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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】構造材
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/292 20060101AFI20230508BHJP
   E04C 3/46 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
E04C3/292
E04C3/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019046242
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020147995
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-230621(JP,A)
【文献】特開平04-143352(JP,A)
【文献】特開2006-125034(JP,A)
【文献】特開平10-292555(JP,A)
【文献】特開平10-278012(JP,A)
【文献】実開平02-064618(JP,U)
【文献】特開2004-090418(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0407650(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/292,3/36,3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材軸方向と直交する断面が矩形状に形成された複数の木製構造部材が接合されて1つの木製構造部材の断面よりも大きい断面を持つように形成された構造材であって、
材軸方向に沿った対向面同士が所定の間隔を隔てて互いに対向するように配置された一方の木製構造部材及び他方の木製構造部材と、
互いに所定の間隔を隔てて対向する一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に設けられた金属板と、
一方の木製構造部材と金属板と他方の木製構造部材とを接合する接合手段とを備え、
金属板は、断面T字状のT形鋼の縦板により形成され、当該縦板の板面と一方の木製構造部材の対向面及び他方の木製構造部材の対向面とが面接触し、かつ、一方の木製構造部材の対向面と直交して材軸方向に延長する一方の木製構造部材の外面及び他方の木製構造部材の対向面と直交して材軸方向に延長する他方の木製構造部材の外面とT形鋼の横板における縦板側の板面とが面接触した状態に設置され
T形鋼は、構造材の互いに対向する一方の外面側と他方の外面側とにそれぞれ設置され、
一方のT形鋼は、横板が構造材の一方の外面と面接触して、縦板が一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に挟まれた状態に設置され、
他方のT形鋼は、横板が構造材の他方の外面と面接触して、縦板が一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に挟まれた状態に設置され、
一方のT形鋼の縦板の下端と他方のT形鋼の縦板の下端との間に間隔が設けられたことを特徴とする構造材。
【請求項2】
材軸方向と直交する断面が矩形状に形成された複数の木製構造部材が接合されて1つの木製構造部材の断面よりも大きい断面を持つように形成された構造材であって、
材軸方向に沿った対向面同士が所定の間隔を隔てて互いに対向するように配置された一方の木製構造部材及び他方の木製構造部材と、
互いに所定の間隔を隔てて対向する一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に設けられた金属板と、
一方の木製構造部材と金属板と他方の木製構造部材とを接合する接合手段とを備え、
金属板は、断面T字状のT形鋼の縦板により形成され、当該縦板の板面と一方の木製構造部材の対向面及び他方の木製構造部材の対向面とが面接触し、かつ、一方の木製構造部材の対向面と直交して材軸方向に延長する一方の木製構造部材の外面及び他方の木製構造部材の対向面と直交して材軸方向に延長する他方の木製構造部材の外面とT形鋼の横板における縦板側の板面とが面接触した状態に設置され、
T形鋼は、構造材の互いに対向する一対の外面側のうちの一方の外面側にのみ設置され、
