(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】匍匐害虫捕獲器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/14 20060101AFI20230508BHJP
A01M 1/02 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A01M1/14 L
A01M1/14 J
A01M1/14 F
A01M1/02 A
(21)【出願番号】P 2019052929
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2018054063
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 良成
(72)【発明者】
【氏名】定森 耕平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智基
(72)【発明者】
【氏名】大下 一明
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特許第2694338(JP,B2)
【文献】実開昭49-042070(JP,U)
【文献】登録実用新案第3014286(JP,U)
【文献】実開昭53-154869(JP,U)
【文献】特開2000-350546(JP,A)
【文献】実開昭54-007176(JP,U)
【文献】実開昭50-131278(JP,U)
【文献】特開2006-136296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/14
A01M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
匍匐害虫を導入する容器を備え、該容器に導入した匍匐害虫を捕獲する匍匐害虫捕獲器において、
上記容器には、匍匐害虫を該容器の内部に導入するための第1導入口と第2導入口とが形成され、
上記容器の内部には、上記第1導入口に連通して匍匐害虫を導入する第1導入空間及び上記第2導入口に連通して匍匐害虫を導入する第2導入空間を、該容器の内部において上記第1導入空間が上記第2導入空間よりも下に位置するように区画形成するための区画部と、上記第1導入空間を形成する上壁部の内面に配置される第1粘着剤と、上記第2導入空間を形成する上壁部の内面に配置される第2粘着剤とが設けられ、
上記容器は、上記第1導入空間を形成する底壁部から上記第2導入空間を形成する上壁部に達するまで
上下方向に延びるとともに上記底壁部と上記上壁部とを接続する左側壁部及び右側壁部を有していることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項2】
請求項1に記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記第1導入空間を形成する底壁部と、上記第2導入空間を形成する底壁部とは、水平面に対する角度が互いに異なっていることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項3】
請求項2に記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記第1導入空間を形成する底壁部は、上記匍匐害虫捕獲器が設置される設置面と略平行に延び、
上記第2導入空間を形成する底壁部は、上記設置面に対して傾斜していることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項4】
請求項3に記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記第2導入空間を形成する底壁部は、上記区画部であることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項5】
請求項3に記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記第1導入空間を形成する上壁部は、上記区画部であることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記第1導入空間の上下方向の寸法は、上記第1導入口から遠ざかるにつれて短くなるように設定されていることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記第2導入空間の上下方向の寸法は、上記第2導入口から遠ざかるにつれて短くなるように設定されていることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の匍匐害虫捕獲器において、
上記区画部には、匍匐害虫を誘引する誘引剤を含む誘引部材が取り付けられることを特徴とする匍匐害虫捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばゴキブリ等の匍匐害虫を捕獲する匍匐害虫捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般家庭等ではゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器が使用されている。ゴキブリ捕獲器は例えば床面等に設置しておき、床面を歩行するゴキブリをゴキブリ捕獲器に形成されている導入口から内部に導入し、内部に設けられている粘着剤によりゴキブリを捕獲することができるように構成されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【0003】
特許文献1のゴキブリ捕獲器は、小箱状の容器を複数段積み重ねて構成されており、各容器の内部の底面は水平方向に延びており、その底面に粘着剤が設けられている。
【0004】
特許文献2のゴキブリ捕獲器は、底板部が水平方向に延びる一方、上板部は容器の奥側へ行くほど下に位置するように傾斜している。上板部の内面に粘着剤が設けられている。
【0005】
特許文献3のゴキブリ捕獲器は、底板部が水平方向に延びる一方、上板部はその長手方向一方側の端部から中央部に近づくほど下に位置するように傾斜し、また長手方向他方側の端部から中央部に近づくほど下に位置するように傾斜している。上板部の内面における長手方向一方側と他方側にそれぞれ粘着剤が設けられている。
【0006】
特許文献4のゴキブリ捕獲器は、底板部が水平方向に延びる一方、上板部は底板部と略平行に延びる部分と、底板部に対して傾斜する部分とを有している。上板部の内面に粘着剤が設けられている。
【0007】
特許文献5のゴキブリ捕獲器は、底板部が水平方向に延びており、この底板部と上板部との間に山型に形成された中間板を設けている。底板部の上面と、中間板の上面に粘着剤が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4392698号公報
【文献】特開2006-136296号公報
【文献】実開昭49-112768号公報
【文献】特許第2694338号公報
【文献】特開平6-327389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、市販されているゴキブリ捕獲器の多くは、特許文献1のように容器の内部の底面に粘着剤を設けているが、特許文献2~4のように、容器におけるゴキブリが導入される空間の上壁面(天井面)に相当する部分に粘着剤を設ける構造もあり、上壁面に粘着剤を設ける構造とすることで、ゴキブリの羽根または背部を粘着剤に付着させることができるので脚を付着させる場合に比べて粘着剤との接触面積が広くなり、一旦捕獲した後に逃げ出してしまうゴキブリの数を減らすことが可能になると考えられる。また、ゴキブリの脚は粘着剤に付着した状態でちぎれてしまうことがあり、この点からも羽根または背部を粘着剤に付着させることに利点があると言える。従って、容器の内部の上壁面に粘着剤を設ける構造を採用したい場合がある。
【0010】
