(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】脂環式エポキシ化合物製品
(51)【国際特許分類】
C08G 59/24 20060101AFI20230508BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230508BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230508BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230508BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230508BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230508BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230508BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230508BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20230508BHJP
【FI】
C08G59/24
C08L63/00 Z
C09J163/00
C09J11/06
C09D163/00
C09K3/10 L
H01L23/30 R
H01L33/56
(21)【出願番号】P 2019080264
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】井上 寛子
(72)【発明者】
【氏名】谷川 博人
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-359869(JP,A)
【文献】特開2006-188476(JP,A)
【文献】国際公開第2008/143003(WO,A1)
【文献】特開2008-031424(JP,A)
【文献】特開2005-343868(JP,A)
【文献】特開2011-079794(JP,A)
【文献】特開平09-059195(JP,A)
【文献】特開平08-208634(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138988(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00
C09J 11/06、163/00
C09D 163/00
C09K 3/10
H01L 23/29、33/56
C07D 301/00-305/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物の純度が85重量%以上であり、下記式(a)で表される化合物と下記式(b)で表される化合物の合計含有量が0.5重量%以下である脂環式エポキシ化合物製品。
【化1】
(式中、Xは単結合又は連結基を示
し、前記連結基は、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、エーテル結合、又はこれらが複数個連結した基である)
【請求項2】
下記式(c)で表される化合物と下記式(d)で表される化合物の合計含有量が10重量%以下である、請求項1に記載の脂環式エポキシ化合物製品。
【化2】
(式中、Xは単結合又は連結基を示
し、前記連結基は、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、エーテル結合、又はこれらが複数個連結した基である)
【請求項3】
下記式(x)で表される化合物の含有量が1000ppm以下である、請求項1又は2に記載の脂環式エポキシ化合物製品。
【化3】
(式中、Xは単結合又は連結基を示
し、前記連結基は、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、エーテル結合、又はこれらが複数個連結した基である)
【請求項4】
下記測定方法により求められる熱ゲル化時間が400秒以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の脂環式エポキシ化合物製品。
ゲル化時間測定方法:
脂環式エポキシ化合物製品100重量部に、サンエイドSI-100L(三新化学工業(株)製)を0.6重量部配合してなる硬化性組成物を、周波数1Hz、歪み5%、ギャップ0.2mm、温度80℃の条件下で動的粘弾性測定に付し、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の交点を熱ゲル化時間とする。
【請求項5】
下記測定方法により求められるUVゲル化時間が45秒以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の脂環式エポキシ化合物製品。
ゲル化時間測定方法:
脂環式エポキシ化合物製品100重量部に、CPI-101A(サンアプロ(株)製)を1.0重量部配合してなる硬化性組成物に、周波数10Hz、歪み5%、ギャップ0.1mm、25℃条件下で、UV照射(10mW/cm
2で10秒照射)を施したものを動的粘弾性測定に付し、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の交点をUVゲル化時間とする。
【請求項6】
下記工程を経て、
下記式(1)で表される化合物の純度が85重量%以上であり、下記式(a)で表される化合物と下記式(b)で表される化合物の合計含有量が0.5重量%以下である脂環式エポキシ化合物製品を得る、脂環式エポキシ化合物製品の製造方法。
【化4】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
工程1:下記式(1”)で表される化合物を脱水反応に付して下記式(1’)で表される化合物を得る。
【化5】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
工程2:式(1’)で表される化合物と有機過酸を反応させて、下記式(1)で表される化合物を含む反応生成物を得る。
【化6】
(式中、Xは前記に同じ)
工程3:実段数が1~20段の精留塔を使用して、下記条件下で反応生成物を分留する。
塔底温度100~250℃
塔頂温度80~200℃
塔頂圧0.1~50mmHg
塔底圧1~200mmHg
【請求項7】
工程3の分留により、下記式(a)で表される化合物と下記式(b)で表される化合物を除去する、請求項6に記載の脂環式エポキシ化合物製品の製造方法。
【化7】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
【請求項8】
請求項1~5の何れか1項に記載の脂環式エポキシ化合物製品を含む硬化性組成物。
【請求項9】
更に、硬化剤(B)と硬化促進剤(C)とを含む、請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
更に、硬化触媒(D)を含む、請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項8~10の何れか1項に記載の硬化組成物の硬化物。
【請求項12】
波長400nmの光線透過率が50%以上である、請求項11に記載の硬化物。
【請求項13】
請求項8~10の何れか1項に記載の硬化組成物を含む封止剤。
【請求項14】
請求項8~10の何れか1項に記載の硬化組成物を含む接着剤。
【請求項15】
請求項8~10の何れか1項に記載の硬化組成物を含むコーティング剤。
【請求項16】
