(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】基礎の施工方法および梁のユニット
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20230508BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
E04G21/12 105B
(21)【出願番号】P 2019123191
(22)【出願日】2019-07-01
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】598143790
【氏名又は名称】株式会社クギン
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】釘宮 祐治
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-299560(JP,A)
【文献】特開平08-113949(JP,A)
【文献】特開2005-330649(JP,A)
【文献】実開平04-062748(JP,U)
【文献】特開昭59-021829(JP,A)
【文献】特開平05-185417(JP,A)
【文献】特開2000-336929(JP,A)
【文献】特開平11-117525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎梁における鉄筋として使用可能な鉄筋骨組みを有する梁のユニットを、この梁のユニットの配設場所としてあけられた穴である根切りの中にセットする、基礎の施工方法において、
鉄筋骨組みに、この鉄筋骨組みの側面のうち互いに対向される2面を覆うように設けられた型枠の組と、鉄筋骨組みの上を通って型枠の組をつなぐ貫と、が一緒にされた梁のユニットを用意するステップと、
梁のユニットに対応する形状で、かつ、この梁のユニットと比してこの梁のユニットを吊りこむ場合における荷振れに対応するサイズだけ大きな穴を根切りとして用意するステップと、
梁のユニットにおける鉄筋骨組みを吊り上げ、もってこの鉄筋骨組みに型枠の組が貫によって引っかかった状態を実現させるステップと、
鉄筋骨組みに型枠の組が貫によって引っかかった状態の梁のユニットを根切りの中に吊りこんでセットするステップと、
根切りの中にセットされた状態の梁のユニットにおける型枠の組の間にフレッシュコンクリートを流し込み、もって梁のユニットにおける鉄筋骨組みをコンクリートに埋もれた状態にするステップと、
を有している、
基礎の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載された基礎の施工方法であって、
根切りの中にセットされた状態の梁のユニットにおける型枠の組の間にフレッシュコンクリートを流し込む前に、この型枠の組から貫を分離させて取り除くステップを実行する、
基礎の施工方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された基礎の施工方法であって、
一方側から他方側に向かって延びる複数本の竪桟と、これら竪桟の間にかけ渡される複数本の横桟とが互いに剛接合された構成を有するフレームに、このフレームにおける一方面を覆う金網を接合させたものを、型枠として使用し、
さらに、
型枠における金網を貫により貫いてこの貫を型枠における横桟に隣接させ、この横桟に貫を接合させるステップを有している、
基礎の施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載された基礎の施工方法であって、
一方側から他方側に向かって延びる縁を有する金属平板と、この金属平板の縁から他方側に傾斜した状態に延びる複数のストランドを有して、これらストランドにより金属平板につながった状態とされるメタルラスと、が交互に並べられたものを、金網として使用し、
さらに、
型枠における金網を貫により貫く際に、この貫が金網を貫く部分において金属平板とメタルラスとをつなぐストランドに対してフレームの横桟側に向かう向きの力を加え、もって金網にストランド間の間隔が他の部分よりも広くされた穴が設けられた状態を実現させる、
基礎の施工方法。
【請求項5】
基礎梁における鉄筋として使用可能な鉄筋骨組みと、
この鉄筋骨組みの側面のうち互いに対向される2面を覆うように設けられた型枠の組と、
鉄筋骨組みの上を通って型枠の組をつなぐ貫と、
型枠を鉄筋骨組みにゆわえつける構成と、
