(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】航空機
(51)【国際特許分類】
B64C 13/00 20060101AFI20230508BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230508BHJP
B64C 39/08 20060101ALI20230508BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230508BHJP
G05D 1/10 20060101ALI20230508BHJP
G05B 9/03 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B64C13/00 B
B64C27/08
B64C39/08
B64C13/18 Z
G05D1/10
G05B9/03
(21)【出願番号】P 2019045023
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 正翁
【審査官】草野 顕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-056934(JP,A)
【文献】国際公開第2018/118070(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/00
B64C 27/08
B64C 39/02
B64C 39/08
B64C 13/18
G05D 1/10
G05B 9/03
B64C 27/20-22
B64C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で異なる位置に配された複数の第1ユニットを有する航空機であって、
前記複数の第1ユニットは、それぞれ、
前記航空機の飛行状態を検出する第1センサと、
前記航空機に対して揚力または推力を与える回転翼と、
前記回転翼を駆動する駆動部と、
前記航空機の飛行経路と、検出された前記飛行状態とに基づく制御則により前記回転翼の駆動信号を生成
可能であり、前記駆動部に出力する第1駆動制御部と、
を備え、
前記第1駆動制御部の制御則は、前記第1ユニット同士で等しく、前記複数の第1ユニット全ての駆動信号を生成
可能であり、
前記駆動部は、生成された前記複数の第1ユニット全ての駆動信号のうち自己に相当する駆動信号に基づいて前記回転翼を駆動
し、
前記航空機は、
前記航空機の飛行状態を検出する第2センサと、
前記航空機の飛行経路と、検出された前記飛行状態とに基づく制御則により前記回転翼の駆動信号を生成可能であり、前記第1ユニットの前記駆動部に出力する第2駆動制御部と、
を備えるユニットであって、前記第1ユニットとは別に設けられ前記回転翼および前記駆動部を備えないユニット、または、前記複数の第1ユニットのうちの1つのユニットである第2ユニットをさらに有し、
前記第2駆動制御部の制御則は、前記複数の第1ユニットと等しく、
前記第2ユニットと全ての前記第1ユニットとの通信が正常である通常状態では、前記第2駆動制御部が前記全ての第1ユニットの各々の前記駆動部に対する駆動信号を生成し、
前記第2ユニットと少なくとも一部の前記第1ユニットとの通信が正常でない場合には、前記第2駆動制御部が当該少なくとも一部の第1ユニット以外の各第1ユニットの前記駆動部に対する駆動信号を生成し、当該少なくとも一部の第1ユニットの前記第1駆動制御部が当該少なくとも一部の第1ユニットの前記駆動部に対する駆動信号を生成する航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回転翼を搭載した航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は、空間移動の自由度が高く、移動速度も高いので、飛行時の安全性には特に配慮が必要である。例えば、飛行時に、エンジン等の動力源を個々に制御するコントローラが故障したとしても飛行を継続しなければならない。したがって、コントローラが故障した場合に備え、その代わりとなる他のコントローラを待機させておき、故障判断後、直ちに、他のコントローラへの切り換えが必要となる。
【0003】
例えば、航空機を制御する飛行制御システムにおいて複数のコントローラを切り替え可能に接続し、1のコントローラによる主制御信号が有効でなければ、他のコントローラによるバックアップ制御信号に切り換える技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、飛行制御システムにおいては、冗長的に複数のコントローラを接続し、故障時には、その接続を切り換えることによって飛行を維持する。ただし、このような複数のコントローラでは、相互に通信が確立されていることを前提としている。したがって、コントローラ間で通信が途絶えると、他のコントローラがバックアップ機能を果たすことができなくなる。
【0006】
