(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】天井構造及び固定補強部材
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
E04B9/18 J
E04B9/18 F
(21)【出願番号】P 2019064457
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397028360
【氏名又は名称】関包スチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
(72)【発明者】
【氏名】沙拉依丁 沙吾提
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】細川 俊治
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸則
(72)【発明者】
【氏名】本田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 克典
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-217044(JP,A)
【文献】特開2017-206884(JP,A)
【文献】特開2015-071944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井材を支持する野縁と、
前記野縁を支持する野縁受け部材と、
前記建物の躯体と前記野縁受け部材との間に架設されると共に、前記野縁受け部材側の端部が前記野縁受け部材に固定された一対のブレースと、
前記一対のブレースの前記野縁受け部材側の端部の側方に設けられ、前記野縁受け部材と前記天井材とにそれぞれ固定される固定補強部材と、
を具備する天井構造であって、
前記固定補強部材は、
前記野縁受け部材と固定される野縁受け部材側固定部と、
前記天井材に固定される天井材側固定部と、
を具備し、
前記野縁受け部材側固定部は、
前記野縁受け部材の長手方向に対して水平方向に直交する一方向の位置において、前記天井材側固定部の内側に設けられ
、
前記固定補強部材は、
前記野縁受け部材側固定部が設けられる上側部材と、
前記天井材側固定部が設けられる下側部材と、
前記上側部材を前記一方向の位置において前記下側部材の内側に設けるように、前記上側部材の前記一方向における一側端部と前記下側部材の前記一方向における一側端部とを接続する接続部と、
を具備する、
ことを特徴とする天井構造。
【請求項2】
前記接続部は、
鉛直方向に対して傾斜する第一接続部を含む、
ことを特徴とする請求項1
に記載の天井構造。
【請求項3】
前記接続部は、
前記第一接続部よりも上部において鉛直方向に延びる第二接続部を含む、
ことを特徴とする
請求項2に記載の天井構造。
【請求項4】
前記野縁受け部材側固定部は、
前記一方向の位置において、前記天井材側固定部の内側の中央と同一の位置に設けられる、
ことを特徴とする
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の天井構造。
【請求項5】
野縁を支持する野縁受け部材と、前記野縁に支持される建物の天井材と、にそれぞれ固定されるための固定補強部材であって、
前記固定補強部材は、
前記野縁受け部材と固定されるための野縁受け部材側固定部と、
前記天井材に固定されるための天井材側固定部と、
を具備し、
前記野縁受け部材側固定部は、
前記野縁受け部材の長手方向に対して水平方向に直交する一方向の位置において、前記天井材側固定部の内側に設けられ、
前記固定補強部材は、
前記野縁受け部材側固定部が設けられる上側部材と、
前記天井材側固定部が設けられる下側部材と、
前記上側部材を前記一方向の位置において前記下側部材の内側に設けるように、前記上側部材の前記一方向における一側端部と前記下側部材の前記一方向における一側端部とを接続する接続部と、
を具備する、
ことを特徴とする固定補強部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井構造及び固定補強部材の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレースを具備する天井構造の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、天井材を支持する野縁と、前記野縁を支持する野縁受けと、前記野縁及び前記野縁受けに固定されるブレースと、が記載されている。ブレースは、野縁と野縁受けとが交差した領域に、ブレース下部取付具を介して取り付けられる。
【0004】
このような構成により、野縁受け及び野縁とブレースとが強固に固定されるため、地震発生時における揺動応力(水平応力)を、野縁受け及び野縁からブレースへ直接的に伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、地震発生時にはブレース下部取付具の周囲(ブレースの下端部の周囲)に応力が集中し易いため、この周囲に位置する野縁受け及び野縁の部分が変形や損傷(以下では単に「変形」と称する)する可能性がある。このように野縁受け及び野縁が変形した場合には、天井材が脱落する可能性がある。
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、天井材が脱落するのを抑制することができる天井構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、建物の天井材を支持する野縁と、前記野縁を支持する野縁受け部材と、前記建物の躯体と前記野縁受け部材との間に架設されると共に、前記野縁受け部材側の端部が前記野縁受け部材に固定された一対のブレースと、前記一対のブレースの前記野縁受け部材側の端部の側方に設けられ、前記野縁受け部材と前記天井材とにそれぞれ固定される固定補強部材と、を具備する天井構造であって、前記固定補強部材は、前記野縁受け部材と固定される野縁受け部材側固定部と、前記天井材に固定される天井材側固定部と、を具備し、前記野縁受け部材側固定部は、前記野縁受け部材の長手方向に対して水平方向に直交する一方向の位置において、前記天井材側固定部の内側に設けられ、前記固定補強部材は、前記野縁受け部材側固定部が設けられる上側部材と、前記天井材側固定部が設けられる下側部材と、前記上側部材を前記一方向の位置において前記下側部材の内側に設けるように、前記上側部材の前記一方向における一側端部と前記下側部材の前記一方向における一側端部とを接続する接続部と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記接続部は、鉛直方向に対して傾斜する第一接続部を含むものである。
【0011】
