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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
A61B3/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019026715
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020130525
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】辺 光春
(72)【発明者】
【氏名】高田 英夫
(72)【発明者】
【氏名】陳 紹郎
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-154704(JP,A)
【文献】特開2012-228309(JP,A)
【文献】特開2016-010630(JP,A)
【文献】特開2014-042650(JP,A)
【文献】特開2013-165952(JP,A)
【文献】特開2015-195876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の下瞼、上瞼の少なくとも一方の裏側におけるマイボーム腺が露出した状態において、前記マイボーム腺を、赤外線を出力する光源で照明して赤外線画像を撮影する赤外線撮影光学系と、
前記赤外線撮影光学系と光源以外の部品を共有し、露出した前記マイボーム腺を、白色光を出力する光源で照明して白色光画像を撮影する白色光撮影光学系と、
前記赤外線撮影光学系と前記白色光撮影光学系とを制御して、撮像素子における1フレーム分の期間以上、1秒以下である所定の間隔以内に、前記赤外線を出力する光源を点灯させ、前記白色光を出力する光源を消灯させた状態での前記赤外線画像の撮影と、前記赤外線を出力する光源を消灯させ、前記白色光を出力する光源を点灯させた状態での前記白色光画像の撮影と、を連続で実行させることによって、同じ状態の前記被検眼を示す前記赤外線画像と前記白色光画像とを撮影させる撮影制御部と、
前記赤外線画像と前記白色光画像とのそれぞれを表示部に表示する表示制御部と、
を備える眼科装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、
前記赤外線画像をモノクロ画像として前記表示部に表示させ、
前記白色光画像をカラー画像として前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
被検眼を赤外線で照明して赤外線画像を撮影する赤外線撮影光学系と、
前記被検眼を白色光で照明して白色光画像を撮影する白色光撮影光学系と、
前記赤外線撮影光学系と前記白色光撮影光学系とを制御して、撮像素子における1フレーム分の期間以上、1秒以下である所定の間隔以内に前記赤外線画像と前記白色光画像とを連続撮影させることによって、同じ状態の前記被検眼を示す前記赤外線画像と前記白色光画像とを撮影させる撮影制御部と、
前記赤外線画像と前記白色光画像とのそれぞれを表示部に表示する表示制御部と、
前記赤外線画像を着目画像、前記白色光画像を対比画像とし、前記着目画像上に存在するマイボーム腺の異常部位である着目部位を取得する着目部位取得部をさらに備え、
前記表示制御部は、
前記着目部位に対応する対応部位を前記対比画像上において特定し、
前記対比画像上に前記着目部位に対応する対応部位を表示する、
眼科装置。
【請求項4】
前記着目部位取得部は、
検者が前記着目画像上で指定した部位を前記着目部位として取得する、
請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記赤外線撮影光学系と、前記白色光撮影光学系と、の少なくとも一部は部品を共有している、
請求項3または請求項4に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、
前記赤外線画像をモノクロ画像として前記表示部に表示させ、
前記白色光画像をカラー画像として前記表示部に表示させる、
請求項3~請求項5のいずれかに記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼を赤外線で照射して撮影した画像に基づいて被検眼を検査する眼科装置が知られている。例えば、特許文献1においては、赤外線を含む光を光源から放射し、被観察部からの反射光を赤外線カメラで撮影する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5281846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
眼科装置を操作する検者は、通常、白色光のような可視光が被検眼に照射されている状態で被検眼を観察する。従って、赤外線が照射された状態で撮影された赤外線画像に基づいて、疾患部位などの特定の部位に着目しようとしても、当該特定の部位を実際の被検眼において特定することが困難になる場合があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、赤外線画像内の被検眼と実際の被検眼との対応関係を特定しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、眼科装置は、被検眼を赤外線で照明して赤外線画像を撮影する赤外線撮影光学系と、被検眼を白色光で照明して白色光画像を撮影する白色光撮影光学系と、赤外線撮影光学系と白色光撮影光学系とを制御して、同じ状態の被検眼を示す赤外線画像と白色光画像とを撮影させる撮影制御部と、赤外線画像と白色光画像とのそれぞれを表示部に表示する表示制御部と、を備える。
【0006】
