(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】建築パネル、建築パネルユニット、建築パネルの取付構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20230508BHJP
E04B 2/96 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
E04B1/94 K
E04B2/96
(21)【出願番号】P 2019047763
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶木 康友
(72)【発明者】
【氏名】柴田 晃一
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-150052(JP,A)
【文献】特開2012-052333(JP,A)
【文献】特開2003-056098(JP,A)
【文献】特開平05-009993(JP,A)
【文献】特開2011-047113(JP,A)
【文献】特開2017-166283(JP,A)
【文献】実開昭53-161509(JP,U)
【文献】特開2002-054250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04B 2/96
E04B 2/74,2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性と耐火性とを有するパネル部と、火災の熱で膨張する膨張部とを備
え、前記パネル部の端部が保持部に保持される建築パネルであって、
前記保持部は、前記端部の前面と対向する前部と、前記端部の後面と対向する後部と、前記パネル部の端面と対向する固定部とを備え、
前記膨張部は、
前記パネル部の端面と前記固定部との間に配置され、火災の熱で膨張する前において、前記固定部との間に隙間が形成されるように、前記パネル部の端面に沿って設けられている、
建築パネル。
【請求項2】
請求項1において前記膨張部は、200℃以上の温度で加熱されると2倍以上15倍以下の体積に膨張する建築パネル。
【請求項3】
断熱性と耐火性とを有するパネル部と、火災の熱で膨張する膨張部と、前記パネル部の端部を保持する保持部と
、を備える建築パネルユニットであって、
前記保持部は、前記端部の前面と対向する前部と、前記端部の後面と対向する後部と、前記パネル部の端面と対向する固定部と、を備え、
前記膨張部は、
前記パネル部の端面に沿って設けられることにより、前記パネル部の端面と前記固定部との間に配置され
、
火災の熱で膨張する前において、前記膨張部と前記固定部との間に隙間が形成されている、
建築パネルユニット。
【請求項4】
断熱性と耐火性とを有するパネル部と、火災の熱で膨張する膨張部と、前記パネル部の端部を保持する保持部と
、を備える建築パネルの取付構造であって、
前記保持部は、前記端部の前面と対向する前部と、前記端部の後面と対向する後部と、前記パネル部の端面と対向する固定部と、を備え、
前記膨張部は、
前記パネル部の端面に沿って設けられることにより、前記パネル部の端面と前記固定部との間に配置され、
火災の熱で膨張する前において、前記膨張部と前記固定部との間に隙間が形成され、
前記保持部は、建物の下地部に固定されている、
建築パネルの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築パネル、建築パネルユニット、建築パネルの取付構造に関し、より詳細には、耐火パネル部と膨張部とを備える建築パネル、建築パネルユニット、建築パネルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、耐火パネルを用いたカーテンウォールが記載されている。耐火パネルはサンドイッチパネルであって、二枚の金属外皮の間に芯材を設けて形成されている。そして、各金属外皮は火災では燃焼せず、芯材も耐火性のものを使用しているため、耐火性の高いカーテンウォールが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のようなカーテンウォールにおいては、更に、耐火性の向上が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、耐火性の高い外壁等を形成可能な建築パネル、建築パネルユニット、建築パネルの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る建築パネルは、断熱性と耐火性を有するパネル部と、火災の熱で膨張する膨張部とを備え、前記パネル部の端部が保持部に保持される。前記保持部は、前記端部の前面と対向する前部と、前記端部の後面と対向する後部と、前記パネル部の端面と対向する固定部とを備える。前記膨張部は、前記パネル部の端面と前記固定部との間に配置され、火災の熱で膨張する前において、前記固定部との間に隙間が形成されるように、前記パネル部の端面に沿って設けられている。