ここで、通信を担う信号線を物理的に冗長化して通信が途絶えるのを防ぐことも考えられる。しかし、複数の回転翼を搭載した航空機や機体の形状が複雑化した航空機では、その冗長な信号線を効率的に配線するのが難しい。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、複数の回転翼を搭載した航空機においても安全性を適切に担保することが可能な航空機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、平面視で異なる位置に配された複数の第1ユニットを有する本発明の航空機において、複数の第1ユニットは、それぞれ、航空機の飛行状態を検出する第1センサと、航空機に対して揚力または推力を与える回転翼と、回転翼を駆動する駆動部と、航空機の飛行経路と、検出された飛行状態とに基づく制御則により回転翼の駆動信号を生成可能であり、駆動部に出力する第1駆動制御部と、を備え、第1駆動制御部の制御則は、第1ユニット同士で等しく、複数の第1ユニット全ての駆動信号を生成可能であり、駆動部は、生成された複数の第1ユニット全ての駆動信号のうち自己に相当する駆動信号に基づいて回転翼を駆動し、航空機は、航空機の飛行状態を検出する第2センサと、航空機の飛行経路と、検出された飛行状態とに基づく制御則により回転翼の駆動信号を生成可能であり、第1ユニットの前記駆動部に出力する第2駆動制御部と、を備えるユニットであって、第1ユニットとは別に設けられ回転翼および駆動部を備えないユニット、または、複数の第1ユニットのうちの1つのユニットである第2ユニットをさらに有し、第2駆動制御部の制御則は、複数の第1ユニットと等しく、第2ユニットと全ての第1ユニットとの通信が正常である通常状態では、第2駆動制御部が全ての第1ユニットの各々の駆動部に対する駆動信号を生成し、第2ユニットと少なくとも一部の第1ユニットとの通信が正常でない場合には、第2駆動制御部が当該少なくとも一部の第1ユニット以外の各第1ユニットの駆動部に対する駆動信号を生成し、当該少なくとも一部の第1ユニットの第1駆動制御部が当該少なくとも一部の第1ユニットの駆動部に対する駆動信号を生成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の回転翼を搭載した航空機においても安全性を適切に担保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】航空機の概略的な構成を説明するための説明図である。
【
図2】第1ユニットの概略的な構成を説明するための説明図である。
【
図3】第2ユニットの概略的な構成を説明するための説明図である。
【
図4】航空機の初期化処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、航空機1の概略的な構成を説明するための説明図である。航空機1は、複数(ここでは6つ)の第1ユニット100(100a、100b、100c、100d、100e、100f)と、第2ユニット200とが筐体2に固定され、所謂、無人航空機(ドローン)として機能する。なお、ここでは、航空機1として、6つの回転翼を備える無人航空機を挙げて説明するが、オスプレイに代表されるような複数の回転翼を備える様々な航空機に適用できる。また、航空機1は無人航空機に限らず、有人航空機にも適用できる。
【0014】
なお、航空機1を構成する複数の第1ユニット100は、それぞれ、平面視で位置が異なる。ここで、平面視としたのは、第1ユニット100同士は、水平面に投射したときの位置が異なればよく、鉛直方向の位置は制限されないからである。また、航空機1は予め移動前方と移動後方が固定されていてもよく、また、移動方位によって移動前方と移動後方とを変更することができるとしてもよい。
【0015】
図2は、第1ユニット100の概略的な構成を説明するための説明図である。第1ユニット100は、第1センサ110と、第1メモリ112と、第1通信部114と、第1プロセッサ116と、回転翼118と、駆動部120とを含んで構成される。
【0016】
第1センサ110は、航空機1の現在の飛行状態を検出する。例えば、第1センサ110としてのGPS(Global Positioning System)は、航空機1の飛行位置(経度、緯度、高度を含む)や移動方位を検出し、慣性航法装置(IMU:Inertial Measurement Unit)は、航空機1の姿勢を検出する。また、第1センサ110は、航空機1の移動速度、機体が受ける風向、風速、機体周囲の気圧、温度、湿度等も検出できる。
【0017】
第1メモリ112は、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成される。本実施形態において、第1メモリ112は、飛行制御を実行するための制御則(伝達関数)fを実行可能なプログラムを格納している。
【0018】
第1通信部114は、外部装置と無線で通信を確立可能に構成されている。なお、外部装置としては、地上設備、別体の航空機、船舶等が挙げられる。