請求項3においては、前記接続部は、前記第一接続部よりも上部において鉛直方向に延びる第二接続部を含むものである。
【0012】
請求項4においては、前記野縁受け部材側固定部は、前記一方向の位置において、前記天井材側固定部の内側の中央と同一の位置に設けられるものである。
【0013】
請求項5においては、野縁を支持する野縁受け部材と、前記野縁に支持される建物の天井材と、にそれぞれ固定されるための固定補強部材であって、前記固定補強部材は、前記野縁受け部材と固定されるための野縁受け部材側固定部と、前記天井材に固定されるための天井材側固定部と、を具備し、前記野縁受け部材側固定部は、前記野縁受け部材の長手方向に対して水平方向に直交する一方向の位置において、前記天井材側固定部の内側に設けられ、前記固定補強部材は、前記野縁受け部材側固定部が設けられる上側部材と、前記天井材側固定部が設けられる下側部材と、前記上側部材を前記一方向の位置において前記下側部材の内側に設けるように、前記上側部材の前記一方向における一側端部と前記下側部材の前記一方向における一側端部とを接続する接続部と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
本発明においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る天井構造を示した概略斜視図。
【
図2】(a)第一補強金具の斜視図。(b)同じく、正面図。(c)同じく、右側面図。(d)同じく、A-A矢視断面図。
【
図3】(a)第二補強金具の斜視図。(b)同じく、正面図。(c)同じく、右側面図。
【
図4】第一補強金具及び第二補強金具の取り付け態様を示した斜視図。
【
図8】第二補強金具とビスとの位置関係を示した平面断面模式図。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る天井構造を示した概略斜視図。
【
図10】本発明の第三実施形態に係る天井構造を示した正面断面図。
【
図11】(a)本発明の第二実施形態に係る第二補強金具の右側面図。(b)本発明の第三実施形態に係る第二補強金具の右側面図。(c)本発明の第四実施形態に係る第二補強金具の右側面図。
【
図12】第二実施形態に係る第二補強金具を用いた天井構造における端面図。
【
図13】第三実施形態に係る第二補強金具を用いた天井構造における端面図。
【
図14】第四実施形態に係る第二補強金具を用いた天井構造における端面図。
【
図15】(a)本発明に係る第二補強金具とは異なる金具とビスとの位置関係を示した平面断面模式図。(b)
図15(a)に示す金具が変形した状態を示す平面断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明においては、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0026】
以下では、
図1を用いて、一実施形態に係る天井構造1について説明する。
【0027】
天井構造1は、鉄骨造の建物Hにおける天井の構造である。なお、
図1においては、便宜上、建物Hにおける天井の構造全体のうち一部が示されている。以下では、
図1に示された天井構造1、すなわち天井の構造全体のうち一部について説明するものとする。天井構造1は、吊りボルト10、ハンガー20、野縁受け30、野縁40、天井面材50、ブレース60、第一補強金具70及び第二補強金具80を具備する。
【0028】
吊りボルト10は、建物Hの躯体Aから吊り下げられるものである。吊りボルト10は、躯体Aに設けられたインサート(不図示)に取り付けられている。吊りボルト10は、複数設けられる。
図1においては、3本の吊りボルト10が示されている。
【0029】
ハンガー20は、後述する野縁受け30を支持するものである。ハンガー20は、各吊りボルト10の下端部に取り付けられる。
【0030】
野縁受け30は、後述する野縁40を支持するものである。野縁受け30は、長尺状に形成され、長手方向を左右方向に向けて配置される。野縁受け30は、ハンガー20に支持される。こうして、野縁受け30は、ハンガー20及び吊りボルト10を介して建物Hの躯体Aから吊設される。野縁受け30は、複数設けられる。
図1においては、3本の野縁受け30が示されている。
【0031】
野縁40は、後述する天井面材50を支持するのものである。野縁40は、長尺状に形成され、長手方向を前後方向に向けて配置される。野縁40は、クリップ部材41を用いて野縁受け30に支持される。野縁40は、複数設けられる。
図1においては、4本の野縁40が示されている。
【0032】
天井面材50は、天井面を構成するものである。天井面材50は、例えば板状の石膏ボードにより形成される。天井面材50は、板面を上下方向に向けて配置される。天井面材50は、野縁40の下側面にビス86を用いて固定される(
図4参照)。
【0033】
ブレース60は、建物Hの躯体Aと野縁受け30との間に架設されるものである。ブレース60は、長尺状に形成され、長手方向を鉛直方向に対して傾斜した姿勢で配置される。ブレース60の上端部は、建物Hの躯体Aに固定される。ブレース60の下端部は、ビスBにより野縁受け30に固定される(
図6参照)。ブレース60は、長手方向断面視で略C字状に形成される。本実施形態において、ブレース60は、前側が開放し、後側が閉鎖面となるように配置される。
図1においては、左右に並設される一対のブレース60が示されている。
【0034】
一対のブレース60は、左右方向に対称形状に形成される。より詳細には、一対のブレース60のうち、左側に配置されるブレース60(以下では「左側ブレース60L」と称する場合がある)は、上側が左方に位置し、下側が右方に位置するように配置される。また、一対のブレース60のうち、右側に配置されるブレース60(以下では「右側ブレース60R」と称する場合がある)は、上側が右方に位置し、下側が左方に位置するように配置される。左側ブレース60L及び右側ブレース60Rは、正面視で吊りボルト10を中心とした対称形状に形成される。左側ブレース60L及び右側ブレース60Rは、それぞれ下端部側へ行くに従って互いに近接するように配置される。
【0035】
以下では、
図1及び
図2を用いて、第一補強金具70の構成について詳細に説明する。
【0036】
図1に示すように、第一補強金具70は、左側ブレース60L及び右側ブレース60Rそれぞれに固定されると共に当該左側ブレース60L及び右側ブレース60Rの間を亘るように設けられるものである。第一補強金具70は、金属製の部材である。第一補強金具70は、一枚の平板状の部材が適宜折り曲げられることにより形成される。第一補強金具70は、本体部71、上端延出部72、下端延出部73及び爪部74を具備する。
【0037】
