(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】車両の情報提供装置、車両の情報提供方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20230508BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230508BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20230508BHJP
B60W 40/09 20120101ALI20230508BHJP
【FI】
B60W50/14
G08G1/16 D
B60W50/08
B60W40/09
(21)【出願番号】P 2019041863
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 能英瑠
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
(72)【発明者】
【氏名】澄川 瑠一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 明子
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-194060(JP,A)
【文献】特開2011-237217(JP,A)
【文献】特開2009-168773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバの運転の熟練度を判定する熟練度判定部と、
前記ドライバが前記車両を運転する際の運転負荷を判定する運転負荷判定部と、
前記熟練度と前記運転負荷に基づいて、前記ドライバに対する情報の提供を制御する情報提供制御部と、
を備え
、
前記熟練度判定部は、前記車両がカーブを走行中の時の前記車両の操舵角速度の標準偏差または操舵角加速度の標準偏差、および、前記車両が直線を走行中の時の前記車両の横加速度の標準偏差のうち少なくとも一方に基づいて、前記熟練度を判定することを特徴とする、車両の情報提供装置。
【請求項2】
前記情報提供制御部は、前記ドライバの前記熟練度が所定の閾値に基づいて低いと判定され、且つ前記運転負荷が予め定められた高い場面に相当すると判定された場合に、前記ドライバに対する
緊急度の低い情報の提供量を抑制することを特徴とする、請求項1に記載の車両の情報提供装置。
【請求項3】
前記情報提供制御部は、前記運転負荷が高い状況が経過した後に、前記ドライバに対して前記
緊急度の低い情報を提供することを特徴とする、請求項2に記載の車両の情報提供装置。
【請求項4】
前記情報提供制御部は、前記運転負荷が高い状況が到来する前に、前記ドライバに対して前記
緊急度の低い情報を提供することを特徴とする、請求項2に記載の車両の情報提供装置。
【請求項5】
前記運転負荷が高い状況は、前記車両がカーブを走行している状況であることを特徴とする、請求項2~4のいずれかに記載の車両の情報提供装置。
【請求項6】
前記情報の緊急度を判定する緊急度判定部を備え、
前記情報提供制御部は、前記緊急度が低い場合に、前記ドライバに対する前記
緊急度の低い情報の提供を抑制することを特徴とする、請求項2に記載の車両の情報提供装置。
【請求項7】
コンピュータが、
車両のドライバの運転の熟練度を判定するステップと、
前記ドライバが前記車両を運転する際の運転負荷を判定するステップと、
前記熟練度と前記運転負荷に基づいて、前記ドライバに対する情報の提供を制御するステップと、
を
実行し、
前記熟練度を判定するステップでは、前記車両がカーブを走行中の時の前記車両の操舵角速度の標準偏差または操舵角加速度の標準偏差、および、前記車両が直線を走行中の時の前記車両の横加速度の標準偏差のうち少なくとも一方に基づいて、前記熟練度を判定することを特徴とする、車両の情報提供方法。
【請求項8】
車両のドライバの運転の熟練度を判定する手段、
前記ドライバが前記車両を運転する際の運転負荷を判定する手段、
前記熟練度と前記運転負荷に基づいて、前記ドライバに対する情報の提供を制御する手段、
としてコンピュータを機能させ
、
前記熟練度を判定する手段は、前記車両がカーブを走行中の時の前記車両の操舵角速度の標準偏差または操舵角加速度の標準偏差、および、前記車両が直線を走行中の時の前記車両の横加速度の標準偏差のうち少なくとも一方に基づいて、前記熟練度を判定するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の情報提供装置、車両の情報提供方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1には、運転者の技能レベルに応じたアドバイスを警報装置に表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時においては、例えばナビゲーション装置などのように、車両からドライバへ情報を提供することが一般的になりつつある。