(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】液圧システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/044 20060101AFI20230508BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20230508BHJP
F15B 11/08 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
F15B11/044
F15B11/02 C
F15B11/08 C
F15B11/02 B
(21)【出願番号】P 2018216517
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】三井 広明
(72)【発明者】
【氏名】豊田 敏久
(72)【発明者】
【氏名】壬生 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】中辻 隆
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-117907(JP,A)
【文献】特開2002-021807(JP,A)
【文献】特開平07-127606(JP,A)
【文献】特開2002-048105(JP,A)
【文献】特開平11-002212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-21/12;21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの内部がピストンによって第1圧力室と第2圧力室とに仕切られたシリンダと、
第1給排ラインにより前記第1圧力室と接続された第1両回転ポンプと、
第2給排ラインにより前記第2圧力室と接続されるとともに、前記第1両回転ポンプとトルク伝達可能に連結された第2両回転ポンプと、
前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの一方から排出された作動液を他方へ導くように前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプとを接続する中継ラインと、
前記第1両回転ポンプまたは前記第2両回転ポンプを駆動する電動モータと
、
前記中継ラインとタンクとを接続する導入ラインと、
前記導入ラインに設けられた、前記タンクから前記中継ラインに向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する逆止弁と、
前記中継ラインとタンクとを接続する導出ラインと、
前記導出ラインに設けられた、前記中継ラインの圧力が設定値よりも高くなったときに前記中継ラインから前記タンクへ向かう流れを許容する導出弁と、を備え、
前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの少なくとも一方は、一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプである、液圧システム。
【請求項2】
前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの一方は、一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプであり、
前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの他方は、一回転当りの吐出容量が変更不能な固定容量型のポンプであるか、一回転当りの吐出容量が第1固定値と第2固定値のどちらかに選択的に切り換えられる可変容量型のポンプである、請求項1に記載の液圧システム。
【請求項3】
前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの双方が、一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプである、請求項1に記載の液圧システム。
【請求項4】
前記第1両回転ポンプは、シリンダ側ポートと、このシリンダ側ポートよりも大径の反シリンダ側ポートを含み、
前記第2両回転ポンプは、シリンダ側ポートと、このシリンダ側ポートよりも大径の反シリンダ側ポートを含む、請求項1~3の何れか一項に記載の液圧システム。
【請求項5】
前記シリンダは、両ロッドシリンダである、請求項1~4の何れか一項に記載の液圧システム。
【請求項6】
前記シリンダは、片ロッドシリンダである、請求項1~4の何れか一項に記載の液圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダを含む液圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プレス機械などに組み込まれる液圧システムには、可動型などの移動物を鉛直方向に沿って移動させる片ロッドシリンダと、このシリンダと閉回路を形成するように接続された両回転ポンプを含むものがある。両回転ポンプは、通常、サーボモータにより駆動される。
【0003】
例えば、特許文献1には、
図5に示すようなプレス機械に組み込まれる液圧システム100が開示されている。この液圧システム100は、両端が閉塞されたチューブ111からロッド112が下向きに突出するように配置された片ロッドシリンダ110を含む。すなわち、ロッド112の伸長によって移動物(可動型)160が下降され、ロッド112の短縮によって移動物160が上昇される。
【0004】
