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特許7273412搬送システムの搬送制御方法及び搬送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】搬送システムの搬送制御方法及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/32 20060101AFI20230508BHJP
   B65G 43/00 20060101ALI20230508BHJP
   B65G 47/14 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B65G27/32
B65G43/00 A
B65G47/14 101A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020003871
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021109757
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】599069507
【氏名又は名称】株式会社ダイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】古田 光
(72)【発明者】
【氏名】吉田 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】米倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
(72)【発明者】
【氏名】村田 弘樹
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-091277(JP,A)
【文献】特開平01-313211(JP,A)
【文献】特開平07-267334(JP,A)
【文献】特開2017-036104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/00-27/34
B65G 43/00-43/10
B65G 47/00-47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の搬送装置の第1の搬送経路の出口が第2の搬送装置の第2の搬送経路の入口に接続されてなる搬送システムの搬送制御方法であって、
前記第1の搬送経路上の搬送物の搬送態様のうち搬送能力と相関を備える搬送方向の移動状況値を導出可能な検出信号を出力する第1の検出器と、
前記第2の搬送経路上の前記搬送物の搬送態様のうち前記移動状況値を導出可能な検出信号を出力する第2の検出器とを設け、
前記搬送物の前記第1の搬送経路上の前記移動状況値と前記第2の搬送経路上の前記移動状況値との関係を所定の対応関係に維持するように、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置の少なくとも一方の駆動態様を制御し、
前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置においては、前記移動状況値の目標値がそれぞれ設定され、
前記駆動態様の制御は、
前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置のうちのいずれか一方の搬送装置の前記検出信号から導出された前記移動状況値が前記一方の搬送装置の前記目標値になるように前記一方の搬送装置の駆動態様を制御する一方の制御プロセスと、
前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置のうちの他方の搬送装置の前記検出信号から導出された前記移動状況値が前記一方の搬送装置の前記目標値に対して所定の関係を有する対応値になるように前記他方の搬送装置の駆動態様を制御する他方の制御プロセスとを含み、
前記第1の搬送装置及び前記第2の搬送装置において、前記検出信号から導出された前記移動状況値のうち搬送能力と正の相関を有する移動状況値がこれに対応する前記目標値よりそれぞれ大きい第1の場合であれば、前記第1の搬送装置を前記一方の搬送装置として前記一方の制御プロセスにおいて前記移動状況値を前記目標値に向けて減少させるように制御するとともに、前記第2の搬送装置を前記他方の搬送装置として前記他方の制御プロセスにおいて前記移動状況値を前記対応値になるように制御し、
前記第1の搬送装置及び前記第2の搬送装置において、前記検出信号から導出された前記移動状況値のうち搬送能力と正の相関を有する移動状況値がこれに対応する各前記搬送装置の前記目標値よりそれぞれ小さい第2の場合であれば、前記第2の搬送装置を前記一方の搬送装置として前記一方の制御プロセスにおいて前記移動状況値を前記目標値に向けて増大させるように制御するとともに、前記第1の搬送装置を前記他方の搬送装置として前記他方の制御プロセスにおいて前記移動状況値を前記対応値になるように制御し、
前記一方の制御プロセスと前記他方の制御プロセスとを、前記一方の制御プロセスが先に行われる態様で時間的に前後して実行し、若しくは、前記一方の制御プロセスが先に行われる態様で交互に実行し、或いは、並行して実施することにより
前記第1の場合には、前記第1の搬送装置の前記移動状況値を前記第2の搬送装置の前記移動状況値よりも先に減少させるように制御し、
前記第2の場合には、前記第2の搬送装置の前記移動状況値を前記第1の搬送装置の前記移動状況値よりも先に増大させるように制御する、
ことを特徴とする搬送制御方法。
【請求項2】
第1の搬送経路を有する第1の搬送装置と、前記第1の搬送経路の出口と接続された入口を備える第2の搬送経路を有する第2の搬送装置と、を具備する搬送システムであって、
前記第1の搬送経路上の搬送物の搬送態様のうち搬送能力と相関を備える搬送方向の移動状況値を導出可能な検出信号を出力する第1の検出器と、
前記第2の搬送経路上の前記搬送物の搬送態様のうち前記移動状況値を導出可能な検出信号を出力する第2の検出器と、
前記搬送物の前記第1の搬送経路上の前記移動状況値と前記第2の搬送経路上の前記移動状況値との関係を所定の対応関係に維持するように、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置の少なくとも一方の駆動態様を制御する制御部と、