請求項11又は12に記載の硬化物を備えた光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度の脂環式エポキシ化合物製品に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光半導体素子を光源とする光半導体装置は、現在、各種の屋内又は屋外表示板、画像読み取り用光源、交通信号、大型ディスプレイ用ユニット等、様々な用途に使用されている。このような光半導体装置は、一般に、光半導体素子が樹脂(封止樹脂)により封止された構造を有している。上記封止樹脂は、光半導体素子を水分や衝撃等から保護するための役割を担っている。
【0003】
近年、このような光半導体装置の高出力化や短波長化が進んでおり、例えば、青色・白色光半導体装置においては、光半導体素子から発せられる熱による封止樹脂の黄変が問題となっている。このように黄変した封止樹脂は、光半導体素子から発せられた光を吸収するため、光半導体装置から出力される光の光度が経時で低下してしまう。そのため、透明性及び耐熱性に優れた樹脂が求められている。
【0004】
特許文献1には、硬化性エポキシ樹脂組成物が記載されている。そして、前記硬化性エポキシ樹脂組成物は、透明性に優れた硬化物を形成することができると記載されている。しかし、より一層高い透明性を有する硬化物を形成し得る組成物が求められていた。また、前記組成物のゲル化時間を短縮すること、すなわち硬化性を高めることも求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、透明性に優れた硬化物を形成する用途に使用する脂環式エポキシ化合物製品を提供することにある。
本発明の他の目的は、硬化性に優れ、透明性及び耐熱性に優れた硬化物を形成する用途に使用する脂環式エポキシ化合物製品を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記脂環式エポキシ化合物製品の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、硬化性に優れ、透明性及び耐熱性に優れた硬化物を形成し得る硬化性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、硬化性に優れ、透明性及び耐熱性に優れた硬化物を形成し得る封止剤、接着剤、又はコーティング剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、透明性及び耐熱性に優れた硬化物を備えた光学部材を提供することにある。
【0007】
尚、本明細書において「製品」とは工業的に製造され、市場に流通し得る形態のものを意味し、化学物質そのものを意味するものではない。その意味においては目的物を主成分として含む(言い換えると、目的物を100重量%近く含む)組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、式(1)で表される化合物を主成分として含む脂環式エポキシ化合物製品には過水添物や異性体が特定の割合で混入していることを見いだした。そして、過水添物や異性体が製品に混入することによって、製品の硬化性が低下し、更に、得られる硬化物の透明性が低下することを見いだした。
【0009】
更にまた、従来、式(1)で表される化合物の製造方法としては、式(1’)で表される化合物と有機過酸との反応生成物を、脱溶媒処理及び脱高沸処理に付す方法が知られているが、前記方法では式(1)で表される化合物と極めて近い沸点を有する過水添物や異性体を除去することが困難であること、前記反応生成物を精留塔に導入して、特定の蒸留条件で分留すると、過水添物や異性体を効率よく除去することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される化合物の純度が85重量%以上であり、下記式(a)で表される化合物と下記式(b)で表される化合物の合計含有量が0.5重量%以下である脂環式エポキシ化合物製品を提供する。
【化1】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
【0011】
本発明は、また、下記式(c)で表される化合物と下記式(d)で表される化合物の合計含有量が10重量%以下である、前記脂環式エポキシ化合物製品を提供する。
【化2】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
【0012】
本発明は、また、下記式(x)で表される化合物の含有量が1000ppm以下である、前記脂環式エポキシ化合物製品を提供する。
【化3】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
【0013】
本発明は、また、下記測定方法により求められる熱ゲル化時間が400秒以下である、前記脂環式エポキシ化合物製品を提供する。
ゲル化時間測定方法:
脂環式エポキシ化合物製品100重量部に、サンエイドSI-100L(三新化学工業(株)製)を0.6重量部配合してなる硬化性組成物を、周波数1Hz、歪み5%、ギャップ0.2mm、温度80℃の条件下で動的粘弾性測定に付し、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の交点を熱ゲル化時間とする。
【0014】
本発明は、また、下記測定方法により求められるUVゲル化時間が45秒以下である、前記脂環式エポキシ化合物製品を提供する。
ゲル化時間測定方法:
脂環式エポキシ化合物製品100重量部に、CPI-101A(サンアプロ(株)製)を1.0重量部配合してなる硬化性組成物に、周波数10Hz、歪み5%、ギャップ0.1mm、25℃条件下で、UV照射(10mW/cm2で10秒照射)を施したものを動的粘弾性測定に付し、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の交点をUVゲル化時間とする。
【0015】
本発明は、また、下記工程を経て、前記脂環式エポキシ化合物製品を得る、脂環式エポキシ化合物製品の製造方法を提供する。
工程1:下記式(1”)で表される化合物を脱水反応に付して下記式(1’)で表される化合物を得る。
【化4】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
工程2:式(1’)で表される化合物と有機過酸を反応させて、下記式(1)で表される化合物を含む反応生成物を得る。
【化5】
(式中、Xは前記に同じ)
工程3:実段数が1~20段の精留塔を使用して、下記条件下で反応生成物を分留する。
塔底温度100~250℃
塔頂温度80~200℃
塔頂圧0.1~50mmHg
塔底圧1~200mmHg
【0016】
本発明は、また、工程3の分留により、下記式(a)で表される化合物と下記式(b)で表される化合物を除去する、前記脂環式エポキシ化合物製品の製造方法を提供する。
【化6】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
【0017】
本発明は、また、前記脂環式エポキシ化合物製品を含む硬化性組成物を提供する。
【0018】
本発明は、また、更に、硬化剤(B)と硬化促進剤(C)とを含む、前記硬化性組成物を提供する。
【0019】
本発明は、また、更に、硬化触媒(D)を含む、前記硬化性組成物を提供する。
【0020】
本発明は、また、前記硬化組成物の硬化物を提供する。
【0021】
本発明は、また、波長400nmの光線透過率が50%以上である、前記硬化物を提供する。
【0022】
本発明は、また、前記硬化組成物を含む封止剤を提供する。
【0023】
本発明は、また、前記硬化組成物を含む接着剤を提供する。
【0024】