ここで、ゴキブリ捕獲器の一般的な使用形態に着目すると、床面に設置するケースが殆どであり、場合によっては家具の隙間等、狭い場所に設置することもある。よって、ゴキブリ捕獲器は、設置に要する面積、即ち平面視における投影面積をできるだけ小さくしたいという要求がある。
【0011】
しかしながら、特許文献2では、ゴキブリ捕獲器が水平方向に長く形成されていて、複数のゴキブリ導入口が水平方向に並ぶように形成されているので、ゴキブリの捕獲能力については確保できる可能性があるが、設置に要する面積は拡大してしまうという問題がある。
【0012】
また、特許文献3では、上板部の長手方向一側と他側にそれぞれ粘着剤を設けているので、ゴキブリの捕獲能力については確保できる可能性があるが、設置に要する面積は拡大してしまうという問題がある。特許文献4も同様な問題を有すると考えられる。
【0013】
以上のことはゴキブリに限られるものではなく、他の匍匐害虫についても同様に生じ得る問題である。
【0014】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、匍匐害虫の捕獲能力を十分に得ながら、設置に要する面積を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、第1の発明は、匍匐害虫を導入する容器を備え、該容器に導入した匍匐害虫を捕獲する匍匐害虫捕獲器において、上記容器には、匍匐害虫を該容器の内部に導入するための第1導入口と第2導入口とが形成され、上記容器の内部には、上記第1導入口に連通して匍匐害虫を導入する第1導入空間及び上記第2導入口に連通して匍匐害虫を導入する第2導入空間を、該容器の内部において上記第1導入空間が上記第2導入空間よりも下に位置するように区画形成するための区画部と、上記第1導入空間を形成する上壁部の内面に配置される第1粘着剤と、上記第2導入空間を形成する上壁部の内面に配置される第2粘着剤とが設けられ、上記容器は、上記第1導入空間を形成する底壁部から上記第2導入空間を形成する上壁部に達するまで上下方向に延びるとともに上記底壁部と上記上壁部とを接続する左側壁部及び右側壁部を有していることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第1導入口から第1導入空間に導入された匍匐害虫が例えばゴキブリである場合には、第1導入空間の上部に第1粘着剤が配置されているので、羽根または背部が第1粘着剤に付着することになり、第1導入空間から逃げ出しにくくなる。また、第2導入口から第2導入空間に例えばゴキブリが導入されると、第2導入空間の上部に第2粘着剤が配置されているので、羽根または背部が第2粘着剤に付着することになり、第2導入空間から逃げ出しにくくなる。
【0017】
第1導入空間及び第2導入空間は容器の内部において上下に形成されているので、容器の平面視における投影面積を小さくしながら、その内部において広い粘着面積を確保することが可能になる。
【0018】
尚、捕獲対象となる匍匐害虫は、ゴキブリに限られるものではなく、床面等を歩行する害虫を全て対象とすることができる。羽根のない害虫であっても、背部が粘着剤に付着することで粘着面積が広くなって逃げ出しにくくなるので、羽根の有無は問わない。
【0019】
第2の発明は、上記第1導入空間を形成する底壁部と、上記第2導入空間を形成する底壁部とは、水平面に対する角度が互いに異なっていることを特徴とする。
【0020】
すなわち、匍匐害虫の個体によって導入しやすい底壁部の角度が異なることが考えられるが、この場合に、第1導入空間を形成する底壁部と、第2導入空間を形成する底壁部とを異なる角度にすることで、捕獲能力の更なる向上が期待できる。
【0021】
第3の発明は、上記第1導入空間を形成する底壁部は、上記匍匐害虫捕獲器が設置される設置面と略平行に延び、上記第2導入空間を形成する底壁部は、上記設置面に対して傾斜していることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第1導入空間の底壁部が設置面に沿うように配置され、その上方に第2導入空間の底壁部が配置される。
【0023】
第4の発明は、上記第2導入空間を形成する底壁部は、上記区画部であることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、第2導入空間を形成する底壁部と区画部とを共通の部材で構成できるので、容器をコンパクト化することができる。
【0025】
第5の発明は、上記第1導入空間を形成する上壁部は、上記区画部であることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、第1導入空間を形成する上壁部と区画部とを共通の部材で構成できるので、容器をコンパクト化することができる。
【0027】
第6の発明は、上記第1導入空間の上下方向の寸法は、上記第1導入口から遠ざかるにつれて短くなるように設定されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、匍匐害虫が第1導入口から第1導入空間に導入されて奥へ進んでいくと第1粘着剤と匍匐害虫との離間距離が短くなり、匍匐害虫を第1粘着剤に確実に付着させることができる。
【0029】
第7の発明は、上記第2導入空間の上下方向の寸法は、上記第2導入口から遠ざかるにつれて短くなるように設定されていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、匍匐害虫が第2導入口から第2導入空間に導入されて奥へ進んでいくと第2粘着剤と匍匐害虫との離間距離が短くなり、匍匐害虫を第2粘着剤に確実に付着させることができる。
【0031】
第8の発明は、上記区画部には、匍匐害虫を誘引する誘引剤を含む誘引部材が取り付けられることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、区画部を、誘引部材を取り付ける部分として利用することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、容器の内部に、匍匐害虫を導入する第1導入空間及び第2導入空間を上下に区画形成するための区画部を設け、第1導入空間及び第2導入空間の上部にそれぞれ粘着剤を配置したので、匍匐害虫の捕獲能力を十分に得ながら、設置に要する面積を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態1に係る匍匐害虫捕獲器を前方から見た斜視図である。
【
図2】匍匐害虫捕獲器を後方から見た斜視図である。
【
図8】
図3におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図9】匍匐害虫捕獲器を底面側から見ており、誘引部材を取り付ける要領を説明する図である。
【
図10】匍匐害虫捕獲器を上下反転させた状態で誘引部材を取り付ける要領を説明する
図8相当図である。
【
図11】匍匐害虫捕獲器でゴキブリを捕獲した状態を示す
図8相当図である。
【
図12】匍匐害虫捕獲器の容器となる板材の展開図である。
【
図13】板材に粘着剤を設けた状態を示す斜視図である。
【
図14】内方側板部を折り曲げた状態を示す板材の斜視図である。
【
図15】区画壁部を折り曲げた状態を示す板材の斜視図である。
【
図16】後側壁部及び上壁部を折り曲げる途中の状態を示す板材の斜視図である。
【
図17】挿入片を差し込む要領を説明する斜視図である。
【
図18】実施形態1の変形例に係る板材の展開図である。
【
図19】本発明の実施形態2に係る匍匐害虫捕獲器を上方かつ前側から見た斜視図である。
【
図20】実施形態2の匍匐害虫捕獲器を上方かつ後側から見た斜視図である。
【
図21】実施形態2の匍匐害虫捕獲器の正面図である。
【
図22】実施形態2の匍匐害虫捕獲器の右側面図である。
【
図23】
図21におけるXXIII-XXIII線断面図である。
【
図25】実施形態2の匍匐害虫捕獲器の平面図である。
【
図26】実施形態2の匍匐害虫捕獲器の底面図である。
【
図27】実施形態2の変形例に係る
図1相当図である。
【
図28】実施形態2の匍匐害虫捕獲器の展開図である。
