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特許7273559風洞実験システム、風洞実験システムの制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】風洞実験システム、風洞実験システムの制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 9/04 20060101AFI20230508BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G01M9/04
G01M17/007 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019049531
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020153672
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森澤 亮太
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-251734(JP,A)
【文献】実公昭46-026048(JP,Y2)
【文献】特表2011-513746(JP,A)
【文献】特開2013-200170(JP,A)
【文献】特開2016-205890(JP,A)
【文献】実開昭62-155352(JP,U)
【文献】特表2012-502302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00- 10/00
G01M 17/00- 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有する車両モデルと、
前記車両モデルを支持する支持部と、
所定の場合に前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げる安全装置と、
を備え
前記車両モデルは操舵が可能とされ、
前記安全装置は、前記車両モデルの操舵に関するパラメータが、前記車両モデルの前記ベルトに対する速度に応じて設定された限界値を超えた場合に、前記車両モデルを持ち上げることを特徴とする、風洞実験システム。
【請求項2】
後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有する車両モデルと、
前記車両モデルを支持する支持部と、
所定の場合に前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げる安全装置と、
前記車両モデルの前方に設置された基準点を撮影するカメラと、
前記カメラが前記基準点を撮影した画像に基づいて前記車両モデルを制御する制御装置と、
を備え
前記制御装置は、前記カメラが前記基準点を撮影した画像から前記車両モデルの横ずれ量を算出し、前記横ずれ量と前記車両モデルの前記ベルトに対する速度とに基づいて、前記車両モデルの操舵を制御することを特徴とする、風洞実験システム。
【請求項3】
前記安全装置は、前記車両モデルに上方から接続されたワイヤと、アクチュエータと、を有し、前記アクチュエータの作動に応じて前記ワイヤを上方に引っ張ることで、前記車両モデルを持ち上げることを特徴とする、請求項1又は2に記載の風洞実験システム。
【請求項4】
後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有する車両モデルと、
前記車両モデルを支持する支持部と、
所定の場合に前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げる安全装置と、
を備え、
前記安全装置は、前記車両モデルに上方から接続された3本のワイヤと、アクチュエータと、を有し、前記アクチュエータの作動に応じて前記3本のワイヤを上方に引っ張ることで、前記車両モデルを持ち上げることを特徴とする、風洞実験システム。
【請求項5】
後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有し、操舵が可能な車両モデルにおいて、前記車両モデルの操舵に関するパラメータが限界値を超えたか否かを判定するステップと、
前記車両モデルの操舵に関するパラメータが前記限界値を超えた場合に、前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げるステップと、
を備えることを特徴とする、風洞実験システムの制御方法。
【請求項6】
後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有し、操舵が可能な車両モデルにおいて、前記車両モデルの操舵に関するパラメータが限界値を超えたか否かを判定する手段、
