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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】複合多孔質膜及びその製造方法と用途
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20230508BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/34 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/54 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/12 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20230508BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20230508BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20230508BHJP
   B32B 7/03 20190101ALI20230508BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20230508BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20230508BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230508BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230508BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230508BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230508BHJP
   C08J 9/42 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B32B5/18 101
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/26
B01D71/34
B01D71/42
B01D71/40
B01D71/38
B01D71/54
B01D71/52
B01D71/12
B01D71/70
B01D71/64
H01M50/409
B32B7/03
B32B5/32
B32B5/24 101
B32B27/32 Z
B32B27/18 Z
B32B27/30 D
B32B27/20 Z
C08J9/42 CES
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020511525
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 CN2018102316
(87)【国際公開番号】W WO2019037785
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】201710744074.X
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810302163.3
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】501079107
【氏名又は名称】北京▲師▼▲範▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】周建軍
(72)【発明者】
【氏名】李林
(72)【発明者】
【氏名】胡志宇
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182420(JP,A)
【文献】特開2014-213500(JP,A)
【文献】特開2015-201389(JP,A)
【文献】特開2012-020437(JP,A)
【文献】特開2015-071241(JP,A)
【文献】特開2016-014107(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037552(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/073503(WO,A1)
【文献】特表2017-503054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01M 50/40-50/497
C08J 9/00- 9/42
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合多孔質膜であって、少なくとも一層の多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の片側表面または両側表面に位置する少なくとも一層の複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマーの多孔質層である一軸延伸塗布層と、を含む複合多孔質膜。
【請求項2】
請求項1に記載の複合多孔質膜に基づき、上記ナノ繊維の直径は10-500nmであることを特徴とする複合多孔質膜。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合多孔質膜に基づき、そのうち、
上記多孔質ベース層は、多孔質ポリオレフィンベース層から選ばれ、上記多孔質ポリオレフィンベース層は、多孔質ポリエチレンベース層、多孔質ポリプロピレンベース層、または多孔質ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン三層複合ベース層から選ばれる複合多孔質膜。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか一項に記載の複合多孔質膜の製造方法であり、上記方法は以下の工程:
縦方向延伸膜の片側表面または両側表面に塗布液を塗布してから、横方向に延伸することで上記複合多孔質膜を製造し、
その縦方向延伸膜を横方向に延伸処理することで上記記載の多孔質ベース層を製造し;そのうちの塗布液を横方向に延伸処理することで複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層を製造する工程を含む。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法に基づき、上記塗布液は、水を媒体とした分散液であり;上記塗布液は、非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物を含み;上記非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物は、粒子状として系内に分散しており、上記粒子の平均粒径は0.01-3μmであることを特徴とする製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法に基づき、
上記水を媒体とした分散液は、非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物を、乳化重合する方法でポリマーまたはポリマー組成物のエマルジョンを得るか、または、非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物を、研磨または粉砕する方法でポリマーまたはポリマー組成物を含む水性分散液を得る製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法に基づき、水を媒体とした分散液において、上記非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物の含有量は、質量%で5-50%であることを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項4-7に記載の製造方法に基づき、上記塗布液中にはさらに有機フィラーまたは無機フィラーが含まれる;上記無機フィラーには、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ランタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化炭素、ベーマイト、炭化ケイ素、分子篩、タルク、モンモリロンせき中の一種または多種を含まれ;上記有機フィラーには、耐高温高分子中の一種または多種が含まれる;