本体部71は、第一補強金具70の主たる構造体である。本体部71は、平板状に形成される。本体部71は、長手方向を左右方向に向けて配置される。本実施形態において、本体部71の長手方向の長さは、440mmに形成される。また、本体部71は、短手方向を上下方向に向けて配置される。本実施形態において、本体部71の短手方向の長さは、100mmに形成される。また、本体部71は、板厚方向を前後方向に向けて配置される。本実施形態において、本体部71の板厚方向の長さは、2.3mmに形成される。このように、本体部71は、作業者(第一補強金具70及び第二補強金具80の取り付け作業を行う者)が片手で容易に掴める程度の大きさに形成される。
【0038】
上端延出部72は、本体部71の上端部から後方に延出された部分である。上端延出部72は、本体部71の左右端部に亘るように形成される。
【0039】
下端延出部73は、本体部71の下端部から後方に延出された部分である。下端延出部73は、本体部71の左右端部を除く部分に形成される。
【0040】
こうして、上端延出部72及び下端延出部73により、第一補強金具70の剛性が向上される。また、作業者が第一補強金具70を片手で掴む場合に、例えば親指を下端延出部73に引っ掛けると共にその他の指を上端延出部72に引っ掛けることによって、当該作業者は(上端延出部72及び下端延出部73が無い場合と比べて)第一補強金具70をしっかりと掴むことができる。
【0041】
爪部74は、本体部71の左右の下端部から概ね下方に延出された部分である。左右の爪部74は、左右方向に対称形状に形成される。爪部74は、第一部分75及び第二部分76を具備する。
【0042】
第一部分75は、爪部74の第二部分76と本体部71とを接続する部分である。第一部分75は、正面視で略四角形の平板状に形成される。第一部分75は、本体部71の下端部の一部分が前下方に折り曲げられることにより形成される。すなわち、第一部分75の上端部は、本体部71と連結される。第一部分75は、下方へ行くに従って前後方向位置において本体部71から離間するような傾斜状に形成される。
【0043】
第二部分76は、爪部74の第一部分75から下方へ延出される部分である。第二部分76は、正面視で略四角形の平板状に形成される。第二部分76は、板面を前後方向へ向けて設けられる。第二部分76の上端部は、第一部分75の下端部と連結される。第二部分76の後側面は、前後方向位置において本体部71の前側面と略同一となるように形成される。第二部分76には、前後方向に貫通するビス孔79が形成される。
【0044】
以下では、
図1及び
図3を用いて、第二補強金具80の構成について詳細に説明する。
【0045】
第二補強金具80は、後述するように、野縁受け30及び天井面材50にそれぞれ固定されるものである。第二補強金具80は、概ね長手状に形成される。本実施形態において、第二補強金具80の長手方向(左右方向)の長さは、220mmに形成される。第二補強金具80は、板厚が1.2mmである一枚の金属製の板状部材が、適宜折り曲げられることにより形成される。第二補強金具80は、側面視で前方へ向けて開放された略箱状に形成される。第二補強金具80は、上端延出部81、垂れ部82、接続部83及び下端延出部84を具備する。
【0046】
上端延出部81は、第二補強金具80の上側面を構成する部分である。上端延出部81は、第二補強金具80の上端部で水平方向に延出するように設けられる。上端延出部81は、板面を上下方向へ向けて配置される。上端延出部81は、平面視で左右方向に細長い略矩形状に形成される。
【0047】
垂れ部82は、上端延出部81の前端部から垂れるように設けられた部分である。垂れ部82は、板面を前後方向へ向けて配置される。垂れ部82は、正面視で左右方向に細長い略矩形状に形成される。垂れ部82の上端部は、上端延出部81の前端部と接続される。垂れ部82には、前後方向に貫通するビス孔82aが形成される。ビス孔82aは、左右方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態においては、3つ)形成される。
【0048】
接続部83は、第二補強金具80の後側面を構成する部分である。接続部83は、上端延出部81と後述する下端延出部84とを接続する。接続部83は、板面を後上方及び前下方へ向けて配置される。すなわち、接続部83は、側面視で、下端部から前上方へ直線状に延びるように形成される。こうして、接続部83の全体は、下端部から鉛直方向に対して前方へ傾斜した姿勢に形成される。接続部83の上端部は、上端延出部81の後端部に接続される。
【0049】
下端延出部84は、第二補強金具80の下側面を構成する部分である。下端延出部84は、第二補強金具80の下端部で水平方向に延出するように設けられる。下端延出部84は、板面を上下方向へ向けて配置され、上端延出部81と互いに平行となる。下端延出部84は、平面視で左右方向に細長い略矩形状に形成される。下端延出部84の後端部は、接続部83の下端部に接続される。下端延出部84の前端部は、上方へ折り曲げられたリブ状に形成される。
【0050】
下端延出部84の短手方向(前後方向)の長さは、上端延出部81の短手方向(前後方向)の長さよりも長く形成される。本実施形態においては、下端延出部84の前後方向の長さは、50mm(上端延出部81の前後方向の長さの約3~4倍程度の長さ)に形成される。下端延出部84の後端部は、前後方向位置において上端延出部81の後端部よりも後方に位置する。また、下端延出部84の前端部は、前後方向位置において上端延出部81の前端部よりも前方に位置する。
【0051】
こうして、第二補強金具80においては、上端延出部81は、全体が鉛直方向に対して前方へ傾斜する接続部83を介することにより、前後方向位置において下端延出部84の内側に位置する。また、上端延出部81の前端部(すなわち、垂れ部82)は、前後方向位置において下端延出部84の中央と同一の位置に配置される。
【0052】
また、第二補強金具80においては、上端延出部81、垂れ部82及び接続部83の上部により、側面視で下方に開放された略コの字状の空間が形成される。当該空間には、後述するように野縁受け30の上部が挿入される。なお以下では、この空間を「挿入部85」と称する。
【0053】
上述の如き第一補強金具70及び第二補強金具80は、天井構造1において、当該天井構造1を構成する上記各種の部材(吊りボルト10、ハンガー20、野縁受け30、野縁40、天井面材50及びブレース60)のうち、天井面材50を除く他の部材が取り付けられた状態で、取り付け可能である。具体的には、上述の如く天井面材50を除く他の部材が取り付けられた状態で、まず第二補強金具80が取り付けられる。なお、本実施形態においては、
図1等に示すように、2つの第二補強金具80が取り付けられる。次に、第一補強金具70が取り付けられる。そして最後に、天井面材50が取り付けられる。
【0054】
以下では、天井構造1における第一補強金具70及び第二補強金具80の取り付け態様について説明する。
【0055】
まず、
図4から