本発明は、また、前記硬化組成物を含むコーティング剤を提供する。
【0025】
本発明は、また、前記硬化物を備えた光学部材を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の脂環式エポキシ化合物製品は、高純度で、且つ特定の不純物(例えば過水添物、好ましくは過水添物と異性体)の含有量が極めて低い。そのため、本発明の脂環式エポキシ化合物製品に、硬化剤或いは硬化触媒を添加して得られる硬化性組成物は、極めて優れた硬化性を有し、得られる硬化物は透明性と耐熱性に優れる。従って、本発明の脂環式エポキシ化合物製品は、工業用途(例えば、封止剤、接着剤、コーティング剤、又はこれらの原料等)に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1で得られた脂環式エポキシ化合物製品(6)のガスクロマトグラフ測定結果を示す図である。
【
図2】比較例1で得られた脂環式エポキシ化合物製品(7)のガスクロマトグラフ測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[脂環式エポキシ化合物製品]
本発明の脂環式エポキシ化合物製品は、下記式(1)で表される化合物を含有し、その純度(若しくは、含有量)は85重量%以上である。前記式(1)で表される化合物の純度(若しくは、含有量)は、硬化性に優れ、透明性及び耐熱性に優れた硬化物を得ることができる点において、好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。
【化7】
【0029】
上記式(1)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、エーテル結合、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。尚、式(1)中のシクロヘキセンオキシド基には、置換基(例えば、C1-3アルキル基等)が結合していてもよい。
【0030】
上記式(1)で表される化合物の代表的な例としては、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン等が挙げられる。
【0031】
また、本発明の脂環式エポキシ化合物製品は、下記式(a)で表される化合物、及び下記式(b)で表される化合物の合計含有量が0.5重量%以下であり、好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.05重量%未満である。下記式(a)で表される化合物、及び下記式(b)で表される化合物の合計含有量の下限値は、例えば0.01重量%である。尚、下記式中のXは上記に同じである。
【化8】
【0032】
更に、本発明の脂環式エポキシ化合物製品は、下記式(c)で表される化合物、及び下記式(d)で表される化合物の合計含有量が10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。尚、下記式中のXは上記に同じである。
【化9】
【0033】
本発明の脂環式エポキシ化合物製品は、上記の通り、式(1)で表される化合物を高純度に含有し、前記式(a)~(d)で表される化合物の各含有量が極めて低い。
【0034】
そのため、本発明の脂環式エポキシ化合物製品は硬化性に優れ、下記測定方法により求められる熱ゲル化時間は、例えば400秒以下、好ましくは350秒以下、特に好ましくは300秒以下、最も好ましくは250秒以下である。
ゲル化時間測定方法:
脂環式エポキシ化合物製品100重量部に、サンエイドSI-100L(三新化学工業(株)製)を0.6重量部配合してなる熱硬化性組成物を、周波数1Hz、歪み5%、ギャップ0.2mm、温度80℃の条件下で動的粘弾性測定に付し、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の交点を熱ゲル化時間とする。
【0035】
また、本発明の脂環式エポキシ化合物製品は硬化性に優れ、下記測定方法により求められるUVゲル化時間は、例えば45秒以下、好ましくは40秒以下、更に好ましくは35秒以下、特に好ましくは30秒以下、最も好ましくは25秒以下、とりわけ好ましくは20秒以下である。
ゲル化時間測定方法:
脂環式エポキシ化合物製品100重量部に、CPI-101A(サンアプロ(株)製)を1.0重量部配合してなるUV硬化性組成物に、周波数10Hz、歪み5%、ギャップ0.1mm、25℃条件下で、UV照射(10mW/cm2で10秒照射)を施したものを動的粘弾性測定に付し、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の交点をUVゲル化時間とする。
【0036】
従って、本発明の脂環式エポキシ化合物製品は、例えば、封止剤、接着剤、コーティング剤、電気絶縁材、積層板、インク、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ等の原料として好適に使用することができる。
【0037】
(脂環式エポキシ化合物製品の製造方法)
本発明の脂環式エポキシ化合物製品は、下記工程を経て製造することができる。
工程1:式(1”)で表される化合物を脱水反応に付して式(1’)で表される化合物を得る(脱水工程)。
工程2:式(1’)で表される化合物と有機過酸を反応させて、式(1’)で表される化合物を含む反応生成物を得る(エポキシ化工程)。
工程3:精留塔を使用して反応生成物を分留する(分留工程)。
【0038】
本発明の脂環式エポキシ化合物製品の製造方法には、前記工程1~3以外にも他の工程が設けられていてもよい。他の工程としては、例えば、下記工程2-1、工程2-2、工程2-3等が挙げられる。これらの工程は工程2と工程3の間(工程2終了後、工程3の前)に設けることが好ましく、これらの工程の中では、工程2-1をまず最初に設けることが好ましい。工程2-1の次工程としては、工程2-2と工程2-3の何れであってもよい。
工程2-1:得られた反応生成物を水洗して反応に使用した有機過酸やその分解物を除去する工程(水洗工程)
工程2-2:反応生成物に脱溶媒処理を行う工程(脱溶媒工程)
工程2-3:反応生成物に脱高沸処理を行う工程(脱高沸工程)
【0039】
本発明の脂環式エポキシ化合物製品の製造方法としては、なかでも、工程1(脱水工程)-工程2(エポキシ化工程)-工程2-1(水洗工程)-工程2-2(脱溶媒工程)-工程2-3(脱高沸工程)-工程3(分留工程)の順に行うことが、特に優れた硬化性を有し、透明性及び耐熱性に優れた硬化物を形成し得る脂環式エポキシ化合物製品を得ることができる点で好ましい。
【0040】
(脱水工程)
脱水工程は、下記式(1”)で表される化合物を原料として使用し、下記式(1”)で表される化合物から分子内脱水する方法(方法1)により下記式(1’)で表される化合物を得る工程である。尚、下記式中のXは前記に同じである。
【化10】
【0041】
式(1”)で表される化合物の分子内脱水反応は、例えば、濃硫酸等の酸触媒の存在下で、100~200℃で加熱処理を施すことにより行うことができる。
【0042】
尚、上記式(1')で表される化合物は、下記式で示す、ディールス・アルダー反応により製造することもできる(方法2)。尚、下記式中、Xは単結合又は連結基を示す。
【化11】
【0043】
しかし、方法2で得られた式(1')で表される化合物を使用して得られる反応生成物には、式(1)で表される化合物と共に、下記式(x)で表される化合物が不可避的に含まれる。そして、下記式(x)で表される化合物は水洗、蒸留等では除去し難いため、最終製品である脂環式エポキシ化合物製品にも含まれることになるが、当該式(x)で表される化合物が脂環式エポキシ化合物製品に含まれると、反応性が低下する傾向があるため好ましくない。尚、下記式中のXは上記に同じ。
