(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】船舶用電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B63H 25/24 20060101AFI20230508BHJP
B63H 25/04 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B63H25/24 Z
B63H25/04 Z
(21)【出願番号】P 2019074346
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2022-04-05
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512013765
【氏名又は名称】マリーン カナダ アクイジション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Marine Canada Acquisition Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】アンソン チン パン チャン
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0206208(US,A1)
【文献】特開平07-047963(JP,A)
【文献】特開2007-091213(JP,A)
【文献】特開2010-264794(JP,A)
【文献】特許第3427575(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第00921050(EP,A1)
【文献】国際公開第2013/123191(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/24
B63H 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータであって、
ハウジングと、
往復動可能に前記ハウジングに収容された出力シャフトと、
前記出力シャフトを前記ハウジングに対して往復動させるモータと、
操舵位置を検出する絶対位置センサと、
前記モータの位置を検出する相対位置センサと、
前記絶対位置センサの信号に基づいて前記相対位置センサを較正し、前記アクチュエータの動作に伴って相対位置を累積した累積位置を、前記絶対位置センサの信号に基づく前記相対位置センサの較正により初期化する操舵制御ユニットと、を備え
、
前記操舵制御ユニットは、操舵方向の変更中に前記累積位置および前記操舵位置を監視して、バックラッシュを測定する、アクチュエータ。
【請求項2】
前記操舵制御ユニットは、故障検知のために、前記絶対位置センサの信号と前記累積位置とを比較する、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記操舵制御ユニットは、前記アクチュエータの起動時に、前記相対位置センサの前記累積位置を前記絶対位置センサを用いて初期化する、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
船舶の推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータであって、
ハウジングと、
往復動可能に前記ハウジングに収容された出力シャフトと、
前記出力シャフトを前記ハウジングに対して往復動させるモータと、
操舵位置を検出する絶対位置センサと、
前記モータの位置を検出する相対位置センサと、
前記絶対位置センサの信号に基づいて前記相対位置センサを較正し、前記アクチュエータの動作に伴って相対位置を累積した累積位置を、前記絶対位置センサの信号に基づく前記相対位置センサの較正により初期化する操舵制御ユニットと、を備え、
前記操舵制御ユニットは、最初の操舵動作中にバックラッシュを監視し、前記累積位置を再初期化することによってバックラッシュを補償する
、アクチュエータ。
【請求項5】
船舶の推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータであって、
ハウジングと、
往復動可能に前記ハウジングに収容された出力シャフトと、
前記出力シャフトを前記ハウジングに対して往復動させるモータと、
操舵位置を検出する絶対位置センサと、
前記モータの位置を検出する相対位置センサと、
前記絶対位置センサの信号に基づいて前記相対位置センサを較正し、前記アクチュエータの動作に伴って相対位置を累積した累積位置を、前記絶対位置センサの信号に基づく前記相対位置センサの較正により初期化する操舵制御ユニットと、を備え、
前記操舵制御ユニットは、前記累積位置の初期化後であって、バックラッシュを補償する前に、前記アクチュエータの操舵範囲を制限する
、アクチュエータ。
【請求項6】
前記操舵制御ユニットは、前記累積位置を前記アクチュエータの位置制御に使用する、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
船舶の推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータであって、
ハウジングと、
往復動可能に前記ハウジングに収容された出力シャフトと、
前記出力シャフトを前記ハウジングに対して往復動させるモータと、
操舵位置を検出する絶対位置センサと、
前記モータの位置を検出する相対位置センサと、
前記絶対位置センサの信号に基づいて前記相対位置センサを較正し、前記アクチュエータの動作に伴って相対位置を累積した累積位置を、前記絶対位置センサの信号に基づく前記相対位置センサの較正により初期化する操舵制御ユニットと、を備え、
前記操舵制御ユニットは、前記絶対位置センサまたは前記相対位置センサが故障した場合、前記アクチュエータの位置制御のために余剰センサを使用する
、アクチュエータ。
【請求項8】
舵柄を有する推進ユニットと、
ハウジングと、往復動可能に前記ハウジングに収容された出力シャフトと、を含み、前記推進ユニットの前記舵柄に操舵動作させるアクチュエータと、
前記出力シャフトを前記ハウジングに対して往復動させるモータと、
操舵位置を検出する絶対位置センサと、
前記モータの位置を検出する相対位置センサと、
前記絶対位置センサの信号に基づいて前記相対位置センサを較正し、前記アクチュエータの動作に伴って相対位置を累積した累積位置を、前記絶対位置センサの信号に基づく前記相対位置センサの較正により初期化する操舵制御ユニットと、を備え
、
前記操舵制御ユニットは、操舵方向の変更中に前記累積位置および前記操舵位置を監視して、バックラッシュを測定する、船舶用操舵システム。
【請求項9】
前記操舵制御ユニットは、故障検知のために、前記絶対位置センサの信号と前記累積位置とを比較する、請求項
8に記載の船舶用操舵システム。
【請求項10】
前記操舵制御ユニットは、前記アクチュエータの起動時に、前記相対位置センサの前記累積位置を前記絶対位置センサを用いて初期化する、請求項
8に記載の船舶用操舵システム。
【請求項11】
舵柄を有する推進ユニットと、
ハウジングと、往復動可能に前記ハウジングに収容された出力シャフトと、を含み、前記推進ユニットの前記舵柄に操舵動作させるアクチュエータと、
前記出力シャフトを前記ハウジングに対して往復動させるモータと、
操舵位置を検出する絶対位置センサと、
前記モータの位置を検出する相対位置センサと、
前記絶対位置センサの信号に基づいて前記相対位置センサを較正し、前記アクチュエータの動作に伴って相対位置を累積した累積位置を、前記絶対位置センサの信号に基づく前記相対位置センサの較正により初期化する操舵制御ユニットと、を備え、
