(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】グラフト共重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 255/02 20060101AFI20230508BHJP
C08F 255/04 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C08F255/02
C08F255/04
(21)【出願番号】P 2019016000
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 勝好
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 瑛弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 清
(72)【発明者】
【氏名】山村 清
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-338778(JP,A)
【文献】特開2004-161946(JP,A)
【文献】特開平07-150181(JP,A)
【文献】特開平06-346078(JP,A)
【文献】特開昭64-036614(JP,A)
【文献】米国特許第05425888(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 255/00 - 255/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部と、
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に由来するグラフト部と
を含み、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体であ
り、
下記式(I)で定義されるグラフト化率が117%以上400%以下である
ことを特徴とするグラフト共重合体(X)。
グラフト化率(%)={(グラフト共重合体(X)の質量)-(エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量)}/(エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量)×100 …(I)
【請求項2】
前記α-オレフィンが、プロピレンおよびブテンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のグラフト共重合体(X)。
【請求項3】
135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.05~15dL/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のグラフト共重合体(X)。
【請求項4】
前記アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのアルキル基が、炭素数1~36のアルキル基であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のグラフト共重合体(X)。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のグラフト共重合体(X)を製造する方法であって、
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、前記アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとを、アルキルホウ素を用いてグラフト共重合反応させる、グラフト共 重合工程を有することを特徴とするグラフト共重合体の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記グラフト共重合工程によって得られた共重合体を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする請求項
5に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンからなる主鎖と、極性基を有する側鎖とを有するオレフィン系グラフト共重合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂は、耐薬品性、機械特性など多くの優れた特長を持つ一方で、非極性ポリマーであるために、極性物質との親和性が低いという欠点を有する。この欠点を克服するために、従来からポリオレフィンに炭素-炭素二重結合を有する有機カルボン酸などに由来する極性基を、有機過酸化物を開始剤としたグラフト反応により付与してポリオレフィンを変性する方法が利用されている。このような極性基を付与したポリオレフィンは、ポリマーの相溶化剤(改質剤)としての利用が期待されている。
【0003】
一般に有機過酸化物を開始剤としたグラフト反応は、高温で反応を行う必要があり、ポリマーの分解が問題となる。一方、開始剤としてアルキルホウ素を用いるグラフト技術があり、本技術では反応は室温から100℃以下といった比較的低い温度で反応が進行するため、ポリマーの分解の問題はほとんど無いと考えられる。例えば、特許文献1では、アルキルホウ素を開始剤としてポリオレフィンに無水マレイン酸をグラフトさせる方法が検討されている。しかし、特許文献1では、付与した極性基はすべて無水マレイン酸であり、一般に無水マレイン酸は連鎖的にグラフト鎖を形成しないことが知られている。つまり、ポリオレフィン上の反応点一つにつき、一分子の無水マレイン酸しかグラフトせず、大幅な改質効果が期待できない。また、特許文献1では、グラフト量が3%未満であり、ポリオレフィン上の反応点の数も少ないことで、十分な改質効果が期待できない。
【0004】
これに対して、特許文献2では、無水マレイン酸以外に4-ビニルピリジン、アクリロニトリル、塩化ビニルといった連鎖的にグラフト鎖を形成すると考えられる極性モノマーがポリオレフィンにグラフトされている。しかし、特許文献2では、特許文献1と同様にグラフト量が低いといった問題点があり、グラフト量が低いと十分な改質効果が期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2002/0198327号明細書
【文献】米国特許第3141862号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、従来のポリオレフィンからなる主鎖と、極性基を有する側鎖とを有するオレフィン系グラフト共重合体においては、グラフト量が低いという問題があった。
そこで本発明は、ポリオレフィンからなる主鎖と、極性基を有する側鎖(グラフト部)とを有するオレフィン系グラフト共重合体であって、グラフト部の割合が高いオレフィン系グラフト共重合体、およびその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、変性対象となるポリオレフィンと相溶性の高いモノマー、具体的には(メタ)アクリル酸エステルを2種類以上グラフトさせることにより、上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、以下の〔1〕~〔7〕の事項に関する。
