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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】冷却衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D13/005 108
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021185534
(22)【出願日】2021-11-15
(65)【公開番号】P2023011483
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2023-03-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年10月7日~9日に開催された、JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2021にて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593161375
【氏名又は名称】山真製鋸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135610(JP,A)
【文献】登録実用新案第3229228(JP,U)
【文献】登録実用新案第3206845(JP,U)
【文献】特開2008-007877(JP,A)
【文献】特開2020-204131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/002-13/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体と、前記衣服本体にポケット状に設けられ、保冷材として凍結可能な液体入りのペットボトルが立ち姿勢で出し入れ自在に収容される収容部と、前記衣服本体の内面側に露出して蛇行状に這わされ、一端側が前記収容部に上側で接続され他端側が前記収容部に下側で接続された可撓性チューブと、前記チューブに取り付けられたポンプと、手動操作を受けて前記ポンプを駆動させる、ポケット収容可能なコントローラを備え、
前記ポンプの作動により、前記チューブの一端側から前記収容部に流入してきた冷却流体が前記ペットボトルに接触してその外面を滑落しながら垂れ落ちる過程で冷却された上で前記チューブの他端側に戻され、前記チューブを流通する冷却流体循環経路が構成されていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項2】
請求項1に記載した冷却衣服において、
収容部は保冷材として凍結可能で熱を受け取って徐々に溶けていく液体入りのペットボトルが立ち姿勢で出し入れ自在に収容され上側と下側の接続部が設けられ、防水性で柔軟な素材の合成樹脂シートで構成されており、
可撓性チューブは一端側が前記収容部の前記上側の接続部接続され他端側が前記収容部の前記下側の接続部で接続され、
ポンプの作動により、前記チューブの一端側から前記収容部に前記上側の接続部から流入してきた冷却流体が液滴となり前記ペットボトルに接触してその外面を滑落しながら垂れ落ちる過程で冷却された上で下側の液溜まりに合流し、その液溜まりは前記下側の接続部から前記チューブの他端側に戻されることを特徴とする冷却衣服。
【請求項3】
請求項2に記載した冷却衣服において、
収容部は平袋状になっており、ペットボトルが収容されると変形して中間部が膨らんだ状態になることを特徴とする冷却衣服。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した冷却衣服において、
衣服本体の内面には伸縮自在な挿通型ガイド部が複数設けられ、チューブが前記ガイド部に挿通されることで這わされていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項5】
請求項4に記載した冷却衣服において、
挿通ガイド部は、衣服本体の内面に縫着されてループ状になったゴムテープで構成されていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した冷却衣服において、
衣服本体は、肩部を介して後身ごろと左右の前身ごろの生地が連なっているベスト型であり、チューブは肩部を介して前身ごろから後身ごろに連なって這わされていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項7】