前記車両モデルの操舵に関するパラメータが前記限界値を超えた場合に、前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げる手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風洞実験システム、風洞実験システムの制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1には、風洞実験装置に関し、可動するムービングベルト上に接地された車両を、吊り線を介して荷重計測器に接続し、車両が上下方向に変位した際の吊り線の引っ張り量を空気力に変換することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-341920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風洞実験で実車の状況を正確に反映させるためには、ムービングベルト上で車両モデルを操舵できるようにして、各種測定を行うことが望ましい。一方、ムービングベルト上で車両モデルが操舵できるようにすると、異常発生時などに車両モデルがムービングモデルから逸脱する可能性がある。例えば、車両モデルがムービングベルト上から落下するような事態が生じると、車両モデルやムービングベルトが損傷する可能性もある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ベルト上で車両モデルが操舵できるようにするとともに、車両モデルがベルト上から逸脱した場合に、安全性を確保することが可能な、新規かつ改良された風洞実験システム、風洞実験システムの制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有する車両モデルと、前記車両モデルを支持する支持部と、所定の場合に前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げる安全装置と、を備え、前記車両モデルは操舵が可能とされ、前記安全装置は、前記車両モデルの操舵に関するパラメータが、前記車両モデルの前記ベルトに対する速度に応じて設定された限界値を超えた場合に、前記車両モデルを持ち上げることを特徴とする、風洞実験システムが提供される。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有する車両モデルと、前記車両モデルを支持する支持部と、所定の場合に前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げる安全装置と、前記車両モデルの前方に設置された基準点を撮影するカメラと、前記カメラが前記基準点を撮影した画像に基づいて前記車両モデルを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記カメラが前記基準点を撮影した画像から前記車両モデルの横ずれ量を算出し、前記横ずれ量と前記車両モデルの前記ベルトに対する速度とに基づいて、前記車両モデルの操舵を制御することを特徴とする、風洞実験システムが提供される
【0008】
また、前記安全装置は、前記車両モデルに上方から接続されたワイヤと、アクチュエータと、を有し、前記アクチュエータの作動に応じて前記ワイヤを上方に引っ張ることで、前記車両モデルを持ち上げるものであっても良い。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有する車両モデルと、前記車両モデルを支持する支持部と、所定の場合に前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げる安全装置と、を備え、前記安全装置は、前記車両モデルに上方から接続された3本のワイヤと、アクチュエータと、を有し、前記アクチュエータの作動に応じて前記3本のワイヤを上方に引っ張ることで、前記車両モデルを持ち上げることを特徴とする、風洞実験システムが提供される
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有し、操舵が可能な車両モデルにおいて、前記車両モデルの操舵に関するパラメータが限界値を超えたか否かを判定するステップと、前記車両モデルの操舵に関するパラメータが前記限界値を超えた場合に、前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げるステップと、を備える、風洞実験システムの制御方法が提供される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、後方に向けて移動するベルト上に接地し、前記ベルトの移動に伴い転動する車輪を有し、操舵が可能な車両モデルにおいて、前記車両モデルの操舵に関するパラメータが限界値を超えたか否かを判定する手段、前記車両モデルの操舵に関するパラメータが前記限界値を超えた場合に、前記車両モデルを前記ベルト上から持ち上げる手段、としてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、ベルト上で車両モデルが操舵できるようにするとともに、車両モデルがベルト上から逸脱した場合に、安全性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成を示す模式図である。
図2】安全装置500により車両スケールモデルを上昇させた状態を示す模式図である。
図3】車両スケールモデルを示す斜視図である。
図4A】カメラが撮影した画像の領域と、領域内の基準用LEDの位置を示す模式図である。
図4B】カメラが撮影した画像の領域と、領域内の基準用LEDの位置を示す模式図である。
図5】前輪の操舵と安全装置の制御を行う制御装置とその周辺の構成を示す模式図である。
図6】安全装置を作動させる処理を示すフローチャートである。
図7】制御可能な操舵角度限界値α0を示す模式図である。
図8】横ずれ量yから操舵角θを算出する方法を説明するための模式図である。
