(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】天井構造及び固定補強部材
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
E04B9/18 J
E04B9/18 F
(21)【出願番号】P 2019064458
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397028360
【氏名又は名称】関包スチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
(72)【発明者】
【氏名】沙拉依丁 沙吾提
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】細川 俊治
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸則
(72)【発明者】
【氏名】本田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 克典
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-211216(JP,A)
【文献】特開2007-239441(JP,A)
【文献】特開2018-115460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00 - 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井材を支持する野縁と、
前記野縁を支持する野縁受け部材と、
前記建物の躯体と前記野縁受け部材との間に架設されると共に、前記野縁受け部材側の端部が前記野縁受け部材に固定された一対のブレースと、
前記一対のブレースと前記野縁受け部材と前記天井材とにそれぞれ固定される固定補強部材と、
を具備
し、
前記固定補強部材は、
前記野縁受け部材と水平方向において接触した接触部と、
前記接触部の上端部から横方向へ延びると共に前記野縁受け部材の上端面と略平行な板状に形成され、前記野縁受け部材に上方から引っ掛けられた引っ掛け部と、
を有する、
天井構造。
【請求項2】
前記固定補強部材は、
前記一対のブレースの間を亘るように配置されると共に、前記一対のブレースのそれぞれと固定される、
請求項1に記載の天井構造。
【請求項3】
前記固定補強部材は、
前記一対のブレースと前記野縁受け部材との間に配置され、互いに接触した状態で共締めされる共締め部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の天井構造。
【請求項4】
前記野縁受け部材を前記躯体に吊るための吊り部材を具備し、
固定補強部材は、
前記吊り部材に対応する位置で切り欠かれた切欠部を有する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の天井構造。
【請求項5】
建物の天井構造に用いる固定補強部材であって、
前記建物の野縁に支持された天井材に固定される第一の固定部と、
前記野縁を支持する野縁受け部材と固定される第二の固定部と、
前記建物の躯体と前記野縁受け部材との間に架設されると共に、前記野縁受け部材側の端部が前記野縁受け部材に固定された一対のブレースと固定される第三の固定部と、
を具備すると共に、
前記野縁受け部材と水平方向において接触可能な接触部と、
前記接触部の上端部から横方向へ延びると共に前記野縁受け部材の上端面と略平行な板状に形成され、前記野縁受け部材に上方から引っ掛け可能となる引っ掛け部と、
を有する、
固定補強部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井構造及び固定補強部材の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレースを具備する天井構造の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、天井材を支持する野縁と、前記野縁を支持する野縁受けと、前記野縁及び前記野縁受けに固定されるブレースと、が記載されている。ブレースは、野縁と野縁受けとが交差した領域に、ブレース下部取付具を介して取り付けられる。
【0004】
このような構成により、野縁受け及び野縁とブレースとが強固に固定されるため、地震発生時における揺動応力(水平応力)を、野縁受け及び野縁からブレースへ直接的に伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、地震発生時にはブレース下部取付具の周囲(ブレースの下端部の周囲)に応力が集中し易いため、この周囲に位置する野縁受け及び野縁の部分が変形や損傷(以下では単に「変形」と称する)する可能性がある。このように野縁受け及び野縁が変形した場合には、天井材が脱落する可能性がある。