請求項6に記載した冷却衣服において、
収容部は後身ごろに設けられ、前記収容部の蓋は後身ごろの外側に配置していることを特徴とする冷却衣服。
【請求項8】
請求項7に記載した冷却衣服において、
収容部は後身ごろに設けられ、前記収容部の蓋は後身ごろの外側に配置しており、前記蓋を開いて冷却流体を入れると共に、ペットボトルを収容することを特徴とする冷却衣服。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載した冷却衣服において、
二重ポケットの内袋で収容部が構成されていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項10】
請求項9に記載した冷却衣服において、
二重ポケットの外袋の内面は断熱シートで覆われていることを特徴とする冷却衣服。
【請求項11】
請求項10に記載した冷却衣服において、
二重ポケットの外袋の内面と内袋の外面との間に固形の保冷剤が収容可能になっていることを特徴とする冷却衣服
【請求項12】
請求項1から11のいずれかにに記載した冷却衣服において、
コントローラは間欠運転指令の操作を受けてポンプを間欠運転させる間欠運転機能を備えることを特徴とする冷却衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境の作業現場等での使用に適した冷却衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏場等の高温環境下での作業は汗をかき易く、熱中症になり易い。これを防止するために、ファンの回転によって外気を服の内方と人体側との間に強制的に空気流を形成した状態で汗を蒸発させ易くしてその際に生じる気化熱により冷却する原理を利用した空調衣服が知られている。
而して、このような空冷方式では冷却効果に限界があるため、より高い冷却効果を獲得すべく、特許文献1に記載のように、衣服本体に流路を配廻しそこに冷却液を循環させて冷却する液体循環式冷却衣服が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3212335号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の液体循環式冷却衣服では、氷水等の冷却液を循環させているだけなので、最初は冷却効果が高くとも、着用しているうちに冷却液の温度が上昇して、短時間で冷却効果が低下してしまうという問題があった。特に、溶接作業場のようなかなりの高温となる作業場においては、極めて短い時間で冷却効果が低下してしまうことになり、実用性に乏しいという欠点があった。
それに対して、例えば、冷却衣服に冷却液を冷却する熱交換器を設ければ、冷却効果の低下を抑制することは可能であるが、冷却衣服の製造コストが高くなってしまうことになる。更に、熱交換器はどうしても嵩張り、更に重さもあるので、その冷却衣服を着ると動き難くなってしまう。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、快適な冷却効果を長時間にわたって維持できる一方、嵩張り難く軽量で適当な耐久性を有して、使い勝手が良いだけでなくコスト的にも有利な、冷却流体循環方式の冷却衣服の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために為されたものであり、請求項1の発明は、 衣服本体と、前記衣服本体にポケット状に設けられ、保冷材として凍結可能な液体入りのペットボトルが立ち姿勢で出し入れ自在に収容される収容部と、前記衣服本体の内面側に露出して蛇行状に這わされ、一端側が前記収容部に上側で接続され他端側が前記収容部に下側で接続された可撓性チューブと、前記チューブに取り付けられたポンプと、手動操作を受けて前記ポンプを駆動させる、ポケット収容可能なコントローラを備え、 前記ポンプの作動により、前記チューブの一端側から前記収容部に流入してきた冷却流体が前記ペットボトルに接触してその外面を滑落しながら垂れ落ちる過程で冷却された上で前記チューブの他端側に戻され、前記チューブを流通する冷却流体循環経路が構成されていることを特徴とする冷却衣服である。
請求項2の発明は、請求項1に記載した冷却衣服において、収容部は保冷材として凍結可能で熱を受け取って徐々に溶けていく液体入りのペットボトルが立ち姿勢で出し入れ自在に収容され上側と下側の接続部が設けられ、防水性で柔軟な素材の合成樹脂シートで構成されており、可撓性チューブは一端側が前記収容部の前記上側の接続部接続され他端側が前記収容部の前記下側の接続部で接続され、ポンプの作動により、前記チューブの一端側から前記収容部に前記上側の接続部から流入してきた冷却流体が液滴となり前記ペットボトルに接触してその外面を滑落しながら垂れ落ちる過程で冷却された上で下側の液溜まりに合流し、その液溜まりは前記下側の接続部から前記チューブの他端側に戻されることを特徴とする冷却衣服である。
