(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】出力分配制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20230508BHJP
B60K 17/356 20060101ALI20230508BHJP
B60W 10/119 20120101ALI20230508BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20230508BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20230508BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60K17/356 B
B60W10/119
B60W50/14
B60L9/18 P
(21)【出願番号】P 2019021846
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 潤
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-325372(JP,A)
【文献】特開2012-016972(JP,A)
【文献】特開2013-086600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60K 17/356
B60W 10/119
B60W 50/14
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に要求された要求出力を前輪と後輪とに分配して走行する車両であって、
運転者の加減速要求を前記要求出力に反映する操作部と、
前記前輪を駆動するフロント原動機と前記後輪を駆動するリヤ原動機とに前記要求出力を分配する分配比を
運転者が入力する入力部と、
前記操作部の操作量に基づいて算出された前記要求出力を前記前輪と前記後輪とに分配する分配手段と、を備え、
前記操作部は、
前記分配比が保持できる操作量から前記分配比が保持できない操作量へ移行する移行時に前記運転者に前記移行時を報知させる報知手段を有する
ことを特徴とする出力分配制御装置。
【請求項2】
前記報知手段は、
前記分配比が保持できる間の前記操作部の操作反力に比べて、前記移行時の前記操作部の操作反力を大きくすることで前記移行時を報知する
ことを特徴とする請求項1に記載の出力分配制御装置。
【請求項3】
前記報知手段は、
前記操作部による操作変化率が所定値以上の際には、前記報知手段による報知を解除する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の出力分配制御装置。
【請求項4】
前記分配手段は、
前記フロント原動機又は前記リヤ原動機のいずれか一方に要求される要求出力が、前記一方の原動機で発生できる最大出力を超えた場合に前記分配比を保持できないと判断する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の出力分配制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要求出力を前輪と後輪とに分配する出力分配制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、一つの原動機、例えばエンジンを搭載して、同原動機の駆動力をプロペラシャフトを通じて前輪や後輪へ分配可能とした駆動系と、原動機から前・後輪へ伝達される伝達力の分配比を入力する入力部とを用いて、前・後輪の伝達比を変えられるようにした4WDがあることは知られている。
一方、車両においては、こうした一つの原動機で前・後輪を駆動する駆動方式でなく、前・後輪を車両前・後のそれぞれ独立したフロント原動機、リヤ原動機といった二つ原動機を用いて、前・後のそれぞれ独立した原動機で駆動する駆動方式の開発が検討されている(特許文献1などを参照)。
【0003】
ところで、4WDの多くは、道路の状態に応じて前後輪の駆動力比を変えられることが知られている。
しかし、前・後輪を独立して駆動する4WDは、フロント原動機、リヤ原動機での出力に限界があり、運転者の運転操作によっては設定した分配比が崩れることもあり得るが、そのタイミングを知るすべがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、運転者が設定したフロント・リヤの分配比をなるべく保持して車両を走行させるような機能が要望されている。