組をなす型枠に互いに近づく向きの力を作用させるセパレーターと、
鉄筋骨組みに取り付けられ、型枠に当接することによって、セパレーターから型枠に作用される力を支持するスペーサーと、
を備えている、
梁のユニット。
【請求項6】
請求項5に記載された梁のユニットであって、
貫は、型枠のそれぞれに対して、これら型枠から分離させて取り除くことが可能な態様で取り付けられ、もって型枠の組をつないでいる、
梁のユニット。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載された梁のユニットであって、
型枠は、一方側から他方側に向かって延びる複数本の竪桟と、これら竪桟の間にかけ渡される複数の横桟とが互いに剛接合された構成を有するフレームに、このフレームにおける一方面を覆う金網を接合させたものであり、
貫は、型枠のそれぞれに対して、その金網を貫いて横桟に隣接され、かつ、この横桟に接合された状態となることで、型枠の組をつないでいる、
梁のユニット。
【請求項8】
請求項7に記載された梁のユニットであって、
型枠の金網は、一方側から他方側に向かって延びる縁を有する金属平板と、この金属平板の縁から他方側に傾斜した状態に延びる複数のストランドを有して、これらストランドにより金属平板につながった状態とされるメタルラスと、が交互に並べられたものであり、
金属平板とメタルラスとをつなぐ複数のストランドは、フレームの横桟側に向かう向きの力を加えることで、金網にそのストランド間の間隔が他の部分よりも広くされた穴を設けることが可能とされている、
梁のユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎梁に使用可能な梁のユニット、および、この梁のユニットを使用する基礎の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、梁を構築する作業において、この梁の鉄筋として使用可能な鉄筋骨組み(本明細書では「梁筋」とも称する。)を独立したユニットとして組み上げてからその配設場所に据え付けることで、この作業の省力化を図ることがあった(特許文献1を参照)。ここで、特許文献1に記載された技術では、梁筋のユニットを据え付けた後に、この梁筋のユニットをコンクリートに埋もれた状態にするために打設されるフレッシュコンクリートの流れ出しを抑える型枠を組み建てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、梁の中には、地面に「根切り」と呼ばれる穴をあけて据え付けられることで建築物の1階部分を支える、「基礎梁」と呼ばれる種類の梁が存在する。ここで、基礎梁を構築する作業に、特許文献1に記載された従来の技術を適用した場合には、基礎梁の配設場所にあけられる根切りを、梁筋のユニットを据え付けるためのスペースと、据え付けられた梁筋のユニットの周囲にて型枠を組み建てるためのスペースと、の両方が確保できるサイズにする必要がある。すなわち、特許文献1に記載された従来の技術は、基礎梁を構築する作業に適用された場合には、その手間およびコストが、根切りに設定される、型枠を組み建てるためのスペースの分だけ余分に必要となるものであった。ここで、上記余分に必要となる手間およびコストには、例えば根切りをあける際の掘削作業、ならびに、この掘削作業において出た土砂の埋め戻し作業および/または処分作業にかかる手間およびコストが含まれる。また、上記余分に必要となる手間およびコストには、例えば根切りにおいて型枠を組み建てるためおよび/またはフレッシュコンクリートを打設するためのスペースに設置される足場および/または仮設通路の用意、ならびに、これらの設営作業および撤去作業にかかる手間およびコストが含まれる。また、上記余分に必要となる手間およびコストには、例えばフレッシュコンクリートの流れ出しを抑える型枠の支持および/または設置状態の補正をする設備の用意、ならびに、その設営作業および撤去作業にかかる手間およびコストが含まれる。
【0005】