を具備し、
前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置においては、前記移動状況値の目標値がそれぞれ設定され、
前記駆動態様の制御は、
前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置のうちのいずれか一方の搬送装置の前記検出信号から導出された前記移動状況値が前記一方の搬送装置の前記目標値になるように前記一方の搬送装置の駆動態様を制御する一方の制御プロセスと、
前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置のうちの他方の搬送装置の前記検出信号から導出された前記移動状況値が前記一方の搬送装置の前記目標値に対して所定の関係を有する対応値になるように前記他方の搬送装置の駆動態様を制御する他方の制御プロセスとを含み、
前記第1の搬送装置及び前記第2の搬送装置において、前記検出信号から導出された前記移動状況値のうち搬送能力と正の相関を有する移動状況値がこれに対応する前記目標値よりそれぞれ大きい第1の場合であれば、前記第1の搬送装置を前記一方の搬送装置として前記一方の制御プロセスにおいて前記移動状況値を前記一方の搬送装置の目標値に向けて減少させるように制御するとともに、前記第2の搬送装置を前記他方の搬送装置として前記他方の制御プロセスにおいて前記移動状況値を前記対応値になるように制御し、
前記第1の搬送装置及び前記第2の搬送装置において、前記検出信号から導出された前記移動状況値のうち搬送能力と正の相関を有する移動状況値がこれに対応する前記目標値よりそれぞれ小さい第2の場合であれば、前記第2の搬送装置を前記一方の搬送装置として前記一方の制御プロセスにおいて前記移動状況値を前記目標値に向けて増大させるように制御するとともに、前記第1の搬送装置を前記他方の搬送装置として前記他方の制御プロセスにおいて前記移動状況値を前記対応値になるように制御し、
前記一方の制御プロセスと前記他方の制御プロセスとを、前記一方の制御プロセスが先に行われる態様で時間的に前後して実行し、若しくは、前記一方の制御プロセスが先に行われる態様で交互に実行し、或いは、並行して実施することにより
前記第1の場合には、前記第1の搬送装置の前記移動状況値を前記第2の搬送装置の前記移動状況値よりも先に減少させるように制御し、
前記第2の場合には、前記第2の搬送装置の前記移動状況値を前記第1の搬送装置の前記移動状況値よりも先に増大させるように制御する、
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
前記移動状況値は前記搬送物の搬送速度、搬送密度又は搬送量の少なくともいずれか一つに相関を有する値であり、
前記駆動態様の制御は、前記搬送物の前記第1の搬送経路上の前記移動状況値と前記第2の搬送経路上の前記移動状況値との関係を前記所定の対応関係に維持するように行われる、
請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記第1の検出器は、前記第1の搬送経路上の検出位置を通過する前記搬送物の有無を示す検出信号を出力し、
前記第2の検出器は、前記第2の搬送経路上の検出位置を通過する前記搬送物の有無を示す検出信号を出力する、
請求項2又は3に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記第1の検出器は、前記第1の搬送経路の出口部に設置され、当該出口部は、前記第1の搬送経路の出口端との間で搬送物の数の増減が実質上生じない第1の搬送経路の出口側の領域である、
請求項2-4に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記第2の検出器は、前記第2の搬送経路の入口部に設置され、当該入口部は、前記第2の搬送経路の入口端との間で搬送物の数の増減が実質上生じない第2の搬送経路の入口側の領域である、
請求項2-5のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記第2の検出器は、前記第2の搬送経路の出口部に設置され、当該出口部は、前記第2の搬送経路の出口端との間で搬送物の数の増減が実質上生じない第2の搬送経路の入口側の領域である、
請求項2-6のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記第1の検出器と前記第2の検出器の少なくとも一方の前記検出信号に基づいて前記第1の搬送経路上又は前記第2の搬送経路上の前記搬送物の滞留を検知する搬送物滞留検知手段と、前記搬送物の滞留が検知された場合に、前記搬送物の滞留を解消するための搬送物排除手段と、をさらに具備する、
請求項2-7のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記所定の対応関係とは、前記搬送物の滞留を防止し、前記第1の搬送経路から前記第2の搬送経路への前記搬送物の流れが途絶えないようにする前記移動状況値の関係である、
請求項2-8のいずれか一項に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送システムの搬送制御方法及び搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品などの各種部品を振動により搬送するパーツフィーダが使用されている。このパーツフィーダとしては、ボウルの内底部(部品溜め)から螺旋状のトラックに沿って部品を上昇させるように搬送していくボウル型振動フィーダと、直線状のトラックを備えるリニア型振動フィーダが知られている。そして、上記ボウル型振動フィーダと、リニア型振動フィーダとを連結した搬送システムも多く用いられている。
【0003】
上記搬送システムにおいては、ボウル型振動フィーダからリニア型振動フィーダへ部品を搬送する際の不具合を回避するために、両フィーダ間の部品の滞留(搬送経路上の詰まりなどによるもの)をセンサにより検出し、部品の滞留を加圧エアにより解消する方法が知られている(以下の特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-204518号公報