【化12】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
【0044】
一方、上記方法1で得られる式(1’)で表される化合物を有機過酸と反応させる場合には、上記式(x)で表される化合物が副生することは無い。
【0045】
本発明では、上記方法1を採用するため、本発明の脂環式エポキシ化合物製品中の、上記式(x)で表される化合物の含有量を、例えば1000ppm以下(好ましくは500ppm以下、特に好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下)に抑制することができ、反応性が良好な脂環式エポキシ化合物製品が得られる。
【0046】
(エポキシ化工程)
エポキシ化工程は、脱水工程を経て得られた式(1’)で表される化合物と、有機過酸とを反応させて反応生成物を得る工程である。本工程を経て、下記式(1)で表される化合物を含む反応生成物が得られる。尚、下記式中のXは前記に同じである。
【化13】
【0047】
前記有機過酸としては、例えば、過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、m-クロロ過安息香酸、トリフルオロ過酢酸、過安息香酸等から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0048】
有機過酸の使用量は、式(1)で表される化合物1モルに対して、例えば0.5~3モルである。
【0049】
エポキシ化反応は、溶媒の存在下で行うことができる。前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、p-シメン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素;n-ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、フルフリルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸n-アミル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸イソアミル、安息香酸メチル等のエステル;エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコール、及びその誘導体;クロロホルム、ジメチルクロライド、四塩化炭素、クロルベンゼン等のハロゲン化合物;1,2-ジメトキシエタン等のエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
溶媒の使用量は、例えば、式(1)で表される化合物の0.2~10重量倍程度である。
【0051】
エポキシ化反応には、必要に応じて、有機過酸の安定剤(例えば、リン酸水素アンモニウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸-2-エチルヘキシル等)や、重合禁止剤(例えば、ハイドロキノン、ピペリジン、エタノールアミン、フェノチアジン等)等も使用することができる。
【0052】
エポキシ化反応の反応温度は、例えば0~70℃である。反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
【0053】
(水洗工程)
水洗工程は、エポキシ化工程を経て得られた反応生成物中に含まれる、有機過酸やその分解物である有機酸を水洗により除去する工程である。
【0054】
水の使用量としては、例えば反応生成物の0.1~3倍(v/v)程度である。水洗には、ミキサーセトラ-タイプ等の平衡型抽出器や、抽出塔、遠心抽出器等を用いることができる。
【0055】
(脱溶媒工程)
脱溶媒工程は、反応生成物中に含まれる、式(1)で表される化合物よりも低沸点の成分(例えば、溶媒、水分等)を留去する工程である。本工程に付すことにより、脂環式エポキシ化合物製品中に混入する、式(1)で表される化合物より低分子量の化合物の含有量を低減することができ、式(1)で表される化合物の純度を高めることができる。
【0056】
脱溶媒工程は、薄膜蒸発器や蒸留塔を使用することができる。蒸留は加熱温度50~200℃の範囲、圧力1~760mmHgの範囲の条件下で行うことが好ましい。
【0057】
脱溶媒工程において、反応生成物から式(1)で表される化合物よりも低沸点の成分が蒸発して除去されることにより、式(1)で表される化合物と、それよりも高沸点の成分の混合物が、缶出液として得られる。
【0058】
(脱高沸工程)
脱高沸工程は、脱溶媒工程を経て得られた缶出液である、式(1)で表される化合物と、それよりも高沸点の成分の混合物から、式(1)で表される化合物を蒸発させて留出させる工程である。本工程に付すことにより、脂環式エポキシ化合物製品中に混入する、式(1)で表される化合物より高分子量の化合物の含有量を低減することができ、式(1)で表される化合物の純度を高めることができる。
【0059】
脱高沸工程は、薄膜蒸発器や蒸留塔を使用することができる。蒸留は加熱温度100~200℃の範囲、圧力0.01~100mmHgの範囲の条件下で行うことが好ましい。
【0060】
前記缶出液を蒸留塔に導入し、式(1)で表される化合物を塔頂留出物として回収し、高沸点成分が含まれる塔底液は、系外に排出することが好ましい。
【0061】
(分留工程)
分留工程は上記脱水工程において副生した不純物[特に、式(1)で表される化合物よりも低沸点の成分(例えば、式(a)、(b)で表される化合物)]を、主成分である式(1)で表される化合物から分離して除去する工程である。
【0062】
例えば、脱水工程において方法1を採用した場合には、副生物として式(a)~(d)で表される化合物が混入するが、本工程を経て、式(1)で表される化合物から、前記副生物(特に、式(a)、(b)で表される化合物(=過水添物))を分離、除去することができ、式(1)で表される化合物を高純度で含有し、前記副生物(特に、過水添物)の含有量が抑制された、脂環式エポキシ化合物製品が得られる。
【0063】
分留工程では、実段数が例えば1~20段(好ましくは5~15段、特に好ましくは8~12段)の精留塔を使用することが、前記副生物(特に、過水添物)の分離効率を向上し、更に、式(c)、(d)で表される化合物(=異性体)も分離、除去することができ、製品の純度をより一層向上することができる点において好ましい。
【0064】
塔底温度は、例えば100~250℃、好ましくは130~170℃である。
【0065】
塔頂温度は、例えば80~200℃、好ましくは100~120℃である。
【0066】
塔頂圧は、例えば0.1~50mmHg、好ましくは0.1~1mmHgである。
【0067】
塔底圧は、例えば1~200mmHg、好ましくは1~5mmHgである。
【0068】
還流比は、例えば0.5~5の範囲内が好ましい。還流比が前記範囲を上回るとエネルギーコストが高くなる傾向があり、反対に前記範囲を下回ると、式(a)~(d)で表される化合物の除去効率が低下して、製品に混入し易くなる傾向がある。
【0069】
そして、分留工程を経て、前記副生物(特に、過水添物)の含有量が抑制された脂環式エポキシ化合物製品が得られる。前記製品の回収方法としては、例えばバッチ式の分留操作を行う場合は、留分を複数のフラクションに分けて回収し、前記副生物(特に、過水添物)の含有量が低いフラクションを製品とすればよい。尚、留分中の過水添物や異性体の含有量はガスクロマトグラフィーなどを利用して測定することができる。また、連続式の分留操作を行う場合は、塔頂部から低沸点成分を除去し、塔底部から得られる缶出液を回収してこれを製品としてもよいし、塔頂部から低沸点成分を除去し、塔底部から高沸点成分を除去して、側流部から製品を回収してもよい。