【
図29】実施形態2の匍匐害虫捕獲器の製造途中を示す斜視図である。
【
図31】実施形態2の変形例に係る匍匐害虫捕獲器の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る匍匐害虫捕獲器1を前方から見た斜視図であり、
図2は、匍匐害虫捕獲器1を後方から見た斜視図である。この匍匐害虫捕獲器1は、匍匐害虫を捕獲するための器具である。匍匐害虫捕獲器1で捕獲する対象となる匍匐害虫としては、例えばゴキブリを挙げることができるが、ゴキブリに限られるものではなく、床や地面を歩行する様々な害虫であってもよい。ゴキブリには、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ等が含まれるとともに、各々、オス、メス、卵鞘を持ったメス、幼虫等が含まれる。匍匐害虫捕獲器1は、匍匐害虫を導入する容器1Aと、
図8等に示す第1粘着剤2及び第2粘着剤3とを少なくとも備えており、該容器1Aに導入した匍匐害虫を捕獲することができるように構成されている。第1粘着剤2及び第2粘着剤3は、容器1Aの内部に設けられている。また、容器1Aの内部には誘引部材4が収容されている。誘引部材4によって容器1Aの内部に誘引された匍匐害虫を第1粘着剤2や第2粘着剤3によって捕獲することができる他、誘引されなくても容器1Aの内部に導入された匍匐害虫を第1粘着剤2や第2粘着剤3によって捕獲することができる。なお、匍匐害虫の種類によっては暗くて狭い空間を好む習性を有するもの等があり、そのような場合は誘引部材4が無くても容器1A内に誘引できるので、誘引部材4を省略することができる。
【0037】
尚、この実施形態の説明では、各図に示すように匍匐害虫捕獲器1の前側及び後側を定義し、前側から見たときに右となる側を右側、左となる側を左側と定義するが、これは説明の便宜を図るためだけであり、実際の使用時の姿勢や運搬時の姿勢、製造時の姿勢を限定するものではない。例えば、匍匐害虫捕獲器1の前側が、使用者から向かって右や左、後に位置するように匍匐害虫捕獲器1を設置したり、匍匐害虫捕獲器1の前側が上や下に位置するように匍匐害虫捕獲器1を設置することもできる。
【0038】
また、匍匐害虫捕獲器1は、一般家庭や事務所、各種工場等の床面に載置して使用することができる他、地面に直接載置して使用することもできる。また、例えば、家具と壁の隙間や電化製品と壁の隙間等、匍匐害虫が歩行しそうな場所に設置することもできる。また、壁に沿わせて設置することや、家具や電化製品の上に設置して使用することもできる。
【0039】
(容器1Aの構成)
容器1Aは、例えばボール紙等の厚紙からなる1枚の板材100(
図12に示す)で構成されている。板材100は、厚紙や、厚紙に印刷層が設けられた部材以外にも例えば樹脂材等で構成されていてもよいが、組み立てた状態で長期間(短くても数週間から数ヶ月)に亘って形状を維持することができる形状維持性を備えた部材で構成するのが好ましい。
【0040】
容器1Aは、
図1、
図2、
図8等に示すように、底壁部10と、上壁部11と、右側壁部12と、左側壁部13と、後端壁部14と、区画壁部(区画部)15とを備えている。容器1Aの内部には、匍匐害虫を導入する第1導入空間R1及び第2導入空間R2が区画壁部15によって区画形成されている。第2導入空間R2は第1導入空間R1の上方に位置しており、2階建て構造となっている。第2導入空間R2の容積を第1導入空間R1の容積よりも大きくすることができる。尚、第2導入空間R2の容積と第1導入空間R1の容積とを同じにしてもよいし、第2導入空間R2の容積を第1導入空間R1の容積よりも小さくしてもよい。
【0041】
容器1Aの底壁部10は、下側に位置する第1導入空間R1を形成する底壁部となっており、また、容器1Aの上壁部11は、上側に位置する第2導入空間R2を形成する上壁部となっている。容器1Aの上壁部11の前端部は、容器1Aの底壁部10の前端部よりも後に位置している。容器1Aの上壁部11の後端部は、容器1Aの底壁部10の後端部よりも前に位置している。よって、容器1Aの上壁部11の前後方向の寸法は、容器1Aの底壁部10の前後方向の寸法よりも短くなっている。
【0042】
容器1Aの右側壁部12は、第1導入空間R1及び第2導入空間R2を形成する右側壁部となっている。容器1Aの左側壁部13は、第1導入空間R1及び第2導入空間R2を形成する左側壁部となっている。容器1Aの後端壁部14は、第1導入空間R1を形成する後側壁部となっている。区画壁部15は、容器1Aの内部において右側壁部12の内面から左側壁部13の内面まで左右方向に延びるとともに、容器1Aの前端部から後端部近傍まで延びている。また、この区画壁部15の前端部は、底壁部10の前端部と連なる一方、区画壁部15の後端部は、上壁部11の後端部近傍に位置している。区画壁部15は全体として容器1Aの前側へ向かって下降傾斜して延びている。
【0043】
この区画壁部15の下面よりも下側の空間が第1導入空間R1とされ、区画壁部15の上面よりも上側の空間が第2導入空間R2とされている。よって、第2導入空間R2を形成する底壁部は区画壁部15であり、また、第1導入空間R1を形成する上壁部は区画壁部15であり、第1導入空間R1を形成する上壁部と、第2導入空間R2を形成する底壁部とは共通の区画壁部15で構成されている。
【0044】
第1導入空間R1を形成する底壁部10は、設置面G(
図8にのみ仮想線で示す)と略平行、即ち、設置面Gに沿って延びている。設置面Gは、例えば床面等であり、
図8に示すような平坦面であってもよいし、凹凸がある面であってもよい。第2導入空間R2を形成する底壁部である区画壁部15は、上述したように前側へ向かって下降傾斜しているので設置面Gに対して傾斜することになる。つまり、第1導入空間R1を形成する底壁部10と、第2導入空間R2を形成する底壁部(区画壁部15)とは、水平面(例えば設置面G)に対する角度が互いに異なっている。
【0045】
また、第2導入空間R2を形成する上壁部11は、後側へ向かって下降傾斜するように形成することができるが、設置面Gに対して略平行に形成してもよいし、前側へ向かって下降傾斜するように形成してもよい。
【0046】
容器1Aの後端壁部14は、上端部が下端部よりも前に位置するように傾斜している。後端壁部14の下端部は、底壁部10の後端部に連なっている。また、後端壁部14の上端部は、上壁部11の後端部に連なっている。従って、底壁部10と、上壁部11とは後端壁部14によって連結されることになる。この後端壁部14の傾斜角度は、上壁部11の傾斜角度よりも急に設定されている。
【0047】
容器1Aの後端壁部14には、匍匐害虫を該容器1Aの内部に導入するための後側導入口(第1導入口)14aが形成されている。後側導入口14aは、容器1Aの左右方向に長い形状とされており、後側導入口14aの下縁部は、容器1Aの下端部に位置する一方、後側導入口14aの上縁部は、後端壁部14の上下方向中間部に位置している。また、後側導入口14aの左右方向の寸法は、容器1Aの左右方向の寸法よりも短くなるように設定されていて、後側導入口14aの右縁部は後端壁部14の右縁部から左側へ離れ、後側導入口14aの左縁部は後端壁部14の左縁部から右側へ離れている。このように後側導入口14aの左右方向の寸法を後端壁部14の左右方向の寸法よりも短くして、後端壁部14の左右両側に開口が形成されない領域を設けておくことで、後端壁部14によって底壁部10と上壁部11との連結が可能になる。後端壁部14によって底壁部10と上壁部11とを連結する必要が無い場合、即ち、複数の板材を組み合わせて容器1Aを構成する場合には、後側導入口14aの左右方向の寸法を後端壁部14の左右方向の寸法と同一にすることができる。また、図示しないが、後端壁部14に複数の後側導入口を形成してもよい。この場合、複数の後側導入口が後端壁部14の上下に並ぶように形成することや、左右に並ぶように形成することもできる。
【0048】
後側導入口14aは、
図5等に示すように左右に長い長方形とすることができるが、後側導入口14aの形状は特に限定されるものではない。例えば、後側導入口14aの左右両縁部を円弧状に湾曲させ、長円形の後側導入口14aとすることができる。後側導入口14aの左右両縁部を曲線で構成しておけば、後側導入口14aの左右両縁部近傍を起点とした板材100の破断、及び折れが抑制される。
