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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】防水施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
E04D5/14 R
E04D5/14 T
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019073049
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020169539
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 智史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘三
(72)【発明者】
【氏名】丸子 貴則
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-140354(JP,A)
【文献】実開昭55-165025(JP,U)
【文献】実開昭56-016719(JP,U)
【文献】独国実用新案第000029514717(DE,U1)
【文献】特開昭61-016847(JP,A)
【文献】特開平01-250555(JP,A)
【文献】実開昭55-154216(JP,U)
【文献】特開2010-275773(JP,A)
【文献】特開2018-123585(JP,A)
【文献】特開平05-001456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00-15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の既存防水層の上に防水層を新設する防水施工方法において、
矩形板状に形成された断熱材と、当該断熱材の上面に接着により一体化された防水シートとを備えた防水パネルを用意し、前記断熱材の連続する2辺から前記防水シートが張り出すように当該防水シートを設けておき、
複数の前記防水パネルを前記防水シートが上になるように前記既存防水層の上に並べて配置して前記屋根に固定する固定工程と、
前記防水パネルの前記防水シートの張り出した部分を、当該防水パネルの隣に並ぶ別の前記防水パネルの前記防水シートに接着する接着工程とを備え
前記防水パネルの前記防水シートは、前記断熱材の上面における前記2辺の近傍部分に対して非接着であり、
前記防水パネルの前記防水シートと、前記断熱材の上面における前記2辺の近傍部分との間に断熱材止め付け用鋼板を配置し、当該断熱材止め付け用鋼板により前記断熱材を前記屋根に止め付け、
前記防水パネルの前記防水シートは、前記断熱材止め付け鋼板に対して非接着であることを特徴とする防水施工方法。
【請求項2】
屋根の既存防水層の上に防水層を新設する防水施工方法において、
矩形板状に形成された断熱材と、当該断熱材の上面に接着により一体化された防水シートとを備えた防水パネルを用意し、前記断熱材の連続する2辺から前記防水シートが張り出すように当該防水シートを設けておき、
複数の前記防水パネルを前記防水シートが上になるように前記既存防水層の上に並べて配置して前記屋根に固定する固定工程と、
前記防水パネルの前記防水シートの張り出した部分を、当該防水パネルの隣に並ぶ別の前記防水パネルの前記防水シートに接着する接着工程とを備え、
前記防水パネルの前記防水シートは、前記断熱材の上面における前記2辺の近傍部分に対して非接着であり、
前記防水パネルの前記防水シートと、前記断熱材の上面における前記2辺の近傍部分との間に断熱材止め付け用鋼板を配置し、当該断熱材止め付け用鋼板により前記断熱材を前記屋根に止め付け、
前記防水パネルの前記防水シートは、前記断熱材止め付け鋼板に対して接着することを特徴とする防水施工方法。
【請求項3】
請求項に記載の防水施工方法において、
前記防水シートは塩化ビニル製のシートであり、
前記断熱材止め付け鋼板は、その上面が塩化ビニルで被覆された塩ビ被覆鋼板であることを特徴とする防水施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば勾配屋根に適用可能な防水施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、勾配屋根としては、波板形状の金属板を敷き並べて構成した折板屋根やスレート屋根が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1では、折板屋根等の金属製屋根を構成している防水下地の上に板状の断熱部材を敷設し、その断熱部材の上に固定用ディスクを配置して、固定用ビスによって固定用ディスクを防水下地に固定している。固定用ディスクの上面には、ホットメルト接着層を設けている。断熱部材及び固定用ディスクの上に合成樹脂製の防水シートを敷設し、この防水シートを固定用ディスクのホットメルト接着層に接着固定している。