本発明は、基礎梁を構築する作業において、型枠を組み建てるためのスペースを根切りに設定する必要をなくし、もって基礎梁を構築する作業における手間およびコストを減らすことを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における1つの特徴によると、基礎梁における鉄筋として使用可能な鉄筋骨組みを有する梁のユニットを、この梁のユニットの配設場所としてあけられた穴である根切りの中にセットする、基礎の施工方法が提供される。この基礎の施工方法は、鉄筋骨組みに、この鉄筋骨組みの側面のうち互いに対向される2面を覆うように設けられた型枠の組と、鉄筋骨組みの上を通って型枠の組をつなぐ貫と、が一緒にされた梁のユニットを用意するステップを有する。また、上記の基礎の施工方法は、梁のユニットに対応する形状で、かつ、この梁のユニットと比してこの梁のユニットを吊りこむ場合における荷振れに対応するサイズだけ大きな穴を根切りとして用意するステップを有する。また、上記の基礎の施工方法は、梁のユニットにおける鉄筋骨組みを吊り上げ、もってこの鉄筋骨組みに型枠の組が貫によって引っかかった状態を実現させるステップを有する。また、上記の基礎の施工方法は、鉄筋骨組みに型枠の組が貫によって引っかかった状態の梁のユニットを根切りの中に吊りこんでセットするステップを有する。また、上記の基礎の施工方法は、根切りの中にセットされた状態の梁のユニットにおける型枠の組の間にフレッシュコンクリートを流し込み、もって梁のユニットにおける鉄筋骨組みをコンクリートに埋もれた状態にするステップを有する。
【0007】
また、梁のユニットの発明も提供される。この梁のユニットは、基礎梁における鉄筋として使用可能な鉄筋骨組みを備えている。また、上記の梁のユニットは、鉄筋骨組みの側面のうち互いに対向される2面を覆うように設けられた型枠の組を備えている。また、上記の梁のユニットは、鉄筋骨組みの上を通って型枠の組をつなぐ貫を備えている。
【0008】
上記の基礎の施工方法によれば、鉄筋骨組みと型枠の組とが一緒になった梁のユニットを根切りの中に吊りこんでセットすることで、この根切りに型枠を組み建てるためのスペースを設定する必要をなくし、もって基礎梁を構築する作業における手間およびコストを減らすことができる。この手間およびコストには、例えば根切りをあける際の掘削作業、ならびに、この掘削作業において出た土砂の埋め戻し作業および/または処分作業にかかる手間およびコストが含まれる。また、上記手間およびコストには、例えば根切りにおいて型枠を組み建てるためおよび/またはフレッシュコンクリートを打設するためのスペースに設置される足場および/または仮設通路の用意、ならびに、これらの設営作業および撤去作業にかかる手間およびコストが含まれる。また、上記手間およびコストには、例えばフレッシュコンクリートの流れ出しを抑える型枠の支持および/または設置状態の補正をする設備の用意、ならびに、その設営作業および撤去作業にかかる手間およびコストが含まれる。
【0009】
また、上記の梁のユニットによれば、上記の基礎の施工方法を好適に実現することができる。
【0010】
上記の基礎の施工方法においては、根切りの中にセットされた状態の梁のユニットにおける型枠の組の間にフレッシュコンクリートを流し込む前に、この型枠の組から貫を分離させて取り除くステップを実行する実施形態が好ましい。
【0011】
また、上記の梁のユニットにおいては、貫は、型枠のそれぞれに対して、これら型枠から分離させて取り除くことが可能な態様で取り付けられ、もって型枠の組をつないでいる実施形態が好ましい。
【0012】
鉄筋骨組みをコンクリートに埋もれた状態にしてなる構造物は、このコンクリートが割れることと鉄筋骨組みが腐食されることとをさけるために、この鉄筋骨組みをなす各鉄筋に対して、鉄筋ごとに決められる厚さ以上の厚さのコンクリートによって覆われた状態を求められるものである。ここで、上記の実施形態にかかる基礎の施工方法によれば、根切りの中にセットされた状態の梁のユニットから鉄筋骨組みの上を通る貫を取り除いてこの鉄筋骨組みの上のスペースを広くすることができる。そして、この鉄筋骨組みをなす鉄筋を、これら鉄筋ごとに決められる厚さ以上の厚さのコンクリートによって覆われた状態にすることを容易にすることができる。
【0013】
また、上記実施形態の梁のユニットによれば、上記実施形態の基礎の施工方法を好適に実現することができる。
【0014】
上記の基礎の施工方法においては、一方側から他方側に向かって延びる複数本の竪桟と、これら竪桟の間にかけ渡される複数本の横桟とが互いに剛接合された構成を有するフレームに、このフレームにおける一方面を覆う金網を接合させたものを、型枠として使用するものが好ましい。この場合において、基礎の施工方法は、型枠における金網を貫により貫いてこの貫を型枠における横桟に隣接させ、この横桟に貫を接合させるステップを有している。
【0015】
