(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】暖機装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20230508BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
F01N3/24 L
F01N3/24 R
F01N3/20 D
(21)【出願番号】P 2019051900
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野谷 哲史
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-193832(JP,A)
【文献】米国特許第06318077(US,B1)
【文献】特開2002-180825(JP,A)
【文献】特開平04-175415(JP,A)
【文献】特開2008-239078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F01N 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管に設けられた浄化触媒を加熱する加熱機構と、
加熱された前記浄化触媒と熱交換された冷媒を保温可能に貯留する冷媒貯留部と、
前記冷媒貯留部に貯留された前記冷媒を暖機対象に送出する冷媒送出部と、
エンジンの始動前における所定の開始タイミングで前記加熱機構の駆動を開始し、前記エンジンが停止しており、かつ、所定の終了タイミングである場合、または、前記エンジンが始動された場合に前記加熱機構を停止する加熱制御部と、
前記エンジンが停止しており、かつ、前記終了タイミングである場合に、前記加熱制御部によって前記加熱機構が停止されたら、前記浄化触媒と前記冷媒とを熱交換させる冷媒熱交換部と、
を備える暖機装置。
【請求項2】
排気管に設けられた浄化触媒を加熱する加熱機構と、
加熱された前記浄化触媒と熱交換された冷媒を保温可能に貯留する冷媒貯留部と、
前記冷媒貯留部に貯留された前記冷媒を暖機対象に送出する冷媒送出部と、
エンジンの始動前における所定の開始タイミングで前記加熱機構の駆動を開始し、前記エンジンが始動された場合に前記加熱機構を停止する加熱制御部と、
を備える暖機装置。
【請求項3】
前記冷媒送出部は、前記冷媒貯留部に貯留された前記冷媒が外気温を上回る場合に、前記冷媒を前記暖機対象に送出する請求項1
または2に記載の暖機装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖機装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排気された排気ガスには、炭化水素(hydrocarbon:HC)、一酸化炭素(CO)、および、窒素酸化物(NOx)といった規制物質が含まれる。このため、車両の排気管には、HC、CO、および、NOxを浄化する浄化触媒が設けられている。浄化触媒の活性温度は、常温より高温(例えば、200℃以上)である。このため、エンジンの始動直後は、浄化触媒が活性温度に到達せず、規制物質が車両外に排気されてしまうおそれがあった。
【0003】
そこで、浄化触媒を加熱する電気ヒータを備え、エンジンの始動前に電気ヒータによって浄化触媒を暖機し、暖機が完了した後にエンジンを始動する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の技術では、浄化触媒を暖機したものの、エンジンを始動しなかった場合に、浄化触媒の暖機に要したエネルギーが無駄になってしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、浄化触媒の暖機に要したエネルギーを有効に利用することが可能な暖機装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の暖機装置は、排気管に設けられた浄化触媒を加熱する加熱機構と、加熱された浄化触媒と熱交換された冷媒を保温可能に貯留する冷媒貯留部と、冷媒貯留部に貯留された冷媒を暖機対象に送出する冷媒送出部と、エンジンの始動前における所定の開始タイミングで加熱機構の駆動を開始し、エンジンが停止しており、かつ、所定の終了タイミングである場合、または、エンジンが始動された場合に加熱機構を停止する加熱制御部と、エンジンが停止しており、かつ、終了タイミングである場合に、加熱制御部によって加熱機構が停止されたら、浄化触媒と冷媒とを熱交換させる冷媒熱交換部と、を備える。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の他の暖機装置は、排気管に設けられた浄化触媒を加熱する加熱機構と、加熱された浄化触媒と熱交換された冷媒を保温可能に貯留する冷媒貯留部と、冷媒貯留部に貯留された冷媒を暖機対象に送出する冷媒送出部と、エンジンの始動前における所定の開始タイミングで加熱機構の駆動を開始し、エンジンが始動された場合に加熱機構を停止する加熱制御部と、を備える。
【0010】
また、冷媒送出部は、冷媒貯留部に貯留された冷媒が外気温を上回る場合に、冷媒を暖機対象に送出してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浄化触媒の暖機に要したエネルギーを有効に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】第3バルブにおけるロータリーの回転角度と開口率との関係を示す図である。
【
図3】ヒータがオフ時の冷却水の流れを説明する第1の図である。
【
図4】ヒータがオフ時の冷却水の流れを説明する第2の図である。
【
図5】ヒータがオフ時の冷却水の流れを説明する第3の図である。
【
図6】ヒータがオフ時の冷却水の流れを説明する第4の図である。
【
図7】ヒータがオフ時の冷却水の流れを説明する第5の図である。
【
図8】ヒータがオフ時の冷却水の流れを説明する第6の図である。
【
図9】ヒータがオン時の冷却水の流れを説明する第1の図である。
【
図10】ヒータがオン時の冷却水の流れを説明する第2の図である。
【
図11】ヒータがオン時の冷却水の流れを説明する第3の図である。
【
図12】ヒータがオン時の冷却水の流れを説明する第4の図である。
【
図13】ヒータがオン時の冷却水の流れを説明する第5の図である。
【
