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特許72734146-シリル置換イソキノリン配位子を含有する有機発光材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】6-シリル置換イソキノリン配位子を含有する有機発光材料
(51)【国際特許分類】
   C07F 19/00 20060101AFI20230508BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20230508BHJP
   C07C 49/92 20060101ALI20230508BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20230508BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230508BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C07F19/00
C07F7/10 S
C07C49/92
C09K11/06 660
H05B33/14 B
C07F15/00 E CSP
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020082875
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2020186234
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】201910373305.X
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519333413
【氏名又は名称】北京夏禾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】路 楠楠
(72)【発明者】
【氏名】代 志洪
(72)【発明者】
【氏名】張 翠芳
(72)【発明者】
【氏名】張 奇
(72)【発明者】
【氏名】▲クアン▼ 志遠
(72)【発明者】
【氏名】夏 伝軍
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0077350(KR,A)
【文献】特表2009-539768(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0110934(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103204880(CN,A)
【文献】特開2013-121957(JP,A)
【文献】国際公開第02/044189(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0190915(US,A1)
【文献】特開2020-186235(JP,A)
【文献】特開2020-186236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/00
C07F 19/00
C07F 7/10
C07C 49/24
C09K 11/06
H10K 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
M(L(L(Lの一般式を有する金属錯体。
(L、LおよびLは、それぞれ金属Mと配位する第1配位子、第2配位子および第3配位子であり、前記金属Mは、Irから選ばれ、
、LおよびLは、結合して多座配位子を形成していてもよく、
mは、1または2であり、nは、1または2であり、qは、0または1であり、m+n+qは、金属Mの酸化状態に等しく、
mが1より大きい場合、Lは、同一または異なってもよく、nが1より大きい場合、Lは、同一または異なってもよく、
前記第1配位子Lは、式1で表され、
【化1】
~Rは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
~Xは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、
は、独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~9のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~9のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のヘテロアリール基、ニトリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
式1中、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよく、
配位子Lにおける水素は、重水素で一部または全部置換されてもよく、
は、式2で表される構造を有し、
【化2】
~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~9のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~9のシクロアルキル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
は、モノアニオン性二座配位子であり、Lは、
【化3】
の構造から選ばれ、
およびRは、一置換、複数置換、または無置換を表してもよく、
およびRは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~9のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~9のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数2~15のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のヘテロアリール基、ニトリル基、チオ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
の構造において、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよく、
前記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基および/またはヘテロアリール基は、重水素、ハロゲン、無置換の炭素原子数1~9のアルキル基、無置換の環炭素原子数3~9のシクロアルキル基、無置換の炭素原子数6~20のアリール基、無置換の炭素原子数3~20のヘテロアリール基、無置換の炭素原子数3~9のアルキルシリル基、無置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、およびこれらの組合せから選ばれる1つまたは複数により置換されることができる。)
【請求項2】
~Xは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、Rは、独立して、水素、重水素、ハロゲン、炭素原子数1~のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、ニトリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項に記載の金属錯体。
【請求項3】
~Xは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、Rは、独立して、水素、フッ素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、ニトリル基からなる群から選ばれる、請求項に記載の金属錯体。
【請求項4】
および/またはXは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、前記Rは、独立して水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリール基、およびこれらの組合せから選ばれ、
、Xは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、前記Rは、独立して水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~のアルキル基からなる群から選ばれる、請求項1に記載の金属錯体。
【請求項5】
および/またはXは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、前記Rは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基またはフェニル基から選ばれる、請求項に記載の金属錯体。
【請求項6】
、R、Rは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、フェニル基、ピリジル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、重水素化メチル基、重水素化エチル基、重水素化n-プロピル基、重水素化イソプロピル基、重水素化イソブチル基、重水素化tert-ブチル基、重水素化イソペンチル基、重水素化ネオペンチル基、重水素化フェニル基、重水素化ピリジル基、重水素シクロプロピル基、重水素化シクロブチル基、重水素化シクロペンチル基、重水素化シクロヘキシル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1~のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項7】
、RおよびRは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~のアルキル基から選ばれる、請求項1~のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項8】
、R、Rは、いずれもメチル基である、請求項に記載の金属錯体。
【請求項9】
の構造は、下記構造からなる群から選ばれるいずれか1種または2種である、請求項1に記載の金属錯体。
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
【化4-5】
【化4-6】
【化4-7】
【化4-8】
【化4-9】
【化4-10】
【化4-11】
【化4-12】
【化4-13】
【化4-14】
【化4-15】
【化4-16】
【化4-17】
【化4-18】
【化4-19】
【化4-20】
【化4-21】
【化4-22】
【化4-23】
【化4-24】
【化4-25】
【化4-26】