図8を用いて、第二補強金具80の取り付け態様について説明する。
【0056】
本実施形態においては、上述の如く2つの第二補強金具80が取り付けられる。2つの第二補強金具80の取り付け態様は、左右方向に対称であることを除いて略同様である。そこで以下では、主として右側の第二補強金具80に着目して説明を行うものとし、左側の第二補強金具80については適宜説明を省略する。
【0057】
第二補強金具80は、野縁受け30に上方から引っ掛けられる。より詳細には、
図7に示すように、第二補強金具80の挿入部85に野縁受け30の上端部が挿入されると共に、当該第二補強金具80の上端延出部81が野縁受け30の上端部に載置される。また、第二補強金具80の垂れ部82(挿入部85の前側面)は、野縁受け30の前側面と接触する。垂れ部82のビス孔82aには、ビス87がねじ込まれる。なお、3つのビス孔82aのうち最も左側のビス孔82aには、第一補強金具70のビス孔79を介してビス87がねじ込まれる。こうして、第二補強金具80は、垂れ部82(挿入部85の一部)がビス87により野縁受け30と固定される。
【0058】
こうして、第二補強金具80は、横方向に挿通された固定手段(ビス87)により野縁受け30と固定されるため、例えば地震発生時において、例えば一対のブレース60のうち一方のブレース60に長手方向一方への力が作用し、他方のブレース60に長手方向他方への力が作用した場合等、野縁受け30に対して、大きなせん断力が作用した場合であっても、野縁受け30の変形が抑制され、当該野縁受け30、第二補強金具80と天井面材50との間の応力伝達をより確実に行うことができる。
【0059】
なお、作業者が第二補強金具80を野縁受け30に固定する作業を行う場合、ビス87により固定する前であっても、第二補強金具80を野縁受け30に引っ掛けて留めておく(仮止めする)ことができる。こうして、第二補強金具80の取り付け作業(より詳細には、ビス止め作業)を行う場合の施工性を向上させることができる。
【0060】
また、
図6に示すように、第二補強金具80の下端延出部84の下面は、野縁40の下面と同一水平面上に位置する。第二補強金具80の下端延出部84は、野縁40に支持された天井面材50に固定される。具体的には、第二補強金具80の下端延出部84は、天井面材50と略隙間無く重ね合わされた状態で、天井面材50の下方から上方へねじ込まれた複数のビス86により当該天井面材50と固定される。こうして、第二補強金具80は、野縁受け30と天井面材50とにそれぞれ固定される。
【0061】
本実施形態において、ビス86は、
図8に示すように、前後及び左右方向に互いに間隔をあけて15つねじ込まれる。ここで、
図8は、第二補強金具80とビス(ビス87及びビス86)との位置関係を示した平面断面模式図である。なお、
図8においては、便宜上、説明に不要な部材や部分(例えば、接続部83等)の図示を省略している。ビス86は、左右方向に並ぶ列が3列、前後方向に並ぶ列が5列並ぶように配置される。なお以下では、左右方向に並ぶ列のビス86のうち、最も前側に配置されるものを「前側ビス86a」、中央に配置されるものを「中央ビス86b」、最も後側に配置されるものを「後側ビス86c」と、それぞれ称する。
【0062】
中央ビス86bは、野縁受け30にねじ込まれたビス87と、前後方向において略同一の位置に配置される。また、前側ビス86a及び後側ビス86cは、前後方向において、ビス87がねじ込まれた垂れ部82を基準として一方側と他方側とに配置され、平面視で当該ビス87を挟み込むように(垂れ部82を基準として前後方向に対称となる位置に)配置される。このように、ビス87は、前後方向位置において、複数のビス86(前側ビス86a及び後側ビス86c)の内側に設けられる。前側ビス86a及び後側ビス86cは、ビス87に対して、前後方向位置において、比較的近接した位置(より詳細には、前後方向に隣り合うビス86の間の距離の分だけ離れた位置)に配置される。
【0063】
上述の如き第二補強金具80の構成により、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合に、第二補強金具80が変形するのを効果的に抑制することができる。以下では、
図15を用いて、上述の如き変形について具体的に説明する。なお、
図15(a)は、第二補強金具80とは異なる金具(以下では「補強金具900」と称する)とビスとの位置関係を示している。なお、説明の便宜上、補強金具900は、第二補強金具80と対応する構成を有するものとし、対応する構成については互いに同一の名称とする。補強金具900においては、第二補強金具80と大きく異なる点は、ビス987(垂れ部982と野縁受け30とを固定するビス)が、平面視で下端延出部984の前方に位置する点である。
【0064】
上述の如く、補強金具900においては、垂れ部982と野縁受け30とを固定するビス987が、平面視で下端延出部984の前方に配置される。こうして、補強金具900においては、下端延出部984と天井面材50とを固定するための複数のビス986のうち、後側ビス986c(左右方向に並ぶ3列のうち、最も後側の列のビス)が、ビス987に対して、前後方向位置において比較的離間した位置(より詳細には、前後方向に隣り合うビス986の間の距離三つ分だけ離れた位置)に配置される。また、補強金具900においては、第二補強金具80とは異なり、全てのビス986が、平面視で、ビス987を基準として一方側(後側)に位置する。
【0065】
こうして、後側ビス986cがビス987に対して前後方向位置において比較的離間した位置に配置されるため、及び、平面視で全てのビス986がビス987を基準として一方側(後側)に配置されるため、
図15(a)の黒矢印に示すように、地震発生時に、例えば天井面材50が野縁受け30に対して相対的に左方へ揺れようとした場合、補強金具900に対して、ビス987近傍の部分を支点として平面視で反時計回り方向へ比較的強い力が加えられる。これにより、
図15(b)に示すように、補強金具900は、ビス987の近傍の部分が、加えられた力に抗えず、概ね当該ビス987の位置を中心として平面視で反時計回り方向へ捻られるように変形する。
【0066】
これに対して、本発明に係る第二補強金具80においては、上述の如く、ビス86がビス87に対して前後方向位置において比較的近接した位置に配置されるため、及び、前側ビス86a及び後側ビス86cが前後方向においてビス87を挟み込むように配置されている。こうして、地震発生時に例えば天井面材50が野縁受け30に対して相対的に左方へ揺れようとした場合であっても、ビス87の近傍部分を支点として平面視で反時計回り方向へ比較的強い力が加えられるのを抑制することができる。これにより、第二補強金具80は、ビス87近傍の部分が、加えられた力(捻られるような力)に抗うことができ、ひいては平面視で捻られるように変形するのを抑制することができる。