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、天井材が脱落するのを抑制することができる天井構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、建物の天井材を支持する野縁と、前記野縁を支持する野縁受け部材と、前記建物の躯体と前記野縁受け部材との間に架設されると共に、前記野縁受け部材側の端部が前記野縁受け部材に固定された一対のブレースと、前記一対のブレースと前記野縁受け部材と前記天井材とにそれぞれ固定される固定補強部材と、を具備し、前記固定補強部材は、前記野縁受け部材と水平方向において接触した接触部と、前記接触部の上端部から横方向へ延びると共に前記野縁受け部材の上端面と略平行な板状に形成され、前記野縁受け部材に上方から引っ掛けられた引っ掛け部と、を有するものである。
【0010】
請求項2においては、前記固定補強部材は、前記一対のブレースの間を亘るように配置されると共に、前記一対のブレースのそれぞれと固定されるものである。
【0012】
請求項3においては、前記固定補強部材は、前記一対のブレースと前記野縁受け部材との間に配置され、互いに接触した状態で共締めされる共締め部を有するものである。
【0013】
請求項4においては、前記野縁受け部材を前記躯体に吊るための吊り部材を具備し、固定補強部材は、前記吊り部材に対応する位置で切り欠かれた切欠部を有するものである。
【0014】
請求項5においては、建物の天井構造に用いる固定補強部材であって、前記建物の野縁に支持された天井材に固定される第一の固定部と、前記野縁を支持する野縁受け部材と固定される第二の固定部と、前記建物の躯体と前記野縁受け部材との間に架設されると共に、前記野縁受け部材側の端部が前記野縁受け部材に固定された一対のブレースと固定される第三の固定部と、を具備すると共に、前記野縁受け部材と水平方向において接触可能な接触部と、前記接触部の上端部から横方向へ延びると共に前記野縁受け部材の上端面と略平行な板状に形成され、前記野縁受け部材に上方から引っ掛け可能となる引っ掛け部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。
【0017】
請求項2においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。
【0018】
請求項3においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。
【0019】
請求項4においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。
【0020】
請求項5においては、天井材が脱落するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る天井構造を示した概略斜視図。
【
図3】(a)補強金具の正面図。(b)同じく、右側面図。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る天井構造を示した概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明においては、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0024】
以下では、
図1を用いて、一実施形態に係る天井構造1について説明する。
【0025】
天井構造1は、鉄骨造の建物Hにおける天井の構造である。なお、
図1においては、便宜上、建物Hにおける天井の構造全体のうち一部が示されている。以下では、
図1に示された天井構造1、すなわち天井の構造全体のうち一部について説明するものとする。天井構造1は、吊りボルト10、ハンガー20、野縁受け30、野縁40、天井面材50、ブレース60及び補強金具70を具備する。
【0026】
吊りボルト10は、建物Hの躯体Aから吊り下げられるものである。吊りボルト10は、躯体Aに設けられたインサート(不図示)に取り付けられている。吊りボルト10は、複数設けられる。
図1においては、3本の吊りボルト10が示されている。
【0027】
ハンガー20は、後述する野縁受け30を支持するものである。ハンガー20は、各吊りボルト10の下端部に取り付けられる。
【0028】
野縁受け30は、後述する野縁40を支持するものである。野縁受け30は、長尺状に形成され、長手方向を左右方向に向けて配置される。野縁受け30は、ハンガー20に支持される。こうして、野縁受け30は、ハンガー20及び吊りボルト10を介して建物Hの躯体Aから吊設される。野縁受け30は、複数設けられる。
図1においては、3本の野縁受け30が示されている。
【0029】
野縁40は、後述する天井面材50を支持するのものである。野縁40は、長尺状に形成され、長手方向を前後方向に向けて配置される。野縁40は、クリップ部材41を用いて野縁受け30に支持される。野縁40は、複数設けられる。
図1においては、2本の野縁40が示されている。
【0030】
天井面材50は、天井面を構成するものである。天井面材50は、例えば板状の石膏ボードにより形成される。天井面材50は、板面を上下方向に向けて配置される。天井面材50は、野縁40の下側面にビスを用いて固定される。
