(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】加水する水量を決定する方法、インターロッキングブロックを製造するための配合方法、インターロッキングブロックを製造する方法およびインターロッキングブロック
(51)【国際特許分類】
B28C 7/12 20060101AFI20230508BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230508BHJP
C04B 18/16 20230101ALI20230508BHJP
【FI】
B28C7/12
C04B28/02
C04B18/16
(21)【出願番号】P 2018220273
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】514147930
【氏名又は名称】株式会社西田
(74)【代理人】
【識別番号】100154025
【氏名又は名称】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】西田 進
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-299965(JP,A)
【文献】特開2001-054909(JP,A)
【文献】特開昭56-161111(JP,A)
【文献】特開2002-201060(JP,A)
【文献】特開2004-059351(JP,A)
【文献】特開2008-179512(JP,A)
【文献】特開2005-224713(JP,A)
【文献】特開2008-075270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 7/12
C04B 2/00 - 32/02
E01C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイディング材を破砕し、破砕されたサイディング材を生成する工程と、
前記破砕されたサイディング材、セメントおよび砂を混合する工程と、
前記混合されたものを成形する工程とを包含し、
前記セメントの単位量が412~460Kg/m
3であり、
前記破砕されたサイディング材の
乾燥質量の単位量が729~898Kg/m
3であり、
前記砂の
表面水を除いた単位量が0~325Kg/m
3
であり、
前記混合する工程が、水を投入する工程を含み、
前記投入された水の質量をWとし、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、前記破砕されたサイディング材の含水量をAwとし、前記セメントの質量をCとし、前記砂の表面水量をSwとした場合、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)が37%以下である、インターロッキングブロックを製造する方法。
【請求項2】
サイディング材を破砕し、破砕されたサイディング材を生成する工程と、
水の質量をWとし、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、前記破砕されたサイディング材の含水量をAwとし、セメントの質量をCとし
、砂の表面水量をSwとした場合、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)が37%以下になるように、前記水、前記破砕されたサイディング材、前記セメントおよび前記砂を計量する工程と、
前記計量された水、前記破砕されたサイディング材、セメントおよび砂を混合する工程と、
前記混合されたものを成形する工程とを包含し、
前記セメントの単位量が412~460Kg/m
3であり、
前記破砕されたサイディング材の
乾燥質量の単位量が729~898Kg/m
3であり、
前記砂の表面水を除いた単位量が0~325Kg/m
3
である、インターロッキングブロックを製造する方法。
【請求項3】
サイディング材を破砕し、破砕されたサイディング材を生成する工程と、
前記破砕されたサイディング材の含水量を求める工程と、
砂の表面水量を求める工程と、
前記破砕されたサイディング材、前記砂、セメントおよび水を混合する工程と、
前記混合された材料を型に流し込み固化する工程とを包含し、
前記セメントの単位量が412~460Kg/m
3であり、
前記砂の
表面水を除いた単位量が0~325Kg/m
3
であり、
前記破砕されたサイディング材の
乾燥質量の単位量が729~898Kg/m
3であり、
前記水の質量をWとし、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、前記破砕されたサイディング材の含水量をAwとし、前記セメントの質量をCとし、前記砂の表面水量をSwとした場合、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)が37%以下である、インターロッキングブロックを製造する方法。
