(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】半導体装置およびメモリの読み出し方法
(51)【国際特許分類】
G11C 16/26 20060101AFI20230508BHJP
G11C 16/24 20060101ALI20230508BHJP
G11C 13/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G11C16/26 120
G11C16/24 110
G11C13/00 400B
(21)【出願番号】P 2019074691
(22)【出願日】2019-04-10
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 晃一
【審査官】堀田 和義
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-525781(JP,A)
【文献】特開2018-163728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/26
G11C 16/24
G11C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワード線と、
ビット線と、
前記複数のワード線と前記ビット線との交点にそれぞれ設けられ、前記複数のワード線によってそれぞれ選択される複数のメモリセルと、
前記複数のワード線に対して時分割で活性化される参照ワード線と、
前記参照ワード線と前記ビット線との交点に設けられ、前記参照ワード線によって選択される参照セルと、
前記ビット線に読み出し電位を印加し、前記複数のワード線のいずれかによって選択される選択メモリセルからの読み出し電流と、前記参照セルからの読み出し参照電流とを、前記時分割で前記ビット線に流すプリチャージ回路と、
前記ビット線に流れる電流に比例する電流である検出電流が流れる電流検出線と、
前記電流検出線に接続され、前記電流検出線に前記時分割で流れる前記読み出し電流と前記読み出し参照電流との大小を比較する電流比較回路と、
を有し、
前記プリチャージ回路は、
第1の電源電位と前記ビット線との間に電流経路が設けられる第1のトランジスタと、
前記ビット線の電位と予め定めた参照電位とを入力として前記第1のトランジスタの制御電位を帰還制御するバイアス制御回路と、
を有し、
前記バイアス制御回路は、
制御ノードに前記参照電位が印加され、前記ビット線と前記第1のトランジスタの制御ノードとの間に電流経路が設けられる第3のトランジスタと、
前記第3のトランジスタと第2の電源電位との間に設けられ、前記第3のトランジスタの負荷電流源となる第1の定電流源と、
を有する、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
さらに、前記参照電位を生成する参照電位生成回路を備え、
前記参照電位生成回路は、
前記第1の電源電位と前記第3のトランジスタの前記制御ノードとの間に設けられ、ダイオード接続で構成される第4のトランジスタと、
前記第4のトランジスタと前記第2の電源電位との間に設けられ、前記第4のトランジスタに流れる電流を定める第2の定電流源と、
を有する、
半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、
前記複数のメモリセルは、フラッシュメモリセルである、
半導体装置。
【請求項4】
複数のワード線と、
ビット線と、
前記複数のワード線と前記ビット線との交点にそれぞれ設けられ、前記複数のワード線によってそれぞれ選択される複数のメモリセルと、
前記複数のワード線に対して時分割で活性化される参照ワード線と、
前記参照ワード線と前記ビット線との交点に設けられ、前記参照ワード線によって選択される参照セルと、
前記ビット線に読み出し電位を印加し、前記複数のワード線のいずれかによって選択される選択メモリセルからの読み出し電流と、前記参照セルからの読み出し参照電流とを、前記時分割で前記ビット線に流すプリチャージ回路と、
前記ビット線に流れる電流に比例する電流である検出電流が流れる電流検出線と、
前記電流検出線に接続され、前記電流検出線に前記時分割で流れる前記読み出し電流と前記読み出し参照電流との大小を比較する電流比較回路と、
を有し、
前記プリチャージ回路は、
第1の電源電位と前記ビット線との間に電流経路が設けられる第1のトランジスタと、
前記ビット線の電位と予め定めた参照電位とを入力として前記第1のトランジスタの制御電位を帰還制御するバイアス制御回路と、
を有し、
前記第1のトランジスタは、pMOSトランジスタであり、
前記プリチャージ回路は、前記読み出し電位を、前記第1の電源電位よりも前記第1のトランジスタの飽和ドレイン電圧だけ低い電位に定める、
半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置において、
前記複数のメモリセルは、フラッシュメモリセルである、
半導体装置。
【請求項6】
複数のワード線と、
ビット線と、
前記複数のワード線と前記ビット線との交点にそれぞれ設けられ、前記複数のワード線によってそれぞれ選択される複数のメモリセルと、
前記複数のワード線に対して時分割で活性化される参照ワード線と、
前記参照ワード線と前記ビット線との交点に設けられ、前記参照ワード線によって選択される参照セルと、
前記ビット線に読み出し電位を印加し、前記複数のワード線のいずれかによって選択される選択メモリセルからの読み出し電流と、前記参照セルからの読み出し参照電流とを、前記時分割で前記ビット線に流すプリチャージ回路と、
前記ビット線に流れる電流に比例する電流である検出電流が流れる電流検出線と、
前記電流検出線に接続され、前記電流検出線に前記時分割で流れる前記読み出し電流と前記読み出し参照電流との大小を比較する電流比較回路と、
を有し、
前記ビット線は、
複数のローカルビット線と、
前記複数のローカルビット線に対して共通に設けられ、ビット線選択スイッチを介して前記複数のローカルビット線のいずれかに接続されるグローバルビット線と、
を有し、
前記複数のローカルビット線のそれぞれには、前記複数のメモリセルが接続され、
前記グローバルビット線には、前記参照セルが接続され、
前記グローバルビット線には、前記複数のローカルビット線のいずれかである選択ローカルビット線が接続された状態で、前記選択メモリセルからの前記読み出し電流と、前記参照セルからの読み出し参照電流とが前記時分割で流れる、
半導体装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置において、
前記プリチャージ回路は、
第1の電源電位と前記ビット線との間に電流経路が設けられる第1のトランジスタと、
前記ビット線の電位と予め定めた参照電位とを入力として前記第1のトランジスタの制御電位を帰還制御するバイアス制御回路と、
を有し、
前記半導体装置は、さらに、前記第1の電源電位と前記電流検出線との間に電流経路が設けられ、前記第1のトランジスタと同じ前記制御電位が印加される第2のトランジスタを有する、
半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
前記第2のトランジスタのゲート幅とゲート長の比は、前記第1のトランジスタのゲート幅とゲート長の比よりも小さい、
半導体装置。
【請求項9】
請求項6記載の半導体装置において、
前記プリチャージ回路は、
第1の電源電位と前記ビット線との間に電流経路が設けられる第1のトランジスタと、