及び/又は、上記塗布液中にはさらに接着剤が含まれるが;上記接着剤は、少なくともポリアクリレートエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリ(ブタジエンスチレン)エマルジョン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース中の一種を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
リチウム電池セパレーターであり、請求項1-3のいずれかの一項に記載の複合多孔質膜を含むリチウム電池セパレーター。
【請求項10】
ガス分離膜であり、請求項1-3のいずれかの一項に記載の複合多孔質膜を含むガス分離膜。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願では、2017年8月25日に、中国国家知的財産権局に提出された出願番号が201710744074.Xであり、発明の名称が“複合多孔質膜及びその製造方法と用途”である先行出願の優先権を主張する。同時に、2018年4月4日に、中国国家知的財産権局に提出された出願番号が201810302163.3であり、発明の名称が“横方向の延伸方向に沿って配向したナノ繊維状多孔質層を含む複合多孔質膜”である先行出願の優先権を主張する。上記二つの先行出願の全文を引用することで本出願に編み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、多孔質膜の技術分野に属するものであり、具体的には複合多孔質膜及びその製造方法と用途とに関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィン多孔質膜は高分子膜であり、孔径が5nm~1000nmである多孔質膜であり、よく通気性材料(例、オムツ、医療用敷材、衣服の下地など)と、液体分離用材料と、限外ろ過材料と、膜ろ過用材料と、スーパーキャパシターと、電池のセパレーター材料と、などの分野で幅広く活用されている。
【0004】
眼下、ポリオレフィン多孔質膜の製造方法には、主に2種類あり、1つは溶融押出延伸(乾式法)であり、1つは熱誘起相分離法(TIPS、湿式法)である。そのうち、乾式延伸プロセスは、さらに一軸延伸プロセスと二軸延伸プロセスとに分けられる。湿式製造プロセスは、高沸点小分子物質をポロゲンとしてポリオレフィンに添加する共に、有機溶媒にて溶解しキャストフィルムを形成し、その後、降温による相分離が発生すると、有機溶媒で小分子を抽出して、二軸延伸を行うことで多孔質構造が形成される。乾式二軸延伸プロセスでは、溶媒の使用を必要としないため、多孔質膜の縦方向と横方向との強度が比較的高くなっており幅広く活用されている。
【0005】
乾式二軸延伸プロセスは、主に、ポリプロピレンに造核作用を有するβ結晶改質剤を添加することで、高含量のβ結晶を有するポリプロピレン膜が形成され、それは延伸中にβ結晶からα結晶に転換されるが、ポリプロピレンの各相状態間の密度差を利用して多孔質構造を形成し、単層ポリプロピレン多孔質膜の製造に用いる。先行研究(CN1062357A)では、高含量のβ結晶のポリプロピレンの元均質膜を延伸することで多孔質膜を得ることを開示した。上記多孔質膜は溶融加工法にて製造したもので、成膜用のポリプロピレン樹脂中に造核剤を添加することで、β結晶を有するポリプロピレンの膜が得られ、その後、縦方向に4-5倍、横方向に2-4倍延伸させることで多孔質膜が得られる。縦方向の延伸倍率が高いため、膜を電池セパレーターとして使う場合、裁断中に縦方向に沿って破け易く、歩留まりと生産効率との低下に繋がる。同時に、上記方法で製造した多孔質膜を、リチウムイオン電池セパレーターとして使う場合、ポリプロピレンは表面エネルギーが低い非極性材料であるため、電池内のカボネート系極性電解液の非極性ポリプロピレンセパレーターに対する浸潤性は弱い。同時に、電池に組み立てる際も、非極性のポリプロピレンセパレーターと電池電極との間に極性の違いによる密着性の不具合に繋がった。従って、二軸延伸ポリプロピレンセパレーターの使用中の縦方向での破れを緩和させ、セパレーター表面の極性を高めることは、セパレーターの使用性能を改善するにあたり重要な意味をもつ。
[発明の内容]
【0006】
従来技術の不足を解決するため、本発明の第1目的は、複合多孔質膜及びその製造方法と用途とを提供するが、上記複合多孔質膜は、少なくとも一層の多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の少なくとも片側表面に位置する少なくとも一層の一軸延伸塗布層と、を含む;具体的に、上記複合多孔質膜は、少なくとも一層の多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の片側または両側の表面に位置する少なくとも一層の複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層と、を含む;または、 上記複合多孔質膜は、二軸延伸多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の少なくとも片側に位置する一軸延伸塗布層と、を含む。上記製造方法により、横方向に延伸する前に、塗布液を取り入れる方法で上記複合多孔質膜が製造される。上記複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層は、複合多孔質膜の使用中の縦方向での亀裂を防ぐことができ、複合多孔質膜の使用性能を向上させる。
【0007】
本発明の第2目的は、リチウムイオン電池セパレーターを提供するが、上記リチウムイオン電池セパレーターは、上記の複合多孔質膜を含む;上記複合多孔質膜を含むリチウムイオン電池セパレーターは、電解液中でゲルを形成するため、電解液のセパレーターに対する浸潤性を改善し、電池の循環性と使用性能とを改善する;なお、リチウムイオン電池セパレーターの使用寿命も向上できる。
【0008】
本発明の第3目的は、ガス分離膜を提供するが、上記分離膜は上記の複合多孔質膜を含む;上記複合多孔質膜を含むガス分離膜の塗布層の透過係数はガスごとに違うため、ガスの分離と濃縮との実現を可能とした。
【0009】
本発明の第4目的は、複合多孔質膜の製造装置を提供する。
【0010】
本発明の目的は、具体的に以下の技術案によって実現される。
【0011】
本発明の第1番目は、複合多孔質膜を提供する。上記複合多孔質膜は少なくとも一層の多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の少なくとも片側表面に位置する少なくとも一層の一軸延伸塗布層と、を含む。
【0012】
本発明の一種の実施案では、上記複合多孔質膜は、二軸延伸した多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の少なくとも片側表面に位置する一軸延伸塗布層と、を含む。
【0013】
本発明において、上記複合多孔質膜は、さらに上記多孔質ベース層の少なくとも片側表面に位置する二軸延伸塗布層を含む。
【0014】
本発明において、上記複合多孔質膜は、さらに上記多孔質ベース層と一軸延伸塗布層との間の少なくとも片側表面に位置する二軸延伸塗布層を含む。
【0015】
本発明において、上記多孔質ベース層の少なくとも片側表面に位置する上記一軸延伸塗布層は、多孔質の塗布層であっても良いし、無孔質の緻密塗布層であっても良い。
【0016】
本発明において、上記多孔質ベース層の少なくとも片側表面に位置する上記二軸延伸塗布層は、多孔質の塗布層であっても良いし、無孔質の緻密塗布層であっても良い。
【0017】
本発明において、上記塗布層の厚さは0.1-4μmであり、好ましくは1-2μmである。
【0018】
好ましくは、塗布層の塗布液が、有機溶媒を媒体とした溶液である場合、塗布液が乾燥した後に形成される塗布層は、延伸中に無孔質の緻密塗布層を形成する。上記無孔質の緻密構造は塗布液中のポリマーから形成されるものである。
【0019】
好ましくは、塗布層の塗布液が、有機溶媒を媒体とした溶液及び無機フィラーからなる複合塗布液である場合、塗布液が乾燥した後に形成される塗布層は、延伸中に多孔質塗布層を形成する。上記多孔質構造は、塗布液中のポリマーと無機フィラーとの界面延伸割れにより形成されるものである。
【0020】
好ましくは、塗布層の塗布液が、水を媒体とした分散液、即ちポリマーのエマルジョンまたは水性分散液である場合、塗布液が乾燥した後に形成される塗布層は、延伸中に多孔質塗布層を形成する。上記多孔質構造は、ポリマー粒子の積み重ねによる隙間である。
【0021】