【0070】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、上述の脂環式エポキシ化合物製品を含む。
【0071】
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物(A)として上述の脂環式エポキシ化合物製品を含むが、それ以外にも他の硬化性化合物を1種又は2種以上含有していても良い。他の硬化性化合物としては、例えば、式(1)で表される化合物以外のエポキシ化合物(=他のエポキシ化合物)、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物が挙げられる。
【0072】
前記硬化性組成物に含まれる硬化性化合物(A)全量(100重量%)に占める式(1)で表される化合物の割合は、例えば50重量%以上(例えば50~100重量%)、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上である。
【0073】
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物(A)と共に、硬化剤(B)と硬化促進剤(C)、又は硬化触媒(D)を含有することが好ましい。
【0074】
本発明の硬化性組成物全量における、硬化性化合物(A)、硬化剤(B)、及び硬化促進剤(C)の合計含有量の占める割合は、例えば60重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上、とりわけ好ましくは95重量%以上である。
【0075】
また、本発明の硬化性組成物全量における、硬化性化合物(A)及び硬化触媒(D)の合計含有量の占める割合は、例えば60重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上、とりわけ好ましくは95重量%以上である。
【0076】
従って、本発明の硬化性組成物全量における、硬化性化合物(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び硬化触媒(D)以外の化合物の含有量は、例えば50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下、とりわけ好ましくは5重量%以下である。
【0077】
(硬化剤(B))
前記硬化剤(B)としては、例えば、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)、アミン類(アミン系硬化剤)、ポリアミド樹脂、イミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)、ポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)、フェノール類(フェノール系硬化剤)、ポリカルボン酸類、ジシアンジアミド類、有機酸ヒドラジド等のエポキシ樹脂用硬化剤として公知乃至慣用の硬化剤を使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
前記酸無水物類としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸等)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等)、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4-(4-メチル-3-ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。なかでも、取り扱い性の観点から、25℃で液状の酸無水物[例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等]が好ましい。
【0079】
前記アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリプロピレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-3,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等の脂環式ポリアミン;m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、トリレン-2,4-ジアミン、トリレン-2,6-ジアミン、メシチレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトリレン-2,6-ジアミン等の単核ポリアミン;ビフェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、2,5-ナフチレンジアミン、2,6-ナフチレンジアミン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
【0080】
前記ポリアミド樹脂としては、例えば、分子内に第一級アミノ基及び第二級アミノ基のいずれか一方又は両方を有するポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0081】
前記イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2-フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-エチル-4-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジン等が挙げられる。
【0082】
前記ポリメルカプタン類としては、例えば、液状のポリメルカプタン、ポリスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0083】
前記フェノール類としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、p-キシリレン変性フェノール樹脂、p-キシリレン・m-キシリレン変性フェノール樹脂等のアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、トリフェノールプロパン等が挙げられる。
【0084】
前記ポリカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、カルボキシ基含有ポリエステル等が挙げられる。
【0085】
硬化剤(B)としては、なかでも、得られる硬化物の耐熱性、透明性の観点から、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)が好ましく、例えば、商品名「リカシッド MH-700」、「リカシッド MH-700F」(以上、新日本理化(株)製)、商品名「HN-5500」(日立化成工業(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0086】
硬化剤(B)の含有量(配合量)は、硬化性組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量100重量部に対して、50~200重量部が好ましく、より好ましくは80~150重量部である。より具体的には、硬化剤(B)として酸無水物類を使用する場合、本発明の硬化性組成物に含まれるエポキシ基1当量あたり、0.5~1.5当量となる割合で使用することが好ましい。硬化剤(B)の含有量を50重量部以上とすることにより、硬化を十分に進行させることができ、得られる硬化物の強靭性が向上する傾向がある。一方、硬化剤(B)の含有量を200重量部以下とすることにより、着色が抑制され、透明性に優れた硬化物が得られる傾向がある。
