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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】クロロフィル含有食品用品質保持剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3454 20060101AFI20230508BHJP
   A23L 3/3544 20060101ALI20230508BHJP
   A23L 3/358 20060101ALI20230508BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20230508BHJP
   A23L 3/3463 20060101ALI20230508BHJP
   A23L 3/3508 20060101ALI20230508BHJP
   A23L 3/3526 20060101ALI20230508BHJP
   A23L 3/3472 20060101ALI20230508BHJP
   A23L 3/3436 20060101ALI20230508BHJP
   A23L 3/349 20060101ALI20230508BHJP
   A21D 2/22 20060101ALN20230508BHJP
   A21D 2/02 20060101ALN20230508BHJP
   A21D 2/14 20060101ALN20230508BHJP
   A23G 3/34 20060101ALN20230508BHJP
【FI】
A23L3/3454
A23L3/3544 501
A23L3/358
A23L29/00
A23L3/3463
A23L3/3508
A23L3/3526
A23L3/3472
A23L3/3436
A23L3/349 501
A21D2/22
A21D2/02
A21D2/14
A23G3/34 105
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019101500
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2019208504
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2018105048
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516089979
【氏名又は名称】株式会社ウエノフードテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】勝部 智子
(72)【発明者】
【氏名】古川 陽二郎
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-530502(JP,A)
【文献】特開2007-029071(JP,A)
【文献】特開平11-266785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A21D、A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸類および/またはその塩100重量部に対して、マグネシウム含有化合物5~300重量部、α-リポ酸および/またはその複合体1~20重量部を含有するクロロフィル含有食品用品質保持剤であって、該クロロフィル含有食品用品質保持剤の1重量%水溶液のpHが7.5~9.5である、クロロフィル含有食品用品質保持剤。
【請求項2】
さらに、pH調整剤を含有する請求項1に記載のクロロフィル含有食品用品質保持剤。
【請求項3】
1重量%水溶液のpHが8.0~9.0である、請求項1または2に記載のクロロフィル含有食品用品質保持剤。
【請求項4】
マグネシウム含有化合物が炭酸マグネシウム、リン酸三マグネシウムおよび硫酸マグネシウムからなる群から選択される一種以上である、請求項1~3のいずれかに記載のクロロフィル含有食品用品質保持剤。
【請求項5】
アスコルビン酸類および/またはその塩がL-アスコルビン酸ナトリウムである、請求項1~4のいずれかに記載のクロロフィル含有食品用品質保持剤。
【請求項6】
α-リポ酸および/またはその複合体がα-リポ酸/シクロデキストリン複合体である、請求項1~5のいずれかに記載のクロロフィル含有食品用品質保持剤。
【請求項7】
pH調整剤がフマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸、ならびにこれらの酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される一種以上である、請求項2~6のいずれかに記載のクロロフィル含有食品用品質保持剤。