また、上記の梁のユニットにおいては、型枠は、一方側から他方側に向かって延びる複数本の竪桟と、これら竪桟の間にかけ渡される複数本の横桟とが互いに剛接合された構成を有するフレームに、このフレームにおける一方面を覆う金網を接合させたものであることが好ましい。この場合において、貫は、型枠のそれぞれに対して、その金網を貫いて横桟に隣接され、かつ、この横桟に接合された状態となることで、型枠の組をつないでいる。
【0016】
この場合の基礎の施工方法によれば、型枠は、鉄筋骨組みに型枠の組が貫によって引っかかった状態において、この貫から受ける力をフレームの全体で支え、もって型枠の変形を抑える。これにより、鉄筋骨組みに型枠の組が貫によって引っかかった状態の梁のユニットを根切りの中に吊りこんでセットする際に、その型枠が変形してセットできない状態となるおそれを減らすことができる。
【0017】
また、この基礎の施工方法は、上記の梁のユニットにより好適に実現することができる。
【0018】
上記の場合にかかる基礎の施工方法においては、一方側から他方側に向かって延びる縁を有する金属平板と、この金属平板の縁から他方側に傾斜した状態に延びる複数のストランドを有して、これらストランドにより金属平板につながった状態とされるメタルラスと、が交互に並べられたものを、金網として使用することが好ましい。この場合においては、型枠における金網を貫により貫く際に、この貫が金網を貫く部分において金属平板とメタルラスとをつなぐストランドに対してフレームの横桟側に向かう向きの力を加え、もって金網にストランド間の間隔が他の部分よりも広くされた穴が設けられた状態を実現させる。
【0019】
また、上記の場合にかかる梁のユニットにおいては、型枠の金網は、一方側から他方側に向かって延びる縁を有する金属平板と、この金属平板の縁から他方側に傾斜した状態に延びる複数のストランドを有して、これらストランドにより金属平板につながった状態とされるメタルラスと、が交互に並べられたものであることが好ましい。この場合において、金属平板とメタルラスとをつなぐ複数のストランドは、フレームの横桟側に向かう向きの力を加えることで、金網にそのストランド間の間隔が他の部分よりも広くされた穴を設けることが可能とされている。
【0020】
構造物においてコンクリートに埋もれた状態となる鉄筋骨組みは、その施工上の誤差が、この誤差を吸収するためのコンクリートの追加厚さを例えば10[mm]に設定しなければならない程度に大きくなるものである。ここで、上記の基礎の施工方法によれば、金網を貫が貫くための穴を、メタルラスのストランドに力を加えるという簡単な作業によりあけることができる。そして、この穴を鉄筋骨組みにおける施工上の誤差を反映させた適正な位置に位置させ、もって貫による型枠の組の鉄筋骨組みに対する引っかかりをより安定的なものにすることができる。また、ストランドに加える力をフレームの横桟側に向かう向きとする手法によれば、この横桟に力を与えるツールを受け止めさせ、もってこのツールが意図しない部分の金網に穴をあけるおそれを減らすことができる。
【0021】
また、この基礎の施工方法は、上記の梁のユニットにより好適に実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基礎梁を構築する作業における手間およびコストを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態にかかる梁のユニットを表した要部端面図である。
【
図2】一実施形態にかかる基礎の施工方法により構築される基礎梁を表した要部端面図である。
【
図5】
図4の金網に穴をあける作業を説明する説明図である。
【
図6】一実施形態にかかる基礎の施工方法において実行されるステップの1つを説明する説明図である。
【
図7】一実施形態にかかる基礎の施工方法において実行されるステップの1つを説明する説明図である。
【
図8】一実施形態にかかる基礎の施工方法において実行されるステップの1つを説明する説明図である。
【
図9】一実施形態にかかる基礎の施工方法において実行されるステップの1つを説明する説明図である。
【
図10】一実施形態にかかる基礎の施工方法において実行されるステップの1つを説明する説明図である。
【
図11】一実施形態にかかる基礎の施工方法において実行されるステップの1つを説明する説明図である。
【
図12】一実施形態にかかる基礎の施工方法において実行されるステップの1つを説明する説明図である。
【
図13】一実施形態にかかる基礎の施工方法において実行されるステップの1つを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
