(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサの製造方法と固体電解コンデンサ及び電子部品モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20230508BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20230508BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20230508BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
H01G9/00 290E
H01G9/15 100
H01G9/028 E
H01G2/06
(21)【出願番号】P 2019173701
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148851
【氏名又は名称】鎌田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】徳永 浩氣
(72)【発明者】
【氏名】松本 和愛
【審査官】西間木 祐紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-299171(JP,A)
【文献】国際公開第2007/004554(WO,A1)
【文献】特開2003-17369(JP,A)
【文献】特開2005-57255(JP,A)
【文献】特開平2-129907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/15
H01G 9/028
H01G 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード端子を備えた陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、
前記固体電解質層を形成した素子を外装ケースに収容し開口端部を封口ゴム封止し、過熱水蒸気による熱処理を行なった後に、エージング処理をする
ことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法において、
前記過熱水蒸気による熱処理の処理温度は、220℃乃至270℃の範囲である
ことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法において、
前記過熱水蒸気による熱処理を行う場合の、前記過熱水蒸気中の酸素濃度は、10ppm以下である
ことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の固体電解コンデンサの製造方法によって製造された固体電解コンデンサ。
【請求項5】
請求項4に記載の固体電解コンデンサをリフロー工程で実装する
ことを特徴とする電子部品モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサの製造方法と固体電解コンデンサ及び電子部品モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び下記特許文献2には、固体電解コンデンサの電気的特性の向上を企図して、所定の温度で所定の時間だけ熱処理をすることが記載されている。具体的には、下記特許文献1では、コンデンサ素子を外装ケースに収納した後に200乃至300℃の温度で30乃至120秒放置することにより、ハンダ付け後の電気的特性の劣化が防止できることが開示されている。
【0003】
この文献によれば、コンデンサ素子のエッチングピットの内部にまで緻密で均一な固体電解質層を形成することができることから、高温のハンダ付け後の外観及び電気的特性、特に漏れ電流(Leak Current:LC)特性を、初期規格値以内に維持することができるとされている。
【0004】
また、下記特許文献2においても、導電性ポリマーを固体電解質として用いる場合、高温下における半田リフローをする際に重合後に残存するモノマーや酸化剤溶液の蒸発に起因する電気的特性の低下や封止漏れを防止するために、重合後に残存するモノマーや酸化剤溶液を除去できるように、200℃未満の温度で熱処理を行うことが開示されている。
【0005】
固体電解コンデンサの製造方法としては、一般には、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施して、このコンデンサ素子を重合性モノマーと酸化剤と所定の溶媒とを混合して調製した混合液に浸漬し、コンデンサ素子内で導電性ポリマーの重合反応を発生させ、固体電解質層を形成する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した後、エージングを行い、固体電解コンデンサを形成することが知られている。
【0006】
また、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔の表面を塩化物水溶液中での電気化学的なエッチング処理により粗面化して、多数のエッチングピットを形成した後、ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成する(化成)。陽極箔と同様に、陰極箔もアルミニウム等の弁作用金属からなるが、その表面にはエッチング処理を施すのみである。このようにして表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔とエッチングピットのみが形成された陰極箔とを、セパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成する。続いて、修復化成を施したコンデンサ素子に、3,4-エチレンジオキシチオフェン等の重合性モノマーと酸化剤溶液をそれぞれ吐出し、あるいは両者の混合液に浸漬して、コンデンサ素子内で重合反応を促進し、PEDT等の導電性ポリマーからなる固体電解質層を生成する。その後、このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納して固体電解コンデンサを作成することが知られている。