【化4-27】
【化4-28】
【化4-29】
【化4-30】
【化4-31】
【請求項10】
式2中、Rは、水素、重水素またはメチル基から選ばれ、R~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、フッ素、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-メチルブチル基、3-エチルペンチル基、トリフルオロメチル基、およびこれらの組合せから選ばれる、請求項1~のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項11】
の構造は、それぞれ独立して下記構造からなる群から選ばれるいずれか1種または2種である、請求項1~のいずれか一項に記載の金属錯体。
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【化5-5】
【化5-6】
【化5-7】
【化5-8】
【請求項12】
前記配位子Lは、下記構造からなる群から選ばれるいずれか1種である、請求項1~11のいずれか一項に記載の金属錯体。
【化6-1】
【化6-2】
【化6-3】
【化6-4】
【請求項13】
前記配位子Lおよび/またはLにおける水素は、重水素で一部または全部置換されてもよい、請求項9または11に記載の金属錯体。
【請求項14】
前記金属錯体は、Ir(L(L)またはIr(L)(L)(L)である、請求項9~12のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項15】
前記金属錯体は、
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【化7-6】
【化7-7】
からなる群から選ばれる、請求項14に記載の金属錯体。
【請求項16】
陽極と、陰極と、前記陽極と陰極との間に設けられた有機層とを含むエレクトロルミネセント素子であって、
前記有機層は、請求項1に記載の金属錯体を含む、エレクトロルミネセント素子。
【請求項17】
前記有機層は、発光層であり、前記金属錯体は、発光材料である、請求項16に記載の素子。
【請求項18】
前記有機層は、ホスト材料をさらに含む、請求項17に記載の素子。
【請求項19】
前記ホスト材料は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール、アザカルバゾール、インドロカルバゾリル、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、アザジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、フルオレニル、シリコンフルオレン、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、フェナントレン、アザフェナントレン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基を含む、請求項18に記載の素子。
【請求項20】
前記素子は、赤色光または白色光を放射する、請求項16に記載の素子。
【請求項21】
請求項1に記載の金属錯体を含む、化合物の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子などの有機電子素子に用いられる化合物に関する。より特に、6-シリル置換イソキノリン配位子を含有する金属錯体、前記金属錯体を含むエレクトロルミネセント素子、および化合物の処方に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子素子は、有機発光ダイオード(OLEDs)、有機電界効果トランジスタ(O-FETs)、有機発光トランジスタ(OLETs)、有機起電セル(OPVs)、色素-増感太陽電池(DSSCs)、有機光検出器、有機感光装置、有機電界効果素子(OFQDs)、発光電気化学セル(LECs)、有機レーザダイオードおよび有機プラズマ発光素子を含むが、それに限定されない。
【0003】
1987年、イーストマンコダック(Eastman Kodak)のTangおよびVan Slykeにより、電子輸送層および発光層として、アリールアミン正孔輸送層とトリス-8-ヒドロキシキノリン-アルミニウム層とを含む二層有機エレクトロルミネセント素子が報道されている(Applied Physics Letters、1987、51(12):913~915(非特許文献1))。素子に対してバイアスが一旦印加されると、緑色光が素子から発射される。この発明は、現代の有機発光ダイオード(OLEDs)の発展に対する基礎を築き上げている。最も先進的なOLEDsは、電荷注入・輸送層、電荷・励起子ブロッキング層、および陰極と陽極との間の1つまたは複数の発光層などの複数の層を含んでもよい。OLEDsは、自発光性ソリッドステート素子であるので、表示および照明の適用に対して極めて大きな潜在力を提供している。また、有機材料の固有な特性、例えばそれらの可撓性は、可撓性基板で行った製造などの特殊な適用に非常に適合するようになっている。
【0004】
OLEDは、その発光メカニズムに応じて、3種の異なるタイプに分けられている。Tangおよびvan Slykeにより発明されたOLEDは、蛍光OLEDであり、一重項発光のみを使用する。素子において生成した三重項が非輻射減衰通路により浪費され、蛍光OLEDの内部量子効率(IQE)が25%に過ぎないため、この制限はOLEDの商業化を妨害している。1997年、ForrestおよびThompsonにより、錯体含有重金属からの三重項発光を発光体として用いるりん光OLEDが報道されている。そのため、一重項および三重項を収穫し、100%のIQEを実現することができる。その効率が高いため、りん光OLEDの発見および発展は、直接的にアクティブマトリクスOLED(AMOLED)の商業化に貢献する。最近、Adachiは、有機化合物の熱活性化遅延蛍光(TADF)によって高効率を実現している。これらの発光体は、小さい一重項-三重項ギャップを有するため、励起子が三重項から一重項に戻るトランジションが可能となる。TADF素子において、三重項励起子がリバースシステム間で貫通すること(逆項間交差)によって一重項励起子を生成することに起因してIQEが高くなっている。
【0005】
OLEDsは、さらに、所用材料の形態に応じて、小分子とポリマーOLEDに分けられてもよい。小分子とは、ポリマーではない、有機または有機金属のいずれかの材料を指し、精確な構造を有すれば、小分子の分子量が大きくてもよい。明確な構造を有するデンドリマーは、小分子と認められている。ポリマーOLEDは、共役ポリマーと、側鎖の発光基を有する非共役ポリマーとを含む。製造過程において後重合を発生すると、小分子OLEDがポリマーOLEDになり得る。
【0006】
様々なOLEDの製造方法が公知されている。小分子OLEDは、一般的に、真空熱蒸発により製造されるものである。ポリマーOLEDは、例えばスピンコート、インクジェット印刷およびノズル印刷などの溶液法により製造されるものである。材料が溶剤に溶解または分散することが可能であれば、小分子OLEDも溶液法により製造されることができる。
【0007】
OLEDの発光色は、発光材料の構造設計により実現することができる。OLEDは、所望のスペクトルを実現するように、1つまたは複数の発光層を含んでもよい。緑色、黄色、赤色OLEDにおいて、りん光材料は、既に商業化の実現に成功したが、青色のりん光素子には、依然として、青色が飽和せず、寿命が短く、作業電圧が高いなどの問題が存在する。市販のフルカラーOLEDディスプレイは、一般的に混合策略を用い、青色の蛍光、および黄色、赤色または緑色のりん光を用いる。現在、りん光OLEDの効率が高輝度の場合に急速に低下するという問題が存在する。また、より飽和した発光スペクトル、より高い効率、およびより長いデバイス寿命を有することが望まれている。
【0008】
りん光金属錯体は、発光層のりん光ドーピング物質として、有機エレクトロルミネセントまたは表示の分野に適用されてもよい。異なる場合でのニーズを満たすために、材料配位子における異なる置換基を調節することにより、ある基礎で材料の顔色の調節を実現し、異なる放射波長のりん光金属錯体を得ることができる。
【0009】
KR20130110934A(特許文献1)では、式Aで表される有機光学化合物を含む有機層を含む有機光学素子が開示されている。
【化1】
開示された多くの構造のうちの1つは、式Bで表される。
【化2】
その金属錯体は、補助配位子である1,3-ジオンがなく、2つのフェニルイソキノリンおよび1つのフェニルピリジンにより金属と配位してなる。このような構造は、昇華温度を非常に高くさせるので、使用不便であるとともに、イソキノリンの3位にフェニル基またはシリルフェニル基があるので、過度のレッドシフトが発生し、電流効率および電力効率を低減させる。また、このような錯体は、発光スペクトルを広くさせるので、飽和した顔色を取得しにくく、それらがOLED素子における適用を制限する。
【0010】
US2013146848A1(特許文献2)では、式Cで表される有機光学化合物を含む有機層を含む有機光学素子が開示されている。
【化3】
それは、Rが一置換ではいけないことを限定し、好ましい実施例においてRが二置換であることを限定し、より好ましくは、Rがジアルキル基置換である。開示された多くの構造は、2つのシリル基で置換された配位子、または1つのシリル基および1つのアルキル基で置換された配位子を含有したが、特定位置に単一のシリル基置換を有する金属錯体が開示されていない。
【0011】
US2017098788A1(特許文献3)では、式Dで表される有機光学化合物を含む有機層を含む有機光学素子が開示されている。
【化4】
開示された多くの構造のうちの1つは、
【化5】
である。6-トリメチルシリル置換イソキノリン配位子を含有するイリジウム錯体が開示されているが、前記配位子におけるイソキノリンの2位が必ずしもカルバゾール基で置換されなければならず、本発明に係る化合物の配位子の骨格と明らかに異なる。
【0012】
US2018190915A1(特許文献4)では、式Pt(L)を含む有機層を含む有機光学素子が開示されている。明らかに言及されている多くの化合物において、下記錯体(化合物30)が示されている。
【化6】
その他の配位子は、ビフェニルであり、本発明に係る金属錯体と明らかに異なる。この構造に基づく化合物は、安定性の面で本発明に係る化合物と極めて大きな相違がある。
【0013】
US20160190486A1(特許文献5)では、式M(L(L(Lで表される有機光学化合物を含む有機層を含む有機光学素子が開示されている。前記配位子の好ましい実施例は、式Gおよび式Hで表される構造を含む。
【化7】
【化8】
