(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】医用画像診断装置用の寝台装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
A61B6/03 377
A61B6/03 323C
(21)【出願番号】P 2019048802
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 和里
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-262503(JP,A)
【文献】特開昭54-027390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0039101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療計画に使用する医用画像の撮像のための形状を有する第1面と、前記第1面とは反対側の面であり、医用画像診断に使用する医用画像の撮像のための形状を有する第2面とを有する天板と、
前記天板を支持する支持台と、
前記支持台に対して前記天板を着脱するための着脱機構と、
を具備し、
前記第1面は、平坦形状を有し、
前記第2面は、湾曲形状を有し、
前記支持台は、前記天板を前記天板の長軸に沿って移動可能に支持するボールスクリューを有し、
前記ボールスクリューは、軸心回りに回転可能なネジ軸と、前記ネジ軸の回転に連動して前記ネジ軸に沿って移動するスライダとを有し、
前記着脱機構は、前記スライダに設けられる、
医用画像診断装置用の寝台装置。
【請求項2】
放射線治療計画に使用する医用画像の撮像のための形状を有する第1面と、前記第1面とは反対側の面であり、医用画像診断に使用する医用画像の撮像のための形状を有する第2面とを有する天板と、
前記天板を支持する支持台と、
前記支持台に対して前記天板を着脱するための着脱機構と、
を具備し、
前記支持台は、前記天板を前記天板の長軸に沿って移動可能に支持するボールスクリューを有し、
前記ボールスクリューは、軸心回りに回転可能なネジ軸と、前記ネジ軸の回転に連動して前記ネジ軸に沿って移動するスライダとを有し、
前記着脱機構は、前記スライダに設けられ、
前記第1面は、平坦形状を有し、
前記第2面は、前記天板の長軸方向に関する端部と前記第2面のうちの端部以外の他部とを有し、
前記端部は、前記スライダに接続するための平坦形状を有し、
前記他部は、湾曲形状を有する、
医用画像診断装置用の寝台装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置用の寝台装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療の際には、まず治療計画が作成される。治療計画は、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置等の医用画像診断装置により生成された医用画像データを利用して作成される。X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置の天板上面は湾曲形状を有しているが、放射線治療装置の天板上面は平坦形状を有している。治療計画時と放射線治療時とでは天板上面の形状が異なるため、天板に寝る患者の外部及び内部の形状が異なることとなり、結果的に、放射線治療時の患者体内における腫瘍の位置が治療計画時における患者体内の位置からずれる場合がある。このような位置ずれを低減するため、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置の天板にアタッチメントを付け、アタッチメントに平坦形状の天板を取り付ける技術がある。しかしながら、アタッチメントや天板の着脱が手間なうえ、コストも掛かり、また天板の保管場所も必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-262503号公報
【文献】特開2003-190304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、治療計画時と放射線治療時との間の天板形状の相違に伴う治療計画時と放射線治療時との間の患者体内における腫瘍の位置ずれを、簡易且つ低コストに低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用画像診断装置用の寝台装置は、放射線治療計画に使用する医用画像の撮像のための形状を有する第1面と、前記第1面とは反対側の面であり、医用画像診断に使用する医用画像の撮像のための形状を有する第2面とを有する天板と、前記天板を支持する支持台と、前記支持台に対して前記天板を着脱するための着脱機構と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の医用撮像機構及び寝台の外観を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