【0049】
容器1Aの前側壁部の全体に、匍匐害虫を該容器1Aの内部に導入するための前側導入口(第2導入口)16が形成されている。容器1Aの上壁部11の前端部が底壁部10の前端部よりも後に位置しているので、前側導入口16は、斜め上方に向いて開口することになる。前側導入口16の上縁部は、容器1Aの上壁部11の前端部に位置しており、左右方向に直線状に延びている。また、前側導入口16の下縁部は、容器1Aの底壁部10の前端部に位置しており、左右方向に直線状に延びている。また、前側導入口16の右縁部及び左縁部は、それぞれ右側壁部12の前縁部及び左側壁部13の前縁部に位置しており、上下方向に直線状に延びている。従って、容器1Aを正面から見たとき、前側導入口16は左右方向に長い長方形となる。前側導入口16の上縁部は、後側導入口14aの上縁部よりも高いところに位置付けられている。
【0050】
尚、前側導入口16の形状は長方形に限られるものではなく、例えば、長円形、台形等であってもよい。また、この実施形態では、容器1Aの前壁部の全体に前側導入口16を形成しているので、容器1Aの前側壁部を図示していないが、前側壁部の一部にのみ前側導入口16を形成してもよい。図示しないが、前側壁部に複数の前側導入口を形成してもよい。この場合、複数の前側導入口が前側壁部の上下に並ぶように形成することや、左右に並ぶように形成することもできる。
【0051】
第1導入空間R1の後端部に後側導入口14aが連通している。第1導入空間R1における匍匐害虫が導入される側は容器1Aの後側である。第1導入空間R1の手前側は容器1Aの後側であり、第1導入空間R1の奥側は容器1Aの前側である。第1導入空間R1を形成する底壁部10が設置面Gに沿う一方、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部15)が前側へ向かって下降傾斜しているので、第1導入空間R1の上下方向の寸法H1(
図8に示す)は、後側導入口14aから遠ざかるにつれて短くなるように設定される。つまり、第1導入空間R1の断面は容器1Aの前側に頂点を有する三角形に近い形状になる。
【0052】
一方、第2導入空間R2の前端部に前側導入口16が連通している。第2導入空間R2における匍匐害虫が導入される側は容器1Aの前側であり、第1導入空間R1における匍匐害虫が導入される側とは反対側になる。第2導入空間R2の手前側は容器1Aの前側であり、第2導入空間R2の奥側は容器1Aの後側である。第2導入空間R2を形成する底壁部(区画壁部15)が前側へ向けて下降傾斜する一方、第2導入空間R2を形成する上壁部11が後側へ向かって下降傾斜しているので、第2導入空間R2の上下方向の寸法H2(
図8に示す)は、前側導入口16から遠ざかるにつれて短くなるように設定される。つまり、第2導入空間R2の断面は容器1Aの後側に頂点を有する三角形に近い形状になる。
【0053】
図8に示すように、第1導入空間R1を形成する底壁部10が設置面Gに沿う方向に延び、区画壁部15が前側へ向けて下降傾斜し、第2導入空間R2を形成する上壁部11が後側へ向かって下降傾斜しているので、断面を見ると、底壁部10、区画壁部15及び上壁部11がZ字状をなすことになる。このように、断面三角形状の第1および第2導入空間R1、R2を、前後互い違いで上下に重ねて断面Z字状としているので、第1および第2導入空間R1、R2をスペース効率良く配置することができる。これにより、容器1Aをコンパクトに構成できる。
【0054】
容器1Aの前端部には、返し部17が設けられている。返し部17は、上壁部11の前端部に連なるとともに、前側導入口16の上縁部から後側へ向かって斜め下方へ延びる上側返し部17aと、右壁部12の前端部に連なるとともに、前側導入口16の右縁部から後側へ向かって延びる右側返し部17bと、左壁部13の前端部に連なるとともに、前側導入口16の左縁部から後側へ向かって延びる左側返し部17cとで構成されている。返し部17は必須のものではないが、例えば、容器1Aの上に登った匍匐害虫が、前側導入口16に対して上方から侵入しようとした際に脚が粘着剤3に触れることを阻止できるので、警戒心を抱かせることを抑制する効果を期待できる。また、第2導入空間R2内に異物が侵入することを抑制する効果や、ユーザーの指が誤って粘着剤3に触れてしまうことを抑制する効果も期待できる。また、図示しないが、返し部17の代わり、または返し部17と共に容器1Aの前端部に庇部を設けてもよい。
【0055】
区画壁部15には、第1導入空間R1と第2導入空間R2とを連通させる連通部を形成するための切り欠き部15aが設けられている。切り欠き部15aは、区画壁部15の後部における左右方向中間部を切り欠くことによって形成されており、この切り欠き部15aの形成によって第1導入空間R1の手前側上部と、第2導入空間R2の奥側下部とが切り欠き部15aの内部を介して連通する。区画壁部15は、第1導入空間R1を形成する上壁部であるので、第1導入空間R1を形成する上壁部に連通部が設けられることになり、また、区画壁部15は、第2導入空間R2を形成する底壁部であるので、第2導入空間R2を形成する底壁部に連通部が設けられることもなる。図示しないが、切り欠き部は区画壁部15に複数設けられていてもよい。切り欠き部は、区画壁部15の右縁部や左縁部に設けられていてもよい。
【0056】
第1粘着剤2は、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部15)の下面(第1導入空間R1の内面)に配置される。また、第2粘着剤3は、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面(第2導入空間R2の内面)に配置される。第1導入空間R1の上下方向の寸法H1及び第2導入空間R2の上下方向の寸法H2は、それぞれの空間R1、R2に匍匐害虫が導入されたときに、匍匐害虫の背が第1粘着剤2及び第2粘着剤3に接触するように設定することができ、例えば、第1導入空間R1及び第2導入空間R2の前後方向中央部におけるH1、H2は、5mm~20mm程度にすることができる。H1、H2は、対象とする匍匐害虫の種類に応じた寸法にすることができる。
【0057】
以上のように、第1および第2導入空間R1、R2は、奥に進むにつれて上下方向に狭くなるように形成されるとともに、それぞれの導入空間R1、R2の上壁部の下面に粘着剤2、3が設けられている。このように構成されているので、匍匐害虫は、後側導入口14aまたは前側導入口16の近傍では粘着剤の存在に気付かず、警戒することなく第1または第2導入空間R1、R2の内部へと侵入する。そして、無警戒のまま第1または第2導入空間R1、R2の奥側に進んでいくと、羽根または背部が粘着剤に付着して捕獲されるので、逃げ出すことができなくなる。
【0058】
第1粘着剤2及び第2粘着剤3は板材100に塗布されている。すなわち、
図13及び
図14に示すように、板材100の展開状態で、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部)の下面と、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面とが該板材100の同一面上に位置している。そして、区画壁部15の下面と、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面とに、それぞれ第1粘着剤2及び第2粘着剤3(
図12及び
図13に斜線で示す)が設けられている。
【0059】
第1粘着剤2及び第2粘着剤3を板材100の同一面に設けたことで、例えば図示しない塗工機を用いて粘着剤を塗布する際には、一工程で第1粘着剤2及び第2粘着剤3の両方の塗布を完了させることができる。尚、第1粘着剤2及び第2粘着剤3を板材100の別の面に設けるようにしてもよい。
【0060】