ただし、Xは、それぞれ独立して、SiまたはGeから選ばれるが、それは、上記配位子に少なくとも1つのX-F結合を含めなければならないことを限定するとともに、配位子の特定位置にシリル基置換を有する関連錯体が開示されておらず、いずれの有効データの合成例も開示されていない。Si-F結合の安定性は、OLED素子において検証されておらず、放射スペクトルに対する影響も未知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国特許公開第20130110934A号
【文献】米国特許公開第2013146848A1号
【文献】米国特許公開第2017098788A1号
【文献】米国特許公開第2018190915A1号
【文献】米国特許公開第20160190486A1号
【非特許文献】
【0015】
【文献】Applied Physics Letters、1987、51(12):913~915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、6-シリル置換イソキノリン配位子を含有する金属錯体を提供する。このような配位子を含有するりん光金属錯体は、既に報道されたりん光金属錯体と比べ、よりレッドシフト可能な放射波長を得ながら、素子性能を改良することができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の概要)
本発明は、少なくとも一部の上述した問題を解決するために、6-シリル置換イソキノリン配位子を含有する一連の金属錯体を提供することを目的とする。前記金属錯体は、有機エレクトロルミネセント素子における発光材料として用いられることができる。これらの金属錯体は、エレクトロルミネセント素子に適用されることにより、より赤く且つより飽和した発光を提供し、寿命が明らかに向上し、効率が高いという優れた素子性能を得ることができる。
【0018】
本発明の一実施例によれば、M(L(L(Lの一般式を有する金属錯体が開示される。
(L、LおよびLは、それぞれ金属Mと配位する第1配位子、第2配位子および第3配位子であり、
、LおよびLは、結合して多座配位子を形成していてもよく、
mは、1または2であり、nは、1または2であり、qは、0または1であり、m+n+qは、金属Mの酸化状態に等しく、
mが1より大きい場合、Lは、同一または異なってもよく、nが1より大きい場合、Lは、同一または異なってもよく、
前記第1配位子Lは、式1で表され、
【化9】
~Rは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
~Xは、それぞれ独立して、CRまたはNから選ばれ、
は、独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
式1中、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよく、
配位子Lにおける水素は、重水素で一部または全部置換されてもよく、
は、式2で表される構造を有し、
【化10】
~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
式2中、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよく、
は、モノアニオン性二座配位子である。)
【0019】
本発明の他の実施例によれば、陽極と、陰極と、前記陽極と陰極との間に設けられた有機層とを含むエレクトロルミネセント素子が開示されている。前記有機層は、上述した金属錯体を含む。
【0020】
本発明の他の実施例によれば、上述した金属錯体を含む化合物の処方が開示される。
【0021】
本発明に係る6-シリル置換イソキノリン配位子を含有する新規な金属錯体は、エレクトロルミネセント素子における発光材料として用いられてもよい。6位に単一のシリル基で置換されることにより、レッドシフトを効果的に制御し、約640nmの波長に達し、CIEは、xが0.695以上、yが0.304以下に達し、狭い半値全幅を有することができることで、より赤くて飽和した放射を提供し、特に、アラームランプ、自動車のテールランプなどの濃い赤色光の分野に適用される。それと同時に、本発明に係る化合物は、寿命が明らかに向上し、効率が高いという優れた素子性能をさらに示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る化合物および化合物の処方を含んでもよい有機発光装置の模式図である。
図2】本発明に係る化合物および化合物の処方を含んでもよい他の有機発光装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
OLEDは、ガラス、プラスチック、および金属などの様々な基板で製造することができる。図1は、有機発光装置100を例示的に制限せずに示している。図面に対して、必ずしも縮尺どおりに製作するわけではなく、図において、必要に応じて一部の層構造を省略してもよい。装置100には、基板101、陽極110、正孔注入層120、正孔輸送層130、電子ブロッキング層140、発光層150、正孔ブロッキング層160、電子輸送層170、電子注入層180および陰極190が含まれてもよい。装置100は、記載される層を順に堆積することにより製造されてもよい。各層の性質、機能および例示的な材料については、米国特許US7279704B2の第6~10欄においてより詳細に記載されており、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0024】
これらの層のそれぞれには、より多くの実例がある。例示的には、全文を援用するように組み込まれた米国特許第5844363号において、可撓性で透明な基板-陽極の組合せが開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、p型ドープの正孔輸送層の実例は50:1のモル比でF-TCNQがドーピングされたm-MTDATAであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた、トンプソン(Thompson)らによる米国特許第6303238号において、ホスト材料の実例が開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、n型ドープの電子輸送層の実例は1:1のモル比でLiがドーピングされたBPhenであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第5703436号および第5707745号において、例えばMg:Agなどの金属薄層と、その上に被覆された、スパッタ堆積された透明な導電ITO層とを有する複合陰極を含む陰極の実例が開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第6097147号および米国特許出願公開第2003/0230980号において、より詳細に、ブロッキング層の原理と使用が記載されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において注入層の実例が提供されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において、保護層が記載されている。
【0025】
非限定的な実施例により上述した分層構造が提供される。上述した各種の層を組み合わせることによってOLEDの機能が実現することができ、或いは、一部の層を完全に省略することができる。それは、明確に記載されていない他の層を含んでもよい。それぞれの層内に、最適な性能を実現するように、単一の材料または多種の材料の混合物を使用することができる。機能層はいずれも、複数なサブ層を含んでもよく、例えば、発光層は、所望の発光スペクトルを実現するように、2層の異なる発光材料を有してもよい。
【0026】
一実施例において、OLEDは、陰極と陽極との間に設けられた「有機層」を有すると記載されてもよい。当該有機層は、1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0027】
OLEDにもカプセル化層が必要であり、図2に示すように、有機発光装置200が例示的に制限せずに示されている。図1との相違点は、水分および酸素などの外界からの有害物質を防止するように、陰極190上にカプセル化層102を含んでもよい。ガラス、または有機-無機混合層などのカプセル化機能を提供可能ないかなる材料も、カプセル化層として用いられてもよい。カプセル化層は、OLED素子の外部に、直接または間接的に配置されるべきである。多層薄膜カプセル化については、米国特許US7968146B2において記載されており、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0028】
本発明の実施例により製造される素子は、当該素子の1つまたは複数の電子部材モジュール(或いは、ユニット)を有する各種の消費製品に組み込まれてもよい。これらの消費製品は、例えば、フラットパネルディスプレイ、モニタ、医療用モニタ、テレビ、ビルボード、室内または室外用照明ランプおよび/または信号ランプ、ヘッドアップディスプレイ、全部または一部透明のディスプレイ、可撓性ディスプレイ、スマートフォン、フラットパネルコンピューター、フラットパネル携帯電話、ウェアラブル素子、スマートウォッチ、ラップトップコンピューター、デジタルカメラ、携帯型ビデオカメラ、ファインダー、マイクロディスプレイ、3-Dディスプレイ、車載ディスプレイおよびテールライトを含む。
【0029】
本明細書に記載される材料および構造は、上述にて列挙されている他の有機電子素子にも用いられてもよい。
【0030】
「頂部」とは、基板から最も遠く、「底部」とは、基板から最も近いことを意味する。第1層が第2層「上」に設けられていると記載されている場合、第1層が基板から相対的に遠いように設けられている。第1層が第2層「と」「接触する」ことを規定していない限り、第1層と第2層との間に他の層が存在してもよい。例示的には、陰極と陽極との間に各種の有機層が存在しても、依然として、陰極が陽極「上」に設けられていると記載されることができる。
【0031】
「溶液が処理可能である」とは、溶液または懸濁液の形態で液体媒体に溶解、分散または輸送可能であり、および/または液体媒体から堆積可能であることを意味する。
【0032】
配位子は、直接的に発射材料の感光性質を促成すると、「感光性」と呼ばれてもよいことが信じられている。配位子は、発射材料の感光性質を促成しないと、「補助性」と呼ばれてもよい。しかし、補助性の配位子は、感光性配位子の性質を変更することができることが信じられている。
【0033】
蛍光OLEDの内部量子効率(IQE)は、遅延蛍光の存在によって25%のスピン統計による制限を超えてもよいことが信じられている。遅延蛍光は、一般的に2つのタイプ、すなわちP型遅延蛍光およびE型遅延蛍光に分けられてもよい。P型遅延蛍光は、三重項-三重項消滅(TTA)により生成される。