【請求項8】
クロロフィル含有食品が緑茶、抹茶および緑色野菜からなる群から選択される一種以上である、請求項1~のいずれかに記載のクロロフィル含有食品用品質保持剤。
【請求項9】
マグネシウム含有化合物、アスコルビン酸類および/またはその塩、およびα-リポ酸および/またはその複合体を混合する工程を含む、クロロフィル含有食品用品質保持剤の製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の品質保持剤とクロロフィル含有食品とを含む食品組成物。
【請求項11】
クロロフィル含有食品が抹茶である、請求項10に記載の食品組成物。
【請求項12】
請求項10または11に記載の食品組成物を含有する加工飲食品。
【請求項13】
請求項10または11に記載の食品組成物を脱酸素剤および/またはアルコール揮散剤と共に包装内に封入する工程を含む、品質保持方法。
【請求項14】
請求項12に記載の加工飲食品を脱酸素剤および/またはアルコール揮散剤と共に包装内に封入する工程を含む、品質保持方法。
【請求項15】
クロロフィル含有食品100重量部に対し、請求項1~のいずれかに記載のクロロフィル含有食品用品質保持剤を1~300重量部添加することを特徴とする、クロロフィル含有食品の品質保持方法。
【請求項16】
請求項1~のいずれかに記載のクロロフィル含有食品用品質保持剤の0.5~20重量%水溶液にクロロフィル含有食品を浸漬することを特徴とする、クロロフィル含有食品の品質保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱や光によるクロロフィル含有食品の変色を抑制するための、クロロフィル含有食品用品質保持剤に関する。また、本発明は熱や光によるクロロフィル含有食品の変色を抑制する、クロロフィル含有食品の品質保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抹茶やブロッコリー、インゲンマメ、枝豆、アスパラガス等の緑色野菜に含まれるクロロフィルは、一般にマグネシウムがテトラピロール環中心に配位した構造をしており、安全性の高い緑色色素として食品、化粧料等の着色に利用されている。
【0003】
しかしながら、クロロフィルは加熱や光(特に紫外線)照射により分解し、変色を引き起こしやすい。このような安定性の問題により、クロロフィルの用途や使用条件は制限されている。そのため、クロロフィルの安定化のための品質保持剤や品質保持方法が種々提案されている。
【0004】
特許文献1には、炭酸マグネシウムを添加することにより、変色が抑制された茶そばの製造方法が記載されている。クロロフィルの分解はマグネシウムとテトラピロール環との配位構造が崩れることが原因の一つと考えられている。従って、特許文献1のように、炭酸マグネシウムのようなマグネシウム源を添加することで、クロロフィルの分解を抑制することが可能である。しかしながら、マグネシウム源の添加だけでは変色を十分に抑制することができず、さらにアスコルビン酸Naを加えてpHを7.0~8.0に調整した場合であっても、その変色抑制効果は未だ不十分であった。
【0005】
特許文献2には、内側面に銅及び/又は亜鉛を含む合金地肌を露出した構造に形成してなる加熱容器中の温水または熱水中に溶出してくる銅イオンおよび亜鉛イオンの相互作用で植物由来緑色素を復元および/または定着するようにした湯煎による植物の緑色素復元・定着方法が記載されている。この方法では、クロロフィルの金属を銅イオンまたは亜鉛イオンに置換することでクロロフィルの色素をより鮮やかに保つことが可能である。しかしながら、このような方法では、溶出する金属イオン濃度の調整が困難であり、金属イオンが置換されるまで熱水に浸漬することで、他の栄養分の分解や溶出を招く等の問題があった。
【0006】
特許文献3には、特定のミネラルを増強した酵母を利用した植物の緑色の保持あるいは復元する方法が提案されている。しかしながら、ミネラル含有酵母は、酵母壁が硬く所定のミネラルの効果的な遊離が難しいことや、酵母体内のミネラル含有量が比較的少ない(亜鉛酵母の場合は亜鉛を5重量%含有)ことから、酵母を過剰に加える必要があった。また、特有の酵母臭が食品に付着し、臭いや味に影響が出るため、食品には使用し難いものであった。
【0007】
また、クロロフィルの分解は、酸化も原因の一つと考えられており、様々な抗酸化物質の添加によってクロロフィルの変色を抑制する方法が提案されている。抗酸化物質としては、例えば、β-カロテン(特許文献4)、α-リポ酸及びアスコルビン酸(特許文献5、特許文献6)等が挙げられるが、クロロフィルの分解には複数の要因が考えられ、そのメカニズムが複雑であることから、これらの化合物のみではクロロフィルの分解、変色を十分に抑制することが困難であった。