また、第1粘着剤2を区画壁部15に設ける際には、第1粘着剤2の周縁部が、区画壁部15の前縁部、後縁部、左右両縁部から離れるように、塗布範囲が設定されている。また、第2粘着剤3を上壁部11に設ける際には、第2粘着剤3の周縁部が、上壁部11の前縁部、後縁部、左右両縁部から離れるように、塗布範囲が設定されている。これにより、
図8等に示すように、板材100を折り曲げて容器1Aを形成した際に、第1粘着剤2が区画壁部15以外の部分に粘着しなくなるとともに、第2粘着剤3が上壁部11以外の部分に粘着しなくなる。
【0061】
また、区画壁部15の前縁部、後縁部、左右両縁部は狭いので、第1粘着剤2が存在していても、殆ど捕獲に寄与しない領域となる。このような領域に第1粘着剤2を設けることなく、区画壁部15の中央寄りの領域にのみ第1粘着剤2を設けることで、捕獲能力を殆ど低下させることなく、第1粘着剤2の使用量を削減することができる。区画壁部15の前縁部、後縁部、左右両縁部のいずれか1つの縁部または任意の複数の縁部にのみ、第1粘着剤2が存在しないようにしてもよい。区画壁部15の一部にのみ第1粘着剤2を設けることもできる。
【0062】
即ち、匍匐害虫の脚を床面の粘着剤に付着させる従来の捕獲器においては、捕獲面積を増やすという観点からは床面の全面に粘着剤が塗布されていることが好ましかった。これに対し、本実施形態は、匍匐害虫の羽根または背部を天井面の粘着剤に付着させて捕獲するものであるところ、匍匐害虫の背中は上向きに凸の断面形状を有するため、天井面の縁部近傍の粘着剤には付着しにくく、殆ど捕獲に寄与しない。そこで上記のように、天井面(区画壁部15)の縁部近傍には粘着剤を塗布しないことにより、無駄な粘着剤を減らすことができる。
【0063】
同様に、上壁部11の前縁部、後縁部、左右両縁部も殆ど捕獲に寄与しない領域であり、上壁部11の中央寄りの領域にのみ第2粘着剤3を設けることで、捕獲能力を殆ど低下させることなく、第2粘着剤3の使用量を削減することができる。上壁部11の前縁部、後縁部、左右両縁部のいずれか1つの縁部または任意の複数の縁部にのみ、第1粘着剤2が存在しないようにしてもよい。上壁部11の一部にのみ第1粘着剤2を設けることもできる。
【0064】
また、第1粘着剤2を区画壁部15の全体に設けてもよく、この場合、第1粘着剤2の外周部の厚みを当該外周部よりも内側の領域に比べて薄くしてもよい。これにより、殆ど捕獲に寄与しない領域の粘着剤の使用量を削減できる。また、第2粘着剤3を上壁部11の全体に設けてもよく、この場合、第1粘着剤2の外周部の厚みを当該外周部よりも内側の領域に比べて薄くしてもよい。また、第1粘着剤2及び第2粘着剤3の各部の厚みは任意に設定することができ、相対的に薄い部分の厚みは、相対的に厚い部分の厚みの2/3~1/4程度に設定することができる。第1粘着剤2及び第2粘着剤3の相対的に厚い部分は、例えば粘着剤を2層や3層にした複層構造にすることもできる。第1粘着剤2及び第2粘着剤3を複層構造にする場合には、粘着剤を複数段階で塗布することができる。
【0065】
誘引部材4は、誘引剤容器4aと、該誘引剤容器4aに収容される誘引剤4bとを備えている。誘引剤4bは、従来から周知の匍匐害虫を誘引するための薬剤等を挙げることができ、例えば液体であってもよいし、粉状または粒状の薬剤であってもよいし、餌等であってもよい。液体の場合は、誘引剤容器4aに収容された吸収材に誘引剤4bを染み込ませておけばよい。誘引剤容器4aは、例えば硬質樹脂製とすることができ、この実施形態では、誘引成分が揮散するように下方に向かって開放されている。誘引剤4bが粒剤の場合、誘引剤容器4aの代わりに、通気性を有する袋等を利用することができる。また、粒状や粉状の誘引剤を誘引部材とすることもできる。
【0066】
誘引部材4は、第1導入空間R1に収容されていて、第2導入空間R2には収容されていない。より具体的には、誘引部材4は、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部15)の内面(下面)に対し、該内面に設けられた第1粘着剤2により取り付けられる。誘引部材4は、第1導入空間R1の奥側に位置付けられている。この構成により、誘因部材4から放散された誘引成分は、第1導入空間R1の奥側から手前側に向けて流れる。当該誘因成分の一部は、後側導入口14aを介して外部に放散されることにより、匍匐害虫を第1導入空間R1の内部へと誘引する。
【0067】
一方、区画壁部15に切り欠き部15aが設けられているので、上記誘引成分の一部は、切り欠き部15aの内部を通って第2導入空間R2の奥側に流入することになる。このようにして流入した誘因成分は、第2導入空間R2の奥側から手前側に向けて流れ、前側導入口16を介して外部に放散されることにより、匍匐害虫を第2導入空間R2の内部へと誘引する。このように、一箇所の誘引部材4により、第1および第2導入空間R1、R2の内部へと匍匐害虫を誘引することができる。
【0068】
尚、図示しないが、誘引部材4は、区画壁部15の上面にのみ取り付け、第2導入空間R2に収容して第1導入空間R1には収容しなくてもよい。つまり、第1導入空間R1と第2導入空間R2との一方の空間にのみ誘引部材4が収容されていればよい。また、図示しないが、変形例として、第1導入空間R1と第2導入空間R2との両方に誘引部材4を収容してもよい。区画壁部15に連通部を設けない場合には、第1導入空間R1と第2導入空間R2との両方に誘引部材4を収容するのが好ましい。
【0069】
誘引部材4は、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部15)の内面に対し、該内面に設けられた第1粘着剤2により取り付けられる。誘引部材4は、第1導入空間R1の奥側に位置付けられている。区画壁部15に切り欠き部15aが設けられているので、誘引部材4の誘引成分は、切り欠き部15aの内部を通って第2導入空間R2の奥側に流入することになる。
【0070】
図9及び
図10に示すように、第1導入空間R1を形成する底壁部10には、誘引部材4を第1導入空間R1の外部から該第1導入空間R1に挿入するための挿入口10aが形成されている。尚、
図9における斜線部は、挿入口10aを通して見える第1粘着剤2である。
【0071】
挿入口10aは、誘引部材4の外形状よりも大きく形成されている。底壁部10には、挿入口10aを開閉する蓋部10bが一体成形されている。蓋部10bは、挿入口10aと一致する形状であり、その前縁部10cが底壁部10と連なっている。蓋部10bを開けて容器1Aの内部を覗くと、第1粘着剤2を直接見ることができ、誘引剤容器4aを第1粘着剤2に容易に貼り付けることができる。
【0072】
また、
図12や
図13に示すように、区画壁部15の右側には、右内方側板部15bが設けられており、この右内方側板部15bは容器1Aの右側壁部12の内面に沿うように配置される。区画壁部15の左側には、左内方側板部15cが設けられており、この左内方側板部15cは容器1Aの左側壁部13の内面に沿うように配置される。
【0073】
底壁部10の右側には、右外方側板部20が設けられている。右外方側板部20の基端側は、容器1Aの右側壁部12の外面に沿うように配置される。右外方側板部20は、右側壁部12に形成された切れ込み部12Aに差し込まれるようになっている。また、右側壁部12には、底壁部10の内面に沿って延びるように折り曲げられる折り曲げ部12Bが設けられている。
【0074】
底壁部10の左側には、左外方側板部21が設けられている。左外方側板部21の基端側は、容器1Aの左側壁部13の外面に沿うように配置される。左外方側板部21は、左側壁部13に形成された切れ込み部13Aに差し込まれるようになっている。また、左側壁部13には、底壁部10の内面に沿って延びるように折り曲げられる折り曲げ部13Bが設けられている。
【0075】
(板材100の構成)
図12や
図13に示すように、板材100は、底壁部10に後端壁部14を介して上壁部11が連なるとともに、底壁部10に区画壁部15が連なって形成されている。さらに、上壁部11には右側壁部12及び左側壁部13が連なるとともに、返し部17も連なっている。また、底壁部10には右外方側板部20及び左外方側板部21が連なっている。つまり、容器1Aを構成する各部によって1枚の板材100が構成されている。尚、切り欠き部15は板材100の縁部に位置している。