【0087】
(硬化促進剤(C))
本発明の硬化性組成物が硬化剤(B)を含む場合には、さらに硬化促進剤(C)を含むことが好ましい。硬化促進剤(C)は、エポキシ基(オキシラニル基)を有する化合物が硬化剤(B)と反応する際に、その反応速度を促進する効果を有する。
【0088】
前記硬化促進剤(C)としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等の三級アミン;2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール;リン酸エステル;トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシ)ホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p-トリル)ボレート等のホスホニウム化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ステアリン酸亜鉛等の有機金属塩;アルミニウムアセチルアセトン錯体等の金属キレート等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
前記硬化促進剤(C)としては、例えば、商品名「U-CAT SA 506」、「U-CAT SA 102」、「U-CAT 5003」、「U-CAT 18X」、「U-CAT 12XD」(開発品)(以上、サンアプロ(株)製);商品名「TPP-K」、「TPP-MK」(以上、北興化学工業(株)製);商品名「PX-4ET」(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0090】
前記硬化促進剤(C)の含有量(配合量)は、硬化剤(B)100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、より好ましくは0.02~3重量部、さらに好ましくは0.03~3重量部である。硬化促進剤(C)の含有量を0.01重量部以上とすることにより、いっそう効率的な硬化促進効果が得られる傾向がある。一方、硬化促進剤(C)の含有量を5重量部以下とすることにより、着色が抑制され、透明性に優れた硬化物が得られる傾向がある。
【0091】
(硬化触媒(D))
本発明の硬化性組成物は、硬化剤(B)に代えて、硬化触媒(D)を含んでいてもよい。硬化触媒(D)は、式(1)で表される化合物等のカチオン硬化性化合物の硬化反応(重合反応)を開始及び/又は促進させることにより、硬化性組成物を硬化させる働きを有する。硬化触媒(D)としては、例えば、光照射や加熱処理等を施すことによりカチオン種を発生して、重合を開始させるカチオン重合開始剤(光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤等)や、ルイス酸触媒、ブレンステッド酸塩類、イミダゾール類等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
前記光カチオン重合開始剤としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩、ペンタフルオロヒドロキシアンチモネート塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩等が挙げられ、より具体的には、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(例えば、p-フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩(特に、トリアリールスルホニウム塩);ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4-(4-メチルフェニル-2-メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;N-ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート等のピリジニウム塩等が挙げられる。また、光カチオン重合開始剤としては、例えば、商品名「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製);商品名「CD-1010」、「CD-1011」、「CD-1012」(以上、米国サートマー製);商品名「イルガキュア264」(BASF社製);商品名「CIT-1682」(日本曹達(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。
【0093】
前記熱カチオン重合開始剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アレン-イオン錯体等が挙げられ、商品名「PP-33」、「CP-66」、「CP-77」(以上(株)ADEKA製);商品名「FC-509」(スリーエム製);商品名「UVE1014」(G.E.製);商品名「サンエイドSI-60L」、「サンエイドSI-80L」、「サンエイドSI-100L」、「サンエイドSI-110L」、「サンエイドSI-150L」(以上、三新化学工業(株)製);商品名「CG-24-61」(BASF社製)等の市販品を好ましく使用することができる。
【0094】
前記ルイス酸触媒としては、例えば、BF3・n-ヘキシルアミン、BF3・モノエチルアミン、BF3・ベンジルアミン、BF3・ジエチルアミン、BF3・ピペリジン、BF3・トリエチルアミン、BF3・アニリン、BF4・n-ヘキシルアミン、BF4・モノエチルアミン、BF4・ベンジルアミン、BF4・ジエチルアミン、BF4・ピペリジン、BF4・トリエチルアミン、BF4・アニリン、PF5・エチルアミン、PF5・イソプロピルアミン、PF5・ブチルアミン、PF5・ラウリルアミン、PF5・ベンジルアミン、AsF5・ラウリルアミン等が挙げられる。
【0095】
前記ブレンステッド酸塩類としては、例えば、脂肪族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0096】
前記イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2-フェニルイミダゾリウムイソシアヌレート、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-エチル-4-メチルイミダゾリル-(1)]-エチル-s-トリアジン等が挙げられる。
【0097】
前記硬化触媒(D)の含有量(配合量)は、硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、より好ましくは0.02~4重量部、さらに好ましくは0.03~3重量部である。硬化触媒(D)を上記範囲内で使用することにより、硬化性組成物の硬化速度が高まり、硬化物の耐熱性及び透明性がバランスよく向上する傾向がある。
【0098】
本発明の硬化性組成物は、上記以外にも、必要に応じて添加剤を1種又は2種以上含んでいてもよい。前記添加剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、界面活性剤、無機充填剤、難燃剤、着色剤、イオン吸着体、顔料、蛍光体、離型剤等が挙げられる。
【0099】
