(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】グラビア印刷システム
(51)【国際特許分類】
B41F 9/00 20060101AFI20230508BHJP
B41F 9/18 20060101ALI20230508BHJP
B41F 13/00 20060101ALI20230508BHJP
B41F 13/24 20060101ALI20230508BHJP
B41F 31/30 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B41F9/00 B
B41F9/18
B41F13/00 514
B41F13/24 138
B41F31/30
B41F13/00 523
(21)【出願番号】P 2019080177
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国竹 高明
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-25864(JP,A)
【文献】特開平8-108517(JP,A)
【文献】特開平11-291462(JP,A)
【文献】特開2019-72940(JP,A)
【文献】特開2000-318117(JP,A)
【文献】米国特許第4901641(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00-13/70
B41F 31/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるウエブに連続して印刷する複数の印刷ユニットが一列に配置されているグラビア印刷システムであって、
前記印刷ユニットの各々は、
印刷時に、インキを貯留するインキパンと、
前記インキパンのインキに浸漬されるファニッシャロールと、
前記ファニッシャロールからインキを受け取って前記ウエブに塗布する版胴と、
互いに離れて対向配置された第1サイドフレームおよび第2サイドフレームを有し、これらの間に、前記版胴および前記ファニッシャロールを回転可能かつ交換可能に軸支すると共に、前記インキパンを移動可能に支持する支持フレームと、
交換時に、前記インキパンを側方に退避させると共に、前記版胴および前記ファニッシャロールを、前記支持フレームから脱着して、使用可能位置からその下方の移送可能位置との間で昇降させるロール交換機構と、
前記移送可能位置に位置する前記版胴および前記ファニッシャロールの各々を、前記第2サイドフレームの外側に位置する交換可能位置まで搬入または搬出するロール移送機構と、
前記第1サイドフレームの外側に配置されていて、前記ロール交換機構および前記ロール移送機構の制御および操作が行われる操作制御ケースと、
を備え、
前記ロール移送機構が、
前記版胴および前記ファニッシャロールを並列した状態で載置可能なテーブル2つと、
前記第2サイドフレームの外側に配置されていて、2つの前記テーブルを並列した状態で支持可能な支持台と、
1つの前記テーブルを、前記移送可能位置と前記交換可能位置との間でスライドさせるスライド機構と、
を有し、
前記支持台が、前記スライド機構と直交する方向にスライドすることにより、前記交換可能位置に位置する1つの前記テーブルと、他の1つの前記テーブルとを入れ替える
ように構成されていて、
前記テーブルの各々が駆動装置を有し、当該駆動装置の駆動によって前記テーブルの各々が前記スライド機構を移動するグラビア印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載のグラビア印刷システムにおいて、
前記移送可能位置に前記テーブルが位置する時に前記第2サイドフレームの側
に位置する当該テーブルの端部
に、前記駆動装置が配置されているグラビア印刷システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のグラビア印刷システムにおいて、
複数の前記印刷ユニットが配置されている印刷室と、
前記印刷室における前記印刷ユニットの配列方向に隣接している準備室と、
が設けられ、
前記印刷ユニットの各々の前記支持台の上方を通過するように、前記印刷室の上部と前記準備室の上部との間に架設されたガイドレールと、
前記ガイドレールに移動可能な状態で吊り下げられて、前記版胴および前記ファニッシャロールの各々を1つずつ支持可能なロールクレーンと、
を更に備え、
交換時に、前記ロールクレーンが、自動制御によって前記準備室で前記版胴および前記ファニッシャロールの各々を支持して移動することにより、前記版胴および前記ファニッシャロールの各々が、前記印刷ユニットの各々が有している前記テーブルの1つに搬送されるグラビア印刷システム。
【請求項4】
請求項3に記載のグラビア印刷システムにおいて、
前記版胴は、前記支持フレームに軸支される軸支孔を両端部に有し、
前記ファニッシャロールは、前記支持フレームに軸支されるシャフトを両端部に有し、
前記ロールクレーンが、一対の支持ピンと一対の支持アームとを有し、
前記軸支孔の各々に前記支持ピンの各々が出退可能に挿入されると共に、前記シャフトの各々が前記支持アームの各々に載置されることにより、前記版胴および前記ファニッシャロールの各々が、前記ロールクレーンに支持されるグラビア印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、多色刷りに好適なグラビア印刷システムに関し、印刷の自動切替技術に関する。
【背景技術】
【0002】
開示する技術に関し、本出願人は、版胴およびファニッシャロールが効率的に交換できるグラビア印刷装置を先に提案している(特許文献1)。
【0003】
そのグラビア印刷装置によれば、オペレータが、版胴およびファニッシャロールをそれぞれ1つずつ搬送することができる特定構造の台車を印刷ユニットに搬入し、所定位置に設置する。そうした後、オペレータが制御盤を操作することにより、インキパンが不使用位置に自動的に移動し、印刷ユニットに装着されている使用済みの版胴およびファニッシャロールが、その台車の上に自動的に取り外される。
【0004】
そうして、オペレータが、その台車を、新しい版胴およびファニッシャロールを乗せた台車に交換すると、これら版胴およびファニッシャロールが印刷ユニットに装着され、インキパンが使用位置に自動的に移動し、当初の状態に復帰する。
【0005】
多色刷りは、複数のグラビア印刷装置を直列に並べてグラビア印刷システムを構成し、それによって連続的に行うのが一般的である。そのため、グラビア印刷システムでは、版胴の交換や清掃等、印刷の切替時に行われる作業は、グラビア印刷装置の設置数に伴って増大し、極めて煩雑で時間を要することから、切替作業の簡便化、切替時間の短縮化は重要な課題となっている。
【0006】