図9】ワイヤ角度βと車速vに基づいて、PID演算により操舵角θを演算する構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る風洞実験システム1000の構成について説明する。本実施形態は、車両スケールモデルを使用した、ムービングベルト風洞において動的特性を評価するシステムに関する。図1に示すように、この風洞実験システム1000は、車両スケールモデル100、ムービングベルト200、ローラ300,310、ワイヤ400、安全装置500、基準用LED600、を有して構成されている。
【0017】
車両スケールモデル100は、ムービングベルト200上に接地し、ムービングベルト200の車両後方への動きに応じて転動する前輪110及び後輪120を備えている。前輪110は、ムービングベルト200上で操舵が可能とされている。より詳細には、前輪110は、操舵力を伝達するための操舵用アクチュエータ112が搭載されたステアリングラックとタイロッドにより、前輪110の転舵が可能とされている。
【0018】
本実施形態の風洞実験システム1000では、一般的なスケール風洞で用いている、ムービングベルト200の上方に車両スケールモデル100を固定して支持する方法ではなく、ムービングベルト200上で操舵制御を行うことで、ムービングベルト200上に車両スケールモデル100を保持する。
【0019】
前輪110及び後輪120は、それ自体が駆動力を発生させるものではない。このため、ムービングベルト200が動いた際に、車両スケールモデル100が後方に流されていくのを防ぐため、ワイヤ400が車両スケールモデル100を前方から支持する。
【0020】
安全装置500は、車両スケールモデル100を上昇させるためのワイヤ510を備えている。車両スケールモデル100がムービングベルト200上から逸脱する可能性がある場合に、ワイヤ510を矢印A1方向に引っ張ることで、車両スケールモデル100を上昇させる。
【0021】
また、車両スケールモデル100は、後輪120の車輪速を検出する車輪速センサ130と、上述した操舵用アクチュエータ112と、車両スケールモデル100の前方に設けられた基準用LED600を撮影するカメラ140を備えている。
【0022】
図2は、安全装置500により車両スケールモデル100を上昇させた状態を示す模式図である。図2の下側には、安全装置500の構成を示している。安全装置500は、アクチュエータ520を備えている。アクチュエータ520が、ワイヤ510が接続された部材530を矢印A2方向に駆動することで、ワイヤが矢印A1方向に引っ張られ、車両スケールモデル100が上昇する。
【0023】
図3は、車両スケールモデル100を示す斜視図である。図3に示す例では、車両スケールモデル100の前方の2箇所にワイヤ510が接続され、車両スケールモデル100の後方の1箇所にワイヤ510が接続されている。ワイヤ510で車両スケールモデル100の3点を同時に上方向に持ち上げ、平面を保ったまま車両スケールモデル1000をムービングベルト200から持ち上げる。なお、車両スケールモデル100を上昇させるためのワイヤ510の本数、ワイヤ510の配置は、図3の例に限定されるものではない。
【0024】
上述のように、前輪110は、ムービングベルト200上で操舵が可能とされている。本実施形態では、車両スケールモデル100が備えるカメラ140が基準用LED600を撮影し、撮影領域内での基準用LED600の位置ずれ量を計測し、位置ずれ量に基づいて前輪110の操舵を行う。
【0025】
図4A及び図4Bは、カメラ140が撮影した画像の領域142と、領域142内の基準用LED600の位置を示す模式図である。図4Aは、イニシャル設定時の状態を示しており、領域142の中央に基準用LED600が位置している。図4Aに示す基準用LED600の位置が基準点になる。
【0026】
図4Bは、図4Aに対して基準用LED600の位置にずれが発生した状態を示している。図4Bにおいて、基準点からのずれ量は、ピクセル数から判定する。図4Bは、図4Aに対して2ピクセル分だけ基準用LED600の位置にずれが発生している。例えば、720dpiの場合、1ピクセル分のずれ量は0.353mmとして計測される。なお、1ピクセル分のずれ量は、カメラ140の光学系の諸元、撮像素子の諸元を考慮して適宜定めることができる。
【0027】
図5は、前輪110の操舵と安全装置500の制御を行う制御装置700とその周辺の構成を示す模式図である。制御装置700は、カメラ140が撮影した画像データを2値化する2値化信号処理部710と、2値化した画像データに基づいて横ずれ量を計算する横ずれ量計算部720と、を有して構成されている。また、制御装置700は、車輪速センサ130が検出した車輪速から車速を取得する車速取得部730と、横ずれ量と車輪速に基づいて操舵量を計算する操舵量計算部740と、操舵量に基づいて操舵用アクチュエータ112、または安全装置500のアクチュエータ520を制御するアクチュエータ制御部750と、を有して構成されている。なお、車速取得部730は、ムービングベルト200の速度から車速を取得しても良い。制御装置700の各構成要素は、回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)によって構成されることができる。
【0028】
図5に示すように、通常時は、操舵量計算部740が計算した操舵量に基づいて、前輪110の操舵を行う操舵用アクチュエータ112が制御される。これにより、ムービングベルト200上から車両スケールモデル100が逸脱することなく、風洞計測を行うことができる。