【0031】
ブレース60は、建物Hの躯体Aと野縁受け30との間に架設されるものである。ブレース60は、長尺状に形成され、長手方向を鉛直方向に対して傾斜した姿勢で配置される。ブレース60の上端部は、建物Hの躯体Aに固定される。ブレース60の下端部は、ボルトBにより野縁受け30に固定される(
図4参照)。ブレース60は、長手方向断面視で略C字状に形成される。本実施形態において、ブレース60は、前側が開放し、後側が閉鎖面となるように配置される。
図1においては、左右に並設される一対のブレース60が示されている。
【0032】
一対のブレース60は、左右方向に対称形状に形成される。より詳細には、一対のブレース60のうち、左側に配置されるブレース60(以下では「左側ブレース60L」と称する場合がある)は、上側が左方に位置し、下側が右方に位置するように配置される。また、一対のブレース60のうち、右側に配置されるブレース60(以下では「右側ブレース60R」と称する場合がある)は、上側が右方に位置し、下側が左方に位置するように配置される。左側ブレース60L及び右側ブレース60Rは、正面視で吊りボルト10を中心とした対称形状に形成される。左側ブレース60L及び右側ブレース60Rは、それぞれ下端部側へ行くに従って互いに近接するように配置される。
【0033】
以下では、
図1から
図3を用いて、補強金具70の構成について詳細に説明する。
【0034】
図1から
図3に示す補強金具70は、後述するように、左側ブレース60L及び右側ブレース60Rと野縁受け30と天井面材50とにそれぞれ固定される部材である。補強金具70は、一枚の平板状の金属製部材が、適宜折り曲げられることにより形成される。補強金具70は、本体部71、引っ掛け部72、切欠部73及び延出部74を具備する。
【0035】
本体部71は、補強金具70の主たる構造体である。本体部71は、平板状に形成される。本体部71は、板面を前後方向に向けて形成される。本体部71の右上端部及び左上端部は、それぞれ正面視で略矩形状に切り欠かれたように形成される。こうして、本体部71の下部は、本体部71の上部よりも左右方向の長さが長くなるように形成される。なお以下では、本体部71の下部(左右方向の長さが上部よりも長い部分)を「本体下部76」、本体部71の上部を「本体上部75」と称する場合がある。本体下部76は、後述する切欠部73により左右に分割される。なお以下では、本体下部76のうち、右側に分割された部分を「本体右下部76R」、左側に分割された部分を「本体左下部76L」と称する場合がある。本体上部75の上端部は、後方へ折り曲げられたリブ状に形成される。
【0036】
引っ掛け部72は、野縁受け30の上端部に引っ掛けられる部分である。引っ掛け部72は、板面を上下方向へ向けて形成される。引っ掛け部72は、本体下部76の左上端部及び右上端部からそれぞれ後方へ突出するように形成される。引っ掛け部72の前端部は、本体下部76の右上端部及び左上端部にそれぞれ接続される。
【0037】
切欠部73は、本体部71が切り欠かれたように形成される部分である。切欠部73は、本体部71の左右中央部において、下方から上方へ延びるように形成される。切欠部73の上端部は、本体下部76よりも高い位置に形成される。すなわち、切欠部73は、本体下部76を上下方向に縦断するように形成される。こうして、切欠部73により、本体下部76は、左右(本体右下部76R及び本体左下部76L)に分割されている。切欠部73は、正面視で、下方が開放された略矩形状に形成される。切欠部73は、ハンガー20に対応するように形成される。具体的には、正面視において、切欠部73の大きさ(左右方向幅及び上下方向幅)は、ハンガー20よりも大きく形成される。
【0038】
延出部74は、本体部71から前方へ延出するように形成された部分である。延出部74は、平板状に形成される。延出部74は、板面を上下方向へ向けて形成される。延出部74の後端部は、本体部71(本体下部76)の下端部と接続される。延出部74は、本体下部76の本体右下部76Rと接続される右側延出部74Rと、本体左下部76Lに接続される左側延出部74Lと、により形成される。右側延出部74R及び左側延出部74Lは、左右方向に間隔をあけて形成される。右側延出部74R及び左側延出部74Lの左右方向の間隔は、切欠部73の左右方向幅と同一に形成される。
【0039】
以下では、
図4から
図7を用いて、天井構造1における補強金具70の取り付け態様について説明する。
【0040】
まず、補強金具70と野縁受け30との互いの位置関係について説明する。
【0041】
補強金具70は、野縁受け30の概ね前方に配置される。具体的には、補強金具70の本体部71(より詳細には、本体下部76)は、野縁受け30の前方で、当該野縁受け30と前後方向に対向する位置に配置される。本体下部76は、野縁受け30の前面と接触される。また、補強金具70の引っ掛け部72は、野縁受け30の上方で、当該野縁受け30と上下方向に対向する位置に配置される。引っ掛け部72は、野縁受け30の上面に上方から接触される。こうして、引っ掛け部72は、野縁受け30の上端部に引っ掛けられる。