そこで、本発明の目的は、設定された分配比で車両をなるべく走行させるために、分配比が保持できなくなるタイミングを運転者に報知することを可能にした出力分配制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、車両に要求された要求出力を前輪と後輪とに分配して走行する車両であって、運転者の加減速要求を要求出力に反映する操作部と、前輪を駆動するフロント原動機と後輪を駆動するリヤ原動機とに要求出力を分配する分配比を運転者が入力する入力部と、操作部の操作量に基づいて算出された要求出力を前輪と後輪とに分配する分配手段と、を備え、操作部は、分配比が保持できる操作量から分配比が保持できない操作量へ移行する移行時に運転者に移行時を報知させる報知手段を有するものとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フロント原動機、リヤ原動機における出力の限界により、設定した分配比が運転者の運転操作によって保持できなくなると、この分配比が保持できなくなるタイミングが運転者へ報知される。これにより運転者は、知りえなかった分配比の保持ができなくなったタイミングを把握することができる。
それ故、運転者は、このタイミングに配慮しながら運転操作を行うことにより、なるべく設定された分配比で車両を走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る態様となる、出力分配制御装置の主な構成を示す構成図。
【
図3】設定した分配比が保たれなくなるタイミングを運転者に知らせる制御を説明するフローチャート。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る態様となる、異なる報知手段を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を
図1から
図4に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1(a)中の符号Aは、例えば電動車で構成される車両Aを示している。車両Aは、前輪1と後輪3とを独立した原動機、例えばそれぞれモータで駆動する駆動系をもつ。このため車両Aの車体フロント側は、前輪1を駆動するフロントモータ5(本願のフロント原動機に相当)が搭載され、車体リヤ側は、後輪3を駆動するリヤモータ7(本願のリヤ原動機に相当)が搭載される。ちなみに前・後輪1,3は、それぞれ独立して駆動される。
【0010】
フロントモータ5、リヤモータ7の最大出力は、ここでは、わかりやすくするために、例えばフロントモータ5、リヤモータ7共、「100kw」が用いられる。
フロントモータ5、リヤモータ7は、いずれもインバータ5a,7aを介して、車両Aに搭載されたバッテリ9に接続される。これにより、バッテリ9に蓄えられた電力で、各モータ5,7が駆動される。つまり、車両Aは、要求出力が前輪1、後輪3へ分配されて走行が行われる。
【0011】
またインバータ5a,7aは、ECU11に接続され、アクセルペダル13(本願の操作部に相当)のアクセル操作量で得られる運転者の加減速要求が車両Aの要求出力に反映される。これにより車両Aは、運転者の加減速要求を反映させながら走行が行える。なお、
図1(a)中の符号13bは、運転者の加減速要求となるアクセルペダル13のアクセル操作量(アクセル開度)を検出するアクセルペアダルセンサを示す。
【0012】
ちなみに、
図1(a)中の符号15は、車両Aの向きを変えるハンドルを示し、17はインストルメントパネルを示し、19はフロントシートを示している。
こうした要求出力が前輪1、後輪3へ分配される車両Aに、
図1(b),(c)に示されるような出力分配制御装置21が設けられる。
出力分配制御装置21を説明すると、
図1(a),(b)中の符号23は、車両Aに要求される要求出力を、所望にフロントモータ5とリヤモータ7とに分配する入力を行う入力部、例えばダイヤル23を示している。
【0013】
ダイヤル23は、例えばインストルメントパネル17上に回動可能に設けられ、回転操作により分配比が入力される。具体的にはダイヤル23は、例えば「前輪0~10:後輪10~0」といった具合に連続的に自在に切り替えられ、運転者によるダイヤル操作にて、所望の分配比が入力される。
このダイヤル23が、分配手段であるところの制御部、例えば車両Aを統括するECU11と組み合わさり、ダイヤル23で設定された分配比にアクセル操作量(加減速要求)を反映させた要求出力が、フロントモータ5とリヤモータ7とに分配される。
