好ましくは0.1モル%以上35モル%以下である。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは0.1モル%、より好ましくは0.2モル%、さらに好ましくは0.5モル%、さらにより好ましくは1モル%、特に好ましくは2モル%、特別には5モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは35モル%、より好ましくは30モル%、さらに好ましくは20モル%、さらにより好ましくは15モル%又は10モル%であり得る。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計に対する式(2)で表される化合物は、好ましくは0.1モル%以上30モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上20モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以上10モル%以下、さらにより好ましくは0.5モル%以上10モル%以下、特に好ましくは1モル%以上10モル%以下、例えば2モル%以上10モル%以下又は5モル%以上10モル%以下である。式(2)で表される化合物をかかる範囲とすることにより、より摩耗耐久性を向上させることができる。
【0264】
上記の式(1)又は(2)で表される化合物は、例えば、上記特許文献1に記載の方法により得ることができる。
【0265】
上記の式(1)又は(2)で表される化合物の含有量は、表面処理剤全体に対して、好ましくは0.1~50.0質量%、より好ましくは1.0~30.0質量%、さらに好ましくは5.0~25.0質量%、特に好ましくは10.0~20.0質量%であり得る。上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の含有量を上記の範囲にすることにより、より高い撥水撥油性を得ることができる。
【0266】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、一分子中に、加水分解性基から選択される2種以上のSi結合基を有するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む。
【0267】
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物が、一分子中に加水分解性基から選択される2種以上のSi結合基を有する場合、各種の加水分解性基は、同じSi原子に結合していても、別のSi原子に結合していてもよい。例えば、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物が、加水分解性基を有するシリル基として-SiR11 を2つ含む場合、-SiR11 におけるR11が2種以上であってもよく、あるいは、各-SiR11 における3つのR11はすべて同じ基であって、2つのシリル基間でR11が異なっていてもよい。好ましい態様において、各種の加水分解性基は、同じSi原子に結合する。
【0268】
上記態様において、好ましくは、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、-SiR6162 (R61は、加水分解性基であり、R62は、R61とは別の加水分解性基である。)を有する。
【0269】
別の態様において、本開示の表面処理剤は、加水分解性基から選択される異なるSi結合基をそれぞれ有する、2種以上のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む。即ち、本開示の表面処理剤は、ある加水分解性基であるSi結合基を有するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物と、別の加水分解性基であるSi結合基を有するフルオロポリエーテル基含有シラン化合物とを含む。かかる態様において、1種のフルオロポリエーテル基含有化合物に存在する加水分解性基は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。好ましい態様において、1種のフルオロポリエーテル基含有化合物に存在する加水分解性基は、1種のみである。
【0270】
上記態様において、好ましくは、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、各化合物において独立して、-SiR61 (R61は、同一の加水分解性基である。)を有する。
【0271】
一の態様において、上記加水分解性基は、共役塩基を放出しない基である。
【0272】
上記加水分解性基は、それぞれ独立して、好ましくは、-OR、-OR-OR、-OCOR、-O-N=CR 、-NR 、-NHR、-NCO、及びハロゲンからなる群、好ましくは-OR、-OR-OR、及びハロゲンからなる群から選択される。Rは、置換又は非置換のC1-10アルキル基であり、Rは、置換又は非置換のC1-10アルキレン基である。
【0273】
一の態様において、上記C1-10アルキル基は、非置換である。
【0274】
一の態様において、上記C1-10アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0275】
上記C1-10アルキル基は、好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-4アルキル基である。
【0276】
上記C1-10アルキル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、又はイソブチル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0277】
一の態様において、上記C1-10アルキレン基は、非置換である。
【0278】
一の態様において、上記C1-10アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0279】
上記C1-10アルキレン基は、好ましくはC1-6アルキレン基、より好ましくはC1-4アルキレン基である。
【0280】
上記C1-10アルキル基は、好ましくは、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、又は-CHCHCHCH-である。
【0281】
好ましい態様において、本開示の表面処理剤中に存在する加水分解性基は、2種である。
【0282】
さらに好ましい態様において、上記2種の加水分解性基は、-OR及び-OR-ORである。
【0283】
一の態様において、上記2種の加水分解性基は、1つのフルオロポリエーテル基含有シラン化合物中に存在する。一の態様において、上記2種の加水分解性基は、1つのシリル基中に存在する。
【0284】
別の態様において、上記2種の加水分解性基は、それぞれ別のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物中に存在する。
【0285】
本開示の表面処理剤中の各Si結合基の含有量は、全Si結合基に対して、好ましくは1~99モル%、より好ましくは2~98モル%である。一の態様において、本開示の表面処理剤中の各加水分解性基の含有量は、全Si結合基に対して、好ましくは1~99モル%、より好ましくは2~98モル%である。
【0286】
加水分解性基が2種である場合、本開示の表面処理剤中の一方の加水分解性基の含有量は、全Si結合基に対して、好ましくは0.1~50モル%、より好ましくは1~30モル%、より好ましくは2~20モル%である。
【0287】
加水分解性基が-OR及び-OR-ORである場合、本開示の表面処理剤中の-OR-ORの含有量は、全Si結合基に対して、好ましくは0.1~50モル%、より好ましくは1~30モル%、より好ましくは2~20モル%である。
【0288】
本開示の表面処理剤は、溶媒、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、まとめて「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、アルコール類、相溶化剤、触媒、界面活性剤、重合禁止剤、増感剤等を含み得る。
【0289】
上記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、ゼオローラH、HFE7100、HFE7200、HFE7300、CFCHOH、CFCFCHOH、(CFCHOH等のフッ素含有溶媒等が挙げられる。あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。