始めに、一実施形態にかかる基礎の施工方法により構築される基礎梁90について説明する。この基礎梁90は、
図2に示すように、地面91Aの中に埋められたステコンクリート91Bの上に梁のユニット10をセットし、この梁のユニット10の中にコンクリート90Aが充填された構成となっている。また、基礎梁90は、その上面のみが地面91Aに露出され、残りが地面91Aの中に埋まった半埋設の状態とされている。
【0026】
梁のユニット10は、基礎梁90においては鉄筋として使用される鉄筋骨組み11を備えている。この鉄筋骨組み11は、
図1に示すように、その上部および下部に並んで配置されたシュ筋11A、同じく前後の側面に沿うように並んで配置されたハラ筋11B、および、これらシュ筋11Aおよびハラ筋11Bを取り巻くアバラ筋11Cを含む複数の鉄筋を組み合わせて構成されている。
【0027】
また、梁のユニット10は、鉄筋骨組み11の側面のうち互いに対向される前後2面を覆うように設けられた型枠20の組を備えている。この型枠20は、鉄筋骨組み11側となる一方面が金網21に覆われたフレーム22を有する。これらフレーム22と鉄筋骨組み11のアバラ筋11Cとの間には、複数本のなまし鉄線10Aがかけ渡されている。これらなまし鉄線10Aは、型枠20を鉄筋骨組み11にゆわえつけ、もってこの型枠20の転倒および鉄筋骨組み11からの分離を抑える。
【0028】
また、組をなす型枠20の間には、両端がフックとされた金属製の棒であるセパレーター10B(
図7参照、
図1では図示省略)がかけ渡されている。このセパレーター10Bは、その両端のフックをそれぞれ型枠20のフレーム22に係止させた状態でかしめられることで、これら型枠20に互いに近づく向きの力を作用させることができる。この力は、鉄筋骨組み11のアバラ筋11Cに取り付けられてこのアバラ筋11Cから突出される複数のスペーサー11Dを、型枠20の金網21に当接させることによって支持することができる。本実施形態においては、スペーサー11Dは、切り込みを有するプラスチック製の円盤であり、その切り込みに鉄筋骨組み11のアバラ筋11Cを挿入することで、このアバラ筋11Cに取り付けられる。
【0029】
フレーム22は、
図3に示すように、長尺の枠をなして、その長手方向(
図3では「横」とした方向)に連ねられる。また、フレーム22は、一方側から他方側に向かって(
図3では「縦」とした方向に)延びる2本の竪桟22Aと、これら竪桟22Aの間にかけ渡される複数本(本実施形態では9本)の横桟22Bとが互いに剛接合された構成を有する。本実施形態においては、フレーム22は、その横桟22Bが竪桟22Aにおける一方側の端から他方側の端に向かって等間隔に並ぶように配設された連子をなす。
【0030】
また、金網21は、メタルラス21Aと金属平板21Cとが、フレーム22の長手方向(
図3では「横」とした方向)に交互に並べられた構成を有する。この金属平板21Cは、
図4に示すように、一方側から他方側に向かって(
図4では「縦」とした方向に)延びる縁21Dを有する。また、メタルラス21Aは、金属平板21Cの縁21Dから他方側(
図4で見て上側または下側)に傾斜した状態に延びる複数のストランド21Bを有して、これらストランド21Bにより金属平板21Cにつながった状態とされる。
【0031】
ここで、金属平板21Cとメタルラス21Aとをつなぐ複数のストランド21Bは、
図5に示すように、これらストランド21Bの間にハンドツール(例えば
図5に示すシノ付きラチェットレンチ92)の先端をさしはさむことが可能な間隔をあけて並んでいる。また、これらストランド21Bは、その間に先端がさしはさまれた状態のハンドツールを介して一方側または他方側に(
図5では「縦」とした方向に)向かう向きの力を加えることで、金網21にそのストランド21B間の間隔が他の部分よりも広くされた穴を設けることが可能とされている。ここで、型枠20においては、横桟22Bは、竪桟22Aにおける一方側の端から他方側の端に向かって並んでいるため、上記の力の向きは、フレーム22の横桟22B側に向かう向きと言い換えることができる。
【0032】
ところで、梁のユニット10において、型枠20の組は、
図1に示すように、鉄筋骨組み11の上を通る貫20Aによってつながれている。この貫20Aは、組をなす各型枠20の金網21をそれぞれ貫いて、これら型枠20において最上部に位置される横桟22Bに隣接され、これら横桟22Bに対してなまし鉄線のくくりつけ(図示省略)により分離可能に接合されることで、これら型枠20をつなぐ。言い換えると、貫20Aは、型枠20のそれぞれに対して、これら型枠20から分離させて取り除くことが可能な態様で取り付けられ、もって型枠の組をつなぐ。本実施形態においては、貫20Aは、その太さがメタルラス21Aにおけるストランド21Bの間隔(