T形鋼は、横板が構造材の一方の外面と面接触して、縦板が一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に挟まれた状態に設置され、
構造材の他方の外面側における一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間には板材が挟まれた状態に設置され、
T形鋼の縦板の下端と板材との間に間隔が設けられたことを特徴とする構造材。
【請求項3】
T形鋼の横板が一方の木製構造部材と他方の木製構造部材とに固定部材で固定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造材。
【請求項4】
接合手段は、
一方の木製構造部材と金属板と他方の木製構造部材とに亘って連続するように設けられた連結軸挿入用貫通孔と、
連結軸挿入用貫通孔に挿入された連結軸と、
連結軸挿入用貫通孔の両端より突出する連結軸の両方の端部に形成されたねじ部にそれぞれ締結されて当該連結軸を連結軸挿入用貫通孔に固定するナットとで構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の構造材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製構造部材と金属とを組み合わせて構成された構造材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築において、柱や梁等の構造材を、CLT(Cross
Laminated Timber(直交集成板))又は集成材等の木材だけで構成した木製構造部材の場合、木材としてのひずみや圧縮など脆弱な一面があるため、ロングスパン等を念頭にした長尺かつ大断面の構造材を形成することが難しい。
そこで、木製構造部材と金属を組み合わせて剛性の大きい長尺かつ大断面の構造材を形成することが知られている。例えば、集成材とH形鋼等の鋼材とを組み合わせて構成された構造材が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「木質ハイブリッド耐火建築物主要構造部の納まり」、平成24年3月、日本集成材工業協同組合、URL/http://www.syuseizai.com
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した集成材と鋼材とを組み合わせた構造材では、例えば、スパンの長い梁を形成する場合、梁せいも高くする必要があることから、鋼材もせいの高い鋼材を使用しなくてはならない。
即ち、上述した集成材と鋼材とを組み合わせた構造材では、梁や柱等の構造材の表面側を形成する集成材の内側に鋼材を組み込むための凹部を形成しなければならないため、製造(加工)コストが高くなる。
また、上述した集成材と鋼材とを組み合わせた構造材では、梁を形成する場合には、要求される梁長、梁の断面寸法(梁幅、梁せい)に対応して様々な断面寸法の鋼材が必要となり、また、柱を形成する場合には、要求される柱長、柱の断面寸法に対応して様々な断面寸法の鋼材が必要となるため、部品コストが高くなる。
つまり、上述した集成材と鋼材とを組み合わせた構造材は、コストが高くなってしまうという課題があった。
本発明は、木製構造部材と金属とを組み合わせた剛性の大きい安価な構造材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る構造材は、材軸方向と直交する断面が矩形状に形成された複数の木製構造部材が接合されて1つの木製構造部材の断面よりも大きい断面を持つように形成された構造材であって、材軸方向に沿った対向面同士が所定の間隔を隔てて互いに対向するように配置された一方の木製構造部材及び他方の木製構造部材と、互いに所定の間隔を隔てて対向する一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に設けられた金属板と、一方の木製構造部材と金属板と他方の木製構造部材とを接合する接合手段とを備え、金属板は、断面T字状のT形鋼の縦板により形成され、当該縦板の板面と一方の木製構造部材の対向面及び他方の木製構造部材の対向面とが面接触し、かつ、一方の木製構造部材の対向面と直交して材軸方向に延長する一方の木製構造部材の外面及び他方の木製構造部材の対向面と直交して材軸方向に延長する他方の木製構造部材の外面とT形鋼の横板における縦板側の板面とが面接触した状態に設置され、T形鋼は、構造材の互いに対向する一方の外面側と他方の外面側とにそれぞれ設置され、一方のT形鋼は、横板が構造材の一方の外面と面接触して、縦板が一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