【0290】
含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf-(OCa’-(OCb’-(OCc’-(OCFd’-Rf ・・・(3)
式中、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1-16パーフルオロアルキル基)、フッ素原子又は水素原子を表し、Rf及びRfは、より好ましくは、それぞれ独立して、C1-3パーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’及びd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’及びd’の和は少なくとも1、好ましくは1~300、より好ましくは20~300である。添字a’、b’、c’又はd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-及び(OCFCF(C))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-及び(OCFCF(CF))-のいずれであってもよく、好ましくは-(OCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCF)-及び(OCF(CF))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCF)-である。
【0291】
上記一般式(3)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(3a)及び(3b)のいずれかで示される化合物(1種又は2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf-(OCFCFCFb”-Rf ・・・(3a)
Rf-(OCFCFCFCFa”-(OCFCFCFb”-(OCFCFc”-(OCFd”-Rf ・・・(3b)
これら式中、Rf及びRfは上記の通りであり;式(3a)において、b”は1以上100以下の整数であり;式(3b)において、a”及びb”は、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、c”及びd”はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a”、b”、c”、d”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0292】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf-F(式中、RfはC5-16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。
【0293】
上記含フッ素オイルは、500~10000の平均分子量を有していてよい。含フッ素オイルの分子量は、GPCを用いて測定し得る。
【0294】
含フッ素オイルは、本開示の表面処理剤に対して、例えば0~50質量%、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~5質量%含まれ得る。一の態様において、本開示の表面処理剤は、含フッ素オイルを実質的に含まない。含フッ素オイルを実質的に含まないとは、含フッ素オイルを全く含まない、又は極微量の含フッ素オイルを含んでいてもよいことを意味する。
【0295】
一の態様において、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を大きくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、特に真空蒸着法により表面処理層を形成する場合において、より優れた摩耗耐久性と表面滑り性を得ることができる。
【0296】
一の態様において、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を小さくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、かかる化合物から得られる表面処理層の透明性の低下を抑制しつつ、高い摩耗耐久性及び高い表面滑り性を有する硬化物を形成できる。
【0297】
含フッ素オイルは、本開示の表面処理剤によって形成された層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0298】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状又は環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0299】
本開示の表面処理剤中、かかるシリコーンオイルは、上記本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0~300質量部、好ましくは50~200質量部で含まれ得る。
【0300】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0301】
上記アルコール類としては、例えば1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~10のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、tert-ブタノール、メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類、CFCHOH、CFCFCHOH、(CFCHOHが挙げられる。これらのアルコールは、単独であっても、または2種以上であってもよい。一の態様において、アルコールは2種以上、例えば2~5種であり得る。これらのアルコール類を表面処理剤に添加することにより、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物と溶媒の相溶性を改善させる。また、Si結合基の一部とアルコール由来のアルコキシ基が置換することにより、表面処理剤中のSi結合基の種類を増やすことができる。
【0302】
上記相溶化剤としては、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール又は2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール等のフッ素置換アルコール、好ましくは末端がCFHであるフッ素置換アルコール、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のフッ素置換アリール、好ましくはフッ素置換ベンゼン等が挙げられる。
【0303】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等))、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0304】
触媒は、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の加水分解及び脱水縮合を促進し、本開示の表面処理剤により形成される層の形成を促進する。
【0305】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0306】
本開示の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0307】
本開示の表面処理剤は、上記した成分に加え、不純物として、例えばPt、Rh、Ru、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、トリフェニルホスフィン、NaCl、KCl、シランの縮合物などを微量含み得る。
【0308】
以下、本開示の物品について説明する。
【0309】
本開示の物品は、基材と、該基材表面に本開示の表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む。
【0310】
本開示において使用可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然又は合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、衛生用品、任意の適切な材料で構成され得る。