前記ビット線の電位と予め定めた参照電位とを入力として前記第1のトランジスタの制御電位を帰還制御するバイアス制御回路と、
を有し、
前記バイアス制御回路は、前記ビット線の電位と前記参照電位とが一致するように前記第1のトランジスタの前記制御電位を帰還制御する差動アンプ回路を有する、
半導体装置。
【請求項10】
請求項7記載の半導体装置において、
前記電流比較回路は、
前記電流検出線と第2の電源電位との間に電流経路が設けられる第3のトランジスタと、
オンに制御された際に、前記第3のトランジスタをダイオード接続に切り替える切り替えスイッチと、
前記第3のトランジスタの制御電位を保持する容量素子と、
を有する、
半導体装置。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置において、
前記切り替えスイッチは、MOSトランジスタであり、
前記切り替えスイッチのオン・オフは、前記第1の電源電位と前記第2の電源電位との間の電圧振幅よりも大きい電圧振幅を持つスイッチ制御信号で制御される、
半導体装置。
【請求項12】
請求項6記載の半導体装置において、
前記複数のメモリセルは、フラッシュメモリセルである、
半導体装置。
【請求項13】
複数のメモリセル、参照セルおよびプリチャージ回路が接続される第1の電流パスと、
電流比較回路が接続され、前記第1の電流パスに流れる電流に比例する電流が流れる第2の電流パスと、
を有するメモリの読み出し方法であって、
前記プリチャージ回路が、前記複数のメモリセルのいずれかである選択メモリセルに前記第1の電流パスを介して読み出し電位を印加することで前記選択メモリセルからの読み出し電流を前記第1の電流パスに流す第1の期間と、
前記第1の期間の後または前に設けられ、前記参照セルからの読み出し参照電流を前記第1の電流パスに流す第2の期間と、
を有し、
前記第1の期間または前記第2の期間の一方である記憶期間では、前記電流比較回路が、前記第2の電流パスを介して、前記読み出し電流に比例する第1の検出電流または前記読み出し参照電流に比例する第2の検出電流の一方を記憶電流として記憶し、
前記第1の期間または前記第2の期間の他方である比較期間では、前記電流比較回路が、前記第2の電流パスを介して得られた前記第1の検出電流または前記第2の検出電流の他方と、前記記憶期間で記憶した前記記憶電流との大小を比較し、
前記プリチャージ回路は、MOSトランジ
スタで構成される電流源を有し、前記読み出し電位として、電源電位よりも前記MOSトランジスタの飽和ドレイン電圧だけ低い電位を用いる、
メモリの読み出し方法。
【請求項14】
請求項13記載のメモリの読み出し方法において、
前記第2の電流パスに流れる電流は、前記第1の電流パスに流れる電流よりも小さくなるように設定される、
メモリの読み出し方法。
【請求項15】
請求項13記載のメモリの読み出し方法において、
前記メモリは、フラッシュメモリである、
メモリの読み出し方法。
【請求項16】
複数のメモリセル、参照セルおよびプリチャージ回路が接続される第1の電流パスと、
電流比較回路が接続され、前記第1の電流パスに流れる電流に比例する電流が流れる第2の電流パスと、
を有するメモリの読み出し方法であって、
前記プリチャージ回路が、前記複数のメモリセルのいずれかである選択メモリセルに前記第1の電流パスを介して読み出し電位を印加することで前記選択メモリセルからの読み出し電流を前記第1の電流パスに流す第1の期間と、
前記第1の期間の後または前に設けられ、前記参照セルからの読み出し参照電流を前記第1の電流パスに流す第2の期間と、
を有し、
前記第1の期間または前記第2の期間の一方である記憶期間では、前記電流比較回路が、前記第2の電流パスを介して、前記読み出し電流に比例する第1の検出電流または前記読み出し参照電流に比例する第2の検出電流の一方を記憶電流として記憶し、
前記第1の期間または前記第2の期間の他方である比較期間では、前記電流比較回路が、前記第2の電流パスを介して得られた前記第1の検出電流または前記第2の検出電流の他方と、前記記憶期間で記憶した前記記憶電流との大小を比較し、
前記第1の電流パスは、
前記複数のメモリセルが接続されるローカルビット線と、
前記参照セルおよび前記プリチャージ回路が接続され、かつ、前記ローカルビット線にビット線選択回路を介して接続されるグローバルビット線と、
を有し、
前記第1の期間および前記第2の期間では、共に、前記ローカルビット線と前記グローバルビット線は、前記ビット線選択回路を介して接続状態となっている、
メモリの読み出し方法。
【請求項17】
請求項16記載のメモリの読み出し方法において、
前記メモリは、フラッシュメモリである、
メモリの読み出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびメモリの読み出し方法に関し、例えば、フラッシュメモリを含む半導体装置およびフラッシュメモリの読み出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、スピン注入メモリにおけるセンスアンプ回路の構成が示される。当該センスアンプ回路では、選択メモリセルが接続されるビット線に読み出し電位を印加するプリチャージ回路と、選択メモリセルからの読み出し電流を記憶し、それを参照セルからの読み出し参照電流と比較する回路とが同一の電流パス上に設けられる。読み出し動作時には、時分割を用いて、前半で選択メモリセルからビット線への読み出し電流が記憶され、後半で、当該記憶された読み出し電流が、参照セルから同一ビット線に読み出された読み出し参照電流と比較される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Taehui Na,他4名,“Data-Cell-Variation-Tolerant Dual-Mode Sensing Scheme for Deep Submicrometer STT-RAM”,IEEE TRANSACTIONS ON CIRCUITS AND SYSTEMS I: REGULAR PAPERS,Vol.65,No.1,2018年1月,p.163-174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、フラッシュメモリ等の不揮発メモリにおいて、ビット線当たりのメモリセル数の増加、微細化、多値化等による高密度化が進むと、非選択メモリセルによるリーク電流(ビット線リーク電流)の影響が顕在化する。具体的には、高密度化に伴い、選択メモリセルによる読み出し電流に対する、非選択メモリセルによるビット線リーク電流の比率が高まる。その結果、選択メモリセルの記憶データを判別する際のマージンである読み出しマージンが低下する恐れがある。
【0005】
後述する実施の形態は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態による半導体装置は、複数のワード線と、複数のビット線と、複数のメモリセルと、参照ワード線と、参照セルと、プリチャージ回路と、電流検出線と、電流比較回路とを有する。複数のメモリセルは、複数のワード線とビット線との交点にそれぞれ設けられ、複数のワード線によってそれぞれ選択される。参照ワード線は、複数のワード線に対して時分割で活性化される。参照セルは、参照ワード線とビット線との交点に設けられ、参照ワード線によって選択される。プリチャージ回路は、ビット線に読み出し電位を印加し、複数のワード線のいずれかによって選択される選択メモリセルからの読み出し電流と、参照セルからの読み出し参照電流とを、時分割でビット線に流す。電流検出線には、ビット線に流れる電流に比例する電流である検出電流が流れる。電流比較回路は、電流検出線に接続され、電流検出線に時分割で流れる読み出し電流と読み出し参照電流との大小を比較する。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施の形態によれば、メモリセルの読み出しマージンを拡大することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1による半導体装置において、主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