【0007】
本発明の一態様に係る建築パネルユニットは、断熱性と耐火性とを有するパネル部と、火災の熱で膨張する膨張部と、前記パネル部の端部を保持する保持部と、を備える。前記保持部は、前記端部の前面と対向する前部と、前記端部の後面と対向する後部と、前記パネル部の端面と対向する固定部と、を備える。前記膨張部は、前記パネル部の端面に沿って設けられることにより、前記パネル部の端面と前記固定部との間に配置される。火災の熱で膨張する前において、前記膨張部と前記固定部との間に隙間が形成されている。
【0008】
本発明の一態様に係る建築パネルの取付構造は、断熱性と耐火性とを有するパネル部と、火災の熱で膨張する膨張部と、前記パネル部の端部を保持する保持部と、を備える。前記保持部は、前記端部の前面と対向する前部と、前記端部の後面と対向する後部と、前記パネル部の端面と対向する固定部と、を備える。前記膨張部は、前記パネル部の端面に沿って設けられることにより、前記パネル部の端面と前記固定部との間に配置される。火災の熱で膨張する前において、前記膨張部と前記固定部との間に隙間が形成される。前記保持部は、建物の下地部に固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐火性の高い外壁等を形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る建築パネルユニットを示し、一部が破断した側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る建築パネルユニットを示し、一部が破断した平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態で使用するパネル部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態で使用するパネル部を示す
図3における平面(X-X)断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態で使用するパネル部を示す
図3における側面(Y-Y)断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態で係る建築パネルを示す斜視図である。
【
図7】
図7Aは、実施形態で使用する保持部を示す斜視図である。
図7Bは、保持部の変形例を示す斜視図である。
図7Cは、保持部の他の変形例を示す斜視図である。
【
図8】
図8Aは、カーテンウォールが設置された建物の一例を示す正面図である。
図8Bは、カーテンウォールが設置された建物の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る建築パネルの取付構造を示す側面断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る建築パネルの取付構造を示す平面断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る建築パネルユニットの変形例を示す斜視図である。
【
図14】
図14Aは、実施形態に係る建築パネルユニットの変形例に使用する下段パネル部を示す断面図である。
図14Bは、実施形態に係る建築パネルユニットの変形例に使用する中段パネル部を示す断面図である。
図14Cは、実施形態に係る建築パネルユニットの変形例に使用する上段パネル部を示す断面図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る建築パネルユニットの変形例の取付構造を示す平面断面図である。
【
図16】
図16Aは、パネル部の変形例を示す断面図である。
図16Bは、パネル部の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
図1及び