【請求項4】
前記破砕されたサイディング材を生成する工程が、前記サイディング材を破砕機に投入する工程と、
前記破砕機のパンチングスクリーンの孔を通過するまで前記投入されたサイディング材を破砕する工程とを包含する請求項1~3のうちの1つに記載のインターロッキングブロックを製造する方法。
【請求項5】
前記パンチングスクリーンの孔の径が略1cmである請求項4に記載のインターロッキングブロックを製造する方法。
【請求項6】
前記サイディング材が廃材である請求項1~5のうちの1つに記載のインターロッキングブロックを製造する方法。
【請求項7】
破砕されたサイディング材、砂およびセメントを包含するインターロッキングブロックであって、
前記セメントの単位量が412~460Kg/m
3であり、
前記砂の
表面水を除いた単位量が0~325Kg/m
3であり、
前記破砕されたサイディング材の
乾燥質量の単位量が729~898Kg/m
3であり、
前記破砕されたサイディング材の大きさが、略1cmの径を有する孔を通ることができる大きさであるインターロッキングブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイディング材を含むインターロッキングブロックおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロッキングブロックの用途は多岐にわたっており、防草効果を狙うものや(特許文献1)、滑りを防止するもの(特許文献2)が知られている。
【0003】
また、インターロッキングブロックの原材料として、産業廃棄物または一般廃棄物の焼却灰が使われているもの(特許文献3)、リサイクル廃ガラスが使われているものがある(特許文献4)。
【0004】
例えば、特許文献3には、焼却灰等をアルミナセメントと混合焼成し、インターロッキングブロックに利用できることが記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、リサイクル発泡ガラスを含むインターロッキングブロックが記載されている。そのインターロッキングブロックがリサイクル発泡ガラスを含むことにより、その軽量化と保水性が図られる。
【0006】
また、特許文献5には、解体コンクリートを含むインターロッキングブロックが記載されている。解体コンクリートの再利用により、廃棄物の削減ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第2988337号公報
【文献】特許第3706308号公報
【文献】特許第3535334号公報
【文献】特許第4662336号公報
【文献】特許第5068082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、何れの特許文献も、住宅等の外壁材であるサイディング材を利用して、インターロッキングブロックを製造することを開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法は、破砕されたサイディング材、セメント、および砂を含むインターロッキングブロックを製造する際に、加水する水量を決定する方法であって、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量Ad、前記破砕されたサイディング材の含水量をAw、砂の表面水量Swおよびセメントの単位質量Cに基づいて、前記加水する水量を決定する。また、前記破砕されたサイディング材の質量、前記破砕されたサイディング材の含水率、前記砂の表面水率、前記砂の質量およびセメントの質量に基づいて、前記加水する水量が決定されてもよい。
【0010】
本発明の配合方法は、破砕されたサイディング材およびセメントを含むインターロッキングブロックを製造するための配合方法であって、水の総水量をWsとし、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、セメントの質量をCとした場合、Ws/(C+Ad)が所定の範囲になるようにする、破砕されたサイディング材およびセメントを含むインターロッキングブロックを製造する。総水量とは、サイディング材およびセメントを含むインターロッキングブロックの原料を混合する際に、その原料を混合するための混合槽にある全水の量である。なお、砂に含まれる水(砂の含水量)は、セメントの水和反応に余り影響を与えないため、前記総水量には含まれない。
【0011】