【0004】
特許文献2では、金属外皮の間に断熱材を介在させた複数の断熱パネルを互いに隣接するように並設し、これら断熱パネルの上に防水シートを敷設している。金属外皮には樹脂層を形成している。防水シートを金属外皮の樹脂層に熱融着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-75109号公報
【文献】特許第4685592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、防水シートを用いて改修を行う際は、既存防水層を残したまま施工を行うことが多い。既存防水層と新設の防水シートとの間には断熱材や緩衝フォームといった絶縁層の設置が不可欠となっている。
【0007】
既存防水層と新設の防水シートとの間に絶縁層としての断熱材を設置する場合、既存防水層に断熱材を載置した後、断熱材が風で飛ばされないように当該断熱材を止め付け、その後、断熱材を覆うように防水シートを配置した後、防水シートが風で飛ばされないように当該防水シートを止め付けるといった複数の工程を経て施工する必要がある。このため、施工に時間を要し、ひいては工期が長期間化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、既存防水層を残したまま防水層を新設する場合に工期を短縮できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、断熱材と防水シートとを予め一体化した防水パネルを用いた。
【0010】
第1の発明は、屋根の既存防水層の上に防水層を新設する防水施工方法において、矩形板状に形成された断熱材と、当該断熱材の上面に接着により一体化された防水シートとを備えた防水パネルを用意し、前記断熱材の連続する2辺から前記防水シートが張り出すように当該防水シートを設けておき、複数の前記防水パネルを前記防水シートが上になるように前記既存防水層の上に並べて配置して前記屋根に固定する固定工程と、前記防水パネルの前記防水シートの張り出した部分を、当該防水パネルの隣に並ぶ別の前記防水パネルの前記防水シートに接着する接着工程とを備えていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、防水パネルを防水シートが上になるように屋根の既存防水層の上に並べて配置することで、既存防水層と新設の防水シートとの間に断熱材を絶縁層として設けることが可能になる。このとき、断熱材と防水シートとが予め一体化されているので、断熱材の敷設と防水シートの敷設とが同時に行われることになり、施工時間が短縮する。また、防水パネルを屋根に固定することで、断熱材の固定と、防水シートの固定とが同時に行われるので、このことによっても施工時間が短縮する。そして、防水シートの張り出した部分を、隣に並ぶ別の防水パネルの防水シートに接着することで、防水パネル間の止水性が確保される。
【0012】
また、前記防水パネルの前記防水シートは、前記断熱材の上面における前記2辺の近傍部分に対して非接着であることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、防水シートと、断熱材の上面における2辺の近傍部分とが接着されていないので、例えば、防水シートと断熱材の上面との間に、断熱材を屋根に止め付けるための部材を配置し、当該部材によって断熱材を屋根に止め付ける作業を行うことができる。その後、防水シートの張り出した部分を、隣に並ぶ別の防水パネルの防水シートに接着することで、防水パネル間の止水性が確保される。
【0014】
また、前記防水シートと、前記断熱材の上面における前記2辺の近傍部分との間に断熱材止め付け用鋼板を配置し、当該断熱材止め付け用鋼板により前記断熱材を前記屋根に止め付け、前記防水シートは、前記断熱材止め付け鋼板に対して非接着であることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、防水シートと断熱材の上面との間に配置した止め付け用鋼板により断熱材を屋根に止め付けることができる。防水シートは止め付け鋼板に対して接着されていないので、例えば風圧が止め付け鋼板に対して直接的に作用し難くなる。