に挟まれた状態に設置され、他方のT形鋼は、横板が構造材の他方の外面と面接触して、縦板が一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に挟まれた状態に設置され、一方のT形鋼の縦板の下端と他方のT形鋼の縦板の下端との間に間隔が設けられたことを特徴とするので、木製構造部材と金属とを組み合わせた剛性の大きい安価な構造材を提供できるとともに、断面寸法の一定なT形鋼を用いて、間隔を変えることで、様々な断面寸法の構造材を形成できるようになるとともに、構造材の木製構造部材が一方のT形鋼と他方のT形鋼とによって外側から拘束された構成となり、より剛性の高い構造材を提供できる。
また、本発明に係る構造材は、材軸方向と直交する断面が矩形状に形成された複数の木製構造部材が接合されて1つの木製構造部材の断面よりも大きい断面を持つように形成された構造材であって、材軸方向に沿った対向面同士が所定の間隔を隔てて互いに対向するように配置された一方の木製構造部材及び他方の木製構造部材と、互いに所定の間隔を隔てて対向する一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に設けられた金属板と、一方の木製構造部材と金属板と他方の木製構造部材とを接合する接合手段とを備え、金属板は、断面T字状のT形鋼の縦板により形成され、当該縦板の板面と一方の木製構造部材の対向面及び他方の木製構造部材の対向面とが面接触し、かつ、一方の木製構造部材の対向面と直交して材軸方向に延長する一方の木製構造部材の外面及び他方の木製構造部材の対向面と直交して材軸方向に延長する他方の木製構造部材の外面とT形鋼の横板における縦板側の板面とが面接触した状態に設置され、T形鋼は、構造材の互いに対向する一対の外面側のうちの一方の外面側にのみ設置され、T形鋼は、横板が構造材の一方の外面と面接触して、縦板が一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間に挟まれた状態に設置され、構造材の他方の外面側における一方の木製構造部材の対向面と他方の木製構造部材の対向面との間には板材が挟まれた状態に設置され、T形鋼の縦板の下端と板材との間に間隔が設けられたことを特徴とするので、木製構造部材と金属とを組み合わせた剛性の大きい安価な構造材を提供できるとともに、断面寸法の一定なT形鋼を用いて、間隔を変えることで、様々な断面寸法の構造材を形成できるようになるとともに、T形鋼の使用量を少なくできるので、様々な断面寸法の構造材をより安価に提供できるようになる。
また、T形鋼の横板が一方の木製構造部材と他方の木製構造部材とに固定部材で固定されたことを特徴とするので、一方の木製構造部材とT形鋼と他方の木製構造部材とをより強固に一体化できるようになり、構造材の剛性をより向上させることができる。
また、接合手段は、一方の木製構造部材と金属板と他方の木製構造部材とに亘って連続するように設けられた連結軸挿入用貫通孔と、連結軸挿入用貫通孔に挿入された連結軸と、連結軸挿入用貫通孔の両端より突出する連結軸の両方の端部に形成されたねじ部にそれぞれ締結されて当該連結軸を連結軸挿入用貫通孔に固定するナットとで構成されたことを特徴とするので、一方の木製構造部材と金属板と他方の木製構造部材とを強固に一体化できるようになり、剛性の高い構造材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態1の構造材の断面図。
図2】実施形態1の構造材の断面図。
図3】実施形態1の構造材の分解斜視図。
図4】実施形態1の構造材の斜視図。
図5】実施形態1の構造材の斜視図。
図6】実施形態2の構造材の断面図。
図7】実施形態2の構造材の断面図。
図8】実施形態3の構造材の断面図。
図9】実施形態4の構造材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1に係る梁又は柱等に使用される構造材1は、一方の木製構造部材2Aと、他方の木製構造部材2Bと、互いに所定の間隔を隔てて対向する一方の木製構造部材2Aの対向面2aと他方の木製構造部材2Bの対向面2aとの間に設けられた金属板3と、一方の木製構造部材2Aと金属板3と他方の木製構造部材2Bとに亘って連続するように設けられた複数の連結軸挿入用貫通孔4,4…と、複数の連結軸挿入用貫通孔4,4…にそれぞれ挿入された複数の連結軸5,5…と、連結軸5を連結軸挿入用貫通孔4に固定するナット6,6…とを備えて構成される。
【0008】