すなわち、眼科装置は、赤外線と白色光とによって同じ状態の被検眼を撮影し、撮影された赤外線画像と白色光画像とのそれぞれを表示部に表示する。従って、眼科装置においては、赤外線画像と白色光画像とを対比することによって、両画像内の被検眼を容易に対応づけることができる。白色光画像は、白色光下で被検眼が撮影された画像であるため、白色光画像内の被検眼の像の色は白色光下で視認される被検眼の色とほぼ一致する。従って、赤外線画像の被検眼と白色光画像の被検眼とを対応づけることができれば、赤外線画像内の被検眼と実際の被検眼との対応関係を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】眼圧を測定する際に利用される光学系を示す図である。
図2】眼屈折力を測定する際に利用される光学系、赤外線画像および白色光画像を撮影する際に利用される光学系を示す図である。
図3】制御部を含めた本発明の一実施例に係る眼科装置の全体構成を説明するブロック図である。
図4図4Aは撮影・表示処理のフローチャートであり、図4Bは着目部位観察処理のフローチャートである。
図5】赤外線画像と白色光画像の表示例を示す図である。
図6】画像強調を行う画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)眼科装置の構成:
(2)撮影・表示処理:
(3)着目部位観察処理:
(4)他の実施形態:
【0009】
(1)眼科装置の構成:
本発明の一実施形態にかかる眼科装置1は筐体を備えおり、筐体内には、複数の種類の観察、測定に利用される光学系および制御部が備えられている。本実施形態において眼科装置1は、被検眼の画像を表示部に表示してマイボーム腺の異常部位を観察する機能と、眼屈折力を測定する機能と、眼圧を測定する機能とを有している。本実施形態において、マイボーム腺の異常部位を観察するための光学系と、眼屈折力を測定するための光学系と、眼圧を測定するための光学系は一部の部品を共有している。
【0010】
図1および図2は、これらの光学系を示す図である。図3は制御部を含めた本発明の一実施例に係る眼科装置1の全体構成を説明するブロック図である。これら図1図3を用いて本発明の一実施例に係る眼科装置1について以下に説明する。眼科装置1は図3に示すように、被検眼を測定するための光学系が配置されたヘッド部602と、ヘッド部602の中の光学系や切替部の回転動作などを制御する制御部600を備えた本体部601によって構成される。
【0011】
なお、本体部601は、ヘッド部602を本体部601に対してXYZ(左右、上下、前後)方向に移動させるXYZ駆動制御部630、ヘッド部602の空間位置の調整等を支持するジョイスティック640、撮影された被検眼の画像や、眼屈折力、眼圧等の測定結果を表示する表示部650、測定項目等の指示を受け付けるタッチパネル660、制御部600の制御処理において利用されるメモリ670、固視標部(後述)を制御する固視標制御部680を備えている。
【0012】
(眼圧測定光学系)
図1には被検眼の眼圧測定を行う全体光学系(眼圧検査光学系)を示す。眼圧測定光学系は、光源101からプロファイルセンサ107、108に至る光路上の光学素子等を含むアライメント光学系100を備えている。また、眼圧測定光学系は、光源301a、302a、301b、302bから2次元撮像素子(CCD)306に至る光路上の光学素子等を含む観察光学系300を備えている。さらに、眼圧測定光学系は、光源401から反射ミラー404を経て被検眼Eに至る光路上の光学素子等を含む固視光学系400と、光源201からノズル205に至る光路上の光学素子等を含み被検眼の角膜の変形度合いを検出する変位変形検出受光光学系200とを備えている。図1に示すように眼圧測定光学系を構成する各光学系はその一部が共有される構成になっている。本実施形態においては、被検眼の眼前に配置される見口部を切り替えることができる。眼圧測定の際には切替部が回転されて位置決めされ、眼圧測定のためのノズル205が被検眼の眼前に配置される。
【0013】
(アライメント光学系100)
アライメント光学系100は、光源101からの光がホットミラー102で反射され、対物レンズ103を通り、ホットミラー104で反射された後、平面ガラス206およびノズル205の開口部を通り被検眼Eの角膜に照射する。本実施例では、光源101は赤外光を出力するLEDが採用されている。
【0014】
角膜で反射された光は、主光軸O1に対して対称的に配置された第1の検出部であるレンズ105およびプロファイルセンサ107、第2の検出部であるレンズ106およびプロファイルセンサ108で受光される。本実施形態においては、被検眼の3次元方向の位置が適正な位置である場合に、角膜で反射された光がプロファイルセンサ107およびプロファイルセンサ108で検出される位置が予め決められている。本体部601の制御部600は、角膜で反射された光がプロファイルセンサ107およびプロファイルセンサ108で検出される位置が予め決められた位置になるように、XYZ駆動制御部630に指示を行うことで3次元方向にヘッド部602を移動させる。この結果、ヘッド部602およびその内部の光学系が、被検眼に対して3次元方向にアライメントされる。
【0015】
なお、アライメントを実施する手法は種々の手法が採用されてよい。例えば、検者が粗アライメントを行った後に、制御部600がオートアライメント(微調整)を実施する構成等を採用可能である。なお、粗アライメントは、例えば、表示部650に表示された被検眼の画像上で検者が角膜からの反射による輝点を視認し、さらに、ジョイスティック640で輝点を所定の範囲に入るようにヘッド部602を移動させるなどの手法を採用可能である。むろん、アライメント光学系は、図1図2に示される例に限定されず、例えば、Z方向のアライメントを行う光学系とXY方向のアライメントを行う光学系が別の光学系(一部重複含む)である構成等が採用されてもよい。
【0016】
(観察光学系300)
観察光学系300は、光源301a、302a、301b、302bを備えている。本実施形態において、光源301a、302aは赤外線を出力する光源であり、光源301b、302bは白色光を出力する光源である。なお、白色光は、当該白色光が照射された被検眼がフルカラーで視認されるような分光分布であれば良く、色温度や波長毎の光の強度は限定されない。