図5参照)よりも太いため、これらストランド21Bに力を加えることであけられた穴(図示省略)を通ることで、型枠20の金網21を貫く。
【0033】
ついで、上述した基礎梁90を構築する基礎の施工方法について説明する。この施工方法においては、まず、上述した梁のユニット10(
図1参照)と、この梁のユニット10の配設場所としてあけられた穴である根切り91(
図10参照)とを、それぞれ用意する。ここで、梁のユニット10と根切り91とは、いずれを先に用意するものであってもよく、また、これらを同時並行で用意するものであってもよい。
【0034】
梁のユニット10を用意するステップにおいては、まず、
図6に実線で示すように、シュ筋11A、ハラ筋11B、および、アバラ筋11Cを含む複数の鉄筋を組み合わせて鉄筋骨組み11を組み上げる。この際、鉄筋骨組み11のアバラ筋11Cには、複数のスペーサー11Dおよびなまし鉄線10Aを取り付けておく。
【0035】
ついで、
図6に仮想線で示すように、2枚の型枠20を、その金網21が向かい合わせとなる状態で吊り上げ、鉄筋骨組み11の上に位置させる。このとき、2枚の型枠20は、その荷振れによる悪影響をさけるために、吊り上げの前に互いに結束された状態としておく。
【0036】
続いて、
図6に示すように、吊り上げられた2枚の型枠20の結束をといてこれら型枠20を引き分け、この型枠20の組をもって鉄筋骨組み11の側面のうち互いに対向される前後2面を覆う。このとき、各型枠20は、その金網21を鉄筋骨組み11側に向けた状態で、鉄筋骨組み11の側面を覆うようにされる。
【0037】
続いて、
図7に示すように、鉄筋骨組み11のアバラ筋11Cに取り付けられたなまし鉄線10Aにより、型枠20を鉄筋骨組み11にゆわえつける作業を行う。また、鉄筋骨組み11の前後2側面を覆う型枠20の組における各金網21をセパレーター10Bにより貫いてそのフックを型枠20の横桟22Bにひっかけて係止させ(図示省略)ることで、型枠20の組の間にセパレーター10Bが通されてかけ渡された状態とする作業を行う。また、型枠20の組の間にかけ渡されたセパレーター10Bをかしめることで、これら型枠20に互いに近づく向きの力を作用させる作業を行う。
【0038】
ここで、型枠20の金網21をセパレーター10Bにより貫く際には、このセパレーター10Bが各金網21を貫くことになる、横桟22Bに隣接された部分の金網21に、前もってセパレーター10Bを通す穴をあけておく(図示省略)と、その作業性が向上される。この穴は、金属平板21Cとメタルラス21Aとをつなぐストランド21B(
図5参照)に対してフレーム22の横桟22B側に向かう向きの力を加え、もってこのストランド21Bを変形させるもしくは金属平板21Cから切り離す(図示省略)作業によりあけることができる。
【0039】
さらに、各型枠20において鉄筋骨組み11よりも上となる部分に貫20Aを通し、この貫20Aにより各型枠20をつなぐ。この際には、型枠20における金網21を貫20Aにより貫いてこの貫20Aを型枠20において最上部に位置される横桟22Bに隣接させる。そして、これら横桟22Bに対し、貫20Aを、なまし鉄線のくくりつけ(図示省略)により分離可能に接合する。これらの作業により、鉄筋骨組み11に、型枠20の組と貫20Aとが一緒にされた梁のユニット10が得られる。
【0040】
ここで、型枠20の金網21を貫20Aにより貫く際には、この貫20Aが各金網21を貫くことになる、横桟22Bに隣接された部分の金網21に、前もって貫20Aを通す穴をあけておく(図示省略)と、その作業性が向上される。この穴は、金属平板21Cとメタルラス21Aとをつなぐストランド21Bに対してフレーム22の横桟22B側に向かう向きの力を加え、もってこのストランド21Bを変形させるもしくは金属平板21Cから切り離す(図示省略)作業によりあけることができる。
【0041】
根切り91を用意するステップにおいては、
図8に示すように、地面91Aに梁のユニット10(
図10参照)に対応する形状の溝をなすように穴をあけ、この穴の底にフレッシュコンクリート90Bを流し込んで固める。このフレッシュコンクリート90Bは、固まる前にその上面が平滑にならされることで、梁のユニット10の配設位置を規定するステコンクリート91Bとなる。このステコンクリート91Bには、梁のユニット10の配設位置を規定するための墨出し線を、追加で書き込むことができる。