好ましくは、塗布層の塗布液が、水を媒体とした分散液、即ちポリマーのエマルジョンまたは水性分散液と、無機フィラーとからなる複合塗布液である場合、塗布液が乾燥した後に形成される塗布層は、延伸中に多孔質の塗布層を形成する。上記多孔質構造は、ポリマー粒子の積み重ねによる隙間及びポリマーと無機フィラーとの界面延伸の割れにより形成されるものである。
【0022】
好ましくは、塗布層の塗布液が、水を媒体とした水溶性ポリマー溶液である場合、塗布液が乾燥した後に形成される塗布層は、延伸中に無孔質の緻密塗布層を形成する。上記無孔質の緻密構造は塗布液中のポリマーから形成される。
【0023】
好ましくは、塗布層の塗布液が、水を媒体とした水溶性ポリマー溶液と、無機フィラーと、の複合塗布液である場合、塗布液が乾燥した後に形成される塗布層は、延伸中に多孔質の塗布層を形成する。上記多孔質構造は、塗布液中のポリマーと無機フィラーとの界面延伸の割れにより形成されるものである。
【0024】
本発明のもう一つの実施形態では、上記複合多孔質膜は少なくとも一層の多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の片側または両側の表面に位置する少なくとも一層の複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層と、を含む。
【0025】
本発明において、上記複合多孔質膜は少なくとも一層の多孔質ベース層と、少なくとも一層の複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層と、を含む;当業者が分かった、上記多孔質ベース層と、上記複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層と、の配置方式には、具体的に制限しなく、その配置は当業者がわかっている何の層と層との配置方式で良い。当該複合多孔質膜は、優れた縦方向亀裂防止機能を有する共に、優れたイオン輸送性能及び著しく向上された使用性能を有する。
【0026】
本発明において、上記複合多孔質膜は、一層の多孔質ベース層と、一層の複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層と、を含む;上記複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層は、上記の多孔質ベース層の片側表面に位置する。
【0027】
本発明において、上記複合多孔質膜は、一層の多孔質ベース層と、二層の複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層と、を含む;上記複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層は、上記の多孔質ベース層の両側表面に位置する。
【0028】
本発明において、上記複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層の厚さには、特に制限がないものの、その厚さは当業者がわかっている横方向延伸方法で製造したいずれかの厚さで良い;好ましくは、上記複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層の厚さは、0.1-4μmであり、好ましくは1-2μmである。
【0029】
本発明に基づき、上記非ポリオレフィン系ポリマーは、非ポリエチレン系ポリマーと、非ポリプロピレン系ポリマーと、であることが好ましい;好ましくは、上記非ポリオレフィン系ポリマーは非ポリプロピレン系ポリマーであることが好ましい。
【0030】
本発明において、上記ナノ繊維の直径は10-500nmであり、好ましくは15-250nmである。
【0031】
上記各実施形態において、上記多孔質ベース層の選択には特に制限がなく、それは当業者がわかっている複合多孔質膜を造れる何のベース層で良いものの、使用目的さえ達成すればよいものとする。電池セパレーターを例に、上記多孔質ベース層は、正極と負極とを隔離する共に、イオン輸送のチャネル効果を果たせるものであれば良い。好ましくは、上記多孔質ベース層は、多孔質ポリオレフィンベース層から選ばれるが、当該多孔質ポリオレフィンベース層としては、特に適当なことは多孔質ポリエチレンベース層、多孔質ポリプロピレンベース層、または多孔質ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層複合ベース層、から選ばれる。さらに好ましくは、上記多孔質ベース層は、多孔質ポリプロピレンベース層から選ばれる。
【0032】
上記の各実施形態において、上記多孔質ベース層の孔隙率、通気性および厚さは具体的に制限しないものの、それらは当業者承知の何の孔隙率、通気性および厚さで良い。上記多孔質ベース層の孔隙率、通気性および厚さへの選択は、本発明記載の割高なイオン輸送性能をもつ複合多孔質膜を製造する条件を満たすもので、電子素子用セパレーターの役割さえ実現できるものであれば良い。すなわち、正極と負極とを隔離する共に、イオン輸送のチャネル効果さえ果たせるものであれば良い;好ましくは、上記多孔質ベース層の孔隙率は25-60%であり、上記多孔質ベース層のガーレー(Gurley)通気性の値は100-400sであり、上記多孔質ベース層の厚さは5-55μmである。
【0033】
上記の各実施形態において、上記複合多孔質膜の縦方向の引張強度は60-130MPaである;縦方向の破断伸びは5-70%である;横方向の引張強度は15-60 MPaである;横方向の破断伸びは10-100%である;上記複合多孔質膜の厚さは10-60μmであり、より好ましくは15-30μmである;上記複合多孔質膜のガーレー(Gurley)通気性の値は100-400sである。
【0034】
本発明の第2番目は、上記複合多孔質膜の製造方法を提供する。上記製造方法は、以下の工程を含む:
(S1)ポリプロピレン中にβ結晶の形成を促進する造核剤を添加する;
(S2)工程(S1)での造核剤を混合したポリプロピレンを溶融押出し、成形することで高含量のβ結晶膜が得られる;
(S3)高含量のβ結晶膜を、縦方向に延伸し縦方向延伸膜を得て、塗布液を上記縦方向延伸膜の片側または両側の表面に塗布する;
(S4)塗布液を塗布した縦方向延伸膜を、横方向に延伸することで上記複合多孔質膜を得る。
【0035】
本発明の第2番目において、上記製造方法の工程(S2)と工程(S3)との間には、さらに以下の工程を含ませて良い:
(S2’)塗布液を工程(S2)で得られた高含量のβ結晶膜の片側または両側の表面に塗布し、塗布液を塗布した高含量のβ結晶膜板が得られる。
【0036】
本発明の第2番目において、上記の複合多孔質膜とは、高含量のβ結晶膜を縦方向に延伸して得られた縦方向延伸膜の片側または両側の表面に塗布液を塗布してから、横方向に延伸して得られた複合多孔質膜をさす;または、上記の複合多孔質膜とは、高含量のβ結晶膜の片側または両側の表面に塗布液を塗布してから、縦方向に延伸して得られた縦方向延伸膜をさす;縦方向延伸膜の片側または両側の表面に塗布液を塗布してから、横方向に延伸して複合多孔質膜が得られる。
【0037】
本発明の第2番目において、工程(S3)と工程(S2’)中の上記塗布液は有機溶媒を媒体とした溶液または水を媒体とした溶液または分散液を含む;
上記有機溶媒を媒体とした溶液には、有機溶媒でポリマーまたはポリマー組成物を溶解した溶液が含まれる;上記水を媒体とした溶液には、水で水溶性ポリマーまたは水溶性ポリマー組成物を溶解した溶液が含まれる;上記水を媒体とした分散液には、非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物を、乳化重合する方法で得られたポリマーまたはポリマー組成物のエマルジョンが含まれるか、または非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物を、研磨または粉砕する方法で得られたポリマーまたはポリマー組成物を含む水性分散液が含まれる。
【0038】
好ましくは、上記有機溶媒を媒体とした溶液または水を媒体とした溶液または分散液には、さらに無機フィラーを含んで良い。好ましくは、上記無機フィラーには、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ランタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化炭素、ベーマイト、炭化ケイ素、分子篩、タルク、モンモリロンせき中の一種または多種が含まれて良い。
【0039】