シリンダ110のロッド側室113は第1給排ライン120により両回転ポンプ140と接続されており、シリンダ110のヘッド側室114は第2給排ライン130により両回転ポンプ140と接続されている。第1給排ライン120には、カウンターバランス弁121が設けられている。さらに、第1給排ライン120には、カウンターバランス弁121をバイパスするようにバイパスライン122が接続されており、このバイパスライン122に速度切換弁123が設けられている。
【0005】
移動物160の下降速度は、速度切換弁123により比較的に速い接近速度と比較的に遅い加工速度との間で切り換えられる。すなわち、プレス時には、カウンターバランス弁121によってロッドの伸長に対して反力が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5に示す液圧システム100のように、プレス時にカウンターバランス弁によってロッドの伸長に対して反力が与えられる構成では、シリンダの速度、ストロークあるいは推力(以下、シリンダの速度等と略する)を安定して制御することができる。しかしながら、この構成では、作動液がカウンターバランス弁を通過するためにエネルギーロスが発生する。なお、カウンターバランス弁は、ロッドの短縮に対して反力を与えるように用いられることもある。
【0008】
あるいは、カウンターバランス弁は、
図5とは逆にロッドがチューブから上向きに突出する場合でも、片ロッドシリンダの軸方向が水平である場合でも、シリンダの速度等を安定して制御するために、ロッドの伸長または短縮に対して反力を与えるように用いられることがある。このような構成でも、作動液がカウンターバランス弁を通過するためにエネルギーロスが発生する。さらに、カウンターバランス弁は、両ロッドシリンダの速度等を安定して制御するために、チューブに対するロッドの相対移動に対して反力を与えるように用いられることもある。
【0009】
そこで、本発明は、カウンターバランス弁を用いずにシリンダの速度等を安定して制御することができる液圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の液圧システムは、チューブの内部がピストンによって第1圧力室と第2圧力室とに仕切られたシリンダと、第1給排ラインにより前記第1圧力室と接続された第1両回転ポンプと、第2給排ラインにより前記第2圧力室と接続されるとともに、前記第1両回転ポンプとトルク伝達可能に連結された第2両回転ポンプと、前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの一方から排出された作動液を他方へ導くように前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプとを接続する中継ラインと、前記第1両回転ポンプまたは前記第2両回転ポンプを駆動する電動モータと、を備え、前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの少なくとも一方は、一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプである、ことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、第2両回転ポンプが第1両回転ポンプとトルク伝達可能に連結されているので、電動モータによって第1両回転ポンプと第2両回転ポンプのどちらかが駆動されれば、それらの双方が駆動される。そして、第1両回転ポンプと第2両回転ポンプの少なくとも一方は一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプであるので、第1両回転ポンプと第2両回転ポンプの回転数比が一定でも、第1両回転ポンプと第2両回転ポンプとの吐出容量比を適切に設定することができる。これにより、カウンターバランス弁を用いずに、シリンダが片ロッドシリンダの場合はロッドの伸長または短縮に対して、シリンダが両ロッドシリンダの場合はチューブに対するロッドの相対移動に対して反力を与えることができる。その結果、シリンダの速度等を安定して制御することができる。
【0012】
さらに、第2両回転ポンプが第1両回転ポンプとトルク伝達可能に連結されていることは、特別な効果を奏する。例えば、シリンダが移動物を鉛直方向に沿って移動させる場合は、移動物の下降時に、第1両回転ポンプと第2両回転ポンプの一方(シリンダから排出される作動液が流入する方)によって移動物の位置エネルギを回転トルクの形で回収することができる。あるいは、シリンダが移動物を水平方向に沿って移動させる場合でも、第1両回転ポンプと第2両回転ポンプの一方の駆動力を、ロッドの伸長または短縮に対する反力を生み出すためのトルクの形で回収することができる。従って、移動物の移動方向に拘らずに、第1両回転ポンプと第2両回転ポンプの他方の駆動をアシストすることができる。
【0013】
前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの一方は、一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプであり、前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの他方は、一回転当りの吐出容量が変更不能な固定容量型のポンプであるか、一回転当りの吐出容量が第1固定値と第2固定値のどちらかに選択的に切り換えられる可変容量型のポンプであってもよい。この構成によれば、第1両回転ポンプと第2両回転ポンプの双方が可変容量型のポンプである場合に比べて、コストを低減することができる。
【0014】
あるいは、前記第1両回転ポンプと前記第2両回転ポンプの双方が、一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプであってもよい。この構成によれば、第1両回転ポンプと第2両回転ポンプの一方が固定容量型のポンプまたは吐出容量切換式の可変容量型のポンプである場合に比べて、よりフレキシブルな流量制御を行うことができる。