〔1〕エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部と、
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に由来するグラフト部と
を含み、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体である
ことを特徴とするグラフト共重合体(X)。
〔2〕前記α-オレフィンが、プロピレンおよびブテンから選ばれる1種以上であることを特徴とする前記〔1〕に記載のグラフト共重合体(X)。
〔3〕135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が0.05~15dL/gであることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載のグラフト共重合体(X)。
〔4〕前記アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのアルキル基(すなわち、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基に結合したアルキル基)が、炭素数1~36のアルキル基であることを特徴とする前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のグラフト共重合体(X)。
〔5〕下記式(I)で定義されるグラフト化率が15%以上400%以下であることを特徴とする前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のグラフト共重合体(X)。
グラフト化率(%)={(グラフト共重合体(X)の質量)-(エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量)}/(エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量)×100 …(I)
〔6〕前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のグラフト共重合体(X)を製造する方法であって、
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、前記アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとを、アルキルホウ素を用いてグラフト共重合反応させる、グラフト共重合工程を有することを特徴とするグラフト共重合体の製造方法。
〔7〕さらに、前記グラフト共重合工程によって得られた共重合体を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする前記〔6〕に記載のグラフト共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリオレフィンからなる主鎖と、極性基を有する側鎖(グラフト部)とを有するオレフィン系グラフト共重合体であって、グラフト部の割合が高いオレフィン系グラフト共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
<グラフト共重合体>
本発明のグラフト共重合体は、
エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部と、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)に由来するグラフト部と
を含む。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルまたはメタクリルを意味する。
【0011】
すなわち本発明のグラフト共重合体は、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体であるポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(B)とのグラフト共重合体である。
【0012】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)
本発明に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンと、炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体である。
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)を構成する炭素数3~8のα-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、2-メチルブテン-1、3-メチルブテン-1、ヘキセン-1、3-メチルペンテン-1、4-メチルペンテン-1、3,3-ジメチルブテン-1、ヘプテン-1、メチルヘキセン-1、ジメチルペンテン-1、トリメチルブテン-1、エチルペンテン-1、オクテン-1、メチルペンテン-1、ジメチルヘキセン-1、トリメチルペンテン-1、エチルヘキセン-1、メチルエチルペンテン-1、ジエチルブテン-1、プロピルペンテン-1等が挙げられる。これらのα-オレフィンは、1種単独で用いられていてもよく、2種以上組み合わせて用いられていてもよい。
【0013】
炭素数3~8のα-オレフィンとしては、これらのうち、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンが好ましく、プロピレン、ブテン、オクテンがより好ましく、プロピレンまたはブテンがさらに好ましく、プロピレンが特に好ましい。
【0014】
本発明に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンと、炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体であればよいが、好ましくは、エチレンと、炭素数3~8のα-オレフィンとのランダム共重合体である。本発明に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、特に好ましい共重合体としては、たとえば、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体が挙げられる。
【0015】
本発明に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンと、炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合比を特に限定するものではないが、好ましくは、エチレンから導かれる構造単位の含有率が50~90モル%、より好ましくは51~85モル%、さらに好ましくは55~80モル%であり、α-オレフィンから導かれる構造単位の含有率が好ましくは10~50モル%、より好ましくは15~45モル%、さらに好ましくは20~40モル%の範囲であることが望ましい。
【0016】
本発明に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)のエチレンから導かれる構造単位の含有率およびα-オレフィンから導かれる構造単位の含有率は、たとえば、13C-NMR法で測定することができ、「高分子分析ハンドブック」(朝倉書店 発行 P163~170)に記載の方法等に従ってピークの同定と定量とを行うことができる。