前記操舵制御ユニットは、最初の操舵動作中にバックラッシュを監視し、前記累積位置を再初期化することによってバックラッシュを補償する
、船舶用操舵システム。
【請求項12】
舵柄を有する推進ユニットと、
ハウジングと、往復動可能に前記ハウジングに収容された出力シャフトと、を含み、前記推進ユニットの前記舵柄に操舵動作させるアクチュエータと、
前記出力シャフトを前記ハウジングに対して往復動させるモータと、
操舵位置を検出する絶対位置センサと、
前記モータの位置を検出する相対位置センサと、
前記絶対位置センサの信号に基づいて前記相対位置センサを較正し、前記アクチュエータの動作に伴って相対位置を累積した累積位置を、前記絶対位置センサの信号に基づく前記相対位置センサの較正により初期化する操舵制御ユニットと、を備え、
前記操舵制御ユニットは、前記累積位置の初期化後であって、バックラッシュを補償する前に、前記アクチュエータの操舵範囲を制限する
、船舶用操舵システム。
【請求項13】
前記操舵制御ユニットは、前記累積位置を前記アクチュエータの位置制御に使用する、請求項
8に記載の船舶用操舵システム。
【請求項14】
舵柄を有する推進ユニットと、
ハウジングと、往復動可能に前記ハウジングに収容された出力シャフトと、を含み、前記推進ユニットの前記舵柄に操舵動作させるアクチュエータと、
前記出力シャフトを前記ハウジングに対して往復動させるモータと、
操舵位置を検出する絶対位置センサと、
前記モータの位置を検出する相対位置センサと、
前記絶対位置センサの信号に基づいて前記相対位置センサを較正し、前記アクチュエータの動作に伴って相対位置を累積した累積位置を、前記絶対位置センサの信号に基づく前記相対位置センサの較正により初期化する操舵制御ユニットと、を備え、
前記操舵制御ユニットは、前記絶対位置センサまたは前記相対位置センサが故障した場合、前記アクチュエータの位置制御のために余剰センサを使用する
、船舶用操舵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関し、特に、船舶を操舵するための船舶用操舵システム用のアクチュエータに関する。
本発明および請求項に係る発明は、請求項に係る発明の有効出願日またはそれ以前に有効であった共同研究契約の1以上の当事者によって、またはその代わりに開発され創作されたものである。請求項に係る発明は、共同研究契約の範囲内で実施された活動の結果物であり、共同研究契約の当事者は、ヤマハ発動機株式会社、マリーン アクイジション コーポレーションおよびマリーン カナダ アクイジション インコーポレイテッドである。
【背景技術】
【0002】
ダビッドソン(Davidson)らの名前で2017年4月20日に公開された特許文献1は、ハウジングと、往復動可能にハウジングに収容された出力シャフトとを備える、電動アクチュエータを開示している。スクリューアセンブリは、ハウジング内に配置され、出力シャフトに結合されている。スクリューアセンブリは、複数の環状ローラと、複数の環状ローラに取り囲まれた中央スクリューとを含む。環状ローラは、中央スクリューを中心に回転可能である。モータは、ステータおよびロータを含む。ロータは、環状ローラに噛み合う内穴を有する。ロータの回転により、中央スクリューは、ロータに対して軸方向に平行移動し、出力シャフトは、ハウジングに対して往復動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0106959号明細書
【文献】国際公開第2013/1123208号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、船舶を操舵制御するための船舶用操舵システム用のアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、船舶の推進ユニットの舵柄(tiller)に操舵動作させるためのアクチュエータを提供する。電動アクチュエータは、ハウジングと、往復動可能に前記ハウジングに収容された出力シャフトと、を備える。モータは、出力シャフトをハウジングに対して往復運動させる。絶対位置センサは、操舵位置を検出し、相対位置センサは、モータの位置を検出する。操舵制御ユニットは、絶対位置センサの信号に基づいて相対位置センサを較正する。絶対位置センサの信号に基づく相対位置センサの較正は、アクチュエータの動作に伴って相対位置を累積した累積位置を初期化する。
【0006】
操舵制御ユニットは、故障検知のために、絶対位置センサの信号と累積位置とを比較してもよい。操舵制御ユニットは、アクチュエータの起動時に、相対位置センサの累積位置を絶対位置センサを用いて初期化してもよい。操舵制御ユニットは、操舵方向の変更中に累積位置および操舵位置を監視して、バックラッシュを測定してもよい。操舵制御ユニットは、最初の操舵動作中にバックラッシュを監視し、累積位置を再初期化することによって、バックラッシュを補償してもよい。操舵制御ユニットは、累積位置の初期化後であって、バックラッシュを補償する前に、アクチュエータの操舵範囲を制限してもよい。操舵制御ユニットは、累積位置をアクチュエータの位置制御に使用してもよい。操舵制御ユニットは、絶対位置センサまたは相対位置センサが故障した場合、アクチュエータの位置制御のために余剰センサを使用してもよい。
【0007】
また、船舶の推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータを提供する。アクチュエータは、ハウジングと、往復動可能にハウジングに収容された出力シャフトとを含む。モータは、ハウジング内に配置されている。モータは、ロータおよびステータを有する。ロータは、磁場を形成し、ステータは、磁場を形成する。ロータの回転は、出力シャフトをロータに対して軸方向に平行移動させ、出力シャフトをハウジングに対して往復動させる。センサは、ロータの位置を検出する。操舵制御ユニットは、ステータにエネルギーを与えることによって、ロータの位置を検出するためにセンサによって検出されたロータの位置に基づいて、ステータの磁場をロータの磁場に揃え、ロータの位置を保持する。モータは、少なくとも二相モータ(相の数が2つ以上のモータ)であってもよく、操舵制御ユニットは、モータの少なくとも1つの相にPWMを印加することによってステータにエネルギーを与え、ロータの位置を揃え、保持する磁場を発生してもよい。操舵制御ユニットは、船舶の速度、エンジン回転速度、および操舵位置のうちの少なくとも1つの関数としての最小PWMを印加して、バックドライブトルク(back driving torque)に対抗する保持トルクを生成してもよい。操舵制御ユニットは、バックドライブトルクに対抗するために印加される最小PWMを増加または減少させてもよい。操舵制御ユニットは、バックドライブ(back drive)を検出する位置センサからの信号に基づいて、PWM増加の大きさおよび割合を判定してもよい。操舵制御ユニットは、バックドライブトルクを検出するトルクセンサからの信号に基づいて、PWM増加の大きさおよび割合を判定してもよい。
【0008】
舵柄を有する推進ユニットと、推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータと、を備える、船舶用操舵システムをさらに提供する。アクチュエータは、ハウジングと、往復動可能にハウジングに収容された出力シャフトとを含む。モータは、出力シャフトをハウジングに対して往復動させる。電源は、モータに電力を供給し、センサは、電源の容量を検出する。操舵制御ユニットは、電源の容量に応じてモータへの電圧を制御することによって、モータに供給される最大電力を制限する。操舵制御ユニットは、バッテリ電流が第1のゾーン、第2のゾーン、および第3のゾーンのいずれにあるかに基づいて、PWMを増加または減少させることによって、モータに供給される最大電力を制限してもよい。操舵制御ユニットは、バッテリ電流が第1のゾーンにある場合、PWMを減少させてもよい。操舵制御ユニットは、バッテリ電流が第2のゾーンにある場合、PWMを増加または減少させてもよい。操舵制御ユニットは、バッテリ電流が第3のゾーンにある場合、PWMの増加を止めてもよい。