木製構造部材2A,2Bは、材軸方向(長手方向)と直交する断面が矩形状に形成された長尺な木製構造部材であり、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材により形成される。
【0009】
互いに所定の間隔を隔てて対向する木製構造部材2A,2Bの対向面2a,2aは、図3に示すように、材軸方向に沿った辺となる互いに平行な辺2b,2bと、当該辺2b,2bの一端同士を繋ぐ辺2cと、当該辺2b,2bの他端同士を繋ぐ辺(図示せず)とで囲まれた面である。
【0010】
金属板3は、縦板31と横板32とを備えた断面T字状のT形鋼30の縦板31により形成される。
【0011】
例えば、図1に示すように、構造材1が梁として使用される場合、T形鋼30は、梁の上面2t側及び下面2u側にそれぞれ上下対称な状態に設置される。
即ち、梁(構造材1)の上面2t側に設置される一方のT形鋼30は、縦板31の一方の板面31aと一方の木製構造部材2Aの対向面2aとが面接触するとともに、縦板31の他方の板面31bと他方の木製構造部材2Bの対向面2aとが面接触し、かつ、一方の木製構造部材2Aの対向面2aと直交して材軸方向に延長する一方の木製構造部材2Aの外面としての上面2t及び他方の木製構造部材2Bの対向面2aと直交して材軸方向に延長する他方の木製構造部材2Bの外面としての上面2tと横板32における縦板31側の板面32a,32a(縦板31と横板32との境界部で区切られた板面)とが面接触した状態に設置される。
また、同様に、梁(構造材1)の下面2u側に設置される他方のT形鋼30は、縦板31の一方の板面31aと一方の木製構造部材2Aの対向面2aとが面接触するとともに、縦板31の他方の板面31bと他方の木製構造部材2Bの対向面2aとが面接触し、かつ、一方の木製構造部材2Aの対向面2aと直交して材軸方向に延長する一方の木製構造部材2Aの外面としての下面2u及び他方の木製構造部材2Bの対向面2aと直交して材軸方向に延長する他方の木製構造部材2Bの外面としての下面2uと横板32における縦板31側の板面32a,32a(縦板31と横板32との境界部で区切られた板面)とが面接触した状態に設置される。
また、梁の上面2t側に設置される一方のT形鋼30の縦板31の下端31eと梁の下面2u側に設置されるT形鋼30の縦板31の下端31eとが間隔Sを隔てて離間するように構成される。
即ち、構造材1が梁である場合、T形鋼30,30は、梁の上面2t側及び下面2u側にそれぞれ上下対称となるように設置され、梁の上面2t側に設置される一方のT形鋼30の縦板31の下端31eと梁の下面2u側に設置される他方のT形鋼30の縦板31の下端31eとの間に間隔Sが設けられた構成とした。
従って、断面寸法の一定なT形鋼30,30を用いて、間隔Sを変えることで、様々な断面寸法(梁せい寸法)の梁を形成できるようになるので、様々な断面寸法(梁せい寸法)の梁を安価に提供できるようになる。
【0012】
また、図示しないが、構造材1が柱である場合、T形鋼30は、柱の互いに対向する一対の側面(外面)側にそれぞれ上下対称となるように設置され、柱の一方の側面側に設置される一方のT形鋼30の縦板31の下端31eと柱の他方の側面側に設置される他方のT形鋼30の縦板31の下端31eとの間に間隔Sが設けられた構成とした。
従って、断面寸法の一定なT形鋼30,30を用いて、間隔Sを変えることで、様々な断面寸法の柱を形成できるようになるので、様々な断面寸法の柱を安価に提供できるようになる。
【0013】
即ち、構造材1は、T形鋼30が、構造材1の互いに対向する一方の外面側と他方の外面側とにそれぞれ設置され、一方のT形鋼30は、横板32が構造材1の一方の外面(例えば図1の上面2t)と面接触して、縦板31が一方の木製構造部材2Aの対向面2aと他方の木製構造部材2Bの対向面2aとの間に挟まれた状態に設置され、他方のT形鋼30は、横板32が構造材1の他方の外面(例えば図1の下面2u)と面接触して、縦板31が一方の木製構造部材2Aの対向面2aと他方の木製構造部材2Bの対向面2aとの間に挟まれた状態に設置され、一方のT形鋼30の縦板31の下端31eと他方のT形鋼30の縦板31の下端31eとの間に間隔Sが設けられた構成としたので、断面寸法の一定なT形鋼30,30を用いて、間隔Sを変えることで、様々な断面寸法の構造材1を形成できるようになり、様々な断面寸法の構造材1を安価に提供できるようになる。
【0014】
図1図3に示すように、連結軸挿入用貫通孔4は、一方の木製構造部材2Aに形成された貫通孔4Aと、他方の木製構造部材2Bに形成された貫通孔4Bと、T形鋼30の縦板31に形成された貫通孔4Cとで構成される。
