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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】潜水艦推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/02 20060101AFI20230508BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20230508BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230508BHJP
【FI】
G01B21/02 A
G01B21/20 C
G06T7/00 300Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019045024
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020148550
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 海
(72)【発明者】
【氏名】迫 匠一郎
(72)【発明者】
【氏名】中里 展之
(72)【発明者】
【氏名】村田 巌
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-121732(JP,A)
【文献】特開2012-103188(JP,A)
【文献】特開2020-008535(JP,A)
【文献】特開平07-027853(JP,A)
【文献】特開2015-148452(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105112(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/02
G01B 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の潜水艦ごとに、航跡である波の形状モデルを記憶する記憶部と、
センサにより検出された海面形状データから、潜水艦の航跡である波を抽出する波抽出部と、
前記形状モデルのうち、抽出された波の形状に最も類似する前記形状モデルに対応する潜水艦を特定する類似判定部と、
を備え
前記形状モデルは、潜水艦の進行方向に対して交差する方向から見た波の断面波形を表すモデルであり、
前記記憶部は、複数の潜水艦とそれぞれ対応する複数の前記形状モデルを含む関係データを記憶し、
前記関係データは、波の高さと波長の組み合わせごとに用意されており、
前記類似判定部は、前記抽出された波の高さと波長に対応する前記関係データに含まれる前記形状モデルの中から、前記抽出された波の形状に最も類似する前記形状モデルを特定する潜水艦推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜水艦推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機などに搭載されたセンサにより、海面形状データを生成し、潜水艦の航跡である波を検出する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-148452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1のように、従来の技術では、潜水艦の種別までは特定できなかった。そのため、潜水艦の検出のみならず、潜水艦の種別を特定する技術の開発が希求される。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、潜水艦の種別を特定することが可能な潜水艦推定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の潜水艦推定装置は、複数の潜水艦ごとに、航跡である波の形状モデルを記憶する記憶部と、センサにより検出された海面形状データから、潜水艦の航跡である波を抽出する波抽出部と、形状モデルのうち、抽出された波の形状に最も類似する形状モデルに対応する潜水艦を特定する類似判定部と、を備え、形状モデルは、潜水艦の進行方向に対して交差する方向から見た波の断面波形を表すモデルであり、記憶部は、複数の潜水艦とそれぞれ対応する複数の形状モデルを含む関係データを記憶し、関係データは、波の高さと波長の組み合わせごとに用意されており、類似判定部は、抽出された波の高さと波長に対応する関係データに含まれる形状モデルの中から、抽出された波の形状に最も類似する形状モデルを特定する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、潜水艦の種別を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】海面上空を飛行する航空機を示す図である。
図2】潜水艦推定装置の概略を示す機能ブロック図である。
図3】波抽出部の処理を説明するための図である。
図4】抽出された部分データの波を鉛直上方から捉えた図である。
図5】波の断面形状の例を示す図である。
図6】記憶部に記憶されている関係データを説明するための図である。
図7】潜水艦推定装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、海面SS上空を飛行する航空機10を示す図である。図1に示すように、航空機10には、撮像装置(センサ)11が搭載されており、撮像装置11は、海面SSを撮像する。航空機10は、様々な姿勢となることから、撮像された画像データも、海面SSを鉛直方向に撮像したものとは限らない。
【0013】
図2は、潜水艦推定装置100の概略を示す機能ブロック図である。潜水艦推定装置100は、航空機10に搭載される。図2に示すように、潜水艦推定装置100は、記憶部110、制御部120を備える。
【0014】
記憶部110は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成される。記憶部110には、潜水艦の航跡データが記憶される。航跡は、海中を潜水艦が進行した際に、海面SSに生じる波である。航跡データは、海面SSに生じる波の形状データである。航跡データは、鉛直上方から捉えた波の二次元形状でもよいし、立体(三次元)形状でもよい。また、記憶部110には、後述する関係データが記憶される。
【0015】
制御部120は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、潜水艦推定装置100全体を管理および制御する。
【0016】
また、制御部120は、波抽出部122、類似判定部124としても機能する。波抽出部122は、撮像装置11により検出された海面形状データ(画像データ)から、潜水艦の航跡である波の形状データ(以下、単に「波」という)を抽出する。
【0017】