【0009】
第1の推進ユニットと、第2の推進ユニットと、を備える、船舶用操舵システムをさらに提供する。第1の推進ユニットは、舵柄と、第1の推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータと、第1の推進ユニットの操舵位置を検出するための位置センサとを有する。第2の推進ユニットは、舵柄と、第2の推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータと、第2の推進ユニットの操舵位置を検出するための位置センサとを有する。操舵制御ユニットは、第1の推進ユニットの操舵位置と第2の推進ユニットの操舵位置との相対的な関係に基づいて第1の推進ユニットに操舵動作させるように、第1の推進ユニットのアクチュエータを制御する。操舵制御ユニットは、第2の推進ユニットの操舵位置に対して第1の推進ユニットの操舵動作を減速させることによって、第1の推進ユニットのアクチュエータを制御する。
【0010】
操舵制御ユニットは、エンジン目標舵角位置スケジューラに基づいて第1の推進ユニットが操舵動作するように第1の推進ユニットのアクチュエータを制御してもよい。操舵制御ユニットは、第1の推進ユニットの操舵位置と第2の推進ユニットの操舵位置との相対的な関係に基づいて第1の推進ユニットの操舵動作を一時停止させるように第1の推進ユニットのアクチュエータを制御してもよい。操舵制御ユニットは、アクチュエータが最高速度まで動作可能な第1の状態と、アクチュエータが減速曲線によって決定された最高制限速度まで動作可能な第2の状態と、およびアクチュエータが第1の方向にさらに移動することを防止する第3の状態と、のうちの1つにおいて、第1の推進ユニットに操舵動作させるように第1の推進ユニットのアクチュエータを制御してもよい。操舵制御ユニットは、前記操舵動作の方向に基づいて前記第1の推進ユニットの前記アクチュエータを制御し、前記第1の推進ユニットを操舵動作させてもよい。操舵制御ユニットは、第1の推進ユニットが第2の推進ユニットに向かって移動しているときに第1の推進ユニットの操舵動作を与えるように第1の推進ユニットのアクチュエータを制御してもよい。前記の状態間での移行は、第1の推進ユニットの操舵位置と第2の推進ユニットの操舵位置との相対的な関係に基づいて行われる。
【0011】
第1の推進ユニットと、第2の推進ユニットと、を備える、船舶用操舵システムをさらにまた提供する。第1の推進ユニットは、舵柄と、推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータと、第1の推進ユニットの操舵位置を検出するための位置センサとを有する。第2の推進ユニットは、舵柄と、第2の推進ユニットの舵柄に操舵動作させるためのアクチュエータと、第2の推進ユニットの操舵位置を検出するための位置センサとを有する。トー角設定装置は、第1の推進ユニットと第2の推進ユニットとの間のトー角を設定する。操舵制御ユニットは、操舵位置コマンドを受ける。操舵制御ユニットは、操舵位置コマンドに基づいて、トー角を修正してもよい。操舵制御ユニットは、第1の推進ユニットおよび第2の推進ユニットのそれぞれについて、トー角とエンジン目標舵角とを、トー角に基づいて変更する。エンジン目標舵角は、船舶目標舵角に依存してもよい。
【0012】
本発明は、添付図面を参照しながら、単なる一例としてのみ与えられる本発明の実施形態の以下の説明からより容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】電動アクチュエータをそれぞれ有する複数の推進ユニットを備えた船舶の斜視図である。
【
図2】
図1の推進ユニットのうちの1つの電動アクチュエータの第1の側面の斜視図である。
【
図3】
図1の推進ユニットのうちの1つの電動アクチュエータの第2の側面の斜視図である。
【
図4】
図2および
図3の電動アクチュエータの分解斜視図である。
【
図5】
図2および
図3の電動アクチュエータの縦断面図である。
【
図6】
図2および
図3の電動アクチュエータの部分分解斜視図である。
【
図7】
図2および
図3の電動アクチュエータのステータの斜視図である。
【
図8A】
図2および
図3の電動アクチュエータの電気コネクタの斜視図である。
【
図8B】
図2および
図3の電動アクチュエータの電気コネクタの別の斜視図である。
【
図9】
図2および
図3の電動アクチュエータの操舵制御ユニット用のカバーの内側の斜視図である。
【
図10】
図2および
図3の電動アクチュエータ用のロータアセンブリの分解斜視図である。
【
図11】
図2および
図3の電動アクチュエータ用の出力シャフトの分解斜視図である。
【
図12】
図2および
図3の電動アクチュエータ用のブレーキの分解斜視図である。
【
図13】
図2および
図3の電動アクチュエータのブレーキの部分分解斜視図である。
【
図14】
図2および
図3の電動アクチュエータのブレーキの別の部分分解斜視図である。
【
図15】押付位置にある
図2および
図3の電動アクチュエータ用のブレーキの部分断面立面図である。
【
図17】解放位置にある
図2および
図3の電動アクチュエータ用のブレーキの部分断面立面図である。
【
図19】
図2および
図3の電動アクチュエータ用のエンドグランドの分解斜視図である。
【
図20】
図2および
図3の電動アクチュエータ用のエンドグランドの部分断面立面図である。
【
図21】
図20のエンドグランドのフローティングシールハウジングの一部の拡大図である。
【
図23】
図2および
図3の電動アクチュエータの操舵制御ユニットのブロック図である。
【
図24】
図2および
図3の電動アクチュエータによって用いられる検出方法の初期化ロジックを示す模式図である。
【
図25】
図2および
図3の電動アクチュエータにおいて、操舵制御ユニットがステータにエネルギーを与えて、ステータの磁場をロータの磁場に揃える場合のPWMデューティサイクルを時間の関数として示すグラフである。
【
図26】保持トルクが
図2および
図3の電動アクチュエータに付与されている外部トルク以上である場合のステータおよび静止しているロータを示す模式図である。
【
図27】保持トルクが
図2および
図3の電動アクチュエータに付与されている外部トルク未満の場合のステータおよびバックドライブしているロータを示す模式図である。
【
図28】
図2および
図3の電動アクチュエータに付与されている外部トルクに対抗するために保持トルクが増大された場合のステータおよび停止しているロータを示す模式図である。
【
図29】
図2および
図3のアクチュエータの位置を保持するために操舵制御ユニットが保持トルクを制御するときの操舵制御ユニットの状態を示す状態図である。
【
図30】
図2および
図3の電動アクチュエータによって用いられる電流制限方法のロジックを示すブロック図である。
【
図31】
図2および
図3の電動アクチュエータの3ゾーン電流制限方式を示すグラフである。
【
図32】
図2および
図3のアクチュエータによって用いられる、エンジンの衝突を防止するための3段階プロセスのロジックを示すブロック図である。
【
図33】
図1の船舶の推進ユニット用の目標アクチュエータ位置スケジューラを示すグラフである。
【