【文献】特開平1-313211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記搬送システムにおいては、両フィーダ間で部品の滞留が発生すると、センサの出力に応じて加圧エアによってトラック上から部品を意図的に排除し、部品の滞留を解消するようにしているが、このような加圧エアによる部品の排除を行うことにより、部品の搬送効率が低下したり、部品の滞留の発生と解消により部品の搬送態様が急変するため、部品の供給状態の不安定化が生ずるという問題点がある。
【0006】
また、搬送するべき部品の種類を変更すると、部品のサイズ、比重、形状などの相違により、搬送システムにおける搬送態様が変化するため、部品の種類を変更する度に、要求される搬送能力を充足するように、搬送システムの加振機構の駆動周波数や駆動電圧を設定しなければならないため、調整作業が煩雑であり、熟練者が必要であるとともに、調整作業に多大な時間がかかるという問題がある。特に、搬送システムが上記のようにボウル型振動フィーダとリニア型振動フィーダなどのような複数の搬送装置を連結させた構成を有する場合には、複数の搬送装置の間の搬送速度の調整にも熟練が必要で時間がかかるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題を解決するものであり、その課題は、複数の搬送装置が連結された搬送システムの調整作業の容易化と迅速化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の搬送システムの搬送制御方法は、第1の搬送装置の第1の搬送経路の出口が第2の搬送装置の第2の搬送経路の入口に接続されてなる搬送システムの搬送制御方法であって、前記第1の搬送経路上の搬送物の搬送態様のうち搬送能力と相関を備える搬送方向の移動状況値を導出可能な検出信号を出力する第1の検出器と、前記第2の搬送経路上の前記搬送物の搬送態様のうち前記移動状況値を導出可能な検出信号を出力する第2の検出器とを設け、前記搬送物の前記第1の搬送経路上の前記移動状況値と前記第2の搬送経路上の前記移動状況値との関係を所定の対応関係に維持するように、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置の少なくとも一方の駆動態様を制御することを特徴とする。ここで、前記所定の対応関係とは、例えば、前記搬送物の滞留を防止し、前記第1の搬送経路から前記第2の搬送経路への前記搬送物の流れが途絶えないようにする前記移動状況値の関係であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の搬送システムは、第1の搬送経路を有する第1の搬送装置と、前記第1の搬送経路の出口と接続された入口を備える第2の搬送経路を有する第2の搬送装置と、を具備する搬送システムであって、前記第1の搬送経路上の搬送物の搬送態様のうち搬送能力と相関を備える搬送方向の移動状況値を導出可能な検出信号を出力する第1の検出器と、前記第2の搬送経路上の前記搬送物の搬送態様のうち前記移動状況値を導出可能な検出信号を出力する第2の検出器と、前記搬送物の前記第1の搬送経路上の前記移動状況値と前記第2の搬送経路上の前記移動状況値との関係を所定の対応関係に維持するように、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置の少なくとも一方の駆動態様を制御する制御部と、を具備することを特徴とする。ここで、前記所定の対応関係とは、例えば、前記搬送物の滞留を防止し、前記第1の搬送経路から前記第2の搬送経路への前記搬送物の流れが途絶えないようにする前記移動状況値の関係であることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記移動状況値は前記搬送物の搬送速度、搬送密度又は搬送量の少なくともいずれか一つに相関を有する値であり、前記駆動態様の制御は、前記搬送物の前記第1の搬送経路上の前記移動状況値と前記第2の搬送経路上の前記移動状況値との関係を前記所定の対応関係に維持するように行われることが好ましい。なお、上記移動状況値のうち、上記搬送速度(例えば、1秒間当たりに搬送経路上を搬送物が進む距離)と、上記搬送密度(例えば、搬送経路の1m当たりに配置される搬送物の数)との積が、上記搬送量(例えば、1秒間当たりに搬送経路上の特定位置を通過する搬送物の数)に相当する。
【0011】
本発明において、前記駆動態様の制御は、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置のうちのいずれか一方の搬送装置の前記検出信号から導出された前記移動状況値がその目標値になるように前記一方の搬送装置の駆動態様を制御する一方の制御プロセス(例えば、後述の第1制御プロセス)と、前記第1の搬送装置と前記第2の搬送装置のうちの他方の搬送装置の前記検出信号から導出された前記移動状況値が前記目標値に対して所定の関係を有する対応値になるように前記他方の搬送装置の駆動態様を制御する他方の制御プロセス(例えば、後述の第2制御プロセス)とを含むことが好ましい。これによれば、第1の搬送装置の上記移動状況値の目標値若しくは対応値への制御と、第2の搬送装置の上記移動状況値の対応値若しくは目標値への制御とを別々に行うことができるので、それぞれの制御プロセスを容易且つ迅速に行うことができる。この場合において、前記一方の制御プロセスの後に前記他方の制御プロセスが実行されることが望ましい。これによれば、一方の搬送装置の移動状況値の上記移動状況値を目標値に設定した後に、この目標値に対応する対応値に他方の搬送装置の上記移動状況値を設定することにより、さらに容易且つ迅速に制御できる。
【0012】