【0017】
本発明に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.05~15dL/g、より好ましくは0.1~10dL/g、さらに好ましくは0.5~3dL/gの範囲であるのが望ましい。また、190℃、2.16kgf荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が、通常0.01~200g/10分、好ましくは0.1~180g/10分、より好ましくは1~150g/10分、であることが望ましい。
【0018】
本発明に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、特に限定されることなく、従来公知の方法で調製することができる。また、エチレンと、炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体である市販のエチレン・α-オレフィン共重合体を用いることもできる。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)
本発明のグラフト共重合体(X)は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に由来するグラフト部を有する。
本発明において、本発明のグラフト共重合体(X)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に対して、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を導入して得てもよく、また、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の存在下で、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の単量体であるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを重合することによって得てもよい。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体である。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位以外の構造単位を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0021】
後述する、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に対して2種以上の(メタ)アクリル酸エステルをグラフト共重合する方法による製造が容易であるなどの観点からは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、好ましくは2種以上のアクリル酸エステルの共重合体および2種以上のメタクリル酸エステルの共重合体からなる群から選択される(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。
【0022】
さらに好ましくは、グラフト共重合体(X)は、グラフト部として、実質的に、2種以上のアクリル酸エステルの共重合体に由来するグラフト部のみを、または2種以上のメタクリル酸エステルの共重合体に由来するグラフト部のみを有する。
【0023】
2種以上のアクリル酸エステルの共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で2種以上のアクリル酸エステルに由来する構造単位以外の構造単位を含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、好ましくは、構造単位として、実質的に2種以上のアクリル酸エステルに由来する構造単位のみを有する。
【0024】
2種以上のメタクリル酸エステルの共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で2種以上のメタクリル酸エステルに由来する構造単位以外の構造単位を含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、好ましくは、構造単位として、実質的に2種以上のメタクリル酸エステルに由来する構造単位のみを有する。
【0025】
前記アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのアルキル基の炭素数は、それぞれ通常1~36であり、その平均値(すなわち、グラフト共重合体(X)のグラフト部を構成する、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位のアルキル基((メタ)アクリロイルオキシ基由来の構成単位に結合したアルキル基)の平均炭素数)は、好ましくは4~28であり、より好ましくは6~24である。
【0026】
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸トリデシル等が挙げられる。また、メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシル等が挙げられる。
【0027】
このようなアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを単量体として用いることにより、グラフト共重合体(X)に多くのグラフト部を導入することができる。
グラフト共重合体(X)のグラフト部を構成する、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位のアルキル基((メタ)アクリロイルオキシ基由来の構成単位に結合したアルキル基)の平均炭素数は、例えば、グラフト共重合体(X)について13C-NMR測定を行い、得られた各ピークの面積の比に基づいて求めることができる。
【0028】
グラフト共重合体(X)
本発明のグラフト共重合体(X)は、上述したエチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部と、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に由来するグラフト部とを有する。なお本発明では、グラフト部の鎖長が主鎖部の鎖長よりも長い場合においても、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する部分を主鎖部、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に由来する部分をグラフト部として扱う。
【0029】
このような本発明のグラフト共重合体(X)は、グラフト部の導入割合が高く、下記式(I)で定義されるグラフト化率が、15%以上400%以下である。グラフト共重合体(X)のグラフト化率は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上であり、また、好ましくは350%以下、より好ましくは300%以下である。
グラフト化率(%)={(グラフト共重合体(X)の質量)-(エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量)}/(エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量)×100 …(I)