【0014】
具体的には例えばECU11には、分配比指示部27が設けられる。分配比指示部27は、アクセル操作量に基づいて算出された要求出力を、ダイヤル23で設定した分配比に基づきフロントモータ5とリヤモータ7とに分配させる指示を行う。これにより、分配された要求出力がフロントモータ5あるいはリヤモータ7で発生できる最大出力を超えるまでは、分配比は保持される。
【0015】
ちなみに分配比指示部27は、分配された要求出力がフロントモータ5あるいはリヤモータ7で発生できる最大出力を超えた場合、入力された分配比の保持ができないと判断して、フロントモータ5とリヤモータ7との前後分配比を解除する機能をもつ。
つまり、フロントモータ5、リヤモータ7における最大出力の規定により、アクセル操作量に基づいて算出された要求出力の分配比が保持されなかったり、分配比が保持されなかったりする。
【0016】
アクセルペダル13には、こうした運転者のアクセル操作量(運転操作)によって分配比が保持できなくなるタイミング、具体的には分配比が保持できるアクセル操作量から分配比が保持できないアクセル操作量へ移行する移行時のタイミングを運転者に知らせる報知手段、例えばディテント装置30が設けられている。
このディテント装置30は、アクセルペダル13のペダルストローク中、分配比が保持できる間のアクセルペダル13の操作反力に比べて、分配比が保持できなくなる移行時のアクセルペダル13の操作反力を大きくする装置で構成される。そして、操作反力が変わるという感覚の違いを用いて、移行時のタイミングを運転者へ報知させるようにしている。さらに述べれば、フロントモータ5もしくはリヤモータ7の出力が、最大出力(上限:100kw)となるアクセルペダル13の踏込み位置のとき、アクセルペダル13の操作反力が大きくなるようにしている。
【0017】
具体的にはディテント装置30は、例えば
図2に示されるようにアクセルペダル13のレバー部13aの途中にアクチュエータ、例えばディテント負荷発生シリンダ31のピストン端を連結する。またECU11にディテント指示部33を設けて、分配比においてフロントモータ5、リヤモータ7の一方で最大出力を出せるアクセルペダル13の踏込み位置を算出する。ディテント負荷発生シリンダ31は、この踏込み位置に基づき作動して、アクセルペダル13の操作反力の違いから、運転者へ分配比の保持できなくなる移行時のタイミングが伝えられるようにしている。つまり、移行時のタイミングが運転者へ報知される。
【0018】
図2中の符号αは、そのときフロントモータ5もしくはリヤモータ7が最大出力となるアクセルの踏込み位置、すなわちディテント位置を示している。
ちなみに、フロントモータ5やリヤモータ7の最大出力は、運用条件(気温やバッテリ電圧など)よって時々刻々と変化するため、これに対応すべく、例えばバッテリ9付近には運用条件情報(気温やバッテリ電圧など)を検出する各種検出装置35を設けて、ディテント指示部33に補正情報を与え、時々刻々、ディテント位置αの変更(補正)が行われるようにしている。つまり、どのようなフロントモータ5、リヤモータ7の運用条件下でも、ディテント位置は高い精度で規定される。
【0019】
またECU11には、分配比解除部37が設けられる。この分配比解除部37により、アクセルペダル13がディテント位置αを踏み越え、フロントモータ5、リヤモータ7のいずれか一方に要求される要求出力が、当該一方のモータで発生できる最大出力を超えた場合、設定された分配比を保持できないと判断する。この判断を用いて、設定された分配比が解除されるようにしている。ちなみに、設定された分配比が保持されなくなると、一方のモータで発生できる最大出力を超える出力が、他方の最大出力に達していないモータ側へ移行する。
【0020】
特にディテント装置30は、ディテント位置αにおいて重たい踏込み感を生じさせ、ディテント位置αを踏み越えると、再び軽い踏込み感に戻るので、分配比が保持できる状態、分配比が保持できない状態が把握しやすい。
またECU11には、アクセルペダル13からの急峻な加速要求に応える機能を有している。
【0021】
具体的には、
図1(a)に示されるようにECU11にディテント解除部39が設けられている。ディテント解除部39は、アクセル操作量を検出するアクセルペダルセンサ13bから、アクセルペダル13を急峻に踏み込むといったアクセル操作の変化率が大きくなる場合を検出する。そして、急加速が求められるなど、アクセル操作の変化率が所定値以上の際、ディテント装置30の作動を解除する。つまり、ディテント装置30による運転者への報知が解除され、両モータ5,7の出力を最大に用いる加速走行が可能となる。