この場合において、前記検出信号から導出した前記移動状況値のうち前記搬送能力と正の相関を備える前記移動状況値がこれに対応する前記目標値より大きければ、前記第1の搬送装置を前記一方の搬送装置とし、前記第2の搬送装置を前記他方の搬送装置とすることが望ましい。また、前記検出信号から導出した前記移動状況値のうち前記搬送能力と正の相関を備える前記移動状況値がこれに対応する前記目標値より小さければ、前記第2の搬送装置を前記一方の搬送装置とし、前記第1の搬送装置を前記他方の搬送装置とすることが望ましい。これによれば、上記移動状況値が目標値より小さい場合には、駆動態様の制御によって上記移動状況値を目標値に向けて増大させていくこととなるため、下流側の第2の搬送装置の上記移動状況値を先に増大させるように制御することによって、上流側の第1の搬送装置の搬送能力よりも下流側の第2の搬送装置の搬送能力を高めやすくなるので、下流側の第2の搬送装置の入口部近傍で部品が滞留し易くなるという問題の発生を抑制できる。一方、上記移動状況値が目標値より大きい場合には、駆動態様の制御によって上記移動状況値を目標値に向けて減少させていくこととなるため、上流側の第1の搬送装置の上記移動状況値を先に減少させるように制御することによって、第1の搬送装置の搬送能力を第2の搬送装置の搬送能力よりも抑制しやすくなるので、下流側の第2の搬送装置の入口部近傍で部品が滞留し易くなるという問題の発生を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記第1の検出器は、前記第1の搬送経路上の検出位置を通過する前記搬送物の有無を示す検出信号を出力し、前記第2の検出器は、前記第2の搬送経路上の検出位置を通過する前記搬送物の有無を示す検出信号を出力することが好ましい。この場合において、前記移動状況値の検出値は、前記第1の検出器及び前記第2の検出器の検出信号から導出された前記搬送物の前記検出位置の通過時間、若しくは、前後の前記搬送物の間の通過時刻間隔に基づいて導出されることが望ましい。
【0014】
本発明において、前記第1の検出器は、前記第1の搬送経路の出口部に設置されることが好ましい。これは、第2の搬送経路の入口部へ導入される搬送物の数は第1の搬送経路の出口部の搬送物の数に対して増減しないと考えられるため、第1の搬送経路上の搬送物の移動状況値と第2の搬送経路上の搬送物の移動状況値との関係を知るための基準値としては、第1の搬送経路の出口端と搬送物の数が変化しない上記第1の搬送経路の出口部の移動状況値の検出値を用いることが好ましいからである。ここで、上記出口部とは、第1の搬送経路の出口端との間で搬送物の数の増減が実質上生じない第1の搬送経路の出口側の領域を言う。
【0015】
本発明において、前記第2の検出器は、前記第2の搬送経路の入口部に設置されることが好ましい。これは、第1の搬送経路の出口部から導出される搬送物の数は第2の搬送経路の入口部の搬送物の数に対して増減しないと考えられるため、第1の搬送経路上の搬送物の移動状況値と第2の搬送経路上の搬送物の移動状況値との関係を知るための基準値としては、第2の搬送経路の入口端と搬送物の数が変化しない上記第2の搬送経路の入口部の移動状況値の検出値を用いることが好ましいからである。ここで、上記入口部とは、第2の搬送経路の入口端との間で搬送物の数の増減が実質上生じない第2の搬送経路の入口側の領域を言う。
【0016】
本発明において、前記第2の検出器は、前記第2の搬送経路の出口部に設置されることが好ましい。これは、第2の搬送経路の出口部の搬送物の数は、搬送システムにより最終的に供給される搬送物の数を意味する場合が多いので、第2の搬送経路の出口端と搬送物の数が変化しない第2の搬送装置の出口部の検出値を第2の搬送装置の移動状況値の基準として用いることにより、最終的な搬送物の供給状態に基づいて、第2の搬送装置の搬送能力を高めるように制御することが容易になるため、搬送システム全体の搬送能力を好適化し易くなる。
【0017】
本発明において、前記搬送システムは、前記第1の検出器と前記第2の検出器の少なくとも一方の前記検出信号に基づいて前記第1の搬送経路又は第2の搬送経路上の前記搬送物の滞留を検知する搬送物滞留検知手段と、前記搬送物の滞留が検知された場合に、前記搬送物の滞留を解消するための搬送物排除手段と、をさらに具備することが好ましい。この場合において、前記第2の検出器の検出信号に基づく前記滞留検知手段により前記搬送物の滞留が検知された場合に、前記第2の検出器の前記検出位置よりも上流側であって前記第1の検出器の前記検出位置よりも下流側において、前記搬送物を搬送経路上から除去する前記搬送物排除手段をさらに具備することが望ましい。このとき、前記搬送物排除手段によって排除された前記搬送物は、前記第1の搬送装置の上流側へ戻されることがさらに望ましい。搬送物排除手段としては、例えば、搬送物を流体圧によって搬送経路上から排除する構成が挙げられる。また、搬送物排除手段は、搬送状態そのものを停止するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、複数の搬送装置が連結された搬送システムの調整作業の容易化と迅速化、並びに、搬送効率の好適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る搬送制御方法及び搬送システムの実施形態を構成する第1の搬送装置(ボウル型フィーダ)と第2の搬送装置(リニア型フィーダ)の構造を示す平面図(a)及び正面図(b)である。
図2】同実施形態の右側面図である。
図3】同実施形態の第1の搬送装置と第2の搬送装置の搬送経路の接続領域を拡大して示す斜視図である。
図4】同実施形態の上記接続領域を図4とは異なる方向から見た様子を拡大して示す斜視図である。
図5】同実施形態の第2の搬送装置の搬送経路の出口領域を拡大して示す斜視図である。
図6】同実施形態の制御系の構成を模式的に示す概略構成図である。
図7】同実施形態の各センサの検出信号11E,12E,12Fの波形を示す図である。
図8】同実施形態の動作プログラムの一例を示す概略フローチャートである。
図9】同実施形態の搬送能力制御の動作を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して本発明に係る搬送制御方法及び搬送システムの実施形態について詳細に説明する。最初に、図1及び図2を参照して、実施形態の搬送システム10の第1の搬送装置11と第2の搬送装置12の構成について説明する。
【0021】
図1(a)に示す平面図、図1(b)に示す正面図、及び、図2に示す右側面図に示すように、搬送システム10は、設置台10a上に図示しない防振材(ばねやゴムなど)を介して支持台10bが取り付けられ、この支持台10b上に、第1の搬送装置11と第2の搬送装置12が設置されている。なお、設置台10aは省略することもできる。第1の搬送装置11は、ボウル型の振動フィーダであり、垂直な軸線周りにねじり振動を発生する加振機11aと、この加振器11aに接続されて振動するボウル状の振動体11bとを有する。上記ねじり振動は、水平面に対して所定の傾斜角を有する方向に向けた軸線周りの往復振動である。振動体11bは、多数の搬送物Wを収容する内底部11cを備えるとともに、この内底部11cから螺旋状に立ち上がる第1の搬送経路11dを備える。図示例では、二本の搬送経路が螺旋状に形成されるとともに、途中で相互に合流する経路態様を有する。
