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  • 特許-熱変色性筆記具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 23/08 20060101AFI20230508BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20230508BHJP
   B43K 8/03 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B43K23/08 100
B43K29/02 F
B43K8/03 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019085531
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020179631
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】飯島 達也
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕輔
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/084894(WO,A1)
【文献】特開2016-078418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 23/08
B43K 29/02
B43K 1/00-1/12
B43K 5/00-8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱変色性インキが収容され且つ前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を備えた軸筒と、該軸筒のペン先側に着脱自在に装着されるキャップと、を備え、前記軸筒の後端に摩擦部が設けられ、前記摩擦部によって前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な熱変色性筆記具であって、前記キャップが円筒状のキャップ本体を備え、前記キャップ本体の外面前方に向かうに従い縮径する縮径形状部を有し、前記軸筒のペン先側にキャップが装着された状態で熱変色性筆記具の重心が前記キャップ本体縮径形状部の径方向内方に位置され、前記軸筒のペン先側に前記キャップが装着された状態で熱変色性筆記具を水平載置面に載置した際、前記キャップ本体縮径形状部が水平載置面に接触し、前記キャップより後方の前記軸筒の外面及び前記摩擦部の外面が水平載置面と非接触状態となることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記軸筒のペン先側に前記キャップが装着された状態で前記キャップより後方の前記軸筒の外面が後方に向かうに従い縮径され、前記軸筒のペン先側に前記キャップが装着された状態で熱変色性筆記具を水平載置面に載置した際、前記摩擦部と前記水平載置面との間の隙間が3mm以上に設定される請求項1に記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記軸筒の内部に熱変色性インキが含浸されたインキ吸蔵体が収容され、前記軸筒のペン先側に前記キャップが装着された状態で、前記インキ吸蔵体の全長手寸法の1/2以上の長さがキャップの内部に位置される請求項1または2に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、熱変色性インクが収容された筆記具本体と、筆記具本体の前端の筆記部を保護するキャップと、筆記具本体の後端に設けられ、熱変色性インクで筆記した描線を摩擦熱で変色させる消去部材とを具備する筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-78418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の筆記具は、非使用時に筆記具を机や作業台等の水平載置面に載置した際、水平載置面に軸筒の外面や消去部材(本願の摩擦部に相当)が接触する。そのため、軸筒の外面や消去部材の外面に水性載置面の埃等の汚れが付着したり、軸筒の外面(例えば加飾部)に傷がついたりするおそれがある。特に、前記汚れた消去部材を用いて紙面の筆跡を摩擦すると、紙面が汚れることになる。
【0005】
本発明は、前記従来の本題点を解決するものであって、非使用時、水平載置面に載置した場合でも、軸筒の外面及び摩擦部の外面が汚れたり、軸筒の外面に傷がついたりするおそれがない熱変色性筆記具を提供しようとするものである。
【0006】
尚、本発明で、「前」とは、軸筒のペン先側及びキャップの閉鎖側を指し、「後」とは、軸筒の尾端側及びキャップの開口側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、内部に熱変色性インキが収容され且つ前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先4を備えた軸筒3と、該軸筒3のペン先側に着脱自在に装着されるキャップ8と、を備え、前記軸筒3の後端に摩擦部7が設けられ、前記摩擦部7によって前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な熱変色性筆記具であって、前記キャップ8の外面が前方に向かうに従い縮径され、前記軸筒3のペン先側にキャップ8が装着された状態で熱変色性筆記具の重心Gが前記キャップ8の内部に位置され、前記軸筒3のペン先側に前記キャップ8が装着された状態で熱変色性筆記具を水平載置面Fに載置した際、前記キャップ8の外面が水平載置面Fに接触し、前記キャップ8より後方の前記軸筒3の外面及び前記摩擦部7の外面が水平載置面Fと非接触状態となることを要件とする。
