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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】パネル状樹脂部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 37/02 20060101AFI20230508BHJP
   B60R 5/04 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B29C37/02
B60R5/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019065013
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020163642
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000135988
【氏名又は名称】株式会社ヒロタニ
(73)【特許権者】
【識別番号】393000076
【氏名又は名称】マルスン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 雄三
(72)【発明者】
【氏名】冨原 暢
(72)【発明者】
【氏名】玉置 和也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】清水 香次
(72)【発明者】
【氏名】松浦 弘明
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 37/02,71/00~71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁部が板厚方向に切断加工された少なくとも1つの樹脂層を有するパネル状成形体を固定する固定治具と、該固定治具に向けて進退可能なブロック型とをそれぞれ用意し、
該ブロック型が上記固定治具に対して後退した状態において当該固定治具に上記パネル状成形体を固定した後、上記樹脂層を軟化させる所定の軟化温度まで昇温させた上記ブロック型を前進させて上記パネル状成形体の切断加工部分の鋭利部にその先端側から接触させることにより、当該鋭利部を変形させてパネル状樹脂部品を得るものであり、
上記固定治具は、上記鋭利部が上向く姿勢に上記パネル状成形体を固定するよう構成され、
上記ブロック型は、上記固定治具の側方に配置され、水平方向への移動動作により上記固定治具に対して進退するよう構成され、
上記ブロック型における上記パネル状成形体との接触部分には、上記ブロック型の後退方向に行くにつれて次第に下方に位置するよう湾曲するか、或いは、傾斜する接触面が形成されていることを特徴とするパネル状樹脂部品の製造方法。
【請求項2】
外周縁部が板厚方向に切断加工された少なくとも1つの樹脂層を有するパネル状成形体を固定する固定治具と、該固定治具に向けて進退可能なブロック型とをそれぞれ用意し、
該ブロック型が上記固定治具に対して後退した状態において当該固定治具に上記パネル状成形体を固定した後、上記樹脂層を軟化させる所定の軟化温度まで昇温させた上記ブロック型を前進させて上記パネル状成形体の切断加工部分の鋭利部にその先端側から接触させることにより、当該鋭利部を変形させてパネル状樹脂部品を得るものであり、
上記固定治具は、上記鋭利部が上向く姿勢に上記パネル状成形体を固定するよう構成され、
上記ブロック型は、上記固定治具の側方上部に配置され、斜め方向への移動動作により上記固定治具に対して進退するよう構成され、
上記ブロック型における上記パネル状成形体との接触部分には、上記ブロック型の前進方向に開口する湾曲凹部が形成されていることを特徴とするパネル状樹脂部品の製造方法。
【請求項3】
外周縁部が板厚方向に切断加工された少なくとも1つの樹脂層を有するパネル状成形体を固定する固定治具と、該固定治具に向けて進退可能なブロック型とをそれぞれ用意し、
該ブロック型が上記固定治具に対して後退した状態において当該固定治具に上記パネル状成形体を固定した後、上記樹脂層を軟化させる所定の軟化温度まで昇温させた上記ブロック型を前進させて上記パネル状成形体の切断加工部分の鋭利部にその先端側から接触させることにより、当該鋭利部を変形させてパネル状樹脂部品を得るものであり、