る、第1面を鉛直上向きにしたときの天板の斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る、第2面を鉛直上向きにしたときの天板の斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る、天板が取り外された寝台を背面から見た図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る天板と支持機構との側面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る天板の使用面の切り替えを示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の変形例に係る支持機構(ボールスクリュー)を搭載する支持フレームを示す図である。
【
図11】
図11は、変形例に係る、第2面を鉛直上向きにしたときの天板の斜視図である。
【
図14】
図14は、変形例に係る、第1面を鉛直上向きにしたときの天板の斜視図である。
【
図15】
図15は、変形例に係る天板の使用面の切り替えを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像診断装置用の寝台装置を説明する。
【0008】
本実施形態に係る医用画像診断装置は、放射線治療に関する治療計画に利用される医用画像データを生成可能な如何なるモダリティ装置にも適用可能である。このような医用画像診断装置としては、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、PET装置(Positron Emission Tomography)及びSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置等が挙げられる。
【0009】
図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置1の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る医用画像診断装置1は、医用撮像機構10、寝台30及びコンソール50を有する。
【0010】
医用撮像機構10は、モダリティ装置の種類に応じた撮像原理で患者に対して医用撮像を施し、当該患者に関する生データを収集する。本実施形態に係る医用撮像機構10は、治療計画のための医用撮像と画像診断のための医用撮像との両方に兼用される。
【0011】
図1に示すように、寝台30は、医用撮像機構10に含まれる架台の近傍に配置される。
図1に示すように、寝台30は、天板31、支持機構33、駆動装置35及び制御装置37を有する。天板31は、患者が載置される板状構造体である。支持機構33は、天板31を上下前後方向に移動自在に支持する。駆動装置35は、支持機構33を駆動して天板31を上下前後方向に移動する。制御装置37は、少なくとも医用撮像機構10とコンソール50との何れか一方による指令に従い駆動装置35を制御する。
【0012】
図1に示すように、コンソール50は、少なくとも医用撮像機構10と寝台30との何れか一方を制御するコンピュータである。コンソール50は、処理回路51、メモリ54、ディスプレイ55、入力インタフェース57及び通信インタフェース59を有する。
【0013】
処理回路51は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを有する。当該プロセッサがメモリ53等にインストールされたプログラムを起動することにより撮像制御機能や画像再構成機能、画像表示機能等を実行する。例えば、撮像制御機能を実行することにより処理回路51は、医用撮像機構と寝台とを同期的に制御し、患者に対して医用撮像を施す。画像再構成機能を実行することにより処理回路51は、医用撮像機構10からの生データに再構成処理を施して患者に関する医用画像データを再構成する。画像表示機能を実行することにより処理回路51は、医用画像データをディスプレイ55に表示する。この際、処理回路51は、医用画像データにボリュームレンダリングやMPR(Multi-Planer Reconstruction)等の任意のレンダリング処理を施して表示画像データを生成し、生成された表示画像データをディスプレイ55に表示しても良い。なお、本実施形態においては、治療計画のために収集された医用画像を治療計画画像とも呼び、画像診断のために収集された医用画像を診断画像とも呼ぶ。
【0014】
メモリ53は、種々の情報を記憶するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ53は、例えば、処理回路51により利用されるプログラムや医用画像データ等を記憶する。メモリ53は、上記記憶装置以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体や、半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ53は、コンソール50にネットワークを介して接続された他のコンピュータ内にあってもよい。