一方で、車両のドライバに過度に情報を提供すると、ドライバの運転に支障が生じる場合がある。特に、車両のドライバの運転の熟練度が高くない場合は、ドライバに情報を与えることで運転に集中ができなくなり、却って運転を阻害する可能性も生じる。しかしながら、上記特許文献1では、ドライバの熟練度に応じた、ドライバへの情報提供による影響は何ら考慮されていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、車両のドライバの運転の熟練度に応じて、ドライバへの情報の提供を制御することが可能な、新規かつ改良された車両の情報提供装置、車両の情報提供方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両のドライバの運転の熟練度を判定する熟練度判定部と、前記ドライバが前記車両を運転する際の運転負荷を判定する運転負荷判定部と、前記熟練度と前記運転負荷に基づいて、前記ドライバに対する情報の提供を制御する情報提供制御部と、を備え、前記熟練度判定部は、前記車両がカーブを走行中の時の前記車両の操舵角速度の標準偏差または操舵角加速度の標準偏差、および、前記車両が直線を走行中の時の前記車両の横加速度の標準偏差のうち少なくとも一方に基づいて、前記熟練度を判定する、車両の情報提供装置が提供される。
【0007】
前記情報提供制御部は、前記ドライバの前記熟練度が所定の閾値に基づいて低いと判定され、且つ前記運転負荷が予め定められた高い場面に相当すると判定された場合に、前記ドライバに対する緊急度の低い情報の提供量を抑制するものであっても良い。なお、緊急度の低い情報の提供量の抑制には、情報の種類を抑制することが含まれる。また、緊急度の低い情報の提供量の抑制には、電話による情報の提供、ナビゲーションによる情報の提供、または緊急度の低い警報の情報などを制限することが含まれる。
【0008】
また、前記情報提供制御部は、前記運転負荷が高い状況が経過した後に、前記ドライバに対して前記緊急度の低い情報を提供するものであっても良い。
【0009】
また、前記情報提供制御部は、前記運転負荷が高い状況が到来する前に、前記ドライバに対して前記緊急度の低い情報を提供するものであっても良い。
【0010】
また、前記運転負荷が高い状況は、前記車両がカーブを走行している状況であっても良い。
【0011】
また、前記情報の緊急度を判定する緊急度判定部を備え、前記情報提供制御部は、前記緊急度が低い場合に、前記ドライバに対する前記緊急度の低い情報の提供を制御するものであっても良い。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータが、車両のドライバの運転の熟練度を判定するステップと、前記ドライバが前記車両を運転する際の運転負荷を判定するステップと、前記熟練度と前記運転負荷に基づいて、前記ドライバに対する情報の提供を制御するステップと、を実行し、前記熟練度を判定するステップでは、前記車両がカーブを走行中の時の前記車両の操舵角速度の標準偏差または操舵角加速度の標準偏差、および、前記車両が直線を走行中の時の前記車両の横加速度の標準偏差のうち少なくとも一方に基づいて、前記熟練度を判定する、車両の情報提供方法が提供される。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両のドライバの運転の熟練度を判定する手段、前記ドライバが前記車両を運転する際の運転負荷を判定する手段、前記熟練度と前記運転負荷に基づいて、前記ドライバに対する情報の提供を制御する手段、としてコンピュータを機能させ、前記熟練度を判定する手段は、前記車両がカーブを走行中の時の前記車両の操舵角速度の標準偏差または操舵角加速度の標準偏差、および、前記車両が直線を走行中の時の前記車両の横加速度の標準偏差のうち少なくとも一方に基づいて、前記熟練度を判定するためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両のドライバの運転の熟練度に応じて、ドライバへの情報の提供を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両システムの構成を示す模式図である。
【
図2】車両のドライバが熟練者であるかを判定する処理を示すフローチャートである。
【
図3】車両のドライバが熟練者であるかを判定する処理を示すフローチャートである。
【
図4A】ステップS16でヨーレートが最大値(ピーク値)となるタイミングの前後Z秒間の操舵角を示す特性図である。
【
図4B】Z秒間の操舵角速度の分布から求まる、熟練者と非熟練者の標準偏差を示す特性図である。
【
図5】ドライバの運転負荷が高い場面での情報提供量を抑制する処理を示すフローチャートである。
【
図6】ドライバの運転負荷が高い場面の例を示す模式図である。
【
図7】カーブ走行中の情報提供量を抑制するため、カーブ走行後に情報提供する処理を示すフローチャートである。
【