【0311】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラス又は透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(又は膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層及び多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、Ta,Nb、HfO、Si、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどが挙げられる。これらの無機物は、単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO及び/又はSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0312】
上記基材の形状は、特に限定されず、例えば、板状、フィルム、その他の形態であってよい。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0313】
一の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜又は熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入又は増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素-炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア-ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0314】
別の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi-H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0315】
好ましい態様において、上記基材はガラスである。かかるガラスとしては、サファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、及び化学結合したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。
【0316】
本開示の物品は、上記基材の表面に、上記の本開示の表面処理剤の層を形成し、この層を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の表面処理剤から層を形成することにより製造することができる。
【0317】
本開示の表面処理剤の層形成は、上記表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法及び乾燥被覆法を使用できる。
【0318】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング及び類似の方法が挙げられる。
【0319】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVD及び類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビーム及び類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ-CVD、光学CVD、熱CVD及び類似の方法が挙げられる。
【0320】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0321】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本開示の組成物の安定性及び溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5~12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン及びパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C13CHCH(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(COC)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分枝状であってよい)、あるいはCFCHOCFCHF(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))など。これらの溶媒は、単独で、又は、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)及び/又はパーフルオロブチルエチルエーテル(COC)が特に好ましい。
【0322】
乾燥被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、又は、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0323】
表面処理剤の層形成は、層中で本開示の表面処理剤が、加水分解及び脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本開示の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本開示の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本開示の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本開示の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0324】
触媒には、任意の適切な酸又は塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0325】
本開示の物品に含まれる表面処理層は、高い摩耗耐久性の双方を有する。また、上記表面処理層は、高い摩耗耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(又は潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)、耐薬品性などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0326】
従って、本開示はさらに、上記表面処理層を最外層に有する光学材料にも関する。
【0327】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例えば、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0328】
本開示の物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。
【0329】
また、本開示の物品は、医療機器又は医療材料であってもよい。
【0330】
上記層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、上記層の厚さは、1~50nm、1~30nm、好ましくは1~15nmの範囲であることが、光学性能、摩耗耐久性及び防汚性の点から好ましい。
【0331】
以上、本開示の物品について詳述した。なお、本開示の物品及び物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例
【0332】
以下、本開示の物品について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、フルオロポリエーテルを構成する繰り返し単位の存在順序は任意であり、以下に示される化学式は平均組成を示す。
【0333】
(合成例1)
【化23】
【0334】
CFO(CFO)(CFCFO)CFCOCH(m=36、n=21、40g)に、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン(mXHF)(40g)及び化合物1a(2.0g)を加え、室温で終夜撹拌した。パーフルオロヘキサンを加え、アセトンで洗浄した後、減圧濃縮することで、化合物2を32g得た。
【0335】
化合物2
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ[ppm]:2.34 (d, 6H), 3.59-3.62 (m, 2H),5.40-5.45 (m, 6H), 6.13-6.24 (m, 3H), 6.92 (broad,1H).