図2は、本実施形態に係る建築パネルユニット100を示している。建築パネルユニット100は建築パネル1と保持部30とを備えている。建築パネル1はパネル部10と膨張部20とを備えている。
【0012】
(パネル部)
パネル部10は断熱性と耐火性とを有する。
図3、
図4及び
図5のように、パネル部10は、正面視において矩形状をなし、全体として板状をなしている。パネル部10は、第一金属外皮17と、第二金属外皮18と、第一金属外皮17と第二金属外皮18の間に位置する芯材19とを有するサンドイッチパネル60である。第二金属外皮18は、第一金属外皮17の屋内側に位置する。
【0013】
第一金属外皮17及び第二金属外皮18は、金属板をロール成形などで加工することによって形成される。金属板としては、亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板、塗装鋼板などが用いられる。第一金属外皮17及び第二金属外皮18の板厚は、例えば、0.3~1.5mmである。
【0014】
芯材19は、断熱材190と耐火材191の組み合わせで構成される。断熱材190は、ロックウール、グラスウールなどの繊維状無機材をバインダーなどで固めて形成したブロック体を、複数並べて、全体形状が板状となるように配置したものである。耐火材191は、断熱材190に比べて耐火性の高い部材であり、例えば、石膏ボード、珪酸カルシウムボードなどである。
【0015】
耐火材191は、芯材19の屋内側の部分を構成する第一耐火材192と、芯材19の上端部を構成する第二耐火材193と、芯材19の下端部を構成する第三耐火材194とを含む。断熱材190は、芯材19の屋外側の部分を構成する。第一耐火材192の厚み(屋内外方向の長さ)は、芯材19の厚み(屋内外方向の長さ)のおよそ三分の一であり、断熱材190の厚み(屋内外方向の長さ)は、芯材19の厚み(屋内外方向の長さ)のおよそ三分の二である。芯材19は、左右方向に亘って材質が一定である。すなわち、芯材19は、左右方向に亘って、断熱材190と、第一耐火材192と、第二耐火材193と、第三耐火材194とを有する。
【0016】
パネル部10において、第一金属外皮17は、屋内側に向けて開口した矩形の箱型である。詳しくは、芯材19の屋外側の面に取り付けられる第一本体部170と、第一本体部170の上縁から屋内側に延びる第一上片部171と、第一本体部170の下縁から屋内側に延びる第一下片部172とを有する。第一金属外皮17は、更に、第一本体部170の左右の縁のそれぞれから屋内側に延びる第一側片部174を有する。第一本体部170に対して、第一上片部171、第一下片部172、及び一対の第一側片部174のそれぞれは、略直角である。第一本体部170は、芯材19の屋外側の面に接着されている。
【0017】
パネル部10において、第二金属外皮18は、屋外側に向けて開口した矩形の箱型である。詳しくは、第二金属外皮18は、芯材19の屋内側の面に取り付けられる第二本体部180と、第二本体部180の上縁から屋外側に延びる第二上片部181と、第二本体部180の下縁から屋外側に延びる第二下片部182を有する。第二金属外皮18は更に、第二本体部180の左右の縁のそれぞれから屋外側に延びる第二側片部183を有する。第二本体部180に対して、第二上片部181、第二下片部182、及び一対の第二側片部183のそれぞれは、略直角である。第二本体部180は、芯材19の屋内側の面に接着されている。
【0018】
第一上片部171と第二上片部181は、互いに離れて位置している。また、第一下片部172と第二下片部182は、互いに離れて位置している。また、第一側片部174と第二側片部183は、互いに離れて位置している。
【0019】
第一金属外皮17と第二金属外皮18とは複数の連結板15により連結されている。連結板15は金属板を加工して形成されている。金属板としては、亜鉛めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板、塗装鋼板などが用いられる。連結板15の板厚は、例えば、0.8mmである。連結板15は、本実施形態では、円形であるが、その他の形状であってもよい。一部の連結板15は、第一金属外皮17の第一側片部174と、第二金属外皮18の第二側片部183のそれぞれに、ねじなどの固定具16で固定されている。他の一部の連結板15は、第一金属外皮17の第一上片部171と、第二金属外皮18の第二上片部181のそれぞれに、ねじなどの固定具16で固定されている。さらに他の一部の連結板15は、第一金属外皮17の第一下片部172と、第二金属外皮18の第二下片部182のそれぞれに、ねじなどの固定具16で固定されている。