図8】カーブ走行中の情報提供量を抑制するため、カーブ走行前に情報提供する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両システム1000の構成を示す模式図である。車両システム1000は、基本的には自動車などの車両に構成されるシステムである。
図1に示すように、車両システム1000は、車外センサ100、車両センサ200、操舵角センサ300、制御装置400、車内表示装置500、車外表示装置600、ナビゲーション装置700、通信装置800、スピーカ900を有して構成されている。
【0020】
車外センサ100は、ステレオカメラ、単眼カメラ、ミリ波レーダ、赤外線センサ等から構成され、自車両周辺の人や車両などの位置、速度を測定する。車外センサ100がステレオカメラから構成される場合、ステレオカメラは、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子を有する左右1対のカメラを有して構成され、車両外の外部環境を撮像し、撮像した画像情報を制御装置400へ送る。一例として、ステレオカメラは、色情報を取得可能なカラーカメラから構成され、車両のフロントガラスの上部に設置される。
【0021】
車両センサ200は、車両の速度、加速度、角速度、ヨーレートなど、車両内のCAN(Controller Area Network)で通信されている情報を取得する。なお、これらの情報は、各種センサから取得することができる。操舵角センサ300は、ステアリングホイールに装着され、ステアリングホイールの操舵角を検出する。
【0022】
制御装置400は、車両のドライバの運転の熟練度に基づいて、ドライバへの情報の提供を制御する。特に、制御装置400は、ドライバの運転負荷に基づいて、運転負荷が高い場面でのドライバへの情報提供を抑制する。また、制御装置400は、緊急度の低い情報について、ドライバへの情報提供を抑制する。このため、制御装置400は、熟練度判定部402、運転負荷判定部404、情報提供制御部406、緊急度判定部408、ドライバ認証部410、を有している。熟練度判定部402は、車両のドライバの運転の熟練度を判定する。運転負荷判定部404は、ドライバが車両を運転する際の運転負荷を判定する。情報提供制御部406は、熟練度と運転負荷に基づいて、ドライバに対する情報の提供を制御し、車内表示装置500、またはスピーカ900による情報の提供を制御する。緊急度判定部408は、ドライバに提供する情報の緊急度を判定する。ドライバ認証部410は、車両を運転するドライバの認証を行う。なお、認証方法の一例として、ドライバの顔、指紋を認証する方法が挙げられるが、認証方法としては様々な手法を用いることができる。なお、制御装置400の各構成要素は、回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)によって構成されることができる。
【0023】
車内表示装置500は、例えば車内のダッシュパネル、メータ周り等に表示を行う装置である。車外表示装置600は、車両外部に向けて表示を行う装置である。なお、車外表示装置600は、HUD(Head-up Display)装置から構成されていても良い。HUD(Head-up Display)装置は、人間の視野に直接情報を映し出す表示装置であって、自動車のフロントガラスやリアガラスなどのガラス上に虚像や実像を表示する。
【0024】
通信装置800は、車両外部と通信を行い、渋滞情報、道路情報などの各種情報を受信する。ナビゲーション装置700は、地図情報に基づいて、現在地から目的地までの経路を検索する。このため、ナビゲーション装置700は、グローバル・ポジショニング・システム(GPS:Global Positioning System)等により車両の現在位置を取得することができる。また、ナビゲーション装置700は現在地まで車両が走行してきた経路を記憶している。
【0025】
図2及び
図3は、車両のドライバが熟練者であるかを判定する処理を示すフローチャートである。
図2及び
図3の処理は、制御装置400により所定の周期毎に行われ、主に熟練度判定部402によって行われる。
図2は、カーブ走行区間に基づいて、ドライバの熟練度を判定する処理を示している。なお、カーブは単一のカーブであっても良いし、複数のカーブを平均しても良い。
【0026】
先ず、ステップS10では、車両センサ200が検出した車両のヨーレートに基づいて、車両がカーブを走行したか否かを判定する。具体的に、ステップS10では、ヨーレートが第1のしきい値X1よりも大きく、第2のしきい値X2よりも小さい場合は、車両がカーブを走行したと判定する。車両がカーブを走行した場合はステップS12へ進み、車両がカーブを走行していない場合は、処理を終了する。
【0027】
ステップS12では、車両がカーブを走行している時間t1が一定時間継続したか否かを判定する。具体的に、ステップS12では、車両がカーブを走行している時間t1がしきい値Yを超えているか否かを判定し、車両がカーブを走行している時間t1がしきい値Yを超えている場合は、車両がカーブを走行している時間t1が一定時間継続したと判定し、ステップS16へ進む。