【0076】
そして、区画壁部15と第2導入空間R2を形成する上壁部11とに、それぞれ第1粘着剤2及び第2粘着剤3が設けられている。誘引部材4は板材100には設けられていない。
【0077】
第1粘着剤2及び第2粘着剤3は板材100に塗布されている。すなわち、
図13及び
図14に示すように、板材100の展開状態で、第1導入空間R1を形成する上壁部(区画壁部)の下面と、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面とが該板材100の同一面上に位置している。そして、区画壁部15の下面と、第2導入空間R2を形成する上壁部11の下面とに、それぞれ第1粘着剤2及び第2粘着剤3(
図12及び
図13に斜線で示す)が設けられている。
【0078】
第1粘着剤2及び第2粘着剤3を板材100の同一面に設けたことで、例えば図示しない塗工機を用いて粘着剤を塗布する際には、一工程で第1粘着剤2及び第2粘着剤3の両方の塗布を完了させることができる。尚、第1粘着剤2及び第2粘着剤3を板材100の別の面に設けるようにしてもよい。
【0079】
なお、第1粘着剤2は、区画壁部15の下面の全面に塗布する必要はなく、その一部に塗布することもできる。同様に、第2粘着剤3は、上壁部11の下面の全面に塗布する必要はなく、その一部に塗布することもできる。例えば
図13では、第1粘着剤2の周縁部が、区画壁部15の前縁部、後縁部、左右両縁部から離れるように、塗布範囲が設定されている。同様に、第2粘着剤3の周縁部が、上壁部11の前縁部、後縁部、左右両縁部から離れるように、塗布範囲が設定されている。これにより、
図8等に示すように、板材100を折り曲げて容器1Aを形成した際に、第1粘着剤2が区画壁部15以外の部分に粘着しなくなるとともに、第2粘着剤3が上壁部11以外の部分に粘着しなくなる。
【0080】
(匍匐害虫捕獲器1の製造方法)
次に、上記のように構成された匍匐害虫捕獲器1の製造方法について説明する。まず、
図12に示すような板材100を得る。その後、
図13に示すように、粘着剤を塗布する塗工機(図示せず)を使用し、区画壁部15と上壁部11とに、それぞれ第1粘着剤2及び第2粘着剤3を塗布する。第1粘着剤2及び第2粘着剤3の塗布後、保護用の剥離紙を貼り付けておく。剥離紙は、匍匐害虫捕獲器1の使用開始時に剥離すればよい。第1粘着剤2及び第2粘着剤3を塗布する際には、区画壁部15と上壁部11との塗布面が板材100の同一面であるため、一工程で行うことができ、生産性を高めることができる。また、剥離紙を貼り付ける際にも同様に一工程で行うことができる。
【0081】
その後、
図14に示すように、区画壁部15の右内方側板部15b及び左内方側板部15cを折り曲げる。右内方側板部15b及び左内方側板部15cを折り曲げた後、区画壁部15が底壁部10の上方に位置するように折り曲げる。
【0082】
次いで、返し部17を折り曲げるとともに、右側壁部12及び左側壁部13を折り曲げ、さらに折り曲げ部12B、13Bも折り曲げる。そして、上壁部11が区画壁部15の上方に位置するように折り曲げる。
【0083】
しかる後、
図17に示すように右外方側板部20及び左外方側板部21を切れ込み部12A、13Aにそれぞれ挿入することで、右外方側板部20及び左外方側板部21を右側壁部12及び左側壁部13に係止させる。
【0084】
以上のようにして容器1Aが得られる。その後、
図9及び
図10に示すように、蓋部10bを、前縁部10cを折り曲げ起点として容器1Aの外側へ折り曲げて挿入口10aを開放する。挿入口10aを開放した状態にして誘引部材4を挿入口10aから第1導入空間R1に挿入して第2粘着剤2に貼り付ける。誘引部材4の貼り付け後に蓋部10bを閉じる。蓋部10bは、底壁部10に対して爪係合等の固定構造によって固定するようにしてもよい。
【0085】
(実施形態1の作用効果)
以上説明したように、この実施形態1によれば、
図11に示すように、後側導入口14aから第1導入空間R1に導入された匍匐害虫が例えばゴキブリである場合には、第1導入空間R1の上部に第1粘着剤2が配置されているので、羽根または背部が第1粘着剤2に付着することになり、第1導入空間2から逃げ出しにくくなる。また、前側導入口16から第2導入空間R2に例えばゴキブリが導入されると、第2導入空間R2の上部に第2粘着剤3が配置されているので、羽根または背部が第2粘着剤3に付着することになり、第2導入空間R2から逃げ出しにくくなる。尚、
図11では誘引部材4を省略している。
【0086】
第1導入空間R1及び第2導入空間R2は容器1Aの内部において上下に形成されているので、容器1Aの平面視における投影面積を小さくしながら、その内部において広い粘着面積を確保することが可能になる。
【0087】
尚、捕獲対象となる匍匐害虫は、ゴキブリに限られるものではなく、床面等を歩行する害虫を全て対象とすることができる。羽根のない害虫であっても、背部が粘着剤2、3に付着することで粘着面積が広くなって逃げ出しにくくなるので、羽根の有無は問わない。
【0088】
また、後側導入口14aから第1導入空間R1に導入された匍匐害虫は、第1導入空間R1を形成する壁部の内面に設けられた第1粘着剤2によって捕獲され、また、前側導入口16から第2導入空間R2に導入された匍匐害虫は、第2導入空間R2を形成する壁部の内面に設けられた第2粘着剤3によって捕獲されるので、匍匐害虫の捕獲可能な数を増やすことができる。
【0089】
また、誘引部材4が第1導入空間R1にのみ収容されているので、誘引部材4の数が少なくて済む。この場合に、第1導入空間R1と第2導入空間R2とが連通しているので、誘引部材4から放散される誘引成分が第1導入空間R1から第2導入空間R2に入り易くなり、匍匐害虫を両方の空間R1、R2に誘引することができる。
【0090】
また、第1導入空間R1を形成する上壁部と第2導入空間R2を形成する底壁部とを共通化したので、容器1Aをコンパクト化することができる。そして、第1導入空間R1を形成する上壁部に連通部を設けることで、シンプルな連通構造とすることができる。
【0091】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0092】
図18に示す変形例のように、区画壁部15には切り欠き部の代わりに該区画壁部15を貫通する孔部15dを形成してもよい。孔部15dの数は1つに限られるものではなく、複数であってもよい。また、孔部15dはスリット形状であってもよい。
【0093】
また、右側壁部12や左側壁部13に、匍匐害虫を導入するための導入口を形成してもよい。
【0094】
(実施形態2)
図19は、本発明の実施形態2に係る匍匐害虫捕獲器1を上方かつ前側から見た斜視図であり、
図20は、匍匐害虫捕獲器1を上方かつ後側から見た斜視図である。実施形態2は、容器1Aが前端壁部18を備えている点で実施形態1と異なるとともに、容器1Aに形成された開口部の数や大ききも実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0095】
図23に示すように、実施形態2の匍匐害虫捕獲器1は、匍匐害虫を導入して捕獲する捕獲空間S1を有する容器1Aと、粘着剤3と、誘引部材4とを備えており、該容器1Aの捕獲空間S1に導入した匍匐害虫を粘着剤3によって捕獲することができるように構成されている。さらに、この匍匐害虫捕獲器1の容器1Aの内部には、誘引部材4が配置される誘引剤配置空間S2も形成されており、誘引剤配置空間S2には粘着剤2が設けられている。したがって、誘引剤配置空間S2に導入した匍匐害虫を粘着剤2によって捕獲することができるように構成されている。なお、詳しくは後述するが、捕獲空間S1内には誘引剤が配置されていない。
【0096】
また、この例では、誘引部材4が容器1Aの内部に収容されているが、これに限られるものではなく、誘引部材4が容器1Aの外部に配置されていてもよい。誘引部材4によって捕獲空間S1や誘引剤配置空間S2に誘引された匍匐害虫を粘着剤2、3によって捕獲することができる他、誘引されなくても捕獲空間S1や誘引剤配置空間S2に導入された匍匐害虫を粘着剤3、2によって捕獲することができる。