図14】エンジンの始動前における冷却水の流れを説明する第1の図である。
【
図15】エンジンの始動前における冷却水の流れを説明する第2の図である。
【
図16】エンジンの始動前における冷却水の流れを説明する第3の図である。
【
図17】第1の変形例の暖機装置を説明する図である。
【
図18】第2の変形例の暖機装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、車両1の構成を説明する図である。なお、
図1中、冷却流路100(図中、100a~100oで示す)を実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。
図1に示すように、車両1は、ウォーターポンプ10、オイルパンアッパー12、エンジン2(シリンダブロック14、シリンダヘッド16)、第1バルブ18、水渡しパイプ20、第2バルブ22、第3バルブ24、ラジエータ26、ヒータ28、EGRクーラー30、変速機32、水渡しパイプ34、サーモスタットバルブ36、浄化触媒38、加熱機構40、冷媒貯留部42、第4バルブ44、中央制御部50、温度センサT1~T6が設けられる。そして、車両1は、これら各部に、冷却流路100を介して冷却水が循環される。つまり、ウォーターポンプ10、第1バルブ18、水渡しパイプ20、第2バルブ22、第3バルブ24、ラジエータ26、水渡しパイプ34、サーモスタットバルブ36、加熱機構40、冷媒貯留部42、第4バルブ44、中央制御部50、温度センサT1~T6を含む冷却機構200が車両1に搭載される。
【0015】
ウォーターポンプ10(冷媒送出部、冷媒熱交換部)は、ポンプ吐出流路100a、ラジエータ流路100h、ヒータ流路100i、バイパス流路100mが接続されている。ウォーターポンプ10は、不図示のバッテリから電力が供給されて駆動し、ラジエータ流路100h、ヒータ流路100i、バイパス流路100mから流入した冷却水をポンプ吐出流路100aに吐出する。
【0016】
オイルパンアッパー12は、ポンプ吐出流路100a、ブロック流入流路100b、EGR流路100k、変速機流路100lが接続されている。オイルパンアッパー12は、ポンプ吐出流路100aを介してウォーターポンプ10から流入された冷却水が一時的に流入し、流入した冷却水をブロック流入流路100b、EGR流路100k、変速機流路100lに排出する。
【0017】
エンジン2は、1対のシリンダブロック14、および、1対のシリンダヘッド16を備え、1対のシリンダブロック14が略水平方向に対向するようにして配置される所謂水平対向エンジンである。エンジン2の駆動トルクは、変速機32で変速されて車輪に伝達される。シリンダブロック14には、シリンダブロック14の内部、および、シリンダヘッド16の内部に冷却水を分岐する分岐室14aが設けられている。なお、
図1においては、1対のシリンダブロック14、および、1対のシリンダヘッド16は互いに離隔して図示されているが、実施には、1対のシリンダブロック14が対向するように連結されているとともに、シリンダブロック14に対してシリンダヘッド16がそれぞれ連結されている。
【0018】
シリンダブロック14は、分岐室14aよりも下流側であって、内部を流通した冷却水が排出されるブロック排出流路100cが接続されているとともに、分岐室14aを介してシリンダヘッド16が接続されている。また、シリンダヘッド16は、内部を流通した冷却水が排出されるヘッド流路100eが接続されている。
【0019】
第1バルブ18は、ブロック排出流路100cおよびバルブ流路100dが接続されており、ブロック排出流路100cおよびバルブ流路100dを連通させる開状態、および、ブロック排出流路100cおよびバルブ流路100dを遮断する閉状態が切り替え可能なON/OFFバルブである。第1バルブ18は、開状態において、ブロック排出流路100cから流入された冷却水を、バルブ流路100dに排出する。一方で、第1バルブ18は、閉状態において、ブロック排出流路100cから流入された冷却水を遮断し、バルブ流路100dに排出させない。
【0020】
水渡しパイプ20は、バルブ流路100d、ヘッド流路100e、第2バルブ流入流路100fが接続されており、バルブ流路100dおよびヘッド流路100eから流入した冷却水を第2バルブ流入流路100fに排出する。つまり、水渡しパイプ20は、エンジン2を流通してきた冷却水を第2バルブ22に流入させる。
【0021】
第2バルブ22は、第2バルブ流入流路100f、第3バルブ流入流路100g、触媒流入流路100nが接続された切り替えバルブである。第2バルブ22は、第2バルブ流入流路100fと第3バルブ流入流路100gとを連通させ、第2バルブ流入流路100fと触媒流入流路100nとを遮断する第1状態と、第2バルブ流入流路100fと触媒流入流路100nとを連通させ、第2バルブ流入流路100fと第3バルブ流入流路100gとを遮断する第2状態とを切り替える。
【0022】
第3バルブ24は、第3バルブ流入流路100g、ラジエータ流路100h、ヒータ流路100i、水渡し流路100jが接続されたロータリー式のバルブである。第3バルブ24は、ロータリーが回転することで、詳しくは後述するように、第3バルブ流入流路100gと接続される流路(ラジエータ流路100h、ヒータ流路100i、水渡し流路100j)を切り替える。
【0023】
ラジエータ26は、ラジエータ流路100hの途中に設けられ、冷却水の熱を外部に放熱することで、冷却水を冷却する。ヒータ28は、ヒータ流路100iの途中に設けられ、不図示のヒータスイッチがオンされることで、冷却水の熱を車内に放熱し、車内を温める。
【0024】
EGRクーラー30は、EGR流路100kの途中に設けられ、エンジン2から排出される排気ガスの一部がエンジン2の吸気流路に循環されるEGR流路の途中で、排気ガスを冷却する。変速機32は、所謂無段変速機(CVT(Continuously Variable Transmission))であり、変速機流路100lの途中に設けられ、エンジン2から伝達された伝達トルクを無段階で変速して車輪に伝達する。
【0025】
水渡しパイプ34は、水渡し流路100j、EGR流路100k、バイパス流路100mが接続されるとともに、サーモスタットバルブ36を介して変速機流路100lが接続されている。水渡しパイプ34は、水渡し流路100j、EGR流路100kおよび変速機流路100lから流入した冷却水をバイパス流路100mに排出する。