【0020】
(膨張部)
膨張部20は火災の熱で膨張する。すなわち、膨張部20は火災時に加熱されると、厚み方向に膨張して体積を増加させる。例えば、膨張部20は、200℃以上の温度で加熱されると、加熱前の体積よりも2倍以上15倍以下の体積に膨張する。また加熱により膨張した膨張部20は、膨張後の形態を維持し、更に、内部に多数の空隙を有して断熱性に優れる。
【0021】
膨張部20は、例えば、熱膨張性黒鉛などの熱膨張剤を含有するロックウールフェルト、あるいは積水化学工業株式会社製の「フィブロック」(登録商標)、等が使用される。
【0022】
(建築パネル)
建築パネル1は、
図6のように、パネル部10の端面12に沿って膨張部20を設けることにより形成される。パネル部10の端面12は、上端面121と下端面122と一対の側端面123とを含むが、膨張部20は、上端面121と下端面122と一対の側端面123の全てに沿って設けることができる。すなわち、膨張部20はパネル部10の全周に沿って設けることができる。また上端面121と下端面122と一対の側端面123のいずれか一つ以上に沿って膨張部20を設けてもよい。膨張部20は帯状又はテープ状に形成されており、粘着テープなどで端面12に貼り付けることができる。膨張部20は上面膨張部21と下面膨張部22と側面膨張部23とを含む。
【0023】
上面膨張部21は上端面121に沿って位置する。上面膨張部21は第一上片部171と第二上片部181との外面(芯材19と反対側の面)に沿って設けられており、また第一上片部171と第二上片部181とを連結する連結板15の外面に沿って設けられている。すなわち、上面膨張部21は上端面121をほぼ全面にわたって覆っている。
【0024】
下面膨張部22は下端面122に沿って位置する。下面膨張部22は第一下片部172と第二下片部182との外面(芯材19と反対側の面)に沿って設けられており、また第一下片部172と第二下片部182とを連結する連結板15の外面に沿って設けられている。すなわち、下面膨張部22は下端面122をほぼ全面にわたって覆っている。
【0025】
側面膨張部23は各側端面123に沿って位置する。側面膨張部23は第一側片部174と第二側片部183との外面(芯材19と反対側の面)に沿って設けられており、また第一側片部174と第二側片部183とを連結する連結板15の外面に沿って設けられている。すなわち、側面膨張部23は側端面123をほぼ全面にわたって覆っている。
【0026】
(建築パネルの取付構造)
建築パネル1は建物の下地部40に取り付けられる。この場合、建築パネル1は保持部30により下地部40に取り付けられる。すなわち、建築パネル1の端部11が保持部30により保持されて下地部40に取り付けられる。
【0027】
保持部30はアルミニウムなどの金属製の部材であって、断面コ字状で長尺に形成される。保持部30は、
図7Aに示すように、前部33と後部34と固定部32とを備える。固定部32は矩形板状に形成される。固定部32の長手方向に沿った一端には前部33が全長にわたって設けられている。前部33は板状に形成され、固定部32に対してほぼ垂直な方向に突出している。固定部32の長手方向に沿った他の一端には後部34が全長にわたって設けられている。後部34は板状に形成され、固定部32に対してほぼ垂直な方向に突出している。前部33と後部34とは、固定部32の短手方向の寸法(幅寸法)の間隔を介して対向している。後部34の固定部32からの突出長さは、前部33の固定部32からの突出長さよりも長い。固定部32には建物の下地部40に取り付けるための取付具101が設けられている。取付具101は固定部32を厚み方向に貫通するビスなどで構成される。
【0028】
保持部30は、保持部本体301と押さえ板302とを備えている。保持部本体301は前部33と固定部32と結合部35とを有し、押さえ板302は後部34を有している。結合部35は、固定部32の長手方向に沿った端部であって、前部33とは反対側の端部の全長にわたって設けられている。そして、結合部35と押さえ板302の長手方向に沿った一端とがビスなどの結合具303により結合されて保持部30が形成される。
【0029】
図8A及び