【0007】
このような固体電解コンデンサに用いる固体電解質として例えば、二酸化マンガンや7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られており、3,4-エチレンジオキシチオフェンと酸化剤との化学重合反応により生成されるポリエチレンジオキシチオフェン(polyethylenedioxythiophene,PEDOT)も知られている。また、陽極箔と陰極箔とは、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等の弁作用金属が用いられることが多いことが先行技術文献には開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-299171号公報
【文献】特開2003- 17369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、ハンダリフロー等によって固体電解コンデンサが高温に暴露されることに起因してリフロー工程後に漏れ電流の値が増大することを防止するため、エージング処理前に、加熱空気中で固体電解コンデンサを熱処理をすることが知られている。しかし、このような加熱空気による熱処理は、加熱空気による固体電解コンデンサの温度上昇が比較的緩慢で所望の温度に到達するまでに時間がかかることから、その間に熱の影響で封口ゴムが膨張してしまい歩留まりが低下する懸念があった。また、加熱空気中に大量に含まれる酸素によってリード端子の錫メッキが想定外に酸化し、外観不良やハンダの付け性が低下してしまう懸念もあった。
【0010】
本発明は、上述したような、封口ゴムが膨張して歩留まりが低下する懸念や、好ましくは加熱空気中に大量に含まれる酸素によってリード端子の錫メッキが想定外に酸化し、外観不良やハンダの付け性が低下してしまう懸念を抑制して高い歩留まりとし、好ましくは外観不良やハンダの付け性の低下を生じさせない固体電解コンデンサの製造方法等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、リード端子を備えた陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、固体電解質層を形成した素子を外装ケースに収容し開口端部を封口ゴム封止し、過熱水蒸気による熱処理を行なった後に、エージング処理をすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、好ましくは過熱水蒸気による熱処理の処理温度が、220℃乃至270℃の範囲であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、さらに好ましくは、過熱水蒸気による熱処理を行う場合の、過熱水蒸気中の酸素濃度が、10ppm以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の固体電解コンデンサは、上述のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法によって製造されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の電子部品モジュールの製造方法は、上述の固体電解コンデンサをリフロー工程で実装することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
封口ゴムが膨張して歩留まりが低下する懸念や、好ましくは加熱空気中に大量に含まれる酸素によってリード端子の錫メッキが想定外に酸化し、外観不良やハンダの付け性が低下してしまう懸念、を抑制して高い歩留まりとし、好ましくは外観不良やハンダの付け性の低下を生じさせない固体電解コンデンサの製造方法等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は、一般的な固体電解コンデンサの基本構造を説明するための構造説明図であり、(b)は、面実装タイプの固体電解コンデンサの外装ケースと開口端部と封口ゴムについて示す典型例としての構成概要説明図である。
【
図2】(a)は、200℃の過熱水蒸気によるコンデンサ素子中心の温度上昇と200℃の加熱空気によるコンデンサ素子中心の温度上昇とを比較して説明する経過時間-温度曲線を説明する図であり、(b)は、夫々220℃、250℃、260℃、280℃で60秒間熱処理した場合の過熱水蒸気と加熱空気との封口ゴムの膨れ程度(サンプル数n=3個の平均値)を説明する図であり、(c)は、夫々220℃、250℃、260℃、280℃で60秒間熱処理した場合の過熱水蒸気と加熱空気とのリード端子の変色の有無確認結果(サンプル数n=3個)を説明する図である。
【
図3】は過熱水蒸気による熱処理炉を説明する実験概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1(a)は、一般的な固体電解コンデンサ1000の基本構造を説明するための構造説明図である。