【0028】
ステップS16では、車内センサ200が検出した車両のヨーレートに基づいて、車両がカーブを走行している時間t1の中で、ヨーレートが最大値(ピーク値)となるタイミングの前後Z秒間の操舵角を取得する。次のステップS18では、Z秒間における操舵角速度αまたは操舵角加速度βを算出する。次のステップS20では、操舵角速度αまたは操舵角加速度βの標準偏差σを算出する。
【0029】
次のステップS22では、標準偏差σの値が所定のしきい値Tよりも大きいか否かを判定し、標準偏差σが所定のしきい値Tよりも大きい場合はステップS24へ進む。ステップS24へ進んだ場合は、操舵角速度αまたは操舵角加速度βのバラツキが比較的大きいため、操舵が不安定であると考えられる。従って、ステップS24では、車両のドライバが非熟練者であると判定する。ステップS24の後は処理を終了する。
【0030】
一方、ステップS22で標準偏差σの値が所定のしきい値T以下の場合は、ステップS26へ進む。ステップS26へ進んだ場合は、操舵角速度αまたは操舵角加速度βのバラツキが比較的小さいため、操舵が安定していると考えられる。従って、ステップS26では、車両のドライバが熟練者であると判定する。ステップS26の後は処理を終了する。
【0031】
図4Aは、ステップS16でヨーレートが最大値(ピーク値)となるタイミングの前後Z秒間の操舵角を示す特性図である。また、
図4Bは、Z秒間の操舵角速度の分布から求まる、熟練者と非熟練者の標準偏差を示す特性図である。
図4Bに示すように、熟練者の方が非熟練者よりも操舵角速度の分布が狭くなり、標準偏差の値が大きくなる。
【0032】
図3は、直線走行区間に基づいて、ドライバの熟練度を判定する処理を示している。この処理では、直線でのふらつきを横加速度の標準偏差から評価し、熟練度を判定する。先ず、ステップS30では、車両センサ200が検出した車両のヨーレートに基づいて、車両が直線を走行したか否かを判定する。具体的に、ステップS30では、ヨーレートが所定のしきい値Xよりも小さい場合は、車両が直線を走行したと判定する。車両が直線を走行した場合はステップS32へ進み、車両が直線を走行していない場合は、処理を終了する。
【0033】
ステップS32では、車両が直線を走行している時間t1が一定時間継続したか否かを判定する。具体的に、ステップS32では、車両が直線を走行している時間t1がしきい値Yを超えているか否かを判定し、車両が直線を走行している時間t1がしきい値Yを超えている場合は、車両が直線を走行している時間t1が一定時間継続したと判定し、ステップS36へ進む。
【0034】
ステップS36では、車両センサ200が取得した車両の横加速度に基づいて、車両が直線を走行している時間t1の中で、直線走行区間の横加速度を取得する。次のステップS38では、ステップS36で取得した横加速度の標準偏差γを算出する。
【0035】
次のステップS40では、標準偏差γの値が所定のしきい値Sよりも大きいか否かを判定し、標準偏差γが所定のしきい値Sよりも大きい場合はステップS42へ進む。ステップS42へ進んだ場合は、横加速度のバラツキが比較的大きいため、車両挙動が不安定であると考えられる。従って、ステップS42では、車両のドライバが非熟練者であると判定する。ステップS42の後は処理を終了する。
【0036】
一方、ステップS40で標準偏差γの値が所定のしきい値S以下の場合は、ステップS44へ進む。ステップS44へ進んだ場合は、横加速度のバラツキが比較的小さいため、車両挙動が安定していると考えられる。従って、ステップS44では、車両のドライバが熟練者であると判定する。ステップS44の後は処理を終了する。
【0037】
熟練度判定部402は、予め熟練度が判明しているドライバについては、ドライバ認証部410による認証の結果に基づいて熟練度を判定しても良い。例えば、過去に非熟練者として判定したドライバAが車両を運転する場合に、ドライバ認証部410によってドライバAであることが認証されると、
図2、
図3に示した処理を行うことなく、ドライバAを非熟練者と判定することができる。
【0038】
また、ドライバの熟練度の判定方法として、
図2及び
図3に示した方法以外の方法を用いても良い。例えば、加減速の滑らかさをアクセル開度変化率の標準偏差から評価し、ドライバの熟練度を判定しても良い。また、直線でのふらつきを、GPSまたは白線検知などから得られる走行軌跡に基づいて評価し、ドライバの熟練度を判定しても良い。また、走行軌跡以外にも、操舵角速度の周波数解析結果、操舵角速度の絶対値が所定値を超えた時間(または回数)、ヨーレートの標準偏差、車線逸脱回数などをしきい値で評価しても良い。更に、車間の取り方を衝突余裕時間の標準偏差から評価し、ドライバの熟練度を評価しても良い。
【0039】