【0042】
また、補強金具70の切欠部73は、野縁受け30を支持するハンガー20と対応する位置に設けられる。具体的には、切欠部73は、正面視で、ハンガー20が当該切欠部73の内側に設けられる位置に配置される。なお、
図4に示すように、ハンガー20は、前後方向位置において、切欠部73の前方に配置される。こうして、ハンガー20を吊り下げている吊りボルト10は、本体部71と接触しないように、当該本体部71(本体上部75)の前方に配置される。また、補強金具70の左右方には、野縁受け30に支持されるクリップ部材41が配置される。
【0043】
次に、補強金具70と一対のブレース60との互いの位置関係について説明する。
【0044】
補強金具70は、一対のブレース60の概ね後方に配置される。具体的には、補強金具70の本体部71(本体下部76)が、一対のブレース60の下端部の後方で、当該一対のブレース60の下端部と前後方向に対向する位置に配置される。なお、上述の如く、本体下部76の後方には、野縁受け30が配置される。すなわち、本体下部76は、正面視で、一対のブレース60の下端部と野縁受け30と重複するように配置される。また、本体下部76は、左右方向に延びるように形成され、正面視で一対のブレース60の間に亘るように設けられる。本体下部76は、一対のブレース60の下端部の前面と接触される。具体的には、本体下部76の本体右下部76Rは、一対のブレース60のうち右側ブレース60Rの前面と接触される。また、本体下部76の本体左下部76Lには、一対のブレース60のうち左側ブレース60Lの前面と接触される。
【0045】
また、補強金具70の本体部71のうち本体上部75が、一対のブレース60の後方で、当該一対のブレース60の下端部よりも上方の部分と前後方向に対向する位置に配置される。なお以下では、前記ブレース60の下端部よりも上方の部分(すなわち、本体上部75と上下方向位置が同一の部分)を便宜上「ブレース60の下端部近傍」と称する場合がある。本体上部75は、左右方向に延びるように形成され、正面視で一対のブレース60の間に亘るように設けられる。本体上部75は、一対のブレース60の下端部近傍の前面と接触される。
【0046】
次に、補強金具70と天井面材50との互いの位置関係について説明する。
【0047】
補強金具70は、天井面材50の上方に配置される。具体的には、補強金具70の延出部74(右側延出部74R及び左側延出部74L)が天井面材50の上方で、当該天井面材50と上下方向に対向する位置に配置される。右側延出部74R及び左側延出部74Lは、野縁40の下面と同一水平面上に位置するように配置される。こうして、右側延出部74R及び左側延出部74Lは、天井面材50の上面と接触される。
【0048】
上述の如く配置された補強金具70は、左側ブレース60L及び右側ブレース60Rと野縁受け30と天井面材50と、ビスやボルト等(固定手段)を用いてそれぞれ固定される。
【0049】
以下では、補強金具70と、左側ブレース60L及び右側ブレース60Rと野縁受け30と天井面材50と、の固定態様について説明する。
【0050】
なお、本実施形態においては、補強金具70の右側半分と左側半分とにおける固定態様は、左右方向に対称であることを除いて略同様である。そこで以下では、補強金具70の右側半分について着目して説明を行うものとし、左側半分については適宜説明を省略する。
【0051】
補強金具70の本体部71のうち、本体上部75は、右側ブレース60Rの下端部近傍と複数(本実施形態においては、2つ)のビス(以下では「ビスS1」と称する)を用いて固定される。2つのビスS1は、前方から後方(横方向)へ挿通される。2つのうち一方のビスS1は、正面視で本体上部75の右上端部と重複するように設けられる。また、他方のビスS1は、前記一方のビスS1の左下方に離間して設けられる。
【0052】
また、本体部71のうち、本体下部76(すなわち、正面視で、右側ブレース60Rの下端部と野縁受け30と重複するように配置された部分)は、右側ブレース60Rの下端部及び野縁受け30と複数(本実施形態においては、2つ)のボルト(以下では「ボルトB」と称する)を用いて固定される。すなわち、本体下部76は、右側ブレース60Rの下端部と野縁受け30と共締めされる。2つのボルトBは、前方から後方(横方向)へ挿通される。2つのうち一方のボルトBは、正面視で本体下部76の上端部と重複するように設けられる。また、他方のボルトBは、前記一方のボルトBの左下方に離間して設けられる。他方のボルトBは、正面視で本体下部76の下端部と重複するように設けられる。
【0053】
また、本体部71のうち、右側延出部74Rは、天井面材50と複数(本実施形態においては、6つ)のビス(以下では「ビスS2」と称する)を用いて固定される。6つのビスS2は、下方から上方へ挿通される。6つのビスS2は、左右方向に並ぶ列が2列となるように、前後方向及び左右方向に互いに適宜の間隔をあけて配置される。
【0054】