【0034】
一方、E型遅延蛍光は、2つの三重項の衝突ではなく、三重項と一重項との励起状態の変換に依存する。E型遅延蛍光を生成可能な化合物は、エネルギー状態の変換を行うように、極めて小さい一重項-三重項ギャップを有することが必要である。熱エネルギーは、三重項から一重項までの遷移を活性化することができる。このようなタイプの遅延蛍光は、熱活性化遅延蛍光(TADF)とも呼ばれる。TADFの顕著な特徴は、遅延成分が温度の上昇と伴って向上することにある。リバースシステム(RISC)間の貫通(逆項間交差)の速度が十分に速いと、三重項からの非輻射減衰を最小化させ、バックフィルした一重項の励起状態の割合は75%に達することができる。一重項の合計割合は100%であってもよく、エレクトロによる励起子のスピン統計の25%をはるかに超えている。
【0035】
E型遅延蛍光の特徴は、励起複合物系または単一の化合物から見える。理論に限定されず、E型遅延蛍光は、発光材料が小さい一重項-三重項エネルギーギャップ(ΔES-T)を有する必要がある。有機非金属含有の供与体・受容体発光材料は、この点を実現する可能性がある。これらの材料の発射は、通常、供与体・受容体電荷遷移(CT)型発射であると特徴付けられる。これらの供与体・受容体型化合物において、HOMOとLUMOとの空間分離は、一般的に小さいΔES-Tを生成することになる。これらの状態は、CT状態を含んでもよい。通常、供与体・受容体発光材料は、電子供与体部分(例えば、アミン基またはカルバゾール誘導体)と電子受容体部分(例えば、N含有の六員芳香族環)を結合することにより構築される。
【0036】
置換基の専門用語の定義について
【0037】
ハロゲンまたはハロゲン化物とは、本明細書に用いられるように、フッ素、クロロ、臭素およびヨウ素を含む。
【0038】
アルキル基とは、直鎖および分岐鎖のアルキル基を含む。アルキル基の実例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、ネオペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-ペンチルヘキシル、1-ブチルペンチル、1-ヘプチルオクチル、および3-メチルペンチルを含む。また、アルキル基は、置換されていてもよい。アルキル基鎖における炭素は、他のヘテロ原子で置換されてもよい。そのうち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチルおよびネオペンチルであることが好ましい。
【0039】
シクロアルキル基とは、本明細書に用いられるように、環状アルキル基を含む。好ましいシクロアルキル基は、環炭素原子数4~10のシクロアルキル基であり、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4,4-ジメチルシクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、1-ノルボルニル基、2-ノルボルニル基などを含む。また、シクロアルキル基は、置換されていてもよい。環における炭素は、他のヘテロ原子で置換されてもよい。
【0040】
アルケニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖および分岐鎖のオレフィン基を含む。好ましいアルケニル基は、炭素原子数2~15のアルケニル基である。アルケニル基の実施例は、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、1-メチルビニル基、スチリル基、2,2-ジフェニルビニル基、1,2-ジフェニルビニル基、1-メチルアリル基、1,1-ジメチルアリル基、2-メチルアリル基、1-フェニルアリル基、2-フェニルアリル基、3-フェニルアリル基、3,3-ジフェニルアリル基、1,2-ジメチルアリル基、1-フェニル-1-ブテニル基および3-フェニル-1-ブテニル基を含む。また、アルケニル基は、置換されていてもよい。
【0041】
アルキニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖および分岐鎖のアルキニル基を含む。好ましいアルキニル基は、炭素原子数2~15のアルキニル基である。また、アルキニル基は、置換されていてもよい。
【0042】
アリール基または芳香族基とは、本明細書に用いられるように、非縮合および縮合系を考慮する。好ましいアリール基は、炭素原子数6~60、より好ましくは炭素原子数6~20、更に好ましくは炭素原子数6~12のアリール基である。アリール基の実施例は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、テトラフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、およびアズレンを含み、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フルオレニルおよびナフタレンを含むことが好ましい。また、アリール基は、置換されていてもよい。非縮合アリール基の実施例は、フェニル、ビフェニル-2-イル、ビフェニル-3-イル、ビフェニル-4-イル、p-ターフェニル-4-イル、p-ターフェニル-3-イル、p-トリビフェニル-2-イル、m-ターフェニル-4-イル、m-ターフェニル-3-イル、m-ターフェニル-2-イル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、p-(2-フェニルプロピル)フェニル、4’-メチルビフェニル、4’’-tert-ブチル-p-ターフェニル-4-イル、o-クミル、m-クミル、p-クミル、2,3-キシリル、3,4-キシリル、2,5-ジメチルフェニル、メシチレンおよびm-テトラフェニルを含む。
【0043】
複素環基または複素環とは、本明細書に用いられるように、芳香族および非芳香族の環状基を考慮する。イソアリール基もヘテロアリール基を指す。好ましい非芳香族複素環基は、環原子が3~7であり、少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、窒素、酸素および硫を含む。複素環基は、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子、硫原子およびセレン原子から選ばれるヘテロ原子を有する芳香族複素環基であってもよい。
【0044】
ヘテロアリール基とは、本明細書に用いられるように、ヘテロ原子数1~5の非縮合および縮合ヘテロ芳香族基を考慮する。好ましいヘテロアリール基は、炭素原子数3~30、より好ましくは炭素原子数3~20、さらに好ましくは炭素原子数3~12のヘテロアリール基である。好適なヘテロアリール基は、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリドインドール、ピロロピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インデノアジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、ベンゾフランピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノビピリジン、ベンゾセレノピリジン、およびセレンベンゾピリジンを含み、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、ベンズイミダゾール、1,2-アザボラン、1,3-アザボラン、1,4-アザボラン、ボラゾールおよびそのアザ類似物を含むことが好ましい。また、ヘテロアリール基は、置換されていてもよい。
【0045】
アルコキシ基とは、-O-アルキル基で表される。アルキル基の例および好ましい例は、上記例と同様である。炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~6のアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシを含む。炭素原子数が3以上のアルコキシ基は、直鎖状、環状、または分岐鎖状であってもよい。
【0046】
アリールオキシ基とは、-O-アリール基または-O-ヘテロアリール基で表される。アリール基及びヘテロアリール基の例および好ましい例は、上記例と同様である。炭素原子数6~40のアリールオキシ基の例は、フェノキシ基およびビフェニルオキシ基を含む。
【0047】
アラルキル基とは、本明細書に用いられるように、アリール置換基を有するアルキル基である。また、アラルキル基は、置換されていてもよい。アラルキル基の例は、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピル、2-フェニルイソプロピル、フェニル-tert-ブチル、α-ナフチルメチル、1-α-ナフチルエチル、2-α-ナフチルエチル、1-α-ナフチルイソプロピル、2-α-ナフチルイソプロピル、β-ナフチルメチル、1-β-ナフチル-エチル、2-β-ナフチル-エチル、1-β-ナフチルイソプロピル、2-β-ナフチルイソプロピル、p-メチルベンジル、m-メチルベンジル、o-メチルベンジル、p-クロロベンジル、m-クロロベンジル、o-クロロベンジル、p-ブロモベンジル、m-ブロモベンジル、o-ブロモベンジル、p-ヨードベンジル、m-ヨードベンジル、o-ヨードベンジル、p-ヒドロキシベンジル、m-ヒドロキシベンジル、o-ヒドロキシベンジル、p-アミノベンジル、m-アミノベンジル、o-アミノベンジル、p-ニトロベンジル、m-ニトロベンジル、o-ニトロベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-ヒドロキシ-2-フェニルイソプロピルおよび1-クロロ-2-フェニルイソプロピルを含む。そのうち、ベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピルおよび2-フェニルイソプロピルであることが好ましい。
【0048】
アザジベンゾフラン、アザ-ジベンゾチオフェンなどにおける「アザ」とは、対応する芳香族フラグメントにおける1つまたは複数のC-H基が窒素原子に置換されることを指す。例えば、アザトリフェニレンは、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、ジベンゾ[f,h]キノリン、および環系において2つ以上の窒素を有する他の類似物を含む。当業者であれば、上述したアザ誘導体の他の窒素類似物を容易に想到することができ、且つこれらの類似物は、すべて本明細書に記載される専門用語に含まれるものとして確定される。
【0049】