図34A】左舷エンジンが負荷によって減速し、左舷中央エンジンがエンジンの衝突を防止するために減速していることを示す模式図である。
【
図34B】左舷エンジンが負荷によって減速し、左舷中央エンジンがエンジンの衝突を防止するために減速していることを示す模式図である。
【
図35】
図1の船舶におけるエンジンの停止線およびエンジンの減速線の、隣接エンジンに対する関係を示すグラフである。
【
図36】
図2および
図3の電動アクチュエータによって用いられる、エンジンの衝突を防止するための3段階プロセスの状態図である。
【
図37】
図2および
図3の電動アクチュエータによって用いられる、エンジンの衝突を防止するための3段階プロセスの可変トー角図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面のうち、まず、
図1を参照すると、この例では4機の船外エンジン(船外機)の形態である複数の推進ユニット、すなわち、左舷エンジン12、左舷中央エンジン14a、右舷中央エンジン14bおよび右舷エンジン16を備えた船舶10が示されている。しかしながら、他の例では、推進ユニットは、任意の数または形態の推進ユニットであってもよい。船舶10は、また、ヘルム22に取り付けられたステアリングホイール20を支持する制御ステーション18、制御ヘッド24、およびジョイスティック26を備えている。制御ステーション18は従来のものであり、特許文献2に開示されているような、ステアリングホイール20およびヘルム22、または、ジョイスティック26を用い、左舷エンジン12、左舷中央エンジン14a、右舷中央エンジン14b、および右舷エンジン16を操舵する。特許文献2の開示は、参照により本明細書に援用される。制御ステーション18は、第1の表示インターフェース28および第2の表示インターフェース30をさらに含む。この例では、第1の表示インターフェースは、ナビゲーション情報を表示する表示インターフェースであり、第2の表示インターフェースは、船内システム情報を表示する表示インターフェースである。
【0015】
左舷エンジン12、左舷中央エンジン14a、右舷中央エンジン14b、および右舷エンジン16のそれぞれには、それぞれのエンジンを操舵する電動アクチュエータが備えられている。
図2および
図3は、左舷エンジン12の電動アクチュエータ40を示す。左舷中央エンジン14a、右舷中央エンジン14b、および右舷エンジン16のための電動アクチュエータは、構造および機能において左舷エンジン12のための電動アクチュエータ40と実質的に同一であることは、当業者に理解されるであろう。したがって、左舷中央エンジン14a、右舷中央エンジン14b、および右舷エンジン16のための電動アクチュエータは、本明細書では詳細に説明しない。電動アクチュエータ40は、ハウジング42の他に、往復動可能にハウジング42に収容された出力シャフト44を含む。電動アクチュエータ40が左舷エンジン12に取り付けられると、出力シャフト44の軸方向運動が船舶10に対して防止される一方、ハウジング42が出力シャフト44に沿って、船舶10に対して直線的に往復動することは、当業者に理解されるであろう。ハウジング42のこの相対的な直線的運動は、左舷エンジン12の舵柄(tiller)46に操舵力を与え、従来と同様に左舷エンジン12を操舵する。
【0016】
ハウジング42に取り付けられた結合アセンブリ48が存在する。結合アセンブリ48は、この例では、ボールジョイントアセンブリであり、ハウジング42を左舷エンジン12の舵柄46に結合させる。ハウジング42には操舵制御ユニット50も取り付けられている。したがって、操舵制御ユニット50は、従来のように船舶10の他の場所にあるのとは対照的に、電動アクチュエータ40と一体である。操舵制御ユニット50を船舶10の制御ステーションと通信させる入力部、例えば、入力部52が存在する。操舵制御ユニット50を電動アクチュエータ40と一体化すると、従来のシステムでは必要な多数のワイヤ/ハーネスの必要性がなくなって配線が簡素化され、操舵制御ユニットとアクチュエータとの間の電圧降下が減少する。
【0017】
図4は、電動アクチュエータ40の分解図であり、この例では、操舵制御ユニット50のカバー54が、操舵制御ユニット50の内部56の電気部品を覆っており、操舵制御ユニット50の内部56が、アクチュエータハウジング42と一体になっている。ガスケット58は、カバー54と操舵制御ユニット50の内部56との間で用いられており、操舵制御ユニット50およびアクチュエータハウジング42を密閉している。電動アクチュエータ40は、以下の一般的な構成要素、すなわち、
図5に最もよく示されるように、ハウジング42の内部66に配置されたステータ60、ロータアセンブリ62、およびブレーキ64をさらに含む。ハウジング42は、両端において、エンドグランド(end gland)68およびエンドグランド70によって密閉されている。操舵制御ユニット50の電気部品は、ハウジング42内に配置されている部品から概ね離されている。しかしながら、
図6を参照すると、電気コネクタ72は、ハウジング42に設けられた開口74内に延びており、ステータ60を操舵制御ユニット50に電気的に接続している。ガスケット76は、電気コネクタ72の周りに用いられている。
【0018】
ステータ60は、複数のセグメント、例えば、ほぼ環状の形態で配置されたセグメント78aおよび78bを含み、この例では、保持リング80によって最初からほぼ環状の形状に保持されている。セグメント78aおよび78bは、ハウジング42に収容され、保持リング80が取り除かれる。セグメントは、その後、エポキシ樹脂(図示せず)でステータの周りを固める(potting)ことによって、ハウジング42内にほぼ環状の形態で保持されてもよい。エポキシ樹脂は、ガスケット76によってハウジング42の内部66に密閉される。セグメントは、ステータ60を異なるサイズのハウジングに適合させるために、遊びを伴ったほぼ環状の形態で最初から配置されてもよい。セグメントのそれぞれは、別々の電気巻線コイルを有しており、例えば、図示されたコイル82aおよび82bは、それぞれ、セグメント78aおよび78b用である。この配置により、端部の回動を減少させることができる。ステータ60は、また、
図7に最もよく示されるように、複数の開口、例えば、開口86aおよび86bを有するリードフレーム84を含み、コイル82aおよび82bは、それぞれ、開口86aおよび86bを通って、電気コネクタ72によって操舵制御ユニット50に圧着および配線される。ステータ60のリードフレーム84は、また、
図7に示す複数の開口90a、90b、および90cを有する部分88を含み、開口90a、90b、および90cは、電気コネクタ72によってステータ60の位置合わせおよび接続を行うために、それぞれの締結具92a、92b、および92cを収容している。電気コネクタ72には、ステータ60と電気コネクタ72との位置合わせを可能にするダウエルピン(dowel pin)93aおよび93bが挿入される。電気コネクタ72には、また、電気コネクタを適所に保持する複数の締結具94a、94b、94c、および94dが挿入される。この配置は、操舵制御ユニット50の内部56の電気部品をハウジング42の内部66の部品から離す。
【0019】
電気コネクタ72は、
図8Aおよび