そのような課題解決を目的とした版胴搬送システムは、特許文献2に開示されている。その版胴搬送システムでは、グラビア印刷装置が並ぶ印刷装置室と、隣接する準備室との間に、グラビア印刷装置に平行して延びるレールが敷設されている。そのレール上を、版胴やインキパンを搭載した複数のカセット台車が走行し、各グラビア印刷装置に設置されるように構成されている。その版胴搬送システムでは、両端に軸が突出した版胴が用いられていて、準備室には、その版胴の両軸を保持して搬送するクレーンが設置されている。
【0007】
レール上を走行する台車を用いて版胴の交換を自動化する版替装置は、特許文献3にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-25864号公報
【文献】特開平10-305557号公報
【文献】特開平6-23940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2の版胴搬送システムや特許文献3の版替装置(以下、従来システムともいう)であれば、各グラビア印刷装置の版胴を自動的に交換できるので、切替作業の簡便化、切替時間の短縮化が図れる。しかし、ファニッシャロールが付設されているグラビア印刷装置では、ファニッシャロールも定期的に交換する必要があるが、その場合、これら従来システムでは、その交換は手作業で行わなければならない。
【0010】
その点、特許文献1のグラビア印刷装置では、版胴と共にファニッシャロールも自動的に交換できるので、従来システムにその技術を適用し、ファニッシャロールも版胴と共に交換することも考えられる。
【0011】
しかし、切替時には、各グラビア印刷装置の近傍に敷設されたレールの上を複数の台車が絶えず行き来する。従って、その領域へのオペレータの進入は制限される。例えば、搬送過程でトラブルが発生しても、直ぐには近づくことができないので、作業性に欠ける不利がある。
【0012】
特に、特許文献1のグラビア印刷装置の台車は、版胴およびファニッシャロールの各々1つずつしか搬送できない特定の台車であるため、切替時には、グラビア印刷装置の各々に、新旧2つの特定の台車を搬入、搬出することが必要になる。
【0013】
そこで開示する技術の主たる目的は、複数の版胴およびファニッシャロールを、作業性を大きく損なうことなく、効率的に交換できるグラビア印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
開示する技術は、搬送されるウエブに連続して印刷する複数の印刷ユニットが一列に配置されているグラビア印刷システムに関する。
【0015】
前記印刷ユニットの各々は、印刷時に、インキを貯留するインキパンと、前記インキパンのインキに浸漬されるファニッシャロールと、前記ファニッシャロールからインキを受け取って前記ウエブに塗布する版胴と、互いに離れて対向配置された第1サイドフレームおよび第2サイドフレームを有し、これらの間に、前記版胴および前記ファニッシャロールを回転可能かつ交換可能に軸支すると共に、前記インキパンを移動可能に支持する支持フレームと、交換時に、前記インキパンを側方に退避させると共に、前記版胴および前記ファニッシャロールを、前記支持フレームから脱着して、使用可能位置からその下方の移送可能位置との間で昇降させるロール交換機構と、前記移送可能位置に位置する前記版胴および前記ファニッシャロールの各々を、前記第2サイドフレームの外側に位置する交換可能位置まで搬入または搬出するロール移送機構と、前記第1サイドフレームの外側に配置されていて、前記ロール交換機構および前記ロール移送機構の制御および操作が行われる操作制御ケースと、を備える。
【0016】
そして、前記ロール移送機構が、前記版胴および前記ファニッシャロールを並列した状態で載置可能なテーブル2つと、前記第2サイドフレームの外側に配置されていて、2つの前記テーブルを並列した状態で支持可能な支持台と、1つの前記テーブルを、前記移送可能位置と前記交換可能位置との間でスライドさせるスライド機構と、を有し、前記支持台が、前記スライド機構と直交する方向にスライドすることにより、前記交換可能位置に位置する1つの前記テーブルと、他の1つの前記テーブルとを入れ替える。
【0017】
すなわち、このグラビア印刷システムによれば、版胴およびファニッシャロールの交換が、作業性を大きく損なうことなく、効率的に行える。
【0018】
例えば、オペレータは、交換前に、適宜、新しい版胴およびファニッシャロールの各々を、各印刷ユニットの支持台に有る空のテーブルに載置して、操作制御ケースを操作するだけで、新旧の版胴およびファニッシャロールの交換が行える。
【0019】
操作制御ケースの有る第1サイドフレームの側では無く、その反対の第2サイドフレームの外側のスペースを活用しているので、オペレータの通常作業の邪魔になることがない。オペレータは、交換後に、適宜、各印刷ユニットの支持台に有るテーブルに載置されている使用済みの版胴およびファニッシャロールの各々を、台車で運搬して、搬出すればよいので、効率的である。
【0020】
各支持台の周辺のスペースの床上には障害物が無いので、オペレータはそのスペースを自由に移動できる。例えば、各印刷ユニットでトラブルが発生しても、支障無く直ぐに対応できる。従って、作業性に優れる。
【0021】
前記グラビア印刷システムはまた、前記テーブルの各々が、前記第2サイドフレームの側の端部に駆動装置を有し、前記駆動装置の駆動によって前記スライド機構を移動する、としてもよい。
【0022】
そうすれば、各テーブルが1つの駆動装置でスライド機構を自走するので、駆動装置の設置数が少なくなり、設備コストを削減できる。その駆動装置が、第2サイドフレームの側の端部に位置しているので、駆動装置がインキパン等の下方に入り込むことがない。従って、インキや溶剤が駆動装置に付着するのを防止でき、耐久性にも優れる。
【0023】
前記グラビア印刷システムはまた、複数の前記印刷ユニットが配置されている印刷室と、前記印刷室における前記印刷ユニットの配列方向に隣接している準備室と、が設けられていて、前記印刷ユニットの各々の前記支持台の上方を通過するように、前記印刷室の上部と前記準備室の上部との間に架設されたガイドレールと、前記ガイドレールに移動可能な状態で吊り下げられて、前記版胴および前記ファニッシャロールの各々を1つずつ支持可能なロールクレーンと、を更に備え、交換時に、前記ロールクレーンが、自動制御によって前記準備室で前記版胴および前記ファニッシャロールの各々を支持して移動することにより、前記版胴および前記ファニッシャロールの各々が、前記印刷ユニットの各々が有している前記テーブルの1つに搬送される、としてもよい。
【0024】
そうすれば、版胴およびファニッシャロールの各々の交換を、更に自動化することができる。版胴およびファニッシャロールの各々を同時に運搬できるので、効率的な交換が行え、交換時間も短縮できる。
【0025】
各支持台の周辺のスペースの床上に障害となる設置物が無いので、オペレータは比較的容易にそのスペースを移動できる。例えば、搬送過程でトラブルが発生しても、ロールクレーンが停止すれば、直ぐに近づくことができる。従って、作業性に優れる。