【0030】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量は、例えば、以下の(i)~(iv)の手順によって求めることができる。
(i)エチレン・α-オレフィン共重合体(A)および(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)(いずれも組成は問わない。)を準備する。
(ii)これらの共重合体を混合してブレンド樹脂を作製する。この際、各共重合体の配合割合を変えて、複数種のブレンド樹脂を作製する。
(iii)各ブレンド樹脂について、赤外分光法(IR)により吸光度比(エチレン・α-オレフィン共重合体由来の吸収A4322とエステル部位由来の吸収A967との比)を測定し、エチレン・α-オレフィン共重合体の割合と吸光度比との関係を表す検量線を作成する。
(iv)グラフト共重合体(X)の前記吸光度比を測定し、その測定値と前記検量線からグラフト共重合体(X)中のエチレン・α-オレフィン共重合体(A)の割合を求め、グラフト共重合体(X)の質量と前記割合から、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量を算出する。
【0031】
本発明のグラフト共重合体(X)は、特に限定されるものではないが、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、好ましくは0.05~15dL/g、より好ましくは0.1~10dL/g、さらに好ましくは0.5~3dL/gの範囲であるのが望ましい。
【0032】
本発明のグラフト共重合体(X)は、特に限定されるものではないが、重量平均分子量(Mw)が、通常60,000~400,000、好ましくは、70,000~350,000、より好ましくは80,000~300,000の範囲であるのが望ましい。
【0033】
また本発明のグラフト共重合体(X)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量分子(Mn)とから求められる分子量分布(Mw/Mn)の値が、好ましくは1.5~6.0、より好ましくは2.0~5.0、さらに好ましくは2.5~4.0の範囲を満たすことが好ましい。
【0034】
本発明において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載の条件で、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により求めた値である。
【0035】
本発明のグラフト共重合体(X)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部が高度に変性され、極性基を有するグラフト部が高い割合で導入されていることから、親水性物質および疎水性物質のいずれとも親和性が高く、親水性物質および疎水性物質の両方を含む組成物を調製する場合においても、本発明のグラフト共重合体(X)を共存させることにより、均質な組成物を容易に調製することができる。
【0036】
グラフト共重合体(X)の製造方法
本発明のグラフト共重合体(X)は、上述のように、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に対して、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を導入して得てもよく、また、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に対して、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の単量体であるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルをグラフト共重合することによって得てもよい。
【0037】
これらのうちでは、主鎖となるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)に対して、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の単量体であるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルをグラフト共重合する方法を好ましく採用することができる。
【0038】
本発明のグラフト共重合体(X)の製造においては、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとを、アルキルホウ素を用いてグラフト共重合反応させる、グラフト共重合工程を有することが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を構成する単量体であるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとを、アルキルホウ素を用いてグラフト共重合させた場合には、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部に対して、高いグラフト化率で(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に由来するグラフト部を有する、グラフト共重合体(X)を好適に製造することができる。
【0039】
アルキルホウ素を用いたグラフト共重合工程においては、アルキルホウ素を酸素と反応させて過酸化物とした開始剤を使用することができる。このような、アルキルホウ素を用いたグラフト共重合反応は、たとえば、US3141862、Macromolecules 2005, 38, 8966-8970、J. APPL. POLYM. SCI. 2015,42186およびJournal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 47, 6163-6167 (2009) などに記載の方法を参照して行うことができる。
【0040】
アルキルホウ素としては、特に限定されるものではないが、たとえば、トリブチルホウ素を好適に用いることができる。
グラフト重合反応に用いられる溶媒としては、水の他、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素系溶媒、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、1-メチル-2-ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセチルクエン酸トリブチル、2,4-ペンタジエン、ジメチルスルフォキシド、n-アルキルアジペート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ベンジルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールなどのアルコール;エチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェニルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルを挙げることができる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせたものであっても良い。これらの溶媒の中でも、特にノルマルヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒が安全性の面から好ましい。