図1(a)に示すように、固体電解コンデンサ1000は、薄いシート状の、セパレータ1100(1)と、セパレータ1100(1)より面積が小さい陽極電極箔1200と、セパレータ1100(2)とセパレータ1100(2)より面積が小さい陰極電極箔1300と、をこの順で重ねて巻回された構成を呈する。
【0019】
また、
図1(a)において、陽極リード端子1400(1)と陰極リード端子1400(2)が、巻回された素子本体から突出され引き出されている。陽極リード端子1400(1)と陰極リード端子1400(2)は、リード端子に限定されるものでは無く、フリップチップ等のチップタイプ用の端子であっても良く、任意の一対の電極端子とすることができる。
【0020】
また、
図1(b)は、面実装タイプの固体電解コンデンサの外装ケースと開口端部と封口ゴムについて示す典型例としての構成概要説明図である。
図1(b)の断面図における(外装ケースの)開口端部4800を封口ゴム4700で封止している。
図1(b)では4500が外装ケース、4600がリード端子、4700が封口ゴム、4800として楕円で囲む範囲がケースの開口端部、4900がコンデンサ素子を示すものである。また、4610はアルミリードを示し、4560は台座を示している。
【0021】
ところで、固体電解コンデンサは、ハンダリフロー等によって固体電解コンデンサが高温に暴露されることに起因してリフロー工程後に漏れ電流の値が増大することを防止するため、エージング処理前に加熱空気中で熱処理をする技術が知られている。
【0022】
しかし、加熱空気中でコンデンサ素子を熱処理した場合には、リフロー後の漏れ電流の増大は抑制できるものの、コンデンサ素子の温度立ち上がりが遅いのでその間に熱の影響で封口ゴムの膨張や、リード端子の錫メッキが酸化することによる外観不良やハンダ付け性の低下が生じることが懸念される。
【0023】
そこで、本発明者は種々の工夫・検討を重ねたことにより、この固体電解コンデンサ1000を100℃以上に加熱した過熱水蒸気による熱処理を遂行することで加熱空気と比較して飛躍的に熱処理時間が短くできることを見出した。過熱水蒸気は、加熱空気に比較して対流伝熱が約2倍であり、具体的には加熱空気が0.24cal/g/℃であるのに対して過熱水蒸気は0.48cal/g/℃であるので熱効率が良い。
【0024】
さらには、過熱水蒸気中には酸素が数PPM程度しか含まれないので、低酸素状態での熱処理が可能となって、リード端子等の予期せぬ酸化を防止することが可能となる。
【0025】
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法の一例は、以下の通りである。すなわち、表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回して、コンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に修復化成を施す。続いて、このコンデンサ素子を、導電性ポリマーの粒子または粉末と溶媒とを含む分散体に含浸させて導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成する。その後、このコンデンサ素子を所定のイオン伝導性物質に浸漬して、コンデンサ素子内の空隙部にこのイオン伝導性物質を充填する。そして、このコンデンサ素子を外装ケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、加締め加工によって封止した後、過熱水蒸気で熱処理をし、エージングを行い、固体電解コンデンサを形成する。
【0026】
図2(a)は、200℃の過熱水蒸気によるコンデンサ素子中心の温度上昇と200℃の加熱空気によるコンデンサ素子中心の温度上昇とを比較して説明する経過時間-温度曲線を説明する図である。
図2(b)は、夫々220℃、250℃、260℃、280℃で60秒間熱処理した場合の過熱水蒸気と加熱空気との封口ゴムの膨れ程度(サンプル数n=3個の平均値)を説明する図である。尚、熱処理とは、本明細書における定義では、コンデンサ素子中心の温度が所望する温度まで立ち上がった後に、その状態で所望する時間の処理をすることとする。例えば、220℃で60秒間の熱処理の場合、コンデンサ素子中心温度が220℃まで立ち上がった後に、その状態で60秒間処理をする。
図2(c)は、夫々220℃、250℃、260℃、280℃で60秒間熱処理した場合の過熱水蒸気と加熱空気とのリード端子の変色の有無確認結果(サンプル数n=3個)を説明する図である。
【0027】
図2(a)から明らかなように、過熱水蒸気を用いるとコンデンサ素子内部の温度上昇が極めて迅速であり素早く所望の温度にまで到達することとなり、従って、所望の温度に到達後当該温度における熱処理を早期に開始可能となって、コンデンサ素子が熱処理炉に投入されている総計時間が短くなるので封口ゴムの熱膨張を低減できる。その実験結果を示しているのが
図2(b)であり、ΔLは夫々の条件において、封口ゴムがコンデンサ素子の軸方向に熱膨張した長さを示しており、数値が大きくなるほど顕著に熱膨張していることを示している。
図2(b)からも確認できる通り、加熱空気と比較して過熱水蒸気はゴムの膨れが顕著に低減されていることがわかる。封口ゴムが膨らんで嵩が増大すると、製品としての寸法も増大するため、規格範囲外となってしまう懸念があったが、過熱水蒸気による熱処理であればこのような懸念を低減することが可能となる。
【0028】
また、リード端子の予期せぬ酸化による変色の発生も