【0026】
サーモスタットバルブ36は、変速機流路100lが接続されているとともに、水渡しパイプ34に連結されている。サーモスタットバルブ36は、水渡しパイプ34内の冷却水の温度が予め設定された第1温度閾値(例えば、50℃)以上になると変速機流路100lと水渡しパイプ34とを連通させる開状態となり、水渡しパイプ34内の冷却水の温度が第1温度閾値未満である場合には変速機流路100lと水渡しパイプ34とを遮断する閉状態となる。
【0027】
浄化触媒38は、エンジン2に接続された排気管に設けられ、エンジン2から排出される排気ガスを浄化する。浄化触媒38は、例えば、三元触媒(Three-Way Catalyst)である。三元触媒は、例えば、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒成分を含む。浄化触媒38は、エンジン2から排出された排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)(以下、炭化水素、一酸化炭素、および、窒素酸化物を纏めて規制物質という場合がある)を浄化(除去)する。
【0028】
また、冷却水の循環路上において、浄化触媒38は、触媒流入流路100n、触媒流入流路100oが接続される。触媒流入流路100nは、第2バルブ22に接続される。触媒流入流路100oは、第3バルブ流入流路100gに接続される。
【0029】
加熱機構40は、浄化触媒38を加熱する。加熱機構40は、例えば、電気ヒータで構成される。加熱機構40は、後述する加熱制御部54によって制御される。
【0030】
冷媒貯留部42は、バイパス流路100mに設けられる。冷媒貯留部42は、冷却水を保温可能に貯留する。冷媒貯留部42は、断熱構造を有する容器である。
【0031】
第4バルブ44は、EGR流路100kに設けられ、EGR流路100kを開放する開状態、および、EGR流路100kを遮断する閉状態が切り替え可能なON/OFFバルブである。
【0032】
中央制御部50は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積流路で構成されている。中央制御部50には、温度センサT1~T6が接続されており、これら温度センサT1~T6から送信される信号、および、エンジン2の運転状況(エンジン回転数およびエンジン負荷)に基づいて、ウォーターポンプ10、第1バルブ18、第2バルブ22、第3バルブ24、および、加熱機構40を制御する。なお、中央制御部50は、エンジン2のクランクシャフトに設けられた不図示のクランク角センサから送信されるクランク角が示される信号に基づいてエンジン回転数を導出し、また、不図示のスロットルの開度をエンジン負荷として導出する。スロットルは、アクセルペダルの踏み込み量に応じて、アクチュエータにより開度が調整され、エンジン2に供給される空気量を調整する。
【0033】
温度センサT1は、ポンプ吐出流路100aに設けられ、ウォーターポンプ10から吐出される冷却水の温度を計測する。温度センサT2は、シリンダブロック14内に設けられ、シリンダブロック14の内部を流通した冷却水の温度を計測する。温度センサT3は、シリンダヘッド16内に設けられ、シリンダヘッド16の内部を流通した冷却水の温度を計測する。温度センサT4は、第2バルブ流入流路100fに設けられ、エンジン2を流通した冷却水の温度を計測する。温度センサT5は、冷媒貯留部42に貯留された冷却水の温度を計測する。温度センサT6は、浄化触媒38の温度を計測する。
【0034】
次に、中央制御部50による制御処理について説明する。ここでは、まず、第3バルブ24におけるロータリーの回転角度と開口率との関係について説明した後、中央制御部50による制御処理を説明する。
【0035】
図2は、第3バルブ24におけるロータリーの回転角度と開口率との関係を示す図である。なお、
図2において、ラジエータ流路100hに対する開口率を破線で示し、ヒータ流路100iに対する開口率を細線(実線)で示し、水渡し流路100jに対する開口率を太線(実線)で示す。
【0036】
図2に示すように、第3バルブ24は、ロータリーの回転角度が0°である状態を基準として、正方向および負方向にロータリーが回転可能である。第3バルブ24は、ロータリーの回転角度が0°である場合(
図2中「A」)には、ラジエータ流路100h、ヒータ流路100iおよび水渡し流路100jに対する開口率が全て0%であり、ラジエータ流路100h、ヒータ流路100iおよび水渡し流路100jのいずれにも冷却水を排出することはない。
【0037】
また、第3バルブ24は、ロータリーが正方向に回転され、
図2中「B」の回転角度になると、ヒータ流路100iに対する開口率が100%となり、ヒータ流路100iにのみ最大流量の冷却水が排出される。そして、第3バルブ24は、ロータリーがさらに正方向に回転され、
図2中「C」の回転角度になると、ヒータ流路100iおよび水渡し流路100jに対する開口率が100%となり、ヒータ流路100iおよび水渡し流路100jに冷却水が排出される。つまり、
図2中「C」の回転角度では、ラジエータ流路100hに冷却水が流通せず、水渡し流路100jおよび水渡しパイプ34を介してバイパス流路100mに冷却水が流通することになるので、バイパス流路100mは、ラジエータ26を迂回して冷却水を流通させる流路であるとも言える。
【0038】
そして、第3バルブ24は、
図2中「C」からロータリーがさらに正方向に回転されると、
図2中「D」の範囲において、水渡し流路100jに対する開口率が100%から0%に減少するとともに、ラジエータ流路100hに対する開口率が0%から100%に増加する。なお、第3バルブ24は、
図2中「D」の範囲において、ヒータ流路100iに対する開口率が100%のまま維持される。したがって、第3バルブ24は、
図2中「D」の範囲において、ヒータ流路100iに冷却水を排出するとともに、水渡し流路100jおよびラジエータ流路100hに対して中間開度で(開口率に応じて)冷却水を排出することになる。つまり、第3バルブ24は、
図2中「D」の範囲において、ラジエータ26およびバイパス流路100mに流通させる冷却水の流量を中間開度によって調整可能である。
【0039】
また、第3バルブ24は、
図2中「D」の範囲の回転角度から、さらにロータリーが正方向に回転され、