図8Bには、建築パネル1を使用した外壁としてカーテンウォール500を示している。カーテンウォール500は窓部501とスパンドレル部502とを備えている。窓部501は建物の床部503と天井部506の間の居住スペース504の屋外面を構成している。窓部501は、例えば、ガラスパネルで構成される。スパンドレル部502は上下に隣り合う窓部501の間の部分である。スパンドレル部502の屋内側には、床部503を支持する梁505が設けられている。
【0030】
スパンドレル部502は化粧パネル507と建築パネル1とを備えている。化粧パネル507はスパンドレル部502の屋外面を構成する。化粧パネル507は、例えば、金属製パネル、樹脂製パネル、コンクリートパネル又はガラスパネルである。建築パネル1は化粧パネル507の屋内側に位置し、床部503及び梁505の屋外側に位置している。したがって、耐火性の高いパネル部10を有する建築パネル1が、床部503の上方(上階)の居住スペース504と、床部503の下方(下階)の居住スペース504との間に位置することになり、火災時に下階から上階への延焼を低減することができる。
【0031】
カーテンウォール500は、更に枠422を備える。枠422は、アルミニウムなどの金属製である。枠422は、左右一対の縦枠部材(方立)423と、上下一対の横枠部材(無目)424を備える。左右一対の縦枠部材423と上下一対の横枠部材424とは、略矩形枠状をなすように一体に設けられている。
【0032】
カーテンウォール500の左右一対の縦枠部材423のそれぞれの上端部には、ボルトなどの固定具で取付金具428が固定される。建物の躯体である梁には、ボルトなどの固定具で側面視L字状の取付金具429が固定される。カーテンウォール500に固定された取付金具428は、床部503に固定された取付金具429に対して引っ掛けられた状態で、取付金具429に対してボルトなどの固定具430で固定される。これにより、カーテンウォール500は、床部503に対して取り付けられる。取付金具428,429のそれぞれは、例えば、鋼製である。化粧パネル507の周縁部は、ガスケット427を介して枠422の屋外側の部分に保持される。
【0033】
各縦枠部材423と各横枠部材424には、それぞれ、保持部30が取り付けられている。保持部30はパネル部10の端部11を保持し、建築パネル1を建物の下地部40に取り付けるための部材である。したがって、枠422(各縦枠部材423と各横枠部材424)は下地部40に含まれる。また保持部30と建築パネル1とを一体化することにより建築パネルユニット100が形成される。
【0034】
保持部30は、各縦枠部材423のそれぞれに沿って設けられる左右一対の縦保持部50と、各横枠部材424のそれぞれに沿って設けられる上下一対の横保持部51とを備える。パネル部10の端部11は、パネル部10の上端部111と下端部112と一対の側端部113とを含む。左右一対の縦保持部50は一対の側端部113をそれぞれ保持する。上下一対の横保持部51は上端部111と下端部112とをそれぞれ保持する。すなわち、保持部30はパネル部10の端部11を全周にわたって保持している。
【0035】
保持部30に保持されたパネル部10の端部11は前部33と後部34との間に位置している。前部33は端部11の前面13と対向している。前部33と前面13との間には、耐火性を有するパッキン36が設けられている。後部34は端部11の後面14と対向している。後部34と後面14との間には、耐火性を有するパッキン36が設けられている。したがって、端部11はパッキン36を介して前部33と後部34とで挟まれている。この場合、結合具303を締め付けることにより、前部33と後部34とで端部11を前後方向に挟むことができる。ここで、前面13とは、端部11における第一本体部170の表面であり、後面14とは、端部11における第二本体部180の表面である。
【0036】
(建築パネルユニット)
図9,
図10、
図11及び
図12のように、建築パネルユニット100は、パネル部10の端部11が保持部30に保持されて形成されている。建築パネルユニット100は、パネル部10の端部11と保持部30との間に膨張部20が配置されている。すなわち、膨張部20はパネル部10の端面12に設けられており、保持部30がパネル部10の全周にわたって設けられているため、膨張部20はパネル部10の端面12と保持部30との間に位置する。具体的には、膨張部20は、端面12と保持部30の固定部32との間に配置されている。すなわち、端面12と固定部32とは間隙102をあけて対向しており、この間隙102に膨張部20が設けられている。