【0097】
また、
図23に示すように、匍匐害虫捕獲器1は、一般家庭や事務所、各種工場等の床面(設置面)200に載置して使用することができる他、図示しないが地面に直接載置して使用することもできる。また、例えば、家具と壁の隙間や電化製品と壁の隙間等、匍匐害虫が歩行しそうな場所に設置することもできる。また、壁に沿わせて設置することや、家具や電化製品の上に設置して使用することもできる。
【0098】
(容器1Aの構成)
図19~
図23に示すように、容器1Aは、底壁部10と、上壁部11と、左側壁部13と、右側壁部12と、前端壁部18と、後端壁部14とを備えている。図示しないが、底壁部10の所定部位に切り込みを形成して開閉可能にしておき、この開閉可能な部分を開いて誘引部材4を容器1Aの内部に挿入することができる。誘引部材4を容器1Aの内部に挿入した後、上記開閉可能な部分を閉じておけばよい。
【0099】
右側壁部12は、底壁部10の左縁部から上方へ延びるように形成されており、
図22に示す右側面視で平行四辺形に近い形状となっている。
図20等に示すように、左側壁部13は、底壁部10の左縁部から上方へ延びるように形成されており、左側面視で平行四辺形に近い形状となっている。左側壁部13と、右側壁部12とは互いに平行である。また、左側壁部13の上縁部と右側壁部12の上縁部とは略同じ高さに位置している。
【0100】
図22に示すように、前端壁部18は、底壁部10の前縁部から上方へ延びるように形成されており、上端に近づくほど後に位置するように傾斜している。
図21に示すように、正面からみたとき、前端壁部18は、左右方向に長い長方形となっている。また、後端壁部14は、底壁部10の後縁部から上方へ延びるように形成されており、上端に近づくほど後に位置するように傾斜している。後端壁部14も左右方向に長い長方形となっている。前端壁部18と、後端壁部14とは互いに平行である。また、前端壁部18の上縁部と後端壁部14の上縁部とは、左側壁部13の上縁部と略同じ高さに位置している。
【0101】
上壁部11は、底壁部10と略平行に延びており、前端壁部18の上縁部、後端壁部14の上縁部、左側壁部13の上縁部及び右側壁部12の上縁部と連続している。
図25に示すように、上壁部11は、略矩形状である。
【0102】
図23に示すように、容器1Aの内部には、捕獲空間S1と誘引剤配置空間S2とを仕切る板状の区画壁部15が設けられている。区画壁部15は、底壁部10の前縁部から上壁部11の後縁部まで傾斜しながら連続して延びるとともに、左側壁部13から右側壁部12まで連続して延びている。
【0103】
容器1Aの前後方向に沿う縦断面形状は、平行四辺形に近い形状となっており、容器1Aの前後方向に沿う縦断面には、鋭角となる角部と、鈍角となる角部とが2つずつ形成されることになる。この実施形態では、鋭角となる角部が容器1Aの前下部と後上部とに形成され、鈍角となる角部が容器1Aの前上部と後下部とに形成されることになる。区画壁部15の前後方向の端部は、容器1Aの前後方向に沿う縦断面形状の鋭角となる角部に配置されている。これにより、区画壁部15の前後方向の端部が、容器1Aの角部から位置ずれし難くなり、その結果、区画壁部15を容器1Aの内部で所定位置に配置しておくことができる。特に、区画壁部15が底壁部10や上壁部11と一体成形されていない場合は、当該区画壁部15が容器1A内で位置ずれしてしまうおそれがあるので、上記のように配置するのが好適である。
【0104】
尚、区画壁部15は、底壁部10や上壁部11と一体成形されていてもよい。この場合、区画壁部15の前後方向の端部は、容器1Aの前後方向に沿う縦断面形状の鈍角となる角部に配置することができる。また、区画壁部15は、左側壁部13や右側壁部12と一体成形されていてもよい。
【0105】
容器1Aの内部における区画壁部15よりも上側の空間が捕獲空間S1であり、区画壁部15よりも下側の空間が誘引剤配置空間S2である。したがって、捕獲空間S1の底面は区画壁部15の上面で構成され、捕獲空間S1の上面は上壁部11の下面で構成されることになる。また、誘引剤配置空間S2の底面は底壁部10の上面で構成され、誘引剤配置空間S2の上面は区画壁部15の下面で構成されることになる。捕獲空間S1の左側面及び誘引剤配置空間S2の左側面は、左側壁部13の内面で構成され、捕獲空間S1の右側面及び誘引剤配置空間S2の右側面は、右側壁部12の内面で構成される。
【0106】
図19に示すように、前端壁部18には、捕獲空間S1に連通する前側害虫導入口18bと前側サイド開口部18cとが形成されている。前側害虫導入口18bは、左右方向に細長く形成されており、容器1Aの外部の害虫を捕獲空間S1に導入するための開口部である。前側害虫導入口18bは、スリット状の開口部であってもよい。前側害虫導入口18bの下縁部は、前端壁部18の下縁部から上方に離れており、左右方向に直線状に延びている。前側害虫導入口18bの上縁部は、前端壁部18の上縁部から下方に離れており、左右方向に直線状に延びている。前側害虫導入口18bの左右方向の寸法は、一般的なゴキブリが余裕を持って進入できるように設定されており、例えば、30mm以上150mm以下の範囲とすることができる。
【0107】
前側害虫導入口18bをこのような形状としているのは、匍匐害虫(特にゴキブリ)が、自身の体に密着する扁平な隙間に好んで入り込む習性があるためである。前端壁部18に前側害虫導入口18bを複数形成してもよく、例えば複数の前側害虫導入口18bを左右方向に並べて形成することや、前側害虫導入口18bを上下方向に並べて形成することも可能である。前側害虫導入口18bは、長手方向の寸法が短手方向の寸法よりも長い形状、例えば、長手方向の寸法が短手方向の寸法の2倍以上、好ましくは3倍以上の細長い形状が好ましい。
【0108】
前側サイド開口部18cは、前側害虫導入口18bの左側方及び右側方にそれぞれ配置されており、前側害虫導入口18bよりも小さく形成されている。前側サイド開口部18cは、害虫の導入口として使用されなくてもよいし、害虫の導入が可能な寸法にして害虫導入口として使用されてもよい。前側サイド開口部18cは、省略してもよい。前側サイド開口部18cを細長い形状にしてもよい。
【0109】
図20に示すように、後端壁部14には、誘引剤配置空間S2に連通する後側害虫導入口14bと後側サイド開口部14cとが形成されている。後側害虫導入口14bは、前側害虫導入口18bと同様に形成され、また、後側サイド開口部14cは、前側サイド開口部18cと同様に形成されている。
図23に示すように、誘引剤配置空間S2には、誘引部材4が配置されているので、誘引部材4から揮発した誘引成分は後側害虫導入口14b及び後側サイド開口部14cから外部へ放散されることになり、後側害虫導入口14bと後側サイド開口部14cは誘引成分の放散口にもなる。この実施形態では、前端壁部18と後端壁部14に同じ開口部を形成しているが、これに限らず、前端壁部18と後端壁部14とで異なる形状の開口部を形成してもよい。
【0110】
図20に示すように、左側壁部13には、捕獲空間S1に連通する第1~第3左側開口部13a、13b、13cと、誘引剤配置空間S2に連通する第4~第6左側開口部13d、13e、13fとが形成されている。第1左側開口部13aは、左側壁部13の前部に形成されており、害虫の進入が可能な大きさとされている。第2左側開口部13bは、左側壁部13の第1左側開口部13aよりも後に形成されており、第1左側開口部13aよりも小さい。第3左側開口部13cは、左側壁部13の第2左側開口部13bよりも後、即ち左側壁部13の前後方向中間部に形成されており、第1左側開口部13a及び第2左側開口部13bよりも小さい。第2左側開口部13b及び第3左側開口部13cの大きさは、害虫が進入可能な大きさとしてもよく、この場合、第2左側開口部13b及び第3左側開口部13cは害虫導入口となる。
【0111】