【0026】
そのようなグラビア印刷システムの場合、前記版胴は、前記支持フレームに軸支される軸支孔を両端部に有し、前記ファニッシャロールは、前記支持フレームに軸支されるシャフトを両端部に有し、前記ロールクレーンが、一対の支持ピンと一対の支持アームとを有し、前記軸支孔の各々に前記支持ピンの各々が出退可能に挿入されると共に、前記シャフトの各々が前記支持アームの各々に載置されることにより、前記版胴および前記ファニッシャロールの各々が、前記ロールクレーンに支持される、ようにするとよい。
【0027】
そうすれば、シャフトレスタイプの版胴と、シャフト付きのファニッシャロールとを、比較的簡単な構造で、同時にまとめて運搬できる。版胴およびファニッシャロールの各々の吊り上げおよび吊り降ろしの動作も容易に行える。
【発明の効果】
【0028】
開示する技術を適用したグラビア印刷システムによれば、複数の版胴およびファニッシャロールを、作業性を大きく損なうことなく、効率的に交換できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態のグラビア印刷システムの要部を示す概略図である。
【
図2】使用時(印刷時)の各印刷ユニットの要部を示す概略図である。
【
図4】ロール交換機構による取り外し時の動作を説明する
図3B相当図である。
【
図5】ロール交換機構による取り外し時の動作を説明する
図3B相当図である。
【
図6】ロール交換機構による取り外し時の動作を説明する
図3B相当図である。
【
図7】ロール交換機構による取り外し時の動作を説明する
図3B相当図である。
【
図8】ロール交換機構による取り外し時の動作を説明する
図3B相当図である。
【
図9】ロール交換機構による取り外し時の動作を説明する
図3B相当図である。
【
図10】ロール交換機構による取り付け時の動作を説明する
図3B相当図である。
【
図11A】ロール移送機構の要部を示す概略図である。
【
図13】(a)~(c)の各々は、支持台の動きを説明するための図である。
【
図14A】応用例のグラビア印刷システムの要部を示す概略平面図である。
【
図14B】応用例のグラビア印刷システムの要部を示す概略側面図である。
【
図15】ロールクレーンを示す概略図である。(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【
図16A】ロールクレーンが版胴を支持した状態を示す概略図である。
【
図16B】ロールクレーンが版胴およびファニッシャロールを支持した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0031】
図1に、本実施形態のグラビア印刷システム1を示す。このグラビア印刷システム1では、ロール状に巻かれた帯状のウエブWを連続搬送しながら巻芯に巻き取り、その搬送過程で印刷を行う、いわゆるロールツーロール形式により、多色刷り(カラー印刷)が行われる。
【0032】
説明では、ウエブWが搬送される方向を「MD方向」と言い、ウエブWの幅方向を「TD方向」と言う。そして、MD方向のうち、版胴を基準にして、印刷前のウエブWが位置する側を「上流側」、印刷後のウエブWが位置する側を「下流側」ともいう。
【0033】
グラビア印刷システム1は、複数の印刷ユニット2を備え、所定の印刷室1aに設置されている。これら印刷ユニット2は、MD方向に沿って一列に配置されており、各印刷ユニット2において、単色の印刷が行われる。
【0034】
<印刷ユニット2>
図2に、使用時(印刷時)での各印刷ユニット2の要部を示す。各印刷ユニット2は、支持フレーム10、操作制御ケース11、ギアケース12、印刷機構20、ロール交換機構3、ロール移送機構4などで構成されている。
【0035】
支持フレーム10は、印刷室1aの床面に設置されていて、互いに離れて対向配置された一対のサイドフレーム(第1サイドフレーム10aおよび第2サイドフレーム10b)を有している、印刷機構20およびロール交換機構3は、これらサイドフレーム10a,10bの間における上下方向の中間部分に設けられている。
【0036】
操作制御ケース11は、第1サイドフレーム10aの外側に配置されている。操作制御ケース11には、印刷ユニット2に装備されている各機器の動作を制御する制御装置11aや、その制御装置11aを操作するスイッチ等の操作装置11bが設置されている。オペレータは、この操作制御ケース11を介して印刷ユニット2を操作する。ロール交換機構3およびロール移送機構4の制御および操作も、この操作制御ケース11を介して行われる。
【0037】
第2サイドフレーム10bの外側には、ギアケース12が配置されている。ギアケース12には、駆動モータやギア等の駆動機器12aが設置されている。ロール移送機構4は、サイドフレーム10a,10bの間における下部から第2サイドフレーム10bの外方にわたって延びるように配置されている(各印刷ユニット2でのTD方向における位置関係を示す場合、便宜上、第1サイドフレーム10aの側を「操作側」、その反対の第2サイドフレーム10bの側を「非操作側」ともいう)。
【0038】
従って、このグラビア印刷システム1では、通常行われるオペレータの作業は、操作側で行われる。そのため、
図1に示すように、各第1サイドフレーム10aの外方には、オペレータの作業動線が十分に確保できるように、MD方向に延びるスペース(操作側スペースMS)が設けられている。また、第2サイドフレーム10bの外方にも、MD方向に延びるスペース(非操作側スペースRMS)が存在する。このグラビア印刷システム1では、オペレータの作業の邪魔にならないように、その非操作側スペースRMSが有効活用されている。
【0039】
<印刷機構20>
図3A、
図3Bに示すように、印刷機構20は、インキパン21、版胴22、ファニッシャロール23、圧胴24、ドクターブレード25などで構成されている。
【0040】
インキパン21は、TD方向が長い矩形の、上面が開放されたトレイ状の容器からなる。インキパン21は、詳細は後述するが、支持フレーム10に移動可能な状態で支持されている。印刷時には、インキパン21にインキが供給され、常に所定量のインキが貯留される。
【0041】
インキパン21の下面には、MD方向に平行に延びた状態で下方に突出する一対の脚板21a,21aが設けられている。これら脚板21a,21aが、後述する第1支持プレート33aに載置されることにより、印刷時のインキパン21は、所定の位置(使用位置)に支持されている。
【0042】
版胴22は、細長い円柱状の部材からなり、その外周面には、多数の印刷用のセルが刻設されている。この印刷ユニット2で用いられる版胴22は、シャフトレスタイプであり、版胴22の各端面の中央には軸支孔22aが形成されている。軸支孔22aの外周の一部には、版胴22の周方向の位置を特定するために、キー溝22bが形成されている。
【0043】