【
図2】
図1におけるバイアス制御回路の構成例を示す回路図である。
【
図3】(a)は、
図1における電流比較回路の構成例を示す回路図であり、(b)は、(a)のより詳細な構成例を示す回路図である。
【
図4】
図1の半導体装置における読み出し動作時の動作例を示す波形図である。
【
図5】本発明の実施の形態1によるメモリの読み出し方法の一例を示すフロー図である。
【
図6】本発明の実施の形態2による半導体装置において、主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
【
図7】
図6の半導体装置における読み出し動作時の動作例を示す波形図である。
【
図8】本発明の実施の形態3による半導体装置において、
図1のバイアス制御回路周りの構成例を示す回路図である。
【
図9】
図8における参照電位生成回路の構成例を示す回路図である。
【
図10】本発明の実施の形態4による半導体装置において、
図1のバイアス制御回路周りの構成例を示す回路図である。
【
図11】本発明の実施の形態5による半導体装置において、
図1の電流比較回路の構成例を示す回路図である。
【
図12】
図11の電流比較回路を搭載した半導体装置の読み出し動作時の動作例を示す波形図である。
【
図13】本発明の比較例による半導体装置において、主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
【
図14】フラッシュメモリセルの読み出し特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0010】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0011】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。なお、実施の形態では、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の一例としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(MOSトランジスタと略す)を用いるが、ゲート絶縁膜として非酸化膜を除外するものではない。図面において、pチャネル型MOSトランジスタ(pMOSトランジスタ)にはゲートに丸印の記号を付すことで、Nチャネル型MOSトランジスタ(nMOSトランジスタ)と区別することとする。図面にはMOSトランジスタの基板電位の接続は特に明記していないが、MOSトランジスタが正常動作可能な範囲であれば、その接続方法は特に限定しない。
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
(実施の形態1)
《半導体装置の構成》
図1は、本発明の実施の形態1による半導体装置において、主要部の構成例を示す回路ブロック図である。実施の形態1の半導体装置は、例えば、メモリデバイスや、または、メモリ回路、ロジック回路、アナログ回路を搭載したマイクロコントローラデバイスまたはSoC(System on a Chip)デバイス等である。
図1には、このような半導体装置におけるメモリ回路部分の主要部の構成例が示される。
図1に示す半導体装置は、メモリアレイMARYと、ビット線選択回路YSWと、参照セルRCと、センスアンプ回路[1]SA1STと、センスアンプ回路[2]SA2NDとを有する。
【0014】
メモリアレイMARYは、X軸方向に延伸する複数のワード線WL[i],WL[i+1],…と、X軸方向と交差するY軸方向に延伸するローカルビット線LBLと、複数のメモリセルMC[i],MC[i+1],…とを備える。なお、実施の形態1の説明において、X軸方向及びY軸方向の定義は便宜的なもので、ワード線WLが伸びる方向をY軸方向、ローカルビット線が伸びる方向をX軸方向としても良い。明細書では、複数存在する、ワード線を総称してワード線WLと呼び、複数存在する、メモリセルを総称してメモリセルMCと呼ぶ。複数のメモリセルMC[i],MC[i+1],…は、複数のワード線WL[i],WL[i+1],…と、ローカルビット線LBLとの交点にそれぞれ設けられ、複数のワード線WL[i],WL[i+1],…によってそれぞれ選択される。明細書では、複数のワード線WLのいずれかによって選択されるメモリセルMCを、選択メモリセルMCと呼ぶ。
【0015】
メモリセルMCは、例えば、フラッシュメモリセルである。
図1では記載の簡素化のため省略されているが、メモリアレイMARYは、詳細には、ローカルビット線LBLも複数備える。この場合、メモリセルMCは、複数のワード線WLと複数のローカルビット線LBLとの交点にそれぞれ設けられ、マトリックス状に配置される。各メモリセルMCは、複数のワード線WLのいずれかと複数のローカルビット線LBLのいずれかによって選択される。
【0016】
グローバルビット線GBLは、複数(例えば32本等)のローカルビット線LBLに対して共通に設けられる。
図1では記載の簡素化のため、1本のローカルビット線LBLのみが示される。ビット線選択回路YSWは、ビット線選択信号YS[k]に応じて、複数のローカルビット線LBLの中のいずれかをグローバルビット線GBLに接続する。なお、半導体装置は、詳細には、グローバルビット線GBLも複数備える。この場合、同様にして、グローバルビット線GBL毎に、ビット線選択回路YSWと複数のローカルビット線LBLとが設けられる。
【0017】
明細書では、特に区別する必要が無い場合、ローカルビット線LBLとグローバルビット線GBLとを総称してビット線BLと呼ぶ。例えば、ビット線選択回路YSWを介してグローバルビット線GBLに1本のローカルビット線LBLが接続された状態では、当該ローカルビット線LBLとグローバルビット線GBLは、1本のビット線BLとみなすことができる。
【0018】
参照セルRCは、参照ワード線RWLとグローバルビット線GBLとの交点に設けられ、参照ワード線RWLによって選択される。参照セルRCは、例えば、定電流源等を含み、読み出し動作時に、選択メモリセルMCからの読み出し電流Icelの大きさ(論理レベル)を判別するための読み出し参照電流Irefを生成する。参照ワード線RWLは、詳細は後述するが、複数のワード線WLに対して時分割で活性化される。
【0019】
センスアンプ回路[1]SA1STは、プリチャージ回路PREと、pMOSトランジスタMP2と、電流比較回路CCMPとを備える。プリチャージ回路PREは、概略的には、読み出し動作時に、ビット線BL(詳細にはグローバルビット線GBLを介して選択されたローカルビットLBL)に読み出し電位VRDを印加し、選択メモリセルMCからの読み出し電流Icelと、参照セルRCからの読み出し参照電流Irefとを、時分割でビット線BLに流す。プリチャージ回路PREは、pMOSトランジスタMP1と、バイアス制御回路BSCTとを有する。
【0020】