【0037】
このような建築パネルユニット100は、火災時に加熱されると、その熱で膨張部20が膨張する。例えば、火災時に発生した火炎がパネル部10や保持部30に当たると、火炎による熱が膨張部20にまで伝わり、その熱で膨張部20が膨張する。膨張部20の上面膨張部21はパネル部10の上端面121から上方に向かって膨張する。膨張部20の下面膨張部22はパネル部10の下端面122から下方に向かって膨張する。膨張部20の側面膨張部23はパネル部10の側端面123から外側方に向かって膨張する。
【0038】
このように膨張部20が膨張すると、間隙102が閉塞される。すなわち、間隙102が膨張後の膨張部20で充満されて閉塞される。そして、間隙102が閉塞されると、火炎、煙及び熱が間隙102を通過しにくくなる。したがって、カーテンウォール500の耐火性が向上する。すなわち、膨張部20がない場合は、火災が発生すると、火炎、煙及び熱が間隙102を通過しながらカーテンウォール500の内部を上昇し、延焼しやすい。一方、本実施形態のように、間隙102が膨張後の膨張部20で閉塞されると、火炎、煙及び熱が間隙102を通過しにくくなり、延焼が抑えられる。『特に、建物の屋外で発生した火災』では、火炎、煙及び熱が間隙102を通過しにくくなって屋内に侵入しにくくなる。もちろん、建物の屋内で発生した火災では、火炎、煙及び熱が間隙102を通過しにくくなって屋外に延焼しにくくなる。つまり、火災が発生すると、火災発生側の面(加熱側)のパネル部10の表面及び保持部30の温度が上昇し、変形が生じる。この変形により、パネル部10の表面と保持部30に隙間が生じ、この隙間を通じて火炎、煙、熱が非加熱側に侵入しやすくなる。そして、火災発生からの時間の経過と共に、非加熱側にも熱が伝わり、非加熱側のパネル部10の表面と保持部30に隙間が発生し、非加熱側にも火炎及び熱が伝わる。そこで、本実施形態に係る建築パネルユニット100では、火災時に間隙102が、火災の熱で膨張した膨張部20で閉塞されることになり、非加熱側へ熱が伝わりにくくなる。これは建築パネルユニット100の四周すべてに共通する。
【0039】
(保持部の変形例)
図7Bは保持部30の変形例である保持部30Xを示す。保持部30Xは保持部30と同様に、アルミニウムなどの金属製の部材であって、断面コ字状で長尺に形成される。保持部30Xは、上記保持部30と同様に、前部33、後部34、固定部32及び結合部35を有し、保持部本体301と押さえ板302とを備えて形成されている。しかし、保持部30Xは、保持部本体301が後部34と固定部32と結合部35とを有し、押さえ板302が前部33を有している点において、保持部30Xと上記保持部30とは異なる。結合部35は、固定部32の長手方向に沿った端部であって、後部34とは反対側の端部の全長にわたって設けられている。そして、結合部35と押さえ板302の長手方向に沿った一端とがビスなどの結合具303により結合されて保持部30Xが形成される。
【0040】
図7Cは保持部30の変形例である保持部30Yを示す。保持部30Yは保持部30と同様に、アルミニウムなどの金属製の部材であって、断面コ字状で長尺に形成される。保持部30Yは、上記保持部30と同様に、前部33、後部34、固定部32及び結合部35を有している。しかし、保持部本体301と2つの押さえ板302とを備えて形成されている点において、保持部30Yと上記保持部30とは異なる。保持部30Yは、保持部本体301が固定部32と2つの結合部35とを有し、一つの押さえ板302が前部33を有し、もう一つの押さえ板302が後部34を有している。各結合部35は、固定部32の長手方向に沿った二つの端部のそれぞれの全長にわたって設けられている。そして、各結合部35のそれぞれに押さえ板302を一つずつ配置し、各結合部35と各押さえ板302の長手方向に沿った一端とがビスなどの結合具303により結合されて保持部30Yが形成される。
【0041】
(パネル部の変形例)
上記の建築パネル1では、一つのサンドイッチパネル60でパネル部10が構成されていたが、これに限られず、複数のサンドイッチパネル60でパネル部10が構成されていてもよい。例えば、
図14では、3つのサンドイッチパネル60を組み合わせてパネル部10が構成されている。3つのサンドイッチパネル60は、パネル部10の下部を構成する下段パネル610と、パネル部10の中部を構成する中段パネル620と、パネル部10の上部を構成する上段パネル630とを備えている。
【0042】