本発明において、特に断りのない限り、置換のアルキル基、置換のシクロアルキル基、置換のヘテロアルキル基、置換のアラルキル基、置換のアルコキシ基、置換のアリールオキシ基、置換のアルケニル基、置換のアリール基、置換のヘテロアリール基、置換のアルキルシリル基、置換のアリールシリル基、置換のアミン基、置換のアシル基、置換のカルボニル基、置換のカルボキシル基、置換のエステル基、置換のスルフィニル基、置換のスルホニル基、置換のホスフィノ基からなる群のうちのいずれかの用語を使用すると、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、およびホスフィノ基のうちのいずれかの基が、重水素、ハロゲン、無置換の1~20個の炭素原子を有するアルキル基、無置換の3~20個の環炭素原子を有するシクロアルキル基、無置換の1~20個の炭素原子を有するヘテロアルキル基、無置換の7~30個の炭素原子数を有するアラルキル基、無置換の1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、無置換の6~30個の炭素原子を有するアリールオキシ基、無置換の2~20個の炭素原子を有するアルケニル基、無置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、無置換の3~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基、無置換の3~20個の炭素原子を有するアルキルシリル基、無置換の6~20個の炭素原子を有するアリールシリル基、無置換の0~20個の炭素原子を有するアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびその組合せから選ばれる1つまたは複数により置換され得ることを意味する。
【0050】
分子フラグメントについて、置換基または他の形態で他の部分に結合させると記載する場合、フラグメント(例えば、フェニル基、フェニレン基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基)であるか否か、或いは、分子全体(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるか否かにより、その名称を確定することができることを理解すべきである。本明細書に用いられるように、置換基の指定、或いはフラグメントの結合の異なる形態は、均等であると認められている。
【0051】
本明細書で言及される化合物において、水素原子が重水素で一部または全部置換されてもよい。他の原子、例えば炭素および窒素も、それらの他の安定した同位体で置換されてもよい。素子の効率および安定性を向上させるために、化合物において他の安定した同位体の置換が好ましい可能性がある。
【0052】
本明細書で言及される化合物において、複数置換とは、二重置換を含む、最も多くの使用可能な置換に達するまでの範囲を指す。本明細書で言及される化合物中のある置換基は、複数置換(二重置換、三重置換、四重置換などを含む)を意味すると、その置換基はその結合構造上の複数の利用可能な置換位置に存在してもよいことを意味し、複数の利用可能な置換位置にいずれも存在する当該置換基は、同じ構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0053】
本明細書で言及される化合物において、隣接する置換基が結合して環を形成していてもよいように特に限定されない限り、前記化合物における隣接する置換基は結合して環を形成することができない。本明細書で言及される化合物において、隣接する置換基が結合して環を形成していてもよい場合、形成される環は、単環または多環、および脂環、ヘテロ脂環、アリール環、またはヘテロアリール環であってもよい。このような記述において、隣接する置換基は、同一の原子に結合された置換基、互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基、または更に離れた炭素原子に結合された置換基を指してもよい。好ましくは、隣接する置換基は、同一の炭素原子に結合された置換基および互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基を指す。
【0054】
隣接する置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、同一の炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【0055】
【化11】
【0056】
隣接する置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【0057】
【化12】
【0058】
また、隣接する置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基の一方が水素を表す場合に、第2置換基は水素原子が結合された位置に結合されて環を形成することを意味すると認められている。下記式で例示する。
【0059】
【化13】
【0060】
本発明の一実施例によれば、M(L(L(Lの一般式を有する金属錯体が開示される。
(L、LおよびLは、それぞれ金属Mと配位する第1配位子、第2配位子および第3配位子であり、
、LおよびLは、結合して多座配位子を形成していてもよく、
mは、1または2であり、nは、1または2であり、qは、0または1であり、m+n+qは、金属Mの酸化状態に等しく、
mが1より大きい場合、Lは、同一または異なってもよく、nが1より大きい場合、Lは、同一または異なってもよく、
前記第1配位子Lは、式1で表され、
【化14】
~Rは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
~Xは、それぞれ独立して、CRまたはNから選ばれ、
は、独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
式1中、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよく、
配位子Lにおける水素は、重水素で一部または全部置換されてもよく、
は、式2で表される構造を有し、
【化15】
~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
式2中、置換基R、R、R、R、R、R、Rのうち、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよく、
は、モノアニオン性二座配位子である。)
【0061】
該実施例において、式1中、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいとは、式1の構造で、隣り合う置換基R、R、R同士が結合して環を形成していてもよく、および/または隣り合う置換基R同士が結合して環を形成していてもよいことを意味する。それと同時に、隣り合う置換基R同士が結合して環を形成せず、置換基R、R、R同士だけが結合して環を形成できる状況をさらに含む。それと同時に、式1中、隣り合う置換基のすべてが結合して環を形成しない状況をさらに含む。
【0062】
該実施例において、配位子Lにおける水素が、重水素で一部または全部置換されていてもよいとは、式1で表される配位子Lにおける水素は、イソキノリンの3位、4位、5位、7位、および8位における水素、およびR~Rにおける水素を含み、それぞれ水素であってもよく、配位子Lにおける1つ、複数またはすべての水素が重水素で置換されてもよいことを意味する。
【0063】
本発明の一実施例によれば、前記金属Mは、Cu、Ag、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選ばれる。
【0064】
本発明の一実施例によれば、前記金属Mは、PtまたはIrから選ばれる。
【0065】
本発明の一実施例によれば、X~Xは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、Rは、独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0066】
本発明の一実施例によれば、X~Xは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、Rは、独立して水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0067】
本発明の一実施例によれば、X~Xは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、Rは、独立して、水素、フッ素、メチル基、エチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,6-ジメチルフェニル基からなる群から選ばれる。
【0068】
本発明の一実施例によれば、XおよびXは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、Rは、独立して、水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、およびこれらの組合せから選ばれる。
【0069】
本発明の一実施例によれば、XおよびXは、それぞれ独立して、CRから選ばれ、Rは、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基またはフェニル基から選ばれる。
【0070】
本発明の一実施例によれば、R、R、Rは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、フェニル基、ピリジル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、重水素化メチル基、重水素化エチル基、重水素化n-プロピル基、重水素化イソプロピル基、重水素化イソブチル基、重水素化tert-ブチル基、重水素化イソペンチル基、重水素化ネオペンチル基、重水素化フェニル基、重水素化ピリジル基、重水素シクロプロピル基、重水素代シクロブチル基、重水素代シクロペンチル基、重水素代シクロヘキシル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0071】
本発明の一実施例によれば、R、RおよびRは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基から選ばれる。
【0072】
本発明の一実施例によれば、R、RおよびRは、いずれもメチル基である。
【0073】
本発明の一実施例によれば、配位子Lの構造は、La1~La693からなる群から選ばれるいずれか1種または2種である。そのうち、La1~La693の具体的な構造は、請求項7を参照してください。
【0074】