【0016】
の発明は、前記防水シートと、前記断熱材の上面における前記2辺の近傍部分との間に断熱材止め付け用鋼板を配置し、当該断熱材止め付け用鋼板により前記断熱材を前記屋根に止め付け、前記防水シートは、前記断熱材止め付け鋼板に対して接着することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、防水シートと断熱材の上面との間に配置した止め付け用鋼板により断熱材を屋根に止め付けることができる。防水シートは止め付け鋼板に対して接着されているので、防水シートの一部を、止め付け鋼板を利用して固定することが可能になる。
【0018】
の発明は、前記防水シートは塩化ビニル製のシートであり、前記断熱材止め付け鋼板は、その上面が塩化ビニルで被覆された塩ビ被覆鋼板であることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、防水シートと止め付け鋼板とを、熱による融着または溶剤による溶着によって強固に接着することが可能になる
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、断熱材と防水シートとが一体化された防水パネルを既存防水層の上に並べて配置して屋根に固定し、防水シートの張り出した部分を隣に並ぶ別の防水パネルの防水シートに接着するようにしたので、既存防水層の上に防水層を短期間で新設することができる。
【0021】
また、防水パネルの防水シートが断熱材の上面における2辺の近傍部分に対して非接着とされているので、防水シートと断熱材の上面との間に、断熱材を屋根に止め付けるための部材を配置して断熱材を屋根に止め付けることができる。
【0022】
また、防水シートと、断熱材の上面における2辺の近傍部分との間に配置した止め付け用鋼板により断熱材を屋根に止め付け、防水シートを止め付け鋼板に対して接着しないようにしたので、風圧が止め付け鋼板に対して直接的に作用し難くなり、止め付け鋼板による固定力を長期間に亘って維持することができる。
【0023】
の発明によれば、防水シートと、断熱材の上面における2辺の近傍部分との間に配置した止め付け用鋼板により断熱材を屋根に止め付け、防水シートを止め付け鋼板に対して接着したので、止め付け鋼板を利用して防水シートの位置を固定することができる。
【0024】
の発明によれば、防水シートを塩化ビニル製とし、止め付け鋼板を塩ビ被覆鋼板としたので、容易にかつ強固に接着することができる
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態1に係る防水施工方法に使用される第1防水パネルを上方から見た斜視図である。
図2】第1防水パネルの平面図である。
図3】第1防水パネルの側面図である。
図4】第1防水パネルの端面図である。
図5】第2防水パネルの平面図である。
図6】第1防水パネルと第2防水パネルとを屋根の既存防水層の上に並べて配置した状態を示す平面図である。
図7】施工後の第1防水パネルを上方から見た斜視図である。
図8図7のVIII-VIII線断面図である。
図9】実施形態2に係る図8相当図である。
図10】実施形態3に係る図7相当図である。
図11】実施形態3に係る図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る防水施工方法に使用される第1防水パネル1を上方から見た斜視図である。図8に示すように、第1防水パネル1は、屋根100の既存防水層101の上に防水層102を新設する防水施工方法で使用される部材である。この屋根100は、平部が一方向に傾斜した勾配屋根である。勾配の方向は任意に設定することができる。屋根100は、合成スラブ用デッキプレート103と、合成スラブ用デッキプレート103の上に設けられた既存防水層101とを備えている。合成スラブ用デッキプレート103は、例えば板厚が1.2mm程度の金属板を折り曲げることによって構成されている。合成スラブ用デッキプレート103によって防水下地が構成されている。既存防水層101は、従来から周知の板状の部材からなるものであり、合成スラブ用デッキプレート103の上面に複数枚が互いに隣接するように並設されている。
【0028】
実施形態1では、図2図4に示す第1防水パネル1と、図5に示す第2防水パネル2とが使用される。第1防水パネル1と第2防水パネル2とは、構造は同じであり、形状が異なるだけであるため、以下、第1防水パネル1の構造について詳細に説明する。