【0041】
グラフト共重合反応を行うに当たり、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)と、グラフトモノマーであるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルと、アルキルホウ素との接触方法および接触順序については、特に制限はなく、種々の方法を採用することができる。また、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)へ、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、あるいはアルキルホウ素を事前に含浸させておいてもよい。グラフト共重合反応においては、さらに、グラフトポリマーの分子量を調整するために公知の連鎖移動剤を併用することができる。
【0042】
一方、アルキルホウ素と酸素との接触順序に関しては、反応開始点となるため、反応系にアルキルホウ素を先に装入してから、酸素を導入して接触させる方法が好ましい。また、グラフトモノマーであるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルは、予め窒素通気処理をして残存酸素を十分にパージしておくことが好ましい。
【0043】
また、本発明の目的を妨げない範囲において、公知の添加剤、たとえば、ヒンダードフェノール化合物などの酸化防止剤、プロセス安定剤、耐熱安定剤、耐熱老化剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、塩酸吸収剤、難燃剤、ブルーミング防止剤、ピペリジン類などのニトロキシラジカル類に代表されるラジカル捕捉剤、公知の軟化剤、粘着付与剤、加工助剤、密着性付与剤、炭素繊維、ガラス繊維、ウイスカなどの充填剤、などの各種の添加剤を併用することができる。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り他の高分子化合物を少量ブレンドすることも可能である。
【0044】
上記のようなグラフト共重合反応は、混合および加熱が可能な装置であれば特に制限なく使用することができる。例えば縦型および横型のいずれの反応器であっても使用することができる。具体的には、流動床、移動床、ループリアクター、攪拌翼付横置反応器、攪拌翼付縦置反応器、回転ドラム、等を挙げることができる。また、プラネタリーミキサーなどの多軸・自転公転併用方式の混合機、ニーダー、パドルドライヤー、ヘンシェルミキサー、スタティックミキサー、Vブレンダー、タンブラー、ナウターミキサーも使用することができる。
【0045】
グラフト共重合反応の工程終了後には、未反応のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル等を溶解することのできる溶媒で、得られたグラフト共重合体を洗浄する、洗浄工程を有することも好ましい。
【0046】
洗浄工程に用いる溶媒は、特に限定されるものではないが、好ましくはケトン、アルコールであり、アセトン、メタノールが特に好ましい。また、洗浄温度は、生成したグラフト共重合体(X)が損なわれない限りにおいては限定されるものではないが、このましくは0~110℃、より好ましくは室温~100℃程度である。
ここで、洗浄工程は、洗浄温度を洗浄溶媒の大気圧における沸点よりも高く設定する場合には、洗浄溶媒の揮散を防止するために、密閉状態で行うことが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例等において、測定および評価方法は次の通りである。
【0048】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、POLYMER LABORATORIES社製のPL-GPC220型 高温ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて以下のように測定した。
【0049】
分離カラムとして、TSKgel GMHHR-H(S)HT(2本)とTSKgel GMHHR-M(S)(1本)を用い、カラム温度を140℃とし、移動相には1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を用い、展開速度を1.0mL/分とし、試料濃度を1.0mg/mLとし、試料注入量を0.5mLとし、検出器として、示差屈折率計/装置内蔵(POLYMER LABORATORIES社製)、PD2040型2角度光散乱光度計(PRECISION DETECTORS社製)、PL-BV400型ブリッジ型粘度計(POLYMER LABORATORIES社製)を用いた。装置の較正は、単分散ポリスチレン(東ソー社製、分子量190,000)、直鎖状ポリエチレン(NIST1475a dn/dc=0.100 IV=1.01)用いて実施した。分子量分布(Mw/Mn)は、上記測定法により測定したMwを、同じく上記測定法により測定したMnで除して算出した。
【0050】
<極限粘度[η]>
サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈し、その後同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η]として求めた。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0051】
<グラフト化率(%)>
共重合体のグラフト化率は、下記式(I)により求めた。
グラフト化率(%)={(グラフト共重合体(X)の質量)-(エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量)}/(エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の質量)×100 …(I)
【0052】
[実施例1](グラフト共重合体-1の製造)
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、MFR=59.3(g/10分、190℃、2.16kgf)、エチレン含有量78mol%、極限粘度[η]=0.84dL/gのエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を用い、グラフトモノマーとして、アルキル基の炭素数が1のメタクリル酸エステルであるメタクリル酸メチル(MMA)、及びアルキル基の炭素数が8のメタクリル酸エステルであるメタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)を用いた。
【0053】
窒素雰囲気下、エチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)25.0gと、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸2-エチルへキシルの混合液(MMA:2EHMA=30:70(モル%))58.0gを500mLのセパラブルフラスコに装入し、液温を60℃に調整し、エチレン・プロピレン共重合体ペレットを溶解させた。別途窒素雰囲気下でヘキサン20mLにトリブチルホウ素(TBB)を0.50g加え、空気300mLを通気した溶液を調製し、その溶液を前記ポリマー溶液に装入した。温度60℃にて2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、アセトンを添加しポリマーを析出させた。