請求項3の発明は、請求項2に記載した冷却衣服において、
収容部は平袋状になっており、ペットボトルが収容されると変形して中間部が膨らんだ状態になることを特徴とする冷却衣服である。
【0007】
請求項の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した冷却衣服において、衣服本体の内面には伸縮自在な挿通型ガイド部が複数設けられ、チューブが前記ガイド部に挿通されることで這わされていることを特徴とする冷却衣服である。
【0008】
請求項の発明は、請求項に記載した冷却衣服において、挿通ガイド部は、衣服本体の内面に縫着されてループ状になったゴムテープで構成されていることを特徴とする冷却衣服である。
【0009】
請求項の発明は、請求項1からのいずれかに記載した冷却衣服において、衣服本体は、肩部を介して後身ごろと左右の前身ごろの生地が連なっているベスト型であり、チューブは肩部を介して前身ごろから後身ごろに連なって這わされていることを特徴とする冷却衣服である。
【0010】
請求項7の発明は、請求項6に記載した冷却衣服において、収容部は後身ごろに設けられ、前記収容部の蓋は後身ごろの外側に配置していることを特徴とする冷却衣服である。
請求項8の発明は、請求項7に記載した冷却衣服において、収容部は後身ごろに設けられ、前記収容部の蓋は後身ごろの外側に配置しており、前記蓋を開いて冷却流体を入れると共に、ペットボトルを収容することを特徴とする冷却衣服である。
【0011】
請求項の発明は、請求項1からのいずれかに記載した冷却衣服において、二重ポケットの内袋で収容部が構成されていることを特徴とする冷却衣服である。
【0012】
請求項10の発明は、請求項に記載した冷却衣服において、二重ポケットの外袋の内面は断熱シートで覆われていることを特徴とする冷却衣服である。
【0013】
請求項11の発明は、請求項10に記載した冷却衣服において、二重ポケットの外袋の内面と内袋の外面との間に固形の保冷剤が収容可能になっていることを特徴とする冷却衣服である。
【0014】
請求項12の発明は、請求項1から11のいずれかにに記載した冷却衣服において、コントローラは間欠運転指令の操作を受けてポンプを間欠運転させる間欠運転機能を備えることを特徴とする冷却衣服である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の冷却衣服によれば、快適な冷却効果を長時間にわたって維持できる一方、嵩張り難く軽量で適当な耐久性を有して、使い勝手が良いだけでなくコスト的にも有利なものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る冷却ベストを外側から見た斜視図である。
図2図1の冷却ベストを内側から見た斜視図である。
図3図1の冷却ベストの前身ごろを開いて平面状に展開した状態を外側から示した図である。
図4図3の冷却ベストを内側から示した図である。
図5図2に示す冷却ベストの背当て部分の概略的な分解斜視図である。
図6図4のコントローラとポンプの電気結合の説明図である。
図7図1の冷却ベストへのペットボトルの出し入れの仕方の説明図である。
図8図7でペットボトルを入れた状態での冷却効果の長時間維持メカニズムの説明図である。
図9図1の冷却ベストの着用状態を示す図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る冷却ベストの、図4に対応する図である。
図11】本発明の第3の実施の形態に係る冷却ベストの、図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の実施の形態に係る冷却衣服を図面にしたがって説明する。
図1から図5に示すように、冷却衣服はベスト型の冷却ベスト1になっており、その衣服本体3は、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維の生地で構成されている。
後身ごろ5と左右の前身ごろ7、9とは肩部11を介して連なっており、通気性のよいメッシュ状の生地で構成されている。