【0022】
一方、分配比が保持できるアクセル操作量から分配比が保持できないアクセル操作量への移行が、車両Aのコーナリング中に急峻に行われると、車両Aの走行姿勢に影響を与えることが懸念される。
そのため、ハンドル15に舵角センサ41を設け、ECU11に補正部43を設けて、コーナリング中、分配比が保持できるアクセル操作量から分配比が保持できないアクセル操作量への移行が行われる際、最大出力に達していない側のモータへの出力移行を、急峻でなくなだらかに変化させるようにしてある。ここでは、例えばハンドル15の切れ角が増すに応じて、最大出力に達していない側のモータへの出力移行を徐々に変化させる手法が用いられている。
【0023】
つぎに、
図3および
図4に示すフローチャートを参照して出力分配制御装置21の作用について説明する。
まず運転者は、
図3中のステップS1のようにダイヤル23を操作して、車両Aの前後分配比を所望の分配比、例えば「前8:後2」と設定する。むろん、分配比は、道路の状態や路面の状況により決まるので、他の分配比でも構わない。
【0024】
ついで、ステップS3のようにフロントモータ5、リヤモータ7の運用条件(気温やバッテリ電圧など)を加味した、設定分配比でのフロントモータ5、リヤモータ7の最大出力を演算する。そして、ディテント指示部33により、アクセルペダル13のペダルストローク中にディテント位置αを設定する。
このディテント位置αの設定により、ディテント負荷発生シリンダ31は、アクセルペダル13が、フロントモータ5の最大出力に相当するストロークまで踏み込まれると(ディテント位置α)、ディテント感をもたらすよう作動する。
【0025】
続いて運転者は、ステップS5のようにアクセルペダル13を踏み込み、車両Aを発進させる。
このとき、ステップS7に示されるようにアクセル操作量の変化率から、急峻に踏み込んだアクセル操作が行われたか否かを判定している。
通常走行のときは、急峻に踏み込むアクセル操作は行われない(変化率が所定値以下)。このため、通常走行であれば、ステップS5からステップS7、ステップS9を経てステップS11へ至り、アクセル操作量に基づく加減速要求が、設定された分配比「前8:後2」に反映されながら、車両前後のフロントモータ5、リヤモータ7へ分配される。
【0026】
これにより、車両Aは、前・後のモータ5,7のいずれかの最大出力、ここでは「100kw」に、分配された要求出力が達するまでは、設定された分配比「前8:後2」を保持しながら走行される。
つまり、アクセル操作量が、ディテント位置αまでのペダルストロークを越えなければ、設定された分配比「前8:後2」は保たれる。
【0027】
ここで、さらにアクセルペダル13が踏み込まれ、分配比が保持できる操作量から分配比が保持できない操作量へ移行するとする。
このときアクセルペダル13のペダルストローク中、フロントモータ5で発生できる最大出力に相当する位置はディテント位置αと設定され、このディテント位置αにおいてアクセルペダル13の操作反力が通常時よりも大きくしてある(ディテント負荷発生シリンダ31による)。これにより、運転者は、アクセルペダル13を介して足へ伝わる感覚から、分配比が保てる領域の上限に達したことがわかる。
【0028】
運転者は、この感覚から、知りえなかった分配比の保持ができなくなったタイミングが把握され、分配比が保持できなくなったタイミングを知ることができる(報知)。
ちなみに、フロントモータ5で発生できる最大出力に相当するディテント位置αを超えると、分配比が保持できないと判断され、ステップS13へ進み、前後の分配比が解除され、フロントモータ5の最大出力を超える要求出力はリヤモータ7へ移行する。
【0029】
運転者は、分配比の保持ができなくなるときの報知に気付いて、踏み込んだアクセルペダル13を戻し、ディテント位置αを下回るようにアクセル操作をすると、再び設定された分配比での制御に戻り、分配比「前8:後2」での走行が行われる。
それ故、運転者は、この分配比の保持ができなるタイミングに配慮しながら運転操作を行うことにより、なるべく設定された分配比で車両Aを走行させることができる。
むろん、他の分配比でも同様である。
【0030】
一方、ステップS15のように前後の分配比が解除されたタイミングが、ステップS14のように車両Aのコーナーリング時と重なるときがある。要求出力がリヤモータ7へ急峻に出力される場合、車両Aの走行姿勢に影響を与えやすい。