好ましくは、上記有機溶媒を媒体とした溶液において、上記ポリマーまたはポリマー組成物には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリエチレンワックス、塩化ポリエチレン、塩化ポリプロピレン、ポリエチレンアルコール、ポリウレタン、(メタクリレート-アクリロニトリル)共重合体、ポリオキシエチレンエーテル、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体、ポリジメチルシロキサン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(ビニルアルコール)-ポリ(ビニルスルホン酸)グラフト共重合体、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾール、スルホン化ポリ(フェニルキノリン)、パーフルオロスルホン酸ポリマー(例えばNafion)などの一種または多種が含まれる。
【0040】
好ましくは、上記有機溶媒を媒体とした溶液において、上記有機溶媒は、ケトン系溶媒、例えば、アセトン、ブタノンなどから選ばれても良く、アルコール系溶媒、例えば、メタノール、エタノールなどから選ばれても良く、ハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、モノクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などから選ばれても良く、アミド系溶媒、例えば、N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミドなどから選ばれても良く、ベンゼン系溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど、及びテトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテルなどから選ばれて良い。
【0041】
好ましくは、上記水を媒体とした溶液において、上記水溶性ポリマーまたは水溶性ポリマー組成物は、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテル、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリルアミド、キトサン、コンニャクグルコマンナンなど中の一種または多種を含む。
【0042】
好ましくは、上記水を媒体とした溶液において、上記非水溶性ポリマーまたは非水溶性ポリマー組成物は、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、パーフルオロスルホン酸ポリマー(例えば、Nafion)、など中の一種または多種を含む。
【0043】
本発明の第3番目は、上記複合多孔質膜の製造方法を提供する。上記製造方法には以下の工程が含まれる:
縦方向延伸膜の片側または両側の表面に塗布液を塗布してから、さらに横方向に延伸することで上記複合多孔質膜を製造し得る。
【0044】
本発明の第3番目において、上記縦方向延伸膜は塗布を経てから、さらに横方向に延伸され、縦方向延伸膜は横方向への延伸処理を経て本発明記載の複合多孔質膜が製造し得られる;その内、塗布液は横方向に延伸処理されることで、複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向されたナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層が製造される。
【0045】
本発明の第3番目において、上記縦方向延伸膜は、当業者が知っている慣用手順で製造した縦方向延伸膜である。好ましくは、上記縦方向延伸膜の孔隙率は5-35%である。さらに好ましくは、上記縦方向延伸膜の孔隙率は15-35%である。好ましくは、上記縦方向延伸膜の厚さは16-80μmである;さらに好ましくは、上記縦方向延伸膜の厚さは20-60μmである。
【0046】
本発明の第3番目において、上記複合多孔質膜は以下の方法にて製造しうる:
1)ポリプロピレン中にβ結晶の形成を促進する造核剤を添加し、造核剤を混合したポリプロピレンを溶融押出し、成形することで高含量のβ型結晶膜が得られる;
2)高含量のβ結晶膜を、縦方向に延伸し縦方向延伸膜が得られるが、縦方向延伸膜の片側または両側の表面に塗布液を塗布してから、さらに横方向に延伸することで、上記複合多孔質膜を製造し得る;
本発明の第2番目及び第3番目により、工程(S2)および工程1)に置いて、上記高含量のβ型結晶膜は、ポリプロピレンの高含量のβ結晶膜である。上記ポリプロピレンの立体規則性及び溶融流動指数には特に制限しないものの、当該ポリプロピレンを、造核剤の参与で高含量のβ結晶膜に製造し、さらに縦方向に延伸することで孔隙率が5-35%である縦方向延伸膜が得られる。例示的に、上記ポリプロピレンはポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンコポリマーである。好ましくは、上記ポリプロピレンの立体規則性は90-98%である;溶融流動指数は1-10g/10minである。さらに好ましくは、上記ポリプロピレンの立体規則性は95-98%である;溶融流動指数は2-5g/10minである。
【0047】
本発明の第2番目及び第3番目により、工程(S1)および工程1)に置いて、上記β結晶の生成を促進する造核剤は比較的高い核生成効率を有し、且つ静態的結晶条件でのβ結晶の含量が50%以上である造核剤から選ばれるものである。例示として、上記造核剤は市販品から選ばれるか、または既知の従来技術で合成した製品でも良い。上記造核剤の種類及び造核効率はVarga J. Journal of Macromolecular Science: Physics 2002, 41, 1121を参照する。例示的に、上記造核剤は有機小分子であっても良いし、無機塩であっても良い。有機小分子としては、例えば、N、N-ジシクロヘキシルテレフタルアミド、N、N-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド、またはγ-キナクリドンなどがあり、無機塩としては、例えば、アジピン酸及び/またはスベリン酸のジヒドラジド、ヘプタン二酸および/またはスベリン酸のカルシウム塩、テトラヒドロ無水フタル酸のカルシウム塩またはバリウム塩、ヘキサヒドロ無水フタル酸のカルシウム塩またはバリウム塩などがある。上記造核剤は混合使用が可能なもので、当業者が理解するように上記造核剤の混合比率に関しては、特に決まりがないものの、本発明記載のシステムに適用可能なものであれば良い。当業者が理解するように、β結晶の生成を促進する造核剤と、ポリプロピレンと、の使用量比も通常通りで良いもので、例えば0.001-0.1wt%である。
【0048】
本発明の第2番目及び第3番目により、工程(S2)および工程1)に置いて、本発明の高含量のβ結晶膜を製造するにあたり、採用した溶融押出及び結晶成形などのプロセスは全て当業者が周知している通常方法である。つまり、上記ポリプロピレンを溶融した後、流涎キャスティングロール上で結晶成形することで、高含量のβ結晶膜が得られる。当業者が理解するように、上記キャスティングロールの温度は特に制限しないもので、その温度は溶融押出されたポリプロピレンがその表面で結晶成形される温度で良い。好ましくは、上記キャスティングロールの温度は110-140oCであり、さらに好ましくは、上記キャスティングロールの温度は120-130oCである。
【0049】
本発明の第2番目及び第3番目により、工程(S2)および工程1)に置いて、上記溶融押出は、スクリュー押出機で行うことが好ましい;当業者が理解するように、上記スクリュー押出機への具体的な制限はないもので、単軸スクリュー押出機でもよいし、二軸スクリュー押出機でも良いもので、本発明記載の体系に適することであれば良い。上記成形は、ダイによる成形が好ましい;当業者が理解するように、上記ダイへの具体的な制限はないものの、当該ダイは、可調整なダイであっても不可調整なダイであっても良いもので、本発明記載の体系に適するものであれば良い。
【0050】
本発明の第2番目及び第3番目により、工程(S2)および工程1)に置いて、上記溶融押出機の溶融押出温度に関しては、具体的に制限しないもので、当業者が既知の本発明のポリプロピレン体系に適用でき、且つ溶融押出することができ高含量のβ結晶膜が得られるものであれば良い。好ましくは、上記高含量のβ結晶膜を押し出すスクリュー押出機の溶融押出温度は200~260℃であり、好ましくは、上記高含量のβ結晶膜を押し出すスクリュー押出機の溶融押出温度は220~250℃である。
【0051】
本発明の第2番目及び第3番目により、工程(S2)および工程1)に置いて、上記高含量のβ結晶膜の厚さに関しては、具体的に制限しないもので、本発明の複合多孔質膜の体系に適用でき、且つ上記複合多孔質膜の機能を実現するものであれば良い。即ち、正極と負極とを隔離する共に、リチウムイオンの輸送チャネルとしての機能を果たす。上記高含量のβ結晶膜の厚さへの選択は、目標生成物である複合多孔質膜の厚さ、及び横方向延伸倍率と縦方向延伸倍率とに基づき合理的に行う。好ましくは、上記高含量のβ結晶膜の厚さは、80-300μmであり、さらに好ましくは、上記高含量のβ結晶膜の厚さは、100-200μmである。