【0017】
眼圧測定の際に観察光学系300が利用される場合、ヘッド部602の被検眼側に配置された光源301aおよび光源302aにより被検眼の角膜部を含む前眼部領域が照射される。この状態で、対物レンズ303、結像レンズ305および2次元撮像素子306により、被検眼の前眼部画像が取得され、取得された被検眼の前眼部画像が表示部650に表示される。光源301aおよび光源302aおよびアライメント用の光源101は赤外光を出力するLEDが採用されるが、光源301aおよび光源302aは光源101より短波長の光が採用される。そのため、ホットミラー104は観察用の光(観察光)は透過し、アライメント用の光(アライメント光、光源101からの光)は反射する。また、ダイクロイックミラー304は、観察光は透過するように反射/透過の波長領域が設定されている。これにより、アライメント光と観察光は適切に分割され、各々の測定を可能にしている。
【0018】
(固視光学系400)
固視光学系400が利用される場合、光源401からの光(固視光)がホットミラー402で反射され、リレーレンズ403を通り、反射ミラー404で反射される。この後、光はホットミラー506を透過し、ダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通り、対物レンズ303、ホットミラー104を通って、被検眼の網膜上で結像する。そのため、光源401と被検眼の網膜位置は略共役であることが望ましい。被検眼は固視光に基づいて固視され、眼圧測定などの眼特性の測定が可能になる。光源401は被検者が視認可能な可視光を出力するLEDが採用される。
【0019】
(変位変形検出受光光学系200)
変位変形検出受光光学系200が利用される場合、光源201からの光(変形検出光)の一部がハーフミラー202を透過後、ホットミラー102、対物レンズ103を透過し、ホットミラー104で反射して主光軸O1を通る。さらに、光は、平面ガラス206、ノズル205の開口部を通って、被検眼の角膜に照射する。角膜に照射した光は角膜で反射し、逆の経路で、ノズル205の開口部、平面ガラス206を通過し、ホットミラー104で反射して対物レンズ103、ホットミラー102を通り、その一部がハーフミラー202で反射される。その後、光は、集光レンズ203により、受光素子204で受光される。眼圧測定時は、ノズル205の先端に設けられた空気噴出口から圧縮された空気が被検眼の角膜に向けて噴射される。空気が噴射されると角膜は変位変形するため受光素子204で受光する光量が変化する。この光量の変化の度合いから被検眼の眼圧値を算出するのである。光源201も赤外光を出力するLEDが採用されるが、観察光より長波長で、かつ、アライメント光より短波長を光が選択され、採用される。このように、アライメント光、観察光、固視光、変形検出光(光源201からの光)の波長が設定され、ホットミラー102、104、506、402およびダイクロイックミラー304の反射/透過特性を適宜設定することにより、これら4つの光が適切な光路に沿って進むように構成されているのである。
【0020】
(眼屈折力測定光学系)
図2には被検眼の眼屈折力測定を行う全体光学系(眼屈折力測定光学系)を示す。眼屈折力測定光学系は、光源101からプロファイルセンサ107、108に至る光路上の光学素子等を含むアライメント光学系100を備えている。また、眼屈折力測定光学系は、光源301a、302aから2次元撮像素子306に至る光路上の光学素子等を含む観察光学系300を備えている。さらに、眼屈折力測定光学系は、光源514から固視標512、反射ミラー404を経て被検眼Eに至る光路上の光学素子等を含む固視光学系400を備えている。さらに、眼屈折力測定光学系は、光源501からミラー503や平面ガラス511を経て被検眼Eに至る光路上の光学素子等を含み、被検眼の眼屈折力を検出する眼屈折力光学系500から構成される。図2に示すように眼屈折力測定光学系を構成する各光学系はその一部が共有される構成になっている。そして、眼屈折力測定の際には切替部が回転されて位置決めされ、眼屈折力測定のための平面ガラス510および511が被検眼の眼前に配置される。
【0021】
アライメント光学系100と観察光学系300は上述の眼圧測定時と同じであるので、ここでは、説明を省略する。固視光学系400は、眼圧測定時とは一部異なるため、以下に説明する。
【0022】
(固視光学系400:眼屈折力測定)
眼屈折力を測定する場合は、眼圧測定時に用いた光源401を消灯して、別の光源である光源514を点灯する。光源514からの光はコリメータレンズ513で平行光とされ、固視標512に照射される。そして、固視標512からの光はホットミラー402、リレーレンズ403を透過した後、反射ミラー404で反射し、ホットミラー506を透過して、ダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通る。この後、光は、対物レンズ303、ホットミラー104、平面ガラス511、510を透過して、被検眼Eの網膜上で結像する。そのため、固視標512と被検眼の網膜位置は略共役であることが望ましい。被検眼は固視標512に基づいて固視される。眼屈折力を測定する際は、制御部600が固視標制御部680に制御指示を出力する。この結果、固視標制御部680は、固視標と被検眼の網膜位置が略共役になるように固視標部(固視標512、コリメータレンズ513および光源514)を移動制御して被検眼を固視させる。その後、制御部600が固視標制御部680に制御指示を出力し、固視標制御部680が固視標部を所定距離移動して雲霧状態にしてから、眼屈折力を測定する。そのため、制御部600からの信号により固視標部は光軸に沿って前後に移動可能となっている。光源514は光源401より短波長である被検者が視認可能な可視光を出力するLEDが採用される。
【0023】
(眼屈折力光学系500)