上記固定治具は、上記パネル状成形体の外周縁部に対応する形状を成す第1及び第2環状クランプ部を備え、
該第1及び第2環状クランプ部は、上記第1環状クランプ部の外周縁部が上記パネル状成形体における鋭利部の突出方向とは反対側の外周縁部の外側に位置するように、且つ、上記第2環状クランプ部の外周縁部が上記パネル状成形体における鋭利部の突出側の外周縁部の内側に位置するように上記パネル状樹脂部品を挟持して固定することを特徴とするパネル状樹脂部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載のパネル状樹脂部品の製造方法において、
上記パネル状成形体は、水平方向に対称である形状を成しており、
上記ブロック型は、上記固定治具に固定された上記パネル状成形体の対称軸を境に水平方向に対称に少なくとも一対設けられ、対になったブロック型を同期させて上記固定治具に対して同時に前進させることを特徴とするパネル状樹脂部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等の車両に装着される樹脂製の内装部品又は外装部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両内部後方には、後部座席と荷台とを仕切るパッケージトレイが配設され、該パッケージトレイは、一定の剛性を保つために、樹脂で形成された基材の層を有している。上記パッケージトレイは、一般的に、車両に対して着脱可能になっていて、その着脱作業は、乗員がパッケージトレイの外周部分を把持して行う。したがって、パッケージトレイの外周部分に鋭利な部分が存在すると、乗員が着脱作業時に手を切創してしまうおそれがあるので、製造時において切創を回避できる構造にしておく必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1のパッケージトレイは、樹脂で形成された基材と、該基材の一方側に積層された表皮材とからなるシート材を用意し、当該シート材を昇温させた状態で型開き状態の成形型にセットした後、型閉じしてパネル状成形体を成形し、その後、成形型から飛び出すパネル状成形体の外周部分に向けてトリム型を前進させることにより、パネル状成形体の外周部分を切断加工しながら表皮材側が外側になるようにパネル状成形体の内側に折り返してパッケージトレイを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5049410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の如きパッケージトレイは、折り曲げる外周部分の領域の分だけ材料歩留まりが悪くなってしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献1のパッケージトレイは、外周部分を折り曲げたことにより外周縁部が鋭利では無い形状になっているが、切断加工時に発生する切断部分の鋭利部分はパッケージトレイの内側に向いて依然として残ったままの状態であり、使用者がパッケージトレイの外周部分を把持した際に、例えば、指先等が不意に接触して切創してしまうおそれがある。これらのことは、上述の如きパッケージトレイだけに限らず、同様の製造方法にて得られるその他の車両用のパネル状樹脂部品においても言える。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乗員の取り扱い時における安全性が高く、しかも、材料歩留まりの良いパネル状樹脂部品を製造できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、パネル状樹脂部品になる前のパネル状成形体の外周縁部における切断加工部分において発生する鋭利部をその先端側から突出方向の反対側に押し込んで変形させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、パネル状樹脂部品の製造方法において、次のような解決手段を講じた。
【0010】