【0015】
ディスプレイ55は、処理回路51の表示制御機能に従い種々の情報を表示する。例えば、ディスプレイ55は、医用画像や表示画像を表示する。また、ディスプレイ55は、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ55としては、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが適宜使用可能である。
【0016】
入力インタフェース57は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路51に出力する。具体的には、入力インタフェース57は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の入力機器に接続されている。入力インタフェース57は、当該入力機器への入力操作に応じた電気信号を処理回路51へ出力する。また、入力インタフェース57に接続される入力機器は、ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータに設けられた入力機器でも良い。
【0017】
通信インタフェース59は、治療計画装置や放射線治療装置、PACS、OIS等の他のコンピュータやシステムとの間でデータ通信するためのインタフェースである。
【0018】
図2は、医用撮像機構10及び寝台30の外観を示す図である。医用撮像機構10は、モダリティ装置の種類に応じた撮像原理で患者に対して医用撮像を施し、当該患者に関する生データを収集する。本実施形態に係る医用撮像機構10は、治療計画のための医用撮像と画像診断のための医用撮像との両方に兼用される。例えば、
図2に示すように、医用撮像機構10は、寝台30の近傍に配置された架台11を有する。架台11は、スキャン機構を装備する。
【0019】
例えば、医用画像診断装置1がX線コンピュータ断層撮影装置である場合、架台11は、X線管とX線検出器とを患者回りに回転させながらX線管から患者にX線を照射し、患者を透過したX線をX線検出器により検出する。X線検出器においては、検出されたX線の線量に応じた波高値を有する電気信号が発生される。当該電気信号は、データ収集回路によりA/D変換等の信号処理が施される。A/D変換後の電気信号は投影データ又はサイノグラムデータと呼ばれる。投影データ又はサイノグラムデータは、生データとしてコンソール50に伝送される。
【0020】
例えば、医用画像診断装置1が磁気共鳴イメージング装置である場合、架台11は、静磁場磁石を介した静磁場の印加の下、傾斜磁場コイルを介した傾斜磁場の印加と送信コイルを介したRFパルスの印加とを繰り返す。RFパルスの印加に起因して患者から放出されたMR信号が放出される。放出されたMR信号は、受信コイルを介して受信される。受信されたMR信号は、受信回路によりA/D変換等の信号処理が施される。A/D変換後のMR信号は、k空間データと呼ばれる。k空間データは、生データとしてコンソール50に伝送される。
【0021】
例えば、医用画像診断装置1がPET装置である場合、架台11は、患者内に蓄積された放射性核種から発生される陽電子と当該放射性核種の周囲に存在する電子との対消滅に伴い発生する512keVの一対のガンマ線を同時計測回路により同時計測することにより、一対のガンマ線(LOR(Line Of Response))のエネルギー値と検出位置とに関するデジタル値を有するデジタルデータを生成する。当該デジタルデータは、コインシデンスデータ又はサイノグラムデータと呼ばれる。コインシデンスデータ又はサイノグラムデータは、生データとしてコンソール50に伝送される。
【0022】
例えば、医用画像診断装置1がSPECT装置である場合、架台11は、患者内に蓄積された放射性核種から発生されるガンマ線をガンマ線検出器により検出する。ガンマ線検出器においては、検出されたガンマ線のエネルギー値と検出位置とに関するデジタル値を有するデジタルデータを生成する。当該デジタルデータは、投影データ又はサイノグラムデータと呼ばれる。投影データ又はサイノグラムデータは、生データとしてコンソール50に伝送される。
【0023】
図2に示すように、寝台30は、外観上、天板31と支持台41とを有する。支持台41は、床面に設置され、天板31を鉛直方向に昇降可能及び水平方向に移動可能に支持する。具体的には、支持台41は、基台43と支持フレーム45とを有する。基台43は、床面に設置され、支持フレーム45及び天板31を鉛直方向に昇降可能に支持する。支持フレーム45は、天板31を水平方向に移動可能に支持する。なお、基台43は、支持フレーム45を水平方向に移動可能に支持しても良い。ここで、鉛直方向をY方向、天板31の長軸方向をZ方向、Y方向及びZ方向に水平に直交する方向をX方向に規定する。
【0024】