眼屈折力光学系500が利用される場合、光源501からの光(レフ光)が集光レンズ502で集光し、ミラー503で反射して穴あきミラー504の中心にある穴を通る。そして、光軸O2に対して斜めに配置し、図示しない駆動部により光軸O2を中心に回転する平行平面ガラス505を光が透過した後、光は、ホットミラー506およびダイクロイックミラー304で反射して主光軸O1を通る。そして、光は、対物レンズ303、ホットミラー104、平面ガラス511および平面ガラス510を透過して被検眼Eの網膜に照射する。そして、被検眼Eの網膜からの反射光は、照射時とは逆の経路で、平面ガラス510、平面ガラス511、ホットミラー104および対物レンズ303を透過する。さらに、光は、ダイクロイックミラー304およびホットミラー506で反射して光軸O2を通り、平行平面ガラス505を透過した後、穴あきミラー504で反射し、レンズ507を透過する。その後、光は、リングレンズ508により、2次元撮像素子(CCD)509でリング状に結像(リング像)する。光源501は、アライメント光(光源101)や観察光(光源301aおよび302a)より長波長の赤外光が採用されている。本実施例では、波長870nmのSLD(スーパールミネッセントダイオード)を採用しているが、これに限定するものではなく、光源101などに採用したLEDやレーザーダイオード(LD)を採用してもよい。
【0024】
ここで、平行平面ガラス505は被検眼Eの瞳孔に共役となる位置に配置されている。レフ光(光源501からの光)は、光軸O2に対して斜めに配置した平行平面ガラス505に入射すると屈折して光軸O2に対して所定距離(例えばΔH)ずれる。上述のように、平行平面ガラス505は光軸O2を中心に回転するため、平行平面ガラス505を透過したレフ光は平行平面ガラス505の位置で、半径ΔHで回転する。平行平面ガラス505は被検眼Eの瞳孔位置と共役な位置に配置されているため、被検眼Eの瞳孔位置で所定(一定)の半径(例えばΔh)で回転しながら被検眼の網膜上に照射する。このため、レフ光は被検眼Eの網膜上で被検眼Eの眼屈折力に応じた大きさや形状を持つ円状に結像される。CCD509は被検眼Eの網膜と共役の位置に配置されているため、CCD509で取得したリング像を解析することにより、被検眼の眼屈折力を求めることができるのである。
【0025】
(赤外線撮影光学系および白色光撮影光学系)
本実施形態にかかる眼科装置1においては、以上の測定に加え、マイボーム腺の異常部位の観察を実行可能である。マイボーム腺の異常部位の観察は、赤外線および白色光を利用して被検眼を撮影することによって実施される。本実施形態においては、見口部が図2と同一の状態でマイボーム腺の異常部位が観察される。すなわち、被検眼の下瞼、上瞼の少なくとも一方の裏側が露出した状態で被検眼が撮影される。本実施形態においては、被検眼が赤外線で照明された状態で赤外線画像が撮影され、さらに、被検眼が白色光で照明された状態で白色光画像が撮影される。
【0026】
赤外線画像が撮影される場合、赤外線を出力する光源301aおよび光源302aにより被検眼の角膜部を含む前眼部領域が照射される。この状態で、対物レンズ303、結像レンズ305および2次元撮像素子306により、被検眼の赤外線画像が取得される。従って、本実施形態において赤外線撮影光学系は、光源301aおよび光源302a、対物レンズ303、結像レンズ305および2次元撮像素子306を備えている。なお、2次元撮像素子306は、赤、緑、青の各色の光を検出可能な汎用的なセンサであるが、当該センサの特定の色チャンネル(例えば、赤用のチャンネル)によって赤外線の波長域の光の強度を検出することができる。
【0027】
白色光画像が撮影される場合、白色光を出力する光源301bおよび光源302bにより被検眼の角膜部を含む前眼部領域が照射される。この状態で、対物レンズ303、結像レンズ305および2次元撮像素子306により、被検眼の白色光画像が取得される。従って、本実施形態において白色光撮影光学系は、光源301bおよび光源302b、対物レンズ303、結像レンズ305および2次元撮像素子306を備えている。このように、本実施形態において、赤外線撮影光学系と白色光撮影光学系とは、光源以外の部品を共有している。このため、ヘッド部602を簡易な構成とすることができ、また、被検眼の同じ状態(後述)の画像を容易に撮影することができる。
【0028】
制御部600は、図示しない制御プログラムを実行することによって撮影制御部600a、表示制御部600bとして機能する。撮影制御部600aは、観察光学系300に含まれる赤外線撮影光学系と白色光撮影光学系とを制御して、同じ状態の被検眼を示す赤外線画像と白色光画像とを撮影させる機能を制御部600に実行させる。
【0029】
具体的には、本実施形態において観察光学系300は、図示しないレンズの駆動部を備えている。制御部600は、撮影制御部600aの機能により、当該駆動部を制御して対物レンズ303、結像レンズ305の少なくとも一方を光軸方向に移動させることができる。この結果、制御部600は、被検眼を2次元撮像素子306上に合焦させることができる。
【0030】
また、制御部600は、撮影制御部600aの機能により、2次元撮像素子306の撮影タイミングを制御することができる。撮影された赤外線画像および白色光画像は、制御部600に取得され、メモリ670に記録される。なお、対物レンズ303、結像レンズ305は、各種のレンズで構成されていて良く、レンズの数も限定されない。
【0031】
表示制御部600bは、赤外線画像と白色光画像とのそれぞれを表示部650に表示する機能を制御部600に実行させる。すなわち、制御部600は、メモリ670に記録された赤外線画像と白色光画像とを取得し、表示部650に表示させる。
【0032】
本実施形態においては、被検眼の下瞼、上瞼の少なくとも一方の裏側が露出した状態で被検眼が撮影され、撮影された赤外線画像が表示部650に表示されることによって被験者のマイボーム腺を観察することができる。すなわち、マイボーム腺は、皮脂を分泌する器官であり、赤外線照明下においては白色光照明下よりもマイボーム腺が明確になる。従って、表示部650に表示された赤外線画像によれば、マイボーム腺の観察が容易であり、マイボーム腺の異常等の観察も容易である。