図2(c)の実験結果に示すように、過熱水蒸気のほうが加熱空気による熱処理よりも有為に抑制されていることが示されている。また、
図3は、上述したような過熱水蒸気による熱処理炉を説明する実験概念図であり、炉内の金網にコンデンサ素子を搭載・配置した後、炉内の上方から過熱水蒸気を配管パイプを介して供給することで、コンデンサ素子内を所望の温度にまで加熱する。尚、
図3はコンデンサ素子内の温度を熱電対で測定している状態の一例であり、熱電対を使用せずに過熱水蒸気による熱処理をしてもよい。
【0029】
また、セパレータは、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等の合成繊維を主体とする不織布で作製可能であるが、合成繊維とガラス繊維・紙繊維などを適宜含んだ不織布を用いても良い。また、陽極電極箔は、アルミニウムやタンタル・ニオブ・チタン等の表面にエッチング処理等で粗面化がされた構成を使用しても良い。また、陰極電極箔も陽極電極箔と同様の素材を利用できる。また、過熱水蒸気は、ボイラーや誘導加熱で水を蒸気化させて、発生させた水蒸気をさらに誘導加熱することによって所望の温度の過熱水蒸気を生成するものとできる。
【0030】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、好ましくは過熱水蒸気による熱処理を行う工程の処理温度は、220℃乃至270℃の範囲であることを特徴とする。熱処理の温度が高すぎると封口ゴムが想定外に膨張してしまう懸念が生じるため、最適な所望温度における過熱水蒸気を用いた熱処理が好ましい。
【0031】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、さらに好ましくは固体電解コンデンサが、ポリエチレンジオキシチオフェン(polyethylenedioxythiophene,PEDOT)と酸化アルミニウム(Al2O3)とアルミニウム(Al)を含むことを特徴とする。コンデンサ素子を形成するように巻回された陽極箔と陰極箔をセパレータ等は、一般にはこのような材料・素材が用いられることが知られている。このような材料・素材を用いた場合においても、本実施形態で説明したように、過熱水蒸気による熱処理後には漏れ電流の低減効果が顕著に確認できる。
【0032】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、さらに好ましくはリード端子は錫メッキであることを特徴とする。一対のリード端子が錫メッキであると、当該錫メッキの予期せぬ酸化による部分的な変色による不良発生が懸念されていたところ、酸素を殆ど含まない過熱水蒸気を利用した熱処理によって、迅速かつ効果的に熱処理を遂行しつつ錫メッキの予期せぬ酸化を生じさせず、従ってその変色も抑止可能となる。
【0033】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、過熱水蒸気による熱処理を行う工程における、過熱水蒸気中の酸素濃度は10ppm以下であることが好ましい。10ppm以下と極めて低濃度の酸素しか含まれていない状態であるとリード端子等の予期せぬ酸化を防止することが可能となる。
【0034】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、さらに好ましくは重合性モノマーは、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDT)またはその他のチオフェン誘導体、ピロール、アニリンのいずれかであることを特徴とする。このような化合物は固体電解コンデンサに汎用されているものである。
【0035】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、過熱水蒸気による熱処理を行う工程における、熱処理時間を5~300秒間の範囲とすることが好ましい。過熱水蒸気による熱処理を300秒間以上行うと、封口ゴムの膨張や、封口ケースの外観以上等を引き起こす懸念がある。一般に、最適な加熱時間はコンデンサ素子の大きさや材料・特性等によってそれぞれ異なるものとなるが、少なくとも5~300秒間の範囲で過熱水蒸気による熱処理をすれば、加熱空気を利用した熱処理と比較して短時間で同等の熱処理効果を得ることが可能となる。
【0036】
また、本発明の電子部品の製造方法は、上述の製造方法によるところの固体電解コンデンサを用いた電子部品の製造方法であって、固体電解コンデンサをリフロー工程で実装する工程を有することを特徴とする。固体電解コンデンサを実装した電子部品(典型的には回路基板や各種実装モジュール等)の製造工程において、漏れ電流の発生懸念が最も大きく存在する工程としては、ハンダ付けのリフロー工程が挙げられる。本実施形態で説明したように、過熱水蒸気を用いるエージング前の熱処理によって、リフロー工程を経由してもその後の漏れ電流の増大を有為に低減可能となる。
【0037】
本発明の固体電解コンデンサ1000の製造方法等は、上述の実施形態で説明した構成や方法に限定されるものではなく、当業者に自明な範囲でかつ本発明の技術思想の範囲内で適宜その構成を変更し、組み合わせ適用し、また方法を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、固体電解コンデンサを典型例とする電子部品やその実装モジュールの製造方法として好適である。
【符号の説明】
【0039】
1000・・固体電解コンデンサ、1100・・セパレータ、1200・・陽極電極箔、1300・・陰極電極箔、1400・・リード端子。