本実施形態に係る天板31は、放射線治療計画に使用する医用画像の撮像のための形状を有する第1面と、第1面とは反対側の面であり、医用画像診断に使用する医用画像の撮像のための形状を有する第2面とを有する。第1面と第2面とは、共に患者が載置される面である。天板31が第1面と第2面とを有するので、1枚の天板31を放射線治療計画に使用する医用画像を収集するための医用撮像と医用画像診断に使用する医用画像を収集するための医用撮像との両方に兼用することができる。以下、第1面を治療計画用面と呼び、第2面を画像診断用面と呼ぶことにする。
【0025】
図3は、治療計画用面311を鉛直上向きにしたときの天板31の斜視図である。
図4は、
図3の天板31の断面図である。
図5は、画像診断用面312を鉛直上向きにしたときの天板31の斜視図である。
図6は、
図5の天板31の断面図である。
図3、
図4、
図5及び
図6示すように、天板31は、略長方形状を有する板状構造体である。
図3等において、天板31の長軸に沿う方向を長軸方向、天板31の短軸に沿う方向を短軸方向、天板31の厚みの方向を厚み方向と呼ぶことにする。長軸方向、短軸方向及び厚み方向は、互いに直交する。
【0026】
図3、
図4、
図5及び
図6示すように、本実施形態に係る治療計画用面311は、患者が載置される面であって、放射線治療計画に使用する医用画像の撮像のための形状を有する。具体的には、治療計画用面311は、短軸方向の端部から中央部にかけて厚みが薄くなるような湾曲形状を有する。このような湾曲形状を有することにより、患者を天板31で包み込むことができ、治療計画用面311における患者の載置位置の再現性を高めることができる。なお、治療計画用面311は、典型的には、長軸方向に関して厚みは変化しない。画像診断用面312は、治療計画用面311の裏側の面である。画像診断用面312は、患者が載置される面であって、医用画像診断に使用する医用画像の撮像のための形状を有する。具体的には、画像診断用面312は、短軸方向及び長軸方向に関して平坦形状を有する。このような平坦形状を有することにより、画像診断用面312において患者の位置決めを正確に行うことができる。
【0027】
治療計画用面311が上向きになるように寝台30に装着されることにより、治療計画に使用する医用画像のための撮像を行うことができる。また、画像診断用面312が上向きになるように寝台30に装着されることにより、医用画像診断に使用する医用画像のための撮像を行うことができる。このように、寝台30に対して上向きの面は、撮像に関する使用面として用いられる。
【0028】
図3、
図4、
図5及び
図6に示すように、天板31の両側面には凸形状を有する一対の係合部32が設けられている。係合部32は、天板31を寝台30の所定部位に係合するために設けられる。係合部32が寝台30に係合することにより、天板31が寝台30に装着される。係合部32は、天板31と同一の素材により形成されても良いし、他の素材により形成されても良い。また、係合部32は、天板31と一体に形成されても良いし、天板31とは個別に形成され、ネジ等の締結具や接着剤等により天板31に取り付けられても良い。
【0029】
図7は、天板31が取り外された寝台30を背面から見た図である。
図7に示すように、寝台30の支持フレーム45には、天板31を支持台41に着脱可能に支持するための着脱機構47が取り付けられている。着脱機構47は、具体的には、長軸方向に延在するガイドにより実現される。支持フレーム45のX軸方向に関する両側には、Z軸方向に延在する一対のガイド47が設けられる。各ガイド47は、係合部32に構造的に嵌まり合う嵌合部471を有する。例えば、各ガイド47の内側面に嵌合部471が形成される。係合部32が凸形状を有する場合、嵌合部471は、当該凸形状に嵌まり合う凹部を有する。
【0030】
図7に示すように、支持フレーム45には、天板31をZ軸方向に移動可能に支持する支持機構33と当該支持機構33を駆動する駆動装置35とが収容されている。支持機構33は、天板31をZ軸方向に移動可能に支持できるのであれば、如何なる機械要素により実現されても構わない。例えば、支持機構33は、ラック・アンド・ピニオンにより実現される。
【0031】
図8は、本実施形態に係る天板31と支持機構33との側面図である。
図8に示すように、係合部32の下面には、複数の歯(ラック)321が形成される。係合部32の下方に位置する支持フレーム45及びガイド47の内部には、ラック321に噛み合うピニオン351が設けられる。より詳細には、ピニオン351は、天板31がガイド47に装着された場合に係合部32のラック321に噛み合い可能な位置、すなわち、X軸方向に関する支持フレーム45の一端部側に設けられる。ピニオン351には
図8に図示しない駆動装置35がシャフト353等の動力伝達機構を介して接続される。駆動装置35の駆動によりピニオン351が回転し、天板31が±Z方向にスライドする。例えば、駆動装置35が順方向に回転してピニオン351が+Z方向に回転することにより天板31が+Z方向にスライドし、駆動装置35が逆方向に回転してピニオン351が-Z方向に回転することにより天板31が-Z方向にスライドする。駆動装置35の回転方向又は天板31のスライド方向は、任意に切り替え可能である。
【0032】