第4左側開口部13dは、左側壁部13の後部に形成されており、害虫の進入が可能な大きさとされている。第5側開口部13eは、左側壁部13の第4左側開口部13dよりも前に形成されており、第4左側開口部13dよりも小さい。第6左側開口部13fは、左側壁部13の第5左側開口部13eよりも前、即ち左側壁部13の前後方向中間部に形成されており、第4左側開口部13d及び第5左側開口部13eよりも小さい。第5左側開口部13e及び第6左側開口部13fの大きさは、害虫が進入可能な大きさとしてもよく、この場合、第5左側開口部13e及び第6左側開口部13fは害虫導入口となる。誘引剤配置空間S2に連通する第4~第6左側開口部13d、13e、13fは、誘引部材4の誘引成分を外部へ放散する放散口にもなる。尚、図示しないが、左側壁部13には、前後方向に細長い害虫導入口を形成してもよい。
【0112】
図22に示すように、右側壁部12には、左側壁部13の第1~第6左側開口部13a、13b、13c、13d、13e、13fと同様に、捕獲空間S1に連通する第1~第3右側開口部12a、12b、12cと、誘引剤配置空間S2に連通する第4~第6右側開口部12d、12e、12fとが形成されている。この実施形態では、左側壁部13と右側壁部12に同じ開口部を形成しているが、これに限らず、左側壁部13と右側壁部12とで異なる形状の開口部を形成してもよい。また、左側壁部13と右側壁部12には開口部を形成しなくてもよい。
【0113】
また、底壁部10、上壁部11、左側壁部13、右側壁部12、前端壁部18及び後端壁部14の形状は上述した形状に限られるものではなく、任意の形状にすることができる。
【0114】
(捕獲空間S1)
図23に示すように、捕獲空間S1は、上壁部11と、区画壁部15と、左側壁部13と、右側壁部12と、前端壁部18とで区画された空間であり、捕獲空間S1と誘引剤配置空間S2とは区画壁部15によって仕切られている。捕獲空間S1と誘引剤配置空間S2との一方のみ容器1Aに設けてもよい。
【0115】
捕獲空間S1には誘引部材4が配置されていないので、誘引部材4は捕獲空間S1の外部に配置されたものになる。よって、誘引部材4の誘引成分は、前側害虫導入口18b等から放散されない。尚、区画壁部15に例えば針穴程度の小さな貫通孔や小さなスリット等が形成されていてもよく、この場合は、誘引部材4の誘引成分が貫通孔やスリットから僅かに捕獲空間S1に流入することがあるが、この誘引成分の流入は積極的に行っているものではなく、誘引効果としても実質的に無視できる程度に小さいので、本発明に含まれるものとする。
【0116】
また、前端壁部18に前側害虫導入口18bが形成されているので、捕獲空間S1の前側を害虫が進入する側とすることができる。この場合、区画壁部15が上壁部11に対して後側へ行くほど接近するように傾斜しているので、捕獲空間S1の上下方向の寸法は、捕獲空間S1の奥側へ行くほど短くなる。尚、上壁部11を傾斜させてもよい。
【0117】
(誘引剤配置空間S2)
誘引剤配置空間S2は、底壁部10と、区画壁部15と、左側壁部13と、右側壁部12と、後端壁部14とで区画された空間であり、捕獲空間S1の下に位置している。尚、容器1Aを上下反転した状態、即ち、捕獲空間S1を下に形成し、誘引剤配置空間S2を上に形成してもよい。
【0118】
また、誘引剤配置空間S2は害虫を捕獲する空間として利用してもよいし、誘引部材4を配置するためだけの空間として利用してもよい。誘引部材4を配置するためだけの空間として利用する場合、容器1Aには、誘引剤配置空間S2に連通する放散口のみ形成し、害虫導入口を形成しない形態としてもよい。
【0119】
誘引剤配置空間S2を害虫の捕獲空間として利用する場合、後端壁部14に後側害虫導入口14bが形成されているので、誘引剤配置空間S2の後側を害虫が進入する側とすることができる。この場合、区画壁部15が底壁部10に対して前側へ行くほど接近するように傾斜しているので、誘引剤配置空間S2の上下方向の寸法は、誘引剤配置空間S2の奥側へ行くほど短くなる。
【0120】
(粘着剤2、3の構成)
この実施形態では、上壁部11の前端部近傍から後端部近傍まで連続し、かつ、上壁部11の左端部近傍から右端部近傍まで連続して粘着剤3が設けられているが、これに限らず、上壁部11の前後方向に不連続に設けてもよいし、上壁部11の左右方向に不連続に設けてもよい。粘着剤3は、上壁部11の前側部分と後側部分とで別々に設けてもよい。
【0121】
粘着剤3は、薄く形成された第1部分3aと、第1部分3aよりも厚く形成された第2部分3bとを有している。第1部分3aと第2部分3bとの厚みの差は、例えば1.2倍以上3.0倍以下に設定することができるが、これに限定されるものではなく、任意の差に設定することができる。第1部分3aと第2部分3bとを設けることで、匍匐害虫の捕獲能力を殆ど低下させることなく、粘着剤の使用量を削減することができる。
【0122】
第1部分3aは、少なくとも上壁部11の周縁部に設けられている。第2部分3bは、上壁部11の周縁部を除いた部分に複数設けられており、この実施形態では、直線状に長い形状となっている。第2部分3bは、1つであってもよい。また、第2部分3bは、屈曲するように延びていてもよいし、蛇行するように延びていてもよい。第2部分3bを複数設ける場合には、互いに間隔をあけて設けることができる。第2部分3bは、前後方向、左右方向、斜め方向のいずれに長い形状であってもよい。また、第2部分3bを点状に設けることもできる。
【0123】
また、粘着剤2は、区画壁部15の前端部近傍から後端部近傍まで連続し、かつ、区画壁部15の左端部近傍から右端部近傍まで連続して設けられているが、これに限らず、区画壁部15の前後方向に不連続に設けてもよいし、区画壁部15の左右方向に不連続に設けてもよい。粘着剤2は、区画壁部15の前側部分と後側部分とで別々に設けてもよい。粘着剤2は、上記粘着剤3と同様に、第1部分2aと第2部分2bとを有している。
【0124】
図示しないが、区画壁部15の上面に粘着剤を設けてもよいし、底壁部10に粘着剤を設けてもよい。誘引剤配置空間S2が捕獲空間として利用されない場合には、粘着剤2を省略することができる。
【0125】
(誘引部材4の構成)
図23に示すように、誘引部材4は底壁部10に設けてもよいし、図示しないが、区画壁部15に設けてもよい。誘引部材4を粘着剤2によって区画壁部15や底壁部10に接着することもできる。
【0126】
誘引部材4の形態は特に限定されるものではなく、例えば、通気性を有する袋体の内部に、従来から周知の匍匐害虫を誘引するための薬剤や、餌等を収容してなるものを挙げることができる。袋体は、上記粘着剤2によって区画壁部15や底壁部10に接着することができる。尚、図示しないが、誘引部材4を液体として誘引剤容器に収容しておくこともできる。誘引剤容器も上記粘着剤2によって区画壁部15や底壁部10に接着することができる。
【0127】
また、例えば、
図27に示す実施形態2の変形例のように、誘引部材4を容器1Aの外部に設置してもよい。
図27に示す例では、誘引部材4を容器1Aの上壁部11の上面に取り付けるようにしているが、これに限らず、容器1Aの左側壁部13と、右側壁部12と、前端壁部18と、後端壁部14とのうち、いずれか1つの壁部または複数の壁部に誘引部材4を取り付けてもよい。また、容器1Aから離した状態で誘引部材4を設置してもよい。この変形例の場合、容器1Aの内部には1つの空間のみを形成し、その空間を捕獲空間とすることができる。
【0128】
(実施形態2の作用効果)
この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、匍匐害虫の捕獲能力を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本発明に係る匍匐害虫捕獲器は、例えば、ゴキブリ等の匍匐害虫を捕獲する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 匍匐害虫捕獲器
1A 容器
2 第1粘着剤
3 第2粘着剤
4 誘引部材
10 底壁部
10a 挿入口
10b 蓋部
11 上壁部
14a 後側導入口(第1導入口)
15 区画壁部(区画部)
15a 切り欠き部(連通部)
15d 孔部(連通部)
16 前側導入口(第2導入口)
100 板材
G 設置面
R1 第1導入空間
R2 第2導入空間