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  • 特許-レーダ装置、及び信号処理方法 図1
  • 特許-レーダ装置、及び信号処理方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】レーダ装置、及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20230508BHJP
   G01S 7/04 20060101ALI20230508BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20230508BHJP
   H01Q 1/28 20060101ALI20230508BHJP
   H01Q 3/30 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G01S13/90 164
G01S13/90 191
G01S7/04
G01S7/02 216
H01Q1/28
H01Q3/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019146497
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021025972
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 智士
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247777(JP,A)
【文献】特開2012-063280(JP,A)
【文献】特開2003-149333(JP,A)
【文献】特開2019-053012(JP,A)
【文献】特開昭59-027281(JP,A)
【文献】特表2015-513747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エコー信号を用いて、ISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar)画像を生成する生成部と、
前記ISAR画像を表示する表示部と、
ユーザの指示に応じて、第1及び第2測定ラインを前記表示部に表示する第1表示処理部と、
前記ISAR画像における前記第1及び第2測定ラインに挟まれた第1領域の輝度よりも、前記第1領域以外の第2領域の輝度を高くする調整部と、
ユーザの指示に応じて、前記第1及び第2測定ラインの位置を更新する第2表示処理部と、
前記第1及び第2測定ライン間の距離に基づいて、長さを測定する測定部と、
を具備するレーダ装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記第1及び第2測定ラインに基づいて、前記第1領域及び前記第2領域を判定する
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
ユーザが入力する情報を受け付ける入力部をさらに具備し、
前記第1及び第2表示処理部は、前記入力部からの情報に基づいて処理を実行する
請求項1又は2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記測定された長さを出力する出力部をさらに具備する
請求項1乃至3のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記目標に向けて送信信号を送信し、前記エコー信号を受信するアンテナをさらに具備する
請求項1乃至4のいずれかに記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記アンテナは、フェーズドアレイアンテナである
請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
エコー信号を用いて、ISAR画像を生成し、
前記ISAR画像を表示部に表示し、
ユーザの指示に応じて、第1及び第2測定ラインを前記表示部に表示し、
前記ISAR画像における前記第1及び第2測定ラインに挟まれた第1領域の輝度よりも、前記第1領域以外の第2領域の輝度を高くし、
ユーザの指示に応じて、前記第1及び第2測定ラインの位置を更新し、
前記第1及び第2測定ライン間の距離に基づいて、長さを測定する
信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーダ装置、及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse Synthetic Aperture Radar)で取得した画像を用いて、船舶等の目標を類別するレーダ装置が知られている。このようなレーダ装置は、取得したISAR画像から目標の特徴を抽出し、これを予めデータベース化された船舶等の特徴と比較することによって、目標を類別する。
【0003】
目標の特徴としては、例えば、船舶の全体の形状、並びに船舶に設置された各種の構造物及びその設置位置等が含まれる。これらの特徴をISAR画像中から抽出する過程において、画像中から目標の両端部、すなわち船首及び船尾を検出し、目標の全体像を特定した上で、各構造物等が設置された位置を全体像の中で特定する。また、船舶を類別する際には、船舶の全長(LOA:length overall)を正確に測定することが重要である。
【0004】
ISAR画像は、目標で反射されたエコー信号を合成処理して生成される。このため、レーダ信号の伝搬状態によっては、必ずしも船舶全体の鮮明な画像が取得できるとは限らず、船首又は船尾が低輝度でしか映らない不鮮明な画像になる場合がある。例えば、船首又は船尾にマストの影が重なり、画像の一部が非常に暗く、十分な視認性を確保できない場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】吉田 孝、「改訂レーダ技術」、電子情報通信学会、平成8年10月1日(初版)、pp. 280 - 285