の発明では、外周縁部が板厚方向に切断加工された少なくとも1つの樹脂層を有するパネル状成形体を固定する固定治具と、該固定治具に向けて進退可能なブロック型とをそれぞれ用意し、該ブロック型が上記固定治具に対して後退した状態において当該固定治具に上記パネル状成形体を固定した後、上記樹脂層を軟化させる所定の軟化温度まで昇温させた上記ブロック型を前進させて上記パネル状成形体の切断加工部分の鋭利部にその先端側から接触させることにより、当該鋭利部を変形させてパネル状樹脂部品を得るものであり、上記固定治具は、上記鋭利部が上向く姿勢に上記パネル状成形体を固定するよう構成され、上記ブロック型は、上記固定治具の側方に配置され、水平方向への移動動作により上記固定治具に対して進退するよう構成され、上記ブロック型における上記パネル状成形体との接触部分には、上記ブロック型の後退方向に行くにつれて次第に下方に位置するよう湾曲するか、或いは、傾斜する接触面が形成されていることを特徴とする。
【0011】
の発明では、外周縁部が板厚方向に切断加工された少なくとも1つの樹脂層を有するパネル状成形体を固定する固定治具と、該固定治具に向けて進退可能なブロック型とをそれぞれ用意し、該ブロック型が上記固定治具に対して後退した状態において当該固定治具に上記パネル状成形体を固定した後、上記樹脂層を軟化させる所定の軟化温度まで昇温させた上記ブロック型を前進させて上記パネル状成形体の切断加工部分の鋭利部にその先端側から接触させることにより、当該鋭利部を変形させてパネル状樹脂部品を得るものであり、上記固定治具は、上記鋭利部が上向く姿勢に上記パネル状成形体を固定するよう構成され、上記ブロック型は、上記固定治具の側方上部に配置され、斜め方向への移動動作により上記固定治具に対して進退するよう構成され、上記ブロック型における上記パネル状成形体との接触部分には、上記ブロック型の前進方向に開口する湾曲凹部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
の発明では、外周縁部が板厚方向に切断加工された少なくとも1つの樹脂層を有するパネル状成形体を固定する固定治具と、該固定治具に向けて進退可能なブロック型とをそれぞれ用意し、該ブロック型が上記固定治具に対して後退した状態において当該固定治具に上記パネル状成形体を固定した後、上記樹脂層を軟化させる所定の軟化温度まで昇温させた上記ブロック型を前進させて上記パネル状成形体の切断加工部分の鋭利部にその先端側から接触させることにより、当該鋭利部を変形させてパネル状樹脂部品を得るものであり、上記固定治具は、上記パネル状成形体の外周縁部に対応する形状を成す第1及び第2環状クランプ部を備え、該第1及び第2環状クランプ部は、上記第1環状クランプ部の外周縁部が上記パネル状成形体における鋭利部の突出方向とは反対側の外周縁部の外側に位置するように、且つ、上記第2環状クランプ部の外周縁部が上記パネル状成形体における鋭利部の突出側の外周縁部の内側に位置するように上記パネル状樹脂部品を挟持して固定することを特徴とする。
【0013】
の発明では、第1から第のいずれか1つの発明において、上記パネル状成形体は、水平方向に対称である形状を成しており、上記ブロック型は、上記固定治具に固定された上記パネル状成形体の対称軸を境に水平方向に対称に少なくとも一対設けられ、対になったブロック型を同期させて上記固定治具に対して同時に前進させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1~第3の発明では、パネル状成形体の外周部分を折り曲げずにパネル状樹脂部品を得ることができるので、材料歩留まりを良くすることができる。また、製造途中のパネル状成形体の切断加工部分に発生する鋭利部をその先端の断面の角度が次第に広くなるように変形させるので、もし仮にパネル状樹脂部品の外周部分に人体が接触したとしても切創し難くなり、安全性の高いパネル状樹脂部品にすることができる。
【0015】
また、の発明では、ブロック型を移動させると、鋭利部が湾曲面に摺接しながらブロック型の熱により次第に変形し、最終的にその断面がブロック型の接触面に沿う湾曲形状を成すようになる。したがって、もし仮にパネル状樹脂部品の外周部分に人体が接触したとしても、確実に切創しなくなり、さらに安全性の高いパネル状樹脂製品にすることができる。また、固定治具に固定されたパネル状成形体の鋭利部が真上や斜め上方に向いていても、ブロック型を水平方向に移動させながら鋭利部を変形させることができるので、例えば、ブロック型の支持構造を装置に負荷が掛かる上下方向や斜めの方向に移動させる複雑なものにする必要が無くなり、装置の構造をシンプルで壊れにくく低コストなものにすることができる。