左前身ごろ7と後身ごろ5の間の脇下部分では、左前身ごろ7と後身ごろ5からそれぞれ延び出たベルト13、13が移動カン15を介して長さ調整可能に連結されている。右前身ごろ9と後身ごろ5の間の脇下部分も同様に連結されている。
【0018】
左前身ごろ7と右前身ごろ9の間では左の前身ごろ7と右前身ごろ9からそれぞれベルト17、17が延び出ている。一方のベルト17の端部に雄バックル19aが接続され、他方のバックル17の端部に雌バックル19bが接続されており、雄バックル19aが雌バックル19bに差し込まれて係止することで着脱自在に連結されている。
一対のベルト17、17が上下二段に設けられており、それぞれ着脱自在に連結されている。
【0019】
左前身ごろ7の中間から下側にかけて、二枚の袋布が外面側から重ね合され、それぞれの縁が左前身ごろ7の縁に対して縫着されて取り付けられている。この二枚の袋布により別布仕様のパッチ状のポケット21が構成されている。このポケット21は横方向に延びたファスナ23で開閉するようになっている。また、ポケット21の外面側の袋布を利用した共布仕様のパッチ状のポケット25が、ポケット21の外面側に重ね合わせで設けられている。このポケット25は上側が開口しており、その開口はファスナ21よりも下側に位置している。
ポケット21の上側では、左前身ごろ7を横断するように、太めの帯シートの両端が左前身ごろ7に対して縫着されて、挿通型ガイド部27が設けられている。
右前身ごろ9側でも同様に構成されている。
【0020】
後身ごろ5には、二枚の袋布29a、29bが外面側から重ね合され、それぞれの縁が後身ごろ5の縁に対して縫着されて取り付けられている。袋布29aは後身ごろ5の背当て部を兼ねている。この二枚の袋布29a、29bにより別布仕様のパッチ状のポケット29が構成されている。
ポケット29は後身ごろ5の形状に対応して肩部11に近づく部分はU形になって左右に分岐しており、それぞれの上端部は袋布29b側が後身ごろ5に対して縫着されておらず、そこがポケット29の小開口29c、29cになっている。
このポケット29の主な開口は袋布29bを横方向に分断した部分であり、そこをファスナ33で開閉するようになっている。このファスナ33は分岐部分に近い上側に位置している。
【0021】
また、ポケットの29の外面側には、二枚の袋布35a、35bが縫着されて別布仕様のパッチ状のポケット35が重ねて設けられている。このポケット35の開口は袋布35bを横方向に分断した部分であり、そこをファスナ37で開閉するようになっている。
ポケット35の横寸法はポケット29と同様であるが、上下寸法はポケット29よりも小さくなっており、ポケット29の下縁に揃えられている。
上記のように、後身ごろ5を構成するメッシュ状の生地に対して袋布29a等が縫着されて一体化されている。ポケット35を構成する袋布35aはネット状の生地で構成されているが、その他の袋布29a等は水が浸入し難い通常の生地で構成されている。
【0022】
後身ごろ5とポケット29の袋布29aにそれぞれ挿通穴39が開けられ、ハトメリング41が取り付けられて、穴縁が補強されると共に後身ごろ5と袋布29aが結合されている。この挿通穴39を介して、後身ごろ5の内面側とポケット29の内部が通じている。挿通穴39は後身ごろ5の左下の角隅部に位置している。
ポケット29の袋布29bとポケット35の袋布35aにそれぞれ挿通穴43が開けられ、ハトメリング45が取り付けられて、穴縁が補強されると共に袋布29bと袋布35aが結合されている。この挿通穴43を介して、ポケット29の内部とポケット35の内部が通じている。挿通穴43はポケット35の袋布35bにより隠れており、後身ごろ5の内面側からも見えないが、衣服本体3としては、後身ごろ5の右下の角隅部に位置している。
【0023】
ポケット29の袋布29bとポケット35の袋布35aにはそれぞれ別の挿通穴47が開けられ、ハトメリング49が取り付けられて、穴縁が補強されると共に袋布29bと袋布35aが結合されている。この挿通穴47を介しても、ポケット29の内部とポケット35の内部が通じている。挿通穴47もポケット35の袋布35bにより隠れており、後身ごろ5の内面側からも見えないが、衣服本体3としては、後身ごろ5の左下の角隅部に位置している。挿通穴47と挿通穴43は、ポケット35内では斜め対角線上で対向しており、挿通穴47が上側に位置している。
また、この挿通穴47の下側の近傍には、伸縮自在なポンプホルダ51が設けられている。短く切断したゴムテープの長さ方向両端部が袋布35aの外面側に対して縫着されて一体化したもので構成されている。このポンプホルダ51も、ポケット35の袋布35bにより隠れている。
【0024】