【0054】
その後、グラスフィルターでポリマーを濾過してアセトンで十分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行い、グラフト共重合体-1を得た。グラフト共重合体-1の収量は54.3gであり、グラフト化率は117%であった。
得られたグラフト共重合体-1の極限粘度[η]は、0.73dL/gであった。
【0055】
[実施例2](グラフト共重合体-2の製造)
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を用い、グラフトモノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)、及びアルキル基の炭素数が12のメタクリル酸エステルであるメタクリル酸ドデシル(DMA)を用いた。
【0056】
窒素雰囲気下、エチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)25gと、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ドデシルの混合液(MMA:DMA=30:70(モル%))72.8gを500mLのセパラブルフラスコに装入し、液温を60℃に調整し、エチレン・プロピレン共重合体ペレットを溶解させた。別途窒素雰囲気下でヘキサン20mLにトリブチルホウ素(TBB)を0.56g加え、空気300mLを通気した溶液を調製し、その溶液を前記ポリマー溶液に装入した。温度60℃にて2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、アセトンを添加しポリマーを析出させた。
【0057】
その後、グラスフィルターでポリマーを濾過してアセトンで十分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行い、グラフト共重合体-2を得た。グラフト共重合体-2の収量は69.8gであり、グラフト化率は179%であった。
得られたグラフト共重合体-2の極限粘度[η]は、0.74dL/gであった。
【0058】
[実施例3](グラフト共重合体-3の製造)
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を用い、グラフトモノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)及びメタクリル酸ドデシル(DMA)を用いた。
【0059】
窒素雰囲気下、エチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)25gと、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ドデシルの混合液(MMA:DMA=67:33(モル%))52.5gを500mLのセパラブルフラスコに装入し、液温を60℃に調整し、エチレン・プロピレン共重合体ペレットを溶解させた。別途窒素雰囲気下でヘキサン20mLにトリブチルホウ素(TBB)を0.51g加え、空気300mLを通気した溶液を調製し、その溶液を前記ポリマー溶液に装入した。温度60℃にて2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、アセトンを添加しポリマーを析出させた。
【0060】
その後、グラスフィルターでポリマーを濾過してアセトンで十分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行い、グラフト共重合体-3を得た。グラフト共重合体-3の収量は70.9gであり、グラフト化率は183%であった。
【0061】
得られたグラフト共重合体-3の重量平均分子量(Mw)は143,000、数平均分子量(Mn)は52,700、分子量分布(Mw/Mn)は2.71であった。また極限粘度[η]は、0.64dL/gであった。
【0062】
[実施例4](グラフト共重合体-4の製造)
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を用い、グラフトモノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ドデシル(DMA)、及びアルキル基の炭素数が18のメタクリル酸エステルであるメタクリル酸ステアリル(SMA)を用いた。
【0063】
窒素雰囲気下、エチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)25gと、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ドデシル及びメタクリル酸ステアリルの混合液(MMA:DMA:SMA=60:30:10(モル%))42.6gを500mLのセパラブルフラスコに装入し、液温を60℃に調整し、エチレン・プロピレン共重合体ペレットを溶解させた。別途窒素雰囲気下でヘプタン20mLにトリブチルホウ素(TBB)を0.31g加え、空気150mLを通気した溶液を調製し、その溶液を前記ポリマー溶液に装入した。温度60℃にて2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、アセトンを添加しポリマーを析出させた。
【0064】
その後、グラスフィルターでポリマーを濾過してアセトンで十分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行い、グラフト共重合体-4を得た。グラフト共重合体-4の収量は57.5gであり、グラフト化率は130%であった。
【0065】
得られたグラフト共重合体-4の重量平均分子量(Mw)は227,000、数平均分子量(Mn)は57,800、分子量分布(Mw/Mn)は3.93であった。また、極限粘度[η]は、0.82dL/gであった。
【0066】
[実施例5](グラフト共重合体-5の製造)
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を用い、グラフトモノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)、及びアルキル基の炭素数が13のメタクリル酸エステルであるメタクリル酸トリデシル(TDMA)を用いた。
【0067】
窒素雰囲気下、エチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)25gと、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸トリデシルの混合液(MMA:TDMA=50:50(モル%))63gを500mLのセパラブルフラスコに装入し、液温を60℃に調整し、エチレン・プロピレン共重合体ペレットを溶解させた。別途窒素雰囲気下でヘプタン20mLにトリブチルホウ素(TBB)を0.26g加え、空気150mLを通気した溶液を調製し、その溶液を前記ポリマー溶液に装入した。温度60℃にて2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、アセトンを添加しポリマーを析出させた。