pMOSトランジスタMP1は、電源電位Vddと、グローバルビット線GBLとの間に電流経路が設けられ、ビット線BLに読み出し電流Icelまたは読み出し参照電流Irefを流すための電流源として機能する。バイアス制御回路BSCTは、例えば、アンプ回路AMPを備え、ビット線BL(グローバルビット線GBL)の電位と予め定めた参照電位VRF1とを入力として、pMOSトランジスタMP1のゲート電位(制御電位)であるバイアス電位BIASPを帰還制御する。
【0021】
pMOSトランジスタMP2は、電源電位Vddと電流検出線CDLとの間に電流経路が設けられ、pMOSトランジスタMP1と同じバイアス電位(制御電位)BIASPが印加される。これにより、pMOSトランジスタMP2は、pMOSトランジスタMP1に対するカレントミラー用の電流源として機能し、電流検出線CDLに、ビット線BLに流れる電流に比例する電流である検出電流を流す。この例では、pMOSトランジスタMP1,MP2のゲート幅とゲート長の比(ゲート幅(W)/ゲート長(L))は同一であるものとする。この場合、電流検出線CDLに流れる検出電流の大きさは、ビット線BLに流れる電流の大きさに等しくなる。
【0022】
電流比較回路CCMPは、電流検出線CDLに接続され、概略的には、電流検出線CDLに時分割で流れる読み出し電流Icel(詳細には検出電流Ird2a)と読み出し参照電流Iref(詳細には検出電流Irr2a)との大小を比較する。この際に、電流比較回路CCMPは、モード切り替え信号MDに応じて記憶モードと比較モードで動作し、例えば、記憶モードで読み出し電流Icelを記憶し、その後の比較モードで、当該記憶電流と読み出し参照電流Irefとの大小を比較する。センスアンプ回路[2]SA2NDは、電流比較回路CCMPの比較結果が反映された検出電位Vdetを増幅することで、“1”レベル(電源電位Vddレベル)または“0”レベル(接地電源電位レベル)の出力信号Voutを出力する。
【0023】
《各部の詳細》
図2は、
図1におけるバイアス制御回路の構成例を示す回路図である。
図2のバイアス制御回路BSCTaは、
図1のアンプ回路AMPとなる差動アンプ回路を有する。当該差動アンプ回路は、差動対トランジスタとなるnMOSトランジスタMN3,MN4と、負荷電流源となるpMOSトランジスタMP3,MP4と、テール電流源となる定電流源CS1とを備える。当該差動アンプ回路は、nMOSトランジスタMN3に入力されるビット線BL(グローバルビット線GBL)の電位とnMOSトランジスタMN4に入力される参照電位VRF1とが一致するように
図1のバイアス電位BIASPを帰還制御する。
【0024】
具体的には、正極入力となるグローバルビット線GBLの電位が負極入力となる参照電位VRF1よりも高い場合、バイアス電位BIASPは高くなる。その結果、pMOSトランジスタMP1はオフ方向に向けて変化し、グローバルビット線GBLの電位が下がる方向に負帰還制御が働く。逆に、グローバルビット線GBLの電位が参照電位VRF1よりも低い場合、バイアス電位BIASPは低くなる。その結果、pMOSトランジスタMP1はオン方向に向けて変化し、グローバルビット線GBLの電位が高くなる方向に負帰還制御が働く。
【0025】
図3(a)は、
図1における電流比較回路の構成例を示す回路図であり、
図3(b)は、
図3(a)のより詳細な構成例を示す回路図である。
図3(a)に示す電流比較回路CCMPは、nMOSトランジスタMN1と、切り替えスイッチSW1と、容量素子C1とを備える。nMOSトランジスタMN1は、電流検出線CDLと接地電源電位Vssとの間に電流経路が設けられ、電流源として機能する。切り替えスイッチSW1は、モード切り替え信号MDに応じてオン・オフが制御され、オンに制御された際に、nMOSトランジスタMN1をダイオード接続(ゲート・ドレイン短絡)に切り替える。容量素子C1は、nMOSトランジスタMN1のゲート(制御ノード)と接地電源電位Vssとの間に設けられ、nMOSトランジスタMN1のゲート電位(制御電位)を保持する。
【0026】
電流比較回路CCMPは、切り替えスイッチSW1がオンに制御された際には、電流検出線CDLに流れている検出電流を記憶電流として記憶する記憶モードで動作する。具体的には、電流検出線CDLに流れている検出電流によって容量素子C1が充電されることで、nMOSトランジスタMN1は、切り替えスイッチSW1がオフになっても、当該検出電流(記憶電流)を流し続けるように制御される。
【0027】
その後、切り替えスイッチSW1がオフに制御された際、電流比較回路CCMPは、電流検出線CDLに流れている検出電流と、記憶モードで記憶した記憶電流との大小を比較する比較モードで動作する。具体的には、nMOSトランジスタMN1が記憶モードでの記憶電流を流し続けている状態で電流検出線CDLに流れる検出電流の大きさが変化すると、その変化分に応じて電流検出線CDLの電位が変化する。
【0028】
例えば、記憶電流<検出電流の場合、検出電流の増加分によって
図1のセンスアンプ回路[2]SA2NDの入力容量が充電されるため、電流検出線CDLの電位(検出電位Vdet)は高くなる。一方、記憶電流>検出電流の場合、検出電流の減少分によってセンスアンプ回路[2]SA2NDの入力容量が放電されるため、電流検出線CDLの電位(検出電位Vdet)は低くなる。センスアンプ回路[2]SA2NDは、この検出電位Vdetの変化を増幅する。
【0029】
図3(b)の電流比較回路CCMPaにおいて、
図3(a)の容量素子C1は、nMOSトランジスタMN1のしきい値電圧(Vthn)付近の電位を蓄えるために用いられることから、例えば、面積効率の高いnMOSトランジスタMNc1によるMOS容量素子で構成される。nMOSトランジスタMN1にしきい値電圧(Vthn)以上の電位を加えるとソースドレイン間に導電性を有するチャネルが形成される。ソース、ドレイン及びチャネルとゲート間にゲート絶縁膜を介して容量が形成される。従って、MOS容量素子の容量が大きくなる。
【0030】
また、
図3(a)の切り替えスイッチSW1は、nMOSトランジスタMN1のしきい値電圧(Vthn)付近の電位を通すため、nMOSトランジスタMNs1およびpMOSトランジスタMPs1によるCMOSスイッチで構成される。インバータ回路IV1,IV2は、モード切り替え信号MDをnMOSトランジスタMNs1に印加すると共に、その反転信号(/MD)をpMOSトランジスタMPs1に印加する。
【0031】
《半導体装置の動作》
図4は、
図1の半導体装置における読み出し動作時の動作例を示す波形図である。
図4の時刻t0では、ワード線WL[i]およびビット線選択信号YS[k]が活性化され、これに応じてメモリセルMC[i]が選択される。その結果、ビット線BL(ローカルビットLBLおよびグローバルビット線GBL)の電位は、参照電位VRF1よりも低い初期状態の電位から参照電位VRF1に向けて上昇する。この上昇期間では、バイアス制御回路(
図2のBSCTa)は、定常状態の電位“Vdd-|Vthp|”(VthpはpMOSトランジスタMP1のしきい値電圧)よりも低いバイアス電位BIASPを出力するため、pMOSトランジスタMP1,MP2の電流は、定常状態の電流よりも大きくなる。
【0032】
その後、ビット線BLの電位が参照電位VRF1近くに達すると、バイアス制御回路BSCTaは、バイアス電位BIASPとして定常状態の“Vdd-|Vthp|”付近の電位を出力する。これにより、pMOSトランジスタMP1は、読み出し電流Icelにリーク電流Ilkを加えた電流である実読み出し電流Ird1(=Icel+Ilk)を流している状態で定常状態に達する。すなわち、ローカルビット線LBLには、