【0015】
前記第1両回転ポンプは、シリンダ側ポート(接続先がシリンダであるポンプポート)と、このシリンダ側ポートよりも大径の反シリンダ側ポート(接続先がシリンダではないポンプポート)を含み、前記第2両回転ポンプは、シリンダ側ポートと、このシリンダ側ポートよりも大径の反シリンダ側ポートを含んでもよい。この構成によれば、第1両回転ポンプおよび第2両回転ポンプのそれぞれにおいて、反シリンダ側ポートと連通するポンプ内の通路はシリンダ側ポートと連通する通路と比較して低い圧力しか受けないので、高い圧力に耐えられる強度は不要となり、通路面積を大きく確保することができる。従って、作動液が通路を通過するときに発生する圧力損失を小さく抑えることができる。
【0016】
例えば、前記シリンダは、両ロッドシリンダであってもよいし、片ロッドシリンダであってもよい。
【0017】
上記の液圧システムは、前記中継ラインとタンクとを接続する導入ラインと、前記導入ラインに設けられた、前記タンクから前記中継ラインに向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する逆止弁と、前記中継ラインとタンクとを接続する導出ラインと、前記導出ラインに設けられた、前記中継ラインの圧力が設定値よりも高くなったときに前記中継ラインから前記タンクへ向かう流れを許容する導出弁と、をさらに備えてもよい。この構成によれば、第1両回転ポンプまたは第2両回転ポンプの吸入流量が不足すること、および中継ラインの圧力が高くなり過ぎることを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カウンターバランス弁を用いずにシリンダの速度等を安定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液圧システムの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の変形例の液圧システムの概略構成図である。
【
図3】第1実施形態の別の変形例の液圧システムの概略構成図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る液圧システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る液圧システム1Aを示す。この液圧システム1Aは、例えば、プレス機械などに組み込まれる。液圧システム1Aで用いられる作動液は、典型的には油であるが、水などであってもよい。
【0021】
液圧システム1Aは、シリンダ5を含む。本実施形態では、シリンダ5が、移動物10を鉛直方向に沿って移動させる片ロッドシリンダ5である。シリンダ5の軸方向は、鉛直方向と完全に平行である必要はなく、鉛直方向に対して僅かに(例えば、鉛直方向に対する角度が10度以下で)傾いていてもよい。あるいは、シリンダ5の軸方向は水平方向または斜め方向であってもよい。
【0022】
さらに、液圧システム1Aは、シリンダ5と閉回路を形成するように接続された第1両回転ポンプ3および第2両回転ポンプ4を含む。その閉回路は、導入ライン64および導出ライン66によりタンク60と接続されている。
【0023】
シリンダ5は、ヘッドカバーおよびロッドカバーにより両端が閉塞されたチューブ55と、チューブ55の内部をヘッドカバー側の第1圧力室51とロッドカバー側の第2圧力室52とに仕切るピストン56と、ピストン56からロッドカバーを貫通して延びるロッド57を含む。つまり、本実施形態では、第1圧力室51がヘッド側室、第2圧力室52がロッド側室である。そして、ロッド57の先端に移動物10が取り付けられている。
【0024】
本実施形態では、シリンダ5がロッド57がチューブ55から下向きに突出するように配置されている。すなわち、第1圧力室51が上側、第2圧力室52が下側に位置し、第2圧力室がロッド57および移動物10の自重により加圧される。ただし、シリンダ5がロッド57がチューブ55から上向きに突出するように配置され、第2圧力室52が上側、第1圧力室51が下側に位置してもよい。
【0025】
第1両回転ポンプ3は、当該ポンプの回転方向によって吸入ポートとなるか吐出ポートとなるかが切り換わるシリンダ側ポート31および反シリンダ側ポート32を含む。シリンダ側ポート31は、第1給排ライン61によりシリンダ5の第1圧力室51と接続されている。シリンダ側ポート31は高圧に耐えられるように設計され、反シリンダ側ポート32は低圧に保たれる。このため、反シリンダ側ポート32はシリンダ側ポート31よりも大径である。
【0026】
第2両回転ポンプ4は、当該ポンプの回転方向によって吸入ポートとなるか吐出ポートとなるかが切り換わるシリンダ側ポート41および反シリンダ側ポート42を含む。シリンダ側ポート41は、第2給排ライン62によりシリンダ5の第2圧力室52と接続されている。シリンダ側ポート41は高圧に耐えられるように設計され、反シリンダ側ポート42は低圧に保たれる。このため、反シリンダ側ポート42はシリンダ側ポート41よりも大径である。
【0027】
第2両回転ポンプ4の反シリンダ側ポート42は、中継ライン63により第1両回転ポンプ3の反シリンダ側ポート32と接続されている。これにより、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4の一方から排出された作動液が中継ライン63を通じて他方へ導かれる。
【0028】
上述した導入ライン64および導出ライン66は、中継ライン63とタンク60とを接続する。導入ライン64には逆止弁65が設けられており、導出ライン66には導出弁67が設けられている。逆止弁65は、タンク60から中継ライン63に向かう流れは許容するがその逆の流れは禁止する。