【0016】
また、の発明では、鋭利部の突出方向と略反対方向にブロック型が移動するので、鋭利部がその先端側から湾曲凹部に次第に押されて変形するようになる。すると、鋭利部の先端側が湾曲凹部に倣って綺麗な湾曲形状になり、もし仮にパネル状樹脂部品の外周部分に人体が接触したとしても、確実に切創しなくなるようにできるだけでなく、見栄えの良いパネル状樹脂部品にすることができる。
【0017】
また、の発明では、パネル状成形体の端部処理をする際、パネル状成形体における外周縁部の近傍を全周に亘って第1及び第2環状クランプ部で挟持するようになるので、ブロック型がパネル状成形体の切断加工部分の鋭利部に接触する際に、パネル状成形体の外周部分の鋭利部を除く部分が大きく変形してしまうといったことを防ぐことができ、鋭利部だけを確実に変形させることができる。
【0018】
の発明では、パネル状成形体の鋭利部を変形させる際、対のブロック型がパネル状成形体を互いに反対方向に押すようになるので、パネル状成形体が固定治具に対してずれてしまうのを防ぐことができ、鋭利部だけを確実に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係る製造方法が適用された生産ラインの概略側面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る製造方法が適用された生産ラインのブロック図である。
図3】成形切断工程の成形型にてプレス成形体を成形する直前の状態を示す概略断面図である。
図4図3の後、成形型を型閉じしてプレス成形によりプレス成形体を得た直後の状態を示す図である。
図5図4の後、成形型を型開きした状態を示す図である。
図6】端部処理工程の平面図である。
図7図6のVII-VII線における断面図である。
図8図7のVIII部拡大図である。
図9図7の後、プレス成形体における外周縁部の端部処理を行った直後の状態を示す図である。
図10図9のX部拡大図である。
図11】実施形態2における図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0021】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る生産ライン10を示す。該生産ライン10は、車両用のパッケージトレイ1(パネル状樹脂部品)を製造するようになっていて、図2に示すように、生産ライン10の上流側から順に、シート状の基材1aを加熱する加熱工程10aと、該加熱工程10aで加熱された基材1aの一方側に表皮材1bを積層するとともに、基材1aの他方側に裏面材1cを積層して得たシート材1dからプレス成形体P1を得る成形切断工程10bと、該成形切断工程10bで得たプレス成形体P1の外周縁部の端部処理を行ってパッケージトレイ1を得る端部処理工程10cとが直線状に配置されている。
【0022】
パッケージトレイ1は、自動車の車両内部後方における後部座席と荷台とを仕切る車両部品であり、車幅方向に対称で、且つ、偏平なハット形状をなしている。
【0023】
基材1aは、パッケージトレイ1の中央部分の樹脂層を構成しており、ガラス繊維強化ポリプロピレンで形成されている。一方、表皮材1b及び裏面材1cは、それぞれポリプロピレン繊維で形成されている。
【0024】
加熱工程10aは、図1に示すように、対象物を遠赤外線により加熱可能な加熱炉2が配置されている。
【0025】
該加熱炉2の内部には、シート状の基材1aを載置可能な金網2aが配設され、該金網2aに載置された基材1aを所定の軟化温度T1まで昇温させて軟化させるようになっている。
【0026】
成形切断工程10bには、図3乃至図5に示すように、上型31及び下型32を有する成形型3が配置され、下型32に対して上型31が昇降可能になっている。
【0027】
上型31には、断面略凹状の上側加圧面31aが形成される一方、下型32には、上側加圧面31aに対応する断面略凸状の下側加圧面32aが形成されている。
【0028】
上側加圧面31aの外周縁寄りの位置には、下方に突出する切断刃31bが設けられている。
【0029】