【0033】
しかしながら、赤外線画像において着目した部位を、検者が白色光下で実際の被検眼において特定し、観察する場合、着目した部位が正確に特定できない場合がある。すなわち、赤外線画像内の被検眼の像と白色光下での被検眼とは異なって見えるため、赤外線画像において着目した部位を白色光下の被検眼で特定することは一般に困難である。そこで、本実施形態においては、被検眼を白色光照明下でも撮影し、赤外線画像と白色光画像とのそれぞれを表示部に表示するように構成されている。
【0034】
さらに、赤外線画像内の被検眼の像と、白色光画像内の被検眼の像とが異なる状態であると、両画像を対比して赤外線画像内の着目部位を白色光画像内で特定することが困難である。そこで、本実施形態においては、同じ状態の被検眼を示す赤外線画像と白色光画像とを撮影するように構成されている。
【0035】
(2)撮影・表示処理:
以下、赤外線画像および白色光画像の撮影と表示を行うための撮影・表示処理について説明する。図4Aは、撮影・表示処理を示すフローチャートである。被験者が自身の頭部をヘッド部602の既定位置にセットすると、検者は被検眼の下瞼、上瞼の少なくとも一方の裏側を露出させる。この状態で検者がタッチパネル660を操作してマイボーム腺の観察開始を指示すると、制御部600は、撮影・表示処理を開始する。撮影・表示処理が開始されると、制御部600は、アライメント動作を開始する。
【0036】
アライメント動作においてまず制御部600は、被検眼位置を検出する(ステップS100)。具体的には、制御部600は、撮影制御部600aの機能により、光源101を点灯させる。この結果、光源101からの赤外光がホットミラー102、対物レンズ103、ホットミラー104を介して被検眼Eの角膜に照射する。赤外光は角膜で反射され、レンズ105を介してプロファイルセンサ107で受光され、また、レンズ106を介してプロファイルセンサ108で受光される。制御部600は、当該プロファイルセンサ107,108で受光された反射光に基づいて、被検眼Eの位置を検出する。
【0037】
次に、制御部600は、ヘッド部602を基準位置に移動させる(ステップS105)。すなわち、制御部600は、XYZ駆動制御部630に指示を行い、ヘッド部602を移動させる。この際、制御部600は、被検眼Eを撮影可能な位置として予め決められた基準位置に向けてヘッド部602が既定量移動するようにXYZ駆動制御部630に指示を行う。具体的には、ヘッド部602が基準位置に存在する際に、プロファイルセンサ107,108上で角膜からの反射光が受光される位置は予め決められている。そこで、制御部600は、角膜からの反射光が予め決められた位置に向けて移動するように、ヘッド部602を既定量移動させる。
【0038】
次に、制御部600は、ヘッド部602が基準位置に到達したか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、制御部600は、プロファイルセンサ107,108で受光された反射光の位置が、予め決められた位置である場合に、ヘッド部602が基準位置に到達したと判定する。ステップS110において、ヘッド部602が基準位置に到達したと判定されない場合、制御部600は、ステップS105以降の処理を繰り返す。
【0039】
一方、ステップS110において、ヘッド部602が基準位置に到達したと判定された場合、制御部600は、撮影制御部600aの機能により、レンズ位置を連続で移動させながら赤外線画像と白色光画像を撮影する(ステップS115)。すなわち、制御部600は、撮影制御部600aの機能により、観察光学系300におけるレンズの駆動部を制御し、対物レンズ303、結像レンズ305の少なくとも一方を光軸方向に移動させる。本実施形態において、当該レンズの移動は、予め決められた範囲でのスキャン動作であり、レンズによる合焦位置が初期位置から終了位置まで光軸方向に沿って一方向に移動するようにレンズを移動させる。レンズは、赤外線画像と白色光画像の撮影が行われるたびに既定ステップ分移動される。
【0040】
そこで、まず、制御部600は、レンズを初期位置にセットする。さらに、制御部600は、撮影制御部600aの機能により観察光学系300を制御し、赤外線を出力する光源301a,302aを点灯させ、白色光を出力する光源301b,302bを消灯させる。さらに、制御部600は、撮影制御部600aの機能により観察光学系300を制御し、2次元撮像素子306で赤外線画像を撮影し、メモリ670に記録する。すなわち、制御部600は、2次元撮像素子306の出力に基づいて各画素において検出された赤外線の強度を取得し、赤外線の強度を示す階調値が画素毎に示された画像データを赤外線画像のデータとしてメモリ670に記録する。
【0041】
また、制御部600は、撮影制御部600aの機能により観察光学系300を制御し、赤外線を出力する光源301a,302aを消灯させ、白色光を出力する光源301b,302bを点灯させる。さらに、制御部600は、撮影制御部600aの機能により観察光学系300を制御し、2次元撮像素子306で白色光画像を撮影し、メモリ670に記録する。すなわち、制御部600は、2次元撮像素子306の色チャンネル毎の出力に基づいて各画素において検出された各色の光の強度を取得し、各色の光の強度を示す階調値が画素毎に示された画像データを白色光画像のデータとしてメモリ670に記録する。
【0042】
赤外線画像と白色光画像とが撮影されると、制御部600は、撮影制御部600aの機能により観察光学系300を制御し、対物レンズ303、結像レンズ305の少なくとも一方を既定ステップ分移動させる。この後、再度赤外線画像と白色光画像との撮影を行い、以後、レンズの終了位置まで既定ステップ分の移動と赤外線画像および白色光画像の撮影を繰り返す。
【0043】