【0019】
第1プロセッサ116は、CPU等の演算プロセッサで構成され、第1メモリ112のプログラムと協働して、第1経路導出部150、第1駆動制御部152、第1制御切換部154として機能する。
【0020】
ここで、第1経路導出部150は、第1センサ110から取得した現在地および第1通信部114を通じて受信した目的地、もしくは、予め第1メモリ112に設定されていた現在地および目的地に基づいて航空機1の燃料消費(電力消費)が最小となる、または、到達時間が最小となる飛行経路を導出する。なお、第1経路導出部150は、第1センサ110から現在地を取得する代わりに、目的地同様、第1通信部114を通じて現在地を受信してもよい。また、第1経路導出部150は、現在地、目的地に加え、外部環境(天候、気圧、風速、風向等)に基づいて飛行経路を導出してもよい。飛行経路には、その飛行経路中の複数の飛行位置における飛行状態(移動方位、移動速度、姿勢等)が含まれる。第1駆動制御部152は、飛行経路と、第1センサ110で検出された飛行状態とに基づいて回転翼118の駆動信号を生成し、駆動部120に出力する。第1制御切換部154は、航空機1の状態(正常または異常)に応じて制御系を切り換える。なお、第1経路導出部150、第1駆動制御部152は、通常状態では機能を停止しており、必要に応じて動作する。
【0021】
回転翼118は、回転によって航空機1(具体的には自己の第1ユニット100)に揚力または推力を与えるプロペラ状の翼である。
【0022】
駆動部120は、内燃機関(例えば、ジェットエンジンやレシプロエンジン)やモータで構成され、回転翼118を駆動するとともに、駆動信号に従って回転翼118の回転数を制御する。ここでは、複数の第1ユニット100に設けられた駆動部120それぞれが独立して回転翼118を駆動することで、航空機1の移動方位、移動速度、および、姿勢を制御する。
【0023】
図3は、第2ユニット200の概略的な構成を説明するための説明図である。第2ユニット200は、第2センサ210と、第2メモリ212と、第2通信部214と、第2プロセッサ216とを含んで構成される。
【0024】
なお、第2ユニット200における第2センサ210、第2メモリ212、第2通信部214、第2プロセッサ216は、第1ユニット100における第1センサ110、第1メモリ112、第1通信部114、第1プロセッサ116と機能が実質的に等しいので、ここではその詳細な説明を省略する。なお、第2ユニット200と各第1ユニット100とはネットワークを形成し、相互に通信(有線または無線)が可能となっている。
【0025】
第2プロセッサ216は、第2メモリ212のプログラムと協働して、第2経路導出部250、第2駆動制御部252、第2制御切換部254として機能する。第2経路導出部250は、第2センサ210から取得した現在地および第2通信部214を通じて受信した目的地、もしくは、予め第2メモリ212に設定されていた現在地および目的地に基づいて飛行経路を導出する。なお、第2経路導出部250は、第2センサ210から現在地を取得する代わりに、目的地同様、第2通信部214を通じて現在地を受信してもよい。また、第2経路導出部250は、現在地、目的地に加え、外部環境に基づいて飛行経路を導出してもよい。第2駆動制御部252は、第2経路導出部250が導出した飛行経路と、第2センサ210による飛行状態とに基づいて、第1ユニット100における回転翼118の駆動信号を生成し、第1ユニット100の駆動部120に出力する。第2制御切換部254は、航空機1の状態(正常または異常)に応じて制御系を切り換える。
【0026】
ここでは、航空機1における6つの第1ユニット100および1つの第2ユニット200で、センサ(第1センサ110、第2センサ210)、メモリ(第1メモリ112、第2メモリ212)、通信部(第1通信部114、第2通信部214)、プロセッサ(第1プロセッサ116、第2プロセッサ216)を共通して搭載する。かかる構成により、各機能部の様々な不具合に対応し、安全性を適切に担保することが可能となる。以下、その具体的な構成を説明する。
【0027】
図4は、航空機1の初期化処理を示すフローチャートであり、
図5は、航空機1の通常状態を示す概略図である。
【0028】
まず、第2ユニット200の第2経路導出部250は、現在地および目的地を取得する(S300)。そして、第2経路導出部250は、現在地および目的地に基づいて飛行経路を導出し(S302)、第2メモリ212に保持するとともに、導出した飛行経路を各第1ユニット100の第1メモリ112に複製する(S304)。
【0029】
ここでは、飛行経路を、複数の第1ユニット100全ての第1メモリ112(112a~112f)に複製することで、6つの第1ユニット100(100a~100f)および第2ユニット200で飛行経路が共有される。すなわち、第1メモリ112および第2メモリ212のいずれにおいても飛行経路が保持されることとなる。
【0030】