そして、図3及び図4に示すように、シート状の裏面材1cを下型32の下側加圧面32a上にセットし、次いで、加熱炉2から取り出した軟化温度T1まで昇温させた状態のシート状の基材1aの上側に表皮材1bを載置して基材1aと表皮材1bとを重ね合わせるとともに、重ね合わせた基材1aと表皮材1bとを裏面材1cに載置してシート材1dを得た後、上型31を下死点まで下降させることにより、シート材1dを上側加圧面31a及び下側加圧面32aに沿わせて変形させるとともに、シート材1dの外周部分を切断刃31bにて切断してプレス成形体P1を得るようになっている。
【0030】
尚、プレス成形体P1の外周縁部における切断部分には、図8に示すように、切断刃31bによる切断加工動作の際にプレス成形体P1の裏面側に向かって突出する鋭利部1eが形成される。
【0031】
端部処理工程10cには、図6に示すように、プレス成形体P1の外周縁部を端部処理する端部処理装置9が配置されている。
【0032】
該端部処理装置9は、プレス成形体P1を固定する固定治具5と、該固定治具5に固定されたプレス成形体P1の外周縁部を水平方向に押圧可能な6つの押圧ユニット6とを備えている。尚、以下では、固定治具5に固定されたプレス成形体P1の前側縁部及び後側縁部をそれぞれ押圧する押圧ユニット6を押圧ユニット6A,6Bと呼び、固定治具5に固定されたプレス成形体P1の各側方縁部をそれぞれ押圧する一対の押圧ユニット6を押圧ユニット6Cと呼び、固定治具5に固定されたプレス成形体P1の各前側角部をそれぞれ押圧する一対の押圧ユニット6を押圧ユニット6Dと呼ぶことにする。また、両押圧ユニット6Cは、固定治具5に取り付けられたプレス成形体P1の対称軸を境に水平方向に対称に配置され、両押圧ユニット6Dも、固定治具5に取り付けられたプレス成形体P1の対称軸を境に水平方向に対称に配置されている。
【0033】
固定治具5は、図7に示すように、プレス成形体P1を裏面側(鋭利部1e)が上向く姿勢で支持する支持フレーム51と、該支持フレーム51の上方に配置された上下動可能な押圧パッド52とを備えている。
【0034】
支持フレーム51の外周部分には、プレス成形体P1の外周縁部に対応する形状を成す第1環状クランプ部51aが設けられ、該第1環状クランプ部51aの外形は、プレス成形体P1の外形よりも若干大きい形状をなしている。
【0035】
一方、押圧パッド52の外周部分には、プレス成形体P1の外周縁部に対応する形状を成す第2環状クランプ部52aが設けられ、該第2環状クランプ部52aの外形は、プレス成形体P1の外形よりも若干小さい形状をなしている。
【0036】
そして、支持フレーム51がプレス成形体P1を支持する状態で押圧パッド52を下動させると、第1環状クランプ部51a及び第2環状クランプ部52aは、第1環状クランプ部51aの外周縁部がプレス成形体P1における鋭利部1eの突出方向とは反対側の外周縁部の外側に位置するように、且つ、第2環状クランプ部52aの外周縁部がプレス成形体P1における鋭利部1eの突出側の外周縁部の内側に位置するようにプレス成形体P1を挟持して固定するようになっている。
【0037】
押圧ユニット6Aは、固定治具5の前側に配置され、当該固定治具5に固定されたプレス成形体P1の前側縁部に沿って直線状に延びるスライド体61と、該スライド体61の固定治具5の反対側に配置された流体圧シリンダ62とを備え、該流体圧シリンダ62のシリンダロッド62aが伸縮することにより、スライド体61が固定治具5に固定されたプレス成形体P1の前側縁部に対して水平方向に進退するようになっている。
【0038】
スライド体61の上半部分には、固定治具5に固定されたプレス成形体P1の前側縁部に沿って直線状に延びる銅製のブロック型61aが設けられ、該ブロック型61aの上面には、加熱用プレートヒータ61bが取り付けられている。
【0039】
該ブロック型61aの固定治具5側には、図7乃至図8に示すように、断面略L字状を成す押圧部61cが形成されている。
【0040】
該押圧部61cには、ブロック型61aの後退方向に行くにつれて次第に下方に位置するよう湾曲する湾曲面61d(接触面)が形成され、固定治具5にプレス成形体P1を固定した状態でブロック型61aを前進させると、湾曲面61dがプレス成形体P1の前側縁部に接触するようになっている。
【0041】