図1に示されるように、選択メモリセルMC[i]による読み出し電流Icelに加えて、非選択メモリセル(MC[i+1],…)によるリーク電流Ilkも流れる。
【0033】
また、時刻t0では、ワード線WL[i]の活性化と共に、モード切り替え信号MDの“H”レベルによって記憶モードが選択される。これにより、pMOSトランジスタMP2およびnMOSトランジスタMN1に、実読み出し電流Ird1に等しい検出電流Ird2aが流れている状態で、電流比較回路CCMPは、当該検出電流Ird2a(=Ird1)を記憶電流として記憶する。この際に、検出電位Vdetは、nMOSトランジスタMN1のしきい値電圧Vthn付近で安定する。
【0034】
次いで、時刻t1では、ワード線WL[i]の非活性化によって全メモリセルMCが非選択に制御され、代わって、参照ワード線RWLの活性化によって参照セルRCが選択される。この際に、ビット線選択信号YS[k]の活性状態はそのまま維持される。その結果、pMOSトランジスタMP1は、読み出し参照電流Irefにリーク電流Ilkを加えた電流である実読み出し参照電流Irr1(=Iref+Ilk)を流した状態で定常状態に達する。この定常状態に達するまでの期間、バイアス制御回路BSCTaは、電流の変化分に応じて、バイアス電位BIASPを微小に変化させる。
【0035】
また、時刻t1では、参照ワード線RWLの活性化と共に、モード切り替え信号MDの“L”レベルによって比較モードが選択される。比較モードでは、nMOSトランジスタMN1は、時刻t1よりも前の記憶モード時の記憶電流(検出電流Ird2a(=Ird1=Icel+Ilk))をそのまま流し続ける。一方、pMOSトランジスタMP2には、実読み出し参照電流Irr1に等しい検出電流Irr2aが流れる。
【0036】
その結果、センスアンプ回路[2]SA2NDの入力容量は、検出電流Irr2a(=Irr1=Iref+Ilk)と検出電流(記憶電流)Ird2a(=Ird1=Icel+Ilk)との差分電流によって、充電または放電される。この差分電流では、リーク電流Ilkは相殺される。このため、ビット線リーク電流に伴う読み出しマージンの低下を抑制でき、読み出しマージンを拡大することが可能になる。
【0037】
例えば、時刻t1において、時刻t0における選択メモリセルMC[i]の記憶データが“0”であった場合、Icel>Iref(Ird2a>Irr2a)であるため、センスアンプ回路[2]SA2NDの入力容量は放電され、検出電位Vdetは、Vthn付近の電位より低下する。逆に、時刻t0における選択メモリセルMC[i]の記憶データが“1”であった場合、Icel<Iref(Ird2a<Irr2a)であるため、センスアンプ回路[2]SA2NDの入力容量は充電され、検出電位Vdetは、Vthn付近の電位より上昇する。
【0038】
検出電位Vdetの変化が一定以上に達した場合、時刻t2において、センスアンプ回路[2]SA2NDが活性化される。センスアンプ回路[2]SA2NDは、検出電位Vdetの変化をCMOSレベル(Vdd/Vssレベル)まで増幅する。センスアンプ回路[2]SA2NDによる増幅が完了すると、時刻t3において、参照ワードRWLおよびビット線選択信号YS[k]は非活性化される。その結果、pMOSトランジスタMP1(ひいてはpMOSトランジスタMP2)の電流パスは遮断され、センスアンプ回路[1]SA1STは、非活性化される。
【0039】
なお、ここでは、記憶モードで選択メモリセルMC[i]からの読み出し電流Icelを記憶し、比較モードで参照セルRCからの読み出し参照電流Irefとの比較を行ったが、記憶モードで読み出し参照電流Irefを記憶し、比較モードで読み出し電流Icelとの比較を行うような方式を用いてもよい。また、参照セルRCは、場合によっては、グローバルビットGBLの代わりにローカルビット線LBLのそれぞれに対して設けられてもよい。ただし、参照セルRCをグローバルビットGBLに対して設けることで、各ローカルビット線LBLに対して設ける場合と比較して、参照セルRCの数を1/k(kは、ビット線選択回路YSWに接続されるローカルビット線LBLの数)に削減できる。
【0040】
《半導体装置(比較例)の構成および実施の形態1との比較》
図13は、本発明の比較例による半導体装置において、主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
図13の半導体装置では、
図1の構成例と異なるセンスアンプ回路[1]SA1ST’を有する。センスアンプ回路[1]SA1ST’は、電流比較回路CCMP’とクランプ用のnMOSトランジスタMN10’とを備える。
図13に示す電流比較回路CCMP’は、pMOSトランジスタMP1’と、切り替えスイッチSW1’と、容量素子C1’とを備える。電流比較回路CCMP’では、
図3の構成例と異なり、pMOSトランジスタMP1’を用いて、電源電位Vddと電流検出線CDL’との間に電流経路が設けられる。また、電流比較回路CCMP’は、選択メモリセルMC’と同一の電流パス上に設けられることで、プリチャージ機能を有する。
【0041】
読み出し電位VRDは、nMOSトランジスタMN10’へのクランプ電位Vclpによって定められる。メモリセルMC’は、例えば、抵抗型の不揮発メモリセル等である。この場合、読み出し電位VRDは、例えば、100mV等に設定される。参照セルRCは、モード切り替え信号MDの反転信号(/MD)によって制御されるスイッチ用のnMOSトランジスタMN11’を介してグローバルビット線GBLに接続される。しかし、このような半導体装置において、仮に、メモリセルMC’にフラッシュメモリセルを適用した場合、次のような問題が生じ得る。
【0042】
第一の問題として、ビット線リーク電流に伴う読み出しマージンの低下を必ずしも抑制できるとは限らない。例えば、
図13において、ビット線選択信号YS[k]を非活性化した状態でモード切り替え信号MDを“L”レベルに制御すると共に参照ワード線RWLを活性化することで、比較モードに移行することも考えられる。この場合、ビット線リーク電流は相殺されない。一方、実施の形態1の半導体装置では、
図4で述べたように、記憶モードでのビット線選択信号YS[k]の活性状態を維持したまま比較モードに移行することで、リーク電流Ilkの影響が相殺可能となっている。その結果、読み出しマージンを拡大することができる。
【0043】
第二の問題として、読み出し電位VRDが低く過ぎて、フラッシュメモリセルの読み出しに適さない恐れがある。
図14は、フラッシュメモリセルの読み出し特性の一例を示す図である。
図14において、例えば、読み出し電位VRD(フラッシュメモリセルのドレイン・ソース間電圧Vds)を100mVに設定した場合、データ“0”を記憶している状態(しきい値電圧が低い状態)と、データ“1”を記憶している状態(しきい値電圧が高い状態)とでドレイン電流(
図1の読み出し電流Icel)の差が小さくなる。その結果、読み出しマージンが小さくなる。
【0044】
一方、
図13において読み出し電位VRDを高くする方法として、(A)クランプ用のnMOSトランジスタMN10’を削除する方法と、それとは別に(B)電源電位Vdd自体を高くする方法とが考えられる。(A)の方法を用いた場合、読み出し電位VRDの最大値は、ダイオード接続のpMOSトランジスタMP1’に伴い、そのしきい値電圧を“Vthp”として“Vdd-|Vthp|”程度である。より厳密には、読み出し電位VRDの最大値は、pMOSトランジスタMP1’の飽和ドレイン電圧を“Vdsat”として、 “Vdd-(|Vthp|+Vdsat)”である。例えば、“|Vthp|”は、0.4~0.6V等であり、“Vdsat”は、0.1~0.2V等である。