次に、第2ユニット200の第2制御切換部254は、航空機1が正常であることに基づいて6つの駆動部120へ駆動信号を出力する制御主体を第2ユニット200の第2駆動制御部252に設定する(S306)。したがって、初期化後の通常状態では、
図5において実線で囲った第2ユニット200の第2通信部214、第2経路導出部250、第2駆動制御部252、第2制御切換部254、第2メモリ212、第2センサ210、第1ユニット100(100a~100f)の駆動部120(120a~120f)、回転翼118(118a~118f)が機能することとなる。
【0031】
続いて、第2ユニット200の第2駆動制御部252は、第2センサ210から現在の飛行状態(特に、飛行位置、移動方位、姿勢)を取得する(S308)。次に、第2駆動制御部252は、第2メモリ212から飛行経路および制御則fを読み出し、その制御則fを用い、飛行経路、および、第2センサ210を通じて取得した現在の飛行状態に基づいて、各第1ユニット100の駆動部120(120a~120f)に対する駆動信号Ya~Yfを生成する(S310)。
【0032】
ここで、制御則fは、第2メモリ212に予め保持されており、少なくとも、1の飛行経路と、1のセンサ(ここでは第2センサ210)による飛行状態とが入力された場合に、その差分に基づいて、現在の飛行状態が飛行経路に近づくように(差分が0となるように)6つの回転翼118それぞれの駆動信号Ya~Yfを生成する関数である。ここでは、6つの回転翼118それぞれの駆動信号が他の駆動信号と独立して生成されている。すなわち、回転翼118同士で駆動信号が影響し合うことはなく、1の飛行経路と、1のセンサによる飛行状態とによってそれぞれの回転翼118の駆動信号Ya~Yfが一義的に決定する。
【0033】
各第1ユニット100の駆動部120は、自己の第1ユニット100に設けられた回転翼118が航空機1のいずれに位置しているかを把握しており、その位置に応じて、生成された駆動信号Ya~Yfのいずれか1の駆動信号を受信する。例えば、第1ユニット100aの駆動部120aは、駆動信号Yaを受信し、第1ユニット100bの駆動部120bは、駆動信号Ybを受信し、第1ユニット100cの駆動部120cは、駆動信号Ycを受信し、第1ユニット100dの駆動部120dは、駆動信号Ydを受信し、第1ユニット100eの駆動部120eは、駆動信号Yeを受信し、第1ユニット100fの駆動部120fは、駆動信号Yfを受信する。
【0034】
そして、各第1ユニット100の駆動部120(120a~120f)は、受信した駆動信号に従って回転翼118(118a~118f)の回転数を制御し(S312)、ステップS308からの処理を繰り返す。こうして、航空機1が適切に飛行制御される。
【0035】
ところで、上述したように、制御則fは、第2ユニット200の第2メモリ212のみならず、第1ユニット100の第1メモリ112にも保持されている。すなわち、制御則fは、第1ユニット100同士および第2ユニット200で等しい。したがって、駆動部120へ駆動信号を出力する制御主体としては、第2ユニット200の第2駆動制御部252のみならず、第1ユニット100の第1駆動制御部152に設定することができる。
【0036】
換言すれば、第1ユニット100の駆動部120は、第2ユニット200からの駆動信号を受けて回転翼118の回転数を制御することもできるし、第1ユニット100自体で独立して駆動信号を生成して回転翼118の回転数を制御することもできる。このように、6つの第1ユニット100および第2ユニット200で、同一の飛行経路および制御則fを共有することで、以下に示すように、様々な不具合に適切に対応することができる。
【0037】
なお、ここでは、制御則fを第1メモリ112および第2メモリ212に予め保持させておき、始動時に、第2ユニット200から第1ユニット100の第1メモリ112に飛行経路を複製する例を挙げて説明した。しかし、かかる場合に限らず、始動時に、第2ユニット200から第1ユニット100の第1メモリ112に飛行経路および制御則fを複製するとしてもよい。また、制御則fをそのまま複製する例を挙げて説明したが、制御則fを、駆動信号Ya~Yfそれぞれを導出する関数に分け、個々に第1ユニット100a~100fに複製するとしてもよい。
【0038】
図6は、航空機1の他の状態を示す概略図である。ここでは、
図6中「×」で示すように、第2ユニット200と一部の第1ユニット100(ここでは第1ユニット100a)との通信が正常ではない(例えば切断された)場合を示す。
【0039】
まず、第2ユニット200の第2制御切換部254は、第1ユニット100a以外の第1ユニット100(100b~100f)との通信が正常であることに基づいて、第1ユニット100b~100fの5つの駆動部120(120b~120f)の制御主体を第2ユニット200の第2駆動制御部252に設定する。これと並行して、第1ユニット100aの第1制御切換部154aは、第2ユニット200との通信が正常でないことに基づいて、第1ユニット100aの駆動部120aの制御主体を第1ユニット100aの第1駆動制御部152aに設定する。