【0067】
また、第二補強金具80は、一対のブレース60にそれぞれ対応するように設けられる。より詳細には、一対のブレース60のうち、左側ブレース60Lに対応するように、左側の第二補強金具80が設けられる。また、右側ブレース60Rに対応するように、右側の第二補強金具80が設けられる。
【0068】
(右側の)第二補強金具80は、右側ブレース60Rの下端部の右側方に、比較的小さな隙間(例えば、クリップ部材41や野縁40が配置される程度の隙間)をあけて設けられる。すなわち、第二補強金具80の左側端部は、右側ブレース60Rの下端部の近傍に設けられる。
【0069】
上述の如き第二補強金具80の構成により、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合、当該天井面材50に生じる水平力を第二補強金具80によって効果的に野縁受け30に伝達し、ひいては一対のブレース60に効果的に伝達することができる。こうして、天井構造1においては、当該天井構造1を構成する上記各種の部材を一体的に変位させることができ、例えば建物Hの壁部等に衝突するのを抑制し、当該衝突により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0070】
また、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、野縁受け30及び第二補強金具80(より詳細には、下端延出部84)を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0071】
次に、
図4から
図7を用いて、第一補強金具70の取り付け態様について説明する。
【0072】
本実施形態においては、第一補強金具70の右側半分と左側半分とにおける取り付け態様は、左右方向に対称であることを除いて略同様である。そこで以下では、第一補強金具70の右側半分について着目して説明を行うものとし、左側半分については適宜説明を省略する。
【0073】
第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80の上方に設けられる。第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80に載置される。より詳細には、第一補強金具70は、クリップ部材41及び第二補強金具80に対して下端延出部73が直接的に載置される。また、第一補強金具70は、野縁受け30に対して、クリップ部材41及び第二補強金具80を介して下端延出部73が間接的に載置される。このように、第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80に対して、直接的又は間接的に上方から接触するように設けられる。
【0074】
また、第一補強金具70は、爪部74が野縁受け30に対して側方から当接するように設けられる。より詳細には、爪部74のうち、第二部分76の後側面が、第二補強金具80の垂れ部82の前側面に前側方から当接される。なお、第二補強金具80の垂れ部82は、野縁受け30と当接される。したがって、第一補強金具70の爪部74は、第二補強金具80の垂れ部82を介して野縁受け30と当接される。
【0075】
また、第一補強金具70は、ビス孔79(
図2参照)に挿通されたビス87により第二補強金具80及び野縁受け30と固定される。なお、第一補強金具70のビス孔79は、第二補強金具80の左端のビス孔82aと前後方向に重複するように設けられる。こうして、第一補強金具70と第二補強金具80とが、前後方向に重複するように設けられたビス孔(ビス孔79及びビス孔82a)を介して共締めされる。
【0076】
また、第一補強金具70は、右側ブレース60Rと当接するように設けられる。より詳細には、第一補強金具70の本体部71の前側面が、右側ブレース60Rの後側面(閉鎖面)と当接される。ここで、右側ブレース60Rの下端部(ビスBにより野縁受け30に固定された部分)は、第一補強金具70の右側半分のうち左部の下方(換言すれば、第一補強金具70全体のうち、左右方向中央から若干右よりの下方)に設けられる。そのため、右側ブレース60Rは、正面視で第一補強金具70の右側半分を斜めに横断するように、当該第一補強金具70と当接される。
【0077】
また、第一補強金具70は、ビスSにより右側ブレース60Rと固定される。当該ビスSは、第一補強金具70の上部及び下部それぞれに設けられる。こうして、右側ブレース60Rは、ビスBにより直接的に野縁受け30に固定されるだけでなく、第一補強金具70及び第二補強金具80を介して間接的に野縁受け30に固定される。すなわち、右側ブレース60Rは、野縁受け30に支持された野縁40を介して天井面材50を支持するだけでなく、第一補強金具70及び第二補強金具80(より詳細には、下端延出部84)を介して天井面材50を支持することができる。換言すれば、右側ブレース60Rは、下端部に比較的近い場所だけでなく、比較的離れた場所において天井面材50を支持することができる。
【0078】
上述の如き第一補強金具70の構成により、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合、当該天井面材50に生じる水平力を第一補強金具70によって野縁受け30から効果的に一対のブレース60に伝達することができる。こうして、天井構造1においては、当該天井構造1を構成する上記各種の部材を一体的に変位させることができ、例えば建物Hの壁部等に衝突するのを抑制し、当該衝突により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0079】
また、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、第一補強金具70、野縁受け30及び第二補強金具80(より詳細には、下端延出部84)を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0080】
以上のように、一実施形態に係る天井構造1においては、
建物Hの天井面材50を支持する野縁40と、
前記野縁40を支持する野縁受け30と、
前記建物Hの躯体Aと前記野縁受け30との間に架設されると共に、前記野縁受け30側の端部が前記野縁受け30に固定された一対のブレース60・60と、
前記一対のブレース60・60の前記野縁受け30側の端部の側方に設けられ、前記野縁受け30と前記天井面材50とにそれぞれ固定される第二補強金具80(固定補強部材)と、
を具備する天井構造であって、
前記第二補強金具80(固定補強部材)は、
前記野縁受け30と固定されるビス87と、
前記天井面材50に固定されるビス86と、
を具備し、
前記ビス87は、
前後方向位置(前記野縁受け30の長手方向に対して水平方向に直交する一方向の位置)において、前記ビス86(前側ビス86a・後側ビス86c)の内側に設けられるものである。