本発明のインターロッキングブロックを製造する方法は、サイディング材を破砕し、破砕されたサイディング材を生成する工程と、前記破砕されたサイディング材、セメントおよび砂を混合する工程と、前記混合されたものを成形する工程とを包含し、前記セメントの単位量が412~460Kg/m3であり、前記破砕されたサイディング材の単位量が0より大きく898Kg/m3以下であり、前記砂の単位量が0~332Kg/m3であり、前記混合する工程が、水を投入する工程を含み、前記投入された水の質量をWとし、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、前記破砕されたサイディング材の含水量をAwとし、前記セメントの質量をCとし、前記砂の表面水量をSwとした場合、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)が37%以下である。本発明の実施形態では、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)の下限は25%以上であってもよい。また、インターロッキングブロックの製造のしやすさを考慮すると、本発明のある実施形態では、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)の下限は30%以上であってもよい。本発明の別の実施形態では、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)の下限は35%以上であってもよい。
【0012】
本発明の別のインターロッキングブロックを製造する方法は、サイディング材を破砕し、破砕されたサイディング材を生成する工程と、水の質量をWとし、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、前記破砕されたサイディング材の含水量をAwとし、セメントの質量をCとし、砂の乾燥質量をSdとし、前記砂の表面水量をSwとした場合、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)が37%以下になるように、前記水、前記破砕されたサイディング材、前記セメントおよび前記砂を計量する工程と、前記計量された水、前記破砕されたサイディング材、セメントおよび砂を混合する工程と、前記混合されたものを成形する工程とを包含し、前記セメントの単位量が412~460Kg/m3であり、前記破砕されたサイディング材の単位量が0より大きく898Kg/m3以下であり、前記砂の単位量が0~332Kg/m3である。本発明の実施形態では、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)の下限は25%以上であってもよい。また、インターロッキングブロックの製造のしやすさを考慮すると、本発明のある実施形態では、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)の下限は30%以上であってもよい。本発明の別の実施形態では、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)の下限は35%以上であってもよい。
【0013】
本発明の他のインターロッキングブロックを製造する方法は、サイディング材を破砕し、破砕されたサイディング材を生成する工程と、前記破砕されたサイディング材の含水量を求める工程と、砂の表面水量を求める工程と、前記破砕されたサイディング材、前記砂、セメントおよび水を混合する工程と、前記混合された材料を型に流し込み固化する工程とを包含し、前記セメントの単位量が412~460Kg/m3であり、前記砂の単位量が0~332Kg/m3であり、前記破砕されたサイディング材の単位量が0より大きく898Kg/m3以下であり、前記水の質量をWとし、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、前記破砕されたサイディング材の含水量をAwとし、前記セメントの質量をCとし、前記砂の表面水量をSwとした場合、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)が37%以下である。本発明の実施形態では、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)の下限は25%以上であってもよい。また、インターロッキングブロックの製造のしやすさを考慮すると、本発明のある実施形態では、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)の下限は30%以上であってもよい。本発明の別の実施形態では、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)の下限は35%以上であってもよい。
【0014】
本発明の他の実施形態では、前記破砕されたサイディング材を生成する工程が、前記サイディング材を破砕機に投入する工程と、前記破砕機のパンチングスクリーンの孔を通過するまで前記投入されたサイディング材を破砕する工程とを包含してもよい。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態では、前記パンチングスクリーンの孔の径が略1cmであってもよい。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態では、前記サイディング材が廃材であってもよい。