【0029】
第1防水パネル1は、矩形板状に形成された断熱材10と、当該断熱材10の上面に接着により一体化された防水シート11とを備えている。断熱材10と防水シート11との接着は、従来から周知の接着剤等によって可能である。断熱材10の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば5mm以上50mm以下に設定することができる。また、断熱材10の幅や長さは、数十cm以上の任意の寸法に設定することができる。
【0030】
断熱材10は、長方形であっても正方形であってもよい。断熱材10の縁部を構成する4辺(第1辺A1、第2辺A2、第3辺A3、第4辺A4)は、それぞれ直線状に延びており、連続する2辺(第1辺A1と第2辺A2、第2辺A2と第3辺A3、第3辺A3と第4辺A4、第4辺A4と第1辺A1)は互いに略直角をなすように交わっている。
【0031】
断熱材10は、樹脂発泡体で構成されている。樹脂発泡体としては、例えば、押し出し法ポリスチレンフォーム(XPS)、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)、フェノールフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、発泡ポリエチレン等をあげることができる。断熱材10を屋根100に締結固定する場合は、耐候性、耐熱性の高い硬質ポリウレタンフォームが好ましく、さらに、難燃性の高いイソシアヌレート環を含むいわゆるポリイソシアヌレートフォームが好ましい。断熱材10を接着固定する場合は、下地の不陸を吸収するために、比較的硬度の低い発泡ポリエチレンが好ましい。
【0032】
防水シート11は、例えば軟質塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂で構成することができる。防水シート11の厚みは特に限定されるものではないが、断熱材10よりも薄く、例えば1mm~3mm程度に設定することができる。
【0033】
防水シート11も矩形状とされている。防水シート11の縁部を構成する4辺(第1辺B1、第2辺B2、第3辺B3、第4辺B4)は、それぞれ直線状に延びており、連続する2辺(第1辺B1と第2辺B2、第2辺B2と第3辺B3、第3辺B3と第4辺B4、第4辺B4と第1辺B1)は互いに略直角をなすように交わっている。
【0034】
防水シート11は断熱材10の連続する2辺から張り出すように設けられている。すなわち、防水シート11の第1辺B1及び第2辺B2は、それぞれ、断熱材10の第1辺A1及び第2辺A2よりも長くなっているとともに、断熱材10の第1辺A1及び第2辺A2から外方に離れて位置付けられている。防水シート11の張出量、即ち、防水シート11の第1辺B1と断熱材10の第1辺A1との水平方向の距離、防水シート11の第2辺B2と断熱材10の第2辺A2との水平方向の距離は、例えば50mm程度に設定することができるが、これに限らず、例えば30mm~100mmの間の任意の寸法に設定することができる。防水シート11の第1辺B1と断熱材10の第1辺A1とは互いに平行であり、また、防水シート11の第2辺B2と断熱材10の第2辺A2とは互いに平行である。
【0035】
一方、防水シート11の第3辺B3及び第4辺B4は、それぞれ、断熱材10の第3辺A3及び第4辺A4と一致しており、断熱材10の第3辺A3及び第4辺A4上に、それぞれ防水シート11の第3辺B3及び第4辺B4が位置している。
【0036】
この実施形態では、防水シート11の第1辺B1及び第2辺B2が張り出すように形成されているが、これに限らず、防水シート11の第2辺B2及び第3辺B3が張り出すように形成されていてもよいし、防水シート11の第3辺B3及び第4辺B4が張り出すように形成されていてもよいし、防水シート11の第4辺B1及び第1辺B1が張り出すように形成されていてもよい。
【0037】
第1防水パネル1の防水シート11は、断熱材10の上面における第1辺A1及び第2辺A2の近傍部分に対して非接着である。図2に斜線で示す領域は、防水シート11と断熱材10とが接着されている領域であり、防水シート11と断熱材10とが重なった範囲において斜線で示す領域以外の部分では、防水シート11と断熱材10とが互いに接着されていない。断熱材10の第1辺A1から第3辺A3側に離れた所定の領域と、断熱材10の第2辺A2から第4辺A4側に離れた所定の領域とが、防水シート11に接着されていないので、防水シート11をその第3辺B3側へめくることができるとともに、第4辺B4側へもめくることができる。防水シート11の接着されていない領域は、接着されている領域に比べて狭く設定されており、防水シート11の断熱材10への接着強度は十分に確保されている。