図8Bに詳細に示されている。電気コネクタ72は、複数のセンサを有する転流センサボード、この例では、1つの列をなす複数のホール効果センサを有するホール効果センサボード96を含む。この例では、電動アクチュエータ40が三相電気モータを有するため、3組のホール効果センサ群98a、98b、および98cが存在する。交流電流は、正から負状態への曲線に従って経時的に変動する。三相電流のそれぞれの成分は、同じパターンに従うが、時間的に離間している。それぞれの電流相は、3組のホール効果センサ群をすべて使用する。3組のホール効果センサ群98a、98b、および98cは、1対1の関係で、3つのホール効果センサ接続部100a、100b、および100cに結合されている。電気コネクタ72は、また、複数のモータ接続部102a、102b、102cおよび対応するモータピン103a、103b、103c、ならびに複数のブレーキ接続部104a、104bおよび対応するブレーキピン105a、105bを有する。
【0020】
次に
図9を参照すると、操舵制御ユニット50のカバー54の内側部分102には、第1の接続部106および第2の接続部108が設けられている。第1の接続部106は、ホール効果センサ接続部100a、100bおよび100c、ならびにブレーキピン105aおよび105bに接続している。第2の接続部108は、モータ接続部102a、102b、および102cに接続している。それによって、操舵制御ユニット50は、ステータ60、ロータアセンブリ62、およびホール効果センサボード96、を含むモータに接続される。ロータアセンブリ62は、
図10に最もよく示されており、複数の磁石、例えば、磁石スリーブ110にほぼ環状に接着されている磁石111aおよび111bを収容する複数のスロット(図示せず)が設けられた磁石スリーブ110を有する第1のロータ部材109を含む。保持リング113は、磁石111aおよび111bを予備的に保持している。磁石スリーブ110は、内面にねじが形成された穴114を有する第2の回転部材112に取り付けられている。アンギュラコンタクト軸受116を設けることにより、ロータアセンブリ62は回転するようになっている。ロックワッシャ118およびロックナット120も設けられている。
【0021】
ホール効果センサボード96は、磁石111a、111bの相対位置を検出し、ステータ60とタイミングが合わされる。ホール効果センサボード96は、それぞれの方向に進んだタイミングで時間調整される。ホール効果センサボード96は、磁石111a、111bの相対位置を検出し、ステータ60とタイミングが合わされる。ホール効果センサボード96は、それぞれの方向に進んでタイミング調整される。したがって、ステータ60は、発生した磁場が磁石111aおよび111bの回転位置のわずかに前方にあり、前記磁場が磁石111aおよび111bを引っ張って、ロータアセンブリ62を回転させるように、モータ接続部102a、102bおよび102cによって動力が与えられる。
図8Aにおけるホール効果センサ群の第1の組と呼ばれる、ホール効果センサボード96上のホール効果センサ群98a、98b、および98cのそれぞれの組は、第1のホール効果センサ99aと、余剰のオフセットした第2のホール効果センサ99bとを有している。3組のホール効果センサ群98a、98b、および98cのそれぞれにおける1つ目のホール効果センサは、第1の回転方向に進んだタイミングのために配置されており、3組のホール効果センサ群98a、98b、および98cのそれぞれにおける2つ目のホール効果センサは、第2の回転方向に進んだタイミングのために配置されている。第1の回転方向と第2の回転方向は、互いに反対であり、ロータアセンブリ62の回転に基づいて、互いに反対である船舶10の2つの操舵方向にそれぞれ対応付けられている。ホール効果センサ群98a、98b、および98cのそれぞれの組における2つの異なるホール効果センサを使用することにより、ホール効果センサ群98a、98b、および98cのそれぞれの組は、第1の回転方向に進んだタイミングと第2の回転方向に進んだタイミングを可能にしながら、製造公差を「吸収」することができる。さらに、ホール効果センサ群98a、98b、および98cの任意の組における複数のホール効果センサのうちの1つが故障した場合、この複数のホール効果センサのうちの他の1つはフェイルセーフとして機能してもよい。
【0022】
図5に示すように、ロータアセンブリ62は、
図11に詳細に示す出力シャフト44を収容し、この例では、出力シャフト44は、ローラスクリューアセンブリ122、第1のシャフト部124、および第2のシャフト部126を含む。ローラスクリューアセンブリ122は、中央スクリュー128と、中央スクリューの周りを遊星のように回転することができるが、中央スクリュー128に対して軸方向に平行移動しない複数のローラ、例えば、ローラ130aおよび130bとを有する。ローラ130aと130bは、環状のエンドプレート131aと131bによって位置合わせされている。ローラスクリューアセンブリ122は、
図10に示されている内面にねじが形成された、ロータアセンブリ62の穴114に収容されている。ロータアセンブリ62の回転は、
図3および
図4に示す出力シャフト44をハウジング42に対して往復動させる。電動アクチュエータ40が左舷エンジン12に取り付けられると、出力シャフト44の軸方向運動が船舶10に対して防止される一方、ハウジング42が出力シャフト44に沿って船舶10に対して直線的に往復動する。ハウジング42のこの相対的な直線的運動は、左舷エンジン12の舵柄46に操舵力を与え、従来と同様に左舷エンジン12を操舵する。緊急時は、通常動作時に出力シャフトの回転を防止するロックナット(図示せず)を緩めて、出力シャフト44を手動で回転させてもよい。
【0023】
電動アクチュエータ40のブレーキ64は、
図12に詳細に示されている。ブレーキ64は、電磁回路142を収容する環状本体140を有する。電磁回路142は、磁石リテーナ144と、複数の磁石、例えば、永久磁石148aおよび148bを保持する磁石ホルダ146と、ブレーキコイルアセンブリ150とを含む。磁石リテーナ144は、磁石および磁場を保持する。磁石リテーナ144、磁石ホルダ146、および永久磁石148aおよび148bは、
図13に詳細に示されている。他の例では、環状磁気リングが存在してもよい。
図12を再び参照すると、ブレーキ64は、ベアリング154に圧入されているハブ152をさらに含む。ベアリング154は、環状本体140にすきまばめされている。ベアリング154は、ハブ152と同心の環状本体140を保持する。これにより、ブレーキアセンブリ64は、ロータ部材62をハウジング42に位置合わせする。ブレーキアセンブリ64は、ロータ部材62およびハウジング42と一体化される前に、サブアセンブリー(部分組立品)として組み立てられ、製造時のモジュールとして試験されてもよい。保持リング156は、バックアップ保持として機能する。ベアリング154は、ハブ152がロータアセンブリ62とともに回転するようにしている。複数の屈曲部、例えば、弓形屈曲部158a、158b、および158cは、ハブ152によって径方向に保持され、ハブ152とともに回転する。環状のブレーキパッド160は、電磁石回路142とハブ152との間に配置されている。ブレーキパッド160は、屈曲部158a、158b、および158cによってハブ152に連結されている。したがって、ブレーキパッド160も、ハブ152とともに回転する。ハブ152、ブレーキパッド160、ならびに屈曲部158a、158b、および158cは、
図14に詳細に示されている。
【0024】
図15および
図16は、本体140と磁石リテーナ144との間の環状空間または環帯空間162内に配置されたコイルアセンブリ150を示す。環帯空間162は、コイルアセンブリ150よりも断面が大きい。これにより、コイルアセンブリ150が環帯空間162内を移動できるので、電動アクチュエータ40の組み立て中に、コイルアセンブリ150のコネクタ164を電気コネクタ72と位置合わせして、
図8Bに示されるブレーキ接続部104aおよび104bに接続することができる。環帯空間162内のコイルアセンブリ150の動きは、回転および/または径方向の動きであってもよい。本体140と磁石リテーナ144との間には、また、空隙166が存在する。