【0045】
ここで、
図14に示されるように、フラッシュメモリセルでは、読み出し電位VRDが高いほど、読み出しマージンを拡大することができる。一方、フラッシュメモリセルでは、温度変化等の各種動作条件の変動に応じて読み出しマージンも変動する。例えば、電源電位Vddが最も低く、pMOSトランジスタのしきい値電圧(Vthp)が最も高くなる条件(所謂プロセスSSかつ低温)では、読み出しマージンが最小になる。逆に、電源電位Vddが最も高く、pMOSトランジスタのしきい値電圧(Vthp)が最も低くなる条件(所謂プロセスFFかつ高温)では、読み出しマージンが最大になる。このような読み出しマージンの変動を考慮した場合、読み出し電位VRDは、“Vdd-|Vthp|”では足りず、可能な限り高くすることが望まれる。
【0046】
そこで、(B)の方法を用いて、電源電位Vdd自体を高くすることが考えられる。しかし、この場合、第三の問題として、消費電力の増加に加えて、電流比較回路CCMP’を構成するトランジスタで耐圧違反が生じる恐れがある。例えば、センスアンプ回路[1]SA1ST’内において、pMOSトランジスタMP1’もしくはクランプ用のnMOSトランジスタMN10’のソース-ドレイン間に耐圧違反が生じ得る。耐圧違反の対策として、pMOSトランジスタMP1’もしくはnMOSトランジスタMN10’を高耐圧のトランジスタで構成することも考えられる。しかし、この場合、回路面積の増加または製造プロセスの複雑化等によってコストの増大が生じ得る。
【0047】
そこで、実施の形態1の半導体装置では、
図1に示したように、ビット線BLと電流検出線CDLからなる2個の電流パスが設けられ、電流検出線CDL側に電流比較回路CCMPが接続される。これにより、電流比較回路CCMPの耐圧違反を生じさせることなく、ビット線BLに高い読み出し電位VRDを印加することが可能になる。その結果、読み出しマージンを拡大することが可能になる。
【0048】
さらに、ビット線BLに高い読み出し電位VRDを印加する方式として、プリチャージ回路PRE内にバイアス制御回路BSCTが設けられる。バイアス制御回路BSCTは、読み出し電位VRDを、例えば、電源電位VddよりもpMOSトランジスタMP1の飽和ドレイン電圧Vdsatだけ低い電位に定める。この場合、参照電位VRF1は、“Vdd-Vdsat”に定められる。その結果、
図13の構成例と比較して、読み出し電位VRDを“Vthp”(例えば0.4~0.6V等)だけ高めることが可能になり、電源電位Vddを高くせずとも(すなわち消費電力の増大を抑制しつつ)、読み出しマージンを拡大することが可能になる。
【0049】
《メモリの読み出し方法》
図5は、本発明の実施の形態1によるメモリの読み出し方法の一例を示すフロー図である。まず、メモリ回路の構成として、
図1に示したように、複数のメモリセルMC、参照セルRCおよびプリチャージ回路PREが接続される第1の電流パス(ビット線BL)と、電流比較回路CCMPが接続され、第1の電流パスに流れる電流に比例する電流が流れる第2の電流パス(電流検出線CDL)とを有する構成を前提とする。
【0050】
図5では、第1の期間(ステップS101~S104)と、第2の期間(ステップS201~S205)と、第3の期間(ステップS301)とが設けられる。第1の期間(ステップS101~S104)は、前述した記憶モードで動作する記憶期間である。第1の期間において、ワード線WLおよびビット線BLの活性化によってメモリセルMCが選択されると、第1の電流源となるpMOSトランジスタMP1を含むプリチャージ回路PREが活性化される(ステップS101)。プリチャージ回路PREは、選択メモリセルMCに第1の電流パス(ビット線BL)を介して読み出し電位VRDを印加することで選択メモリセルMCからの読み出し電流Icelを第1の電流パスに流す(ステップS102)。ここで第1の電流パスには、選択されない多数のメモリセルMCから発生したリーク電流も流れる。
【0051】
また、第1の電流源となるpMOSトランジスタMP1が活性化されると、第2の電流源となるpMOSトランジスタMP2も活性化される。これにより、第1の電流パス(ビット線BL)に流れる読み出し電流Icelは、第2の電流パス(電流検出線CDL)に転写される(ステップS103)。同時に第1の電流パスに流れるリーク電流も第2の電流パスに転写される。電流比較回路CCMPは、第2の電流パスを介して、読み出し電流Icelに比例する検出電流Ird2aを記憶電流として記憶する(ステップS104)。同様に電流比較回路CCMPは、第2の電流パスを介して流れるリーク電流も記憶する。
【0052】
第2の期間(ステップS201~S205)は、前述した比較モードで動作する比較期間である。第2の期間では、ステップS101でのビット線BLの選択状態を維持したまま、選択ワード線WLが非活性化され、これに伴い全メモリセルMCが非選択状態となる(ステップS201)。この状態で、参照ワード線RWLの活性化によって参照セルRCが選択される(ステップS202)。これにより、プリチャージ回路PREは、参照セルRCからの読み出し参照電流Irefを第1の電流パス(ビット線BL)に流す(ステップS203)。ここでも第1の電流パスには、選択されない多数のメモリセルMCから発生したリーク電流も流れる。
【0053】
第1の電流パス(ビット線BL)に流れる読み出し参照電流Irefは、第2の電流パス(電流検出線CDL)に転写される(ステップS204)。同時に第1の電流パスに流れるリーク電流も第2の電流パスに転写される。電流比較回路CCMPは、第2の電流パスを介して得られた読み出し参照電流Irefに比例する検出電流Irr2aと、第1の期間(記憶期間)で記憶した検出電流(記憶電流)Ird2aとの大小を比較する(ステップS205)。また、ステップS205では、第2の電流パスを介して流れるリーク電流から、第1の期間(記憶期間)で記憶したリーク電流が差し引かれる。その後、第3の期間(ステップS301)において、当該電流比較結果が、センスアンプ回路[2]SA2NDによって増幅される。なお、
図4でも述べたように、例えば、第1の期間と第2の期間とを入れ替え、第2の期間を、読み出し参照電流Irefを記憶する記憶期間とし、第1の期間を、読み出し電流Icelと読み出し参照電流Irefとを比較する比較期間とすることも可能である。
【0054】
《実施の形態1の主要な効果》
以上のように、実施の形態1の方式では、ビット線選択回路YSWを活性化したまま、時分割での読み出しが行われる。その結果、
図5のステップS205でリーク電流を差し引いてビット線リーク電流の影響を無くすことができ、読み出しマージンを拡大することが可能になる。また、2個の電流パスを設け、一方の電流パスにバイアス制御回路BSCTを設け、他方の電流パスに電流比較回路CCMPを設けることで、メモリセルMC(特にフラッシュメモリセル)に印加する読み出し電位VRDを高められる。その結果、読み出しマージンを拡大することが可能になる。読み出しマージンを拡大できることで、メモリ(ひいてはそれを含む半導体装置)の高密度化、低電圧化等が実現可能になる。
【0055】
(実施の形態2)
《半導体装置の構成および動作》
図6は、本発明の実施の形態2による半導体装置において、主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
図6の半導体装置は、