【0008】
そのため、食品の味質に対する影響が少なく、十分な変色抑制効果を有する品質保持剤が所望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平9-224599号公報
【文献】特開2003-47434号公報
【文献】特開2004-67546号公報
【文献】特開2004-65085号公報
【文献】特開2007-29071号公報
【文献】特開2011-250776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、食品の味質に対する影響が少なく、十分な変色抑制効果を有するクロロフィル含有食品用品質保持剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の化合物を混合し、特定のpHに調整することにより、食品の味質に対する影響が少なく、十分な変色抑制効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち本発明は、マグネシウム含有化合物、アスコルビン酸類および/またはその塩、およびα-リポ酸および/またはその複合体を含有するクロロフィル含有食品用品質保持剤であって、該クロロフィル含有食品用品質保持剤の1重量%水溶液のpHが7.5~9.5である、クロロフィル含有食品用品質保持剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤は、抹茶等のクロロフィル含有食品に添加することで、味質に影響を与えず、変色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1-1】実施例27およびその対照実験で得られたボイルアスパラガスの外観写真である。
図1-2】実施例28および29で得られたボイルアスパラガスの外観写真である。
図1-3】実施例30および31で得られたボイルアスパラガスの外観写真である。
図1-4】実施例32で得られたボイルアスパラガスの外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤に用いるマグネシウム含有化合物としては、塩化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムおよびリン酸三マグネシウムからなる群から選択される一種以上が挙げられ、変色抑制効果に優れる点で、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウムが好ましく、炭酸マグネシウム、リン酸三マグネシウムがより好ましく、炭酸マグネシウムがさらに好ましい。
【0016】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤に含まれるマグネシウム含有化合物の割合は、アスコルビン酸類および/またはその塩100重量部に対して、5~300重量部が好ましく、7~120重量部がより好ましく、9~70重量部がさらに好ましく、11~60重量部が特に好ましい。マグネシウム含有化合物の割合がアスコルビン酸類および/またはその塩100重量部に対して5重量部を下回る場合、十分な変色抑制効果が得られない傾向にあり、アスコルビン酸類および/またはその塩100重量部に対して300重量部を上回る場合、クロロフィルがアルカリによって分解し、使用した食品が変色する傾向にある。
【0017】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤に用いるアスコルビン酸類および/またはその塩としては、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸(D-イソアスコルビン酸)、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸カリウム、L-アスコルビン酸アンモニウム、L-アスコルビン酸モノエタノールアミン、L-アスコルビン酸ジエタノールアミン、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム、エリソルビン酸アンモニウム、エリソルビン酸モノエタノールアミン、エリソルビン酸ジエタノールアミンからなる群から選択される一種以上を用いることができる。これらの中でも、変色抑制効果に優れる点で、L-アスコルビン酸ナトリウムが好ましい。また、これらの化合物は水和物であってもよい。