【0040】
したがって、第1ユニット100b~100fに関しては、第2ユニット200の第2通信部214、第2経路導出部250、第2駆動制御部252、第2制御切換部254、第2メモリ212、第2センサ210、第1ユニット100b~100fの駆動部120、回転翼118が機能する。具体的に、第2ユニット200の第2駆動制御部252は、第2メモリ212から飛行経路および制御則fを読み出し、制御則fを用い、飛行経路、および、第2センサ210を通じて取得した現在の飛行状態に基づいて、各第1ユニット100b~100fの駆動部120に対する駆動信号Yb~Yfを生成する。そして、各第1ユニット100b~100fの駆動部120(120b~120f)は、生成された駆動信号Yb~Yfに従って回転翼118(118b~118f)の回転数を制御する。
【0041】
一方、第1ユニット100aに関しては、第1ユニット100aの第1通信部114a、第1経路導出部150a、第1駆動制御部152a、第1制御切換部154a、第1メモリ112a、第1センサ110a、駆動部120a、回転翼118aが機能する。具体的に、第1ユニット100aの第1駆動制御部152aは、第1メモリ112aから飛行経路および制御則fを読み出し、制御則fを用い、飛行経路、および、第1センサ110aを通じて取得した現在の飛行状態に基づいて、自己の第1ユニット100aの駆動部120aに対する駆動信号Yaを生成する。そして、第1ユニット100aの駆動部120aは、生成された駆動信号Yaに従って回転翼118aの回転数を制御する。
【0042】
このとき、第1駆動制御部152aは、制御則fを用い、飛行経路、および、現在の飛行状態に基づいて、一旦、第1ユニット100全ての駆動部120に対する駆動信号Ya~Yfを生成し、そのうちの駆動信号Yaのみを抽出して駆動部120aに出力してもよい。また、第1駆動制御部152aは、予め制御則fのうち駆動信号Yaを導出する関数のみを用い、飛行経路、および、現在の飛行状態に基づいて駆動信号Yaのみを生成して駆動部120aに出力してもよい。
【0043】
なお、航空機1の始動時において第2ユニット200と第1ユニット100aとの通信が既に正常ではなかった場合、第1ユニット100aの第1経路導出部150aが、第2ユニット200とは独立して、第1センサ110aから取得した現在地および第1通信部114aを通じて受信した目的地に基づいて飛行経路を導出するとしてもよい。また、航空機1の飛行中に、再度、飛行経路を導出する必要がある場合も、第1ユニット100aの第1経路導出部150aが、第2ユニット200とは独立して、第1センサ110aから取得した現在地および第1通信部114aを通じて受信した目的地に基づいて飛行経路を導出する。
【0044】
ここでは、通信が正常な第1ユニット100b~100fに関して第2ユニット200の第2プロセッサ216で統合的に管理し、通信が正常でない第1ユニット100aに関しては、第1ユニット100a自体の第1プロセッサ116aで独立して管理している。したがって、通信が正常に行われなくとも、航空機1を正常に飛行制御することができる。
【0045】
なお、ここでは、第2ユニット200と第1ユニット100aとの通信が正常ではない場合を説明したが、かかる場合に限らず、第2ユニット200と第1ユニット100b~100fのいずれかとの通信が正常でない場合も上記の処理が適用できる。また、通信が正常でない第1ユニット100は1に限らず、複数または全部であってもよい。この場合も、通信が正常ではない第1ユニット100がそれぞれ独立して制御系を確立すれば足りる。
【0046】
また、ここでは、通信が正常でない第1ユニット100のみを独立させ、他の第1ユニット100は、纏めて第2プロセッサ216の管理下としている。その理由は以下の通りである。すなわち、第1ユニット100をそれぞれ独立して制御するとなると、その制御入力である第1センサ110の検出結果(飛行状態)に誤差が生じ得る。また、第1センサ110から現在地を取得したり、第1通信部114を通じて目的地を取得する場合、その取得タイミングが異なると取得した情報が異なる場合が生じ得る。ここでは、通信が正常でない第1ユニット100以外の第1ユニット100を第2プロセッサ216で統合的に管理することで、誤差による飛行制御のズレを可能な限り回避できる。
【0047】
図7は、航空機1の他の状態を示す概略図である。ここでは、第2ユニット200と各第1ユニット100(100a~100f)との通信は正常であるが、第2プロセッサ216が正常に動作していない場合を示す。
【0048】
上述したように、第2プロセッサ216と第1プロセッサ116とは実質的に機能が等しい。したがって、第1プロセッサ116は、第2プロセッサ216に代わって、各第1ユニット100を統合的に管理できる。
【0049】