【0025】
永久磁石148aおよび148bは、ブレーキパッド160が第1の摩擦面168および第2の摩擦面170に接する押付位置にブレーキパッド160を引っ張る磁場を発生させる。この例では、第1の摩擦面168は本体140の肩部であり、第2の摩擦面170は、磁石リテーナ144の環状面である。ブレーキトルク、またはブレーキパッド160と第1の摩擦面168および第2の摩擦面170との間の摩擦力は、ロータアセンブリ62にねじり結合されているハブ152の回転を防止するのに十分である。したがって、
図15および
図16に示すように、ブレーキ64は、コイルアセンブリ150にエネルギーが供給されて、ブレーキパッド160が解放位置に移動するまで、通常は押付位置にある。
【0026】
図17および
図18は、解放位置にあるブレーキ64を示しており、コイルアセンブリ150にエネルギーが与えられ、永久磁石148aおよび148bが発生する磁場を向け直すのに十分な磁場をコイルアセンブリ150が発生している。屈曲部158a、158b、および158cは、第1の摩擦面168および第2の摩擦面170から離れたブレーキパッド160を解放位置に付勢している。ブレーキパッド停止部172は、この例では、ハブ152の環状リップであり、環状リップは、ブレーキ64が解放位置にあるときに、第1の摩擦面168および第2の摩擦面170から離れたブレーキパッド160の移動を、ハブ152が自由に回転できるように制限する。ブレーキパッド停止部172は、ブレーキ64が解放位置にある場合の第1の摩擦面168および第2の摩擦面170からのブレーキパッド160の最大距離を設定する。最大距離は、ブレーキ64が再接合できるように設定されている。
【0027】
コイルアセンブリ150は、電流を受けることによってエネルギーをもらう。しかしながら、この例では、ブレーキ64は、コイルアセンブリ150に供給される電流が第1のしきい値電流と第2のしきい値電流との間にある場合にのみ解放位置に作動される。第1のしきい値電流は、例えば約0.6アンペアであってもよく、第2のしきい値電流は約1.2アンペアであってもよく、または、第1のしきい値電流は約0.8アンペアであってもよく、第2のしきい値電流は約1.0アンペアであってもよい。このような電流は、電流の引き込み(current draw)の設計限界内でブレーキ64の一貫した解放を確実にする。
【0028】
本体140と磁石リテーナ144との間の空隙166は、ブレーキが解放位置にある場合にブレーキ強度および電流しきい値を設定する。これにより、所望の最小ブレーキトルクを維持しながら、ブレーキを解放位置に移動させるのに必要な電流が最小限に抑えられる。ブレーキトルクは、電動アクチュエータ40のモータの出力トルクよりも小さくてもよい。この場合、電動アクチュエータ40のモータは、ブレーキが故障したときにブレーキ64を無効にできる。ブレーキトルクは、バックドライブトルクよりも大きくてもよい。この場合、ブレーキ64は、モータが故障したときに出力シャフト44の動きを制限できる。ブレーキは、船舶を牽引する際に重要である、船舶に搭載されたエンジンの動きの制限も行うことができる。
【0029】
ブレーキ64は、コイルアセンブリ150に供給される電圧の極性を反転させるためのHブリッジを操舵制御ユニット内に備えていてもよい。この場合、ブレーキ64が解放位置から押付位置に作動する速度が上昇する。ブレーキトルクも増加する。Oリング174は、回転減衰力を与えるためにロータアセンブリの外周に嵌められている。ブレーキ64の本体140にある支持レッジ(support ledge)176は、ブレーキ64の熱膨張を最小にする。
【0030】
エンドグランド68は、
図19~
図21に詳細に示されている。エンドグランド68は、環状本体178を含む。環状本体178は、フローティングシールハウジング(floating seal housing)180およびブッシング182を収容する。ブッシング182は、内側シール184と外側シール186との間に配置されている。内側シール184には内側シール付勢部188が設けられ、外側シール186には外側シール付勢部190が設けられている。外側シール186および外側シール付勢部190は、シールハウジング180における溝192に収容されている。環状本体178とシールハウジング180との間には、シール、この例では、Oリング194が配置されている。Oリング194は、シールハウジング180の凹状壁198上にある。これにより、フローティングシールハウジング184に対してOリング194がセンタリングされる。シールハウジング180には、第1のラジアルリップ200および第2のラジアルリップ202が設けられる。第1のラジアルリップ200は弾性を有しており、エンドグランド68内へのシールハウジング180の取り付けを容易にする。第2のラジアルリップ202は、鋭角の縁を有しており、この縁は、出力シャフト44からごみを掻き取るためのスクレーパとして機能し、安定性および出力シャフト追跡(output shaft tracking)を提供する。シールハウジング180には、また、Oリング194の取り付けを容易にする面取り部204が設けられている。シールハウジング180の後壁206は、安定性のために環状本体178にぴったり重なっている。シールハウジング180の後方ヒール部208は、出力シャフト44と同心であり、剛性のある低摩耗材料で形成されている。Oリング194は、出力シャフト44からシールハウジング180に負荷が加わったときに、シールハウジング180が径方向に移動できるようにしている。これにより、シールハウジング180の第2のラジアルリップ202および後方ヒール部208の摩耗が軽減される。
【0031】
図22は、ティラーアーム46に結合された電動アクチュエータ40を示す。磁気位置目標物(magnetic position target)210は、操舵制御ユニット50内の結合アセンブリ48に取り付けられており、絶対位置センサ212aおよび212bは、電動アクチュエータ40に取り付けられている。絶対位置センサ212aおよび212bは、磁気位置目標物210の位置に基づいて操舵位置を検出する。操舵位置は、操舵角と呼ばれる場合がある。操舵動作がティラーアーム46に与えられると、操舵制御ユニット50ならびに絶対位置センサ212aおよび212bは、出力シャフト44に対して軸方向に動く。操舵動作がティラーアーム46に与えられると、結合アセンブリ48および磁気位置目標物210は回転する。結合アセンブリ48は、磁気位置目標物210の湾曲面216を駆動する湾曲面214を有する。湾曲面214および湾曲面216は、製造公差および外部荷重による潜在的な回転ずれに対処するために、出力シャフト44の軸方向の回転自由度を確保する。
【0032】
絶対位置センサ212aおよび212bは、
図23に示すように操舵制御ユニット50内に配置されたマイクロコントローラ218に操舵位置を信号で伝達する。相対位置センサ220は、マイクロコントローラ218にモータ(M)の位置を信号で伝達する。絶対位置センサ212aおよび212bは、この例では、異方性磁気抵抗センサの形態であり、相対位置センサ220は、この例では、ホール効果センサであるが、任意の好適な絶対位置センサおよび相対位置センサを使用してもよい。相対位置センサ220は、
図8Aに示されるホール効果センサボード上のホール効果センサのうちの1つ以上であってもよい。操舵制御ユニット50は、絶対位置センサ212aおよび212bを含む複数の絶対位置センサの関係に基づいて、アクチュエータストロークを通じた複数点を用いて累積位置を較正する。累積位置のこのマップは、不揮発性メモリ242に記憶される。これにより、累積操舵位置をマイクロコントローラ218に信号で伝達し、次いで、アクチュエータ40が時間をかけて動くに従って相対位置を累積した累積位置を初期化する。