【0022】
螺旋状の第1の搬送経路11dは、上記内底部11cに設けられた入口端11dxと、振動体11bの外周上縁に形成され、第2の搬送装置12に接続される出口端11dyとを有する。第1の搬送経路11dは、図4に示すように、幅広で多数の搬送物Wが重なるように配置された状態(図示せず)で斜め上方へ向けて搬送し、下流側へ向けて幅を徐々に低下させることにより、一部の搬送物Wを内底部11cに落下させて除去していくことで徐々に搬送物Wの重なりを低減させていく上流側搬送路部11d1と、搬送物Wがほぼ一列に搬送方向に配列された状態で搬送されていく下流側搬送路部11d2とを備える。下流側搬送路部11d2の先端は上記出口端11dyとされる。第1の搬送経路11d(下流側搬送路部11d2)のうちの上記出口端11dyに近い領域が出口部11d3となっている。この出口部11d3は、搬送経路上の複数の搬送物Wが重なり状態がなく一列に配列した状態で搬送され、通常の搬送状態では、いずれの搬送物Wも搬送経路上から排除されることのない領域である。
【0023】
一方、第2の搬送装置12は、直線状の搬送経路を備えるリニア型振動フィーダであり、搬送方向に沿って水平面に対して傾斜した斜め上方へ向けた往復振動を発生する加振器12aと、この加振器12aに接続されて振動する振動体12bとを有する。振動体12bは、搬送物Wを直線状に搬送する第2の搬送経路12dを備える。振動体12bの振動は、搬送方向の斜め上方に向けた往復振動である。第2の搬送経路12dは、入口端12dxから出口端12dyまで延在し、搬送物Wを搬送しながら、搬送物Wの姿勢を揃えて整列した状態にする。第2の搬送経路12は、入口端12dxに近い領域が入口部12d1となっている。この入口部12d1は、入口端12dxに導入された搬送物Wの配列が変化せず、いずれの搬送物Wも搬送経路から排除されることもなく、通常の搬送状態では、そのままの配列状態で搬送されていく領域である。また、この入口部12d1の下流側には、搬送物Wの姿勢等が判別され、その結果によっては姿勢が変更されたり、搬送物W自体が排除されたりする整列部12d2が設けられる。また、この整列部12d2のさらに下流側には、搬送経路上の複数の搬送物Wが整列した状態で搬送され、いずれの搬送物Wも搬送経路上から排除されることのない領域である出口部12d3が設けられる。この出口部12d3では、整列された各搬送物Wの姿勢が変化しないように、搬送経路の上方が閉鎖された暗渠構造とされる場合がある。
【0024】
なお、以上の出口部11d3、入口部12d1、出口部12d3において搬送物Wの配列状態が変化せず、搬送物Wが搬送経路上から排除されないという条件は、後述する搬送物Wの滞留時に行われる意図的な搬送物Wの排除動作(エアーオーバーフロー)が行われる場合を含まない。すなわち、通常の搬送物Wの配列動作や整列動作においては、実質的に配列状態や整列状態が変化せず、搬送物Wが搬送経路上から排除されない場合を言う。
【0025】
第1の搬送装置11には、搬送物Wを検知する第1の検出器11eが設置される。この第1の検出器11eは、図示例では、搬送物Wが搬送経路上の所定の検出位置を通過しているか否かを検知する通過センサであり、例えば、透過型光センサなどの光検出器によって構成される。ここで、第1の検出器11eは、搬送経路上の搬送物Wの搬送方向の移動状況を示す移動状況値を導出可能な検出信号11Eを出力するように構成される。ここで、上記移動状況値は、搬送システム10の搬送能力と相関を有する値である。このとき、搬送能力とは、搬送物の搬送速度や搬送量、搬送効率などを言う。上記移動状況値は、例えば、搬送物Wの搬送速度V、搬送物Wの単位時間当たりの搬送量M、搬送物Wの搬送経路上の搬送密度D、後述する時間T1、T2などが挙げられる。本実施形態においては、上記移動状況値は、時間T1,T2、或いは、搬送物Wの搬送経路上の搬送方向の搬送速度Vとされる。
【0026】
上記第1の検出器11eの第1の搬送経路11d上の検出位置は、特に限定されるものではないが、図示例では、第1の搬送経路11dの上記出口部11d3内に設けられる。このようにすると、第1の搬送装置11から第2の搬送装置12へ導入される搬送物Wの配列状態(上記出口端11dyから上記入口端12dxへ移動するときの配列状態)と実質的に同じ配列状態にある搬送物Wの移動状況が第1の搬送経路11d上において第1の検出器11eによって検出されることとなる。したがって、第2の搬送経路12d上の搬送物Wの移動状況との関係を考慮する場合に、対比すべき第1の搬送経路11d上の搬送物Wの移動状況の検出位置としては、最も適切な位置となる。
【0027】
上記検出信号11Eの例は、図7(a)に示される。検出信号11Eは、上記検出位置において搬送物Wが存在するか否かを示すものである。図示例では、検出位置において搬送物Wが通過中であれば遮光されて検出信号11EがONになり、検出位置に搬送物Wが存在しなければ遮光しないのでOFFになる。このとき、搬送物Wの通過を示すON信号の継続時間T1、或いは、或る搬送物Wの通過開始時刻から次の搬送物Wの通過開始時刻までの時間間隔T2は、いずれも、搬送物Wの搬送経路上の搬送方向の搬送速度Vに対して逆比例の関係を示す。このため、上記検出信号11Eから上記時間T1若しくはT2を導出し、或いは、これらの時間T1、T2から搬送速度Vを導出し、これらのいずれかを、搬送能力と相関のある移動状況値とする。
【0028】
一方、第2の搬送装置12には、第2の検出器12e,12fが設置される。この第2の検出器12e,12fは、図示例では、搬送物Wが搬送経路上の所定の検出位置を通過しているか否かを検知する通過センサであり、例えば、透過型光センサなどの光検出器によって構成される。ここで、第2の検出器12e,12fは、搬送経路上の搬送物Wの搬送方向の移動状況を示す移動状況値を導出可能な検出信号12E,12Fを出力するように構成される。ここで、上記移動状況値は、搬送システム10の搬送能力と相関を有する値である。このとき、搬送能力とは、搬送物の搬送速度や搬送量、搬送効率などを言う。上記移動状況値は、例えば、搬送物Wの搬送速度V、搬送物Wの単位時間当たりの搬送量M、搬送物Wの搬送経路上の搬送密度D、後述する各時間T3,T4などが挙げられる。本実施形態においては、上記移動状況値は、後述する時間T3、T4や、搬送物Wの搬送経路上の搬送方向の搬送速度Vとされる。