【0038】
図5に示す第2防水パネル2は、第1防水パネル1と同様に、断熱材20と防水シート21とを備えており、防水シート21は断熱材20の連続する2辺から張り出すように設けられている。また、図5に斜線で示す領域は、防水シート21と断熱材20とが接着されている領域であり、防水シート21と断熱材20とが重なった範囲において斜線で示す領域以外の部分では、防水シート21と断熱材20とが互いに接着されていない。
【0039】
次に、本発明の実施形態に係る防水施工方法について説明する。図6は、複数の第1防水パネル1及び第2防水パネル2を各々の防水シート11、21が上になるように既存防水層101の上に並べて配置して屋根100に固定する工程を説明する図である。この例では、第1防水パネル1と、この第1防水パネル1よりも一方向の寸法が短い第2防水パネル2とを組み合わせて使用している。これにより、例えばC部では、第1防水パネル1の防水シート11と、第2防水パネル2の防水シート21との2枚が重なることになり、また、D部では3枚の第1防水パネル1の防水シート11が互いに重なることになる。つまり、寸法の異なる第1防水パネル1及び第2防水パネル2を組み合わせることで、防水シート11、21が最も多く重なる箇所でも3枚で済む。尚、必要に応じて第1防水パネル1のみを使用してもよいし、第2防水パネル2のみを使用してもよい。
【0040】
図7及び図8に示すように、防水シート11と、断熱材10の上面における第1辺A1の近傍部分との間に複数の断熱材止め付け用鋼板200を配置し、当該断熱材止め付け用鋼板200により断熱材10を屋根100に止め付ける。断熱材止め付け用鋼板200は、例えば円板状のディスク鋼板を使用することができる。断熱材止め付け用鋼板200は、防水シート11と断熱材10の上面との非接着部分に配置することができ、断熱材止め付け用鋼板200の直下方に合成スラブ用デッキプレート10の凸形状部分が位置するように、断熱材止め付け用鋼板200の配設位置が設定されている。断熱材止め付け用鋼板200は、固定用ビス201によって合成スラブ用デッキプレート103に締結固定されている。固定用ビス201は、例えば、セルフドリリングスクリュー等で構成することができ、断熱材止め付け用鋼板200及び断熱材10を上方から貫通して合成スラブ用デッキプレート103の凸形状部分にねじ込まれる。固定用ビス201を合成スラブ用デッキプレート103の凸形状部分にねじ込むことで、断熱材止め付け用鋼板200を断熱材10に押し付け、断熱材止め付け用鋼板200が押し付けられた断熱材10は合成スラブ用デッキプレート10の凸形状部分に押し付けられて固定される。また、防水シート11と、断熱材10の上面における第2辺A2の近傍部分との間に複数の断熱材止め付け用鋼板200を配置し、当該断熱材止め付け用鋼板200により断熱材10を屋根100に止め付けることもできる。防水シート11は、断熱材止め付け鋼板200に対して非接着である。以上が、本発明の固定工程である。
【0041】
上記固定工程の後、第1防水パネル1の防水シート11の張り出した部分を、当該防水パネル1の隣に並ぶ別の第1防水パネル1の防水シート11(または第2防水パネル2の防水シート21)に接着する接着工程を行う。図8に示すように、左側に位置する第1防水パネル1の防水シート11の張り出した部分を、その第1防水パネル1の右隣りに並ぶ第1防水パネル1の防水シート11の上面に重ねてから、左側の防水シート11を、右側の防水シート11に熱により融着するか、溶剤により溶着する。融着時に用いる器具は従来から周知の器具を用いることができ、また、溶着時に用いる溶剤は従来から周知の溶剤を用いることができる。
【0042】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態1に係る防水施工方法によれば、第1防水パネル1及び第2防水パネル2を防水シート11、21が上になるように屋根100の既存防水層101の上に並べて配置することで、既存防水層100と新設の防水シート11、21との間に断熱材10、20を絶縁層として設けることが可能になる。このとき、断熱材10、20と防水シート11、21とが予め一体化されているので、断熱材10、20の敷設と防水シート11、21の敷設とが同時に行われることになり、施工時間が短縮する。また、第1防水パネル1及び第2防水パネル2を屋根100に固定することで、断熱材10、20の固定と、防水シート11、21の固定とが同時に行われるので、このことによっても施工時間が短縮する。そして、第1防水パネル1の防水シート11の張り出した部分を、隣に並ぶ別の防水パネル1の防水シート11に接着することで、防水パネル1、1間の止水性が確保される。したがって、既存防水層101を残したまま、防水シート11、21によって防水層を新設する場合に工期を短縮できる。