【0029】
導出弁67は、中継ライン63の圧力が設定値(例えば、0.1~2MPa)よりも高くなったときに中継ライン63からタンク60へ向かう流れを許容し、それ以外のときは中継ライン63とタンク60との間の流れを禁止する。本実施形態では、導出弁67が、クラッキング圧が少し高く設定された逆止弁であるが、導出弁67はリリーフ弁であってもよい。
【0030】
第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4とは、トルク伝達可能に連結されている。本実施形態では、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4とが同軸上に配置されている。例えば、第1両回転ポンプ3の回転軸と第2両回転ポンプ4の回転軸とがカップリングなどにより直接的に連結される。
【0031】
ただし、第1両回転ポンプ3の回転軸と第2両回転ポンプ4の回転軸との間に複数のギアが設けられ、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4とが並列に配置されてもよい。この場合、第1両回転ポンプ3の回転数と第2両回転ポンプ4の回転数とを異ならせてもよい。
【0032】
本実施形態では、第1両回転ポンプ3が、一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプ(斜板ポンプまたは斜軸ポンプ)であり、第2両回転ポンプ4が、一回転当りの吐出容量が変更不能な固定容量型のポンプである。第1両回転ポンプ3の吐出容量を規定する傾転角は、レギュレータ35により調整される。例えば、レギュレータ35は、第1両回転ポンプ3が斜板ポンプである場合、第1両回転ポンプ3の斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、第1両回転ポンプ3の斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0033】
なお、第2両回転ポンプ4は、
図2に示すように、一回転当りの吐出容量が第1固定値q1と第1固定値q1よりも大きな第2固定値q2のどちらかに選択的に切り換えられる可変容量型のポンプ(斜板ポンプまたは斜軸ポンプ)であってもよい。この構成によれば、シリンダ5の速度を低速にするか高速にするかを切り換えることができる。この場合、第2両回転ポンプ4の吐出容量を規定する傾転角は、レギュレータ45により調整される。例えば、レギュレータ45は、第2両回転ポンプ4が斜板ポンプである場合、第2両回転ポンプ4の斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、第2両回転ポンプ4の斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0034】
図1に戻って、本実施形態では、第1両回転ポンプ3が、電動モータ2によって駆動される。例えば、第1両回転ポンプ3の回転軸と電動モータ2の回転軸とがカップリングなどにより直接的に連結される。ただし、第2両回転ポンプ4の回転軸に電動モータ2の回転軸が連結され、第2両回転ポンプ4が電動モータ2によって駆動されてもよい。電動モータ2としては、サーボモータを用いることが望ましいが、一般的なモータが用いられてもよい。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の液圧システム1Aでは、第2両回転ポンプ4が第1両回転ポンプ3とトルク伝達可能に連結されているので、電動モータ2によって第1両回転ポンプ3が駆動されれば、第2両回転ポンプ4も駆動される。そして、第1両回転ポンプ3は一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプであるので、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4の回転数比が一定でも、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4との吐出容量比をシリンダ5の第1圧力室51と第2圧力室52との面積差に応じて適切に設定することができる。さらに、第1両回転ポンプ3が可変容量型のポンプであることにより、二つの給排ライン61,62の圧縮性等による影響にも拘らず、給排ライン61,62のそれぞれの圧力をより適切に制御することができる。これにより、カウンターバランス弁を用いずにシリンダ5の伸長に対して反力を与えることができる。その結果、シリンダ5の速度等を安定して制御することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、移動物10の下降時に、第2両回転ポンプ4によって移動物10の位置エネルギを回転トルクの形で回収することができる。しかも、第2両回転ポンプ4は第1両回転ポンプ3とトルク伝達可能に連結されているので、移動物10の位置エネルギにより第1両回転ポンプ3の駆動をアシストすることができる。従って、移動物10の位置エネルギが熱となって消失することが抑制され、省エネルギとなる。また、作動液の発熱量が減少することから、作動液が油である場合の作動液の劣化が生じ難い。
【0037】
なお、上記の第1両回転ポンプ3の駆動をアシストすることができるという効果は、シリンダ5が移動物10を水平方向に沿って移動させる場合にも得ることができる。その理由は、第1両回転ポンプ3の駆動力を、ロッド57の伸長に対する反力を生み出すためのトルクの形で回収することができるからである。
【0038】
ところで、
図5に示すような従来の液圧システム100では、両回転ポンプ140の両ポートが同時ではないにせよ、高圧になる場合があるので、両回転ポンプ140として特殊なポンプを用いる必要があり、コストが高い。