本発明の一実施例によれば、前記式2中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0075】
本発明の一実施例によれば、前記式2中、Rは水素、重水素またはメチル基から選ばれ、R~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、フッ素、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-メチルブチル基、3-エチルペンチル基、トリフルオロメチル基、およびこれらの組合せから選ばれる。
【0076】
本発明の一実施例によれば、第2配位子Lの構造は、それぞれ独立して、Lb1~Lb365からなる群から選ばれるいずれか1種または2種である。Lb1~Lb365の具体的な構造は、請求項9を参照してください。
【0077】
本発明の一実施例によれば、第3配位子Lの構造は、
【化16】
からなる群から選ばれるいずれか1種である。
(R、RおよびRは、一置換、複数置換、または無置換を表してもよく、
は、O、S、Se、NRN1およびCRC1C2からなる群から選ばれ、
、R、R、RN1、RC1およびRC2は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
の構造において、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよい。)
【0078】
該実施例において、Lの構造において隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいとは、
【化17】
を例として、置換基R、R同士、Rが複数置換を表す時の複数の置換基R同士、Rが複数置換を表す時の複数の置換基R同士のいずれか1種の状況を含み、上述した状況において、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよく、または隣り合う置換基が結合して環を形成しない。Lにおける他の構造は、これによって類推されてもよい。
【0079】
本発明の一実施例によれば、第3配位子Lは、それぞれ独立して、Lc1~Lc99からなる群から選ばれる。そのうち、Lc1~Lc99の具体的な構造は、請求項11を参照してください。
【0080】
本発明の一実施例によれば、配位子La1~La693および/またはLb1~Lb365における水素は、重水素で一部または全部置換されてもよい。
【0081】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、Ir(L(L)である。そのうち、LはLa1~La693から選ばれるいずれか1種または2種であり、Lは、Lb1~Lb365から選ばれるいずれか1種である。そのうち、前記金属錯体中の配位子LおよびLにおける水素は、重水素で一部または全部置換されていてもよい。
【0082】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、Ir(L)(L)(L)である。そのうち、Lは、La1~La693から選ばれるいずれか1種であり、Lは、Lb1~Lb365から選ばれるいずれか1種であり、Lは、Lc1~Lc99から選ばれるいずれか1種である。そのうち、前記金属錯体中の配位子LおよびLにおける水素は、重水素で一部または全部置換されていてもよい。
【0083】
本発明の一実施例によれば、前記金属錯体は、
【化18-1】
【化18-2】
【化18-3】
【化18-4】
【化18-5】
【化18-6】
【化18-7】
からなる群から選ばれる。
【0084】
本発明の一実施例によれば、陽極と、陰極と、前記陽極と陰極との間に設けられた有機層とを含むエレクトロルミネセント素子が開示される。前記有機層は、M(L(L(Lの一般式を有する金属錯体を含む。
(L、LおよびLは、それぞれ金属Mと配位する第1配位子、第2配位子および第3配位子であり、
、LおよびLは、結合して多座配位子を形成していてもよく、
mは、1または2であり、nは、1または2であり、qは、0または1であり、m+n+qは、金属Mの酸化状態に等しく、
mが1より大きい場合、Lは、同一または異なってもよく、nが1より大きい場合、Lは、同一または異なってもよく、
前記第1配位子Lは、式1で表され、
【化19】
~Rは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
~Xは、それぞれ独立して、CRまたはNから選ばれ、
は、独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
式1中、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよく、
配位子Lにおける水素は、重水素で一部または全部置換されてもよく、
は、式2で表される構造を有し、
【化20】
~Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数0~20のアミン基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
式2中、隣り合う置換基は、結合して環を形成していてもよく、
は、モノアニオン性二座配位子である。)
【0085】
本発明の一実施例によれば、前記素子は、赤色光を放射する。
【0086】
本発明の一実施例によれば、前記素子は、白色光を放射する。
【0087】
本発明の一実施例によれば、前記素子において、前記有機層は、発光層であり、前記化合物は、発光材料である。
【0088】
本発明の一実施例によれば、前記素子において、前記有機層は、ホスト材料をさらに含む。
【0089】
本発明の一実施例によれば、前記ホスト材料は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、カルバゾール、アザカルバゾール、インドロカルバゾリル、ジベンゾチオフェン、アザジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、アザジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、フルオレニル、シリコンフルオレン、ナフタレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、フェナントレン、アザフェナントレン、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種の化学基を含む。
【0090】
本発明の他の実施例によれば、前記金属錯体を含む化合物の処方が開示される。前記金属錯体の具体的な構造は、上述したいずれか1つの実施例により示されている。
【0091】
他の材料との組合せ
【0092】
本発明に記載される有機発光素子に用いられる特定層の材料は、素子に存在する各種の他の材料と組み合わせて使用することができる。これらの材料の組合せについて、米国特許出願US2016/0359122A1の第0132~0161段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、且つ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別することができる。
【0093】
本明細書において、有機発光素子に用いられる具体的な層の材料は、前記素子に存在する多種の他の材料と組み合わせて使用することができると記載されている。例示的には、本明細書において開示される発光ドーパントは、多種のホスト、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極および他の存在可能な層と組み合わせて使用することができる。これらの材料の組合せは、特許出願US2015/0349273A1の第0080~0101段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、且つ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別することができる。
【0094】
材料合成の実施例において、説明しない限り、すべての反応が窒素の保護で行われる。すべての反応溶剤は、無水であり、且つ市販品由来のまま使用される。合成される生成物に対して、本分野通常の1種または多種の機器(Bruker製の核磁気共鳴装置、Shimadzu製の液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー/質量分析計、気体クロマトグラフィー/質量分析計、示差熱走査熱量装置、上海リョウ光技術製の蛍光分光光度計、武漢科思特製の電気化学作業ステーション、安徽貝意克製の昇華装置などを含むがそれに限定されず)を用いて、当業者にとって熟知の方法で構造確認と特性テストを行った。素子の実施例において、素子の特性に対しても、本分野通常の機器(Angstrom Engineering製の蒸着機、蘇州弗士達製の光学テストシステム、寿命テストシステム、北京量拓製のエリプソメーターなどを含むがそれに限定されず)を用いて、当業者にとって熟知の方法でテストを行った。当業者は上述した機器の使用、テスト方法などの関連内容を知っているので、サンプルの固有データを確実に、影響を受けずに取得することができるため、上記関連内容を本明細書において繰り返し説明はしない。
【実施例
【0095】
材料合成の実施例
【0096】
本発明に係る化合物の調製方法は、限定されない。典型的であるが非限定的に以下の化合物を例として、その合成経路および調製方法は、以下の通りである。
【0097】
合成の実施例1:化合物Ir(La3(Lb31)の合成
【0098】
ステップ1:2-エチル-2-メチル酪酸エチルの合成
【化21】
2-エチル酪酸エチル(50.0g、346mmol)を600mLのテトラヒドロフランに溶解させた後、得た溶液へNを導入して3分間バブリングした。その後、-78℃まで冷却させ、Nの保護下で、-78℃で、190mL、2Mのリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液を滴下した。滴下が完了した後、反応混合液を-78℃に維持しながら30分間反応させた。その後、ヨードメタン(58.9g、415mmol)をゆっくりと滴下した。滴下が完了した後、反応をゆっくりと室温までに上昇して一晩過ごした。次に、飽和塩化アンモニウム溶液をゆっくりと添加し焼入れ反応を行った後、溶液を分離し、有機層を収集した。水相をジクロロメタンで2回抽出し、有機相を合併し、水分を除去するように乾燥し、回転蒸発して、製品であって所要する2-エチル-2-メチル酪酸エチル(52.2g、収率95%)を得た。
【0099】
ステップ2:2-エチル-2-メチル酪酸の合成
【化22】