【0017】
本発明のインターロッキングブロックは、破砕されたサイディング材、砂およびセメントを包含するインターロッキングブロックであって、前記セメントの単位量が412~460Kg/m3であり、前記砂の単位量が0~332Kg/m3であり、前記破砕されたサイディング材の単位量が0より大きく898Kg/m3以下であり、前記破砕されたサイディング材の大きさが、略1cmの径を有する孔を通ることができる大きさである。
【0018】
本発明のインターロッキングブロックは、破砕されたサイディング材およびセメントを包含するインターロッキングブロックであって、その密度が1.59~1.72g/cm3である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の、破砕されたサイディング材、セメント、および砂を含むインターロッキングブロックを製造する際に、加水する水量を決定する方法は、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量Ad、前記破砕されたサイディング材の含水量をAw、砂の表面水量Swおよびセメントの単位質量Cに基づいて、前記加水する水量を決定する。また、破砕されたサイディング材、セメント、および砂を含むインターロッキングブロックを製造する際に、加水する水量を決定する方法は、前記破砕されたサイディング材の質量、前記破砕されたサイディング材の含水率、前記砂の表面水率、前記砂の質量およびセメントの質量に基づいて、前記加水する水量を決定する。
【0020】
一般には、水とセメントの割合に基づき、セメント等を混合する際に加水する水量が決定される。しかし、本発明では、セメントと粉砕されたサイディング材を粉粒物として一体として扱い、水と粉粒物の割合に基づき、セメント等を混合する際に加水する水量が決定される。つまり、セメントと粉砕されたサイディング材を等価物と考え、セメントの一部を粉砕されたサイディング材に置き換えるという手法により、インターロッキングブロックに使用されるセメントの量の削減が図られる。
【0021】
本発明の、破砕されたサイディング材およびセメントを含むインターロッキングブロックを製造するための配合方法は、ミキサー内にある水の総水量をWsとし、前記破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、セメントの質量をCとした場合、Ws/(C+Ad)が所定の範囲になるようにする。
【0022】
本発明では、セメントと粉砕されたサイディング材を粉粒物として一体として扱い、水と粉粒物の割合、つまり、Ws/(C+Ad)に基づき、セメント等を混合する際に加水する水量が決定される。上述したように、インターロッキングブロックに使用されるセメントの量の削減が図られる。
【0023】
本発明の、インターロッキングブロックを製造する方法では、投入された水の質量をWとし、破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、破砕されたサイディング材の含水量をAwとし、セメントの質量をCとし、砂の表面水量をSwとした場合、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)が37%以下となる。
【0024】
粉砕されたサイディング材、セメント、および砂を含むインターロッキングブロックを製造する場合、粉砕されたサイディング材に含まれる水の量と砂の表面水の量を考慮する必要がある。セメントと粉砕されたサイディング材を粉粒物として一体として扱う場合、(水の質量W+サイディング材の含水量Aw+砂の表面水量Sw)/(セメントの質量C+粉砕されたサイディング材の乾燥質量Ad)=kを所定の範囲内にすることにより、その製造されたインターロッキングブロックに一定の圧縮強度を持たせることができる。
【0025】
Inge Lyseのセメント水比説によると、圧縮強度=α+β(C/W)と表すことができる。つまり、kを小さくすれば、本発明により製造されたインターロッキングブロックの圧縮強度は上がる。このため、kは、37%以下であることが好ましい。kの下限値は、インターロッキングブロックを製造しやすさ、例えば、セメントと粉砕されたサイディング材等が混合されたものの流動性によって決定されてもよい。kが37%以下であるため、本発明の方法により製造されたインターロッキングブロックは、所定の圧縮強度を有する。
【0026】
破砕されたサイディング材を生成する工程が、破砕機のパンチングスクリーンの孔を通過するまで投入されたサイディング材を破砕するため、破砕されたサイディング材を所定の大きさ以下にすることができる。また、サイディング材の全量が破砕され、その全量がインターロッキングブロックの原料となるため、サイディング材のリサイクルに役立つ。
【0027】