両サイドフレーム10a,10bには、各々の対向面から向かい合って突出する一対の支持軸13,13が設けられている。これら支持軸13,13は、各軸支孔22aに挿入されて、版胴22を回転駆動可能に軸支する軸支状態(印刷時の状態)と、各軸支孔22aから抜かれて、版胴22を軸支しない不支持状態(交換時の状態)とに、進退可能に構成されている。
【0044】
図3Aに示すように、操作側に有る支持軸13の基端部は、ギアケース12の内部に挿入されていて、駆動機器12aに連結されている。駆動機器12aが駆動されることにより、その支持軸13を介して版胴22が回転する。すなわち、印刷時の版胴22は、これら一対の支持軸13,13を介し、TD方向に延びた状態で、支持フレーム10に回転駆動可能に軸支される。そして、交換時には、版胴22は、この位置(版胴着脱位置)で不支持状態となり、交換可能となる。
【0045】
ファニッシャロール23は、版胴22より小径の細長い円柱状の部材からなる。ファニッシャロール23の端部の各々には、一対のシャフト23a,23aが設けられている。これらシャフト23a,23aは、ファニッシャロール23と同軸に設けられ、互いに逆向きに突出している。
【0046】
各シャフト23aの先端部分には、環状のベアリング23bが取り付けられている。印刷時のファニッシャロール23は、これらベアリング23bおよび後述するFR支持装置31を介し、TD方向に延びた状態で、支持フレーム10に回転可能かつ交換可能に軸支されている。
【0047】
印刷時のファニッシャロール23はまた、版胴22に対してMD方向の下流側に配置されている。ファニッシャロール23は、印刷時に、その下部がインキパン21に貯まるインキに浸漬され、その上部が版胴22に圧接するように配置される。
【0048】
圧胴24は、版胴22より小径の細長い円柱状の部材からなる。図示しないが、圧胴24は、支持フレーム10に回転自在かつ移動可能に支持されている。印刷時には、搬送されるウエブWが、複数のガイドロール(不図示)により、支持フレーム10の上方から版胴22の下側に誘導されるように構成されている。印刷時の圧胴24は、そのウエブWを間に挟み込んだ状態で、版胴22の上部に圧接するように構成されている。
【0049】
版胴22に対してMD方向の上流側には、ドクターブレード25が配置されている。印刷時のドクターブレード25は、版胴22の外周面にその刃先が所定の角度で接触し、版胴22の表面に付着する過剰なインキを掻き取るように構成されている。
【0050】
印刷時には、ウエブWの搬送に合わせて版胴22が回転駆動される。それに連動して、ファニッシャロール23および圧胴24が回転する。それにより、ファニッシャロール23から版胴22がインキを受け取り、ドクターブレード25で適量に調整された後、連続搬送されるウエブWに塗布して印刷が行われる。
【0051】
<ロール交換機構3>
この印刷ユニット2では、版胴22およびファニッシャロール23の交換が、機械制御により、自動的に行えるように構成されている。
【0052】
ロール交換機構3は、FR支持装置31、インキパンスライダ32、昇降台33などで構成されていて、版胴22およびファニッシャロール23の交換動作を実行する。具体的には、ロール交換機構3は、交換時に、インキパン21を側方に退避させ、版胴22およびファニッシャロール23を、支持フレーム10から着脱して、使用可能位置と、その下方の移送可能位置との間で昇降させる。
【0053】
(FR支持装置31)
FR支持装置31は、ファニッシャロール23を支持フレーム10に回転可能かつ交換可能に軸支するための装置である。FR支持装置31は、FR支持アーム31a、エアシリンダ31b、軸受アーム31cなどで構成されている(軸受アーム31cは
図5等参照)。FR支持アーム31a、エアシリンダ31b、および軸受アーム31cは、各々一対で構成されている。
【0054】
両サイドフレーム10a,10bの間には、TD方向に延びて揺動する揺動軸31dが軸支されている。この揺動軸31dの両端部に、各FR支持アーム31aが対向して取り付けられている。各FR支持アーム31aは、細長い板形状を有し、その上端部が揺動軸31dに取り付けられている。
【0055】
揺動軸31dは、支持軸13の斜め上方に位置しており、印刷時の各FR支持アーム31aは、版胴22に向かって下り傾斜した姿勢になるように構成されている。各FR支持アーム31aの下端部には、下方に向かって逆U形状に開口する嵌合凹部31fが形成されている(
図5等参照)。
【0056】
各エアシリンダ31bは、各FR支持アーム31aの上部に揺動可能に軸支されている。エアシリンダ31bは、FR支持アーム31aに対して版胴22の反対側に、ロッドを下方に向けた状態で配置されている。
【0057】
図5等に示すように、各軸受アーム31cは、各FR支持アーム31aの下部に回動可能に軸支されている。軸受アーム31cは、その軸支部位から互いに逆向きに延びる第1アーム部31c1および第2アーム部31c2を有している。第1アーム部31c1の先端部分はエアシリンダ31bのロッドに軸支されていて、第2アーム部31c2は、嵌合凹部31fの側に延びている。
【0058】
それにより、各軸受アーム31cは、エアシリンダ31bが伸びて、第2アーム部31c2が嵌合凹部31fの開口を塞ぐ状態(FR支持状態)と、エアシリンダ31bが縮んで、第2アーム部31c2が嵌合凹部31fの開口を開放する状態(FR不支持状態)と、に切り替わる。
【0059】
各嵌合凹部31fは、各シャフト23aのベアリング23bが嵌合可能に形成されている。各軸受アーム31cがFR支持状態になることで、支持フレーム10にファニッシャロール23が軸支される。FR支持アーム31aが揺動して各嵌合凹部31fの開口が下方に向き、各軸受アーム31cが、FR不支持状態になることで、ファニッシャロール23が交換可能になる。ファニッシャロール23が交換可能になる位置(FR着脱位置)は、版胴22に対してMD方向の下流側にあって、版胴着脱位置の斜め下方に位置している。
【0060】
(インキパンスライダ32)
インキパンスライダ32は、交換時に、インキパン21を、自動的に使用位置から側方に退避させるために設置されている。
【0061】
インキパンスライダ32は、インキパン21と外法が略同一のTD方向に長い板部材からなり、印刷時には、インキパン21が位置する使用位置の下方に配置される。図示しないが、インキパンスライダ32は、その位置からMD方向の下流側に向かって、略水平にスライド可能な状態で支持フレーム10に設置されている。
【0062】
インキパンスライダ32は、その一方の側部(MD方向の上流側の側部)に、インキパン21の脚板21a,21aが入り込む幅広な切欠32aを有する略U形状を有している。インキパンスライダ32は、その上にインキパン21を重ねた状態で載置可能に構成されている。
【0063】