【0052】
本発明の第2番目及び第3番目により、工程(S2)および工程1)に置いて、上記高含量のβ結晶膜中のβ結晶の含量に関しては、特に制限しないもので、上記高含量のβ結晶膜を製造でき、且つ製造された高含量のβ結晶膜を延伸させることで本発明に適用できる複合多孔質膜体系を製造できるもので良い。そして、上記延伸後の高含量のβ結晶膜は、上記複合多孔質膜としての役割を果たせることを必須条件とする。つまり正極と負電極とを隔離する共に、リチウムイオンの輸送チャネルとしての機能を果たす。好ましくは、上記高含量のβ結晶膜中のβ結晶の含量は、80%より高い。さらに好ましくは、上記高含量のβ結晶膜中のβ結晶の含量は、85%より高い。
【0053】
本発明の第2番目及び第3番目により、工程(S3)および工程2)に置いて、上記縦方向への延伸温度は60~120℃であり、好ましくは、上記縦方向への延伸温度は80~110℃である;上記縦方向への延伸倍率は2.5-5.5であり、好ましくは、上記縦方向延伸倍率は3-5である;上記塗布液が乾燥されて得られる塗布層の厚さは0.3~10μmである; 好ましくは、上記塗布液が乾燥されて得られる塗布層の厚さは2-10μmであり、好ましくは3-5μmである。
【0054】
本発明の第2番目及び第3番目により、工程(S4)および工程2)に置いて、当業者が知っている、上記横方向延伸温度および横方向延伸倍率に関しては、具体的に制限しないものの、本発明の複合多孔質膜の体系に適用できるものであればよい;当業者は、上記複合多孔質膜の活用分野に応じて必要な横方向延伸倍率を選択し、塗布層の厚さを制御したり、または複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層の厚さ、並びにナノ繊維の直径および繊維の長さを制御する。好ましくは、上記横方向の延伸温度は120~150℃である;上記横方向の延伸倍率は2~5倍である。さらに好ましくは、上記横方向の延伸温度は130~140℃である。上記横方向の延伸倍率は2.5-4.5倍である。
【0055】
本発明の第3番目において、上記複合多孔質膜は以下の方法で製造しうる:
a)ポリプロピレンを溶融押出し、高速延伸による配向成形をすることで、始発のポリプロピレン膜が得られる。
【0056】
b)ポリプロピレン始発膜を高温で焼きなましすることで、ポリプロピレンの予備延伸シートを得る。
【0057】
c)乾式一軸延伸プロセスでポリプロピレン予備延伸シートを延伸することで、縦方向に延伸した膜を得て、縦方向に延伸した膜の片側または両側の表面に塗布液を塗布し、さらに横方向に延伸して上記複合多孔質膜を製造し得る。
【0058】
本発明に基づき、工程C)は具体的に以下の工程を含む:
c’)ポリプロピレン予備延伸シートを多層ラミネート処理し、20-50°Cで20-50%の予備延伸をしてから、100-130°Cで引き続き30-80%延伸し、選択的に延伸後の多層ラミネートされた縦方向延伸膜を剥離することで、縦方向延伸膜を製造しうる;そして、縦方向延伸膜の片側または両側の表面に塗布液を塗布し、さらに横方向に延伸することで、上記複合多孔質膜を製造し得る。
【0059】
工程c’)において、上記多層ラミネート処理とは、少なくとも1層のポリプロピレン予備延伸シートをラミネート処理し、延伸後に少なくとも1層を含む縦方向延伸膜を製造しうる;さらに好ましくは、8-16層のポリプロピレン予備延伸シートをラミネート処理し、延伸後に層間剥離をすることで1-4層を含む縦方向延伸膜が得られる。
【0060】
工程a)において、上記で採用した溶融押出及び高速延伸配向成形などのプロセスは全て本分野周知の慣用方式である。つまり上記ポリプロピレンを溶融押出した後、高速延伸をし、冷却ロールで成形することでポリプロピレンの始発膜を得る。当業者が理解するように、上記冷却ロールの温度は特に制限しないが、その温度は溶融押出されたポリプロピレンがその表面で冷却固化成形されるものであればよい。好ましくは、上記冷却ロールの温度は60-120oCであり、より好ましくは、上記冷却ロールの温度は70-90oCである。
【0061】
工程a)において、上記溶融押出はスクリュー押出機で行うことが好ましい;当業者が理解するように、上記スクリュー押出機に対して具体的な制限はなく、一軸スクリュー押出機であっても良いし、二軸スクリュー押出機であっても良いもので、本発明記載の体系に適用するものであれば良い。上記成形はダイ成形が好ましい;当業者が理解するように、上記ダイは、具体的な制限はなく、可調整ダイであっても良いし、不可調整のダイであっても良い。上記ダイは、本発明記載の体系に適用するものであれば良い。
【0062】
工程a)において、上記溶融押出機の溶融押出温度に対して具体的な制限はないものの、当業者に知られている本発明のポリプロピレン体系に適用できて、且つ溶融押出することができポリプロピレン予備延伸シートを得るものであればよい。好ましくは、上記ポリプロピレン予備延伸シートのスクリュー押出機の溶融押出温度は200~260℃であり、好ましくは、上記ポリプロピレン予備延伸シートのスクリュー押出機の溶融押出温度は220~250℃である。
【0063】
工程a)において、上記高速延伸による配向成形をする目的は、ポリプロピレンの分子鎖に配向構造を形成するためであり、上記高速延伸の速度に対しては特に制限しない。好ましくは、上記高速延伸の速度は20-80m/分であり、より好ましくは、上記高速延伸の速度は40-60m/分である。
【0064】
工程b)において、上記高温焼鈍しとは、ポリプロピレン始発膜を一定温度で一定時間放置するが、その目的は急速冷却中に結晶化されてないポリプロピレンを引き続き結晶化させ、結晶化率を高め、結晶構造をより良くさせることである。好ましくは、上記高温焼鈍しの温度は100-140oCであり、焼鈍しの時間は8-10hであり、より好ましくは、上記高温焼鈍しの温度は120-130oCであり、焼鈍しの時間は4-5hである。
【0065】
工程c)及び工程c’)において、乾式一軸延伸プロセスにおいて、実際に延伸されるポリプロピレン予備延伸シートおよび延伸後に製造された縦方向延伸膜の厚さは、特に制限しなく、本発明の複合多孔質膜の体系に適用可能である共に、上記複合多孔質膜の機能を実現できるものであればよい。つまり、正電極と負電極とを隔離する共に、リチウムイオンの輸送チャネルとしての機能を果たせる。乾式一軸延伸プロセスでは、よく多層ラミネーション処理方式を採用するため、多層ラミネーション処理されるポリプロピレン予備延伸シートのラミネーション厚さによって、得られる縦方向延伸膜の厚さも異なる;採用される製造プロセスによって、選択される縦方向延伸膜の厚さまたは剥離後に得られるラミネーション層の数も変わってくる;好ましくは、ポリプロピレン予備延伸シートの厚さは16-60μmであり、より好ましくは、ポリプロピレン予備延伸シートの厚さは20-30μmである。好ましくは、上記縦方向延伸膜の厚さは16-80μmである;より好ましくは、上記縦方向延伸膜の厚さは20-60μmである。
【0066】
本発明の第3番目により、上記塗布液の組成および含有量に対しては特に制限しないもので、当業者に知られている多孔質ベース層の表面で複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層を製造できるものであれば良い;好ましくは、上記塗布液は水を媒体とした分散液である。上記塗布液には、非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物が含まれる;上記非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物は粒子状で系中に分散されており、上記粒子の平均直径は0.01-3μmであり、より好ましくは、0.1-1μmである。
【0067】