【0029】
上記第2の検出器12eの第2の搬送経路12d上の検出位置は、特に限定されるものではないが、図示例では、第2の搬送経路12dの上記入口部12d1内に設けられる。このようにすると、第2の搬送装置12へ導入される搬送物Wの配列状態(上記出口端11dyから上記入口端12dxへ移動するときの配列状態)と実質的に同じ配列状態にある搬送物Wの移動状況が第2の搬送経路12d上で第2の検出器12eによって検出されることとなる。したがって、第1の搬送経路11d上の搬送物Wの移動状況との関係を考慮する場合に、対比すべき第2の搬送経路12d上の搬送物Wの移動状況の検出位置としては、最も適切な検出位置となる。
【0030】
上記検出信号12Eの例は、図7(b)に示される。検出信号12Eは、上記検出位置において搬送物Wが存在するか否かを示すものである。図示例では、検出位置において搬送物Wが通過中であれば遮光されて検出信号12EがONになり、検出位置に搬送物Wが存在しなければ遮光しないのでOFFになる。このとき、搬送物Wの通過を示すON信号の継続時間T3、或いは、或る搬送物Wの通過開始時刻から次の搬送物Wの通過開始時刻までの時間間隔T4は、いずれも、搬送物Wの搬送経路上の搬送方向の搬送速度Vに対して逆比例の関係を示す。このため、上記検出信号12Eから上記時間T3若しくはT4を導出し、或いは、これらの時間T3、T4から搬送速度Vを導出し、これらのいずれかを、搬送能力と相関のある移動状況値とする。
【0031】
第2の検出器12eは、本実施形態の場合、その検出位置における搬送物Wの滞留を検知するセンサ(搬送物滞留検知手段のセンサ)としても用いられる。この搬送物滞留検知手段は、図7(c)に示すように、搬送物Wが検出位置を通過する時間が増大し、時間T3若しくはT4が或る閾値を越えて、T3′や間隔T4′に増大すると、上記検出位置において搬送物Wの滞留を検知する。この場合、上記閾値は、通常の時間T3や間隔T4に対する時間T3′や間隔T4′の比率に対応するα=α・T3′/T3、β=β・T4′/T4と対比する値としてもよく、通常の時間T3や間隔T4に対する時間T3′や間隔T4′の差分に対応するγ=γ・(T3′-T3)、δ=δ・(T4′-T4)と対比する値としてもよい。ここで、α、β、γ、δはそれぞれ係数(定数)である。いずれにしても、上記比率や差分が一定の閾値を越えると、搬送物Wが滞留したことが検知される。この場合、上記α、β、γ、δでは、閾値が一定であっても、時間T3やT4が大きくなるほど、滞留が検知される時間T3′や間隔T4′も大きくなるため、搬送物Wの搬送速度Vが高いほど、滞留が検知されやすくなり、搬送速度Vが遅くなるほど、滞留が検知されにくくなる。
【0032】
上記のようにすると、搬送速度Vの大小により滞留の検知されやすさ(滞留を検知する感度)が自動的に調整されるため、高速搬送時においては、搬送物Wの滞留による検知を迅速に行うことにより、搬送物の溢れを抑制することができ、また、低速搬送時においては、搬送物Wの滞留を検知されにくくし、滞留を解消するための搬送物の排除や装置の停止が頻繁に発生し、搬送物Wの供給に支障が生ずることを防止することができる。なお、上記の搬送物Wの滞留の検知の手法は一例に過ぎず、種々の構成を採用することができる。例えば、搬送速度Vに応じて閾値を変更するようにしても構わない。
【0033】
上記搬送物滞留検知手段により滞留が検知されると、図4に示す噴出口12gから加圧エア等の流体が噴出し、その流体圧が搬送物Wを搬送経路(図示例では第2の搬送経路12dの入口部12d1)上から排除する。振動体12には、上記入口部12d1の下方に傾斜面12hが形成され、排除された搬送物Wは傾斜面12hを経て第1の搬送装置11の振動体11bの内部に戻される。なお、噴出口12gから流体圧を与える搬送物排除手段は、例えば、コンプレッサやガスボンベ等の流体圧源、金属管や樹脂チューブなどの流体配管、電磁弁等のバルブ機構、バルブ機構を開閉制御する制御器(コントローラ)等によって構成できる。上記搬送物Wの排除は、例えば、所定間隔で繰り返し複数回行われてもよく、所定時間で1回だけ行われてもよい。また、搬送物排除手段としては、第1の搬送装置11の稼働状態を一時的に停止してもよい。
【0034】
上記第2の検出器12fの第2の搬送経路12d上の検出位置は、特に限定されるものではないが、図示例では、第2の搬送経路12dの上記出口部12d3内に設けられる。このようにすると、第2の搬送経路12から送り出される搬送物Wの配列状態(ここでは整列状態、すなわち、上記出口端12dyから図示しない下流側に接続される検査装置や実装装置などへ供給されるときの搬送物Wの供給状態)と実質的に同じ配列状態(整列状態)にある搬送物Wの移動状況が第2の搬送経路12d上で第2の検出器12fによって検出されることとなる。したがって、上記の供給状態を最適化するための制御に用いる場合には、最も適切な検出位置となる。
【0035】
上記検出信号12Fの例は、図7(d)に示される。検出信号12Fは、上記検出位置において搬送物Wが存在するか否かを示すものである。図示例では、検出位置において搬送物Wが通過中であれば遮光されて検出信号12FがONになり、検出位置に搬送物Wが存在しなければ遮光しないのでOFFになる。このとき、搬送物Wの通過を示すON信号の継続時間T5、或いは、或る搬送物Wの通過開始時刻から次の搬送物Wの通過開始時刻までの時間間隔T6は、いずれも、搬送物Wの搬送経路上の搬送方向の搬送速度Vに対して逆比例の関係を示す。このため、上記検出信号12Fから上記時間T5若しくは間隔T6を導出し、或いは、これらの時間T5、T6から搬送速度Vを導出し、これらのいずれかを、搬送能力と相関のある移動状況値とする。なお、この検出信号12Fは第2の搬送経路12dの出口部12d3の移動状況を示すので、この移動状況から搬送システム10の最終的な供給状態或いは供給効率を導出することができる。例えば、図7(e)に示す検出信号12Fでは、図7(d)に示す場合よりも搬送密度Dが高く(1に近く)、単位時間当たりの搬送量(供給される搬送物Wの数)が多くなるため、搬送効率が高いことがわかる。なお、図3図5では、搬送物Wは離散状態に配列された様子が描かれているが、実際には、搬送密度Dは1に近く、搬送物Wの間にはほとんど隙間がない状態で搬送されるようになっている。後述する通常搬送制御において、搬送密度Dが上述のように1に近い場合には、上記移動状況値は、搬送密度D以外の搬送速度Vや搬送量Mとすることが好ましい。