図5等に示すように、交換時に、インキパンスライダ32は、インキパン21を載せた状態でMD方向の下流側に向かってスライドし、昇降台33の昇降動作に影響しない位置にインキパン21を退避させる。
【0064】
(昇降台33)
昇降台33は、各々がTD方向に延びる細長い矩形板状の部材からなる、第1支持プレート33aおよび第2支持プレート33bを有している。第1支持プレート33aは、版胴着脱位置の下方に配置され、第2支持プレート33bは、第1支持プレート33aに沿って並んだ状態でFR着脱位置の下方に配置されている。第2支持プレート33bは、第1支持プレート33aから一段下がった状態で、第1支持プレート33aに一体に組み付けられている。
【0065】
昇降台33は、上下方向に延びる一対の昇降バー35,35に支持されている。昇降台33は、これら昇降バー35,35を介して、支持フレーム10に設けられている不図示の昇降機構により、昇降可能に構成されている。
【0066】
昇降台33は、機械制御により、交換時に所定のタイミングで所定の位置に自動的に昇降する。それにより、版胴22およびファニッシャロール23の各々は、使用可能になる位置(使用可能位置)から、その下方の、ロール移送機構4で移送可能になる位置(移送可能位置)まで昇降される。
【0067】
具体的に、昇降台33は、インキパン21を使用位置に支持する位置(印刷時の位置)、版胴着脱位置、FR着脱位置などに上昇し、後述するテーブル40の移動の障害とならないように、そのテーブル40の下方の位置(回避位置)まで下降する。
【0068】
第1支持プレート33aの上面の四隅には、円柱状の版胴コロ33cが設置されている。各版胴コロ33cは、TD方向に向く軸心を中心に回転自在に設置されている。版胴22は、これら版胴コロ33cにより、回転可能な状態で第1支持プレート33aに支持される。
【0069】
図示しないが、版胴コロ33cの一部には、版胴22を回動して、その周方向の位置決めが可能な駆動機構が設けられている。同様に、支持フレーム10には、キー溝22bに基づいて版胴22の周方向の位置を測定する測定装置が設置されている。それにより、版胴22は、その周方向の位置が高精度に位置決めされた状態で、第1支持プレート33aに支持できるように構成されている。
【0070】
第2支持プレート33bの上面には、一対のFR置き33d,33dがTD方向に間隔を空けて設置されている。ファニッシャロール23は、これら一対のFR置き33d,33dを介して第2支持プレート33bに支持される。
【0071】
(ロール交換機構3による取り外し時の動作)
交換時に、使用済みの版胴22(旧版胴22oともいう)と、使用済みのファニッシャロール23(旧ファニッシャロール23oともいう)とを、支持フレーム10から取り外す動作について説明する。
【0072】
印刷が終了すると、オペレータは、操作装置11bを操作し、交換運転を開始する。それにより、
図4に示すように、昇降台33およびインキパン21は少し下降して、FR支持アーム31aは、MD方向の下流側に向かって揺動し、旧ファニッシャロール23oはFR着脱位置に移動する。その状態で、旧ファニッシャロール23oは、オペレータによって洗浄される。
【0073】
洗浄が終わると、オペレータは、再度、操作装置11bを操作する。それにより、昇降台33は更に下降する。それによって、
図5に示すように、インキパン21はインキパンスライダ32に支持される。インキパンスライダ32に支持されたインキパン21は、
図5に矢印で示すように、MD方向の下流側に向かってスライドし、二点鎖線で示すように、昇降台33の昇降動作に影響しない位置に退避する。
【0074】
その後、昇降台33は、
図6に示すように、FR着脱位置まで上昇し、第2支持プレート33bで旧ファニッシャロール23oを支持できるようにする。そうして、
図6に示すように、二点鎖線で示す状態から、各エアシリンダ31bが縮んで各嵌合凹部31fが開放され、FR置き33dに旧ファニッシャロール23oが支持される。
【0075】
続いて、
図7に示すように、昇降台33は、更に下降し、旧ファニッシャロール23oをFR支持アーム31aから分離する。そして、FR支持アーム31aは、更にMD方向の下流側に向かって揺動し、昇降台33の昇降に影響しない位置に退避する。
【0076】
そうした後、昇降台33は、
図8に示すように、版胴着脱位置まで上昇し、第1支持プレート33aで旧版胴22oを支持できるようにする。そうして、各支持軸13が後退し、旧版胴22oは、各支持軸13から分離し、版胴コロ33cによって支持される。
【0077】
続いて、
図9に示すように、昇降台33は、更に下降し、後述するテーブル40の開口部41を通じて、そのテーブル40の下方の回避位置まで下降する。それにより、旧版胴22oおよび旧ファニッシャロール23oは、移送可能位置でロール移送機構4に受け渡される。
【0078】
(ロール交換機構3による取り付け時の動作)
交換時に、未使用の版胴22(新版胴22nともいう)と、未使用のファニッシャロール23(新ファニッシャロール23nともいう)を、支持フレーム10に取り付ける動作について説明する。
【0079】
新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nが、ロール移送機構4で搬入されて移送可能位置に配置されると、昇降台33が上昇を開始する。それにより、昇降台33は、テーブル40から新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nを受け取って、
図10に示すように、所定の測定位置まで上昇する。
【0080】
測定位置では、不図示の測定装置により、キー溝22bの位置が測定される。その測定結果に基づいて、キー溝22bが所定位置に位置するように、版胴コロ33cが回転駆動される。それにより、新版胴22nは、その周方向の位置が高精度に位置決めされた状態で、第1支持プレート33aに支持される。
【0081】
新版胴22nが位置決めされると、昇降台33は、
図8に示したように、版胴着脱位置まで上昇する。そうして、各支持軸13が前進し、新版胴22nが各支持軸13に軸支される。それにより、新版胴22nは、適正な状態で印刷ユニット2に取り付けられる。
【0082】
その後、
図7に示したように、昇降台33は、FR支持アーム31aが揺動可能になる位置まで下降し、FR支持アーム31aは、FR着脱位置に向かうようにMD方向の上流側に揺動する。続いて、
図6に示したように、昇降台33がFR着脱位置まで上昇することにより、新ファニッシャロール23nのベアリング23bが各嵌合凹部31fに嵌合する。
【0083】
そうして、FR不支持状態にあった各軸受アーム31cが、FR支持状態になり、第2アーム部31c2によって嵌合凹部31fの開口が塞がれる。それにより、新ファニッシャロール23nは、FR支持アーム31aを介して支持フレーム10に支持される。
【0084】