以下では、天井構造1における作用効果について説明する。
【0055】
補強金具70は、本体上部75において横方向に挿通されたビスS1を用いて一対のブレース60(右側ブレース60R及び左側ブレース60L)の下端部近傍と固定される。また、補強金具70は、本体下部76において横方向に挿通されたボルトBを用いて、一対のブレース60(右側ブレース60R及び左側ブレース60L)の下端部及び野縁受け30と固定される。こうして、地震発生時において、例えば一対のブレース60のうち一方のブレース60に長手方向一方への力が作用し、他方のブレース60に長手方向他方への力が作用した場合等のように、野縁受け30に対して、大きなせん断力が作用した場合であっても、野縁受け30の変形が抑制され、当該野縁受け30、補強金具70及び天井面材50の間の応力伝達をより確実に行うことができる。
【0056】
また、上述の如き補強金具70により、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合、当該天井面材50に生じる水平力を補強金具70によって効果的に野縁受け30に伝達し、ひいては一対のブレース60に効果的に伝達することができる。こうして、天井構造1においては、当該天井構造1を構成する上記各種の部材を一体的に変位させることができ、例えば建物Hの壁部等に衝突するのを抑制し、当該衝突により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0057】
また、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、野縁受け30及び補強金具70(より詳細には、延出部74)を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。こうして、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0058】
以上のように、一実施形態に係る天井構造1においては、
建物Hの天井面材50(天井材)を支持する野縁40と、
前記野縁40を支持する野縁受け30(野縁受け部材)と、
前記建物Hの躯体Aと前記野縁受け30(野縁受け部材)との間に架設されると共に、前記野縁受け30(野縁受け部材)側の端部が前記野縁受け30(野縁受け部材)に固定された一対のブレース60と、
前記一対のブレース60と前記野縁受け30(野縁受け部材)と前記天井面材50(天井材)とにそれぞれ固定される補強金具70(固定補強部材)と、
を具備するものである。
【0059】
また、一実施形態に係る補強金具70においては、
建物Hの天井構造1に用いる補強金具70(固定補強部材)であって、
前記建物Hの野縁40に支持された天井面材50(天井材)に固定される延出部74(第一の固定部)と、
前記野縁40を支持する野縁受け30(野縁受け部材)と固定される本体下部76(第二の固定部)と、
前記建物Hの躯体Aと前記野縁受け30(野縁受け部材)との間に架設されると共に、前記野縁受け30(野縁受け部材)側の端部が前記野縁受け30(野縁受け部材)に固定された一対のブレース60と固定される本体上部75及び本体下部76(第三の固定部)と、
を具備するものである。
【0060】
このような構成により、天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
具体的には、一対のブレース60と天井面材50とが、野縁受け30及び野縁40を介して固定されるだけでなく、野縁受け30及び補強金具70を介して固定される。こうして、一対のブレース60と天井面材50との間において応力が集中するのを抑制することができる。したがって、応力の集中による上記各種の部材(例えば、野縁受け30)が変形するのを抑制することができ、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0061】
また、天井構造1において、
前記補強金具70(固定補強部材)は、
前記一対のブレース60の間を亘るように配置されると共に、前記一対のブレース60のそれぞれと固定されるものである。
【0062】
このような構成により、例えば一対のブレース60のうち一方のブレース60に長手方向一方への力が作用し、他方のブレース60長手方向他方の力が作用した場合であっても、野縁受け30が変形するのを抑制することができる。こうして、野縁受け30の変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0063】
また、天井構造1において、
前記補強金具70(固定補強部材)は、
前記野縁受け30に上方から引っ掛けられる引っ掛け部72を有するものである。
【0064】
このような構成により、補強金具70と野縁受け30とを前後方向に重ねるように設けるだけでなく、引っ掛け部72により上下方向に重ねるように設けることができるため、例えば地震発生時に天井面材50が揺れた場合、当該天井面材50に生じる力を補強金具70によって効果的に野縁受け30に伝達し、ひいては一対のブレース60に効果的に伝達することができる。こうして、天井構造1においては、当該天井構造1を構成する上記各種の部材を一体的に変位させることができ、例えば建物Hの壁部等に衝突するのを抑制し、当該衝突により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0065】