【0068】
その後、グラスフィルターでポリマーを濾過してアセトンで十分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行い、グラフト共重合体-5を得た。グラフト共重合体-5の収量は71.1gであり、グラフト化率は184%であった。
得られたグラフト共重合体-5の極限粘度[η]は、0.80dL/gであった。
【0069】
[実施例6](グラフト共重合体-6の製造)
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を用い、グラフトモノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)及びメタクリル酸ステアリル(SMA)を用いた。
【0070】
窒素雰囲気下、エチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)25gと、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ステアリルの混合液(MMA:SMA=65:35(モル%))62.5gを500mLのセパラブルフラスコに装入し、液温を60℃に調整し、エチレン・プロピレン共重合体ペレットを溶解させた。別途窒素雰囲気下でヘプタン20mLにトリブチルホウ素(TBB)を0.30g加え、空気150mLを通気した溶液を調製し、その溶液を前記ポリマー溶液に装入した。温度60℃にて2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、アセトンを添加しポリマーを析出させた。
【0071】
その後、グラスフィルターでポリマーを濾過してアセトンで十分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行い、グラフト共重合体-6を得た。グラフト共重合体-6の収量は82.8gであり、グラフト化率は231%であった。
得られたグラフト共重合体-6の極限粘度[η]は、1.03dL/gであった。
【0072】
[実施例7](グラフト共重合体-7の製造)
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を用い、グラフトモノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)及びメタクリル酸ステアリル(SMA)を用いた。
【0073】
窒素雰囲気下、エチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)25gと、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルへキシル及びメタクリル酸ステアリルの混合液(MMA:2EHMA:SMA=56:15:29(モル%))62.5gを500mLのセパラブルフラスコに装入し、液温を60℃に調整し、エチレン・プロピレン共重合体ペレットを溶解させた。別途窒素雰囲気下でヘプタン20mLにトリブチルホウ素(TBB)を0.31g加え、空気150mLを通気した溶液を調製し、その溶液を前記ポリマー溶液に装入した。温度60℃にて2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、アセトンを添加しポリマーを析出させた。
【0074】
その後、グラスフィルターでポリマーを濾過してアセトンで十分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行い、グラフト共重合体-7を得た。グラフト共重合体-7の収量は80.7gであり、グラフト化率は223%であった。
得られたグラフト共重合体-7の極限粘度[η]は、0.94dL/gであった。
【0075】
[比較例1](グラフト共重合体-8の製造)
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を用い、グラフトモノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)を用いた。
【0076】
窒素雰囲気下、ヘプタン500mLとエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)100gを2000mLのセパラブルフラスコに装入し、液温を60℃に調整し、エチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を溶解させた。このポリマー溶液を室温まで冷却した後、撹拌しながら窒素を毎分2Lの速度で30分間、液中に通気(窒素バブリング)したあと、液温を40℃に調整した。トリブチルホウ素(TBB)を0.57g加え、空気300mLを通気し、温度40℃にて30分撹拌した。その後、メタクリル酸メチル25.0gを装入して、2時間反応させた。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、アセトンを添加しポリマーを析出させた。
【0077】
その後、グラスフィルターでポリマーを濾過してアセトンで十分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行い、グラフト共重合体-8を得た。グラフト共重合体-8の収量は107.2gであり、グラフト化率は7%であった。
得られたグラフト共重合体-8の極限粘度[η]は、0.78dL/gであった。
【0078】
[参考例](EP-1のみを同等処理)
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)として、実施例1で用いたエチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を用いた。
窒素雰囲気下、ヘキサン100mLとエチレン・プロピレン共重合体ペレット50gを500mLのセパラブルフラスコに装入し、液温を60℃に調整し、エチレン・プロピレン共重合体ペレット(EP-1)を溶解させた。このポリマー溶液を室温まで冷却した後、撹拌しながら窒素を毎分2Lの速度で30分間、液中に通気(窒素バブリング)したあと、液温を60℃に調整した。別途窒素雰囲気下でヘキサン20mLにトリブチルホウ素(TBB)を0.52g加え、空気300mLを通気した溶液を調製し、その溶液を前記ポリマー溶液に装入した。温度60℃にて30分撹拌した後、更に2時間撹拌した。反応終了後に空気を毎分2Lの速度で5分間、液中に通気した。その後、アセトンを添加しポリマーを析出させた。
【0079】
その後、グラスフィルターでポリマーを濾過してアセトンで十分洗浄し、60℃で8時間、真空乾燥を行い、共重合体-9を得た。共重合体9の収量は50.0gであり、グラフト化率は0%であった。
【0080】
得られた共重合体-9の重量平均分子量(Mw)は45,000、数平均分子量(Mn)は28,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.56であった。また極限粘度[η]は、0.84dL/gであった。
各実施例および比較例の結果を表1に示す。
【0081】
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のグラフト共重合体(X)およびその製造方法は、ポリマーの相溶化剤(改質剤)およびその製造方法として利用できる。