天板31の使用面を切り替えた場合においてもラック321をピニオン351に噛み合わせるため、ラック321は、一対の係合部32各々に形成される。例えば、天板31を長軸回りに回転して使用面を切り替える場合、
図4及び
図6に示すように、一対の係合部32に関して上下互い違いにラック321が形成される。すなわち、例えば、天板31の+X軸方向側の係合部32の下面にラック321が形成された場合、-X軸方向側の係合部32の上面にラック321が形成される。
【0033】
上記においてピニオン351は、X軸方向に関する支持フレーム45及びガイド47の一端部側に設けられるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ピニオン351は、X軸方向に関する支持フレーム45及びガイド47の両端部側各々に設けられても良い。この場合、一対の係合部32の上下面各々にラック321が形成されると良い。
【0034】
図9は、本実施形態に係る天板31の使用面の切り替えを示す図である。
図9の左上段に示すように、まず、湾曲面を有する画像診断用面312が上向きになるように天板31がガイド47に装着されているものとする。この状態において医用撮像機構10により医用撮像を行うことにより、医用画像診断に使用する医用画像を収集することができる。天板31の使用面を画像診断用面312から平坦面を有する治療計画用面311に切り替える場合、
図9の右上段に示すように、放射線技師や医師等の医療従事者は、天板31を+Z方向又は-Z方向から引き抜く。次に医療従事者は、
図9の右下段に示すように、治療計画用面311が上向きになるように天板31を裏返す。そして医療従事者は、
図9の左下段に示すように、天板31を+Z方向又は-Z方向に差し込む。上記動作により天板31の使用面を画像診断用面312から治療計画用面311に切り替えることができる。治療計画用面311が上向きの状態において医用撮像機構10により医用撮像を行うことにより、治療計画画像を収集することができる。
【0035】
天板の使用面を治療計画用面311から画像診断用面312に切り替える場合も上記と同様の動作により可能である。
【0036】
上記の通り、本実施形態に係る寝台30は、天板31、支持台41及び着脱機構47を有する。天板31は、放射線治療計画に使用する医用画像の撮像のための形状を有する治療計画用面311と、治療計画用面311とは反対側の面であり、医用画像診断に使用する医用画像の撮像のための形状を有する画像診断用面312とを有する。支持台41は、天板31を支持する。着脱機構47は、支持台41に対して天板31を着脱するための構造を有する。
【0037】
上記構成により、本実施形態に係る寝台30は、1枚の天板31が、放射線治療計画に使用する医用画像のための撮像と医用画像診断に使用する医用画像のための撮像との両方を兼用することができる。従って、形状の異なる2枚の天板を使い分ける場合とは異なり、本実施形態に係る天板31は、低コストであり、また、寝台30から取り外して保管する必要がないので、保管場所を確保する必要がない。そして、本実施形態によれば、使用面を治療計画用面311にして撮像を行うことにより、患者が載置される天板の使用面の形状を治療計画画像のための撮像と放射線治療時とで略同一にすることができる。従って、治療計画時と放射線治療時との間の天板形状の不一致に伴う治療計画時と放射線治療時との間の患者体内における腫瘍の位置ずれを低減することができる。
【0038】
(変形例)
上記実施形態において支持機構33は、ラック・アンド・ピニオンにより実現されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。支持機構33は、天板をZ軸方向に関して移動可能に支持することができるのであれば、如何なる機械要素であっても良い。例えば、支持機構33はボールスクリューや直動ガイド等により形成されても良い。
【0039】
図10は、変形例に係る支持機構(ボールスクリュー)61を搭載する支持フレーム45を示す図である。
図10に示すように、ボールスクリュー61は、天板31の長軸に平行に配置されたネジ軸611を有する。ネジ軸611には、ネジ軸611に沿ってスライドするスライダ612が取り付けられている。具体的には、ネジ軸611には、ネジ軸61に形成されたネジに噛み合うナット(図示せず)がねじ込まれ、当該ナットにスライダ612が設けられる。スライダ612には天板31が接続される。ネジ軸611には、
図10に図示しない駆動装置35がシャフト等の動力伝達機構を介して接続される。駆動装置35の駆動によりネジ軸611が軸心回りに回転し、ネジ軸611の回転に連動してスライダ612と天板31とが一体に±Z方向にスライドする。例えば、駆動装置35が順方向に回転することにより天板31が+Z方向にスライドし、駆動装置35が逆方向に回転することにより天板31が-Z方向にスライドする。駆動装置35の回転方向又は天板31のスライド方向は、任意に切り替え可能である。
【0040】