19F NMR (mXHF, 376 MHz) δ[ppm]:-129.5, -125.8, -90.5, -88.9, -85.6, -85.1, -83.7, -83.4, -80.0, -78.3, -57.7, -56.0 , -55.2, -53.5, -51.9.
【0336】
(合成例2)
【化24】
【0337】
化合物2(10g)に、mXHF(10g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、150mg)、トリアセトキシメチルシラン、及びトリクロロシラン(1.1g)を加え、60℃で3時間撹拌した後、減圧濃縮した。mXHF(4.0g)、メタノール(0.25g)、及びオルトギ酸トリメチル(4.0g)を加え、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮し、化合物3a(3.6g)を得た。
【0338】
化合物3a
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ[ppm]: 0.95-0.99 (m, 6H), 1. 56-1.77 (m, 12H), 3.56-3.61 (m, 2H),3.89-4.10 (m, 27H)
19F NMR (mXHF, 376 MHz) δ[ppm]:-129.5, -125.8, -90.5, -88.9, -85.6, -85.1, -83.7, -83.4, -80.0, -78.3, -57.7, -56.0 , -55.2, -53.5, -51.9.
【0339】
(合成例3)
【化25】
【0340】
化合物2(2.6g)に、mXHF(2.6g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、47mg)、SiH(OCHCHOCH(0.67g)を加え、50℃で15時間撹拌した後、減圧濃縮し、化合物3b(2.63g)を得た。
【0341】
化合物3b
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ[ppm]: 0.95-1.04 (m, 6H), 1.56-1.84 (m, 12H), 3.41-3.53 (m, 29H), 3.60-3.80 (m, 18H), 4.12-4.35 (m, 18H)
19F NMR (mXHF, 376 MHz) δ[ppm]:-129.5, -125.8, -90.5, -88.8, -85.9, -85.3, -85.1, -83.7, -83.4, -79.8, -79.5, -57.7, -56.0 , -55.2, -53.5, -51.9.
【0342】
(合成例4)
【化26】
【0343】
化合物2(6g)に、mXHF(6g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、80mg)、トリアセトキシメチルシラン、及びトリクロロシラン(0.4g)を加え、60℃で3時間撹拌した後、減圧濃縮した。mXHF(6g)及びエチレングリコールモノメチルエーテル(60mg)を加え、50℃で時間撹拌した。その後、メタノール(0.12g)オルトギ酸トリメチル(1.6g)を加え、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮し、化合物3c(3.4g)を得た。
【0344】
化合物3c
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ[ppm]: 0.77-0.84(m, 6H), 1. 39-1.70 (m, 12H), 3.4-3.42 (m, 2H),3.5 (s, 0.6H), 3.66-3.7 (m, 0.4H), 3.89-4.10 (m, 26.4H), 4.13-4.14 (m, 0.4H),
p+p’+p”=8.79
【0345】
(合成例5)
【化27】
【0346】
化合物2(6g)に、mXHF(6g)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、80mg)、トリアセトキシメチルシラン、及びトリクロロシラン(0.4g)を加え、60℃で3時間撹拌した後、減圧濃縮した。mXHF(6g)及びエチレングリコールモノメチルエーテル(0.17g)を加え、50℃で時間撹拌した。その後、メタノール(0.12g)オルトギ酸トリメチル(1.6g)を加え、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮し、化合物3d(4g)を得た。