本発明の第3番目により、上記水を媒体とした分散液とは、非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物を、乳化重合する方法により得られたポリマーまたはポリマー組成物のエマルジョンであり、または非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物を、研磨または粉砕する方法により得られたポリマーまたはポリマー組成物を含む水分散液である;当業者がわかるように、上記水を媒体とした分散液中の非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物への選択及び使用量に関しては、具体的な制限がないものの、当業者が知っているいずれの水を媒体としたポリマーベースの分散液を製造してから、さらに塗布することで上記複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層を、製造できるものであれば良い;好ましくは、上記非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物は粒子状で塗布液中に分散されており、当該塗布液を少なくとも縦方向延伸膜の片側表面に塗布させることで、縦方向延伸膜の表面にポリマーまたはポリマー組成物が塗布されてナノ粒子を形成し、横方向に延伸される際に、ナノ粒子も縦方向延伸膜と共に延伸される;横方向延伸方向に沿って配向されたナノ繊維状の多孔質層を製造する。好ましくは、上記非水不溶性のポリマーまたは非水不溶性のポリマー組成物のガラス転移温度または融点は、横方向延伸温度より低い;好ましくは、上記非水不溶性のポリマーまたは非水不溶性のポリマー組成物には、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチレンサクシネート、ポリウレタン、パーフルオロスルホン酸ポリマー(例えばNafion)など中の一種または多種が含まれる。好ましくは、上記非水溶性のポリマーまたは非水溶性のポリマー組成物が、水を媒体とした分散液中での含有率は質量%で5-50%であり、好ましくは、10-30%である。好ましくは、上記水が、水を媒体とした分散液中での含有率は質量%で50-95%であり、好ましくは、70-90%である。
【0068】
本発明の第3番目により、上記塗布液には、さらに有機フィラーまたは無機フィラーが含まれる;上記有機フィラーまたは無機フィラーの添加は、塗布層をよりよくするもので、複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層の孔隙率と、耐パンク性と、複合多孔質膜の高温耐性と、を改善することに有益である。上記無機フィラーまたは有機フィラーは、当業者が知っている任意の複合多孔質膜の体系に適用できるもので良い。好ましくは、上記無機フィラーには、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ランタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化炭素、ベーマイト、炭化ケイ素、分子篩、滑石粉、モンモリロンせき中の一種または多種が含まれる。好ましくは、上記有機フィラーには、耐高温高分子、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシドなど中の一種または多種が含まれる。
【0069】
本発明の第3番目により、上記無機フィラーのサイズには特に制限しなく、多孔質ベース層を均質に塗布する目標を実現できるものであれば良い。本発明の技術案において、無機粒子は緻密な無機粒子であっても良いし、多孔質の無機粒子であっても良い。多孔質の無機粒子である場合、無機多孔質粒子自体の好ましい平均孔径は通常0.0001-0.5μmである。
【0070】
本発明の第3番目により、上記塗布液中の上記有機フィラーまたは無機フィラーの添加量には特に制限しなく、製造し得られた上記複合多孔質膜の応用分野により、その有機フィラーまたは無機フィラーの添加量も変わってくる。好ましくは、上記有機フィラーの添加量は塗布液の5-10wt%である;上記無機フィラーの添加量は塗布液の5-20wt%である。
【0071】
本発明の第3番目により、上記塗布液にはさらに接着剤が含まれる;上記接着剤の添加は、塗布層をよりよくするもので、複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層と、多孔質ベース層と、の接着性の改善することに有益であり、使用寿命を延長する。上記接着剤は、当業者が知っているいずれの複合多孔質膜の体系に適用できるものであれば良い。好ましくは、上記接着剤は、ポリアクリレートエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリ(ブタジエン-スチレン)エマルジョン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどを含む。上記接着剤の添加量は、塗布液質量の2-8wt%である;好ましくは3-6wt%である。
【0072】
本発明の第4番目は、上記複合多孔質膜の用途を提供し、リチウムイオン電池セパレーター、ガス分離膜などの分野に用いられる。
【0073】
本発明の第5番目は、リチウム電池のセパレーターを提供し、上記リチウム電池のセパレーターは上記複合多孔質膜を含む。
【0074】
本発明の第6番目は、ガス分離膜を提供し、上記ガス分離膜は上記複合多孔質膜を含む。
【0075】
本発明において、上記塗布層を製造し得る塗布液の主要組成は、ガス別に違う拡散係数をもつ材料である。
【0076】
好ましくは、上記ガス別に違う拡散係数をもつ材料は、シリコーンゴム、ポリイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、酢酸セルロースなどの高分子を含む。
【0077】
本発明において、上記ガス分離膜は、ガス分離の機能層を有するガス分離膜の製造に用いられる。
【0078】
本発明の第7番目は、上記複合多孔質膜の製造装置を提供し、上記装置は、原料供給押出システムと、流涎キャスティングシステムと、縦方向延伸システムと、第2塗布システムと、横方向延伸システムと、を含む;
上記原料供給押出システムは、流涎キャスティングシステムを介して縦方向延伸システムと繋がっており、上記縦方向延伸システムは、第2塗布システムを介して横方向延伸システムと繋がっている。
【0079】
本発明において、上記原料供給押出システムは、原料供給機と、スクリュー押出機と、第1溶融体パイプと、濾過器と、第2溶融体パイプと、を含む。
【0080】
好ましくは、上記第2溶融体パイプは、流涎キャスティングシステムと繋がっている。
【0081】
好ましくは、上記原料供給機は、上記スクリュー押出機の原料投入口の上方に位置する;上記スクリュー押出機は第1溶融体パイプを介して濾過器と繋がっている;上記濾過器は、第2溶融体パイプを介して流涎キャスティングシステムと繋がっている;
好ましくは、上記第1溶融体パイプ中にはさらに計量ポンプを設置している。
【0082】
本発明において、上記流涎キャスティングシステムにはダイ及びキャスティングロールが含まれる。
【0083】
好ましくは、上記ダイは厚さ調整可能なダイから選ばれる;上記キャスティングロールは、温度が精密的に制御されるキャスティングロールから選ばれる。
【0084】
本発明において、上記装置はさらに第1塗布システムを含む。
【0085】
本発明において、上記第1塗布システムは、流涎キャスティングシステムと縦方向延伸システムとの間に設置する。
【0086】
本発明において、上記第1塗布システムは、第1塗布部材を含む。
【0087】
本発明に基づき、上記第2塗布システムは、第2塗布部材を含む。
【0088】
本発明において、上記縦方向延伸システムは、温度が精密的に制御される予備加熱ロールと、延伸ロールと、熱硬化ロールと、を含む。
【0089】
本発明において、上記横方向延伸システムは、レールと、チェーンと、オーブンと、駆動部と、を含む。
本発明において、上記装置は、さらに牽引巻取システムを含むが、その目的は製造された複合多孔質膜を上記牽引巻取システムに通すことでロール状の複合多孔質膜を得ることである。
【0090】
本発明において、上記装置は、さらに厚さ測定フィードバック制御システムも含む。上記厚さ測定フィードバック制御システムには、厚さ測定器と制御システムとが含まれる;上記厚さ測定器は、膜の厚さをオンライン測定する共に、制御システムによってダイを自動調整することで、多孔質膜の厚さへの自動制御を実現する。
【0091】
本発明において、上記厚さ測定フィードバック制御システムは、第1厚さ測定フィードバック制御システムと、第2厚さ測定フィードバック制御システムと、を含む。
【0092】
本発明において、上記第1厚さ測定フィードバック制御システムは、流涎キャスティングシステムと縦方向延伸システムとの間に配置されている。好ましくは、上記第1厚さ測定フィードバック制御システムは、第1塗布システムと縦方向延伸システムとの間に配置される。
【0093】
本発明において、上記第2厚さ測定フィードバック制御システムは、横方向延伸システムの後ろに配置されている。好ましくは、上記第2厚さ測定フィードバック制御システムは、横方向延伸システムと牽引巻取システムとの間に配置される。
【0094】
本発明に置いて、上記第1厚さ測定フィードバック制御システムは、膜の厚さ測定器を含み、その目的は、延伸前の膜の厚さを測定及び制御することや、または少なくとも片側表面に塗布液が塗布されている延伸前の膜の厚さを測定及び制御することである。