【0036】
図6には、本実施形態の制御系の構成を示す。搬送システム10は、コンピュータや回路装置などで構成される制御部10Xを備え、この制御部10Xによって、上記加振器11a、12aに対する駆動態様を制御し、第1の搬送装置11と第2の搬送装置12の搬送態様を変更、調整することができるように構成される。より具体的に述べると、上記第1の検出器11e及び第2の検出器12e,12fの検出信号11E,12E,12Fは、上記制御部10Xに出力される。また、制御部10Xの制御信号X1,X2は、コントローラ11x、12xに送出される。コントローラ11xは上記加振器11aの制御回路を構成し、コントローラ12xは上記加振器12aの制御回路を構成する。
【0037】
図8は、本実施形態における搬送システム全体の搬送制御方法の例を示す概略フローチャートである。この例では、一つの動作プログラムをコンピュータによって実行するようにした様子を示しているが、本発明はこのような制御態様に限定されるものではない。制御部10Xが動作を開始すると、まず、各所の制御に必要な設定情報を読み込む。この設定情報には、コントローラ11x、12xを制御するための既定の駆動周波数や駆動電圧などの設定値が含まれる。このとき、搬送物Wの種類ごとに設定値を記憶し、操作入力によって設定値を切り替えるようにしてもよい。また、後述する通常搬送制御と、搬送能力制御のそれぞれの制御時の駆動上及び制御上に必要な設定値をそれぞれ含むことが望ましい。各設定値は、操作によりそれぞれ変更することができるように構成される。
【0038】
次に、搬送起動操作が行われると、第1の搬送装置及び第2の搬送装置が起動し、振動体11b内の搬送物Wが第1の搬送経路11dに沿って搬送され、やがてほぼ一列に配列された状態で、出口部11d3まで送られる。その後、搬送物Wは出口部11d3から第2の搬送経路12dの入口部12d1に導入される。第2の搬送経路12dの整列部12d2ではさらに搬送物Wの姿勢検出等が行われ、やがて既定の姿勢で一列に整列された状態で、出口部12d3に送られる。出口端12dyでは整列された搬送物Wが検査装置や実装装置などに供給される。
【0039】
起動当初の搬送状態の制御は、所定の駆動態様、例えば、所定の駆動周波数と駆動電圧で行われる「通常搬送制御」となる。このとき、振動センサの検出信号を用いたフィードバック制御を行うようにしてもよい。また、搬送物Wの種類ごとに予め用意された複数の駆動態様(駆動周波数及び駆動電圧)の中から適宜に選択して適用するようにしてもよい。搬送状態の制御が行われている際に搬送停止操作が行われると、或いは、制御部10Xにおいて用意された所定の条件が満たされて緊急停止が生ずると、駆動が停止されて搬送も止まる。その後、終了操作が行われれば、動作プログラムは終了する。終了操作が行われなければ、再び設定値操作や搬送起動操作を待つこととなる。
【0040】
上記通常搬送制御が行われているときに搬送能力制御操作(能力追尾ON)が行われると、或いは、所定の条件が満たされることで制御部10Xによって自動的に搬送能力制御への移行(能力追尾ON)が生ずると、「搬送能力制御」に移行する。この搬送能力制御は、上述の第1の検出器11e及び第2の検出器12e又は12fを用いて搬送物Wの搬送状態を検出し、この搬送状態に応じて第1の搬送装置11と第2の搬送装置12の駆動態様を制御するものである。より具体的には、検出信号11E及び12E又は12Fから搬送物Wの搬送方向の移動状況値を導出し、この移動状況値に応じて駆動周波数や駆動電圧を調整する。この搬送能力制御の具体例(一例)は、図9の概略フローチャートに示されている。
【0041】
搬送能力制御に切り替えられると、図9に示すように、当初は初期設定値(制御切替前の設定値)に対応する駆動態様で制御が行われる。その後、上記第1の検出器11e及び第2の検出器12e又は12fの検出信号11E,12E又は12Fにより搬送態様が導出される。この搬送態様の導出により、最初に制御される搬送装置が選択される。本実施形態の場合、搬送能力制御には、搬送能力に関する目標値が第1の搬送装置11と第2の搬送装置12のそれぞれについて設定されており、これらの目標値は、上記の導出された搬送態様(移動状況値)と比較される。
【0042】
例えば、導出された搬送態様(移動状況値)を搬送物Wの搬送速度V1(第1の搬送装置の搬送速度)とV2(第2の搬送装置の搬送速度)とすれば、これらに対応する目標値V01、V02に対する大小が判定される。本実施形態では、移動状況値として搬送能力と正の相関を備える搬送速度を用いているので、V1<V01、V2<V02であれば、現状の搬送態様よりも目標値が高く、全体として搬送システムの搬送能力を高めることとなる。この搬送能力の向上を図る際の搬送物Wの滞留を防止するために、最初に制御する搬送装置(一方の搬送装置)を第2の搬送装置12とする。このとき、第2の搬送装置12の搬送能力を高めるべく、第2の搬送装置12を対象とし、搬送速度V2を目標値V02に引き上げるように第1制御プロセス(上記一方の制御プロセス)を実行し、第2の搬送装置12に対する駆動態様を変更する。このとき、制御は通常のフィードバック制御で行うことができる。例えば、搬送速度V2がV02になるように駆動電圧を引き上げる。
【0043】
上記のように搬送速度V2が目標値V02に達すると、次に、第2制御プロセス(上記他方の制御プロセス)が開始される。今度は、第1の搬送装置11(他方の搬送装置)の搬送速度V1が、第2の搬送装置12の搬送速度(目標値)V02に対して予め設定された望ましい対応値V11になるように、第1の搬送装置11に対する駆動態様を制御する。このとき、制御は通常のフィードバック制御で行うことができる。例えば、搬送速度V1がV11になるように駆動電圧を引き上げる。その後、第1制御プロセスと第2制御プロセスは、交互に繰り返し実行され、常に搬送速度V2が上記目標値V02に、搬送速度V1が上記対応値V11に維持されるように制御される。
【0044】