【0347】
化合物3d
1H NMR (mXHF, 400 MHz) δ[ppm]: 0.77-0.84(m, 6H), 1.40-1.67 (m, 12H), 3.4-3.43 (m, 2H),3.5 (s, 7.2H), 3.67-3.70 (m, 4.8H), 3.89-4.10 (m, 19.8H), 4.13-4.22 (m, 4.8H),
q+q’+q”=6.6
【0348】
<表面処理層の形成>
比較例1~2、及び実施例1
合成例2~4で得られたフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(化合物3a、3b、3c)を、濃度0.06質量%となるようにNovec 7200(3M社製、エチルパーフルオロブチルエーテル)で希釈し、それぞれ表面処理剤を調製した。その後、表面を大気圧プラズマで処理した化学強化ガラス(コーニング社製 Gorilla 3)上にスプレー塗布装置を用いて上記で調製した表面処理剤を塗布した。塗布量は表面処理剤60g/mとした。続いて、表面処理剤が塗布された基材を大気圧下、150℃で30分間加熱処理した。
【0349】
実施例2
合成例2及び5で得られたフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(化合物3a、3d)を、それぞれ濃度20質量%となるようにNovec7200で希釈し、それらを1対1(質量比)となるよう混合したのち、全体に占めるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物が濃度0.06質量%となるようにさらにNovec7200で希釈した。その後、表面を大気圧プラズマで処理した化学強化ガラス(コーニング社製 Gorilla 3)上にスプレー塗布装置を用いて上記で調製した表面処理剤を塗布した。塗布量は表面処理剤60g/mとした。続いて、表面処理剤が塗布された基材を大気圧下、150℃で30分間加熱処理した。
【0350】
<水の静的接触角の測定方法>
静的接触角の測定は、全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学社製)を用いた。具体的には、測定対象の表面処理層を有する基材を水平に静置し、その表面にマイクロシリンジから水を2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより静的接触角を測定した。水の静的接触角は、基材の表面処理層の異なる5点において測定し、その平均値を算出した値を用いた。
【0351】
<消しゴム耐久性評価>
(初期評価)
初期評価(消しゴム摩擦回数0回)として、表面処理層の形成後、表面上の余剰分を拭き上げたのちに、水の静的接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0352】
(消しゴム耐久性試験後の評価) 形成された表面処理層に対して、ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、下記条件で往復回数2500回毎に水の静的接触角を測定し、水滴接触角100°を下回るまで測定した。試験環境条件は25℃、湿度40%RHであった。結果を表1に示す。
消しゴム:Raber Eraser(Minoan社製)
接地面積:6mmφ
移動距離(片道):40mm
移動速度:3,600mm/分
荷重:1kg/6mmφ
【0353】
【表1】


【0354】
(表面分析)
上記の処理されたガラス基体の表面処理層の表面組成を、X線光電子分光分析装置(XPS,アルバック・ファイ社製 PHI5000VersaProbeII)を用いて行った。XPS分析の測定条件は、下記の通りとした。
X線源:単色化AlKα線(25W)
光電子検出面積:1400μm×300μm
光電子検出角:45度
パスエネルギー:23.5eV
【0355】
形成された表面処理層において、上記XPSにより、C1s、O1s、Si2pおよびF1sのピーク面積を観測し、それらのピーク面積比を算出することにより、表面処理防防汚層を含む処理表面の組成を求めた。サンプル表面における炭素原子濃度、酸素原子濃度、及びフッ素原子濃度の総量に対するフッ素原子濃度の割合を、表2に示す。
【0356】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0357】
本開示の物品は、種々多様な用途、例えばタッチパネル等の光学部材として好適に利用され得る。