本発明の硬化性組成物は、上記の各成分を、必要に応じて加熱した状態で撹拌・混合することにより調製することができる。上記撹拌・混合には、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザー等の各種ミキサー、ニーダー、ロールミル、ビーズミル、自公転式撹拌装置等の公知乃至慣用の撹拌・混合手段を使用できる。また、撹拌・混合後、真空下にて脱泡してもよい。
【0100】
本発明の硬化性組成物は、上記脂環式エポキシ化合物製品を含有するため、硬化性に優れる。
【0101】
本発明の硬化性組成物が硬化剤(B)、又は硬化触媒(D)として熱カチオン重合開始剤を含有する場合は、加熱処理を施すことで硬化物を形成することができる。
【0102】
加熱温度は、例えば80~180℃である。また、加熱時間は、例えば30~600分である。加熱温度を高くした場合は加熱時間を短く、加熱温度を低くした場合は加熱時間を長くする等により、適宜調整することができる。
【0103】
一方、本発明の硬化性組成物が硬化触媒(D)として光カチオン重合開始剤を含有する場合は、光照射処理を施すことで硬化物を形成することができる。
【0104】
光照射には、紫外線が好ましく用いられる。用いられる紫外線の波長は200~400nmが好ましい。好ましい照射条件は、照度5~300mW/cm2、照射量50~18000mJ/cm2である。
【0105】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上述の硬化性組成物を硬化させることにより得られる。
【0106】
本発明の硬化物は透明性に優れ、本発明の硬化物(厚み:3mm)の波長400nmの光線透過率は、例えば50%以上、好ましくは55%以上である。波長450nmの光線透過率は、例えば75%以上である。波長550nmの光線透過率は、例えば85%以上である。
【0107】
また、本発明の硬化物は耐熱性に優れ、ガラス転移温度(Tg)は、例えば300℃以上、好ましくは340℃以上である。また、ガラス転移温度以下での線膨張係数(α1:ppm/℃)は、例えば65以下(例えば50~65)、好ましくは60以下(例えば50~60)である。更に、ガラス転移温度以上での線膨張係数(α2:ppm/℃)は、例えば150以下(例えば110~150)、好ましくは140以下(例えば110~140)である。尚、Tg、α1、α2は、実施例の方法で測定できる。
【0108】
本発明の硬化性組成物は、例えば、封止剤、接着剤、コーティング剤、電気絶縁材、積層板、インク、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ等の各種用途に使用することができる。
【0109】
本発明の硬化性組成物は、上述の通り透明性に優れた硬化物を形成することができるため、本発明の硬化性組成物を、光半導体装置における光半導体素子の封止剤やダイアタッチペースト剤等として使用した場合に、光半導体装置から発せられる光度がより高くなる傾向がある。
【0110】
<封止剤>
本発明の封止剤は、上記硬化性組成物を含むことを特徴とする。本発明の封止剤は、光半導体装置における光半導体(光半導体素子)を封止する用途に好ましく使用できる。本発明の封止剤を使用すれば、透明性及び耐熱性に優れた硬化物(=封止材)により光半導体素子を封止することができる。
【0111】
本発明の封止剤全量における、上記硬化性組成物の含有量の占める割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。本発明の封止剤は上記硬化性組成物のみから成るものであってもよい。
【0112】
<接着剤>
本発明の接着剤は、上記硬化性組成物を含むことを特徴とする。本発明の接着剤は、部材等を被着体に接着・固定する用途、詳細には、光半導体装置において光半導体素子を金属製の電極に接着及び固定するためのダイアタッチペースト剤;カメラ等のレンズを被着体に固定したり、レンズ同士を貼り合わせたりするためのレンズ用接着剤;光学フィルム(例えば、偏光子、偏光子保護フィルム、位相差フィルム等)を被着体に固定したり、光学フィルム同士又は光学フィルムとその他のフィルムとを貼り合わせたりするための光学フィルム用接着剤等の、透明性及び耐熱性が要求される各種用途に使用することができる。
【0113】
本発明の接着剤は、特に、ダイアタッチペースト剤(若しくは、ダイボンド剤)として好ましく使用できる。本発明の接着剤をダイアタッチペースト剤として用いることにより、透明性及び耐熱性に優れた硬化物により光半導体素子が電極に接着された光半導体装置が得られる。
【0114】
本発明の接着剤全量における、上記硬化性組成物の含有量の占める割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。本発明の接着剤は上記硬化性組成物のみから成るものであってもよい。
【0115】
<コーティング剤>
本発明のコーティング剤は、上記硬化性組成物を含むことを特徴とする。本発明のコーティング剤は、特に、透明性及び耐熱性が要求される各種用途に使用することができる。
【0116】
本発明のコーティング剤全量における、上記硬化性組成物の含有量の占める割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。本発明のコーティング剤は上記硬化性組成物のみから成るものであってもよい。
【0117】
<光学部材>
本発明の光学部材は、上述の硬化性組成物の硬化物を備えることを特徴とする。前記光学部材としては、例えば、光半導体素子が上述の硬化性組成物の硬化物によって封止された光半導体装置、上述の硬化性組成物の硬化物によって光半導体素子が電極に接着された光半導体装置、及び上述の硬化性組成物の硬化物によって光半導体素子が電極に接着され、なおかつ、当該光半導体素子が上述の硬化性組成物の硬化物によって封止された光半導体装置等が挙げられる。
【0118】
本発明の光学部材は、上述の硬化性組成物の硬化物によって封止され、接着された構成を有するため、耐熱性に優れ、光取り出し効率が高い。
【実施例】
【0119】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0120】
実施例1
(脱水工程)
4,4’-ジヒドロキシビシクロヘキシル1000g、脱水触媒125g[95重量%硫酸(70g)と1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(55g)を撹拌混合して調製したもの]、プソイドクメン1500gを3Lのジャケット付きガラスフラスコに仕込み、フラスコを加熱した。内温が115℃を超えたあたりから水の生成が確認された。さらに昇温を続けてプソイドクメンの沸点まで温度を上げ(内温162~170℃)、常圧で脱水反応を行った。副生した水は留出させ、脱水管により系外に排出した。なお、脱水触媒は反応条件下において液体であり反応液中に微分散していた。3時間経過後、ほぼ理論量の水(180g)が留出したため反応終了とした。反応終了液を10段のオールダーショウ型の蒸留塔を用い、プソイドクメンを留去した後、内部圧力10Torr(1.33kPa)、内温137~140℃にて蒸留し、731gの3,4,3’,4’-ビシクロヘキセニルを得た。
【0121】
(エポキシ化工程)
3,4,3’,4’-ビシクロヘキセニル100g、酢酸エチル300gを1Lのジャケット付きガラスフラスコに仕込み、窒素を気相部に吹き込みながら、反応系内の温度を30℃になるように約2時間かけて、過酢酸の酢酸エチル溶液307.2g(過酢酸濃度:29.2%、水分含量0.31%)を滴下した。過酢酸滴下終了後、30℃で3時間熟成して反応を終了した。
【0122】
(水洗工程、脱溶媒工程、及び脱高沸工程)