パンチングスクリーンの径が1cm前後であることが好ましい。前記パンチングスクリーンの径が1cmの半分以下では、サイディング材が粉状になり、インターロッキングブロックの圧縮強度が弱くなるからである。また、パンチングスクリーンの径が1.5cmや2cmでは、破砕されたサイディング材の大きさがそろわなくなる。一般的なサイディング材の厚さは、14mmまたは16mmであり、パンチングスクリーンの径がサイディング材の厚さ以上になるからである。また、破砕されたサイディング材の大きさがそろわなくなると造粒がしづらくなる。
【0028】
サイディング材が廃材である場合、産業廃棄物として処理されるものをリサイクルすることができ、環境保護に役立つ。
【0029】
本発明の、破砕されたサイディング材、砂およびセメントを混合し固めたインターロッキングブロックは、前記セメントの単位量が412~460Kg/m3であり、前記砂の単位量が0~332Kg/m3であり、前記破砕されたサイディング材の単位量が0より大きく898Kg/m3以下であり、前記破砕されたサイディング材の大きさが、略1cmの径を有する孔を通ることができる大きさである。
【0030】
サイディング材は、安定型産業廃棄物として取り扱うことができないため、その処理費用は、他の廃棄物に比べ高い。発明者が、あるサイディング材を砕いて株式会社環境総合リサーチへ溶出試験に出した。「セレンおよびその他の化合物」の土壌溶出量基準が0.01mg/l以下であるところ、そのサイディング材から溶出した「セレンおよびその他の化合物」が0.014mg/lと計量された。
【0031】
同様に、発明者が、本発明のインターロッキングブロックを砕いて同リサーチへ溶出試験に出したところ、そのインターロッキングブロックから溶出した「セレンおよびその他の化合物」が、0.001mg/lと計量された。これは、破砕されたインターロッキングブロックがセメントによりコーティングされることにより、外部に「セレンおよびその他の化合物」が溶出する量が減ったと考えられる。つまり、本発明のインターロッキングブロックは、安全にサイディング材をリサイクルすることができる。
【0032】
本発明の、破砕されたサイディング材およびセメントを包含するインターロッキングブロックは、その密度が1.59~1.72g/cm3である。一方、発明者が、量販店にて販売されている種類の異なる3つのインターロッキングブロックを購入し、その密度を測定したところ、2.11~2.33g/cm3であった。
【0033】
つまり、本発明のインターロッキングブロックは、市販のものに比べ軽い。このため、本発明のインターロッキングブロックは、その輸送に係るエネルギーを削減することができる。また、近年、工事現場における労働者の高齢化が問題になっているが、本発明のインターロッキングブロックは、高齢の労働者であっても扱いやすい。また、本発明のインターロッキングブロックはセメントを含んでおり、そのセメントでサイディング材がコーティングされているため、サイディング材を安全にリサイクルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、あるサイディング材を粉砕したものをガラス製の容器に入れ、その容器の外から撮影した写真である。
【
図2A】
図2Aは、造粒テストに用いたサイディング材を粉砕した粉体の写真である。
【
図2B】
図2Bは、造粒テストに用いたサイディング材を粉砕した粉体の写真である。
【
図2C】
図2Cは、造粒テストに用いたサイディング材を粉砕した粉体の写真である。
【
図4】
図4は、サイディング材を破砕し粉粒体にするフローの一例を示している。
【
図5】
図5は、本実施形態におけるインターロッキングブロックを製造するフローの一例を示している。
【
図6】
図6は、コンピュータ100とそれに入出力されるデータの一例を示している。
【
図7】
図7は、コンピュータ100が加水する水量を演算する工程の一例を示すフローである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、図面および表を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、あるサイディング材を粉砕したものをガラス製の容器に入れ、その容器の外部から撮影した写真である。日本窯業外装材協会によると、サイディング材は、セメント質材料、アスベストを除く繊維質原料、および砂や砂利以外の混和材を原料としている(日本窯業外装材協会のホームページ:http://www.nyg.gr.jp/toha/dekirumade.html)。また、JIS A 5422によると、サイディング材の主原料が、「セメント、けい酸質原料、石綿以外の繊維質原料、混和材料等」であることが規定されている。
【0036】
発明者は、
図1に示される粉砕されたサイディング材を観察した結果、粉砕されたサイディング材が、セメントに近いと判断し、粉砕されたサイディング材の乾燥質量Adと、その粉砕されたサイディング材の含水量Awと、セメントの単位質量Cとに基づいて、それらを混合する際に加える水量を決定する方法を考えた。