図15Aには、下段パネル610を示す。
図15Bには、中段パネル620を示す。
図15Cには、上段パネル630を示す。下段パネル610、中段パネル620及び上段パネル630は、それぞれ、上記と同様に、第一金属外皮17と、第二金属外皮18と、第一金属外皮17と第二金属外皮18の間に位置する芯材19とを有するサンドイッチパネル60である。下段パネル610はその上端に上方に突出する上接続部611を有している。中段パネル620はその上端に上方に突出する上接続部621を有している。また中段パネル620はその下端に下方に突出する下接続部622を有している。上段パネル630はその下端に下方に突出する下接続部632を有している。
【0043】
そして、下段パネル610の上に中段パネル620を接続し、この中段パネル620の上に更に上段パネル630を接続する。このとき、下段パネル610の上接続部611の後に中段パネル620の下接続部622が位置する。また中段パネル620の上接続部621の後に上段パネル630の下接続部632が位置する。
【0044】
更に下段パネル610と中段パネル620とは連結プレート640で連結される。また中段パネル620と上段パネル630も別の連結プレート641で連結される。連結プレート640、641は金属板をプレス加工等することにより形成される。連結プレート640、641は板部642の上端と下端に後方に突出するフランジ部643を有している。また連結プレート640、641は複数の貫通孔644を有している。複数の貫通孔644は板部642を厚み方向に貫通している。更に、連結プレート640、641は左右一対の切欠部645を有している。各切欠部645は板部642の側端部にそれぞれ形成されている。一対の切欠部645は上下方向の位置は同じであり、板部642の上下方向の略中央部に位置している。
【0045】
そして、連結プレート640は下段パネル610と中段パネル620との各第二金属外皮18の表面に沿って配置され、貫通孔644を通してビス等の固定具を第二金属外皮18に挿入することにより、下段パネル610と中段パネル620とが連結プレート640で連結される。ここで、一対の切欠部645を下段パネル610と中段パネル620との境界部分に位置合わせして、連結プレート640を配置する。これにより、連結プレート640は下段パネル610と中段パネル620に略均等に連結されることになる。
【0046】
またもう一つの連結プレート641は中段パネル620と上段パネル630の各第二金属外皮18の表面に沿って配置され、貫通孔644を通してビス等の固定具を第二金属外皮18に挿入することにより、中段パネル620と上段パネル630とが連結プレート641で連結される。ここで、一対の切欠部645を中段パネル620と上段パネル630との境界部分に位置合わせして、連結プレート641を配置する。これにより、連結プレート641は中段パネル620と下段パネル610に略均等に連結されることになる。
【0047】
そして、このような下段パネル610と中段パネル620と上段パネル630とを有するパネル部10の端面12に、上記と同様の膨張部20を設けることにより、建築パネル1が形成される。またこの建築パネル1も上記と同様にして保持部30により建物の下地部40に取り付けられ、建築パネルユニット100が形成される(
図16参照)。
【0048】
なお、パネル部10が複数のサンドイッチパネル60を有する場合、サンドイッチパネル60は三つに限られない。例えば、
図16Aでは、上段パネル630と下段パネル610の二つのサンドイッチパネル60を備えたパネル部10を示している。また
図16Bでは、上段パネル630と下段パネル610と二つ中段パネル620の4つのサンドイッチパネル60を備えたパネル部10を示している。
【0049】
(建築パネルユニットの変形例)
上記の建築パネルユニット100では、膨張部20はパネル部10の端面12に設けられていたが、これに限られない。膨張部20はパネル部10の端部11と保持部30との少なくとも一方に設けられていればよい。例えば、膨張部20は保持部30に設けられていてもよく、この場合、保持部30の前部33と後部34と固定部32のいずれか一つ又は複数に膨張部20を設けることが可能である。ただし、膨張部20は間隙102内に配置される。
【0050】
また上記の建築パネルユニット100では、建築パネル1を保持部30で下地部40に取り付けることにより形成されているが、これに限られず、例えば、建築パネル1に保持部30を取り付けた後、保持部30を下地部40に固定するようにしてもよい。