また、天井構造1において、
前記補強金具70(固定補強部材)は、
前記一対のブレース60と前記野縁受け30(野縁受け部材)との間に配置され、互いに接触した状態で共締めされる本体部71(共締め部)を有するものである。
【0066】
このような構成により、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合、当該天井面材50に生じる水平力を補強金具70によって効果的に野縁受け30に伝達し、ひいては一対のブレース60に効果的に伝達することができる。こうして、天井構造1においては、当該天井構造1を構成する上記各種の部材を一体的に変位させることができ、例えば建物Hの壁部等に衝突するのを抑制し、当該衝突により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0067】
また、天井構造1において、
前記野縁受け30(野縁受け部材)を前記躯体Aに吊るためのハンガー20(吊り部材)を具備し、
補強金具70(固定補強部材)は、
前記ハンガー20(吊り部材)に対応する位置で切り欠かれた切欠部73を有するものである。
【0068】
このような構成により、例えば地震発生時に天井面材50が野縁受け30の長手方向(左右方向)に揺れた場合であって、当該天井面材50に生じる水平力が補強金具70に伝達された場合であっても、当該補強金具70とハンガー20とが接触するのを抑制することができる。こうして、ハンガー20が変形されるのを抑制し、当該変形により天井面材50が脱落するのを抑制することができる。
【0069】
なお、補強金具70は、補強部材の実施の一形態である。
また、野縁受け30は、野縁受け部材の実施の一形態である。
また、本体部71は、共締め部の実施の一形態である。
また、ハンガー20は、吊り部材の実施の一形態である。
また、延出部74は、第一の固定部の実施の一形態である。
また、本体部71の本体下部76は、第二の固定部の実施の一形態である。
また、本体部71の本体上部75及び本体下部76は、第三の固定部の実施の一形態である。
【0070】
以上、一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0071】
例えば、本実施形態において、野縁40は、シングル野縁であるものとしたが、シングル野縁よりも横幅が大きなダブル野縁であってもよい。
【0072】
また、補強金具70の構成は、本実施形態に係るものに限定されない。例えば、補強金具70の大きさ及び形状は、適宜変更可能である。また、補強金具70は、一枚の平板状の金属製部材が適宜折り曲げられることにより形成されるものとしたが、これに限らない。また、本体部71の上端部にリブ状の部分を形成しなくてもよい。また、引っ掛け部72はその一部又は全部が、当初、本体部71と同様に板面を前後方向(横方向)へ向けて形成されており、取り付け作業を行う際に、作業者により折り曲げられるものであってもよい。
【0073】
また、補強金具70は、例えば地震発生時において、一対のブレース60のうち一方のブレース60に長手方向一方への力が作用し、他方のブレース60に長手方向他方への力が作用した場合、所定の大きさ以上の力が作用すると、適宜変形するようなものであってもよい。これにより、地震の衝撃を柔軟に吸収することができる。また、補強金具70においては、天井面材50と固定される延出部74が左右に分割されている。こうして、地震発生時において天井面材50が揺れた場合であって、過剰な力が補強金具70にかかった場合には、当該延出部74を変形させることができ、ひいては地震の衝撃を柔軟に吸収することができる。
【0074】
以下では、
図8を用いて、第二実施形態に係る天井構造101について説明する。
【0075】
第二実施形態に係る天井構造101においては、第一実施形態に係る天井構造1において、野縁受け30にブレース60及び補強金具70が取り付けられていたのに対し、野縁受け継ぎ部材130に、ブレース60及び補強金具70が取り付けられる点で、当該第一実施形態と異なる。
【0076】
野縁受け継ぎ部材130は、長尺状の部材である。野縁受け継ぎ部材130は、複数(本実施形態においては、3本)の野縁受け30の上方で、当該野縁受け30の長手方向に対して直交する方向へ長手方向を向けて配置される。野縁受け継ぎ部材130は、3本の野縁受け30に亘るように設けられると共に、これらの野縁受け30と固定される。
【0077】
補強金具70は、第一実施形態に係る天井構造1の野縁受け30に対する取り付け態様と同様の態様で取り付けられる。
【0078】
なお、野縁受け継ぎ部材130は、野縁受け部材の実施の一形態である。
【符号の説明】
【0079】
1 天井構造
30 野縁受け
40 野縁
50 天井面材
60 ブレース
70 補強金具