【0081】
このような構成により、天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
具体的には、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、野縁受け30及び第二補強金具80を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0082】
また、ビス87が前後方向位置(野縁40の長手方向に対して水平方向に直交する一方向の位置)において、前記ビス86(前側ビス86a・後側ビス86c)の内側に設けられるため、平面視でビス87の近傍部分を支点として回転する方向へ比較的強い力が加えられるのを抑制することができる。これにより、第二補強金具80は、ビス87近傍の部分が、加えられた力(捻られるような力)に抗うことができ、ひいては平面視で捻られるように変形するのを抑制することができる。
【0083】
また、天井構造1において、
前記ビス87は、
前記前後方向位置(一方向の位置)において、前記ビス86(前側ビス86a・後側ビス86c)の内側の中央と同一の位置に設けられるものである。
【0084】
このような構成により、平面視で、ビス87の近傍部分を支点として回転する方向へ比較的強い力が加えられるのを、より効果的に抑制することができる。これにより、第二補強金具80は、ビス87近傍の部分が、加えられた力(捻られるような力)に抗うことができ、ひいては平面視で捻られるように変形するのを効果的に抑制することができる。
【0085】
また、天井構造1においては、
前記第二補強金具80(固定補強部材)は、
前記ビス87が設けられる上端延出部81・垂れ部82(上側部材)と、
前記ビス86が設けられる下端延出部84(下側部材)と、
前記上端延出部81・垂れ部82(上側部材)の後端部(前記一方向における一側端部)と前記下端延出部84(下側部材)の後端部(前記一方向における一側端部)とを接続する接続部83と、
を具備し、
前記接続部83は、
鉛直方向に対して傾斜し、前記上端延出部81・垂れ部82(上側部材)を前記前後方向位置(一方向の位置)において前記下端延出部84(下側部材)の内側に設けるものである。
【0086】
このような構成により、第二補強金具80を、例えば一枚の金属製の板状部材を適宜折り曲げることにより形成することができる。すなわち、上端延出部81・垂れ部82(上側部材)を前後方向位置において下端延出部84(下側部材)の内側に設けるために、溶接等の複数の部材を接合するための加工を必要としない。こうして、簡易な構成で製造することができるため、製造コストを削減でき、第二補強金具80を比較的安価に提供することができる。
【0087】
また、一実施形態に係る第二補強金具80においては、
野縁40を支持する野縁受け30と、前記野縁40に支持される建物Hの天井面材50と、にそれぞれ固定されるための第二補強金具80(固定補強部材)であって、
前記第二補強金具80(固定補強部材)は、
前記野縁受け30と固定されるための上端延出部81・垂れ部82(野縁受け部材側固定部)と、
前記天井面材50に固定されるための下端延出部84(天井材側固定部)と、
を具備し、
前記上端延出部81・垂れ部82(野縁受け部材側固定部)は、
前記前後方向位置(前記野縁受け30の長手方向に対して水平方向に直交する一方向の位置)において、前記下端延出部84(天井材側固定部)の内側に設けられるものである。
【0088】
このような構成により、第二補強金具80を用いた場合には(具体的には、天井構造1において一対のブレース60・60の野縁受け30側の端部の側方に、第二補強金具80を設けた場合には)、応力の集中による各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。また、上端延出部81・垂れ部82の近傍の部分が、加えられた力(捻られるような力)に抗うことができ、ひいては平面視で捻られるように変形するのを抑制することができる。
【0089】
なお、第二補強金具80は、固定補強部材の実施の一形態である。
また、ビス87は、「野縁受け部材と固定される野縁受け部材側固定部」の実施の一形態である。
また、ビス86(前側ビス86a・後側ビス86c)は、「天井材に固定される天井材側固定部」の実施の一形態である。
また、上端延出部81・垂れ部82は、上側部材の実施の一形態である。
また、下端延出部84は、下側部材の実施の一形態である。
また、上端延出部81・垂れ部82は、「野縁受け部材と固定されるための野縁受け部材側固定部」の実施の一形態である。
また、下端延出部84は、「天井材に固定されるための天井材側固定部」の実施の一形態である。
【0090】
以上、一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0091】
例えば、本実施形態において、野縁40は、シングル野縁であるものとしたが、シングル野縁よりも横幅が大きなダブル野縁であってもよい。
【0092】
また、第一補強金具70の構成は、本実施形態に係るものに限定されない。例えば、第一補強金具70の大きさ及び形状は、適宜変更可能である。ただし、作業者が第一補強金具70を片手で掴める程度大きさ(例えば、上下方向の長さが、110mm以下)であることが望ましい。また、第一補強金具70は、一枚の平板状の部材が適宜折り曲げられることにより形成されるとしたが、例えば爪部74を溶接により本体部71と連結させるものとしてもよい。また、爪部74は、第二補強金具80に側方から当接されるものとしたが、上方、又は、上方及び側方から当接されるものとしてもよい。
【0093】
また、第一補強金具70は、例えば地震発生時において、一対のブレース60のうち一方のブレース60に長手方向一方への力が作用し、他方のブレース60に長手方向他方への力が作用した場合、所定の大きさ以上の力が作用すると、適宜変形するようなものであってもよい。これにより、地震の衝撃を柔軟に吸収することができる。
【0094】
また、第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80に対して、直接的又は間接的に上方から接触するように設けられるものとしたが、離間するものであってもよい。ただし、離間するように設けられる場合であっても、第一補強金具70は、野縁受け30、クリップ部材41及び第二補強金具80に対して、近傍(略接するよう)に設けられることが望ましい。
【0095】
第二補強金具80は、一対のブレース60にそれぞれ対応するように2つ設けられるものとしたが、2つの第二補強金具80が一体的に形成されるもの(すなわち、1つの第二補強金具80が、一対のブレース60にそれぞれ対応するように設けられるもの)としてもよい。
【0096】