図2中「E」の回転角度になると、ヒータ流路100iおよびラジエータ流路100hに対する開口率が100%となり、ヒータ流路100iおよびラジエータ流路100hに冷却水が排出される。つまり、
図2中「E」の回転角度では、バイパス流路100mに冷却水が流通せず、ラジエータ流路100h(ラジエータ26)に冷却水が流通することになるので、最もラジエータ26に冷却水が流通することになる。
【0040】
一方、第3バルブ24は、ロータリーが負方向に回転され、
図2中「F」の回転角度になると、水渡し流路100jに対する開口率が100%となり、水渡し流路100jにのみ冷却水が排出される。
【0041】
そして、第3バルブ24は、
図2中「F」からロータリーがさらに負方向に回転されると、
図2中「G」の範囲において、水渡し流路100jに対する開口率が100%から0%に減少するとともに、ラジエータ流路100hに対する開口率が0%から100%に増加する。したがって、第3バルブ24は、
図2中「G」の範囲において、ラジエータ26およびバイパス流路100mに流通させる冷却水の流量を中間開度によって調整可能である。
【0042】
また、第3バルブ24は、
図2中「G」の範囲の回転角度から、さらにロータリーが負方向に回転され、
図2中「H」の回転角度になると、ラジエータ流路100hに対する開口率が100%となり、ラジエータ流路100hに冷却水が排出される。
【0043】
このように、第3バルブ24は、ロータリーが正方向または負方向のどちらに回転されるかによって、ヒータ流路100iに冷却水を排出するか否かを調整することが可能である。また、第3バルブ24は、ロータリーが正方向および負方向のどちらに回転される場合であっても、回転角度によって、水渡し流路100jおよびラジエータ流路100hに対する開口率を調整することが可能である。つまり、第3バルブ24は、回転角度によって、バイパス流路100mおよびラジエータ26に流通させる冷却水の流量を調整することが可能である。
【0044】
続いて、中央制御部50による制御処理について説明する。
図1に戻って説明すると、中央制御部50は、制御処理を実行する場合、バルブ制御部52、加熱制御部54として機能する。
【0045】
バルブ制御部52は、温度センサT1~T4によって計測される冷却水の温度、エンジン回転数およびエンジン負荷に基づいて、第1バルブ18の開閉状態を制御するとともに、第3バルブ24のロータリーの回転角度を制御する。なお、この場合、バルブ制御部52は、第2バルブ22を第1状態(第2バルブ流入流路100fと第3バルブ流入流路100gとを連通させ、第2バルブ流入流路100fと触媒流入流路100nとを遮断する状態)に制御し、第4バルブ44を開状態に制御する。
【0046】
バルブ制御部52は、温度センサT2によって計測される、シリンダブロック14を流通した冷却水の温度(以下、ブロック温度と呼ぶ)が、予め設定された第2温度閾値(例えば、110℃)未満の場合には、第1バルブ18を閉状態にし、シリンダブロック14に冷却水を流通させない。また、バルブ制御部52は、ブロック温度が第2温度閾値(例えば、110℃)以上の場合には、第1バルブ18を開状態にし、シリンダブロック14に冷却水を流通させる。
【0047】
また、バルブ制御部52は、温度センサT3によって計測されるヘッド温度に基づいて、複数の目標温度マップのいずれかを取得し、エンジン回転数およびエンジン負荷に基づいて、取得した目標温度マップを参照して、シリンダヘッド16を流通した冷却水の目標温度を設定する。なお、これら複数の目標温度マップは、エンジン回転数およびエンジン負荷に目標温度が対応付けられており、エンジン負荷が高くなるに連れて目標温度が低くなるように設定されており、ROMに記憶されている。
【0048】
バルブ制御部52は、目標温度を設定すると、ヒータスイッチのオンオフ、および、設定した目標温度に応じて、第3バルブ24のロータリーの回転角度を決定し、決定した回転角度となるように第3バルブ24(ロータリー)を
図2中「A」~「H」のいずれかの状態に制御する。なお、ここでは、バルブ制御部52は、設定した目標温度が高くなるに連れて、第3バルブ24を正方向または負方向により回転させるように制御する。つまり、バルブ制御部52は、目標温度が高くなるに連れてラジエータ26に冷却水を流通させないようにして、冷却水の温度を上昇させるように制御し、目標温度が低くなるに連れてラジエータ26に冷却水を流通させるようにして、冷却水の温度を低下させるように制御する。
【0049】
また、バルブ制御部52は、目標温度とヘッド温度との温度差に基づいて、第3バルブ24のロータリーの回転角度を補正する。具体的には、バルブ制御部52は、目標温度からヘッド温度を減算した温度差が0よりも大きい場合には、温度差が大きくなるに連れてロータリーの回転角度を0°に近づくように補正する。つまり、バルブ制御部52は、ヘッド温度が目標温度よりも低い場合には、ラジエータ26に冷却水を流通させないようにして、冷却水の温度を上昇させるように制御する。
【0050】
また、バルブ制御部52は、目標温度からヘッド温度を減算した温度差が0よりも小さい場合には、温度差が小さくなるに連れてロータリーの回転角度を0°から遠ざかるように補正する。つまり、バルブ制御部52は、ヘッド温度が目標温度よりも高い場合には、ラジエータ26に冷却水を流通させるようにして、冷却水の温度を低下させるように制御する。
【0051】
また、バルブ制御部52は、温度センサT1によって計測される、ウォーターポンプ10から吐出される冷却水の温度(以下、ポンプ温度とも呼ぶ)、および、温度センサT4によって計測される、エンジン2を流通した冷却水の水温(以下、エンジン温度とも呼ぶ)に基づいて、第3バルブ24のロータリーの回転角度を補正する。ここでは、エンジン回転数やエンジン負荷が急激に変化して目標水温が変化した場合に、水温の応答遅れが少なくなるように第3バルブ24のロータリーの回転角度を補正する。
【0052】
加熱制御部54は、エンジン2の始動前における所定の開始タイミングで加熱機構40の駆動を開始する。開始タイミングは、例えば、車両1の運転席のドアの開錠を検知したタイミング、車両1の運転席の重量センサが所定の重量(人が運転席に乗ったことを示す重量)を検知したタイミング、車両1に設置されたカメラが運転席で人を検知したタイミング、車両1から所定の範囲内においてスマートキーを検知したタイミング等である。また、加熱制御部54が、エンジン2の始動時間を毎日学習して、エンジン2の始動時間の推定時間を導出しておき、推定時間の所定時間(例えば、10分)前を開始タイミングとしてもよい。