支持フレーム45のうちのボールスクリュー61の両側には直動ガイド63が設けられている。直動ガイド63は、ネジ軸611の軸心に平行に設けられている。直動ガイド63は、スライダ612のZ軸方向に関するスライドを案内する機械要素である。
【0041】
図11は、変形例に係る、画像診断用面313を上向きにしたときの天板31の斜視図である。
図12は、
図11の天板の12-12’断面図である。
図13は、
図11の天板の13-13’断面図である。
図14は、変形例に係る、治療計画用面311を上向きにしたときの天板31の斜視図である。
図11、
図12、
図13及び
図14に示すように、変形例に係る治療計画用面311は、上記実施形態と同様、平坦形状を有する。
図11、
図12、
図13及び
図14に示すように、変形例に係る画像診断用面313の長軸方向に関する一端部314は非湾曲形状を有し、一端部以外の部分(以下、他部と呼ぶ)315は、医用画像診断のための撮像のための湾曲形状を有する。一端部314は、スライダ612との接続面として機能する。すなわち、一端部314の表面はスライダ612の表面に対して密着可能な形状を有する。例えば、スライダ612の表面が平坦形状を有する場合、一端部314の表面も平坦形状を有する。なお、画像診断用面313に患者が載置される場合であっても、一端部314が患者の載置を阻害する可能性は低い。一端部314は天板31の端部に設けられるためである。
【0042】
図10に示すように、スライダ612には、一端部314とのネジ止めのためのネジ穴71が設けられている。
図11及び
図14に示すように、当該ネジ穴71に位置整合する、天板31の治療計画用面311と画像診断用面313の一端部314との各々の一部にもネジ穴73が設けられる。スライダ612に設けられたネジ穴71と天板31に設けられたネジ穴73とは着脱機構として機能する。スライダ612のネジ穴71と天板31のネジ穴73とが位置整合するようにスライダ612と天板31の一端部314とが密着された状態でネジ穴71とネジ穴73とにネジをねじ込むことによりスライダ612と天板31とが接続される。
【0043】
図15は、変形例に係る天板31の使用面の切り替えを示す図である。
図15の左上段に示すように、まず、画像診断用面314及び315が上向きになるように天板31がスライダ612に装着されているものとする。この状態において医用撮像機構10により医用撮像を行うことにより、医用画像診断に使用する医用画像を収集することができる。天板31の使用面を画像診断用面314及び315から治療計画用面311に切り替える場合、
図15の右上段に示すように、医療従事者は、天板31とスライダ612とを締結するネジを外し、天板31をスライダ612から分離する。次に医療従事者は、
図15の右下段に示すように、治療計画用面311が上向きになるように天板31を裏返す。そして医療従事者は、
図15の左下段に示すように、天板31をスライダ612に載せ、天板31とスライダ612とをネジで締結する。上記動作により天板31の使用面を画像診断用面314及び315から治療計画用面311に切り替えることができる。治療計画用面311が上向きの状態において医用撮像機構10により医用撮像を行うことにより、治療計画画像を収集することができる。
【0044】
天板の使用面を治療計画用面311から画像診断用面312に切り替える場合も上記と同様の動作により可能である。
【0045】
上記の通り、変形例によれば、支持機構33をボールスクリュー61で実現する場合においても、ボールスクリュー61により天板31を寝台30に着脱可能且つスライド可能とすることができる。変形例によれば、支持フレーム45にガイド47を設けたり、天板31の両側面に係合部32を設けたりする必要がないので、上記実施形態に比して構造を簡易にすることができる。一方、上記実施形態によれば、天板31をガイド47から引き抜いたり差し込んだりすることにより、天板31を寝台30に着脱することができるので、変形例に比して容易に天板31を寝台30に対して着脱することができる。
【0046】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、治療計画時と放射線治療時との間の天板形状の不一致に伴う治療計画時と放射線治療時との間の患者体内における腫瘍の位置ずれを、簡易且つ低コストに低減することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 医用画像診断装置
10 医用撮像機構
11 架台
30 寝台
31 天板
32 係合部
33 支持機構
35 駆動装置
37 制御装置
41 支持台
43 基台
45 支持フレーム
47 着脱機構(ガイド)
50 コンソール
51 処理回路
53 メモリ
54 メモリ
55 ディスプレイ
57 入力インタフェース
59 通信インタフェース
61 支持機構(ボールスクリュー)
63 直動ガイド
71 ネジ穴
73 ネジ穴
311 治療計画用面
312 画像診断用面
313 画像診断用面
314 画像診断用面の一端部
315 画像診断用面の他部
321 歯(ラック)
351 ピニオン
353 シャフト
471 嵌合部
611 ネジ軸
612 スライダ