また、第一補強金具70及び第二補強金具80は、ビス87を用いて取り付けられる(固定される)ものとしたが、適宜の固定手段を用いることができる。
【0097】
また、ビス86は、左右方向に並ぶ列が3列、前後方向に並ぶ列が5列並ぶように配置されるものとしたが、これに限定されるものではない。
【0098】
以下では、
図9を用いて、第二実施形態に係る天井構造101について説明する。
【0099】
第二実施形態に係る天井構造101においては、第一実施形態に係る天井構造1において、野縁受け30にブレース60、第一補強金具70及び第二補強金具80が取り付けられていたのに対し、野縁受け継ぎ部材130に、第一補強金具70及び第二補強金具80が取り付けられる点で、当該第一実施形態と異なる。
【0100】
野縁受け継ぎ部材130は、長尺状の部材である。野縁受け継ぎ部材130は、複数(本実施形態においては、3本)の野縁受け30の上方で、当該野縁受け30の長手方向に対して直交する方向へ長手方向を向けて配置される。野縁受け継ぎ部材130は、3本の野縁受け30に亘るように設けられると共に、これらの野縁受け30と固定される。
【0101】
第一補強金具70及び第二補強金具80は、第一実施形態に係る天井構造1の野縁受け30に対する取り付け態様と同様の態様で取り付けられる。
【0102】
なお、野縁受け継ぎ部材130は、野縁受け部材の実施の一形態である。
【0103】
以下では、
図10を用いて、第三実施形態に係る天井構造102について説明する。
【0104】
第三実施形態に係る天井構造102においては、第一補強金具70が設けられない点で第一実施形態に係る天井構造1と異なる。
【0105】
この場合、一対のブレース60は、第一実施形態に係る天井構造1とは異なり第一補強金具70を介して第二補強金具80と接続されない。しかし、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合、当該天井面材50に生じる水平力を第二補強金具80によって効果的に野縁受け30に伝達し、ひいては一対のブレース60に効果的に伝達することができる。
【0106】
また、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、野縁受け30及び第二補強金具80(より詳細には、下端延出部84)を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0107】
また、第二補強金具80の構成は、本実施形態に係るものに限定されない。例えば、第二補強金具80の大きさ及び形状は、適宜変更可能である。また、第二補強金具80は、一枚の平板状の部材が適宜折り曲げられることにより形成されるものとしたが、これに限らない。また、上端延出部81の後端部に、下方に折り曲げられたリブ状の部分を形成しなくてもよい。また、垂れ部82はその一部又は全部が、当初、上端延出部81と同様に板面を上下方向へ向けて形成されており、第二補強金具80の取り付け作業を行う場合に、作業者により折り曲げられるものであってもよい。以下では、
図11から
図14を用いて、第二補強金具80の別実施形態について説明する。
【0108】
まず、
図11(a)及び
図12を用いて、第二実施形態に係る第二補強金具180、及び、当該第二補強金具180を用いた天井構造1について説明する。
【0109】
第二実施形態に係る第二補強金具180において、第一実施形態に係る第二補強金具80と異なる構成は、接続部83の代わりに接続部183を有する点である。なお以下では、第二補強金具180の第二補強金具80と異なる構成に着目し、同一の構成については同一の符号を付することにより説明を省略する。
【0110】
図11(a)に示すように、接続部183は、傾斜部111と、鉛直部112と、を有する。
【0111】
傾斜部111は、接続部183の下側を構成する部分である。接続部183は、板面を後上方及び前下方へ向けて配置される。接続部183は、側面視で、下端延出部84の後端部から前上方へ直線状に延びるように形成される。こうして、接続部183は、当該接続部183の全体が鉛直方向に対して前方へ傾斜した姿勢に形成される。
【0112】
鉛直部112は、接続部183の上側を構成する部分である。鉛直部112は、板面を前後方向へ向けて配置される。鉛直部112は、側面視で、傾斜部111の上端部から上方へ直線状に延びるように形成される。鉛直部112の上端部は、上端延出部81の後端部に接続される。
【0113】
このように、第二補強金具180においては、上端延出部81、垂れ部82及び接続部183の鉛直部112により、側面視で下方に開放された略コの字状の空間が形成される。なお以下では、この空間を「挿入部185」と称する。挿入部185においては、前側の壁部(垂れ部82)及び後側の壁部(接続部183の鉛直部112)が互いに平行となる。
【0114】
こうして、
図12に示すように、第二補強金具180の挿入部185に野縁受け30の上端部が挿入された場合、当該挿入部185の全ての内面(垂れ部82の後面、上端延出部81の下面及び鉛直部112の前面)を、野縁受け30と略隙間無く密着させることができる。こうして、第二補強金具180と野縁受け30との隙間に基づくガタつきの発生を抑制することができ、ひいてはガタつきに応じて第二補強金具180が変形するのを抑制することができる。
【0115】
以上のように、第二補強金具180を用いた天井構造1において、
前記接続部183は、
上部において鉛直方向に延びる鉛直部112を有するものである。
【0116】
このような構成により、第二補強金具180と野縁受け30との隙間に基づくガタつきの発生を抑制することができ、ひいてはガタつきに応じて第二補強金具180が変形するのを抑制することができる。
【0117】
次に、
図11(b)及び
図13を用いて、第三実施形態に係る第二補強金具280、及び、当該第二補強金具280を用いた天井構造1について説明する。
【0118】
第二実施形態に係る第二補強金具280において、第一実施形態に係る第二補強金具80と異なる構成は、接続部83の代わりに接続部283を有する点である。なお以下では、第二補強金具280の第二補強金具80と異なる構成に着目し、同一の構成については同一の符号を付することにより説明を省略する。
【0119】
図11(b)に示すように、接続部283は、水平部211と、鉛直部212と、を有する。
【0120】
水平部211は、接続部283の下端部を構成する部分である。水平部211は、板面を上下方向へ向けて配置される。水平部211は、下端延出部84と上下方向に重なり合うように設けられる。水平部211の後端部は、下端延出部84の後端部と接続される。
【0121】
鉛直部212は、接続部283のうち下端部以外の部分を構成する部分である。鉛直部212は、板面を前後方向へ向けて配置される。鉛直部212は、側面視で、水平部211の前端部から上方へ直線状に延びるように形成される。鉛直部212の上端部は、上端延出部81の後端部に接続される。