【0033】
累積位置は、
図24に示すように、起動時に、好ましくは、モータおよびブレーキが作動していない場合に初期化される。これにより、累積位置の初期化精度が高くなる。バックラッシュは、単一の操舵位置に両側から接近した後、この操舵位置における累積位置の信号と絶対位置センサ212aおよび212bの信号とを比較することによって測定することができる。バックラッシュは、主として、絶対位置センサ212aおよび212bが配置されている操舵軸線に沿って、舵柄とアクチュエータとの間の接合部に生じる。相対位置センサ220が配置されている出力シャフトの軸線に沿って最小限のバックラッシュが生じる。操舵制御ユニット50は、初期の操舵動作中にバックラッシュを監視して、バックラッシュを吸収する著しい操舵動作があったかどうかを判定する。操舵制御ユニット50は、絶対位置センサ212aおよび212bの値を比較して、バックラッシュの大きさを判定する。次に、操舵制御ユニット50は、累積位置を再初期化することによりバックラッシュを補償する。操舵制御ユニット50は、バックラッシュを吸収するために操舵範囲を制限し、バックラッシュが補償された後、全操舵範囲を有効化してもよい。操舵制御ユニット50は、また、測定されたバックラッシュを不揮発性メモリ242に記憶して、経時的なバックラッシュの変化を監視してもよい。不揮発性メモリに記憶されたこの情報は、警告またはサービスリマインダを提供するために用いられ得る。操舵制御ユニット50は、バックラッシュが許容可能な安全しきい値を超えた場合、アクチュエータの性能を低下させてもよい。
【0034】
絶対位置センサ212aおよび212bと相対位置センサ220との組み合わせの使用により、それぞれのセンサが故障検知のために他のセンサと比較される3重の余剰性がもたらされる。この例では、操舵制御ユニット50は、絶対位置センサ212aおよび212bの信号と累積位置とを比較して故障を検知する。追加の累積位置を提供するために追加の絶対位置センサおよび相対位置センサを使用すると、使用されるセンサの数に基づいて複数の余剰性が生じることになる。例えば、
図23を参照すると、モータ電圧センサ236は、モータの相対位置を判定するために、モータの転流時に、ステータ相の逆起電力波形を測定してもよい。これにより、操舵制御ユニット50は、モータ電圧センサを追加の相対位置センサとして使用することが可能となる。
【0035】
操舵位置は、操舵制御ユニット50によって連続的に監視される。従来のように操舵位置誤差を最小にするために、PID位置閉ループ制御が用いられる。操舵制御ユニット50は、ステータ60にエネルギーを与えて、ロータ62の磁場228の前方に磁場226を生成する。これにより、回転トルクが生じる。これは、転流と呼ばれる従来のモータ動作である。操舵制御ユニット50は、操舵位置誤差が所望のしきい値誤差に最小化されると、相転流の進行を停止させる。次に、操舵制御ユニット50は、
図25~
図28に示すように、ステータ60の磁場226をロータアセンブリ62の磁場228に揃えて、ロータアセンブリ62を回転させる回転トルクを最小にするために、ステータ60にエネルギーを与える。操舵制御ユニット50は、三相交流の三相のうちの一つを選択して、保持PWMを印加する。これは、時間の関数としてステータ60に印加されるPWMデューティサイクルを示すグラフである
図25に最もよく示されている。
【0036】
前記の説明は、累積位置が始動時に初期化され、バックラッシュを補償するために初期操舵動作後に再初期化されることを述べている。しかしながら、操舵制御ユニット50は、特定の初期化条件が満たされない場合に初期化を遅らせるか、または特定のトリガイベントの後に再初期化することを選択してもよい。例えば、故障したセンサが動作中に回復した後などである。
【0037】
図25を特に参照し、
図29に示される状態を参照すると、操舵制御ユニット50は、時間T0と時間T1との間で駆動状態であり、その間に操舵制御ユニット50はPWMを印加するので転流が存在する。時間T1で所望の操舵位置に到達し、操舵制御ユニットは、保持状態に移行する。操舵制御ユニットは、保持状態の間に保持PWMを印加する。操舵制御ユニット50は、三相電流の第一の相に正のPWMおよび電流を印加し、三相電流の第二の相に負のPWMおよび電流を印加することにより、保持PWMを印加する。保持PWMは、時間T1で最初に印加されたときは比較的高いが、保持状態でバックドライブ(出力側から入力側に伝達された力により生じる動作)を制限するために、時間T3で最小保持PWMに達するまで、時間T2中のトルク低減状態の間、制御された速度で低減される。バックドライブ保持PWMは、バックドライブトルク(バックドライブを発生させるトルク)を打ち消す、すなわち、ロータアセンブリ62の位置を保持する保持トルクを生成する。保持トルクは、モータを回転させず、且つ、バックドライブトルクよりも大きい値になりうる。
図26は、バックドライブトルクに対抗する保持トルクを示す。操舵制御ユニット50は、船舶の速度、エンジン回転速度、および操舵位置のうちの少なくとも1つの関数として最小保持PWMを設定してもよい。
図23を再び参照すると、船舶の速度は、船速センサ250によって検出されてもよく、エンジン回転速度は、エンジン回転速度センサ252によって検出されてもよい。
【0038】
しかしながら、バックドライブトルクは、ラダー負荷に正比例し、ラダー負荷は、プロペラトルク、船体動特性、エンジン取付構造、舵角(rudder angle)、エンジン回転速度、および船舶のトルクの関数である。したがって、バックドライブトルクは、特にターン時および/または高速時に、著しく変動する場合がある。したがって、バックドライブトルクは、保持PWMおよび保持トルクよりも大きくなる場合がある。この場合、バックドライブが発生する。外部トルクに対抗する保持トルクを維持し、モータの回転を停止するために、位相を変えてもよい。操舵制御ユニット50は、
図29に示す状態図に従ってバックドライブを監視し、トルク増加状態を移行させる。したがって、最小保持PWMは、時間T4で始まるトルク増加状態の間に、バックドライブトルクが保持PWM以下であり、バックドライブが時間T5で停止して保持状態に戻るまで、制御された速度で増加してもよい。操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ224があってもよい。操舵制御ユニット50は、バックドライブトルクを検出する操舵トルクセンサ224からの信号に基づいてPWM増加の大きさおよび割合を判定してもよい。操舵制御ユニット50は、また、バックドライブを検出することができる位置センサ220からの信号に基づいてPWM増加の大きさおよび割合を判定してもよい。
【0039】
保持PWMは、好ましくは、バックドライブトルクに対抗する保持トルクを生成するのに十分であるが、電流消費の非効率性を回避するのに必要なレベルよりも高くないレベルまでできるだけ小さくすべきである。最小保持PWMをエンジン回転速度に基づいて必要に応じて増加させてもよい。この場合、アクチュエータの位置誤差と電流の引き込みが最小限に抑えられ、エンジンがオーバーヒートする可能性が低下する。
【0040】
図23を再び参照すると、この例では、アクチュエータ40に電力を供給するバッテリ230の形態の電源が存在する。バッテリ230の状態を検出する複数のセンサ、この例では、電圧センサ232および電流センサ234が存在する。電圧センサ232および/または電流センサ234は、バッテリ230の容量を検出してもよい。電圧センサ232および/または電流センサ234は、バッテリ230の容量に関してマイクロコントローラ218に信号で伝達してもよく、操舵制御ユニット50は、バッテリ230の容量に応じてモータへの電圧を制御することによってモータに供給される最大電力を制限する。