押圧ユニット6B~6Dは、固定治具5に固定されたプレス成形体P1の押圧箇所、平面視におけるスライド体61の形状、及び、スライド体61に対する流体圧シリンダ62の配置がそれぞれ異なる以外は押圧ユニット6Aと同じ構成で、且つ、同様の機能を有するため、押圧ユニット6Aと同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0042】
押圧ユニット6A~6Dにおける各ブロック型61aの加熱用プレートヒータ61bには、各ヒータ61bの温度を調節可能な温度調節器7が接続されている。
【0043】
また、押圧ユニット6A~6Dの各流体圧シリンダ62及び温度調節器7には、当該各流体圧シリンダ62及び温度調節器7に作動信号を出力する制御盤8が接続されている。
【0044】
該制御盤8は、固定治具5にプレス成形体P1が固定された状態において、温度調節器7に作動信号を出力して各ヒータ61bを加熱し、各ブロック型61aを基材1aの軟化温度T2まで昇温させるようになっている。
【0045】
また、制御盤8は、押圧ユニット6A,6Bに作動信号を出力して軟化温度T2まで昇温させた各ブロック型61aを各スライド体61のスライド動作で前進させて湾曲面61dをプレス成形体P1の前側縁部及び後側縁部の鋭利部1eにその先端側から接触させることにより、鋭利部1eを変形させるようになっている。尚、制御盤8は、押圧ユニット6A,6Bの各スライド体61のスライド動作が同期して同時に動くように押圧ユニット6A,6Bに作動信号を出力するようになっている。
【0046】
また、制御盤8は、一対の押圧ユニット6Cに作動信号を出力して軟化温度T2まで昇温させた各ブロック型61aを各スライド体61のスライド動作で前進させて湾曲面61dをプレス成形体P1の各側方縁部の鋭利部1eにその先端側から接触させることにより、鋭利部1eを変形させるようになっている。尚、制御盤8は、一対の押圧ユニット6Cの各スライド体61のスライド動作が同期して同時に動くように各押圧ユニット6Cに作動信号を出力するようになっている。
【0047】
さらに、制御盤8は、一対の押圧ユニット6Dに作動信号を出力して軟化温度T2まで昇温させた各ブロック型61aを各スライド体61のスライド動作で前進させて湾曲面61dをプレス成形体P1の各前側角部の鋭利部1eにその先端側から接触させることにより、鋭利部1eを変形させるようになっている。尚、制御盤8は、一対の押圧ユニット6Dの各スライド体61のスライド動作が同期して同時に動くように各押圧ユニット6Dに作動信号を出力するようになっている。
【0048】
次に、本発明の実施形態に係る製造方法によるパッケージトレイ1の製造について詳述する。
【0049】
図1に示すように、まず、加熱炉2にシート状の基材1aを搬入して金網2aに載置した後、基材1aを加熱して軟化温度Tまで昇温させる。
【0050】
次に、図3に示すように、成形型3の下型32にシート状の裏面材1cを載置するとともに、加熱炉2から取り出した基材1aの上面に表皮材1bを重ねる。
【0051】
次いで、重ね合わせた基材1a及び表皮材1bをシート状の裏面材1cに上方から重ね合わせてシート材1dにした後、図4に示すように、成形型3を型閉じする。すると、シート材1dが上型31の上側加圧面31a及び下型32の下側加圧面32aに沿って変形するとともに、その外周部分の余分な領域が切断刃31bにより切り落とされる。そして、図5に示すように、成形型3を型開きすると、プレス成形体P1が得られる。
【0052】
尚、プレス成形体P1の外周縁部の切断部分には、当該プレス成形体P1の裏面側に突出する鋭利部1eが形成される(図8参照)。
【0053】
その後、プレス成形体P1を固定治具5まで搬送する。すると、図6に示すように、固定治具5まで搬送されてきたプレス成形体P1は、押圧ユニット6A~6Dの各ブロック型61aが固定治具5に対して後退した状態において裏面側が上方に向くように支持フレーム51に投入されて当該支持フレーム51に支持される。
【0054】
次に、押圧パッド52でプレス成形体P1を上方から押圧する。すると、図7及び図8に示すように、第1環状クランプ部51a及び第2環状クランプ部52aは、第1環状クランプ部51aの外周縁部がプレス成形体P1における鋭利部1eの突出方向とは反対側の外周縁部の外側に位置するように、且つ、第2環状クランプ部52aの外周縁部がプレス成形体P1における鋭利部1eの突出側の外周縁部の内側に位置するようにプレス成形体P1を挟持して固定する。