【0018】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤に含まれるアスコルビン酸類および/またはその塩の割合は、品質保持剤全量に対し20~65重量%が好ましく、25~60重量%がより好ましく、30~55重量%がさらに好ましい。アスコルビン酸類および/またはその塩の割合が20重量%を下回る場合、十分な変色抑制効果が得られない傾向にあり、アスコルビン酸類および/またはその塩の割合が65重量%を上回る場合、製剤中の他成分の配合量が減るために得られる効果が低減する恐れがある。
【0019】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤に用いるα-リポ酸および/またはその複合体において、α-リポ酸としては、α-リポ酸R体、α-リポ酸S体、ジヒドロリポ酸R体、ジヒドロリポ酸S体、およびこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩からなる群から選択される一種以上が挙げられる。
【0020】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤に用いるα-リポ酸および/またはその複合体としては、安定性および臭気抑制効果に優れる点で、α-リポ酸/シクロデキストリン複合体が好ましい。
【0021】
α-リポ酸/シクロデキストリン複合体におけるシクロデキストリンとは、D-グルコースがα-1、4結合により環状構造を形成した大環状化合物であり、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンおよびδ-及びε-シクロデキストリンからなる群から選択される一種以上が挙げられる。特にγ-シクロデキストリンは水溶性、消化性が共に優れるため、好ましい。
【0022】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤に含まれるα-リポ酸および/またはその複合体の割合は、アスコルビン酸類および/またはその塩100重量部に対して、1~20重量部が好ましく、1.5~10重量部がより好ましく、2~5重量部がさらに好ましい。α-リポ酸および/またはその複合体の割合がアスコルビン酸類および/またはその塩100重量部に対して1重量部を下回る場合、十分な変色抑制効果が得られない傾向にあり、アスコルビン酸類および/またはその塩100重量部に対して20重量部を上回る場合、クロロフィル含有食品へのα-リポ酸特有の刺激味の影響が強くなる傾向にある。
【0023】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤の1重量%水溶液のpHは7.5~9.5であり、7.7~9.2が好ましく、8.0~9.0がより好ましい。本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤の1重量%水溶液のpHが上記範囲内にあることによって、クロロフィル含有食品に対して十分な変色抑制効果が得られるとともに、食品の味質に対する影響が少ない。本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤はpH調整剤を含有してもよく、pH調整剤の添加量は、本発明の品質保持剤の1重量%水溶液のpHが上記範囲内に入るよう適宜調整すればよい。1重量%水溶液のpHが上記範囲内であれば、pH調整剤は用いなくてもよい。pH調整剤の割合は、品質保持剤全量に対し0.5~60重量%程度が好ましいが、これに限定されず、場合により60重量%を上回ってもよい。
【0024】
pH調整剤としては、フマル酸、乳酸、酢酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、クエン酸、りんご酸、こはく酸、フィチン酸、プロピオン酸、酪酸、炭酸、重炭酸およびリン酸、ならびにこれらの酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0025】
本発明が適用されるクロロフィル含有食品は、クロロフィルを含む食品或いは食品素材であれば、いずれも対象とすることができ、緑色野菜、緑茶、抹茶、クロレラ、ユーグレナ、スピルリナ等が例示される。尚、一種類の食品だけでなく、複数の食品の混合物を対象としてもよい。
【0026】
緑色野菜としては、グリーンピース、ブロッコリー、グリーン・アスパラガス、枝豆、ほうれん草、インゲンマメ、わらび、キャベツ、ピーマン、コマツナ、サヤエンドウ、オクラ、大麦若葉などを例示できる。本発明で使用される野菜は、野菜全体であっても、その一部であってもよく、丸のまま又は最終的な用途に合わせた様々な大きさに切られた野菜を使用してもよい。
【0027】