具体的に、任意の第1ユニット100(ここでは、第1ユニット100b)の第1制御切換部154bは、制御主体を、第2ユニット200の第2駆動制御部252から第1ユニット100bの第1駆動制御部152bに切り換える。第1駆動制御部152bは、第1メモリ112bから飛行経路および制御則fを読み出し、制御則fを用い、飛行経路、および、第1センサ110bを通じて取得した現在の飛行状態に基づいて、自己を含む各第1ユニット100a~100fの駆動部120(120a~120f)に対する駆動信号Ya~Yfを生成する。そして、各第1ユニット100a~100fの駆動部120は、生成された駆動信号Ya~Yfに従って回転翼118(118a~118f)の回転数を制御する。
【0050】
また、このように切り換わった第1プロセッサ116も正常に動作していない場合、他の第1ユニット100の第1制御切換部154は、制御主体を、第1プロセッサ116が正常に動作していない第1ユニット100の第1駆動制御部152から自己の第1ユニット100の第1駆動制御部152に切り換える。
【0051】
かかる構成により、制御主体となるプロセッサが正常に動作しない場合であっても、航空機1を正常に飛行制御することができる。
【0052】
図8は、航空機1の他の状態を示す概略図である。ここでは、第2ユニット200を構成する機能部(ここでは、第2通信部214)が正常に動作していない場合を示す。
【0053】
上述したように、第2通信部214と第1通信部114とは実質的に機能が等しい。したがって、第2経路導出部250は、目的地を、第2通信部214に代わって、第1通信部114(例えば、第1通信部114d)から取得することができる。
【0054】
具体的に、第2ユニット200の第2制御切換部254は、第2通信部214が正常に動作していないことに応じて、外部装置と通信を確立する主体を、第2通信部214から任意の第1ユニット100(ここでは第1ユニット100d)における第1通信部114dに切り換える。第2経路導出部250は、第2センサ210から取得した現在地および第1通信部114dを通じて受信した目的地に基づいて飛行経路を導出する。
【0055】
このように、第2ユニット200の機能部が正常に動作していない場合、第1ユニット100の機能部によって代替えできる。また、上述したように制御主体が第2ユニット200の第2駆動制御部252から第1ユニット100の第1駆動制御部152に切り換わっている場合、その第1ユニット100の機能部を他の第1ユニット100の機能部によって代替えできる。
【0056】
また、第2ユニット200および第1ユニット100が、動力源として、それぞれ独立して電池を有している場合、それを共有することで、電力の融通も図ることができる。
【0057】
かかる構成により、いずれかの機能部が正常に動作しない場合であっても、航空機1を正常に飛行制御することができる。
【0058】
また、コンピュータを航空機1として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上述した実施形態では、航空機1に、複数の第1ユニット100および第2ユニット200が設けられた例を挙げて説明した。しかし、かかる場合に限らず、航空機1を、第2ユニット200を除いて、複数の第1ユニット100で構成することもできる。この場合、任意の第1ユニット100における第1プロセッサ116が、第2ユニット200の第2プロセッサ216と同等に機能する。
【0061】
また、各第1ユニット100の第1メモリ112に飛行経路が保持された後は、1の第1プロセッサ116が全ての第1ユニット100を管理することも、各第1ユニット100の第1プロセッサ116がそれぞれ自己の第1ユニット100を管理することもできる。かかる構成により、第1ユニット100のみからなる安価かつ簡易な航空機1を形成できる。
【0062】
また、上述した実施形態においては、制御則fとして、1の飛行経路と、1のセンサによる飛行状態とが入力され、その差分に基づいて、現在の飛行状態が飛行経路に近づくように6つの回転翼118それぞれの駆動信号Ya~Yfを独立して生成する関数を挙げて説明した。しかし、かかる場合に限らず、1の駆動信号を生成するのに、他の駆動信号をフィードバックして用いてもよい。かかる構成により、飛行制御の精度を向上することが可能となる。また、他の第1ユニット100の回転翼118の実回転数(駆動結果)をフィードバックしてもよい。かかる構成により、一部の回転翼118に異常が生じた場合も対応可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、複数の回転翼を搭載した航空機に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 航空機
2 筐体
100 第1ユニット
110 第1センサ
112 第1メモリ
114 第1通信部
116 第1プロセッサ
118 回転翼
120 駆動部
150 第1経路導出部
152 第1駆動制御部
154 第1制御切換部
200 第2ユニット
210 第2センサ
212 第2メモリ
214 第2通信部
216 第2プロセッサ
250 第2経路導出部
252 第2駆動制御部
254 第2制御切換部