【0042】
ここで、用意される根切り91は、
図10に示すように、梁のユニット10に対応する形状で、かつ、この梁のユニット10と比してこの梁のユニット10を吊りこむ場合における荷振れに対応するサイズだけ大きいサイズとされる。このサイズは、梁のユニット10を根切り91の中に入れた状態において、この根切り91の中に作業者(
図12参照)が入り込むことができないサイズである。本実施形態においては、根切り91のサイズは、梁のユニット10と比して前後方向に10[cm]~20[cm]だけ幅広のサイズとされる。
【0043】
梁のユニット10(
図1参照)および根切り91(
図10参照)の両方が用意されたら、
図9に示すように、梁のユニット10における鉄筋骨組み11に玉掛けを行い、この鉄筋骨組み11を吊り上げる作業を行う。この際、梁のユニット10における型枠20の組は、これら型枠20をつなぐ貫20Aが鉄筋骨組み11に引っかかることで、この鉄筋骨組み11と一緒に吊り上げられる。
【0044】
ついで、
図10に示すように、鉄筋骨組み11に型枠20の組が貫20Aによって引っかかった状態の梁のユニット10を、根切り91の中に吊りこんでセットする。この際、梁のユニット10は、根切り91の底に設けられたステコンクリート91Bの上に、架台(図示省略)を介して載せられる。なお、梁のユニット10における鉄筋骨組み11になされた玉掛けはこの梁のユニット10のセット後に外されるが、この作業は、根切り91の縁をなす地面91Aにいる作業者が手を伸ばすことによって行うことができる(図示省略)。これは、根切り91のサイズを特許文献1に記載された従来の技術よりも小さくすることによって可能となったものである。
【0045】
続いて、
図11に示すように、根切り91の中にセットされた梁のユニット10において、その型枠20の組から貫20Aを分離させて取り除く作業を行う。この作業においては、まず、貫20Aを各型枠20において最上部に位置される横桟22Bに接合させるなまし鉄線のくくりつけ(図示省略)を外す。ついで、貫20Aを型枠20の組に対して前後のいずれか(
図11では後ろ)に押し込んで型枠20の組の一方(
図11では前側の型枠20)から貫20Aを抜き取る。そして、この貫20Aにおいて型枠20から抜き取られた側の端を引っ張り上げることで、この貫20Aが通されたままとなっている型枠20(
図11では後ろ側の型枠20)から貫20Aを抜き取る。なお、この作業は、根切り91の縁をなす地面91Aにいる作業者が手を伸ばすことによって行うことができる(図示省略)。これは、根切り91のサイズを特許文献1に記載された従来の技術よりも小さくすることによって可能となったものである。
【0046】
型枠20の組から貫20Aを分離させて取り除く作業が終わったら、この型枠20の設置状態が所望の状態になっているかをチェックし、この設置状態に異常があるときにはこれを補正する作業を行う。この補正は、例えば適宜選定したサイズの杭93(
図12参照)を根切り91の壁に打ち込み、この杭93と型枠20の上部とを係合させることによって行うことができる。なお、この作業は、根切り91の縁をなす地面91Aにいる作業者が手を伸ばすことによって行うことができる(図示省略)。これは、根切り91のサイズを特許文献1に記載された従来の技術よりも小さくすることによって可能となったものである。
【0047】
ついで、
図12に示すように、根切り91の中にセットされた梁のユニット10における型枠20の組の間にフレッシュコンクリート90Bを流し込む作業を行う。この際、組をなす各型枠20は、それぞれがフレッシュコンクリート90Bの流れ出しを抑えるせきとして機能し、もってこれら型枠20の間に流し込まれたフレッシュコンクリート90Bを充填される。このフレッシュコンクリート90Bは、梁のユニット10における鉄筋骨組み11を埋め込んだ状態で固まり、もってこの鉄筋骨組み11をコンクリート90Aに埋もれた状態(
図13参照)にする。なお、この作業は、
図12に示すように、根切り91の縁をなす地面91Aにいる作業者が立ったまま行うことができる。これは、根切り91のサイズを特許文献1に記載された従来の技術よりも小さくすることによって可能となったものである。
【0048】
上述した一連の作業を経ることで、梁のユニット10(
図1参照)は、
図13に示す基礎梁90として完成される。この基礎梁90は、