【0055】
次いで、温度調節器7により加熱用プレートヒータ61bを加熱させて各ブロック型61aを基材1aが軟化する軟化温度T2まで昇温させる。
【0056】
しかる後、制御盤8は、まず、押圧ユニット6A,6Bに作動信号を出力して両ブロック型61aを同期させて同時に前進させる。すると、図9及び図10に示すように、固定治具5に固定されたプレス成形体P1の前側縁部及び後側縁部における各鋭利部1eが各ブロック型61aの湾曲面61dに摺接しながら各ブロック型61aの熱により次第に変形し、最終的にプレス成形体P1の前側縁部及び後側縁部の各断面がブロック型61aの湾曲面61dに沿う湾曲形状を成すようになる。したがって、もし仮にパッケージトレイ1の外周部分に人体が接触したとしても、確実に切創しなくなり、安全性の高いパッケージトレイ1にすることができる。
【0057】
また、固定治具5に固定されたプレス成形体P1の鋭利部1eが真上や斜め上方に向いていても、ブロック型61aを水平方向に移動させながら鋭利部1eを変形させることができるので、例えば、ブロック型61aの支持構造を装置に負荷が掛かる上下方向や斜めの方向に移動させる複雑なものにする必要が無くなり、端部処理装置9の構造をシンプルで壊れにくく低コストなものにすることができる。
【0058】
さらに、プレス成形体P1の端部処理をする際、プレス成形体P1における外周縁部の近傍を全周に亘って第1環状クランプ部51a及び第2環状クランプ部52aで挟持するようになるので、ブロック型61aがプレス成形体P1の切断加工部分の鋭利部1eに接触する際に、プレス成形体P1の外周部分の鋭利部1eを除く部分が大きく変形してしまうといったことを防ぐことができ、鋭利部1eだけを確実に変形させることができる。
【0059】
それに加えて、プレス成形体P1の鋭利部1eを変形させる際、対のブロック型61aがプレス成形体P1を互いに反対方向に押すようになるので、プレス成形体P1が固定治具5に対してずれてしまうのを防ぐことができ、鋭利部1eだけを確実に変形させることができる。
【0060】
次に、制御盤8は、押圧ユニット6A,6Bに作動信号を出力して各ブロック型61aを同期させて同時に後退させた後、両押圧ユニット6Cに作動信号を出力して各ブロック型61aを同期させて同時に前進させる。すると、固定治具5に固定されたプレス成形体P1の各側方縁部における各鋭利部1eが各ブロック型61aの湾曲面61dに摺接しながら各ブロック型61aの熱により次第に変形し、最終的にプレス成形体P1の各側方縁部がブロック型61aの湾曲面61dに沿う湾曲形状を成すようになる。
【0061】
さらに、制御盤8は、両押圧ユニット6Cに作動信号を出力して各ブロック型61aを同期させて同時に後退させた後、両押圧ユニット6Dに作動信号を出力して各ブロック型61aを同期させて同時に前進させる。すると、固定治具5に固定されたプレス成形体P1の各前側角部における各鋭利部1eが各ブロック型61aの湾曲面61dに摺接しながら各ブロック型61aの熱により次第に変形し、最終的にプレス成形体P1の各前側角部がブロック型61aの湾曲面61dに沿う湾曲形状を成すようになる。
【0062】
そして、制御盤8は、両押圧ユニット6Dに作動信号を出力して各ブロック型61aを後退させる。その後、押圧パッド52を上昇させた後、固定治具5から完成したパッケージトレイ1を取り出して当該パッケージトレイ1の製造を終了する。
【0063】
以上より、本発明の実施形態1によると、プレス成形体P1の外周部分を折り曲げずにパッケージトレイ1を得ることができるので、材料歩留まりを良くすることができる。また、製造途中のプレス成形体P1の切断加工部分に発生する鋭利部1eをその先端の断面の角度が次第に広くなるように変形させるので、もし仮にパッケージトレイ1の外周部分に人体が接触したとしても切創し難くなり、安全性の高いパッケージトレイ1にすることができる。
【0064】
尚、本発明の実施形態1では、各押圧ユニット6A~6Dの各ブロック型61aおおいて対になったもの同士を同期させて進退させているが、全ての押圧ユニット6A~6Dの各ブロック型61aを同時に進退させるよう同期させてもよいし、それぞれ1つずつ進退させるようにしてもよい。