そのため、続くステップS15のようにコーナリング時では、リヤモータ7へ出力される要求出力を補正する。
【0031】
ここでは、例えば
図4に示されるフローチャートのステップS21のように、まずリヤモータ7へ移される電力の変化率が所定値より大きいか、すなわちリヤモータ7に対する電力の供給が急峻かを判定する。
急峻である場合、車両Aのコーナリング中、ステップS25のようにハンドル15の切れ角(舵角)に応じ、リヤモータ7へ移行する電力を制御して、急峻な出力をなだらにする。
【0032】
これにより、急峻な出力変化は抑えられ、安定した走行姿勢が保てる。
他方、ステップS7において、アクセル操作の変化率が所定値以上となり、アクセル操作が急峻、すなわちアクセルペダル13を勢いよく踏み込んだと判定されると、ステップS19へ進み、ディテント負荷発生シリンダ31の作動の解除が行われる。つまり、加速を求めるべく、運転者がアクセルペダル13を勢いよく深く踏み込むと、ディテント装置30による報知が解除され、フロントモータ5、リヤモータ7を限界まで用いた加速が行える体制に入る。
【0033】
つまり、加速を求める車両Aの運転の要望に応えられる。
以上、本実施形態のように入力した分配比が保持できるアクセル操作量(操作量)から、分配比が保持できない操作量へ移行するタイミングを運転者へ報知するようにしたので、運転者は、知りえなかった分配比の保持ができなくなったタイミングを把握できる。
したがって、運転者は、このタイミングに配慮しながら車両Aの運転操作を行うことにより、なるべく設定された分配比で車両を走行させることができる。
【0034】
しかも、分配比の保持ができなくなるタイミングの報知には、分配比が保持できる間のアクセルペダル13(操作部)の操作反力に比べて、分配比が保持できなくなるとき(移行時)におけるアクセルペダル13(操作部)の操作反力を大きくする手法を用いたので、運転者に触れる機会の最も多いアクセルペダル13を操作する足を通じて報知ができる。このため、確実に運転者に分配比の保持ができなくなったタイミングを伝えることができる。むろん、既存のアクセルペダル13(操作部)を用いるので、簡単である。
【0035】
加えて、分配比が保持できないタイミングが車両Aのコーナリング時と重なった場合、出力の移行をなだらにしたので、車両Aの走行安定性が損なわれることはない。
そのうえ、アクセルペダル13(操作部)による操作変化率が所定値以上の際には、アクセルペダル13の操作反力による報知を解除させるので、アクセルペダル13を勢いよく深く踏み込んで加速したい場合の要望に容易に応えることができる。
【0036】
またフロントモータ5(フロント原動機)、リヤモータ7(リヤ原動機)のいずれか一方に要求される要求出力が、一方のモータ(5あるいは7)で発生できる最大出力を超えた場合、分配比を保持できないと判断したことにより、分配比が保持できなくなるタイミングを的確、かつわかりやすく検出することができる。
図5は、本発明の第2の実施形態を示す。
【0037】
本実施形態は、第1の実施形態のようにディテント負荷発生シリンダ31を用いて、分配比が保持できるアクセル操作量から、分配比ができないアクセル操作量へ移行するタイミングを報知するのではなく、他の手段を用いたものである。
具体的には本実施形態は、例えば
図5に示されるように例えば車両Aのインストルメントパネル17に設けられた計器盤51に、例えば設定された分配比で点灯させる表示を用い、設定された分配比に対するフロントモータ5とリヤモータ7の出力具合をバー表示で表すようにしたインジケータ59を設けて、視覚を利用して、分配比が保持できなくなるタイミングを報知するようにしたものである。
【0038】
むろん、他の手段、例えば音響やハンドルを把持する感覚の違いなどで、分配比が保持できなくなるタイミングを運転者に報知するようにしてもよい。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば上述した実施形態では、独立したフロントモータ、リヤモータを用いた車両を挙げたが、これに限らず、独立したフロントエンジン、リヤエンジンを搭載した車両に用いてもよく、車両や原動機の種類に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
A 車両
1 前輪
3 後輪
5 フロントモータ(フロント原動機)
7 リヤモータ(リヤ原動機)
11 ECU(分配手段)
13 アクセルペダル(操作部)
23 ダイヤル(入力部)
30 ディンテント装置(報知手段)