その後、インキパン21を支持した状態で退避していたインキパンスライダ32は、MD方向の上流側に向かってスライドし、使用位置の下方にある所定位置に復帰する。続いて、昇降台33が上昇し、第1支持プレート33aが、インキパン21の両脚板21a,21aに突き当たって、
図4に示したように、インキパン21を押し上げ、インキパンスライダ32からインキパン21を分離する。
【0085】
そして、FR支持アーム31aは、MD方向の上流側に向かって揺動し、新ファニッシャロール23nを新版胴22nに接触させる。その後、昇降台33は、更に上昇し、
図3A及び
図3Bに示したように、インキパン21を使用位置に復帰させる。それにより、新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの取り付けが終了する。
【0086】
<ロール移送機構4>
上述したように、ロール移送機構4は、各印刷ユニット2の下部と、その第2サイドフレーム10bの外方のスペース(非操作側スペースRMS)との間に配置されている。そして、ロール移送機構4は、交換時に、印刷ユニット2の下部における移送可能位置に位置する版胴22およびファニッシャロール23の各々を、非操作側スペースRMSに位置する交換可能位置まで、搬入または搬出するように構成されている。
【0087】
図11A、
図11B、
図12に、ロール移送機構4を示す。ロール移送機構4は、2つのテーブル40(区別する場合、第1テーブル40A、第2テーブル40Bともいう。)、スライド機構50、支持台60などで構成されている。
【0088】
(テーブル40)
各テーブル40は、TD方向に長い矩形板状の主壁部40aと、その主壁部40aの両側から下方に対向して張り出す一対の側壁部40b,40bとを有している。主壁部40aには、上下面を貫通する開口部41が形成されていて、昇降台33は、この開口部41を通じて昇降する。
【0089】
主壁部40aの上面には、一対の版胴受部42,42と、一対のFR受部43,43とが設置されている。これら一対の版胴受部42,42および一対のFR受部43,43により、版胴22およびファニッシャロール23の各々は、MD方向に並列した状態で、テーブル40に載置可能になっている。
【0090】
各版胴受部42および各FR受部43の各々は、TD方向における開口部41の両側に配置されている。各版胴受部42は、各FR受部43よりもMD方向の上流側に配置されている。第1テーブル40Aの主壁部40aの上面には、版胴位置決め部44およびFR位置決め部45が設置されている。
【0091】
具体的には、第1テーブル40Aの主壁部40aの上面の、TD方向の互いに離れた位置に、一対の版胴位置決め部44,44が設置されている。第1テーブル40Aの主壁部40aの上面の、操作側にFR位置決め部45が設置されている。
【0092】
第1テーブル40Aに載置される新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々は、各版胴受部42および各FR受部43によってMD方向に位置決めされ、そして、版胴位置決め部44,44およびFR位置決め部45によってTD方向に位置決めされる。
【0093】
図12に示すように、各側壁部40bの内側には、複数の車輪46が回転自在に設置されている。また主壁部40aのTD方向における非操作側の端部の下側には、回転軸をMD方向に向けたモータ47(駆動装置)が設置されている。そのモータ47の回転軸には、ピニオン48が固定されている。
【0094】
(スライド機構50)
スライド機構50は、1つのテーブル40を、移送可能位置と交換可能位置との間でスライドさせる機構である。スライド機構50は、MD方向に間隔を空けて、TD方向に平行して延びる一対の走行レール51,51と、これら走行レール51,51の間に位置してTD方向に延びるラックレール52と、を有している。
【0095】
各車輪46は、一対の走行レール51,51に沿って走行する。ピニオン48のギア歯は、ラックレール52のギア歯に係合し、ピニオン48の回転動作をラックレール52に沿った走行動作に変換する。
【0096】
一対の走行レール51,51およびラックレール52は、支持フレーム10に固定されている一対の不動レール(不動レール対51a)および不動ラックレール52aと、支持台60に固定されている一対の可動レール(可動レール対51b)および可動ラックレール52bと、を有している。
【0097】
不動レール対51aは、第1サイドフレーム10aから延出され、略水平に支持された状態で、第2サイドフレーム10bを通過して、非操作側スペースRMSまで延びている。第1サイドフレーム10aと第2サイドフレーム10bとの間に位置する不動レール対51aは、移送可能位置に位置する版胴22およびファニッシャロール23の各々を、テーブル40の適正位置に載置できるように配置されている。
【0098】
不動ラックレール52aは、その一部を第2サイドフレーム10bの内側に突出させた状態で、第2サイドフレーム10bを通過して非操作側スペースRMSまで延びている。
【0099】
(支持台60)
支持台60は、非操作側スペースRMSに配置されていて、不動レール対51aおよび不動ラックレール52aの各突端部分に連なるように配置されている。支持台60は、スライド部61とベース部62とを有している。ベース部62は、スライド部61を、床面に支持した状態で、スライド機構50と直交するMD方向にスライドさせる。
【0100】
スライド部61は、2つのテーブル40を並列した状態で支持する。そのために、スライド部61には、可動レール対51bおよび可動ラックレール52bが、MD方向に並列して2セット設置されている。
【0101】
支持台60は、
図12に示す位置(第1交換位置、取り付け位置)と、
図13の(a)に示す位置(第2交換位置、取り外し位置)との間でスライドする。第1交換位置では、一方の可動レール対51bおよび可動ラックレール52b(第1テーブル用:T1)が、不動レール対51aおよび不動ラックレール52aに連結される。第2交換位置では、他方の可動レール対51bおよび可動ラックレール52b(第2テーブル用:T2)が、不動レール対51aおよび不動ラックレール52aに連結される。
【0102】
可動レール対51bおよび可動ラックレール52bが、不動レール対51aおよび不動ラックレール52aと連結されることで、車輪46は、可動レール対51bおよび不動レール対51aの双方を円滑に走行するようになる。そして、ピニオン48は、不動ラックレール52aおよび可動ラックレール52bの双方に円滑に係合するようになる。
【0103】
それにより、スライド部61がスライドすると、交換可能位置に位置する1つのテーブル40は、他の1つのテーブル40と入れ替わる。
【0104】
(ロール移送機構4による交換時の動作)
上述したロール交換機構3による取り外し時の動作に引き続き、ロール移送機構4による版胴22およびファニッシャロール23の交換時の動作を説明する。
【0105】
その場合、