以上の撮影において、レンズ位置が同一の状態で撮影される赤外線画像と白色光画像との撮影間隔は1フレーム分の期間である。本実施形態において、2次元撮像素子306は60fpsで撮影可能な素子であり、1フレーム分の期間は、1/60秒である。従って、これらの赤外線画像と白色光画像は、ほぼ同時に撮影される。このため、レンズ位置が同一の期間に撮影された赤外線画像と白色光画像に写された被検眼は同じ状態の被検眼であると言える。
【0044】
また、レンズ位置の移動も1フレーム程度の時間で実施され、移動後にはすぐに撮影が行われるため、レンズ位置が数ステップ分移動される過程で撮影された赤外線画像と白色光画像に写された被検眼は同じ状態の被検眼であると言える。すなわち、被験者の頭部がヘッド部602に対して固定され、検者が被験者の瞼の裏を露出させた状態で撮影が行われた場合、例えば、0.5秒~1秒程度の間に撮影が行われた場合、この間に被検眼はほとんど動かない。従って、この程度の間に撮影された赤外線画像と白色光画像とは、同じ状態の被検眼の撮影結果を示していると言える。
【0045】
次に、制御部600は、撮影制御部600aの機能により、コントラストが一番高い赤外線画像と白色光画像とを取得する(ステップS120)。すなわち、本実施形態においては、コントラストが一番高い画像が合焦した状態で撮影された画像であると見なしている。そこで、制御部600は、メモリ670に記録された赤外線画像と白色光画像とのそれぞれのコントラストを特定し、コントラストが一番高い赤外線画像と白色光画像とを一枚ずつ取得する。
【0046】
むろん、コントラストの特定法は、公知の種々の手法が採用されてよいし、合焦した状態の画像を取得するための構成は他にも種々の構成を採用可能である。例えば、制御部600が、レンズ位置を移動させながら赤外線画像と白色光画像とのそれぞれでコントラストが一番高くなる位置を特定し、当該位置で撮影された赤外線画像と白色光画像とを取得しても良い。
【0047】
以上のようにしてコントラストが一番高い赤外線画像と白色光画像とが取得された場合、各画像は合焦した状態で撮影された画像であるため、被検眼を明確に認識することができる。赤外線画像と白色光画像とが撮影される観察光学系300は、光源以外の光学系が共通であるとともに、赤外線と白色光の波長は近接している。従って、コントラストが一番高くなる赤外線画像と白色光画像は、レンズ位置が同一である状態か、ほぼ同一である状態で撮影された画像である。従って、ステップS120によって取得された赤外線画像と白色光画像は、同じ状態の被検眼の撮影結果を示していると言える。
【0048】
次に、制御部600は、表示制御部600bの機能により、赤外線画像と白色光画像とを表示させる(ステップS125)。すなわち、制御部600は、表示部650を制御し、ステップS120で取得された赤外線画像と白色光画像とを表示させる。なお、本実施形態において制御部600は、赤外線画像をモノクロ画像として表示部650に表示させ、白色光画像をカラー画像として表示部650に表示させる。
【0049】
すなわち、ステップS120で取得された赤外線画像の画像データは、赤外線の強度を画素毎に示すデータである。そこで、制御部600は、各画素の階調値の大きさが輝度であると見なしてモノクロ画像を生成し、表示部650に表示させる。一方、ステップS120で取得された白色光画像の画像データは、色チャンネル毎の光の強度を画素毎に示すデータである。そこで、制御部600は、各画素の色毎の階調値の大きさが各色の強度であると見なしてカラー画像を生成し、表示部650に表示させる。
【0050】
この結果、同じ状態の被検眼を赤外線照明下で撮影した赤外線画像と、白色光照明下で撮影した白色光画像とが、表示部650上に同時に表示される。これらの画像を表示するための画面構成は、種々の態様であって良い。図5は、赤外線画像と白色光画像との表示例を示す図である。図5においては、ある被験者の右眼および左眼のそれぞれについて撮影された赤外線画像と白色光画像とを同時に表示する構成が採用されている。図5においては、Rと示されたアイコンI1が右眼、Lと示されたアイコンI2が左眼を示しており、画面の左側に右眼の画像、画面の右側に左眼の画像が示される。
【0051】
さらに、図5に示す例では、上部に白色光画像が表示され、下部に赤外線画像が表示される。従って、左上に設けられた領域Irwlが右眼の白色光画像の表示領域であり、左下に設けられた領域Irirが右眼の赤外線画像の表示領域である。また、右上に設けられた領域Ilwlが左眼の白色光画像の表示領域であり、右下に設けられた領域Ilirが左眼の赤外線画像の表示領域である。図5では表現できていないが、実際には、領域Irwlに右眼の白色光画像がカラー画像で表示され、領域Irirに右眼の赤外線画像がモノクロ画像で表示される。また、領域Ilwlに左眼の白色光画像がカラー画像で表示され、領域Ilirに左眼の赤外線画像がモノクロ画像で表示される。
【0052】
以上の構成によれば、検者は、領域Irir、Ilirに表示された赤外線画像に基づいて、容易にマイボーム腺を視認し、異常が疑われる着目部位を特定可能である。本実施形態においては、赤外線画像が表示される領域Irir、Ilirのそれぞれに隣接した領域Irwl、Ilwlのそれぞれに白色光画像が表示されるため、赤外線画像に基づいて特定された着目部位を白色光画像内で容易に対比させることができる。
【0053】
(3)着目部位観察処理:
本実施形態においては、このような対比をより簡単に実行できるようにするための構成を有している。すなわち、本実施形態においては、赤外線画像を着目画像、白色光画像を対比画像とし、着目画像である赤外線画像内の着目部位を取得し、当該着目部位に対応する対応部位を対比画像である白色光画像上に表示する構成を備えている。
【0054】
当該対比のための処理は、制御部600において図示しない制御プログラムが実行されることによって実現される。すなわち、検者がタッチパネル660等によって着目部位の観察処理を開始する指示を行うと、制御部600は当該制御プログラムを実行し、着目部位取得部600cとして機能する。そして、制御部600が、着目部位取得部600cの機能により、図4Bに示す着目部位観察処理を実行することによって対比が行われる。
【0055】