2-エチル-2-メチル酪酸エチル(52.2g、330mmol)をメタノールに溶解させた後、水酸化ナトリウム(39.6g、990mmol)を添加した。その後、得た反応混合物を、還流反応を12時間行ったままで加熱した。次に、室温までに冷却させ、回転蒸発してその中のメタノールを除去した。3Mの塩酸を添加して、反応溶液のpH値を1に調節した後、ジクロロメタンを添加して複数回抽出した。有機相を合併し、水分を除去するように乾燥し、回転蒸発して、2-エチル-2-メチル酪酸(41.6g、収率97%)を得た。
【0100】
ステップ3:3-エチル-3-メチル-ペンタン-2-オンの合成
【化23】
2-エチル-2-メチル酪酸(13.0g、100mmol)を200mLのテトラヒドロフランに溶解させた後、得た溶液にNを導入して3分間バブリングした。その後、0℃までに冷却させた。次に、Nの保護下で、0℃で、230mL、1.3Mのメチルリチウムのエーテル溶液を滴下した。滴下が完了した後、反応混合液を0℃に維持しながら2時間反応させた。その後、室温までに上昇して一晩反応させた。TLCで反応完了を示した後、1Mの塩酸をゆっくりと添加して焼入れ反応を行った。その後、溶液を分離し、有機相を収集した。水相をジクロロメタンで2回抽出し、有機相を合併し、水分を除去するように乾燥し、回転蒸発して、目標生成物3-エチル-3-メチル-ペンタン-2-オン(11.8g、収率92%)を得た。
【0101】
ステップ4:2-エチルブチリルクロリドの合成
【化24】
2-エチル酪酸(11.6g、100mmol)をジクロロメタンに溶解させた後、触媒として1滴のDMFを添加した。その後、得た溶液にNを導入して3分間バブリングした。次に、0℃までに冷却させ、塩化オキサリル(14.0g、110mmol)を滴下した。滴下が完了した後、反応を室温までに上昇し、反応系がガスを排出しなかった後、反応溶液を回転蒸発した。得た2-エチルブチリルクロリド粗品は、さらに精製される必要がなく、そのまま次の反応に用いられることができる。
【0102】
ステップ5:3,7-ジエチル-3-メチルノナン-4,6-ジオンの合成
【化25】
3-エチル-3-メチル-ペンタン-2-オン(11.8g、92mmol)をテトラヒドロフランに溶解させた後、得た溶液にNを導入して3分間バブリングした。その後、-78℃までに冷却させ、55mL、2Mのリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン溶液を滴下した。滴下が完了した後、反応混合液を-78℃に維持しながら30分間反応させた。その後、2-エチルブチリルクロリド(100mmol)をゆっくりと添加した。滴下が完了した後、反応をゆっくりと室温までに上昇して一晩過ごした。次に、1Mの塩酸を添加して焼入れ反応を行った。その後、溶液を分離し、有機相を収集した。水相をジクロロメタンで2回抽出し、有機相を合併し、水分を除去するように乾燥し、回転蒸発して粗品を得た。カラムクロマトグラフィーで精製し(溶出剤は、石油エーテルであり)、減圧し蒸留して目標生成物3,7-ジエチル-3-メチルノナン-4,6-ジオン(4.7g、収率23%)を得た。
【0103】
ステップ6:1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-(トリメチルシリル)イソキノリンの合成
【化26】
6-ブロモ-1-(3,5-ジメチルフェニル)イソキノリン(6.24g、20mmol)を80mLのテトラヒドロフランに溶解させた。反応系を真空にして窒素ガスで3回置換した。反応フラスコを-78℃までに冷却させ、反応系にn-ブチルリチウム(2.5M)(9.6mL、24mmol)をゆっくりと滴下した。滴下が完了した後に30分間反応させた。そして、その温度で、反応系にトリメチルクロロシラン(3.26g、30mmol)を滴下した。滴下が完了した後、徐々に室温までに回復し、一晩反応させた。TLCで反応完了が検出された後、水を添加して焼入れ反応を行って、テトラヒドロフラン層を分離した。水相を酢酸エチルで3回抽出し、有機相を合併し、乾燥し回転して溶剤を除去した。カラムクロマトグラフィーで精製して無色の油状液体である1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-(トリメチルシリル)イソキノリン(5.40g、収率88%)を得た。
【0104】
ステップ7:化合物Ir(La3(Lb31)の合成
【化27】
1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-(トリメチルシリル)イソキノリン(1.8g、5.89mmol)、三塩化イリジウム三水和物(0.7g、1.98mmol)、2-エトキシエタノール(21mL)および水(7mL)の混合物を、窒素ガスの雰囲気で24時間還流させた。反応を室温までに冷却させ、回転蒸発して溶剤を除去した。3,7-ジエチルノナン-4,6-ジオン(0.84g、3.96mmol)、炭酸カリウム(1.37g、9.9mmol)を添加し、窒素ガスの雰囲気で、2-エトキシエタノール(27mL)において室温で24時間撹拌した。反応溶液を珪藻土で濾過し、適量のエタノールでフィルターケーキを洗浄し、ジクロロメタンで粗品を洗浄して250mLのナス型フラスコに置いた。その中にエタノール(約30mL)を添加し、常温で、大量の固体が析出したまで、濃縮させた。それを濾過し、適量のエタノールで洗浄して1.2gの化合物Ir(La3(Lb31)(1.19mmol、2つのステップにおける収率60%)を得た。生成物は、分子量が1013である目標生成物として確認された。
【0105】
合成の実施例2:化合物Ir(La3(Lb101)の合成
【化28】
窒素ガスの雰囲気で、イリジウム二量体(1.93g、1.15mmol)、3,7-ジエチル-3-メチルノナン-4,6-ジオン(0.79g、3.5mmol)、炭酸カリウム(1.59g、11.5mmol)を、2-エトキシエタノール(33mL)に30℃までに加熱して24時間撹拌した。TLCで反応完了が検出された後、反応系を室温までに自然に冷却させ、沈殿物を珪藻土で濾過してエタノールで洗浄した。得た固体をジクロロメタンに溶解させ、適量のエタノールを添加し、得た溶液を固体が析出したまで濃縮させた。濾過した後、2.2g(2.14mmol、収率93.2%)化合物Ir(La3(Lb101)を得た。アセトニトリルに還流させ、冷却させた後に濾過し、さらに精製して2.0gの化合物Ir(La3(Lb101)を得た。生成物は、分子量が1027である目標生成物として確認された。
【0106】
合成の実施例3:化合物Ir(La11(Lb31)の合成
【0107】
ステップ1:1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-(イソプロピルジメチルシリル)イソキノリンの合成
【化29】
6-ブロモ-1-(3,5-ジメチルフェニル)イソキノリン(2.67g、8.56mmol)を35mLのテトラヒドロフランに溶解させた。反応系を真空にして窒素ガスで3回置換し、反応フラスコを-78℃までに冷却させ、反応系にn-ブチルリチウム(2.5M)(3.7mL、9.4mmol)をゆっくりと滴下した。滴下が完了した後に30分間反応させた。そして、その温度で反応系にイソプロピルジメチルクロロシラン(1.29g、9.4mmol)を滴下した。滴下が完了した後、徐々に室温までに回復し、一晩反応させた。TLCで反応完了が検出された後、水を添加して焼入れ反応を行ってテトラヒドロフラン層を分離した。水相を酢酸エチルで3回抽出し、有機相を合併し、乾燥させ、濃縮させた。カラムクロマトグラフィーで精製して2.40gの1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-(イソプロピルジメチルシリル)イソキノリン(7.2mmol、収率84.1%)を得た。
【0108】
ステップ2:化合物Ir(La11(Lb31)の合成
【化30】
窒素ガスの雰囲気で、1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-(イソプロピルジメチルシリル)イソキノリン(2.40g、7.2mmol)、三塩化イリジウム三水和物(0.64g、1.80mmol)を、2-エトキシエタノール(70mL)および水(23mL)に24時間還流させた。反応を室温までに冷却させ、回転蒸発して溶剤を除去した後、3,7-ジエチルノナン-4,6-ジオン(774mg、3.6mmol)、KCO(1.24g、9.0mmol)およびエトキシエタノール(25mL)を添加した。真空にして窒素ガスで置換した後、Nの保護下で、室温で24時間反応させた。TLCで反応完了が検出された後、加熱を停止して室温までに冷却させた。反応溶液を珪藻土で濾過し、適量のエタノールで洗浄し、得た固体にジクロロメタンを添加して濾過液を収集した。そして、エタノールを添加して得た溶液を乾燥まで濃縮させずに濃縮させた。固体を濾過し、エタノールで洗浄して1.3gの化合物Ir(La11(Lb31)(1.21mmol、収率67%)を得た。生成物は、分子量が1069である目標生成物として確認された。
【0109】
合成の実施例4:化合物Ir(La54(Lb101)の合成
【0110】
ステップ1:1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-(フェニルジメチルシリル)イソキノリンの合成
【化31】
6-ブロモ-1-(3,5-ジメチルフェニル)イソキノリン(10.45mmol、3g)を30mLのテトラヒドロフランに溶解させた。反応系を真空にして窒素ガスで3回置換し、反応フラスコをドライアイス-エタノール系に置いて-72℃までに冷却させた。反応系にn-BuLi(2.5m)(5mL、12.51mmol)をゆっくりと滴下した。滴下が完了した後に30分間反応させた。そして反応系にジメチルフェニルクロロシラン(2.14g、12.54mmol、1.25 eq.)を滴下した。滴下が完了した後に室温までに徐々に回復し、一晩反応させた。TLCで反応完了が検出された後、水を添加して焼入れ反応を行ってテトラヒドロフラン層を分離した。水相を酢酸エチルで3回抽出し、有機相を合併し、乾燥させて濃縮させた。カラムクロマトグラフィーで精製して無色の油状液体である生成物1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-(フェニルジメチルシリル)イソキノリン(3.46g、収率90%)を得た。
【0111】
ステップ2:イリジウム二量体の合成
【化32】
1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-(フェニルジメチルシリル)イソキノリン(2.9g、7.9mmol、4 eq.)、IrCl・3HO(0.7g、1.97mmol、1eq.)、エトキシエタノール(21mL)および水(7mL)を、100mLの一口フラスコに添加し、窒素ガスで置換した後、24時間還流反応させた。反応を室温までに冷却させ、濾過し、エタノールでフィルターケーキを洗浄して、混合したイリジウム二量体(1.58g、1.33mmol、収率67%)を得た。