【0039】
これに対し、本実施形態では、第1両回転ポンプ3および第2両回転ポンプ4の反シリンダ側ポート32,42が常に低圧に保たれる。従って、第1両回転ポンプ3および第2両回転ポンプ4として一般的なポンプを用いることができる。このような一般的な2つのポンプを用いた場合には、特殊なポンプとカウンターバランス弁を用いた液圧システム100に比べてコストを低減することができる。
【0040】
特に、本実施形態のように第1両回転ポンプ3および第2両回転ポンプ4のそれぞれの反シリンダ側ポート(32または42)がシリンダ側ポート(31または41)よりも大径であれば、反シリンダ側ポートと連通する各ポンプ内の通路はシリンダ側ポートと連通する通路と比較して低い圧力しか受けないので、高い圧力に耐えられる強度は不要となり、通路面積を大きく確保することができる。従って、作動液が通路を通過するときに発生する圧力損失を小さく抑えることができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、逆止弁65が設けられた導入ライン64および導出弁67が設けられた導出ライン66が採用されているので、第1両回転ポンプ3または第2両回転ポンプ4の吸入流量が不足すること、および中継ライン63の圧力が高くなり過ぎることを防止することができる。
【0042】
<変形例>
図3に示すように、第2両回転ポンプ4が一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプであり、第1両回転ポンプ3が一回転当りの吐出容量が変更不能な固定容量型のポンプであってもよい。あるいは、第2両回転ポンプ4が一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプである場合、第1両回転ポンプ3は、一回転当りの吐出容量が第1固定値q1と第2固定値q2のどちらかに選択的に切り換えられる可変容量型のポンプであってもよい。
【0043】
または、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4の双方が、一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプであってもよい。この構成によれば、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4の一方が固定容量型のポンプまたは吐出容量切換式の可変容量型のポンプである場合に比べて、よりフレキシブルな流量制御を行うことができる。ただし、
図1または
図3に示すように第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4の一方が固定容量型のポンプまたは吐出容量切換式の可変容量型のポンプであれば、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4の双方が一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプである場合に比べて、コストを低減することができる。
【0044】
(第2実施形態)
図4に、本発明の第2実施形態に係る液圧システム1Bを示す。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0045】
本実施形態の液圧システム1Bでは、複数(図例では2つ)のシリンダ5が採用され、それらは両ロッドシリンダである。つまり、各シリンダ5のチューブ55の両端は2つのロッドカバーによりが閉塞されており、それらのロッドカバーを2つのロッド57がそれぞれ貫通している。
【0046】
また、本実施形態では、全てのロッド57が固定され、全てのシリンダ5のチューブ55同士が可動テーブル15で連結されている。そして、この可動テーブル15の上面および下面に、移動物10が取り付けられている。
【0047】
このような構成でも、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4の少なくとも一方が一回転当りの吐出容量が任意に変更可能な可変容量型のポンプであれば、第1実施形態と同様に、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4の回転数比が一定(例えば、1:1以外の比)でも、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4との吐出容量比を適切に設定することができる。さらに、第1両回転ポンプ3と第2両回転ポンプ4の少なくとも一方が可変容量型のポンプであることにより、二つの給排ライン61,62の圧縮性等による影響にも拘らず、圧力の高さの違いによりポンプ内部漏れ量が変化したとしても、給排ライン61,62のそれぞれの圧力をより適切に制御することができる。これにより、カウンターバランス弁を用いずにチューブ55に対するロッド57の相対移動に対して反力を与えることができる。その結果、シリンダ5の速度等を安定して制御することができる。
【0048】
なお、移動物10の下降時に、第2両回転ポンプ4によって移動物10の位置エネルギを回転トルクの形で回収して、第1両回転ポンプ3の駆動をアシストすることができる点は、第1実施形態と同様である。
【0049】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B 液圧システム
2 電動モータ
3 第1両回転ポンプ
4 第2両回転ポンプ
5 シリンダ
51 第1圧力室
52 第2圧力室
55 チューブ
56 ピストン
60 タンク
61 第1給排ライン
62 第2給排ライン
63 中継ライン
64 導入ライン
65 逆止弁
66 導出ライン
67 導出弁