後身ごろ5と左右の前身ごろ7、9の内面側には、伸縮自在な挿通型ガイド部53、53、……が複数設けられている。挿通型ガイド部53は、短く切断した細目のゴムテープの長さ方向両端部が内面側に対して縫着されて一体化したものである。
【0025】
ポケット29の内部には、防水性の合成樹脂シートで構成された平袋状の収容部55が収められている。この収容部55は一方の面には大きな円形の穴が形成されており、そこが収容部55の主な開口部になっている。
ポケット29の袋布29bにも同じサイズの穴が形成されており、穴縁どうしが揃えられた状態で重ね合され、その重ね合された穴縁に口金57が取り付けられている。従って、収容部55は口金57を介してポケット29に結合している。図7で詳細に示すように、口金57には紐59を介して蓋体61が繋がっており、口金57の雌ネジ部に蓋体61側の雄ネジ部が螺合すると収容部55の開口部が閉じられる。蓋体61には液体が漏れないようパッキン63が嵌め込まれている。
口金57と紐59と蓋体61はプラスチックで一体成形されており、紐59は細いため可撓性になっているが、口金57と蓋体61はある程度剛性になっている。
【0026】
衣服本体3側は上記のように構成されており、冷却流体循環経路65が組み込まれている。冷却流体循環経路65は収容部55とチューブ67で構成されており、チューブ67はプラスチック製で可撓性になっている。収容部55の上側と下側をそれぞれ接続部としてチューブ67が収容部55と接続されており、収容部55の蓋体61が閉じられると冷却流体の閉鎖流路になる。
チューブ67は、両端側を除いて衣服本体3のメッシュ状の生地で構成された内面側に露出している。その露出部分は挿通型ガイド部53、53、……に順次挿通されて、内面側に沿って蛇行状に這い回された状態になっており、内面側が全面にわたって網羅されている。この蛇行部分67aが衣服本体3を着用したときに、着用者の上着と接触する。
【0027】
チューブ67の両端側は、挿通穴39を通されてポケット29の内部に入り込んでいる。
チューブ67の一端部はそのまま、ポケット29の内部に収められた収容部55の上側の接続部55aに接続されて収容部55の内部と連通している。他端側は、挿通穴43に通されてポケット35の内部にU字状に引き出されている。このポケット35の内部では、ポンプホルダ51にポンプ69が保持されており、このポンプ69が引き出された部分に取付けられている。チューブ67の他端部はポケット29の内部にあり、収容部55の下側の接続部55bに接続されて収容部55の内部と連通している。
【0028】
ポンプ69の作動により、図6の矢印に示すように冷却流体が流動するので、収容部55の上側の接続部から収容部55の内部に冷却流体が流入し、下側の接続部55bからチューブ67に流出し、チューブ67の蛇行部分67aを流通した後に、再び、収容部55の上側の接続部55aから収容部55の内部に流入する。冷却流体循環経路65はこのような流れで冷却流体が循環する。
【0029】
ポンプ69のコード69aは、挿通穴47を通されて、ポケット29の内部に入り込み、左側の小開口29cから外に引き出されている。左前身ごろ7には、挿通型ガイド部27の上側に上下に二つの挿通ガイド部53、53が取付けられており、引き出されたコード69aはこの挿通ガイド部53、53、帯シート27の間を通り抜けて、ポケット25の内部に収容されたコントローラ71に脱着自在に接続されている。
【0030】
このコントローラ71は、図6に示す外形をしており、外面にON/OFFスイッチ71aを備えており、このスイッチ71aの押下によりポンプ69に電源供給されてポンプ69が作動し、再度の押下により電源供給が停止するようになっている。電源供給中は、ランプ71bが点灯する。また、外部からの充電・外部への給電用にUSBコネクタ71cが設けられている。コントローラ71は左前身ごろ7のポケット25に収容されているので、冷却ベスト1を着用中でも操作が容易になっている。
コントローラ71にはバッテリとマイコンが収容されて、スイッチ71aやポンプ69のモータと繋がっており、ソフトウエアとの協働により、モータへの給電を制御する運転モード実行機能が実現され、ポンプ69が作動する。
【0031】
運転モード実行機能では、複数の運転モードから所望のものが選択可能になっており、スイッチ71aが押されると、タイマーにより計測されて3時間運転モードが実施される。その際に、スイッチ71aが一回押されると、連続運転モードが選択される。スイッチ71aが二回押されると、1分間運転→1分間停止→1分間運転→1分間停→……の間欠運転モード(1)が選択される。スイッチ71aが三回押されると、20秒間運転→1分30秒間停止→20秒間運転→1分30秒間停止……の間欠運転モード(2)が選択される。すなわち、運転モード実行機能では、ポンプ69を間欠運転させる間欠運転機能が含まれている。