【0051】
なお、
図13~
図16では、上下に隣接する複数のサンドイッチパネル60が相じゃくりにより接続されているが、これに限らず、上下に隣接する複数のサンドイッチパネル60が上端面と下端面とを突付けて接続されていてもよい。
【0052】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る建築パネル(1)は、耐火性を有するパネル部(10)と、火災の熱で膨張する膨張部(20)とを備える。膨張部(20)は、パネル部(10)の端部(11)を保持する保持部(30)と、保持部(30)に保持されている端部(11)との間に配置されるように構成されている。
【0053】
この態様によれば、膨張部(20)が火災の熱で膨張し、保持部(30)と端部(11)との間の隙間を閉塞することができ、保持部(30)と端部(11)との間の隙間を熱や火炎が通過するのを低減することができて耐火性の高い外壁等を形成可能である。
【0054】
第2の態様に係る建築パネル(1)は、第1の態様において、膨張部(20)は、パネル部(10)の端面(12)に沿って設けられている。
【0055】
この態様によれば、膨張部(20)が火災の熱で膨張し、保持部(30)と端面(12)との間の隙間を閉塞することができ、保持部(30)と端面(12)との間の隙間を熱や火炎が通過するのを低減することができて耐火性の高い外壁等を形成可能である。
【0056】
第3の態様に係る建築パネル(1)は、第1又は2の態様において、膨張部(20)は、200℃以上の温度で加熱されると2倍以上15倍以下の体積に膨張する。
【0057】
この態様によれば、膨張部(20)が火災の熱で膨張しやすくなり、耐火性の高い外壁等を形成しやすくなる。
【0058】
第4の態様に係る建築パネルユニット(100)は、耐火性を有するパネル部(10)と、火災の熱で膨張する膨張部(20)と、パネル部(10)の端部(11)を保持する保持部(30)とを備える。膨張部(20)は、端部(11)と保持部(30)との間に配置されている。
【0059】
この態様によれば、膨張部(20)が火災の熱で膨張し、保持部(30)と端部(11)との間の隙間を閉塞することができ、保持部(30)と端部(11)との間の隙間を熱や火炎が通過するのを低減することができて耐火性の高い外壁等を形成可能である。
【0060】
第5の態様に係る建築パネルユニット(100)は、第4の態様において、保持部(30)は、端部(11)の前面(13)と対向する前部(33)と、端部(11)の後面(14)と対向する後部(34)と、パネル部(10)の端面(12)と対向する固定部(32)とを備える。膨張部(20)は、端面(12)と固定部(32)との間に配置されている。
【0061】
この態様によれば、膨張部(20)が火災の熱で膨張し、端面(12)と固定部(32)との間の隙間を閉塞することができ、端面(12)と固定部(32)との間の隙間を熱や火炎が通過するのを低減することができて耐火性の高い外壁等を形成可能である。
【0062】
第6の態様に係る建築パネルユニット(100)は、第4又は5の態様において、膨張部(20)は、端部(11)と保持部(30)との少なくとも一方に設けられている。
【0063】
この態様によれば、膨張部(20)が火災の熱で膨張し、保持部(30)と端部(11)との間の隙間を閉塞することができ、保持部(30)と端部(11)との間の隙間を熱や火炎が通過するのを低減することができて耐火性の高い外壁等を形成可能である。
【0064】
第7の態様に係る建築パネル(1)の取付構造は、耐火性を有するパネル部(10)と、火災の熱で膨張する膨張部(20)と、パネル部(10)の端部(11)を保持する保持部(30)とを備える。膨張部(20)は、端部(11)と保持部(30)との間に配置される。保持部(30)は、建物の下地部(40)に固定されている。
【0065】
この態様によれば、膨張部(20)が火災の熱で膨張し、保持部(30)と端部(11)との間の隙間を閉塞することができ、保持部(30)と端部(11)との間の隙間を熱や火炎が通過するのを低減することができて耐火性の高い外壁等を形成可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 建築パネル
10 パネル部
11 端部
12 端面
13 前面
14 後面
20 膨張部
30 保持部
32 固定部
33 前部
34 後部
40 下地部
100 パネルユニット