図13の(a)に示すように、支持台60は、第2交換位置に位置し、第1テーブル用T1の可動レール対51bおよび可動ラックレール52bの上には、第1テーブル40Aが配置される。第2テーブル40Bは、移送可能位置に位置している。オペレータは、交換用の新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々を、適宜、台車で運搬し、各印刷ユニット2の第1テーブル40Aに、その新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々を予め載置しておく。
【0106】
そして、旧版胴22oおよび旧ファニッシャロール23oが、移送可能位置で第2テーブル40Bに受け渡されると、第2テーブル40Bは、モータ47の駆動により、支持台60における第2テーブル用T2の可動レール対51bおよび可動ラックレール52bの上に位置するまで、スライド機構50に沿って自走する。それにより、
図13の(b)に示すように、旧版胴22oおよび旧ファニッシャロール23oの各々は、交換可能位置に配置されることになる。
【0107】
続いて、
図13の(c)に示すように、支持台60が第1交換位置にスライドする。それにより、第1テーブル用T1の可動レール対51bおよび可動ラックレール52bは、不動レール対51aおよび不動ラックレール52aに連結され、第1テーブル40Aは、第2テーブル40Bと入れ替わって交換可能位置に配置される。
【0108】
交換可能位置に配置された第1テーブル40Aは、新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々を載置した状態で、モータ47の駆動により、スライド機構50に沿って自走する。それにより、新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々は、移送可能位置に配置される。
【0109】
従って、オペレータは、交換前に、適宜、新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々を、各印刷ユニット2の第1テーブル40Aに載置するだけで、版胴22およびファニッシャロール23の各々の交換が行える。オペレータは、交換後に、適宜、各印刷ユニット2の第2テーブル40Bに載置されている旧版胴22oおよび旧ファニッシャロール23oの各々を、台車で運搬して、搬出すればよいので、効率的である。
【0110】
非操作側スペースRMSに障害物が無いので、オペレータは非操作側スペースRMSを自由に移動できる。例えば、各印刷ユニット2でトラブルが発生しても、支障無く直ぐに対応できる。従って、作業性に優れる。
【0111】
各テーブル40にモータ47が1つ設置されていて、スライド機構50を自走する。従って、モータ47の設置数が少なくなり、設備コストを削減できる。しかも、そのモータ47は、テーブル40の非操作側の端部に配置されているので、印刷機構20の下方に入り込むことがない。従って、インキや溶剤がモータ47やその電気配線に付着するのを防止でき、耐久性にも優れる。
【0112】
-応用例-
図14A、
図14Bに、上述したグラビア印刷システム1の応用例を示す。上述したグラビア印刷システム1では、各印刷ユニット2までの、新旧の版胴22およびファニッシャロール23の各々の運搬は、オペレータによって行われていたが、このグラビア印刷システム1’では、更に、その運搬についても自動化できるように構成されている。
【0113】
グラビア印刷システム1’では、新旧の版胴22およびファニッシャロール23の各々の準備を行う準備室1bが、印刷室1aに隣接して設けられている。準備室1bは、印刷室1aに対して、印刷ユニット2の配列方向であるMD方向の上流側に配置されている。
【0114】
準備室1bには、版胴22およびファニッシャロール23の各々が、台車に載置された状態で、図外の倉庫や洗浄室から搬入、搬出される。本実施形態では、版胴22とファニッシャロール23とで、各々専用の台車が用いられている(版胴台車71およびFR台車72)。
【0115】
版胴台車71は、上方が開放されている版胴台71aを有しており、その版胴台71aの上に、複数の版胴22が横並びに載置できるように構成されている。FR台車72は、複数のロール棚72aを有しており、これらロール棚72aの各々に、複数のファニッシャロール23が上下方向に並んだ状態で、掛け置きできるように構成されている。
【0116】
(ロール運搬機構8)
印刷室1aと準備室1bとの間には、版胴22およびファニッシャロール23を運搬するロール運搬機構8が設置されている。ロール運搬機構8は、ガイドレール80およびロールクレーン90を有しており、自動制御により、印刷室1aと準備室1bとの間で、版胴22およびファニッシャロール23の1セット分を運搬する。
【0117】
準備室1bには、ロール運搬機構8を制御する運搬制御装置8aが設置されている。オペレータが、この運搬制御装置8aを操作することにより、ロール運搬機構8は、自動的に所定の運搬作業を実行する。
【0118】
ガイドレール80は、印刷ユニット2の各々の支持台60の上方を通過するように、印刷室1aの上部と準備室1bの上部との間に架設されている。印刷室1aのガイドレール80は、各印刷ユニット2に沿って非操作側スペースRMSの上方に設置されている。準備室1bにおけるガイドレール80の下方には、各支持台60とMD方向に並列するように、複数の台車置き場73が設けられている。
【0119】
具体的には、準備室1bの床面に、各台車71,72の動きを規制するストッパー73aが設置されている。これらストッパー73aにより、新旧の各版胴22のための複数の版胴台車71と、新旧の各ファニッシャロール23のための複数のFR台車72とが、所定の台車置き場73に位置決めされた状態で移動不能に支持される。
【0120】
それにより、版胴台車71の各版胴22およびFR台車72の各ファニッシャロール23は、TD方向にその中心線を向けた状態となり、TD方向において交換可能位置と略一致するように配置される。
【0121】
ロールクレーン90は、ガイドレール80に移動可能な状態で吊り下げられており、版胴22およびファニッシャロール23の各々を1つずつ支持して、準備室1bと印刷室1aとの間を行き来できるように構成されている。
【0122】
図15に、本実施形態のロールクレーン90を示す。ロールクレーン90は、架設部91と、第1脚部92aおよび第2脚部92bからなる一対の支持脚部92とを有している。架設部91は、TD方向に延びた状態でガイドレール80に移動可能に支持されている。また、ロールクレーン90は、昇降機構93を有しており、架設部91は、その昇降機構93によって昇降可能に構成されている。
【0123】
支持脚部92は、架設部91の下側に対向配置されている。第1脚部92aは、架設部91の一端にスライド可能な状態で設置されている。第2脚部92bは、架設部91の他端にスライド可能な状態で設置されている。すなわち、第1脚部92aおよび第2脚部92bの各々は、架設部91に脚部スライダ94を介してスライド可能に支持されていて、架設部91と第2脚部92bとの間に設置されたシリンダ95の伸縮により、TD方向に同じ幅でスライドするように構成されている。