運転中にスイッチ71aが長押しされると、運転が終了する。
【0032】
図7に示すように、収容部55の口金57から蓋体61を取り外して、ペットボトルPを出し入れするようになっている。
収容部55の内部は、200~700mL程度までの容量サイズのペットボトルPを立ち姿勢で収容できる。なお、立ち姿勢とは、厳密に直立している場合に限定されず、収容部55の内面にもたれて倒れているような場合が含まれる。収容部55の横方向のサイズによりペットボトルPが立ち姿勢で収容される。
【0033】
冷却ベスト1は、上記したように冷却機構を備えており、使用時には、蓋体61を開いて冷却流体としての水Wを口金57から入れると共に、ペットボトルPを収容部55に収容する。
収容部55は平袋状になっているが、合成樹脂製の柔軟な素材で構成されており、ペットボトルPが収容されると変形して中間部が膨らんだ状態になる。しかしながら、底には平面になっていないので、極少量の水Wを入れるだけで接続部55bよりも高い水位までもってこれる。
【0034】
収容部55に収容されるペットボトルP内は、この実施の形態では飲料が凍結された氷Kになっている。例えば購入して未だ未開封の飲料入りや、一旦空にした後に水等を改めて封入して、冷凍庫で凍結した状態のものが想定されている。
ポンプ69の作動により上記のように冷却流体循環経路65が形成されると、収容部55内に流入してきた水Wは水滴DとなってペットボトルPの外面に当たって滑落しながら垂れ落ちていく。その落下過程で熱が奪されて冷やされ、下側の水溜まりに合流する。下の冷やされた水溜まりはポンプ69の吸込み作用によりチューブ67側に戻される。
【0035】
水Wは冷却流体循環経路65に空気が混入されない程度、すなわち収容部55に入れた水Wが下側の接続部55bよりも高い水位にあればよく、必要最小限にすることで軽量化が図れている。また、軽量化により、冷却ベスト1の耐久性も図れる。
ペットボトルP内の飲料を凍らせた氷Kは水Wを冷やすために熱を受け取るので、徐々に溶けていくが、図8に示すように、ペットボトルPは水Wに底部側しか浸かっておらず、水Wは収容部55内では上側の接続部55aから流入する際には水滴Dとなり、その水滴DがペットボトルPの上側の外面に接触して滑落しながら垂れ落ちていく過程で冷やされる。従って、氷Kが溶ける速度は遅くなっている。なお、氷Kが解けている途中では比重の関係でペットボトルPの上側で氷Kは最後まで残る。水滴Dは収容部55内には上側の接続部55aから流入する際にはペットボトルPの上側の外面に先ず接触してそこから滑落するようになっているので、氷Kは最後まで水滴Dを冷やすのに無駄なく利用できる。
【0036】
また、上記したようにポンプ69を間欠運転することも可能であり、間欠運転中の停止のタイミングでは水滴Dは収容部55内に流入しないので、間欠運転をすることによっても、ペットボトルPの氷Kは解ける速度が遅くなる。
このように、ペットボトルPを水Wに浸すのではなく、水滴Dに接触させたり、間欠運転にしたりすることにより、ペットボトルPの氷Kの寿命は延び、冷却効果の持続時間は延びる。従って、ペットボトルPの交換頻度を抑えることができる。
【0037】
一方、氷Kにより冷やされたばかりの水Wはかなり冷たくなっており、チューブ67は衣服本体3から露出していることから、その水Wが流通しているチューブ67に触れると、比較的強く冷たさを感じる。しかしながら、氷Kにより冷やされたばかりの水Wが常時流通していると、感覚が鈍くなって冷たさが弱くなってきたように感じられる。
そのような場合には、水Wがある程度まで温められると、冷やされ、再び水Wがある程度まで温められると、再び冷やされるようにサイクル的に変動していると、再び冷やされる際に心地よい冷たさを感じられるようになる。
従って、最適な間欠運転モードを選択すれば、心地よい冷たさを適度に長時間にわたって与える効果もある。上記の間欠運転モード(2)は、停止期間が1分30秒間と比較的長く、冷たさが僅かに残っている状態まで行き尽くした時点で、再び瞬間的に強く冷たさを感じれるようになっている。
【0038】
冷却ベスト1は、軽量構造になっているので安価に提供でき、且つ嵩張り難くなっている。従って、図9に示すように着用したときに着用者の動きの邪魔にはならない。