【0053】
また、加熱制御部54は、エンジン2が停止しており、かつ、所定の終了タイミングである場合に加熱機構40を停止する。終了タイミングは、例えば、車両1の運転席のドアの施錠を検知したタイミング、バッテリの電圧が所定値以下となったタイミング、加熱機構40の駆動を開始してから所定時間が経過したタイミング等である。また、加熱制御部54は、エンジン2が始動された場合に(例えば、不図示のスタータが通電されたタイミングで)加熱機構40を停止する。
【0054】
また、バルブ制御部52は、エンジン2の始動前において、加熱機構40の駆動状態に基づいて、第1バルブ18、および、第4バルブ44の開閉状態を制御するとともに、第2バルブ22の切り替え状態および第3バルブ24のロータリーの回転角度を制御する。
【0055】
続いて、エンジン2が駆動されている際の第1バルブ18、第3バルブ24およびサーモスタットバルブ36の開閉状態に応じた冷却流路100を流通する冷却水の流れについて具体的な例を挙げながら説明する。なお、上記したように、バルブ制御部52は、主にエンジン回転数およびエンジン負荷に基づいて第3バルブ24のロータリーの回転角度を制御しているが、ここでは、理解を容易にするため、冷却水の水温を基にして説明する。
【0056】
図3~
図8は、ヒータ28がオフ時の冷却水の流れを説明する図である。なお、
図3~
図8において、冷却水が流れている冷却流路100(100a~100o)を実線の矢印で示し、冷却水が流れていない冷却流路100(100a~100o)を破線の矢印で示し、冷却水の流通が中間開度によって制御されている冷却流路100(100a~100o)を一点鎖線の矢印で示す。
【0057】
図3に示すように、エンジン2の始動時など、冷媒貯留部42の冷却水が温められておらず外気温と同等である場合には、第3バルブ24は
図2中「A」の回転角度に維持され、第4バルブ44は開状態となっているとともに、第1バルブ18およびサーモスタットバルブ36が閉状態となっている。また、第2バルブ22は、第2バルブ流入流路100fと第3バルブ流入流路100gとを連通させ、第2バルブ流入流路100fと触媒流入流路100nとを遮断する状態(第1状態)となっている。この場合、車両1では、第1バルブ18が閉状態であり、かつ、第3バルブ24がいずれの流路に対しても開口率が0%であるため、ウォーターポンプ10から吐出された冷却水は、オイルパンアッパー12を介してEGR流路100kにのみ流通する。そして、水渡しパイプ34に流入された冷却水が、バイパス流路100mを介してウォーターポンプ10に戻される。
【0058】
このように、冷媒貯留部42に貯留された冷却水が外気温と同等である場合には、冷却水が流れる冷却流路100を限定して、エンジン2および変速機32内の冷却水の早期の温度上昇を図り、エンジン2内のオイルの温度を上昇させ、オイルフリクションを早期に低減させる。
【0059】
そして、水渡しパイプ34内の冷却水の温度が第1温度閾値(50℃)以上になると、車両1では、
図4に示すように、サーモスタットバルブ36が開状態となって、変速機流路100lにも冷却水が流通するようになり、変速機32内のオイル温度を上昇させオイルフリクションを早期に低減させることが可能となる。
【0060】
また、ヘッド温度が上昇し、第3バルブ24が
図2中「F」の回転角度に維持され、水渡し流路100jに対する開口率が100%になると、車両1では、
図5に示すように、第3バルブ24から水渡しパイプ34に冷却水が流通するようになる。そうすると、オイルパンアッパー12から分岐室14aを介してシリンダヘッド16に冷却水が流通するようになる。これにより、シリンダヘッド16が冷却水によって冷却されるようになる。ここで、シリンダヘッド16は、シリンダブロック14よりも受熱が大きく、熱容量が小さいので温度が上昇し易いため、シリンダブロック14とは独立してシリンダヘッド16に先に冷却水を流通させるようにしている。
【0061】
その後、さらに冷却水の水温が上昇し、第3バルブ24が
図2中「G」の領域で制御され、水渡し流路100jおよびラジエータ流路100hに対する開口率が中間開度になると、車両1では、
図6に示すように、シリンダヘッド16を流通した冷却水の一部がラジエータ26にも流通するようになる。ラジエータ26に冷却水が流通するようになると、冷却水はラジエータ26によって冷却されるようになる。このとき、水渡し流路100jおよびラジエータ流路100hに対する開口率によってラジエータ26に流入する冷却水の流量が調整されることになるので、冷却水の冷却量も調整されることになる。
【0062】
また、ブロック温度が第2温度閾値以上になると、第1バルブ18が開状態となり、車両1では、
図7に示すように、シリンダブロック14に対しても冷却水が流通するようになる。シリンダブロック14に冷却水が流通するようになると、シリンダブロック14が冷却水によって冷却されることになり適正温度に維持される。
【0063】
そして、エンジン負荷が高くなり、冷却水が最も温まりやすい状況では、第3バルブ24が
図2中「H」の回転角度に維持され、ラジエータ流路100hに対する開口率が100%になる。この場合、車両1では、
図8に示すように、エンジン2を流通した冷却水の殆どがラジエータ26に流入するようになり、冷却水を最大限で冷却するようになる。
【0064】
図9~
図13は、ヒータ28がオン時の冷却水の流れを説明する図である。なお、
図9~
図13において、冷却水が流れている冷却流路100を実線の矢印で示し、冷却水が流れていない冷却流路100を破線の矢印で示し、冷却水の流通が中間開度によって制御されている冷却流路100を一点鎖線の矢印で示す。
【0065】
エンジン2の始動時など、冷媒貯留部42の冷却水が温められておらず外気温と同等である場合には、ヒータ28がオンしている場合であっても、第3バルブ24は
図2中「A」の回転角度に維持されているとともに、第1バルブ18およびサーモスタットバルブ36が閉状態となっている。また、第2バルブ22は、第2バルブ流入流路100fと第3バルブ流入流路100gとを連通させ、第2バルブ流入流路100fと触媒流入流路100nとを遮断する状態(第1状態)となっている。この場合、車両1では、
図3および
図4に示したヒータ28のオフ時と同様に、ヒータ28には冷却水が流通しない。
【0066】
その後、ヘッド温度が上昇して例えば50℃になると、第3バルブ24が