【0037】
つまり、本発明では、水セメント比ではなく、混合する際に混合槽にある水の総水量をWsとし、粉砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、セメントの質量をCとした場合、Ws/(C+Ad)によって、それらの配合を調整する。なお、本発明の実施形態では、セメントとして、ボルトランドセメントまたはそれと同様の物理的性質を有するものが用いられる。
【0038】
図2A~2Cは、造粒テストに用いたサイディング材を粉砕した粉体の写真である。
図2Aに示される粉体については、表1の番号1の条件で造粒が行われ、
図3Aに示される結果が得られた。また、
図2Bに示される粉体については、表1の番号2の条件で造粒が行われ、
図3Bに示される結果が得られた。また、
図2Cに示される粉体については、表1の番号3の条件で造粒が行われ、
図3Cに示される結果が得られた。
【0039】
表1のミキサー欄のAは、株式会社チヨダマシナリー製の高速剪断ミキサーDMK-50を示している。表1の番号1~3について造粒がなされる際には、その高速剪断ミキサーDMK-50が使用され、空練が回転数300rpmにて30秒間行われ、水が投入され混合が回転数700rpmにて5分間行われ、整粒が回転数200rpmにて2分間行われた。
【0040】
【0041】
表1の番号1~3に示す実験例では、粉砕されたサイディング材の乾燥質量Ad、その粉砕されたサイディング材の含水量Aw、およびセメントの質量Cに基づいて、それらに加水するための水の質量が決定される。つまり、(W+Aw)/(C+Ad)が所定の値になるように、加水される水の質量Wが決定される。
【0042】
図3A~3Cに示されるように、
図2A~2Cに示されるいずれの粉砕されたサイディング材についても、造粒が可能であった。しかし、これらの粉砕されたサイディング材から製造されたインターロッキングブロックの強度は、コンクリート平板の品質規格を満たすほど高くなかった。
【0043】
発明者は、この強度不足について、サイディング材を粉砕されたものが粉体のみであることと、または水分量が多いことが原因だと推測し、サイディング材を破砕されたものを粉粒体にすること、水分量を少なくすること、または破砕されたサイディング材以外に別の部材を付加することにより、問題を解決できると考えた。
【0044】
以下に、サイディング材を破砕し粉粒体にする一例について
図4を用いて説明する。
図4は、サイディング材を破砕し粉粒体にするフローの一例を示している。
【0045】
サイディング材を粉粒体に破砕する破砕装置は、サイディング材を投入するための投入口、サイディング材を破砕する回転刃、および回転刃により破砕され、所定の大きさ以下になったサイディング材を通す複数の孔を有するパンチングスクリーンを備えている(図示せず)。
【0046】
破砕装置では、サイディング材が投入されると(ステップS1)、自重または破砕装置のプレッシャーにより、サイディング材が回転刃に押しつけられ、破砕される(ステップS2)。破砕されたサイディング材は、パンチャースクリーンにある所定の大きさの孔を通過するまで破砕される(ステップS3)。つまり、サイディング材が全て破砕され粉粒体となり、この破砕された粉粒体の全量について、リサイクルが可能である。
【0047】
本実施形態では、パンチングスクリーンに空いた孔の径は略1cm、つまり1cm前後であることが好ましい。パンチングスクリーンの孔の径が1cmの半分以下の場合、破砕されたサイディング材は粉体となり、上述したようにインターロッキングブロックの圧縮強度が弱くなるからである。
【0048】
また、パンチングスクリーンの孔の径が1.5cmや2cmのように、1.5cmより大きい場合、破砕されたサイディング材の大きさがそろわなくなり、綺麗に造粒ができなくなる。これは、よく使われている一般的なサイディング材の厚さが14mmまたは16mmであるため、パンチングスクリーンの孔の径がサイディング材の厚さ以上となるからである。
【0049】
本実施形態におけるインターロッキングブロックを製造する方法の一例について、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態におけるインターロッキングブロックを製造するフローの一例を示している。
【0050】
作業者はサイディング材を用意し(ステップS10)、用意されたサイディング材が破砕機により破砕される(ステップS12)。ステップS10~S12にて、
図4に示されるステップS1~S3が行われてもよい。
【0051】
破壊されたサイディング材の含水率が測定される。含水率は、株式会社エー・アンド・デイ製の加熱乾燥式水分計によって測定されてもよい。また、含水率は重量含水率であってもよい。また、含水率の測定は、サイディング材の破砕前に行われてもよい。また、少なくとも1回含水率が測定された後については、ステップS10~ステップS16から含水率を測定するためのステップS14が省略されてもよい。インターロッキングブロックを製造するために使用される、破砕される前のサイディング材または破壊されたサイディング材の保管場所が同じであれば、含水率の変動幅は非常に小さくなり、無視することができるからである。