図13に示すように、この基礎梁90が位置される根切り91の埋め戻しを行うことで、その上面のみが地面91Aに露出され、残りが地面91Aの中に埋まった半埋設の状態(
図2参照)とされる。
【0049】
上述した基礎の施工方法によれば、鉄筋骨組み11と型枠20の組とが一緒になった梁のユニット10を根切り91の中に吊りこんでセットすることで、この根切り91に型枠20を組み建てるためのスペースを設定する必要をなくし、もって基礎梁90を構築する作業における手間およびコストを減らすことができる。この手間およびコストには、例えば根切りをあける際の掘削作業(図示省略)、ならびに、この掘削作業において出た土砂の埋め戻し作業および/または処分作業(図示省略)にかかる手間およびコストが含まれる。また、上記手間およびコストには、例えば根切りにおいて型枠を組み建てるため(図示省略)および/またはフレッシュコンクリートを打設する(図示省略)ためのスペースに設置される足場および/または仮設通路(図示省略)の用意、ならびに、これらの設営作業および撤去作業(図示省略)にかかる手間およびコストが含まれる。また、上記手間およびコストには、例えばフレッシュコンクリートの流れ出しを抑える型枠の支持および/または設置状態の補正をする設備の用意(図示省略)、ならびに、その設営作業および撤去作業(図示省略)にかかる手間およびコストが含まれる。
【0050】
また、上述した基礎の施工方法によれば、根切り91の中にセットされた状態の梁のユニット10から鉄筋骨組み11の上を通る貫20Aを取り除いてこの鉄筋骨組み11の上のスペースを広くすることができる。そして、この鉄筋骨組み11をなす鉄筋を、これら鉄筋ごとに決められる厚さ以上の厚さのコンクリート90Aによって覆われた状態にする(
図13参照)ことを容易にすることができる。
【0051】
また、上述した基礎の施工方法によれば、型枠20は、鉄筋骨組み11に型枠20の組が貫20Aによって引っかかった状態において、この貫20Aから受ける力をフレーム22の全体で支え、もって型枠20の変形を抑える。これにより、鉄筋骨組み11に型枠20の組が貫20Aによって引っかかった状態の梁のユニット10を根切り91の中に吊りこんでセットする際に、その型枠20が変形してセットできない状態となるおそれを減らすことができる。
【0052】
また、上述した基礎の施工方法によれば、金網21を貫20Aが貫くための穴を、メタルラス21Aのストランド21Bに力を加えるという簡単な作業によりあけることができる。そして、この穴を鉄筋骨組み11における施工上の誤差を反映させた適正な位置に位置させ、もって貫20Aによる型枠20の組の鉄筋骨組み11に対する引っかかりをより安定的なものにすることができる。
【0053】
また、上述した基礎の施工方法によれば、ストランド21Bに加えられる力は、フレーム22の横桟22B側に向かう向きとなる。これにより、ストランド21Bに力を与えるツール(例えば
図5に示すシノ付きラチェットレンチ92)を横桟22Bに受け止めさせ、もってこのツールが意図しない部分の金網21に穴をあけるおそれを減らすことができる。
【0054】
また、上述した基礎の施工方法は、上述した梁のユニット10によって好適に実現することができる。
【0055】
本発明は、上述した一実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0056】
(1)本発明における梁のユニットにおいて、型枠の構成は上述したものに限定されない。例えば、型枠のフレームは、横桟がかけ渡される2本の竪桟の間に追加の竪桟が設けられた格子をなすものであってもよい。また、
図3に示す型枠20のフレーム22は、直線状の各竪桟22Aおよび各横桟22Bを平行に配した長方形形状を呈するが、型枠のフレームは、竪桟あるいは横桟に非平行なものを含むものであってもよい。また、型枠は、その竪桟あるいは横桟が曲線をなすことによって形成される曲面をなすものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 梁のユニット
10A なまし鉄線
10B セパレーター
11 鉄筋骨組み
11A シュ筋
11B ハラ筋
11C アバラ筋
11D スペーサー
20 型枠
20A 貫
21 金網
21A メタルラス
21B ストランド
21C 金属平板
21D 縁
22 フレーム
22A 竪桟
22B 横桟
90 基礎梁
90A コンクリート
90B フレッシュコンクリート
91 根切り
91A 地面
91B ステコンクリート
92 シノ付きラチェットレンチ
93 杭