【0008】
前記第1の発明の熱変色性筆記具1は、前記構成により、非使用時、キャップ8がペン先側に装着された状態で水平載置面Fに載置させたとしても、軸筒3の外面及び摩擦部7の外面が汚れたり、軸筒3の外面に傷がついたりするおそれがない。また、前方に向かうに従い縮径されたキャップ8の外面が水平載置面Fに接触するため、熱変色性筆記具1の軸線Cが後方に向かうに従い水平載置面Fから上昇し(即ち水平載置面Fとの距離が増加し)、キャップ8より後方の前記軸筒3の外面及び前記摩擦部7の外面が水平載置面Fと容易に非接触状態とすることができる。
【0009】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の熱変色性筆記具において、前記軸筒3のペン先側に前記キャップ8が装着された状態で前記キャップ8より後方の前記軸筒3の外面が後方に向かうに従い縮径され、前記軸筒3のペン先側に前記キャップ8が装着された状態で熱変色性筆記具を水平載置面Fに載置した際、前記摩擦部7と前記水平載置面Fとの間の隙間Dが3mm以上に設定されることを要件とする。
【0010】
前記第2の発明に熱変色性筆記具1は、前記構成により、一層、軸筒3の外面及び摩擦部7の外面が汚れたり、軸筒3の外面に傷がついたりするおそれがない。
【0011】
本願の第3の発明は、前記第1または第2の発明の熱変色性筆記具において、前記軸筒3の内部に熱変色性インキが含浸されたインキ吸蔵体5が収容され、前記軸筒3のペン先側に前記キャップ8が装着された状態で、前記インキ吸蔵体5の全長手寸法Aの1/2以上の長さBがキャップ8の内部に位置されることを要件とする。
【0012】
前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、前記構成により、軸筒3のペン先側にキャップ8が装着された状態で熱変色性筆記具1の重心Gが前記キャップ8の内部に位置される構成を容易に得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱変色性筆記具は、非使用時、水平載置面に載置した場合でも、軸筒の外面及び摩擦部の外面が汚れたり、軸筒の外面に傷がついたりするおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態のペン先側にキャップを装着した状態の縦断面図である。
図2図1の軸筒よりキャップを取り外した状態の縦断面図である。
図3図1の熱変色性筆記具を水平載置面に載置した状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態の熱変色性筆記具1を図1乃至図3に示す。本実施の形態の熱変色性筆記具1は、筆記具本体2とキャップ8とを備える。筆記具本体2は、軸筒3と、軸筒3内部に収容されるインキ吸蔵体5と、軸筒3の前端に固着されるペン先4と、軸筒3の後端に固着される摩擦部7とを備える。
【0016】
・軸筒
軸筒3は、筒状の前軸31と、該前軸31の後部に結合される筒状の後軸32とを備える。前軸31は、ペン先4が固着される先細状部31aと、該先細状部31aより後方に一体に連設される前側筒部31bと、該前側筒部31bの後端より径方向外方に突出するように一体に連設される鍔部31cと、該鍔部31cより後方に一体に連設される後側筒部31dとを備える。前軸31及び後軸32は合成樹脂(例えばポリプロピレン等)の成形体から得られる。
【0017】
・前軸
前軸31の先細状部31aにはペン先取付孔31eが軸方向に貫設される。ペン先取付孔31eにペン先4が圧入固着される。前軸31の内部には、インキ吸蔵体5が収容され、インキ吸蔵体5の前端部とペン先4の後端部とが接続される。インキ吸蔵体5の後端は前軸31の後端より後方に突出される。前軸31の内面のペン先取付孔31eの後方には当接壁部31fが形成され、当接壁部31fにインキ吸蔵体5の前端が当接される。
【0018】
・後軸
後軸32は後方に向かうに従い縮径する外面を有する。後軸32は両端が開口され、軸方向に貫通する内孔を有する。後軸32の中間部内面に、環状シール部32aと、環状シール部32aの後方に位置する係止壁部32bとが一体に形成される。環状シール部32aと中栓6の外面とが径方向に気密嵌合されるとともに係止壁部32bと中栓6の後端とが軸方向に当接される。後軸32の後端開口部に摩擦部7が圧入固着される。後軸32の前部内面と前軸31の後側筒部31dの外面とが気密嵌合により固定される。後軸32の外面は転写印刷により加飾部を備える。
【0019】
・ペン先
ペン先4は、合成樹脂(例えばポリステル)繊維束の樹脂加工体である。ペン先4は、前端部がチゼル状(ノミ状)に形成される。ペン先4の後端部は後方に向かうに従い縮径するテーパ面を有する。ペン先4の後端部はインキ吸蔵体5の前端部に突き刺し接続される。
【0020】
・インキ吸蔵体
インキ吸蔵体5は、合成樹脂製繊維束(例えばポリエステル繊維束)と、その外周を包囲する円筒状の外皮とからなる。外皮は合成樹脂製筒体(例えば、ポリプロピレン樹脂の押出成形体)よりなる。前記インキ吸蔵体5に熱変色性インキが含浸保持される。
【0021】
・熱変色性インキ
熱変色性インキは、熱変色性マイクロカプセル顔料を用いたものであり、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む水性インキ組成物が採用される。前記熱変色性インキは、加熱により消色するタイプ、または加熱により発色するタイプが挙げられる。
【0022】
・中栓
中栓6は合成樹脂(例えばポリプロピレン)の成形体により得られる。中栓6は前端が開口され且つ後端が閉鎖された有底円筒体である。中栓6の外面が後軸32の内面の環状シール部32aと気密嵌合される。中栓6の後端が後軸32の内面の係止壁部32bに軸方向に係止される。中栓6の前端がインキ吸蔵体5の後端(外皮の後端)に当接される。中栓6によって後軸32の後端開口部と後軸32内部との通気が遮断される。