即ち、連結軸挿入用貫通孔4は、T形鋼30の縦板31と、縦板31の一方の板面31aと対向面2aとが面接触するように設置された一方の木製構造部材2Aと、縦板31の他方の板面31bと対向面2aとが面接触するように設置された他方の木製構造部材2Bとに連続するように形成された貫通孔4A,4C,4Bとで構成される。
【0015】
連結軸挿入用貫通孔4の孔径は、連結軸5を挿入可能なように、連結軸5の軸径に対応して当該軸径より若干大きい寸法に形成されている。
【0016】
連結軸挿入用貫通孔4の両端側には、ナット6の径に対応して当該ナット6の径より若干大きい寸法の径に形成された大径部41,41を備えている。
一方の大径部41は、連結軸挿入用貫通孔4の一端開口より延長して一方の木製構造部材2Aの対向面2aと対向する外面2fに開口する大径孔に形成される。
同様に、他方の大径部41は、連結軸挿入用貫通孔4の他端開口より延長して他方の木製構造部材2Bの対向面2aと対向する外面2fに開口する大径孔に形成される。
【0017】
連結軸5は、連結軸挿入用貫通孔4の長さよりも長く、かつ、構造材1の幅寸法Xよりも短い長さに形成され、連結軸挿入用貫通孔4を貫通して当該連結軸挿入用貫通孔4の両端よりそれぞれ大径部41,41に突出する両端部は、ナット6が螺着されるねじ部51,51に形成されている。
【0018】
即ち、一方の木製構造部材2Aの対向面2aと他方の木製構造部材2Bの対向面2aとの間に、これら対向面2a,2aとT形鋼30の縦板31の板面31a,31bとを面接触させるとともに、貫通孔4A,4C,4Bの中心軸を一致させて連結軸挿入用貫通孔4を形成するように、一方の木製構造部材2Aと他方の木製構造部材2BとT形鋼30とを位置決めした後、連結軸5を連結軸挿入用貫通孔4に挿入し、連結軸挿入用貫通孔4の両端側に位置される大径部41,41にそれぞれナット6を挿入して当該ナット6を連結軸5の端部のねじ部51に螺着して締結することにより、一方の木製構造部材2Aと金属板3と他方の木製構造部材2Bとが接合される。
【0019】
つまり、実施形態1による構造材1では、一方の木製構造部材2Aと金属板3と他方の木製構造部材2Bとに亘って連続するように設けられた複数の連結軸挿入用貫通孔4,4…と、複数の連結軸挿入用貫通孔4,4…にそれぞれ挿入された複数の連結軸5,5…と、連結軸挿入用貫通孔4の両端より突出する連結軸5の両方の端部に形成されたねじ部51,51にそれぞれ締結されて当該連結軸5を連結軸挿入用貫通孔4に固定するナット6とにより、一方の木製構造部材2Aと金属板3と他方の木製構造部材2Bとを接合する接合手段が構成される。当該接合手段によって、一方の木製構造部材2Aと金属板3と他方の木製構造部材2Bとを強固に一体化できるようになり、剛性の高い構造材1を提供できるようになる。
【0020】
さらに、T形鋼30の横板32には、固定部材としてのビス7を貫通させるビス貫通孔71が形成され、ビス7をビス貫通孔71に挿入して、T形鋼30の横板32を一方の木製構造部材2A、及び、他方の木製構造部材2Bに固定するようにビス7を締結することにより、一方の木製構造部材2AとT形鋼30と他方の木製構造部材2Bとをより強固に一体化できるようになり、構造材1の剛性をより向上させることができる。
【0021】
以上により、一方の木製構造部材2AとT形鋼30,30と他方の木製構造部材2Bとが、連結軸挿入用貫通孔4に挿入されてナット6で固定される連結軸5によって連結されて構成された構造材1、即ち、複数の木製構造部材2A,2Bと金属板3とを組み合わせて構成された剛性の大きい長尺かつ大断面の安価な構造材1が得られる。
即ち、複数の木製構造部材2A,2Bと金属板3とを組み合わせた剛性の大きい安価な構造材1を提供できる。
【0022】
実施形態1に係る構造材1では、複数の木製構造部材の内側に鋼材を組み込むための凹部を形成する必要はなく、連結軸挿入用貫通孔4を形成するだけであるので、上述した集成材と鋼材とを組み合わせた従来の構造材と比べて、製造(加工)コストを安くできる。
また、実施形態1に係る構造材1では、同じ断面寸法のT形鋼30,30を用いて、様々な断面寸法の構造材1を形成することが可能となり、構造材1の断面寸法に応じて様々な寸法の鋼材が必要となることがないので、上述した集成材と鋼材とを組み合わせた従来の構造材と比べて、部品コストを安くできる。
即ち、実施形態1によれば、木製構造部材と金属とを組み合わせた剛性の大きい耐火性を有した構造材1、例えば、長尺かつ大断面の梁や柱等の構造材1を、従来と比べて格段に安価に提供できるようになる。
【0023】