具体的には、着目部位観察処理が開始されると、制御部600は、着目部位取得部600cの機能により、着目部位の指定を受け付ける(ステップS200)。すなわち、制御部600は、ジョイスティック640やタッチパネル660に対する検者の操作を受け付け、赤外線画像内の着目部位の指定を受け付ける。本実施形態において、着目部位はマイボーム腺の異常部位である。従って、検者は、ジョイスティック640やタッチパネル660を操作して、マイボーム腺の異常が疑われる部位を特定し、赤外線画像上で指定する。
【0056】
次に、制御部600は、着目部位を表示する(ステップS205)。すなわち、制御部600は、表示部650を制御し、ステップS200で受け付けた着目部位に当該着目部位を示すアイコンを表示させる。図5においては、領域Ilirに表示された左眼の赤外線画像上で円形のアイコンによって着目部位Paが表示された状態を示している。
【0057】
次に、制御部600は、表示制御部600bの機能により、受け付けた位置に対応する対応部位を特定する(ステップS210)。すなわち、赤外線画像と白色光画像とは、双方とも2次元撮像素子306で撮影され、かつ、それぞれの撮影はほぼ同時に行われる。従って、赤外線画像上での特定の位置に存在する像は、白色光画像上でも同一の位置に存在する。そこで、制御部600は、ステップS200で指定された着目部位の座標が対応部位の画像であると見なす。
【0058】
次に、制御部600は、対応部位を表示する(ステップS215)。すなわち、制御部600は、表示部650を制御し、ステップS210で特定された対応部位に当該対応部位を示すアイコンを表示させる。図5においては、領域Ilwlに表示された左眼の白色光画像上で円形のアイコンによって対応部位Pcが表示された状態を示している。以上の構成によれば、赤外線画像によって特定されたマイボーム腺の異常部位に対応する対応部位が白色光画像上で明示される。従って、検者は、異常部位に対応する対応部位を白色光画像上で容易に特定可能である。白色光画像と白色光下での被検眼の色はほぼ同一であるため、検者は、白色光画像に示された対応部位に基づいて、実際の被検眼上でマイボーム腺の異常が疑われる部位を容易に特定することができる。
【0059】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、同じ状態の被検眼を示す赤外線画像と白色光画像とを撮影し、表示する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、眼科装置は、上述のようにヘッド部と本体部とを備える構成に限定されず、他にも種々の要素を備える眼科装置であって良い。
【0060】
赤外線撮影光学系は、被検眼を赤外線で照明して赤外線画像を撮影することができればよい。すなわち、赤外線撮影光学系は、赤外線を出力する光源と、被検眼で反射される赤外線を画像化するセンサと、光源とセンサとの間の光学部品とを含む。むろん、赤外線撮影光学系は、上述の実施形態以外にも種々の構成が採用されてよい。例えば、上述の実施形態においては、赤外線撮影光学系と白色光撮影光学系とで光源以外の部品が共有されているが、他の部品が共有されていても良いし、全ての部品が共有されていても良い。後者においては、赤外線と白色光とを出力可能な光源が利用され、フィルタ等で光が選択されて撮影が行われる。また、赤外線撮影光学系と白色光撮影光学系とが別の光学系である構成であっても良い。
【0061】
白色光撮影光学系は、被検眼を白色光で照明して白色光画像を撮影することができればよい。すなわち、白色光撮影光学系は、白色光を出力する光源と、被検眼で反射される白色光を画像化するセンサと、光源とセンサとの間の光学部品とを含む。むろん、白色光撮影光学系は、上述の実施形態以外にも種々の構成が採用されてよい。
【0062】
撮影制御部は、赤外線撮影光学系と白色光撮影光学系とを制御して、同じ状態の被検眼を示す赤外線画像と白色光画像とを撮影させることができればよい。すなわち、撮影制御部は、制御対象に対して撮影を行うために必要な制御を実行可能である。撮影を行うために必要な制御は、例えば、眼科装置のアライメント、光学部品を駆動することによる合焦動作、センサを駆動することによる撮影画像の取得、撮影画像への画像処理、撮影画像の格納等の少なくとも一部である。
【0063】
被検眼の状態は、検者から見た状態であれば良く、同じ状態は、赤外線画像と白色光画像とによって対比した場合に被検眼の同じ部位を特定できる程度に近似した状態であれば良い。従って、被検眼がほぼ同一に見える状態も同じ状態である。例えば、被検眼が同時またはほぼ同時に撮影されて赤外線画像と白色光画像とが得られた場合、同じ状態の画像が撮影されたと言える。
【0064】
ほぼ同時に撮影されるとは、被検眼を画像上で対比することによって対応する部位を特定可能な程度に短期間に赤外線画像と白色光画像とが撮影される状態を指し、上述の実施形態のように1フレーム異なるタイミングで赤外線画像と白色光画像とが撮影される状態以外にも種々の状態があり得る。例えば、数フレーム異なるタイミングで赤外線画像と白色光画像とが撮影される状態であってもほぼ同時に撮影された状態である。また、被験者に動かないように指示した状態で、所定の間隔以内に赤外線画像と白色光画像とが撮影される構成であっても、両画像の対比により両画像内の対応する部分を特定することができるため、同じ状態で撮影されたといえる。
【0065】
表示制御部は、赤外線画像と白色光画像とのそれぞれを表示部に表示することができればよい。すなわち、赤外線画像と白色光画像とを表示部に表示させることにより、両者を対比することができるように構成されていれば良い。赤外線画像と白色光画像とを表示部に表示させる態様は、種々の態様であって良い。従って、上述の実施形態のように、1画面上に左右両眼の赤外線画像と白色光画像とを同時に表示させる構成以外にも、種々の構成を採用可能である。例えば、表示部は1画面に限定されず、複数の画面を有していても良いし、表示部は、眼科装置と一体ではなく、ケーブル等で接続される構成であっても良い。また、赤外線画像と白色光画像とが眼科装置から他の装置(例えば、汎用コンピュータ等)に出力され、当該他の装置に接続された表示部にこれらの画像が表示される構成等であっても良い。