緑茶は、ツバキ科茶の樹の芽、葉、茎であり、品種、産地を問わず本発明の適用対象とすることができ、また、生のままであっても、また、クロロフィルが壊されていない状態で残存していれば飲料用の前処理(発酵、半発酵など)を施したものであってもよい。緑茶の種類としては、煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、玉緑茶、抹茶、ほうじ茶、釜炒り茶、てん茶等が挙げられる。
【0028】
抹茶は挽き茶とも言われ、一般には上記てん茶を臼で挽いて粉にしたものであるが、本発明における抹茶には、てん茶の粉に限らず広く緑茶を粉状化したものも含まれる。
【0029】
特に緑茶や抹茶等のクロロフィル含有食品を利用した加工飲食品は、茶飲料(いわゆる「お茶」)をはじめ、例えば、スナック類、栄養食品、炭酸飲料、機能性飲料、アルコール飲料、アイスクリーム、シャーベット等の冷菓類、ゼリー、プリン、羊かん等のデザート類、クッキー、ケーキ、チョコレート、チューイングガム、饅頭等の菓子類、蒸しパン、菓子パン、食パン等のパン類、ラムネ菓子、タブレット、錠菓類などが挙げられる。このように本発明はクロロフィルを含む上記加工食品に幅広く適用可能である。
【0030】
より具体的には、抹茶入り蒸しパン、抹茶入りケーキ、緑茶入りキャンディー、抹茶アイスクリーム、抹茶プリン、抹茶入り乳飲料、緑茶ゼリーや抹茶チョコレートが例示される。
【0031】
また、本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤は、その効果に影響を及ぼさない範囲で、目的に応じ、別途、デキストリンなどの食品素材や、核酸などの調味料、苦味料、光沢剤、栄養強化剤、トコフェロール等のビタミン類、カテキン、ミネラル、パラベン等の抗菌剤、香料、天然香料、甘味料、保存料、日持ち向上剤、調味料、乳化剤、膨張剤、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、固結防止剤等を含むことができる。
【0032】
さらに、本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤の効果を高める目的で、上記加工飲食品を脱酸素剤および/またはアルコール揮散剤と共に包装内に封入してもよい。
【0033】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤の使用方法として、本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤をクロロフィル含有食品に直接添加する方法が挙げられる。
【0034】
クロロフィル含有食品への添加量は、食品毎に得られる変色抑制効果や味質への影響が異なるため、希望する変色抑制効果や味質が得られるように適宜調整すればよいが、クロロフィル含有食品100重量部に対して1~300重量部、好ましくは10~250重量部、より好ましくは20~100重量部、さらに好ましくは30~60重量部を目安に添加すればよい。
【0035】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤の使用方法として、本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤の水溶液にクロロフィル含有食品を浸漬する方法、本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤の水溶液をクロロフィル含有食品に噴霧または塗布する方法などが挙げられる。クロロフィル含有食品用品質保持剤の水溶液は、例えば、0.1~50重量%、好ましくは0.5~20重量%を目安に調節すればよい。
【0036】
本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤を食品に添加する時期、または、本発明のクロロフィル含有食品用品質保持剤の水溶液に食品を浸漬する時期については、特に制限は無く、加熱食品に使用する場合は加熱の前後、あるいは加熱中いずれに実施してもよい。
【0037】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例
【0038】
試験例
品質保持剤の調製
下記材料を表1-1~1-3に示す割合で、製剤A~Uを調製した。また、調製した製剤について、1重量%水溶液を調製し、pHメーター(株式会社堀場製作所製)を用いてpHを測定した。結果を表1-1~1-3に示す。
・炭酸マグネシウム(協和化学工業株式会社製)
・リン酸三マグネシウム(太平化学産業株式会社製)
・硫酸マグネシウム(株式会社松葉薬品製)
・L-アスコルビン酸ナトリウム(維生薬業有限公司製)
・アスコルビン酸(DSM社製)
・R(+)-αリポ酸-γシクロデキストリン包接体:α-リポ酸CD(株式会社シクロケム製)