【0095】
本発明に置いて、上記第2厚さ測定フィードバック制御システムは、膜の厚さ測定器を含み、その目的は、延伸後の膜の厚さを測定及び制御することである。
【0096】
本発明に置いて、上記装置はさらに自動制御システムを含む。
【0097】
本発明に置いて、上記自動制御システムは、圧力及び温度の制御モジュールと、PLCと、周波数変換機と、センサーと、を含み、装置の温度、圧力、張力、速度などへの制御を実現するために使われる。
【0098】
本発明の第8番目は、複合多孔質膜の製造方法を提供することであり、それは上記装置にて製造されるものであって、上記製造方法は以下の工程を含む:
(a)β結晶の形成を促進することができる造核剤を含むポリプロピレンを、原料供給装置にてスクリュー押出機に送り込み溶融させ、溶融体は、第1溶融体パイプを介して計量ポンプを経過し、正確に計量された後、濾過器で濾過された後第2溶融体パイプに入る。
【0099】
(b)工程(a)の溶融体を、ダイを介してキャスティングロールに流涎し、結晶化することで高含量のβ結晶膜を形成する。
【0100】
(c)工程(b)での高含量のβ結晶膜をキャスティングロールから剥離させる;
好ましくは、第1塗布システムにより塗布液を膜の片側または両側の表面に塗布する。
【0101】
好ましくは、高含量のβ結晶膜を膜厚さ測定器で測定し、延伸前の膜の厚さまたは少なくとも片側表面に塗布液を塗布した延伸前の膜の厚さを測定する。
【0102】
(d)工程(c)での延伸前の膜または片側または両側の表面に塗布液を塗布した延伸前の膜を、縦方向延伸システムで延伸することで縦方向に延伸された膜をえる。
【0103】
(e)第2塗布システムにて塗布液を工程(d)で得られた縦方向に延伸された膜の片側または両側の表面に塗布する。
【0104】
(f)工程(e)の膜を、横方向延伸システムで延伸することで横方向に延伸された膜を製造し、上記複合多孔質膜が得られる。
【0105】
本発明において、上記製造方法はさらに以下の工程を含む:
(g)工程(f)の複合多孔質膜を、牽引巻き取りシステムに通過させることでロール状の複合多孔質膜を得る。
【0106】
選択的に、牽引巻き取りシステムに通す前に、膜厚さ測定器で複合多孔質膜の厚さを測定する。
【0107】
本発明において、上記塗布液の塗布は知られている従来技術のいずれかの方法、例えば、スプレー塗布、ナイフ塗布、グラビア塗布などにより実施して良い。
【0108】
有益な効果
1.本発明は、複合多孔質膜及びその製造方法と用途とを提供する。上記複合多孔質膜は、少なくとも1層の多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の少なくとも片側表面に位置する少なくとも1層の一軸延伸塗布層を含む。具体的に、上記複合多孔質膜は、少なくとも1層の多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の片側または両側の表面に位置する少なくとも1層の複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層と、を含み、または、上記複合多孔質膜は、二軸延伸のポリプロピレン多孔質ベース層と、上記多孔質ベース層の少なくとも片側表面に位置する一軸延伸塗布層と、を含む。上記製造方法では、横方向への延伸前に塗布液を導入する方法で上記複合多孔質膜を製造し、上記複合多孔質膜の横方向延伸方向に沿って配向したナノ繊維状の非ポリオレフィン系ポリマー多孔質層は、複合多孔質膜の使用中での縦方向への亀裂を抑制するため、複合多孔質膜の使用性能を向上する。
【0109】
2.本発明は、さらに複合多孔質膜を製造する装置を提供し、上記装置は、原料供給押出システムと、流涎キャスティングシステムと、縦方向延伸システムと、第2塗布システムと、横方向延伸システムと、を含む;上記装置では、性能パラメータの優れた複合多孔質膜を造り出し、なお、上記方法はプロセスも簡単で、製造しやすいため、産業化製造に適している。
【0110】
3.本発明はさらに、リチウム電池セパレーターおよびガス分離膜を提供する。 上記リチウム電池セパレーターは、上記の複合多孔質膜を含む。上記ガス分離膜は、上記の複合多孔質膜を含む。上記の複合多孔膜をリチウム電池のセパレーターとして活用する場合、塗布層は電解液中でゲルを形成し、電解液のセパレーターへの浸潤性を改善したり、または多孔質ベース層の耐熱性を改善することができる。上記の複合多孔膜をガス分離膜として活用する場合、塗布層を通過する各種ガスの通過係数はガス別に違うため、ガスの分離及び濃縮を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
図1図1は本発明実施例1の複合多孔質膜の走査型電子顕微鏡写真である。
図2図2は本発明比較例1の複合多孔質膜の走査型電子顕微鏡写真である。
図3図3は本発明記載の複合多孔膜を製造する装置である。
【0112】
添付図の図例は下記の通り:1は原料供給機;2はスクリュー押出機;3は計量ポンプ;4は濾過器;5は第2溶融体パイプ;6はダイ;7はキャスティングロール;8は第1塗布部材;9は膜厚さ測定器;10は縦方向延伸システム;11は第2塗布部材;12は横方向延伸システム;13は膜厚さ測定器;14は牽引巻き取りシステム;15は自動制御システム。
【0113】
[具体的な実施方法]
本発明の目的と、技術案と、利点と、をより明確にするため、以下具体的な実施例を持って、添付図を参考に、本発明をさらに詳しく説明する。だが、当業者がわかるように、本発明は添付図及び以下の実施例だけに制限されるものではない。
【実施例1】
【0114】
溶融流動指数が2.5g/10分のホモポリプロピレン樹脂と、ホモポリプロピレン樹脂の0.03wt%を占めるポリプロピレンβ結晶造核剤であるN,N-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジアミドと、を均一に混合してから、200-250oCの温度で溶融した後にポリプロピレン層溶融体が形成された。
【0115】
ポリプロピレン層溶融体をT型ダイにより押し出した後、128oCのキャスティングロールで冷却結晶化させ、β結晶を含むポリプロピレン膜、つまり高含量のβ結晶膜が得られた。当該膜を100oCで縦方向に4.5倍延伸したあと、二つの表面に固形物含量が20%で、ポリフッ化ビニリデン粒度が200nmである水性分散液を塗布し、厚さ6μmの塗布層を形成した後に、横方向延伸システムに取り込み、135oCで横方向に3.0倍延伸し、20μm厚さの複合ポリプロピレン多孔質膜が得られた。そのうち、二つのポリフッ化ビニリデン層の厚さは各自2μmであり、芯層となるポリプロピレン多孔質ベース層の厚さは16μmである。二つの表層のポリフッ化ビニリデン層中のポリフッ化ビニリデン繊維の直径は30-70nmである。
【0116】
図1は本発明実施例1の複合多孔質膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【実施例2】
【0117】
溶融流動指数が2.5g/10分であるホモポリプロピレン樹脂を一軸スクリュー押出機により200-250oC温度で溶融した後、T型ダイで押し出し、速度50m/分で巻き取り高度に配向されたポリプロピレン膜が得られた。ポリプロピレン膜を125oCで焼鈍し結晶化させた後、ポリプロピレン予備延伸シートが得られた。ポリプロピレン予備延伸シートを30oCで40%予備延伸した後、125oCで引き続き50%延伸することで孔隙率が30%である縦方向延伸膜が得られた。当該縦方向延伸膜の二つの表面に、固形分含量が20%で、ポリフッ化ビニリデン粒度が200nmである水性分散液を塗布し、厚さ6μmの塗布層を形成してから、横方向延伸システムに入り、140oCで横方向に4.0倍延伸することで、20μm厚さの複合ポリプロピレン多孔質膜が得られた。そのうち、二つのポリフッ化ビニリデン層の厚さは各自2μmであり、芯層となるポリプロピレン多孔質ベース層の厚さは12μmである。二つの表層のポリフッ化ビニリデン層中のポリフッ化ビニリデンナノ繊維の直径は30-50nmである。
【実施例3】
【0118】
実施例3において、塗布した水性分散液は固形分含量が15%で、粒度が500nmであるポリメチルメタクリレートである以外に、他は実施例1と同じであり、得られた二つのポリメチルメタクリレート層の厚さは各自2μmであり、芯層となるポリプロピレン多孔質ベース層の厚さは16μmである。二つの表層のポリメチルメタクリレートナノ繊維の直径は80-120nmである。
[比較例1]
【0119】
溶融流動指数が2.5g/10分であるホモポリプロピレン樹脂と、ホモポリプロピレン樹脂の0.03wt%を占めるポリプロピレンβ結晶造核剤であるN,N-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジアミドと、を均一に混合し、200-250oCの温度で溶融した後、ポリプロピレン層溶融体が形成された。