【0043】
また、第1防水パネル1の防水シート11と、断熱材10の上面における第1辺A1、第2辺A2の近傍部分とが接着されていないので、例えば、防水シート11と断熱材10の上面との間に、断熱材10を屋根100に止め付けるための断熱材止め付け用鋼板200を配置し、当該断熱材止め付け用鋼板200によって断熱材10を屋根100に止め付ける作業を行うことができる。
【0044】
さらに、第1防水パネル1の防水シート11は断熱材止め付け用鋼板200に対して接着されていないので、例えば風圧が断熱材止め付け用鋼板200に対して直接的に作用し難くなり、断熱材止め付け用鋼板200による固定力を長期間に亘って維持することができる。
【0045】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係り、この実施形態2では、防水シート11を断熱材止め付け鋼板200に対して接着するようにした点で実施形態1と異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0046】
断熱材止め付け鋼板200は、その上面が塩化ビニルで被覆された塩ビ被覆鋼板で構成されている。すなわち、断熱材止め付け鋼板200は、鋼板からなる円板部材200aと、円板部材200aの上面を覆う塩化ビニル層200bとで構成されており、円板部材200aと塩化ビニル層200bとは一体化されている。
【0047】
断熱材止め付け鋼板200で断熱材10を屋根100に固定した後、断熱材止め付け鋼板200の塩化ビニル層200bと防水シート11とを融着または溶着することで、断熱材止め付け鋼板200と防水シート11とを一体化する。これにより、防水シート11の一部を、断熱材止め付け鋼板200を利用して固定することが可能になる。
【0048】
この実施形態2においても、実施形態1と同様に、既存防水層101を残したまま、防水層を新設する場合に工期を短縮できる。
【0049】
(実施形態3)
図10及び図11は、本発明の実施形態3に係り、この実施形態3では、防水シート11の上に防水パネル止め付け用鋼板250を配置し、当該防水パネル止め付け用鋼板250により防水パネル1を屋根100に止め付け、防水パネル止め付け用鋼板250を覆うように防水性被覆材300を配置し、当該防水性被覆材300を防水シート11に接着するようにした点で実施形態1と異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0050】
防水パネル止め付け用鋼板250は、実施形態2の断熱材止め付け鋼板200と同様に塩ビ被覆鋼板で構成されており、鋼板からなる円板部材250aと、円板部材250aの上面を覆う塩化ビニル層250bとを備えている。
【0051】
防水パネル止め付け用鋼板250は、防水パネル1を既存防水層101の上に載置した後、当該防水パネル1の上に置く。そして、セルフドリリングスクリュー等で構成された固定用ビス251により、防水パネル止め付け用鋼板250を合成スラブ用デッキプレート103の凸形状部分に締結固定する。これにより、防水パネル1を屋根100に固定することができる。
【0052】
その後、防水性被覆材300を、防水パネル止め付け用鋼板250を覆うように配置するとともに、防水シート11に対して融着または溶着する。これにより、止水性を確保することができる。
【0053】
この実施形態3においても、実施形態1と同様に、既存防水層101を残したまま、防水層を新設する場合に工期を短縮できる。
【0054】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、本発明に係る防水施工方法は、例えば、勾配屋根に防水層を形成する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 防水パネル
10 断熱材
11 防水シート
100 屋根
101 既存防水層
200 断熱材止め付け鋼板
250 防水パネル止め付け用鋼板
300 防水性被覆材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11