・デキストリン(松谷化学工業株式会社製)
・フマル酸一ナトリウム(川崎化成工業株式会社製)
・DL-リンゴ酸(扶桑化学工業株式会社製)
・DL-酒石酸(扶桑化学工業株式会社製)
・無水クエン酸(昭和化工株式会社製)
・炭酸水素ナトリウム(AGC株式会社製)
【0039】
実施例1~15および比較例1~6
(抹茶蒸しパンの変色抑制試験1)
抹茶蒸しパンの製造
調製した製剤A~Uを、下記配合の抹茶蒸しパン原材料における抹茶(クロロフィル含有食品)100重量部に対して表1-1~1-3に記載の添加量になるように、それぞれ抹茶と混合した後、さらに薄力粉とベーキングパウダー(BP)を混合し、粉末組成物を得た。次に、グラニュー糖水溶液に前記粉末組成物を加え、混合した後、アルミカップに流し入れて、蒸し器で5分30秒間蒸した後、アルミカップを外して室温で30分間冷却し、抹茶蒸しパンを得た。
また、製剤を使用せず下記配合と同様の抹茶蒸しパンを製造し、官能評価および色差測定の対照とした。
<抹茶蒸しパン原材料の配合>
薄力粉 44.25重量%
BP 0.97重量%
グラニュー糖 19.65重量%
抹茶 1.77重量%
水道水 33.36重量%
【0040】
抹茶蒸しパンの官能評価
製造した抹茶蒸しパンの味質を下記評価基準にて評価した。結果を表1-1~1-3に示す。
<評価基準>
○・・・対照と同等の味質
△・・・対照とやや異なる味質(抹茶の風味がやや消失)
【0041】
抹茶蒸しパンの色差測定
製造した抹茶蒸しパンをガスバリア性の高い包装袋(旭化成パックス株式会社製:KON15μm/60μm)に密閉した後、室温、蛍光灯による約1000ルクスの光照射下で1日間保管し、保管後の抹茶蒸しパンの色差を下記方法により測定した。結果を表1-1~1-3に示す。
<色差の測定方法>
色差の測定には測色色差計(日本電色工業株式会社製:ZE‐2000)を用いて、明度L値、色相a値(赤色⇔緑色)、色相b値(黄色⇔青色)を測定した。
製造直後の値をp、所定時間経過後の値をqの添え字で示すとき、下式により総合的な色の差であるΔEを算出した。
(式)ΔE=[(Lq-Lp)+(aq-ap)+(bq-bp)1/2
尚、ΔEは製造直後と所定時間経過後のL、a、bの数値の差を表す。よって、ΔEの数値が小さい程、製造直後からの変化が少なく、変色抑制効果が高いことを示す。(ΔE/対照のΔE)×100の値が65未満であるのが好ましく、55未満であるのがより好ましく、45未満であるのがさらに好ましく、40未満であるのが特に好ましい。
【0042】
本発明の製剤A~Oのいずれかが配合された抹茶蒸しパン(実施例1~15)は、光照射下での保管試験における色差((ΔE/対照のΔE)×100)の値が、対照より明確に小さく、十分に変色が抑制されていることが確認された。また味質に関しても対照と遜色なく同等であった。一方、本発明以外の製剤P~Uのいずれかが配合された抹茶蒸しパン(比較例1~6)は、いずれも実施例1~15と比較して色差((ΔE/対照のΔE)×100)の値が大きく、変色抑制効果が十分ではなかった。
【0043】
実施例16~19および比較例7~12
(抹茶蒸しパンの変色抑制試験2)
抹茶蒸しパンの製造
調製した製剤J~MおよびP~Uを用い、上記抹茶蒸しパンの変色抑制試験1と同様の方法にて、抹茶蒸しパンを製造した。また、対照も同様に製造した。
【0044】
抹茶蒸しパンの官能評価
製造した抹茶蒸しパンの味質を上記抹茶蒸しパンの変色抑制試験1と同様の方法で評価した。結果を表2-1~2-2に示す。
【0045】
抹茶蒸しパンの色差測定
製造した抹茶蒸しパンをガスバリア性の高い包装袋(旭化成パックス株式会社製:KON15μm/60μm)に脱酸素剤(株式会社ウエノフードテクノ製:F-PW)と共に封入し、密封した後、室温、蛍光灯による約1000ルクスの光照射下で7日間保管し、保管後の抹茶蒸しパンの色差を上記抹茶蒸しパンの変色抑制試験1と同様の方法にて測定した。結果を表2-1~2-2に示す。
【0046】
本発明の製剤J~Mのいずれかが配合された抹茶蒸しパン(実施例16~19)は、光照射下での保管試験における色差((ΔE/対照のΔE)×100)の値が、対照より明確に小さく、十分に変色が抑制されていることが確認された。一方、本発明以外の製剤P~Uのいずれかが配合された抹茶蒸しパン(比較例7~12)は、いずれも実施例16~19と比較して色差((ΔE/対照のΔE)×100)の値が大きく、変色抑制効果が十分ではなかった。
【0047】
実施例20
(抹茶蒸しパンの変色抑制試験3)
抹茶蒸しパンの製造
調製した製剤Kを抹茶(クロロフィル含有食品)100重量部に対して表3に記載の添加量になるように使用した以外は、上記抹茶蒸しパンの変色抑制試験1と同様の方法にて、抹茶蒸しパンを製造した。また、対照も同様に製造した。