図2中「B」の回転角度に維持され、ヒータ流路100iに対する開口率が100%になる。この場合、車両1では、
図9に示すように、第3バルブ24からヒータ流路100iに冷却水が流通するようになる。そうすると、ヒータ28は、冷却水の熱を車内に放出して車内を暖気することが可能になる。
【0067】
その後、ヘッド温度が上昇すると、第3バルブ24が
図2中「C」の回転角度に維持され、水渡しパイプ34およびヒータ流路100iに対する開口率が100%になる。この場合、車両1では、
図10に示すように、第3バルブ24から水渡しパイプ34およびヒータ流路100iに冷却水が流通するようになる。
【0068】
その後、さらに冷却水の水温が上昇してくると、第3バルブ24が
図2中「D」の領域で回転角度が制御され、水渡し流路100jおよびラジエータ流路100hに対する開口率が中間開度になるとともに、ヒータ流路100iに対する開口率が100%になる。この場合、車両1では、
図11に示すように、ヒータ流路100iに冷却水が流通するとともに、シリンダヘッド16を流通した冷却水の一部がラジエータ26にも流通するようになる。
【0069】
また、ブロック温度が第2温度閾値以上になり、第1バルブ18が開状態となると、
図12に示すように、シリンダブロック14に対しても冷却水が流通するようになる。この場合、車両1では、シリンダブロック14に冷却水が流通するようになると、シリンダブロック14が冷却されることになり、適正温度に維持される。
【0070】
そして、エンジン負荷が高くなり、冷却水が最も温まりやすい状況では、第3バルブ24が
図2中「E」の回転角度に維持されラジエータ流路100hおよびヒータ流路100iに対する開口率が100%になる。この場合、車両1では、
図13に示すように、エンジン2を流通した冷却水がヒータ流路100iおよびラジエータ26に流通するようになり、冷却水を最大限で冷却するようになる。
【0071】
このように、車両1は、シリンダブロック14およびシリンダヘッド16に対して独立して冷却水が流通可能になっており、シリンダブロック14に冷却水を流通させるか否かを第1バルブ18によって制御する。また、車両1は、エンジン2(シリンダブロック14およびシリンダヘッド16)を流通した冷却水が流入され、ラジエータ流路100hおよびバイパス流路100mに対する冷却水の流入を中間開度で制御する第3バルブ24が設けられている。
【0072】
したがって、車両1は、第3バルブ24を制御することによりラジエータ流路100hおよびバイパス流路100mの少なくとも一方に冷却水を流通させることで、シリンダヘッド16に冷却水を流通させることができる。また、車両1は、第3バルブ24を制御することによりラジエータ流路100hに対する開口率を調整することで、冷却水の冷却量を調整することができる。かくして、車両1は、エンジン2の運転状況に応じて、冷却水の温度の上昇および低下を早期に制御することが可能となり、車両1の各部(シリンダブロック14、シリンダヘッド16、EGRクーラー30、ヒータ28、変速機32等)の暖機および冷却を効率よく行うことができる。
【0073】
また、変速機32には、エンジン2とは独立して冷却水が流通するようになっており、水渡しパイプ34内の冷却水の水温が第1温度閾値以上になると、変速機32に冷却水が流通するので、変速機32をエンジン2と独立して暖機および冷却することができる。
【0074】
続いて、エンジン2の始動前における第2バルブ22の切り替え位置、および、ウォーターポンプ10のオンオフに応じた冷却流路100を流通する冷却水の流れについて具体的な例を挙げながら説明する。
【0075】
図14~
図16は、エンジン2の始動前における冷却水の流れを説明する図である。なお、
図14~
図16において、冷却水が流れている冷却流路100(100a~100o)を実線の矢印で示し、冷却水が流れていない冷却流路100(100a~100o)を破線の矢印で示す。
【0076】
エンジン2の始動前において、加熱機構40が駆動されている場合、
図14に示すように、バルブ制御部52は、第1バルブ18、および、第4バルブ44を閉状態に制御するとともに、ウォーターポンプ10の駆動を開始しない(停止状態を維持する)。これにより、浄化触媒38の周りを冷却水が流通することがなくなり、加熱機構40の熱(または、加熱機構40によって加熱された浄化触媒38の熱)の冷却水への移動を抑制することができる。換言すれば、加熱機構40の熱が冷却水に奪われてしまう事態を抑制することが可能となる。したがって、加熱機構40による浄化触媒38の暖機を効率よく行うことができる。
【0077】
そして、エンジン2が停止しており、かつ、上記終了タイミングであることによって加熱機構40が停止されると、
図15に示すように、バルブ制御部52は、第2バルブ22を第2状態(第2バルブ流入流路100fと触媒流入流路100nとを連通させ、第2バルブ流入流路100fと第3バルブ流入流路100gとを遮断する状態)に切り替えるとともに、第3バルブ24を
図2中「F」の回転角度に維持して、ウォーターポンプ10の駆動を開始する。そうすると、ウォーターポンプ10から吐出された冷却水は、オイルパンアッパー12、分岐室14a、シリンダヘッド16、水渡しパイプ20、第2バルブ22を介して浄化触媒38を流通する。これにより、冷却水と浄化触媒38とで熱交換が為され、浄化触媒38の熱によって冷却水が加熱される。加熱された冷却水は、第3バルブ24、水渡しパイプ34を介して、冷媒貯留部42に貯留される。
【0078】
そして、冷却水の浄化触媒38への流通(循環)を開始してから、所定時間が経過すると、バルブ制御部52は、第2バルブ22を第1状態に切り替えるとともに、ウォーターポンプ10を停止する。
【0079】
このように、浄化触媒38を暖機したものの、エンジン2を始動しなかった場合に、浄化触媒38の暖機に要したエネルギーを冷媒貯留部42で保持しておくことができる。
【0080】
一方、エンジン2が始動されたことによって加熱機構40が停止されると、
図16に示すように、バルブ制御部52は、温度センサT5によって計測される冷媒貯留部42内の冷却水の温度が外気温を上回る場合、第4バルブ44を開状態に制御し、第2バルブ22を第1状態に切り替えるとともに、第3バルブ24を