また、実施形態1に係る構造材1では、T形鋼30が、構造材1の互いに対向する一方の外面側と他方の外面側とにそれぞれ設置され、一方のT形鋼30の横板32が構造材1の一方の外面と面接触するとともに、他方のT形鋼30の横板32が構造材1の他方の外面と面接触した状態で、各T形鋼30,30が木製構造部材2A,2Bに固定された構成としたので、構造材1の木製構造部材2A,2Bが一方のT形鋼30と他方のT形鋼30とによって外側から拘束された構成となり、より剛性の高い構造材1を提供できる。
【0024】
尚、実施形態1に係る構造材1は、図2に示すように、連結軸挿入用貫通孔4の両端側に大径部41,41を設けずに、連結軸5の両端のねじ部51,51を一方の木製構造部材2Aの外面2f及び他方の木製構造部材2Bの外面2fより外側に突出させて、ねじ部51に螺着したナット6を外面2fに締結することで、複数の木製構造部材2A,2Bと金属板3とを接合した構成としてもよい。
【0025】
また、実施形態1に係る構造材1は、図4に示すように、構造材1の互いに対向する一方の外面側と他方の外面側とにそれぞれ設けられたT形鋼30,30が、一方の木製構造部材2A及び他方の木製構造部材2Bの材軸方向に沿って間欠的に設けられた構成としても良いし、あるいは、図5に示すように、構造材1の互いに対向する一方の外面側と他方の外面側とにそれぞれ設けられたT形鋼30,30が、一方の木製構造部材2A及び他方の木製構造部材2Bの材軸方向に沿って連続して設けられた構成としても良い。
【0026】
また、実施形態1に係る構造材1では、図2に示すように、T形鋼30として、縦板31の高さ寸法(即ち、横板32における縦板31側の板面32aから縦板31の下端31eまでの縦板31の突出長さ)31Hが、木製構造部材2A,2Bの対向面2aにおける材軸方向と直交する方向の長さ寸法2Hの長さの1/2よりも短いものを用いたことにより、一方のT形鋼30の縦板31の下端31eと他方のT形鋼30の縦板31の下端31eとの間に間隔Sが設けられた構成となり、断面寸法の一定なT形鋼30を用いて、間隔Sを変えることで、様々な断面寸法の構造材1を形成できるようになる。
従って、T形鋼30の材料費を抑制できて、様々な断面寸法の構造材1を安価に提供できるようになる。
【0027】
実施形態2
実施形態1に係る構造材1では、一方の木製構造部材2A及び他方の木製構造部材2Bの上下側にそれぞれT形鋼30,30を設けた構成としたが、図6図7に示すように、一方の木製構造部材2A及び他方の木製構造部材2Bの上下側のいずれか一方にT形鋼30を設け、他方側には、一方の木製構造部材2Aの対向面2aと他方の木製構造部材2Bの対向面2aとに挟み込まれた状態に固定される板材8を備えた構成の構造材1とした。
【0028】
即ち、実施形態2に係る構造材1は、T形鋼30が、構造材1の互いに対向する一対の外面側のうちの一方の外面(例えば図6の上面2t、あるいは、図7の下面2u)側にのみ設置され、T形鋼30は、横板32が構造材1の一方の外面と面接触して縦板31が一方の木製構造部材2Aの対向面2aと他方の木製構造部材2Bの対向面2aとの間に挟まれた状態に設置され、構造材1の他方の外面(例えば図6の下面2u、あるいは、図7の上面2t)側における一方の木製構造部材2Aの対向面2aと他方の木製構造部材2Bの対向面2aとの間には板材8が挟まれた状態に設置され、T形鋼30の縦板31の下端31eと板材8との間に間隔Sが設けられた構成とした。
尚、板材8の材質は特に限定されず、例えば、木板、金属板、樹脂板等により形成された、縦板31の板厚と同じ板厚の平板を用いればよい。
また、一方の木製構造部材2Aと板材8と他方の木製構造部材2Bとの接合は、上述と同様に、一方の木製構造部材2Aと板材8と他方の木製構造部材2Bとに連続するように形成された貫通孔4A,4D,4Bとで構成された連結軸挿入用貫通孔4Xに連結軸5を挿入してナット6で固定すればよい。
実施形態2の構造材1によれば、実施形態1の構造材1と同様に、断面寸法の一定なT形鋼30を用いて、間隔Sを変えることで、様々な断面寸法の構造材1を形成できるようになるとともに、T形鋼30の使用量を少なくできるので、様々な断面寸法の構造材1をより安価に提供できるようになる。
【0029】
実施形態3
図8に示すように、一方の木製構造部材2Aの外面にさらに木製構造部材2Xを1つ以上連結するとともに、他方の木製構造部材2Bの外面にさらに木製構造部材2Yを1つ以上連結することにより、さらに、断面を大きくした構成の構造材1とした。
この場合、木製構造部材2X,2AとT形鋼30の縦板31(金属板3)と木製構造部材2B,2Yに連続するように形成された貫通孔4A,4E,4C,4E,4Bとで構成された連結軸挿入用貫通孔4Yに連結軸5を挿入してナット6で固定すればよい。