【0122】
このように、第二補強金具280においては、上端延出部81、垂れ部82及び接続部283の鉛直部212により、側面視で下方に開放された略コの字状の空間が形成される。なお以下では、この空間を「挿入部285」と称する。挿入部285においては、前側の壁部(垂れ部82)及び後側の壁部(接続部283の鉛直部212)が互いに平行となる。
【0123】
こうして、
図13に示すように、第二補強金具280の挿入部285に野縁受け30の上端部が挿入された場合、当該挿入部285の全ての内面(垂れ部82の後面、上端延出部81の下面及び鉛直部212の前面)を、野縁受け30と略隙間無く密着させることができる。また、この際、第二補強金具280においては、鉛直部212の前面を、野縁受け30の上端部の後面だけでなく、下端部の後面にも略隙間無く密着させることができる。こうして、第二補強金具280と野縁受け30との隙間に基づくガタつきの発生をより効果的に抑制することができ、ひいてはガタつきに応じて第二補強金具280が変形するのをより効果的に抑制することができる。
【0124】
また、上述の如き第二補強金具280は、接続部283が傾斜して形成されないものの(第二補強金具80と同様に)一枚の金属製の板状部材を適宜折り曲げることにより形成することができる。こうして、製造コストを削減できるため、第二補強金具280を比較的安価に提供することができる。
【0125】
以上のように、第二補強金具280を用いた天井構造1において、
前記第二補強金具280(固定補強部材)は、
前記ビス87が設けられる上端延出部81と、
前記ビス86が設けられる下端延出部84(下側部材)と、
前記上端延出部81(上側部材)の後端部(前記一方向における一側端部)と前記下端延出部84(下側部材)の後端部(前記一方向における一側端部)とを接続する接続部383と、
を具備し、
前記接続部383は、
下端部から上端部まで鉛直方向に延びるように形成されるものである。
【0126】
このような構成により、第二補強金具280と野縁受け30との隙間に基づくガタつきの発生をより効果的に抑制することができ、ひいてはガタつきに応じて第二補強金具280が変形するのをより効果的に抑制することができる。
【0127】
次に、
図11(c)及び
図14を用いて、第四実施形態に係る第二補強金具380、及び、当該第二補強金具380を用いた天井構造1について説明する。
【0128】
第四実施形態に係る第二補強金具380において、第一実施形態に係る第二補強金具80と異なる構成は、垂れ部82を有さない点、上端延出部81の代わりに上端延出部381を有する点、接続部83の代わりに接続部383を有する点、下端延出部84の代わりに下端延出部384を有する点である。なお以下では、第二補強金具380の第二補強金具80と異なる構成に着目し、同一の構成については同一の符号を付することにより説明を省略する。
【0129】
上端延出部381は、第二補強金具380の上側面を構成する部分である。上端延出部381は、板状部材が折り曲げられて形成される。上端延出部381は、板面を上下方向へ向けた2枚の板状部材が、上下方向に互いに重なり合うように形成される。こうして、上端延出部381の前端部は、上側と下側とに分かれるように形成される。
【0130】
接続部383は、板面を前後方向へ向けた2枚の板状部材が、前後方向に重なり合うように形成される。接続部383は、当該接続部383の下端部から上端部まで鉛直方向に延びるように形成される。なお以下では、2枚の板状部材のうち、後側に設けられるものを「後側接続部311」と、前側に設けられるものを「前側接続部312」とそれぞれ称する。後側接続部311及び前側接続部312は、互いに略隙間無く密着するように形成される。後側接続部311の上端部は、上端延出部381の前端部の下側に接続される。また、前側接続部312の上端部は、上端延出部381の前端部の上側に接続される。
【0131】
下端延出部384は、第二補強金具380の下側面を構成する部分である。下端延出部384は、板面を上下方向へ向けて配置される。下端延出部384は、当該下端延出部384の後側を構成する後側延出部321と、当該下端延出部384の前側を構成する前側延出部322と、を有する。後側延出部321の前端部は、後側接続部311の下端部に接続される。また、前側延出部322の後端部は、前側接続部312の下端部に接続される。こうして、下端延出部384は、前後方向の中央から、接続部383を上方へ立ち上がるように支持する。
【0132】
このように、第二補強金具380においては、接続部383が、下端延出部384の前後方向の中央から鉛直方向に延びるように形成される。こうして、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合、当該天井面材50に生じる水平力を、下端延出部384(後側延出部321及び前側延出部322)と接続部383を介して効果的に野縁受け30に伝達し、ひいては一対のブレース60に効果的に伝達することができる。こうして、天井構造1を構成する上記各種の部材を一体的に変位させることができ、例えば建物Hの壁部等に衝突するのを抑制し、当該衝突により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0133】
また、第二補強金具380の上端延出部381及び接続部383においては、それぞれ2枚の板状部材が互いに重なり合うように形成される。これにより、上述の如き天井面材50に生じる水平力を、より効果的に野縁受け30に伝達することができる。また、長期間の使用に基づく劣化等によりガタつきが発生するのを抑制することができ、ひいてはガタつきに応じて第二補強金具380が変形するのを抑制することができる。
【0134】
また、上述の如き第二補強金具380は、上端延出部381及び接続部383において2枚の板状部材が互いに重なり合うように形成されるものの、(第二補強金具80と同様に)一枚の金属製の板状部材を適宜折り曲げることにより形成することができる。こうして、製造コストを削減できるため、第二補強金具380を比較的安価に提供することができる。
【0135】
以上のように、第二補強金具380を用いた天井構造1において、
前記接続部383は、
前記接続部383の前後方向(前記一方向)における中央から、鉛直方向に延びるように形成されるものである。
【0136】
このような構成により、第二補強金具380と野縁受け30との隙間に基づくガタつきの発生をより効果的に抑制することができ、ひいてはガタつきに応じて第二補強金具380が変形するのをより効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 天井構造
30 野縁受け
40 野縁
50 天井面材
60 ブレース
80 第二補強金具
86 ビス
86a 前側ビス
86c 後側ビス
87 ビス