得られた反応終了液を30℃で水洗し、WFE型薄膜蒸発器にて70℃/20mmHgで脱溶媒を行った後、同じく加熱温度180℃、圧力4mmHgの条件で脱高沸し、下記式(1-1)で表される(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシルと、下記式(a-1)及び/又は下記式(b-1)で表される過水添物と、下記式(c-1)及び/又は下記式(d-1)で表される異性体を含む混合物(1)71.2gを得た。
【化14】
【化15】
【0123】
(分留工程)
得られた混合物(1)524gを、理論段数10段のガラス製バッチ式充填塔に仕込み、下記条件下で分留操作を行い、留出液を約50gずつ分取して、留出順にフラクション1~6とした。これらを脂環式エポキシ化合物製品(1)~(6)とした。
【0124】
<分留条件>
加熱温度:160-175℃
塔底温度:136-152℃
塔頂温度:117-118℃
塔底圧力:1.8-2.3mmHg
塔頂圧力:0.6-0.7mmHg
【0125】
比較例1
(分留工程)に付さなかった以外は実施例1と同様に行った。すなわち、水洗工程、脱溶媒工程、及び脱高沸工程を経て得られた混合物(1)をそのまま脂環式エポキシ化合物製品(7)とした。
【0126】
実施例及び比較例で得られた脂環式エポキシ化合物製品をガスクロマトグラフ測定に付した。脂環式エポキシ化合物製品(6)の測定結果を
図1に示し、脂環式エポキシ化合物製品(7)の測定結果を
図2に示す。
【0127】
図1、2より、分留操作によって、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシルと沸点が極めて近い成分が効率よく除去できることがわかる。そして、分留操作を経て得られる本発明の脂環式エポキシ化合物製品は、式(1)で表される化合物を高純度に含有し、且つ式(a)で表される化合物と式(b)で表される化合物の含有量は極めて低く抑えられることがわかる。
【0128】
尚、脂環式エポキシ化合物製品のガスクロマトグラフ測定は、以下の条件で行った。
<測定条件>
測定装置:商品名「HP-5」、Agilent社製
カラム充填剤:(5%フェニル)メチルシロキサン
カラムサイズ:長さ30m×内径0.32mmφ×膜厚0.25μm
カラム温度:60℃→(10℃/分で昇温)→300℃(5分)
検出器:FID
【0129】
また、上記ガスクロマトグラフ測定結果から、脂環式エポキシ化合物製品中の主成分((3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル)の含有量(=純度)、過水添物(式(a-1)で表される化合物と化合物(b-1)で表される化合物を含む)の含有量、及び異性体(式(c-1)で表される化合物と式(d-1)で表される化合物を含む)の含有量を、各化合物のピークの面積%を算出することによって求めた。
尚、前記主成分のリテンションタイムは16.566分、前記過水添物のリテンションタイムは13.891分、前記異性体のリテンションタイムは16.029分、16.124分、及び16.236分である。
【0130】
上記ガスクロマトグラフ測定結果より、脂環式エポキシ化合物製品(1)~(7)から、下記式(x-1)で表される化合物は検出されなかった。
【化16】
【0131】
実施例1及び比較例1で得られた脂環式エポキシ化合物製品の組成分析結果を下記表にまとめて示す。
【表1】
※「<0.05」の下限値は0.01%
【0132】
実施例2
実施例1で得られた脂環式エポキシ化合物製品(2)100重量部に、熱カチオン重合開始剤として商品名「サンエイドSI-100L」(三新化学工業(株)製)0.6重量部を添加し、自公転式撹拌装置(商品名「あわとり錬太郎AR-250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して熱硬化性組成物を得た。
【0133】
実施例3、4、比較例2
処方を下記表2に記載の通りに変更した以外は実施例2と同様にして熱硬化性組成物を得た。
【0134】
実施例2~4及び比較例2で得られた熱硬化性組成物の硬化性を以下の方法で評価した。
[硬化性評価方法]
熱硬化性組成物を、昇温速度5℃/分で25℃から80℃まで昇温し、80℃で50分間保持して、レオメーター(MCR302、(株)アントンパール製)を用いて、ギャップ0.2mm、ひずみ制御5%、周波数1Hzの条件下で、損失弾性率と貯蔵弾性率を測定した。そして、80℃に達した時点から、損失弾性率と貯蔵弾性率の交点までの時間を熱ゲル化時間とした。熱ゲル化時間が短い方が硬化性に優れる。
【0135】
【0136】
表2より、熱硬化性組成物中の過水添物と異性体の含有量が低減されるに従って硬化性が向上することがわかる。
【0137】
実施例5~9及び比較例3
処方を下記表3に記載の通りに変更した以外は実施例2と同様にして熱硬化性組成物を得た。得られた熱硬化性組成物について、以下の方法で硬化物を得、得られた硬化物の耐熱性、機械特性、及び透明性を以下の方法で評価した。
【0138】
[硬化方法]
熱硬化性組成物を成型機に注型し、45℃×6.5時間、続いて150℃×2時間の硬化条件で加熱して、硬化物を得た。
【0139】
[耐熱性評価方法]
TMA測定装置(「TMA/SS100」、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用し、JIS K7197に準拠した方法により、窒素雰囲気下にて、硬化物を昇温速度5℃/分で30℃から300℃まで昇温し、前記温度範囲における熱膨張率を測定した後、TMAチャートにおける、ガラス転移点より低温領域及び高温領域のそれぞれにおいて接線を引き、接線の交点からガラス転移温度(Tg)を求めた。
また、硬化物の、ガラス転移温度以下での線膨張係数α1(ppm/℃)、及びガラス転移温度以上での線膨張係数α2(ppm/℃)を、前記TMAチャートから求めた。α1、α2の値が小さい方が、硬化物の寸法安定性が良好である。
【0140】
[機械特性評価方法]
硬化物(厚さ4mm×幅10mm×長さ80mm)について、テンシロン万能試験機((株)オリエンテック製)を使用して、エッジスパン67mm、曲げ速度2mm/分の条件で、3点曲げ試験を行うことにより、硬化物の曲げ強度(MPa)、及び曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0141】
[透明性評価方法]
硬化物(厚さ:3mm)について、波長400nmの光線透過率(%)を、分光光度計(商品名「UV-2450」、(株)島津製作所製)を使用して測定した。
【0142】
【0143】
表3より、熱硬化性組成物中の異性体の含有量に係わらず、過水添物の含有量が低減されると、得られる硬化物の耐熱性、機械特性、及び透明性が向上することがわかる。
【0144】
実施例10
実施例1で得られた脂環式エポキシ化合物製品(2)100重量部に、光カチオン重合開始剤として商品名「CPI-101A」(サンアプロ(株)製)1重量部を添加し、自公転式攪拌装置(商品名「あわとり錬太郎AR-250」、(株シンキー製)を使用して均一に配合し、脱泡して光硬化性組成物を得た。
【0145】
実施例11~13、比較例4
処方を下記表4に記載の通りに変更した以外は実施例10と同様にして光硬化性組成物を得た。得られた光硬化性組成物の硬化性を以下の方法で評価した。
[硬化性評価方法]
光硬化性組成物に、25℃条件下で、UV照射(10mW/cm2で10秒照射)を施したものについて、レオメーター(MCR302、(株)アントンパール製)を用いて、25℃、ギャップ0.1mm、ひずみ制御5%、周波数10Hzの条件下で、損失弾性率と貯蔵弾性率を測定した。そして、損失弾性率と貯蔵弾性率の交点までの時間をUVゲル化時間とした。UVゲル化時間は短い方が硬化性に優れる。
【0146】
【0147】
表4より、光硬化性組成物中の過水添物と異性体の含有量が低減されるに従って硬化性が向上することがわかる。