実施形態3の構造材1によれば、木製構造部材を追加して長さの長い連結軸5を使用することによって、より大断面の構造材1を提供できるようになる。
【0030】
実施形態4
図9に示すように、一方の木製構造部材2Aの上面(外面)2t及び他方の木製構造部材2Bの上面(外面)2tに露出したT形鋼30の横板32を覆うとともに、一方の木製構造部材2Aの下面(外面)2u及び他方の木製構造部材2Bの下面(外面)2uに露出したT形鋼30の横板32を覆い、さらに、一方の木製構造部材2Aの外面2f及び他方の木製構造部材2Bの外面2fに開口する大径部41の開口を塞ぐようにした構成の構造材1とした。
即ち、木製構造部材2Aの外面及び他方の木製構造部材2Bの外面に露出したT形鋼30の横板32の左右の端面の横に設置される端面覆い板9と、木製構造部材2Aの外面及び他方の木製構造部材2Bの外面に露出したT形鋼30の横板32の板面上に設置される板面覆い板10と、大径部41の開口を塞ぐ蓋板11とを備えた構成とした。
この場合、例えば、図9に示すように、端面覆い板9と板面覆い板10とが例えばビス7により木製構造部材2A及び他方の木製構造部材2Bに固定され、蓋板11が大径部41の開口に嵌め込まれた状態に接着固定された構成とすればよい。
当該構成では、端面覆い板9と板面覆い板10と蓋板11とを木材で構成することにより、外観を木の平面に形成することができる構造材1を提供できる。
【0031】
尚、各実施形態において、接合手段は、一方の木製構造部材2Aと金属板3と他方の木製構造部材2Bとに亘って連続するように設けられた図外の複数のドリフトピン嵌入用貫通孔と、複数のドリフトピン嵌入用貫通孔にそれぞれ嵌合されることによって、一方の木製構造部材2Aと金属板3と他方の木製構造部材2Bとを接合する図外の複数のドリフトピンとで構成してもよい。
【0032】
また、接合手段は、一方の木製構造部材2Aと金属板3と他方の木製構造部材2Aとを接合する接着剤で構成してもよい。
【0033】
また、実施形態2においては、接合手段は、一方の木製構造部材2Aと板材8と他方の木製構造部材2Bとに亘って連続するように設けられた図外の複数のドリフトピン嵌入用貫通孔と、複数のドリフトピン嵌入用貫通孔にそれぞれ嵌合されることによって、一方の木製構造部材と金属板と他方の木製構造部材とを接合する図外の複数のドリフトピンとで構成してもよい。
また、実施形態2においては、接合手段は、一方の木製構造部材2Aと板材8と他方の木製構造部材2Bとを接合する接着剤で構成してもよい。
【0034】
また、各実施形態においては、接着剤を併用して、連結軸挿入用貫通孔と連結軸とを接着したり、金属板と木製構造部材とを接着した構成としたり、あるいは、実施形態2において、接着剤を併用して、金属板と板材とを接着した構成としたり、あるいは、実施形態3において、接着剤を併用して、木製構造部材同士を接着した構成としたり、あるいは、実施形態4において、接着剤を併用して、端面覆い板と板面覆い板と木製構造部材とを接着した構成とすれば、各部材がより強固に接合された剛性の高い構造材1を提供できる。また、間隔Sに接着剤を充填するようにしてもよい。
【0035】
また、各実施形態では、CLT又は集成材により形成された木製構造部材を用いた例を示したが、無垢材により形成された木製構造部材を用いてもよい。
【0036】
また、各実施形態では、T形鋼30として、縦板31の高さ寸法31Hが、木製構造部材2A,2Bの対向面2aにおける材軸方向と直交する方向の長さ寸法2Hの長さの1/2よりも短いT形鋼30を用いた例を示したが、縦板31の高さ寸法31Hが、木製構造部材2A,2Bの対向面2aにおける材軸方向と直交する方向の長さ寸法2Hの長さの1/2よりも長いT形鋼30を用いてもよい。例えば、縦板31の高さ寸法31Hが、木製構造部材2A,2Bの対向面2aにおける材軸方向と直交する方向の長さ寸法2Hよりも若干短いT形鋼30を用いても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 構造材、2A 一方の木製構造部材、2B 一方の木製構造部材、3 金属板、
4 連結軸挿入用貫通孔、2a 対向面、2t 上面(直交面)、
2u 下面(直交面)、5 連結軸、6 ナット、7 ビス(固定部材)、
30 T形鋼、31 縦板(金属板)、31a,31b 縦板の板面、
32a 横板における縦板側の板面、31e 縦板の下端、51 ねじ部、S 間隔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9