図1の構成例とはpMOSトランジスタMP1,MP2のカレントミラー比が異なっている。具体的には、pMOSトランジスタMP2のゲート幅とゲート長の比(ゲート幅(W)/ゲート長(L))Bは、pMOSトランジスタMP1のゲート幅とゲート長の比Aよりも小さい。
【0056】
これにより、pMOSトランジスタMP2に流れる電流は、pMOSトランジスタMP1に流れる電流よりも小さくなるように設定される。pMOSトランジスタMP2が駆動する負荷は、pMOSトランジスタMP1に比べて十分に小さいため、pMOSトランジスタMP2に流れる電流を小さくしても特に問題は生じない。また、カレントミラー比(B/A)の設定に際し、望ましくは、pMOSトランジスタMP1のゲート長(L)は、最小寸法付近に設定され、pMOSトランジスタMP2のゲート長(L)は、できるだけ大きい寸法に設定される。
【0057】
図7は、
図6の半導体装置における読み出し動作時の動作例を示す波形図である。
図7では、
図4と比べて、記憶モード時にpMOSトランジスタMP2に流れる検出電流Ird2bの大きさと、比較モード時にpMOSトランジスタMP2に流れる検出電流Irr2bの大きさとが異なっている。記憶モードでの検出電流Ird2bは、記憶モード時にpMOSトランジスタMP1に流れる実読み出し電流Ird1とカレントミラー比(B/A)とを用いて、“(B/A)×Ird1”となる。比較モードでの検出電流Irr2bは、比較モード時にpMOSトランジスタMP1に流れる実読み出し参照電流Irr1とカレントミラー比(B/A)とを用いて、“(B/A)×Irr1”となる。
【0058】
《実施の形態2の主要な効果》
以上、実施の形態2の方式を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果に加えて、さらに、消費電力の増加を抑制することが可能になる。具体的に説明すると、
図13に示した比較例の構成では、pMOSトランジスタMP1’に伴う1個の電流パスが存在するのに対して、
図6の構成例の場合、pMOSトランジスタMP1,MP2に伴う2個の電流パスに、バイアス制御回路BSCTの電流パスを加えた計3個の電流パスが存在する。このため、
図1の場合のように、pMOSトランジスタMP1,MP2のカレントミラー比(B/A)を“1/1”にした場合、読み出し動作時の消費電力の増加が懸念される。
【0059】
具体例として、
図13のpMOSトランジスタMP1’に伴う電流パスの消費電流をIxとし、
図2のバイアス制御回路BSCTaの消費電流を“0.25×Ix”と仮定すると、
図1の構成例で生じる消費電流は“(1+1+0.25)×Ix”となる。一方、
図6の構成例で生じる消費電流は、例えば、カレントミラー比(B/A)を“1/4”に設定した場合、“(1+0.25+0.25)×Ix”となる。その結果、
図1の構成例と比較して消費電力の増加を抑制できる。
【0060】
さらに、pMOSトランジスタMP1のゲート長(L)を最小寸法付近に設定することで、pMOSトランジスタMP1のゲインが高まり、電流の整定時間を短縮することができる。その結果、
図7において、時刻t0~t1の期間である記憶期間Tm1を短縮することができ、ひいては読み出しアクセス時間を短縮することが可能になる。一方、pMOSトランジスタMP2のゲート長(L)をできるだけ大きい寸法に設定することで、出力インピーダンスを高めることができる。その結果、
図7の時刻t1~t3の期間である比較期間において、検出電位Vdetの電圧振幅を拡大することが可能になる。
【0061】
(実施の形態3)
《バイアス制御回路の変形例》
図8は、本発明の実施の形態3による半導体装置において、
図1のバイアス制御回路周りの構成例を示す回路図である。
図8に示すバイアス制御回路BSCTbは、pMOSトランジスタMP6と、定電流源CS2とを備え、ゲート接地アンプ回路として機能する。pMOSトランジスタMP6は、ゲート(制御ノード)に参照電位生成回路VRFGからの参照電位VRF2が印加され、ビット線BL(グローバルビット線GBL)とpMOSトランジスタMP1の制御ノードとの間に電流経路が設けられる。
【0062】
図9は、
図8における参照電位生成回路の構成例を示す回路図である。
図9に示す参照電位生成回路VRFGaは、pMOSトランジスタMP7と、定電流源CS3と、アンプ回路AMP2とを備える。pMOSトランジスタMP7および定電流源CS3は、
図8のpMOSトランジスタMP6および定電流源CS2のレプリカ回路として機能する。アンプ回路AMP2は、pMOSトランジスタMP7のソース電位を負極入力として、当該ソース電位が
図1に示した参照電位VRF1(例えば、Vdd-Vdsat)となるようにpMOSトランジスタMP7のゲート電位を帰還制御する。そして、アンプ回路AMP2は、当該ゲート電位を参照電位VRF2として出力する。
【0063】
その結果、アンプ回路AMP2は、参照電位VRF2として“VRF1-|Vthp|”(VthpはpMOSトランジスタMP7(ひいてはMP6)のしきい値電圧)を出力する。すなわち、
図9の参照電位生成回路VRFGaは、温度変化等の各種環境変化が生じた場合であっても、参照電位VRF1よりもpMOSトランジスタMP7(ひいてはMP6)のしきい値電圧Vthpだけで低い電位を参照電位VRF2として出力することができる。
【0064】
図8のpMOSトランジスタMP6のゲートには、このような参照電位VRF2(=VRF1-|Vthp|)が印加される。これにより、グローバルビット線GBLの電位が参照電位VRF1よりも低い場合、pMOSトランジスタMP6はオフとなり、バイアス電位BIASPは下がる方向に変化する。その結果、pMOSトランジスタMP1はオンとなり、グローバルビット線GBLの電位は上がる方向に変化する。一方、グローバルビット線GBLの電位が上がり、参照電位VRF1よりも高くなった場合、pMOSトランジスタMP6はオンとなり、バイアス電位BIASPは上がる方向に変化する。その結果、pMOSトランジスタMP1はオフする方向に向けて変化し、グローバルビット線GBLの電位は下がる方向に変化する。このような負帰還制御により、グローバルビット線GBLの電位は、実施の形態1の場合と同様に参照電位VRF1に設定されることになる。
【0065】
また、メモリの読み出し動作に関しては、
図4または
図7の場合とほぼ同様であるが、詳細には、pMOSトランジスタMP1,MP2およびnMOSトランジスタMN1に流れる各電流の大きさが
図4または
図7の場合とは若干異なる。これは、
図8のバイアス制御回路BSCTbでは、
図2のバイアス制御回路BSCTaの場合と異なり、グローバルビット線GBLに
図8の定電流源CS2に伴うバイアス電流Ibsが流れるためである。
【0066】
これにより、例えば、
図7を例とすると、実読み出し電流Ird1は“Icel+Ilk+Ibs”となり、実読み出し参照電流Irr1は、“Iref+Ilk+Ibs”となる。また、検出電流Ird2bは、当該実読み出し電流Ird1の(B/A)倍となり、検出電流Irr2bは、当該実読み出し参照電流Irr1の(B/A)倍となる。ただし、バイアス電流Ibsは、リーク電流Ilkの場合と同様に、電流比較回路CCMPによって相殺されるため、読み出しマージンに影響を与えない。
【0067】
《実施の形態3の主要な効果》
以上、実施の形態3の方式を用いることで、実施の形態1,2で述べた各種効果に加えて、
図2のバイアス制御回路BSCTaと
図8のバイアス制御回路BSCTbとの比較から判るように、面積オーバヘッドの増大を抑制することが可能になる。なお、