【0029】
一方、異常時などには、前輪110の操舵量が大きくなり、ムービングベルト200上から車両スケールモデル100が逸脱する可能性がある。このような場合、安全装置500のアクチュエータ520を作動させ、図2に示したように、ワイヤ510を矢印A1方向に引っ張ることで、車両スケールモデル100を上昇させる。これにより、車両スケールモデル100がムービングベルト200上に接地していない状態となり、走行中の車両スケールモデル100を安全に持ち上げ、風洞実験システム1000を停止させることが可能となる。
【0030】
図6は、安全装置500を作動させる処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS10では、車輪速取得部730が車輪速を取得する。次のステップS12では、図7に示す閾値判定グラフを用いて、制御可能な操舵角度限界値α0を計算する。
【0031】
図7に示す閾値判定グラフは、車速(横軸)に応じた、制御可能な操舵角限界値α0(縦軸)の特性を示している。図7に示すように、車速が高くなるほど、制御可能な操舵角限界値α0は低下する。図7に示す閾値判定グラフは、カメラ140した中央維持の車両運動シミュレーションにより、横ずれ量に対する操舵の収束性についてシミュレーションを行い、操舵限界を同定することで得ることができる。各速度ごとに収束操舵可能な角度には限界があるため、走行中に基準点とのずれ量を常に検出し、そのずれ量が閾値を超えた場合に安全装置500を作動させる。
【0032】
次のステップS14では、カメラ140が撮影した画像から、横ずれ量計算部720が基準用LED600の横ずれ量yを計算する。
【0033】
次のステップS16では、操舵量計算部740が、横ずれ量yから、基準用LED600の位置を図4Aに示す初期位置に戻すための操舵角θを算出する。図8は、横ずれ量yから操舵角θを算出する方法を説明するための模式図であって、上方から車両スケールモデル100、基準用LED600を見た状態を示している。図8に示すように、カメラ140が撮影した画像から算出した横ずれ量yと、ワイヤ400の長さ(ワイヤ長L)とから、ワイヤ角度βが以下の式(1)より算出される。
β=sin-1(y/L) ・・・(1)
【0034】
ワイヤ角度βを0[deg]に収束させるための転舵制御を車両スケールモデル100に搭載した操舵用アクチュエータ112により行う。ワイヤ角度βは、操舵用アクチュエータ112の転舵角δを制御することにより線形比例して変化するため、以下の式(2)が成立する。なお、λは操舵用アクチュエータ112の固有の定数である。
δ*λ=β ・・・(2)
【0035】
操舵角θは、以下の式(3)により算出される。ここで、Ksは操舵角と転舵角の係数であり、Kvは車速に関する係数である。また、vは車速である。
θ= Ks(δ*λ)*Kv(1/V) ・・・(3)
【0036】
操舵によりワイヤ角度βが変わった場合、その角度に対する操舵角を設定し、制御情報を更新する。補助情報として加速度センサにより横変位を算出してもよい。図9は、ワイヤ角度βと車速vに基づいて、PID演算により操舵角θを演算する構成を示す模式図である。図9において、画像処理部760は、カメラ140が撮影した画像に基づいてワイヤ角度βを算出するブロックであり、上述した2値化信号処理部710、横ずれ量計算部720、操舵量計算部740の一部の構成に相当する。また、PID制御器1及びPID制御器2からなる破線で囲んだブロックは、操舵量計算部740に相当する。
【0037】
以上のように、ステップS16では、ワイヤ角度βと車速に基づいて、基準用LED600の位置を図4Aに示す初期位置に戻すための操舵角θを算出することができる。次のステップS18では、ステップS16で求めた操舵角θがステップS12で求めた操舵角限界値α0よりも大きいか否かを判定し、操舵角θが操舵角限界値α0よりも大きい場合はステップS20へ進む。
【0038】
ステップS20では、安全装置500を作動する。これにより、図2に示したように、車両スケールモデル100が上方に持ち上げられる。ステップS20の後は処理を終了する。
【0039】
以上のように、図6の処理によれば、車両スケールモデル100に横ずれが発生した場合に、基準用LED600の位置を図4Aに示す初期位置に戻すための操舵角θが操舵角限界値α0よりも大きい場合は、安全装置500を作動する。これにより、操舵角θが車速に応じて定まる限界値α0よりも大きい場合に、車両スケールモデル100がムービングベルト200上から逸脱し、ムービングベルト200上から落下してしまうなどの事態を確実に抑止できる。
【0040】
以上説明したように本実施形態によれば、車両スケールモデル100がムービングベルト200上から逸脱する可能性がある場合に、安全装置500を作動させて車両モデル100を持ち上げるようにした。従って、車両スケールモデル100がムービングベルト200上から落下するなどの事態を確実に抑止することが可能となる。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0042】
100 車両スケールモデル
110 前輪
120 後輪
140 カメラ
200 ムービングベルト
400 ワイヤ
500 安全装置
510 ワイヤ
520 アクチュエータ
700 制御装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9