【0120】
ポリプロピレン層溶融体をT型ダイで押し出した後、128oCのキャスティングロールにて冷却結晶化させることで、β結晶を含むポリプロピレン膜、つまり高含量のβ結晶膜が得られた。当該膜を100oCで縦方向に4.5倍延伸した後、横方向延伸システムに投入し、135oCで横方向に3.0倍延伸することで、厚さ16μmのポリプロピレン膜が得られた。ポリプロピレンベース膜の二つの表面に、固形分含量が20%で、ポリフッ化ビニリデン粒度が200nmである水性分散液を各自塗布することで、厚さ2μmの塗布層を形成し乾燥させて、厚さ20μmの複合ポリプロピレン多孔質膜が得られた。
【0121】
図2は本発明比較例1の複合多孔膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【0122】
図1からわかるように、本発明の製造方法を採用することで、ポリプロピレン縦方向延伸膜の表面に、塗布した200nmの球状粒子が凝集されたポリフッ化ビニリデン塗布層を延伸した後、球状のポリフッ化ビニリデン粒子はベース層の横方向延伸に伴い横方向に沿って配向されたナノ繊維に変形され、ナノ繊維の直径は約10-70nmである。図2からわかるように、本発明の製造方法を採用しない場合、塗布層は横方向に延伸されず、得られたものは球状粒子が凝集したポリフッ化ビニリデン塗布層である。
【実施例4】
【0123】
溶融流動指数が2.5g/10分であるホモポリプロピレン樹脂と、ホモポリプロピレン樹脂の0.03wt%を占めるポリプロピレンβ結晶造核剤であるN,N-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジアミドと、を均一に混合し、原料供給機1により一軸スクリュー押出機2に添加し、温度160-230oCで溶融した後、計量ポンプ3で計量し、濾過器4を通過してから第2溶融体パイプ5を通じてT型ダイ6に入って押し出され、キャスティングロール7で冷却し、β結晶造核剤を含むポリプロピレン膜が得られる。上記β結晶造核剤を含むポリプロピレン膜の厚さは140μmである。
【0124】
当該膜は、膜厚さ測定器9を経過し、縦方向延伸システム10に入り、100oCで縦方向に4.5倍延伸させることで、縦方向延伸膜が得られた。
【0125】
縦方向延伸膜を、第2塗布システムにて両側に固形分含量が25wt%のポリメチルメタクリレート水性分散液を塗布し、乾燥させた後、塗布層の厚さは6μmである。塗布した縦方向延伸膜は横方向延伸システムに入り、135oCで横方向に3.0倍延伸させることで、表面に多孔質構造を有するポリメチルメタクリレートを両面塗布した複合多孔質膜が得られた。
【0126】
上記塗布層の厚さは2μmである;上記複合ポリプロピレン多孔質膜の厚さは20μmである。
【0127】
上記で製造した複合ポリプロピレン多孔質膜を、リチウムイオン電池セパレーターとして用いる場合、上記セパレーターのリチウムイオン電池電解液に対する浸液性及び吸液率は、全て単層ポリプロピレンセパレーターより著しく向上された。
【実施例5】
【0128】
実施例5は実施例4とほぼ同じであるが、違いは、縦方向延伸膜について塗布システム(II)にてNafion溶液(デュポン社から購入)を片側表面に塗布し、乾燥後の塗布層の厚さは3μmであり、横方向に延伸させることで片側表面に無孔質の緻密構造のNafionを単面塗布した複合ポリプロピレン多孔質膜が得られた。
【0129】
上記塗布層の厚さは1.0μmである;上記複合ポリプロピレン多孔質膜の厚さは19μmである。
【0130】
上記で製造した複合ポリプロピレン多孔質膜を、リチウム硫黄電池のセパレーターとして用いる場合、表面のNafion層が無孔質の緻密構造であるため、電解液中に溶解しているポリスルフィドはセパレーターを通過して輸送されることができないが、リチウムイオンはNafion中のスルホン酸基と結合されることで輸送される。従って、複合ポリプロピレン多孔質膜は、リチウム硫黄電池中のポリスルフィドの「シャトル効果」を緩和させることでリチウム硫黄電池のサイクル性能を向上させた。
【実施例6】
【0131】
実施例6は実施例4とほぼ同じであるが、違いは、縦方向延伸膜について、第2塗布システムにてポリジメチルシロキサンのキシレン溶液を片側表面に塗布し、乾燥後の塗布層の厚さは6μmであり、横方向に延伸させることで片側表面に無孔質の緻密構造であるポリジメチルシロキサンを単面塗布した複合ポリプロピレン多孔質膜が得られた。
【0132】
上記塗布層の厚さは2μmである;上記複合ポリプロピレン多孔質膜の厚さは20μmである。
【0133】
上記で製造した複合ポリプロピレン多孔質膜をガス分離膜として使う場合、浸透気化法によるエタノール/水溶液分離は良い分離効果を示した。
【実施例7】
【0134】
実施例4-6に記載の複合ポリプロピレン多孔質膜を製造する装置であって、原料供給押出システムと、流涎キャスティングシステムと、縦方向延伸システムと、第2塗布システムと、横方向延伸システムと、を含む装置。
【0135】
上記原料供給押出システムは、流涎キャスティングシステムを介して縦方向延伸システムと繋がり、上記縦方向延伸システムは、第2塗布システムを介して横方向延伸システムと繋がる。
【0136】
本発明の1つの好ましい実施形態において、上記原料供給押出システムは、原料供給機1と、スクリュー押出機2と、第1溶融体パイプと、濾過器4と、第2溶融体パイプ5と、を含む。
【0137】
上記第2溶融体パイプ5は流涎キャスティングシステムと繋がる;上記原料供給機1は上記スクリュー押出機2の原料投入口の上方に位置する;上記スクリュー押出機2は第1溶融体パイプを介して濾過器4と繋がる;上記濾過器4は第2溶融体パイプ5を介して流涎キャスティングシステムと繋がる;上記第1溶融体パイプにはさらに計量ポンプ3を設ける。
【0138】
本発明の1つの好ましい実施形態において、上記流涎キャスティングシステムは、ダイ6とキャスティングロール7と、を含む;上記ダイ6は厚さ自動調整可能なダイから選ばれる;上記キャスティングロール7は温度が精密的に制御されたキャスティングロールから選ばれる。
【0139】
本発明の1つの好ましい実施形態において、上記装置はさらに第1塗布システムを含む;上記第1塗布システムは、流涎キャスティングシステムと縦方向延伸システムとの間に設置する;上記第1塗布システムは塗布部8を含む;上記第2塗布システムは第2塗布部11を含む。
【0140】
本発明の1つの好ましい実施形態において、上記縦方向延伸システム10は温度が精密的に制御された予備加熱ロールと、延伸ロールと、熱硬化ロールと、のロールセットを含む;上記横方向延伸システム12はレールと、チェンと、オーブンと、駆動構造と、を含む。
【0141】
本発明の1つの好ましい実施形態において、上記装置はさらに牽引巻き取りシステム14を含む。
【0142】
本発明の1つの好ましい実施形態において、上記装置はさらに厚さ測定フィードバック制御システムを含む;上記厚さ測定フィードバック制御システムは、厚さ測定器と、制御システムと、を含む;上記厚さ測定器は膜厚さをオンライン測定する共に、制御システムによりダイを自動制御することで、ポリプロピレン多孔質膜の厚さへの自動制御を実現する。
【0143】
本発明の1つの好ましい実施形態において、上記厚さ測定フィードバック制御システムは第1厚さ測定フィードバック制御システムと、第2厚さ測定フィードバック制御システムと、を含む;上記第1厚さ測定フィードバック制御システムは、流涎キャスティングシステムと縦方向延伸システムとの間に設ける;上記第1厚さ測定フィードバック制御システムは、第1塗布システムと縦方向延伸システムとの間に設ける;上記第2厚さ測定フィードバック制御システムは横方向延伸システムの後ろに設ける;上記第2厚さ測定フィードバック制御システムは横方向延伸システムと牽引巻き取りシステム14とのとの間に設ける。
【0144】
上記第1厚さ測定フィードバック制御システムは膜厚さ測定器9を含む;上記第2厚さ測定フィードバック制御システムは膜厚さ測定器13を含む。その目的は延伸後の膜の厚さを測定し制御するためである。
【0145】
本発明の1つの好ましい実施形態において、上記装置はさらに自動制御システム15を含む;上記自動制御システム15は圧力制御モジュールと、温度制御モジュールと、PLCと、周波数変換器と、センサーと、を含む。
【0146】
以上のよう、本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は上記実施形態に限られるものではない。本発明の精神及び原則をもとに行われる全ての修正と、同価置換と、改善と、は、本発明の保護範囲内に含まれるとことする。

図1
図2
図3