【0052】
その後、破壊されたサイディング材は計量され(ステップS16)、ミキサーに投入される。
【0053】
作業者は、砂を用意し(ステップS20)、その表面水率を測定する(ステップS24)。その後、砂は計量され(ステップS26)、ミキサーに投入される。表面水率は、JIS1111 2015またはそれに準ずる方法により計測されてもよい。また、少なくとも1回表面水率が測定された後については、ステップS20~ステップS26から表面水率を測定するためのステップS24が省略されてもよい。インターロッキングブロックを製造するために使用される砂の保管場所が同じであれば、表面水率の変動幅は非常に小さくなり、無視することができるからである。
【0054】
作業者は、セメントを用意し(ステップS30)、それが計量され(ステップS36)、ミキサーに投入される。
【0055】
作業者は、水を用意し(ステップS40)、それが計量され(ステップS36)、ミキサーに投入される。
【0056】
以下に、ミキサーに投入される水の制御方法の一例について、
図6を用いて説明する。
図6は、コンピュータ100とそれに入出力されるデータの一例を示している。
【0057】
コンピュータ100は、サイディング材の含水率、砂の表面水率、セメントの質量、破砕されたサイディング材の質量、砂の質量を受け取る。
【0058】
コンピュータ100は、サイディング材の含水率、砂の表面水率、セメントの質量、破砕されたサイディング材の質量、砂の質量に基づいて、インターロッキングブロックを製造する際に加水する水量を決定する。
【0059】
以下に、コンピュータ100が加水する水量を演算する工程の一例について
図7を用いて説明する。
図7は、コンピュータ100が加水する水量を演算する工程の一例を示すフローである。
【0060】
コンピュータ100は、サイディング材の含水率γと破砕されたサイディング材の質量Aを受け取り、それらに基づき、破砕されたサイディング材の乾燥質量Adと破砕されたサイディング材の含水量Awを演算する(ステップS100)。
【0061】
また、コンピュータ100は、砂の表面水率δと砂の質量Sを受け取り、それらに基づき、少なくとも砂の表面水量Swを演算する(ステップS110)。なお、ステップS110において、砂の乾燥質量Sdは演算されなくてもよい。
【0062】
次に、コンピュータ100は、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)がある値の範囲内kになるように、加水される水の質量Wを演算する(ステップS120)。なお、ステップS100とステップS110の順番は逆であってもよし、同時に行われてもよい。
【0063】
つまり、コンピュータ100は、破砕されたサイディング材の乾燥質量Ad、破砕されたサイディング材の含水量Aw、セメントの質量C、砂の表面水量Swから、投入される水量Wを演算する。その後、
図5のステップS46にて、水量Wに従い、ミキサーに投入される水の質量が計量される。
【0064】
ここで、セメントCの単位量が412~460Kg/m3であり、破砕されたサイディング材の単位量が0より大きく898Kg/m3以下であり、砂の単位量が0~332Kg/m3であり、破砕されたサイディング材の乾燥質量をAdとし、破砕されたサイディング材の含水量をAwとし、砂の乾燥質量をSdとし、砂の表面水量をSwとした場合、(W+Aw+Sw)/(C+Ad)が37%以下であることが好ましい。これは、インターロッキングブロックが所定の強度を確保するためである。また、インターロッキングブロックに含まれるサイディング材が0の場合、その強度について問題になることはない。しかし、生産し販売できるインターロッキングブロックの数が決まっているとすると、インターロッキングブロックに含まれるサイディング材が少なくなるということは、全体としてリサイクルすることができるサイディング材の量が減ることになる。
【0065】
なお、
図5に示される、ステップS10からS16までと、ステップS20からS26までと、ステップS30からS36までは、並列処理することが可能であり、それらが行われる順番は、順不同であってもよい。
【0066】
また、
図5に示されるフローでは、サイディング材の含水量Adが測定される工程(ステップS14)が破砕工程(ステップS12)の後に行われているが、破砕工程(ステップS12)の前にステップS14が行われてもよい。
【0067】
また、計量されたサイディング材の質量、計量された砂の質量、計量されたセメントの質量、含水率、表面水率に基づいて、ミキサーに投入される水の質量が調整されるため、ステップS16、ステップS26、およびステップS36が終了した後に、ステップS46の計量が行われる。また、ミキサーへの水の投入は、ミキサーに投入された部材を均一にするために、空練が終了した後に行われることが好ましい。