【0041】
バッテリの電流の引き込みは、
図30に示される3ゾーン電流制限方式を用いることによって制限されてもよい。3ゾーン電流制限方式は、PWM制限を使用して、モータに加わり得る最大PWMを制御する。操舵制御ユニットは、最大PWMまでの任意のPWMを供給することができる。PWM制限は、事前に定義されたスルーレートだけ減少ゾーン内で減少する。減少ゾーンの目的は、バッテリ電流を許容しきい値未満に減少させ、制限することである。PWMは、スルーレート制御PWMコマンドに従って正常/回復ゾーン内で増加または減少することが許可されている。正常/回復ゾーンの目的は、PWMが正常レベルに回復し、PWMコマンドに従うことを可能にすることである。PWM制限は、保持ゾーンでは増加が防止されるが、PWMは、保持ゾーンでは減少してもよい。保持ゾーンの目的は、PWMの増加を防止することによって、電流の増加を維持するまたは減速させることである。保持ゾーンは、バッテリ電流の変動と過度の電圧降下を減らす。これにより、最大バッテリ電流出力が増加する。
図30は、電流制限方法のロジックを示すブロック図である。
【0042】
3ゾーン電流制限方式のゾーンは、例えば、
図31に示されるようにバッテリ電流に基づいてもよい。減少ゾーンは、バッテリ電流が98アンペアを超える場合である。正常/回復ゾーンは、バッテリ電流が93アンペア未満の場合である。保持ゾーンは、バッテリ電流が93アンペアから98アンペアまでの場合である。
図31は、また、用いられている3ゾーン電流制限方式の例を示す。PWMおよびバッテリ電流は、時間T1の間、正常/回復ゾーンで増加することが許可されている。PWMは、時間T2の間、保持ゾーン内で安定して保持される。PWMは、時間T3の間、減少ゾーンで減少する。これにより、モータ電圧(Vm)が低下する。モータ電流の低下は、バッテリ電流(I
B)の低下をもたらし、これによって、バッテリ電流制限の目標が達成される。時間T4の間における急激なトルクおよび電流のリップル(ripple)の結果、バッテリ電流(I
B)は低下し続ける。しかし、PWMは一定のままである。バッテリ電流(I
B)が時間T5の間に正常/回復ゾーンに達すると、時間T6における保持ゾーンにおいて、PWMは、PWMおよびバッテリ電流が安定するまでわずかに増加する。
【0043】
図32に示されるように、操舵制御ユニット50は、エンジン回転速度を低下させるための3段階プロセスと、エンジンの衝突を防止するためのポーズアクチュエータムーブメント(pause actuator movement)とを用いてもよい。
図33に示すように、各エンジンは、スケジューラ工程中に生成される、それ自身のエンジン目標舵角位置スケジューラを有する。エンジン目標舵角スケジュールは、船舶目標舵角操舵位置コマンドに基づく。スケジューラは、エンジンの形状、エンジン間の距離、および操舵角によって規定される衝突点によって定義されるので、すべてのエンジンがそれぞれのエンジン目標舵角スケジュールで動作すると、エンジンの衝突はないはずである。
【0044】
しかしながら、
図34Aおよび
図34Bに示すように、ある一つのエンジンが、より多くの負荷を受ける場合があり、減速する場合がある。
図34Aでは、複数のエンジンが回動し始めており、左舷エンジン12および内側左舷エンジン14aがそれぞれのスケジューラに基づいて動作している。複数のスケジューラは、同じエンジン目標舵角θを有するため、エンジンの衝突は生じないはずである。しかしながら、
図34Bでは、左舷エンジン12は負荷のために減速している。したがって、
図35に示される減速線と停止線との間の離間距離に応じて、内側左舷エンジン14aをレシオメトリック(ratiometric)に減速させることを含む減速工程が存在する。
【0045】
図35は、エンジンの停止線および減速線と右舷の隣接エンジンとの関係を示す図である。Y軸は、本エンジンの操舵位置であり、X軸は、隣接エンジンの操舵位置である。操舵制御ユニット50は、どこで本エンジンの操舵動作を減速させて一時停止させるかを判定するためにマップを使用する。例えば、隣接エンジンが右舷エンジンであり、隣接エンジンの操舵位置が30°である場合、左舷エンジンは、減速する前に22°までしか移動できず、操舵の一時停止が必要な前に24°移動する。ただし、同じ左舷エンジンが左舷方向に舵を取っている場合は、操舵の減速や一時停止の制限はない。内側左舷エンジン14aは、左舷エンジン12の操舵位置に対して減速する。一時停止工程では、アクチュエータの動きを制限するために、アクチュエータのブレーキまたは保持PWMが適用される。
【0046】
先導エンジンと後続エンジンとは、異なる挙動を示し、後続エンジンのみがエンジン速度を低下させ、アクチュエータの動きを停止させる。操舵制御ユニット50は、エンジンが目標アクチュエータ位置に近づいたときにエンジン速度を低下させアクチュエータの動きを停止させるために、それぞれのエンジンの位置および隣接エンジンの相対位置を監視する。
図23を再び参照すると、例えば、操舵制御ユニット50は、前述のように絶対センサ212aおよび212bならびに相対センサ220に基づいてエンジンの相対位置を判定してもよいし、隣接エンジンの位置センサ254に基づいて相対位置を判定してもよい。
図36は、操舵制御ユニットが3つの状態でアクチュエータを動作させることを示している。正常状態では、アクチュエータは、制限なく最高速度まで動作することが可能である。減速状態では、アクチュエータは、減速曲線によって決定された最高制限速度まで動作することが可能である。減速状態では、最高速度制限は、方向にも依存する。待機状態では、アクチュエータは、第1の方向にさらに移動することが防止される。しかしながら、待機状態では、アクチュエータは、第1の方向とは反対の第2の方向に移動することが可能である。
【0047】
隣接エンジン間の距離は、正常状態と、減速状態と、待機状態と、の間での移行を引き起こすために用いられる。より速い最高速度が可能となる状態に戻る距離は、より遅い状態に移行するための距離と同じであるか、またはそれより大きくてもよい。隣接するアクチュエータが既定の側になければ、アクチュエータは、この既定の側に向かって移動しているときに、常にこの状態にある。この3段階プロセスは、エンジン間の離間距離をより小さくでき、これによって、より多くのエンジンを船舶に搭載できる。
【0048】
図37は、操舵制御ユニット50のトー角ロジックが船舶目標舵角260に依存することを示す可変トー図である。船舶目標舵角が0°のとき、トー角262は、その最大値にあり、トー設定に等しい。この例では、トー角は、それぞれのエンジンのエンジン目標舵角を修正し、2つのハードストップ(すなわち、船舶目標舵角=+/-30°)で、最小トー値までレシオメトリックに減少する。この例では、最小トー値は、ハードストップで0°と定義されている。負のトー角はトーインを示し、正のトー角はトーアウトを示す。これは、大型エンジンであり、離間距離が小さいときに特に有利である。舵角が最小または最大となるハードオーバー操舵におけるこれらのシステムに関して、ゼロ以外のトー値は、回動中の外側のエンジンの操舵範囲を減少させ、それによって、回動半径などの操舵性能に影響を及ぼす場合がある。しかしながら、他の例では、他のパラメータが使用されてもよい。
【0049】
当業者であれば理解されるように、前述の詳細な説明の多くは、例示に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。