【0065】
また、本発明の実施形態では、各ブロック型61aのプレス成形体P1の外周縁部に接触する押圧部61cに湾曲面61dが形成されているが、湾曲してなくてもよく、直線状の傾斜面であってもよい。
【0066】
《発明の実施形態2》
図11は、本発明の実施形態2に係るプレス成形体P1の端部を処理する端部処理装置9を示す。この実施形態2では、端部処理装置9の構造の一部が実施形態1と異なっているだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0067】
実施形態2の端部処理装置9におけるブロック型61aは、固定治具5の側方上部に配置され、流体圧シリンダ62のシリンダロッド62aが伸縮することにより、スライド体61が固定治具5に固定されたプレス成形体P1の前側縁部に対して斜め方向に進退するようになっている。
【0068】
実施形態2のブロック型61aにおける押圧部61cには、上記ブロック型61aの前進方向に開口する湾曲凹部61eが形成されている。
【0069】
固定治具5にプレス成形体P1を固定した状態でブロック型61aを前進させると、プレス成形体P1における鋭利部1eの突出方向と略反対方向にブロック型61aが移動するので、鋭利部1eがその先端側から湾曲凹部61eに次第に押されて変形するようになる。したがって、鋭利部1eの先端側が湾曲凹部61eに倣って綺麗な湾曲形状になり、もし仮にパッケージトレイ1の外周部分に人体が接触したとしても確実に切創しなくなるようにできるだけでなく、見栄えの良いパッケージトレイ1にすることができる。
【0070】
尚、本発明の実施形態1,2の製造方法で製造されるパッケージトレイ1は、基材1a、表皮材1b及び裏面材1cで構成されているが、基材1a及び表皮材1bのみで構成されるパッケージトレイ1を製造する場合であっても本発明の実施形態1,2の製造方法を適用できる。
【0071】
また、本発明の実施形態1,2では、遠赤外線を利用した加熱炉2にて基材1aを加熱しているが、基材1aを軟化温度T1まで昇温させることができるのであれば、その他の方法で加熱してもよい。
【0072】
また、本発明の実施形態1,2では、成形型3の上型31における上側加圧面31aの外周縁寄りの位置に切断刃31bを設けることにより、シート材1dの外周部分を成形時に切断してプレス成形体P1を得るようにしているが、これに限らず、例えば、成形型3の周囲にトリム型を配置し、成形型3を型閉じした際に成形されたシート材1dの成形型3からはみ出る部分をトリム型で切り落としてプレス成形体P1を得るようにしてもよい。
【0073】
また、本発明の実施形態1,2の製造方法で製造されるパッケージトレイ1は、基材1aがガラス繊維強化ポリプロピレンからなり、表皮材1b及び裏面材1cがポリプロピレン繊維からなるものであるが、基材1a、表皮材1b及び裏面材1cがその他の樹脂材からなるものであっても本発明の実施形態の製造方法を用いて製造することができる。例えば、基材1aは、ガラス繊維及びセルロースナノファイバーの複合材、ガラス繊維、ポリプロピレン及びセルロースナノファイバーの複合材、木粉及びポリプロピレンの複合材、ニードルパンチフェルト、ポリプロピレン等で形成したものであってもよく、表皮材1b及び裏面材1cは、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、ラバー、レザー、レーヨン、シルク、アセテート等で形成したものであってもよい。
【0074】
尚、本発明の実施形態では、パッケージトレイ1を製造しているが、その他の車両の内装部品や外装部品などを製造する際にも本発明の製造方法を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えば、自動車等の車両に装着される樹脂製の内装部品及び外装部品の製造方法に適している。
【符号の説明】
【0076】
1 パッケージトレイ(パネル状樹脂部品)
1a 基材(樹脂層)
1b 表皮材
1e 鋭利部
5 固定治具
51a 第1環状クランプ部
52a 第2環状クランプ部
61a ブロック型
61d 湾曲面(接触面)
61e 湾曲凹部
P1 プレス成形体(パネル状成形体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11