【0068】
なお、予めミキサーに投入される水量がわかっている場合、その水の一部が破砕されたサイディング材、砂およびセメントと共にミキサーに投入されてもよい。破砕されたサイディング材、砂およびセメントが投入される際または空練の際に生じる粉塵を抑えることができるからである。また、その投入される水量またはその散布方法によっては、それらを混合したもののまとまりがよくなるからである。
【0069】
ミキサーは、前記高速剪断ミキサーDMK-50を使用し、空練が回転数300rpmにて30秒間行われ、本練が回転数600rpmにて3分間行われた。ステップ50において、破砕されたサイディング材、砂、セメントおよび水が混合される。
【0070】
本練にて練り合わされたものは、型に流し込まれ、振動プレス後、即時脱型して、インターロッキングブロックが成形される(ステップS52)。実施例1および2と比較例1のインターロッキングブロックの寸法は、縦が30cmであり、横が30cmであり、高さが6cmである。
【0071】
その後、成形されたインターロッキングブロックを室温で4週間養生し、曲げひび割れ耐力試験を行った。この曲げひび割れ耐力試験において、コンクリート平板の品質規格であるJIS A 5371 2016に準拠して0.72kN・m以上を合格品とした。
【0072】
表2に、成形されたインターロッキングブロックの配合条件と、曲げひび割れ耐力試験の判定結果を示す。
【0073】
【0074】
上述したように発明者は、破砕されたサイディング材以外に別の部材を付加することにより、インターロッキングブロックの強度が増すと推測した。実際に、砂を含む実施例1のインターロッキングブロックの曲げひび割れ耐力は、0.91kN・mであり、砂を含まない実施例2のインターロッキングブロックの曲げひび割れ耐力は、0.75kN・mである。このように、インターロッキングブロックは砂を含有することにより、その強度が上がっている。
【0075】
また、発明者は、破砕されたサイディング材およびセメントを混合する際に加える水分量を少なくすることにより、インターロッキングブロックの強度が増すと推測した。上述したように実施例2のインターロッキングブロックの曲げひび割れ耐力は、0.75kN・mであるが、比較例1のインターロッキングブロックは、上記基準を満たしていなかった。
【0076】
実施例1のインターロッキングブロックの密度は、1.72g/cm3であり、実施例2のインターロッキングブロックの密度は、1.59g/cm3である。
【0077】
これは、実施例2のインターロッキングブロックが砂を含まないのに対して、実施例1のインターロッキングブロックが砂を含んでいるからである。つまり、実施例2のインターロッキングブロックの方が、実施例1のものよりも多くのサイディング材を含んでいるからである。
【0078】
発明者が、量販店にて販売されている種類の異なる3つのインターロッキングブロックを購入し、その密度を測定したところ、2.11~2.33g/cm3であった。
【0079】
実施例1および2のインターロッキングブロックは、市販のものに比べ軽いという特徴を有している。このため、本発明のインターロッキングブロックは、その輸送に係るエネルギーを削減することができる。また、近年、工事現場における労働者の高齢化が問題になっているが、実施例1および2のインターロッキングブロックは、市販のものに比べ軽いため、高齢の労働者であっても扱いやすい。
【0080】
ところで、比較例1のインターロッキングブロックの密度は、1.59g/cm3である。上述したように比較例1のインターロッキングブロックは、コンクリート平板の品質規格の評価基準値0.72kN・mの基準を満たしていない。
【0081】
しかし、インターロッキングブロックには、上述した縦が30cmであり、横が30cmであり、高さが6cmであるもの以外に、例えば、縦が10cmであり、横が20cmであり、高さが6cmであるものや、それ以外にも多くの寸法や形状が存在し、サイズ的に、曲げひび割れ耐力試験ができないものもある。また、インターロッキングブロックの用途によっては、曲げひび割れ耐力がコンクリート平板の品質規格等と比べて低くてもよい。
【0082】
このため、比較例1の配合であっても、用途によってはインターロッキングブロックとして使用でき、市販のものに比べ軽いため、比較例1のインターロッキングブロックは、その輸送に係るエネルギーを削減することができる。また、比較例1のインターロッキングブロックは、市販のものに比べ軽いため、高齢の労働者であっても扱いやすい。
【0083】
また、比較例1のインターロッキングブロックはセメントを含んでおり、そのセメントでサイディング材がコーティングされているため、サイディング材を安全にリサイクルすることができる。
【符号の説明】
【0084】
100 コンピュータ