【0124】
第1脚部92aおよび第2脚部92bには、版胴22の軸支孔22aに挿入可能な一対の支持ピン96,96が対向して設置されている。
図15および
図16Aに示すように、第1脚部92aおよび第2脚部92bがスライドすることにより、軸支孔22aの各々に支持ピン96の各々が出退可能に挿入される。
【0125】
第1脚部92aおよび第2脚部92bにはまた、一対の支持アーム97,97が設置されている。これら支持アーム97,97は、互いに対向した状態で、第1脚部92aおよび第2脚部92bの各々からMD方向の下流側に向かって突出している。各支持アーム97の先端部分の上側には、シャフト23aを受け入れる凹部が形成されている。
【0126】
図16Bに示すように、第1脚部92aおよび第2脚部92bの各々は、版胴22を支持した状態で、これら支持アーム97にファニッシャロール23の両シャフト23aを載置することにより、ファニッシャロール23も支持できるように構成されている。
【0127】
(ロール運搬機構8による交換時の動作)
版胴22等の交換時には、新版胴22nを載せた版胴台車71、旧版胴22oを載せる空の版胴台車71、新ファニッシャロール23nを載せたFR台車72、および旧ファニッシャロール23oを載せる空のFR台車72が、オペレータにより、所定の台車置き場73に設置される。
【0128】
そして、オペレータが運搬制御装置8aを操作し、ロール運搬機構8を作動させる。それにより、ロールクレーン90が、自動制御によって準備室1bで新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々を支持して移動する。そして、新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々が、各印刷ユニット2の支持台60に有る、空いたテーブル40(第1テーブル40A)に搬送される。
【0129】
具体的には、ロールクレーン90は、新版胴22nを支持した後、新ファニッシャロール23nを支持することで、これら双方を支持する。すなわち、ロールクレーン90は、まず、版胴台車71の所定の新版胴22nの上方に移動する。そうして、架設部91が下降し、第1脚部92aおよび第2脚部92bがスライドすることにより、支持ピン96がその新版胴22nの軸支孔22aに挿入される。その後、架設部91が上昇することで、新版胴22nはロールクレーン90に吊り上げられる(
図16Aの状態)。
【0130】
次に、ロールクレーン90は、FR台車72の所定の新ファニッシャロール23nの上方に移動する。そうして、架設部91が下降して移動することにより、支持アーム97をその新ファニッシャロール23nのシャフト23aの下方に差し入れる。その後、両シャフト23aを各支持アーム97に載置し、架設部91が上昇することで、新ファニッシャロール23nはロールクレーン90に吊り上げられる(
図16Bの状態)。
【0131】
新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々を吊り上げたロールクレーン90は、準備室1bから印刷室1aに移動し、所定の印刷ユニット2の支持台60の上方まで、新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々を運搬する。そして、空のテーブル40(第1テーブル40A)に、これらを載置する。
【0132】
ロールクレーン90は、新ファニッシャロール23nを載置した後、新版胴22nを載置することで、これら双方を第1テーブル40Aに受け渡す。すなわち、架設部91が下降して移動することにより、新ファニッシャロール23nが第1テーブル40Aに載置される。
【0133】
その後、更に架設部91が適宜、昇降、移動して新版胴22nが所定位置に配置される。そして、第1脚部92aおよび第2脚部92bがスライドし、支持ピン96が新版胴22nの軸支孔22aから抜き出され、新版胴22nが第1テーブル40Aに載置される。
【0134】
ロールクレーン90は、上昇した後、準備室1bに戻り、支持台60の全てに新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々が設置されるまで、このような動作を繰り返す。
【0135】
旧版胴22oおよび旧ファニッシャロール23oの各々の搬出時には、これと逆の動作により、ロールクレーン90が、自動制御によって印刷室1aで旧版胴22oおよび旧ファニッシャロール23oの各々を支持して移動する。そうすることにより、各支持台60に載置された旧版胴22oおよび旧ファニッシャロール23oの各々は、準備室1bの空の版胴台車71およびFR台車72の各々に搬送される。
【0136】
なお、ロールクレーン90は、各印刷ユニット2に新版胴22nおよび新ファニッシャロール23nの各々を搬入した後、続けて、その印刷ユニット2から旧版胴22oおよび旧ファニッシャロール23oの各々を搬出するのが好ましい。そうすれば、ロールクレーン90による移動回数を減らすことができる。
【0137】
このようなロール運搬機構8を備えたグラビア印刷システム1’によれば、印刷ユニット2が多数であっても、版胴22およびファニッシャロール23の各々を自動的に交換できるので、効率的である。
【0138】
しかも、非操作側スペースRMSの床上に障害となる設置物が無くなるので、オペレータは比較的容易に非操作側スペースRMSを移動できる。例えば、搬送過程でトラブルが発生しても、ロールクレーン90が停止すれば、直ぐに近づくことができる。従って、作業性に優れる。
【0139】
なお、開示する技術にかかるグラビア印刷システムは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、版胴台車71およびFR台車72の各々を、AGV(無人搬送車)で構成し、これらの走行も自動化してもよい。
【0140】
ロールクレーン90の形態は例示である。ロールクレーン90は、版胴22およびファニッシャロール23の1セットが搬送できればよい。
【符号の説明】
【0141】
1、1’ グラビア印刷システム
1a 印刷室
1b 準備室
2 印刷ユニット
3 ロール交換機構
4 ロール移送機構
8 ロール運搬機構
10 支持フレーム
10a 第1サイドフレーム
10b 第2サイドフレーム
11 操作制御ケース
12 ギアケース
13 支持軸
20 印刷機構
21 インキパン
22 版胴
23 ファニッシャロール
31 FR支持装置
32 インキパンスライダ
33 昇降台
40 テーブル
50 スライド機構
51 走行レール
52 ラックレール
60 支持台
80 ガイドレール
90 ロールクレーン
W ウエブ
MS 操作側スペース
RMS 非操作側スペース