また、チューブ67の蛇行部分67aは後身ごろ5だけでなく、前身ごろ7、9にも設けられているので、着用したときに、背中だけでなく、胸元まで冷却できる。衣服本体3は柔軟に構成されており、冷却ベスト1は着用者の体の形状に沿って変形し、チューブ67も挿通型ガイド部53を引張りながらある程度移動できるので、蛇行部分67aは背中や胸元に接触して冷却効果を無駄なく利用できる。
この冷却ベスト1の衣服本体3を構成する生地やチューブ67は特別なものではなく、安価に入手できるものであり、それらを縫着したりして冷却ベスト1にする際にも手間の係る作業や専用の装置・器具などを必要としていないので、コスト的にも有利なものとなっている。
【0039】
ペットボトルP内の氷Kが解けた場合には、収容部55から取り出して水分補給することができる。冷却ベスト1は軽量で脱着が容易で、片方の肩にまとめて掛けておけば、ポケット29を前側に持ってこれるので、ペットボトルPを収容したバッグのように扱うこともできる。
コンビニには冷凍ペットボトル飲料も販売されているので、出先ではそれを購入して交換することもできる。
【0040】
冷却ベスト1は、携帯小物の収納に便利なポケット21等複数のポケットが設けられており、多ポケットタイプのベストとしても便利なものとなっている。その際に、冷却効果が必要ない場合には、ペットボトルPを収容部5から取り出して収容部5を扁平にすればよい。
このように、冷却ベスト1は使い勝手の良いものになっている。
【0041】
図10は、第2の実施の形態に係る冷却ベスト101を示す。
この冷却ベスト101は冷却ベスト1と殆どが同様な構成になっているが、より安価に提供できる簡易仕様になっており、特徴的な違いについてのみ説明する。
冷却ベスト1では、1本のゴムテープで一つの挿通型ガイド部53が作られており、チューブ67の這わせ軌道が細かく最適に設定されているのに対して、この冷却ベスト101は簡易タイプになっており、1本のゴムテープを両端だけでなく中間も縫着することで、複数の挿通型ガイド部103が作られている。
また生地も薄く、ポンプ69を収容するポケット35に対応するポケットも切りポケット状に作られており、全体として扁平になっている。
【0042】
図11は、第3の実施の形態に係る冷却ベスト105を示す。
この冷却ベスト105は冷却ベスト1と殆どが同様な構成になっているが、冷却効果の持続がより長い高級仕様になっており、特徴的な違いについてのみ説明する。
冷却ベスト1のポケット29を構成する二枚の袋布29a、29bのそれぞれの内面には断熱シート107が縫着されている。この断熱シート107はポリエチレンの基材シートにアルミ蒸着されたものになっており、アルミ面が露出するように縫着されて覆われている。
断熱シート107で内張りすることで、収容部55に収容したペットボトルPを保冷することができる。また、ポケット29の隙間に固形の保冷剤を収容することも可能なので、そこに保冷剤を収容すれば、ペットボトルPを更に強力に保冷することができる。
従って、ペットボトルPを周りから囲んで保冷することで、氷Kが益々溶け難くなるので、露出したチューブ67に流通する水Wを長時間にわたって冷やすことができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
また、チューブ67の這わせ方や這わせ密度は、衣服本体の身ごろのサイズ等に応じて最適なものを採用すればよい。
【符号の説明】
【0044】
1…冷却ベスト(第1の実施の形態)
3…衣服本体 5…後身ごろ
7…左前身ごろ 9…右前身ごろ 11…肩部
13…ベルト 15…移動カン 17…ベルト
19a…雌バックル 19b…雄バックル 21…ポケット
23…ファスナ 25…ポケット 27…挿通型ガイド部
29…ポケット 29a、29b…袋布 29c…小開口
33…ファスナ 35…ポケット
35a、35b…袋布 37…ファスナ 39…挿通穴
41…ハトメリング 43…挿通穴 45…ハトメリング
47…挿通穴 49…ハトメリング 51…ポンプホルダ
53…挿通型ガイド部 55…収容部 55a…上側の接続部
55b…下側の接続部 57…口金 59…紐
61…蓋体 63…パッキン 65…冷却流体循環経路
67…チューブ 67a…蛇行部分 69…ポンプ
69a…コード 71…コントローラ 71a…スイッチ
71b…ランプ 71c…USBコネクタ
101…冷却ベスト(第2の実施の形態)
103…挿通型ガイド部
105…冷却ベスト(第3の実施の形態)
107…断熱シート
P…ペットボトル K…氷 W…水 D…水滴
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