図2中「F」の回転角度に維持して、ウォーターポンプ10の駆動を開始する。そうすると、冷媒貯留部42に貯留された外気温を上回る冷却水は、ウォーターポンプ10から吐出され、オイルパンアッパー12、分岐室14aを介して、シリンダヘッド16を流通する。また、冷媒貯留部42に貯留された外気温を上回る冷却水は、ウォーターポンプ10から吐出され、オイルパンアッパー12を介して、EGRクーラー30を流通する。
【0081】
これにより、冷却水によって、シリンダヘッド16を暖機することができる。つまり、浄化触媒38の暖機に要したエネルギー(熱)で、シリンダヘッド16を暖機することが可能となる。
【0082】
そして、水渡しパイプ34内の冷却水の温度が第1温度閾値(50℃)以上になると、車両1では、サーモスタットバルブ36が開状態となって、
図5に示すように冷却水が流通することになる。
【0083】
また、
図5~
図13に示す、エンジン2が駆動されている際であって、エンジン2に冷却水が流通している場合に、温度センサT6によって計測される浄化触媒38の温度が第3温度閾値(例えば、浄化触媒38の劣化温度)以上であると、第2バルブ22を第2状態に切り替える。そうすると、エンジン2を冷却した冷却水は、浄化触媒38を流通する。これにより、浄化触媒38を冷却することができ、浄化触媒38の劣化を抑制することが可能となる。
【0084】
[第1の変形例]
上記実施形態において、暖機装置が、エンジン2を冷却する冷却機構200に含まれる場合を例に挙げた。しかし、暖機装置は、冷却機構200と別体であってもよい。
【0085】
図17は、第1の変形例の暖機装置300を説明する図である。
図17中、冷却流路320(
図17中、320a~320dで示す)を実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。
図17に示すように、暖機装置300は、冷媒送出部310、冷却流路320、冷媒貯留部330、開閉弁340、加熱機構40、暖機制御部350、温度センサT5が設けられる。なお、上記実施形態の冷却機構200と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
冷媒送出部310は、例えば、ポンプで構成される。冷媒送出部310は、不図示のバッテリから電力が供給されて駆動する。冷媒送出部310は、吐出流路320a、吸入流路320dが接続されている。冷媒送出部310は、吸入流路320dから流入した冷却水を吐出流路320aに吐出する。
【0087】
エンジン2は、吐出流路320aおよびエンジン排出流路320bに接続される。吐出流路320aを介してエンジン2の内部に流入した冷却水は、エンジン2の内部を流通した後、エンジン排出流路320bに排出される。
【0088】
エンジン排出流路320b、触媒排出流路320cは、浄化触媒38に接続される。エンジン排出流路320bを介して、浄化触媒38に導かれた冷却水は、浄化触媒38の外壁を流通した後、触媒排出流路320cに排出される。
【0089】
冷媒貯留部330は、触媒排出流路320c、吸入流路320dに接続される。冷媒貯留部330は、冷却水を保温可能に貯留する。冷媒貯留部330は、断熱構造を有する容器である。
【0090】
開閉弁340は、吸入流路320dに設けられ、吸入流路320dを開放する開状態、および、吸入流路320dを遮断する閉状態が切り替え可能なバルブである。開閉弁340は、開状態において、エンジン排出流路320bから流入された冷却水を、浄化触媒38に排出する。一方で、開閉弁340は、閉状態において、エンジン排出流路320bから浄化触媒38への冷却水の流入を遮断し、浄化触媒38への冷却水の流入を防止する。
【0091】
暖機制御部350は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積流路で構成されている。暖機制御部350には、温度センサT5が接続されており、温度センサT5から送信される信号、エンジン2の駆動状況に基づいて、冷媒送出部310、開閉弁340、および、加熱機構40を制御する。
【0092】
暖機制御部350は、制御処理を実行する場合、バルブ制御部352、加熱制御部54として機能する。
【0093】
バルブ制御部352は、エンジン2の始動前において、加熱機構40の駆動状態に基づいて、開閉弁340の開閉状態を制御するとともに、冷媒送出部310の駆動状態を制御する。
【0094】
エンジン2の始動前において、加熱機構40が駆動されている場合、バルブ制御部352は、開閉弁340を閉状態に制御するとともに、冷媒送出部310の駆動を開始しない(停止状態を維持する)。これにより、浄化触媒38の周りを冷却水が流通することがなくなり、加熱機構40の熱(または、加熱機構40によって加熱された浄化触媒38の熱)の冷却水への移動を抑制することができる。換言すれば、加熱機構40の熱が冷却水に奪われてしまう事態を抑制することが可能となる。したがって、加熱機構40による浄化触媒38の暖機を効率よく行うことができる。
【0095】
そして、エンジン2が停止しており、かつ、上記終了タイミングであることよって加熱機構40が停止されると、バルブ制御部352は、開閉弁340を開状態に制御するとともに、冷媒送出部310の駆動を開始する。そうすると、冷媒送出部310から吐出された冷却水は、吐出流路320a、エンジン2、エンジン排出流路320bを介して、浄化触媒38を流通する。これにより、冷却水と浄化触媒38とで熱交換が為され、浄化触媒38の熱によって冷却水が加熱される。加熱された冷却水は、触媒排出流路320cを介して、冷媒貯留部330に貯留される。
【0096】
そして、冷却水の浄化触媒38への流通(循環)を開始してから、所定時間が経過すると、バルブ制御部352は、開閉弁340を閉状態に制御するとともに、冷媒送出部310を停止する。
【0097】
このように、浄化触媒38を暖機したものの、エンジン2を始動しなかった場合に、浄化触媒38の暖機に要したエネルギーを冷媒貯留部330で保持しておくことができる。
【0098】
一方、エンジン2が始動されたことによって加熱機構40が停止されると、バルブ制御部352は、温度センサT5によって計測される冷媒貯留部330内の冷却水の温度が外気温を上回る場合、開閉弁340を開状態に制御するとともに、冷媒送出部310の駆動を開始する。そうすると、冷媒送出部310によって、冷媒貯留部330に貯留された外気温を上回る冷却水は、冷媒送出部310から吐出され、吐出流路320aを介して、エンジン2を流通する。
【0099】