【0023】
・摩擦部
摩擦部7は、円筒状の小径部71と、小径部71の後方に一体に連設される凸曲面状の大径部72とを備える。小径部71が、後軸32の後端開口部に圧入固着され、大径部72が後軸32の後端より後方に突出される。後軸32の後端より後方に突出する部分(大径部72)の最大外径は後軸32の後端の外径以下に設定される。
【0024】
摩擦部7を構成する材料としては、例えば、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部7は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗屑が生じない低摩耗性の弾性材料からなる。摩擦部7は、軸筒3(後軸32)に2色成形により一体に形成することもできる。また、軸筒3全体(後軸32全体)を、弾性を有する合成樹脂により一体に形成し、軸筒3後端(後軸32後端)に摩擦部7を設けることもできる
【0025】
・キャップ
キャップ8は、円筒状のキャップ本体81と、該キャップ本体81の外面に一体に形成されるクリップ81bと、キャップ本体81の内部に固定されるシール筒82とを備える。
【0026】
キャップ本体81の外面は前方に向かうに従い縮径された形状(即ち前方に向かうに従い外径が小さくなる形状)の縮径形状部81aを有する。縮径形状部81aの形状としてはは、例えば、テーパ面、凸曲面、凹曲面等が挙げられる。キャップ本体81は合成樹脂(例えばポリカーボネイト)の成形体により得られる。シール筒82は合成樹脂(例えばポリプロピレン)の成形体により得られる。シール筒82は前端が閉鎖され且つ後端が開口された有底円筒体である。キャップ8をペン先側に装着した際、キャップ本体81の内面の内向突起81cと軸筒3の外面(前軸31の外面)の外向突起31gとが乗り越え嵌合(抜け止め嵌合)されるとともに、シール筒82の内面と軸筒3のペン先側の外面(前軸31の外面)とが環状に気密嵌合される。クリップ81bとキャップ本体81外面との間でポケット等の被挟持物を挟持可能である。
【0027】
本実施の形態の熱変色性筆記具1を水平載置面Fに載置した状態を図3に示す。
キャップ8をペン先側に装着した状態において熱変色性筆記具1全体の重心Gは、キャップ内部(縮径形状部81aの径方向内方)に位置される。キャップ8をペン先側に装着した状態においてインキ吸蔵体5がキャップ内部に位置される部分の長手方向の長さBは、インキ吸蔵体5の全長手寸法Aの1/2以上(50%以上)の長さを有する。熱変色性筆記具1を水平載置面Fに載置した際、クリップ81bが水平載置面Fに接触するとともに、キャップ8の外面の縮径形状部81aが水平載置面Fに接触し、熱変色性筆記具1の軸線Cは後方に向かう従い水平載置面Fから離隔する。軸筒3の外面(後軸32の外面)及び摩擦部7の外面は、水平載置面Fと非接触状態となる。摩擦部7と水平載置面Fとの隙間Dは、3mm以上に設定される。
【0028】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、キャップ8の外面が前方に向かうに従い縮径され、軸筒3のペン先側にキャップ8が装着された状態で熱変色性筆記具1の重心Gが前記キャップ8の内部に位置され、軸筒3のペン先側にキャップ8が装着された状態で熱変色性筆記具1を水平載置面Fに載置した際、キャップ8の外面が水平載置面Fに接触し、キャップ8より後方の軸筒3の外面及び摩擦部7の外面が水平載置面Fと非接触状態となることにより、非使用時、キャップ8がペン先側に装着された状態で水平載置面Fに載置させたとしても、軸筒3の外面及び摩擦部7の外面が汚れたり、軸筒3の外面に傷がついたりするおそれがない。また、前方に向かうに従い縮径されたキャップ8の外面(縮径形状部81a)が水平載置面Fに接触するため、熱変色性筆記具1の軸線が後方に向かうに従い水平載置面Fから上昇し、キャップ8より後方の軸筒3の外面及び摩擦部7の外面が水平載置面Fと容易に非接触状態とすることができる。
【0029】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒3のペン先側にキャップ8が装着された状態でキャップ8より後方の軸筒3の外面が後方に向かうに従い縮径され、軸筒3のペン先側にキャップ8が装着された状態で熱変色性筆記具を水平載置面Fに載置した際、摩擦部7と水平載置面Fとの間の隙間Dが3mm以上に設定されることにより、一層、軸筒3の外面及び摩擦部7の外面が汚れたり、軸筒3の外面に傷がついたりするおそれがない。
【0030】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒3の内部に熱変色性インキが含浸されたインキ吸蔵体5が収容され、軸筒3のペン先側に前記キャップ8が装着された状態で、前記インキ吸蔵体5の全長手寸法Aの1/2以上(50%以上)の長さBがキャップ8の内部に位置されることにより、軸筒3のペン先側にキャップ8が装着された状態で熱変色性筆記具1の重心Gがキャップ8の内部に位置される構成を容易に得る。
【符号の説明】
【0031】
1 熱変色性筆記具
2 筆記具本体
3 軸筒
31 前軸
31a 先細状部
31b 前側筒部
31c 鍔部
31d 後側筒部
31e ペン先取付孔
31f 当接壁部
31g 外向突起
32 後軸
32a 環状シール部
32b 係止壁部
4 ペン先
5 インキ吸蔵体
6 中栓
7 摩擦部
71 小径部
72 大径部
8 キャップ
81 キャップ本体
81a 縮径形状部
81b クリップ
81c 内向突起
82 シール筒
A インキ吸蔵体の全長
B キャップ内に位置するインキ吸蔵体の長さ
C 軸線
D 隙間
G 重心
F 水平載置面
図1
図2
図3