一方、V1>V01、V2>V02であれば、現状の搬送態様よりも目標値が低く、本実施形態では前述のように、移動状況値として搬送能力と正の相関を備える搬送速度を用いているため、全体として搬送システムの搬送能力を低下させることとなる。この搬送能力の低下を図る際の搬送物Wの滞留を防止するために、最初に制御する搬送装置(一方の搬送装置)を第1の搬送装置11とする。このとき、第1の搬送装置11の搬送能力を低下させるべく、第1の搬送装置11を対象とし、搬送速度V1を目標値V01に引き下げるように第1制御プロセスを実行し、第1の搬送装置11に対する駆動態様を制御する。このとき、制御は通常のフィードバック制御で行うことができる。例えば、搬送速度V1がV01になるように駆動電圧を引き上げる。
【0045】
上記のように搬送速度V1が目標値V01に達すると、次に、第2制御プロセスが開始される。今度は、第2の搬送装置12(他方の搬送装置)の搬送速度V2が、第1の搬送装置11の搬送速度V01に対して予め設定された望ましい対応値V12になるように、第2の搬送装置12に対する駆動態様を変更する。このとき、制御は通常のフィードバック制御で行うことができる。例えば、搬送速度V2がV12になるように駆動電圧を引き上げる。その後、第1制御プロセスと第2制御プロセスは、交互に繰り返し実行され、常に搬送速度V1が上記目標値V01に、搬送速度V2が上記対応値V12に維持されるように制御される。
【0046】
搬送能力制御は、搬送能力制御解除操作(能力追尾OFF)が行われ、或いは、自動的に搬送能力制御解除(能力追尾OFF)が生ずると、上記通常搬送制御に戻る。このとき、搬送能力制御解除操作(能力追尾OFF)が行われ、或いは、自動的な搬送能力制御解除(能力追尾OFF)が生じたときの駆動態様(駆動集周波数や駆動電圧などの設定値)を保ったまま、通常搬送制御が実施されることが好ましい。
【0047】
上記の搬送能力制御の態様は一例であり、例えば、搬送物Wの滞留を考慮しなければ、上記一方の搬送装置と他方の搬送装置をそれぞれ固定して制御してもよい。また、上記の例では、第1制御プロセスと第2制御プロセスで搬送速度が目標値や対応値と一致したときに次のプロセスに進むようにしているが、一回のプロセスにおける搬送速度の変更量を制限し、第1制御プロセスと第2制御プロセスを交互に実施してもよい。また、両プロセスを並行して実施するように構成してもよい。なお、異なる搬送装置の間の上記目標値V01,V02と上記対応値V11,V12の関係は、搬送システムごとに予め最適化されることが望ましい。例えば、目標値V01と対応値V12、若しくは、目標値V02と対応値V11はそれぞれ同一でもよく、或いは、第1の搬送装置11の目標値より第2の搬送装置12の対応値は多少大きく、或いは、僅かに小さく、第1の搬送装置11の対応値は第2の搬送装置12の目標値より多少小さく、或いは、僅かに大きくなっていても構わない。このような関係は、実際の搬送状況に応じて設定される。
【0048】
上記搬送能力制御において、第2の搬送装置12に設置される第2の検出器12eと12fはいずれを用いても構わない。また、両方を用いて最適な制御を行うようにしてもよい。例えば、第2の検出器12eを用いて、第2の搬送装置12における搬送物Wの移動状況値と、第1の検出器11eの検出する第1の搬送装置11における搬送物Wの移動状況値とを比較して搬送能力を最適に制御するとともに、第2の検出器12fを用いて、第2の搬送経路12dの出口部12d3(出口端12dy)における搬送物Wの供給状態に応じて、上記目標値や対応値を調整(最適化)するようにしてもよい。
【0049】
第2の検出器12eは、本実施形態の場合、搬送システムの搬送物Wの滞留を検知するためのセンサとしても用いられる。搬送物Wの滞留は、搬送が停止された場合、搬送物Wの供給量が下流側の検査装置や実装装置の処理量を上回った場合、上記搬送速度V1が上記搬送速度V2を過剰に上回った場合、出口部12d3の暗渠状の搬送路に搬送物Wが引っ掛かった場合などに生ずる。このような搬送物Wの滞留は、第2の検出器12eの検出信号12Eを用いて図7(b)及び(c)に示す前述の方法で検知される。このときの検知の感度は前述のように搬送速度V1,V2の大小に応じて自動的に調整されることが好ましい。この検知感度の自動的な調整は、例えば、図8に示すように、搬送制御の態様が変更されるごとに行うようにしてもよく、搬送量や搬送速度が大きく変更されるごとに行われるようにしてもよい。
【0050】
搬送物Wの滞留が検知されると、噴出口12gから与えられる加圧エア等の流体圧によって第2の搬送経路12d上の搬送物Wの排除が断続的に、或いは、連続的に実施される。また、上記のような搬送物Wの滞留を検知する機能は、第1の検出器11eや第2の検出器12fの検出信号11E、12Fの検出信号を用いるようにしてもよい。この場合、搬送物Wの滞留がどの範囲で生じているかを複数個所で検知するようにすれば、搬送物Wの滞留状態に応じて、搬送物排除手段の排除態様(例えば、流体圧の断続的な供給か連続的な供給か)を選択したり、搬送そのものを停止するかを判定したりすることが容易になる。
【0051】
なお、本発明の搬送制御方法及び搬送システムは、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態では、ボウル型振動フィーダとリニア型振動フィーダを用いているが、本発明はこのような組み合わせに限らず、リニア型フィーダ同士の組み合わせでもよく、また、振動により搬送する装置に限らず、ベルトコンベアやエアーシュートなどの他の原理により搬送する装置にも用いることができる。また、上記搬送能力制御としては、前述したような、第1の搬送装置11と第2の搬送装置12の双方の駆動態様を制御する場合に限らず、第1の搬送装置11と第2の搬送装置12のいずれか一方のみの駆動態様を制御しても構わない。
【符号の説明】
【0052】
10…搬送システム、10a…設置台、10b…支持台、10X…制御部、11…第1の搬送装置、11a…加振機、11b…振動体、11c…内底部、11d…第1の搬送経路、11dx…入口端、11dy…出口端、11d1…上流側搬送路部、11d2…下流側搬送路部、11d3…出口部、11e…第1の検出器、11x…コントローラ、12…第2の搬送装置、12a…加振機、12b…振動体、12d…第2の搬送経路、12dx…入口端、12dy…出口端、12d1…入口部、12d2…整列部、12d3…出口部、12e,12f…第2の検出器、12x…コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9