図9の参照電位生成回路VRFGaは、半導体装置全体に対して共通に1個設ければよいため、その面積オーバヘッドは特に問題とならない。また、バイアス制御回路内の電流パスを2個から1個に削減できるため、消費電力を更に低減できる。例えば、
図8の定電流源CS2の電流値は、
図2の定電流源CS1の電流値の1/2等であってよい。
【0068】
(実施の形態4)
《バイアス制御回路の変形例》
図10は、本発明の実施の形態4による半導体装置において、
図1のバイアス制御回路周りの構成例を示す回路図である。
図10には、
図8の場合と同様のバイアス制御回路BSCTbが示される。ただし、
図10では、バイアス制御回路BSCTb内のpMOSトランジスタMP6のゲート電位が、
図9の場合とは異なる参照電位生成回路VRFGbによって生成される。
【0069】
図10の参照電位生成回路VRFGbは、pMOSトランジスタMP8と、定電流源CS4とを備える。pMOSトランジスタMP8は、電源電位VddとpMOSトランジスタMP6のゲートとの間に設けられ、ダイオード接続で構成される。定電流源CS4は、pMOSトランジスタMP8と、接地電源電位Vssとの間に設けられ、pMOSトランジスタMP8に流れる電流を定める。
【0070】
ここで、定電流源CS2の電流値と定電流源CS4の電流値が共に“Iamp”の場合、pMOSトランジスタMP8のゲート幅とゲート長の比(W/L)B2は、pMOSトランジスタMP6のゲート幅とゲート長の比(W/L)B1に対して、例えば、B2/B1=1/4、もしくは、それ以下となるように定められる。これにより、
図10の参照電位生成回路VRFGbは、例えば、“Vdd-(|Vthp|+2×Vdsat)”(VdsatはpMOSトランジスタMP1,MP6の飽和ドレイン電圧)等の参照電位VRF3を生成する。このような参照電位VRF3によって、読み出し電位VRDを“Vdd-Vdsat”に定めた上で、更に、pMOSトランジスタMP6を飽和領域で動作させることが可能になる。
【0071】
pMOSトランジスタMP1,MP6、定電流源CS2および参照電位生成回路VRFGbからなる回路部分は、低電圧カスコードカレントミラー回路における転写元の回路構成と同様の構成となっている。したがって、低電圧カスコードカレントミラー回路の場合と同様に、pMOSトランジスタMP1は、ドレイン・ソース間電圧Vdsが飽和ドレイン電圧Vdsat(読み出し電位VRDが“Vdd-Vdsat”)に定められた状態で、定電流源として安定動作することが可能となる。
【0072】
《実施の形態4の主要な効果》
以上、実施の形態4の方式を用いることで、実施の形態3で述べた各種効果に加えて、
図9の参照電位生成回路VRFGaと
図10の参照電位生成回路VRFGbとの比較から判るように、面積オーバヘッドの増大を更に抑制することが可能になる。すなわち、
図9の場合には、アンプ回路AMP2に加えて、参照電位VRF1を生成する回路も別途必要とされるが、
図10の場合には、その両方共に不要となる。
【0073】
(実施の形態5)
《電流比較回路の変形例》
図11は、本発明の実施の形態5による半導体装置において、
図1の電流比較回路の構成例を示す回路図である。
図11に示す電流比較回路CCMPbは、
図3(b)の電流比較回路CCMPaとは次の点が異なっている。1点目の相違点として、
図3(a)の切り替えスイッチSW1を構成するpMOSトランジスタMPs1が削除されている。2点目の相違点として、インバータ回路IV1,IV2は、電位電位Vddよりも高い電源電位VddHで動作する。その結果、切り替えスイッチSW1を構成するnMOSトランジスタMNs1は、電源電位Vddと接地電源電位Vssとの間の電圧振幅よりも大きい電圧振幅を持つモード切り替え信号(スイッチ制御信号)MDで制御される。
【0074】
例えば、
図3(b)の電流比較回路CCMPaにおいて、nMOSトランジスタMNs1およびpMOSトランジスタMPs1をオンに制御する際、各トランジスタ(MNs1,MPs1)のゲート・ソース間には、実動作上、例えば、電源電位Vddの半分程度の大きさの電圧が印加される。その結果、各トランジスタ(MNs1,MPs1)共に、オン抵抗が高くなり得る。
【0075】
そこで、
図11では、インバータ回路IV1,IV2に高い電源電位VddHを供給することで、nMOSトランジスタMNs1のゲート・ソース間電圧を高くすることができ、nMOSトランジスタMNs1のオン抵抗を低減することが可能になる。なお、同様にして、
図3(b)のpMOSトランジスタMPs1のオン抵抗を低減するためには、インバータ回路IV1,IV2に、接地電源電位Vssよりも低い電位(負電位)を供給すればよい。
図11の例では、nMOSトランジスタMNs1のみでも切り替えスイッチの抵抗を十分に下げることが可能であるため、負電位生成回路を不必要にする観点や、面積オーバヘッドを低減する観点から、pMOSトランジスタMPs1は削除される。
【0076】
ただし、
図11において、負電位生成回路を設けない状態であっても、敢えて、
図3(b)のpMOSトランジスタMPs1を残してもよい。pMOSトランジスタMPs1を残すことで、nMOSトランジスタMNs1との間でスイッチオフ時のカップリングノイズを相殺することができるため、安定性や、ノイズの収束時間の観点で有益となる。なお、フラッシュメモリでは、通常、書き込み用の各種電源回路等といったように、電源電位Vddよりも高い電源電位を生成する回路が設けられる。電源電位VddHは、このような回路によって生成された電位を用いればよいため、面積オーバヘッドの問題も特に生じない。
【0077】
図12は、
図11の電流比較回路を搭載した半導体装置の読み出し動作時の動作例を示す波形図である。
図12では、
図7の波形図に対して、nMOSトランジスタMNs1のゲート電位の波形が追加されている。nMOSトランジスタMNs1のゲートには、時刻t0~t1の記憶期間Tm2において、電源電位Vddよりも高い電源電位VddHが印加される。これにより、切り替えスイッチSW1のオン抵抗が下がるため、記憶期間Tm2において、pMOSトランジスタMP2の電流と、nMOSトランジスタMN1の電流とが一致するまでに要する時間を短縮することができる。その結果、
図12の記憶期間Tm2を、
図7の記憶期間Tm1よりも短く設定することが可能になり、ひいては読み出しアクセス時間を短縮することが可能になる。
【0078】
《実施の形態5の主要な効果》
以上、実施の形態5の方式を用いることで、実施の形態1~4で述べた各種効果に加えて、時分割の読み出し方式を用いる場合に懸念されるアクセス時間の増大を抑制することが可能になる。なお、電源電位VddHを用いることで、消費電力の増加が懸念されるが、当該電源電位VddHの印加箇所は、nMOSトランジスタMNs1のゲートであるため、定常電流は発生せず、消費電力の増加に対する影響は小さい。
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
AMP アンプ回路
BIASP バイアス電位
BL ビット線
BSCT バイアス制御回路
C 容量素子
CCMP 電流比較回路
CDL 電流検出線
CS 定電流源
GBL グローバルビット線
Icel 読み出し電流
Ilk リーク電流
Iref 読み出し参照電流
LBL ローカルビット線
MC メモリセル
MD モード切り替え信号
MN nMOSトランジスタ
MP pMOSトランジスタ
PRE プリチャージ回路
RC 参照セル
RWL 参照ワード線
SW 切り替えスイッチ
VRD 読み出し電位
VRF 参照電位
VRFG 参照電位生成回路
Vdd,VddH 電源電位
Vss 接地電源電位
WL ワード線
YSW ビット線選択回路