【0048】
抹茶蒸しパンの官能評価
製造した抹茶蒸しパンの味質を上記抹茶蒸しパンの変色抑制試験1と同様の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0049】
抹茶蒸しパンの色差測定
製造した抹茶蒸しパンをガスバリア性の高い包装袋(旭化成パックス株式会社製:KON15μm/60μm)にアルコール揮散剤(株式会社ウエノフードテクノ製)と共に封入し、密閉した後、室温、蛍光灯による約1000ルクスの光照射下で3日間保管し、保管後の抹茶蒸しパンの色差を上記抹茶蒸しパンの変色抑制試験1と同様の方法にて測定した。結果を表3に示す。
【0050】
本発明の製剤Kが配合された抹茶蒸しパン(実施例20)は、光照射下での保管試験における色差((ΔE/対照のΔE)×100)の値が、対照より明確に小さく、十分に変色が抑制されていることが確認された。また味質に関しても対照と遜色なく同等であった。
【0051】
実施例21~26
(ボイルインゲンマメの変色抑制試験)
ボイルインゲンマメの製造
沸騰水中に食塩および調製した製剤Kを投入し、食塩濃度が1重量%、且つ、本製剤濃度が各々0.63、1.25、2.5、5、10、20重量%の水溶液を調製した。前記水溶液を加熱し沸騰した段階で、インゲンマメを投入した。再沸騰後、2分間加熱し、水切りし、ボイルインゲンマメを得た。また、製剤Kを含まず、食塩濃度が1重量%である水溶液を用いた以外は、同様にしてボイルインゲンマメを製造し、官能評価および色差測定の対照とした。
【0052】
ボイルインゲンマメの官能評価
製造したボイルインゲンマメの味質を下記評価基準にて評価した。結果を表4に示す。
<評価基準>
○・・・対照と同等の味質
×・・・対照と異なる味質
【0053】
ボイルインゲンマメの色差測定
製造したボイルインゲンマメをトレーパックに入れ、10℃、蛍光灯による約1000ルクスの光照射下で24時間保管し、保管後のボイルインゲンマメの色差を上記抹茶蒸しパンの変色抑制試験1と同様の方法にて測定し、同様の計算式によりΔEを算出した。(ΔE/対照のΔE)×100の値が85未満であるのが好ましく、80未満であるのがより好ましく、78未満であるのがさらに好ましく、75未満であるのが特に好ましい。結果を表4に示す。
【0054】
本発明の製剤Kを投入した水溶液で製造したボイルインゲンマメ(実施例21~26)は、光照射下での保管試験における色差((ΔE/対照のΔE)×100)の値が対照よりも小さく、変色の進行を抑制していた。また、味質に関しては、製剤Kを添加していない対照と遜色がなく、同等であった。一方、本発明の製剤Kを投入しない水溶液で製造したボイルインゲンマメ(対照)は、10℃、蛍光灯による約1000ルクスの白色光照射下で24時間保管することにより、変色が確認された。
【0055】
実施例27~32
(ボイルアスパラガスの変色抑制試験)
ボイルアスパラガスの製造
沸騰水中に食塩および調製した製剤Kを投入し、食塩濃度が1重量%、且つ、本製剤濃度が各々0.63、1.25、2.5、5、10、20重量%の水溶液を調製した。前記水溶液を加熱し沸騰した段階で、アスパラガスを投入した。再沸騰後、1分間加熱し、水切りし、ボイルアスパラガスを得た。また、製剤Kを含まず、食塩濃度が1重量%である水溶液を用いた以外は、同様にしてボイルアスパラガスを製造し、官能評価および外観評価の対照とした。
【0056】
ボイルアスパラガスの官能評価
製造したボイルアスパラガスの味質を下記評価基準にて評価した。結果を表5に示す。
<評価基準>
○・・・対照と同等の味質
×・・・対照と異なる味質
【0057】
ボイルアスパラガスの外観評価
製造したボイルアスパラガスをトレーパックに入れ、10℃、蛍光灯による約1000ルクスの光照射下で24時間保管し、保管後のボイルアスパラガスの外観を下記評価基準にて評価した。結果を表5および図1-1~図1-4に示す。
<評価基準>
○・・・僅かに変色が進行しているが、対照と比較して変色が抑制されている
△・・・やや変色が進行しているが、対照と比較して変色が抑制されている
×・・・著しく変色している
【0058】
本発明の製剤Kを投入した水溶液で製造したボイルアスパラガス(実施例27~32)は、光照射下で保管後も、緑色を保持しており、変色の進行を抑制していた。一方、本発明の製剤を投入しない水溶液で製造したボイルアスパラガス(対照)は、保管後24時間で著しい変色が確認された。

【表1-1】


【表1-2】

【表1-3】




【表2-1】







【表2-2】



【表3】









【表4】


【表5】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】