以上のような車両のドライバの熟練度の判定に基づいて、本実施形態では、ドライバの熟練度に応じてドライバへの情報提供を制御する。特に、本実施形態では、ドライバが非熟練者である場合に、ドライバへの情報の提供を抑制することで、ドライバが安心して運転に集中できるようにする。
図5は、ドライバの運転負荷が高い場面での情報提供量を抑制する処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS50では、ドライバが非熟練者であるか否かを判定し、ドライバが非熟練者である場合はステップS52へ進む。
【0040】
ステップS52では、運転負荷判定部404が、ドライバの運転負荷が高い場面か否かを判定する。ステップS52の判定は、例えば、ナビゲーション装置700から得られるナビゲーション情報、通信装置800が外部から取得した道路情報等に基づいて行われる。
図6は、ドライバの運転負荷が高い場面の例を示す模式図である。
図6に示すように、ナビゲーション情報から、交差点付近、高速道路の合流付近、カーブ区間、狭路に自車位置がある場合は、ドライバの運転負荷が高い場面と判定する。より具体的には、
図6に示すように、交差点から距離L1だけ手前の地点から交差点までを交差点付近と判断し、運転負荷が高い場面と判定する。また、合流地点から距離L
2だけ手前の地点から合流地点までを合流地点付近と判定し、運転負荷が高い場面と判定する。また、曲率半径Rc以上の道路をカーブと判定し、運転負荷が高い場面と判定する。また、道幅がWc以下の道路を狭路と判定し、運転負荷が高い場面と判定する。運転負荷判定部404は、ナビゲーション装置700から得られるこれらの情報に基づいて、運転負荷が高い場面か否かを判定する。
【0041】
ステップS52でドライバの運転負荷が高い場面と判定された場合は、ステップS54へ進む。ステップS54では、緊急度判定部408が、通信装置800により緊急度の低い情報を受信したか否かを判定する。緊急度の低い情報として、交通情報、ナビゲーション情報、緊急度の低い警報などが該当する。ステップS54で緊急度の低い情報を受信したと判定した場合は、ステップS56へ進む。ステップS56では、情報提供制御部406が、ドライバの運転負荷が高い場面を脱した後に、ステップS54で受信した情報をドライバに提供する。ドライバへの情報の提供は、主として、車内表示装置500への表示、スピーカ900から発する音声によって行われる。
【0042】
図7は、カーブ走行中の情報提供量を抑制するため、カーブ走行後に情報提供する処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS60では、ドライバが非熟練者であるか否かを判定し、ドライバが非熟練者である場合はステップS62へ進む。ステップS62では、車両がカーブを走行中か否かを判定する。車両がカーブを走行中か否かの判定は、
図2のステップS10と同様に行うことができる。
【0043】
ステップS62で車両がカーブを走行中と判定された場合は、ステップS64へ進む。ステップS64では、カーブを走行中に通信装置800により交通情報を受信したか否かを判定し、交通情報を受信した場合はステップS66へ進む。ステップS66では、情報提供制御部406がドライバへの情報の提供を制御し、車両がカーブを走行した後にドライバへ情報を提供させる。ドライバへの情報の提供は、主として、車内表示装置500への表示、スピーカ900から発する音声によって行われる。なお、交通情報以外にも、電話の通話から得られる情報、ナビゲーション情報、緊急度の低い警報などについて、カーブ走行中にドライバに提供することを制限しても良い。
【0044】
図8は、カーブ走行中の情報提供量を抑制するため、カーブ走行前に情報提供する処理を示すフローチャートである。
図8の処理は、例えば、カーブ走行後すぐに左折(または右折)するルートをナビゲーション装置700が設定している場合に相当する。通常は左折(または右折)地点から一定の距離だけ手前の位置で情報提供を行うが、カーブ走行前に左折(または右折)することを事前に情報提供しておくことで、カーブ走行中の情報提供量を抑制し、ドライバは余裕をもって左折(または右折)を行うことができる。
【0045】
先ず、ステップS70では、ドライバが非熟練者であるか否かを判定し、ドライバが非熟練者である場合はステップS72へ進む。ステップS72では、カーブ走行中にドライバに提供する情報があるか否かを判定し、カーブ走行中にドライバに提供する情報がある場合は、ステップS74へ進む。ステップS74では、情報提供制御部406がドライバへの情報の提供を制御し、カーブ走行前にドライバへ情報の提供を行う。
【0046】
以上説明したように本実施形態によれば、ドライバの運転の熟練度に応じて、ドライバへの情報の提供を制御するようにしたため、情報の提供によりドライバの運転に支障が生じてしまうことを抑制することが可能となる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0048】
400 制御装置
402 熟練度判定部
404 運転負荷判定部
406 情報提供制御部
408 緊急度判定部