図3は、波抽出部122の処理を説明するための図である。図3(a)に示すように、海面形状データDaは、航空機10の姿勢に応じて様々な形状となる。そこで、波抽出部122は、航空機10の高度、姿勢、および、撮像装置11の航空機10に対する相対的な位置、角度から、海面形状データDaを正規化する。正規化により、海面形状データDaは、図3(b)に示すように、海面SSを鉛直方向に捉えた画像データとなる。
【0018】
このとき、波抽出部122は、波の影の形状から波の立体形状を推定する。また、撮像装置11が複数設けられる場合、波抽出部122は、複数の撮像装置11で生成された海面形状データDaの差分となる視差情報から、波の立体形状を推定してもよい。また、撮像装置11の代わりに、または、撮像装置11に加えて、レーダが用いられて、波の立体形状を推定してもよい。
【0019】
波抽出部122は、図3(c)、図3(d)に示すように、記憶部110に記憶されている波形データとのパターンマッチングにより、海面形状データDaから潜水艦の航跡である波Waが含まれる部分データDbを抽出する。パターンマッチングでは、波の二次元形状が用いられてもよいし、立体形状が用いられてもよい。
【0020】
図4は、抽出された部分データDbの波Waを鉛直上方から捉えた図である。波Waは、先頭Wbから後方にV字型に延在する。先頭Wbを頂点とする波Waの角度θの二等分線は、図4中、破線で示される。二等分線は、例えば、潜水艦の進行方向に平行である。波抽出部122は、波Waの部分データDbに対し、V-V線断面形状を特定する。
【0021】
図5は、波Waの断面形状の例を示す図である。図5(a)、図5(b)には、波WaのV-V線断面形状が示される。ただし、図5(a)には、潜水艦の水深が浅く、潜水艦が小さい場合が示される。図5(b)には、潜水艦の水深が深く、潜水艦が大きい場合が示される。
【0022】
図5(a)、図5(b)に示すように、潜水艦の大きさが異なっても、水深によっては、波Waの高さhが等しくなる。すなわち、波Waの高さhは、(潜水艦の大きさ/水深)に対して比例する。
【0023】
一方、波の高さhが同じでも、潜水艦が大きい方が、潜水艦が小さいものよりも、波Waの波長L(例えば、半波長)が長くなる。
【0024】
波抽出部122は、波Waの立体形状(例えば、V-V線断面形状)から、波Waの高さh、波長Lを特定する。
【0025】
また、波Waの立体形状(例えば、V-V線断面形状)は、潜水艦の種別(例えば、艦級名)ごとに異なる。そこで、記憶部110には、複数の潜水艦ごとに、航跡である波の形状モデルが記憶されている。
【0026】
図6は、記憶部110に記憶されている関係データを説明するための図である。関係データは、波の形状モデルC1、C2、C3、~、Cnが含まれる。波の形状モデルC1、C2、C3、~、Cnには、それぞれ潜水艦の水深と大きさが関連付けられている。
【0027】
また、関係データは、波Waの高さhと波長Lの組み合わせに応じ、複数設けられる。例えば、高さh/波長Lの値について、所定の値の範囲ごとに、関係データが設けられる。
【0028】
ここで、同一の波の形状モデルが、複数の関係データに含まれる場合もある。異なる関係データに含まれる形状モデル同士を比較すると、水深が互いに異なる(波Waの高さhと波長Lが異なるため)。
【0029】
類似判定部124は、上記のように、波Waの高さhと波長Lを特定すると、対応する関係データを特定し、記憶部110から読み出す。上記のように、波の高さhは、(潜水艦の大きさ/水深)に対して比例する。比例係数は、予め実測値などから設定される。その結果、波の高さhに対応する(潜水艦の大きさ/水深)は、図6に示す一点鎖線のように、一意に特定される。
【0030】
類似判定部124は、図6に破線で示すように、一点鎖線を中心として、所定の水深幅を持たせた範囲にある波の形状モデル群(形状モデルC3など)を特定する。そして、類似判定部124は、特定した形状モデル群に含まれる形状モデルそれぞれについて、波Waの立体形状とのパターンマッチングを行う。類似判定部124は、パターンマッチングの結果、最も類似する(例えば、内積などから導出される類似度が高い)形状モデルを特定する。
【0031】
このように、類似判定部124は、抽出された波Waの高さhから推定される、潜水艦の水深と大きさの比に基づいて、関係データの中から、類似判定の対象とする形状モデルを絞る。そのため、処理負荷が軽減される。
【0032】
図7は、潜水艦推定装置100の処理を示すフローチャートである。図7に示す処理は、例えば、撮像装置11から海面形状データを取得すると実行される。
【0033】
(S200)
波抽出部122は、航空機10の高度、姿勢、および、撮像装置11の航空機10に対する相対的な位置、角度から、海面形状データDaを正規化する。
【0034】
(S202)
波抽出部122は、海面形状データDaにおける波の立体形状を推定する。
【0035】
(S204)
波抽出部122は、記憶部110に記憶されている波形データとのパターンマッチングにより、海面形状データDaから潜水艦の航跡である波Waが含まれる部分データDbを抽出する。
【0036】
(S206)
波抽出部122は、波Waの立体形状から、波Waの高さh、波長Lを特定する。
【0037】
(S208)
類似判定部124は、特定した波Waの高さhと波長Lに対応する関係データを特定し、記憶部110から読み出す。
【0038】
(S210)
類似判定部124は、波Waの高さhと波長Lに応じ、関係データから、所定の水深幅を持たせた範囲にある波の形状モデル群を特定する。
【0039】
(S212)
類似判定部124は、特定した形状モデル群の形状モデルの中から、パターンマッチングにより、波Waに最も類似する形状モデルを特定する。
【0040】
こうして、潜水艦推定装置100(類似判定部124)は、特定した形状モデルから、海面SSの下にいる潜水艦の種別を特定することが可能となる。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、類似判定部124は、抽出された波の高さhと波長Lから、類似判定の対象とする形状モデルが含まれる関係データを絞る場合について説明した。この場合、処理負荷を低減できる。ただし、類似判定部124は、抽出された波の高さhと波長Lから、類似判定の対象とする形状モデルを絞らなくてもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、類似判定部124は、抽出された波Waの高さhから、潜水艦の水深と大きさの比に基づいて、関係データの中から、類似判定の対象とする形状モデルを絞る場合について説明した。ただし、類似判定部124は、関係データに含まれるすべての形状モデルを、類似判定の対象としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、潜水艦推定装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
100 潜水艦推定装置
110 記憶部
122 波抽出部
124 類似判定部
C1、C2、C3、Cn 形状モデル
Da 海面形状データ
L 波長
SS 海面
Wa 波
h 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7