これにより、冷却水によって、エンジン2を暖機することができる。つまり、浄化触媒38の暖機に要したエネルギー(熱)で、エンジン2を暖機することが可能となる。
【0100】
[第2の変形例]
図18は、第2の変形例の暖機装置400を説明する図である。
図18中、冷却流路420(
図18中、420a~420cで示す)を実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。
図18に示すように、暖機装置400は、冷媒送出部310、冷却流路420、加熱機構40、冷媒貯留部430、開閉弁340、暖機制御部450、温度センサT5が設けられる。なお、上記実施形態の冷却機構200と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0101】
吐出流路420aは、冷媒送出部310とエンジン2に接続され、冷媒送出部310から吐出された冷却水をエンジン2に導く。吐出流路420aを介してエンジン2の内部に流入した冷却水は、エンジン2の内部を流通した後、エンジン排出流路420bに排出される。エンジン排出流路420bは、冷媒貯留部430に接続される。
【0102】
第2の変形例において、加熱機構40は、浄化触媒38の外壁を囲繞する。また、冷媒貯留部430は、加熱機構40の外壁を囲繞する。冷媒貯留部430は、冷却水を保温可能に貯留する。冷媒貯留部430は、断熱構造を有する容器である。
【0103】
冷却水は、エンジン排出流路420bを介して冷媒貯留部430に流入する。また、冷媒貯留部430には、吸入流路420cが接続される。冷媒貯留部430に貯留された冷却水は、吸入流路420cを介して、冷媒送出部310に流入する。
【0104】
暖機制御部450は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積流路で構成されている。暖機制御部450には、温度センサT5が接続されており、温度センサT5から送信される信号、エンジン2の駆動状況に基づいて、冷媒送出部310、開閉弁340、および、加熱機構40を制御する。
【0105】
暖機制御部450は、制御処理を実行する場合、バルブ制御部452、加熱制御部54として機能する。
【0106】
バルブ制御部452は、エンジン2の始動前において、加熱機構40の駆動状態に基づいて、開閉弁340の開閉状態を制御するとともに、冷媒送出部310の駆動状態を制御する。
【0107】
エンジン2の始動前において、加熱機構40が駆動されている場合、バルブ制御部452は、開閉弁340を閉状態に制御するとともに、冷媒送出部310の駆動を開始しない(停止状態を維持する)。また、不図示の移動機構によって、冷媒貯留部430内に貯留された冷却水と、加熱機構40とを非接触とする。例えば、冷媒貯留部430内の冷却水と、加熱機構40との間に空隙を形成する。これにより、加熱機構40の熱(または、加熱機構40によって加熱された浄化触媒38の熱)の冷却水への移動を抑制することができる。換言すれば、加熱機構40の熱が冷却水に奪われてしまう事態を抑制することが可能となる。したがって、加熱機構40による浄化触媒38の暖機を効率よく行うことができる。
【0108】
そして、エンジン2が停止しており、かつ、上記終了タイミングであることよって加熱機構40が停止されると、移動機構(冷媒熱交換部)によって、冷媒貯留部430内に貯留された冷却水と、加熱機構40とを接触させる。これにより、加熱機構40(および浄化触媒38)と冷媒とが熱交換され、熱交換された冷媒が冷媒貯留部430に貯留される。
【0109】
このように、浄化触媒38を暖機したものの、エンジン2を始動しなかった場合に、浄化触媒38の暖機に要したエネルギーを冷媒貯留部430で保持しておくことができる。
【0110】
一方、エンジン2が始動されたことによって加熱機構40が停止されると、バルブ制御部452は、温度センサT5によって計測される冷媒貯留部430内の冷却水の温度が外気温を上回る場合、開閉弁340を開状態に制御するとともに、冷媒送出部310の駆動を開始する。そうすると、冷媒送出部310によって、冷媒貯留部430に貯留された外気温を上回る冷却水は、冷媒送出部310から吐出され、吐出流路420aを介して、エンジン2を流通する。
【0111】
これにより、冷却水によって、エンジン2を暖機することができる。つまり、浄化触媒38の暖機に要したエネルギー(熱)で、エンジン2を暖機することが可能となる。
【0112】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0113】
なお、上記実施形態および変形例において、加熱機構40が、電気ヒータで構成され、浄化触媒38と別体である場合を例に挙げた。しかし、加熱機構40は、浄化触媒38を加熱することができれば、構成に限定はない。加熱機構40は、例えば、浄化触媒38の担体自体に通電して、担体を加熱する通電機構であってもよい。
【0114】
また、上記実施形態および変形例において、冷却流路100、320、420を流れる冷媒として冷却水を例に挙げた。しかし、冷媒の種類に限定はない。
【0115】
また、上記実施形態において、エンジン2が始動された場合に加熱制御部54によって加熱機構40が停止されると、冷媒貯留部42に貯留された冷却水が外気温を上回る場合に、冷却水がシリンダヘッド16に送出される場合を例に挙げた。つまり、暖機対象としてシリンダヘッド16を例に挙げた。しかし、暖機対象に限定はない。例えば、シリンダブロック14、EGRクーラー30、または、変速機32を暖機対象としてもよい。
【0116】
また、上記実施形態において、温度センサT6を備える場合、つまり、浄化触媒38の温度を直接計測する構成を例に挙げた。しかし、中央制御部50は、排気管を流れる排気ガスの温度に基づいて、浄化触媒38の温度を推定してもよい。また、中央制御部50は、エンジン負荷に基づいて、浄化触媒38の温度を推定してもよい。
【0117】
また、上記実施形態および変形例において、エンジン2としてガソリンエンジンを例に挙げて説明した。エンジン2は、ディーゼルエンジンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、暖機装置に利用できる。
【符号の説明】
【0119】
10 ウォーターポンプ(冷媒送出部、冷媒熱交換部)
40 加熱機構
42、330、430 冷媒貯留部
54 加熱制御部
200 冷却機構(暖機装置)
300、400 暖機装置
310 冷媒送出部