【0066】
着目部位取得部は、赤外線画像と白色光画像との一方を着目画像、他方を対比画像とし、着目画像上に存在する着目部位を取得することができればよい。すなわち、着目部位は、白色光画像から取得されても良いし、赤外線画像と白色光画像との双方から取得されても良い。後者の場合、赤外線画像と白色光画像との双方が着目画像であり、対比画像である。また、着目部位はマイボーム腺の異常部位に限定されない。例えば、赤外線によって虹彩が認識されやすい赤外線画像を撮影し、表示し、白色光によって血管が認識されやすい白色光画像を撮影し、表示しても良い。
【0067】
着目部位取得部が着目部位を取得するための構成は、検者の指定によって着目部位を取得する上述の実施形態のような構成以外にも種々の構成を採用可能である。例えば、赤外線画像と白色光画像との少なくとも一方に基づいて画像処理を行い、着目すべき対象の特徴を取得することによって着目部位を取得する構成等を採用可能である。特徴を取得するための画像処理は、種々の処理であって良く、例えば、パターンマッチング等であっても良いし、機械学習等を利用した人工知能による処理等であっても良い。
【0068】
さらに、赤外線画像、白色光画像は、各種の画像処理が行われて表示されても良い。画像処理は、例えば、着目部位を強調する強調処理が挙げられる。強調の手法は種々の手法が採用可能であり、例えば、コントラスト強調や明るさ強調、中間階調色強調、エッジ強調、各種のフィルタ処理等が挙げられる。画像処理対象の画像は、赤外線画像、白色光画像のいずれであっても良く右眼、左眼のいずれの画像であっても良い。
【0069】
図6は、各種の画像処理を行うための画面を示している。図6においては、右眼の赤外線画像が画像処理対象として表示されている状態を示している。この画像は、例えば、図3に示す構成において、検者がジョイスティック640やタッチパネル660によって、画像処理の開始指示と、右眼の赤外線画像が対象である旨の指示を行った場合に、制御部600の制御によって表示部650に表示される。図6に示す例に表示される画像は、図5に示す画像を拡大した画像である。
【0070】
図6に示す画面は、コントラストの調整部Bc、中間階調色の調整部Bm、明るさの調整部Bbを有している。検者は、ジョイスティック640やタッチパネル660で当該調整部のボタンを左右に移動させることによって、コントラスト、中間階調色、明るさの調整量を指示することができる。制御部600は、当該指示に基づいて、コントラスト、中間階調色、明るさの強調処理(または非強調処理)を実行し、実行後の画像を表示部650に表示させる。
【0071】
図6に示す例においては、検者による調整以外にも自動で画質を調整する機能を有している。本例においては、画質を調整するための基準となる領域が取得され、当該領域の画像情報に基づいて、画像が強調される。すなわち、図6に示す画面が表示された状態で検者は、ジョイスティック640やタッチパネル660を操作し、画像上で基準となる領域を指示する。制御部600は、当該指示に基づいて基準となる領域を特定する。図6においては、基準となる領域を領域Psとして示している。
【0072】
基準となる領域が指示されると、検者は、ジョイスティック640やタッチパネル660によって自動強調ボタンBaに対する操作を行う。この結果、制御部600は、基準となる領域内に含まれる画素の輝度範囲がより広い輝度範囲(例えば、表現可能な輝度の全範囲)に分布するようにコントラスト強調を行う。コントラスト強調が適用される範囲は画像の全範囲であっても良いし一部の範囲であっても良い。後者の場合、検者によって範囲が指示される構成が挙げられる。例えば、検者がジョイスティック640やタッチパネル660を操作して図6に示す画面上で強調範囲Peを選択し、制御部600が選択された範囲Peに対してコントラスト強調を適用する構成であっても良い。むろん、画像処理の種類はコントラスト強調に限定されず、明るさ強調など、他の種々の処理であって良い。
【0073】
さらに、同じ状態の被検眼を示す赤外線画像と白色光画像とを撮影し、表示する手法は、方法の発明としても適用可能である。また、以上のような眼科装置、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の機能を有する装置の一部として実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。
【符号の説明】
【0074】
1…眼科装置、100…アライメント光学系、101…光源、102…ホットミラー、103…対物レンズ、104…ホットミラー、105…レンズ、106…レンズ、107…プロファイルセンサ、108…プロファイルセンサ、108…プロファイルセンサ、200…変位変形検出受光光学系、201…光源、202…ハーフミラー、203…集光レンズ、204…受光素子、205…ノズル、206…平面ガラス、300…観察光学系、301a,301b,302a,302b…光源、303…対物レンズ、304…ダイクロイックミラー、305…結像レンズ、306…2次元撮像素子、400…固視光学系、401…光源、402…ホットミラー、403…リレーレンズ、404…反射ミラー、500…眼屈折力光学系、501…光源、502…集光レンズ、503…ミラー、504…ミラー、505…平行平面ガラス、506…ホットミラー、507…レンズ、508…リングレンズ、509…CCD、510…平面ガラス、511…平面ガラス、512…固視標、513…コリメータレンズ、514…光源、600…制御部、600a…撮影制御部、600b…表示制御部、600c…着目部位取得部、601…本体部、602…ヘッド部、630…XYZ駆動制御部、640…ジョイスティック、650…表示部、660…タッチパネル、670…メモリ、680…固視標制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6