【0112】
ステップ3:化合物Ir(La54(Lb101)の合成
【化33】
上記混合したイリジウム二量体、3,7-ジエチル-3-メチル-ノナン-4,6-ジオン(1.2g、5.32mmol、4eq.)、炭酸カリウム(1.84g、13.3mmol、10eq.)および2-エトキシエタノール(40mL)を添加し、Nの保護下で、45℃で一晩反応させた。TLCで反応完了が検出された後、撹拌を停止し、室温までに冷却させた。反応溶液を珪藻土で濾過し、適量のエタノールでフィルターケーキを洗浄し、ジクロロメタンで粗品を洗浄して500mLのナス型フラスコに置いた。エタノール(約20mL)を添加し、常温で、大量の固体が析出したまで回転蒸発してジクロロメタンを除去した。固体を濾過し、適量のエタノールで洗浄した後、乾燥させて化合物Ir(La54(Lb101)(1.3g、収率62%)を得た。生成物は、分子量が1151である目標生成物として確認された。
【0113】
合成の実施例5:化合物Ir(La3)(Lb101)(Lc41)の合成
【0114】
ステップ1:1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチルイソキノリンの合成
【化34】
500mLの三口フラスコに、6-ブロモ-1-(3,5-ジメチルフェニル)イソキノリン(5g、16mmol)、Pd(dppf)Cl(535mg、0.8mmol)、KCO(5.3g、40mmol)およびDMF(80mL)を添加した。窒素ガスで置換した後、MeZnのトルエン溶液(24mL、24mmol)を添加し、90℃で一晩反応させた。GC-MSで反応完了が検出された後、水を添加して焼入れ反応を行って有機相を分離した。水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を合併し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後に濃縮させ、珪藻土を添加して撹拌した。カラムクロマトグラフィーで分離して白色の固体1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチルイソキノリン(3.2g、収率81%)を得た。
【0115】
ステップ2:1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-トリメチルシリルイソキノリンの合成
【化35】
6-ブロモ-1-(3,5-ジメチルフェニル)イソキノリン(48.05mmol、15g)を160mLのテトラヒドロフランに溶解させた。反応系を真空にして窒素ガスで3回置換し、反応フラスコをドライアイス-エタノール系に置いて-72℃までに冷却させた。反応系にn-BuLi(2.5M、23.1mL、57.7mmol)をゆっくりと滴下した。滴下が完了した後に30分間反応させ、そして、反応系にトリメチルクロロシラン(7.82g、72.1mmol)を滴下した。滴下が完了した後に室温までに徐々に回復し、一晩反応させた。TLCで反応完了が検出された後、水を添加して焼入れ反応を行ってテトラヒドロフラン層を分離した。水相を酢酸エチルで3回抽出し、有機相を合併し、乾燥し、回転蒸発した。カラムクロマトグラフィーで精製して無色の油状液体生成物1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-トリメチルシリルイソキノリン(11.7g、収率79%)を得た。
【0116】
ステップ3:化合物Ir(La3)(Lb101)(Lc41)の合成
【化36】
窒素ガスの雰囲気で、1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-トリメチルシリルイソキノリン(3.14g、10.3mmol)、1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-メチルイソキノリン(6.36g、25.7mmol)、三塩化イリジウム三水和物(3.17g、9.0mmol)を2-エトキシエタノール(96mL)および水(32mL)に40時間還流させた。室温までに冷却させた後、濾過し、得た固体をメタノールで複数回洗浄し、乾燥させてイリジウム二量体を得た。
【0117】
窒素ガスの雰囲気で、前のステップにおけるイリジウム二量体(4.48g)、3,7-ジエチル-3-メチルノナン-4,6-ジオン(1.96g、8.65mmol)、KCO(3.98g、28.8mmol)を2-エトキシエタノール(83mL)に40℃までに加熱して24時間撹拌した。反応が完了した後、反応系を室温までに自然に冷却させ、沈殿物を珪藻土で濾過してエタノールで洗浄した。得た固体にジクロロメタンを添加して濾過液を収集した。真空で溶剤を除去し、珪藻土を添加して撹拌した。カラムクロマトグラフィーで分離してIr(La3)(Lb101)(Lc41)(0.83g、純度99.4%)を得た。生成物は、分子量が968である目標生成物として確認された。
【0118】
当業者であれば、上記調製方法は、例示的なものに過ぎず、それを改良することによって本発明の他の化合物の構造を取得することができることを知るべきである。
【0119】
素子の実施例1
【0120】
まず、厚みが120nmのインジウムスズ酸化物(ITO)陽極を有するガラス基板を洗浄した後、酸素プラズマとUVオゾンで処理した。処理した後、基板をグローブボックスで乾燥させて水を除去した。その後、基板を基板ホルダに取り付けて真空室に置いた。以下、指定された有機層に対して、真空度が10-8トルの場合、0.2~2オングストローム/秒の速度でホット真空蒸着によって順にITO陽極に蒸着を行った。化合物HIを正孔注入層(HIL)として用いた。化合物HTを正孔輸送層(HTL)として用いた。化合物EBを電子ブロッキング層(EBL)として用いた。その後、本発明における化合物Ir(La3(Lb31)を、ホスト化合物RHにドーピングして発光層(EML)として用いた。化合物HBを正孔ブロッキング層(HBL)として用いた。HBLにおいて、化合物ETおよび8-ヒドロキシキノリン-リチウム(Liq)の混合物を電子輸送層(ETL)として蒸着した。最後に、厚みが1nmのLiqを電子注入層として蒸着すると共に、120nmのAlを陰極として蒸着した。そして、当該素子をグローブボックスに遷移させ、ガラスカバーと吸湿剤を用いてカプセル化して当該素子を完成させた。
【0121】
素子の実施例2
【0122】
素子の実施例2の調製方法は、発光層(EML)において本発明に係る化合物Ir(La3(Lb101)で本発明に係る化合物Ir(La3(Lb31)を代替する以外、素子の実施例1と同様である。
【0123】
素子の実施例3
【0124】
素子の実施例3の調製方法は、発光層(EML)において本発明に係る化合物Ir(La3)(Lb101)(Lc41)を本発明に係る化合物Ir(La3(Lb31)を代替する以外、素子の実施例1と同様である。
【0125】
素子の比較例1
【0126】
素子の比較例1の調製方法は、発光層(EML)において比較化合物RD1で本発明に係る化合物Ir(La3(Lb31)を代替する以外、素子の実施例1と同様である。
【0127】
素子の比較例2
【0128】
素子の比較例2の調製方法は、発光層(EML)において比較化合物RD2で本発明に係る化合物Ir(La3(Lb31)を代替する以外、素子の実施例1と同様である。
【0129】
素子の比較例3
【0130】
素子の比較例3の調製方法は、発光層(EML)において比較化合物RD3で本発明に係る化合物Ir(La3(Lb31)を代替する以外、素子の実施例1と同様である。
【0131】
一部の素子の詳細の層構造および厚みを、表1に示す。用いられる材料が1種以上の層は、前記重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0132】
【表1-1】
【表1-2】
【0133】
素子に用いられる材料の構造は、以下のように表される。
【化37-1】
【化37-2】
【0134】
異なる電流密度および電圧で、素子のIVLおよび寿命特性を測定した。表2は、1000ニットで、測定された外部量子効率(EQE)、λmax、半値全幅(FWHM)、およびCIEデータを示す。寿命LT97は、15mA/cmで測定されたものである。
【0135】
【表2】
【0136】
表2におけるデータから分かるように、素子の実施例1においては、本発明に係る単一のシリル基で置換されたイソキノリン構造を有する配位子を含有する化合物は、飽和した濃い赤色の放射光を有する。イソキノリン配位子に置換を有しない比較例1と比べ、本発明に係る化合物は、約640nmの放射波長に達し、CIEが0.696、0.302に達し、より狭い半値全幅を有し、より赤くて飽和した放射を提供し、且つ寿命が大幅に向上した。イソキノリン配位子にアルキル基置換を有する比較例2は、効率がやや高いが、最大波長が625nmだけであり、明らかに実施例1における濃い赤色に達することができない。それと同時に、実施例1は、比較例2よりも、寿命がより長く、半値全幅がより狭い。
【0137】
また、実施例3は、比較例3と比べ、単一のシリル基で置換されたイソキノリン構造の効果を示した。比較例3は、2つの6-メチルイソキノリン配位子を有する錯体であり、実施例3は、1つの6-メチルイソキノリン配位子および1つの6-トリメチルシリルイソキノリン配位子を有する錯体であるため、実施例3は、比較例3に対して、レッドシフトが10nmであり、寿命も明らかに向上し、CIEも実施例2に接近する。その結果、錯体に単一のシリル基で置換されたイソキノリン配位子が1つでしかなくても、その効果が著しいことが証明されている。2つの6-トリメチルシリルイソキノリン配位子を有する錯体としての実施例2は、レッドシフトがより明らかであり、より狭い半値全幅を有し、より赤くて飽和した放射を提供し、且つ寿命がより長いため、素子の性能がより良好である。
【0138】
要するに、本発明における化合物は、効率が高く、寿命がより長く、スペクトルが狭いという濃い赤色光を示し、本発明の独特性および重要性を突出して示すことができる。
【0139】
ここで記載される各種の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解すべきである。そのため、当業者にとって、保護しようとする本発明は、本明細書に記載される具体的な実施例および好ましい実施例の変形を含むことが自明である。本発明の構想を逸脱しない前提で、本明細書に記載される材料および構造の多くは、他の材料および構造で代替することができる。本発明がなぜ機能するかについての様々な理論は、限定的ではないことを理解すべきである。
図1
図2