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、目標の全長をより正確に測定することが可能なレーダ装置、及び信号処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るレーダ装置は、エコー信号を用いて、ISAR画像を生成する生成部と、前記ISAR画像を表示する表示部と、ユーザの指示に応じて、第1及び第2測定ラインを前記表示部に表示する第1表示処理部と、前記ISAR画像における前記第1及び第2測定ラインに挟まれた第1領域の輝度よりも、前記第1領域以外の第2領域の輝度を高くする調整部と、ユーザの指示に応じて、前記第1及び第2測定ラインの位置を更新する第2表示処理部と、前記第1及び第2測定ライン間の距離に基づいて、長さを測定する測定部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示した画像処理部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本実施形態に係るレーダ装置の動作を説明するフローチャートである。
図4図4は、表示部に表示されたISAR画像の一例である。
図5図5は、表示部に表示された2本の測定ラインの一例である。
図6図6は、輝度を調整した画像の一例である。
図7図7は、測定ラインが変更された画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
[1] レーダ装置の構成
図1は、本実施形態に係るレーダ装置10の構成を示すブロック図である。本実施形態では、レーダ信号を送信する目標として、船舶を例に挙げて説明する。レーダ装置10は、アンテナ11、サーキュレータ12、送信部13、受信部14、及び信号処理装置15を備える。
【0011】
アンテナ11は、レーダ装置10を搭載する移動体の外装などに取り付けられ、電波を送受信する。アンテナ11は、例えば、アレイ状に配列された複数のアンテナ素子を有するフェーズドアレイアンテナである。
【0012】
送信部13は、所定の送信周期で送信信号を生成し、生成した送信信号を、サーキュレータ12を介してアンテナ11から、目標としての船舶に向けて送信する。アンテナ11から送信された送信信号の一部は、目標で反射し、この反射されたエコー信号は、受信信号としてアンテナ11により受信される。
【0013】
サーキュレータ12は、送信信号と受信信号との経路を切り換える。サーキュレータ12は、送信部13からの送信信号をアンテナ11に伝送するとともに、アンテナ11により受信された受信信号を受信部14に伝送する。
【0014】
受信部14は、送信信号の送信周期に基づいて、アンテナ11により受信された受信信号を判別する。また、受信部14は、低雑音増幅、周波数変換、及びフィルタリング等の受信処理を、受信信号に施す。
【0015】
信号処理装置15は、受信部14から受信信号を取得する。信号処理装置15は、受信信号を処理する。信号処理装置15の機能は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによる演算処理により実現される。信号処理装置15は、ISAR画像生成部16、画像処理部17、記憶部18、入力部19、及び表示部20を備える。
【0016】
ISAR画像生成部16は、受信部14から受信信号を取得する。ISAR画像生成部16は、複数の受信信号に対して開口合成処理を実行し、ISAR画像を生成する。また、ISAR画像生成部16は、アンテナ11と目標との相対的な運動に基づいて、アンテナ11の開口(aperture)を等価的に拡大し、分解能を向上させることができる。
【0017】
画像処理部17は、ISAR画像生成部16からISAR画像を取得する。画像処理部17は、ISAR画像に対して画像処理を実行する。また、画像処理部17は、船舶の全長(LOA:length overall)を測定する。画像処理部17の具体的な構成については、後述する。
【0018】
記憶部18は、画像処理部17の機能を実現するためのプログラム、各種データ、及び各種パラメータなどを記憶する。記憶部18は、揮発性メモリ、及び不揮発性メモリを含む。
【0019】
入力部19は、ユーザからの指示を受け付ける。入力部19に入力された情報は、画像処理部17に送信される。入力部19は、タッチパネル、及び/又はトラックボールなどを含む。
【0020】
表示部20は、画像処理部17から送信された画像を、画面に表示する。表示部20は、LCD(Liquid Crystal Display)、又は有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等で構成される。
【0021】
図2を参照して、画像処理部17の構成について説明する。図2は、図1に示した画像処理部17の構成を示すブロック図である。画像処理部17は、表示処理部21、輝度調整部22、LOA測定部23、及びデータ出力部24を備える。
【0022】
表示処理部21は、表示部20に画像を表示するための処理を実行する。具体的には、表示処理部21は、ISAR画像生成部16が生成したISAR画像を表示部20に表示する。また、表示処理部21は、ユーザが入力部19に入力した情報に基づいて、LOAを測定するための2本の測定ラインを表示部20に表示する。
【0023】
輝度調整部22は、表示部20に表示された画像のうち2本の測定ラインの外側の領域を判定する。また、輝度調整部22は、2本の測定ラインの外側の領域の輝度を調整する。
【0024】
LOA測定部23は、2本の測定ライン間の距離を算出し、LOAを測定する。データ出力部24は、測定したLOAを、所定の方法で出力する。
【0025】
[2] 動作
図3を参照して、上記のように構成されたレーダ装置10の動作について説明する。図3は、レーダ装置10の動作を説明するフローチャートである。
【0026】
ISAR画像生成部16は、受信部14が受信した受信信号を用いて、合成開口処理を実行し、ISAR画像を生成する(ステップS100)。ISAR画像生成部16により生成されたISAR画像は、画像処理部17に送信される。
【0027】
続いて、表示処理部21は、ISAR画像を表示部20に表示する(ステップS101)。ISAR画像の最初の輝度は、ユーザが任意に設定可能であり、ISAR画像に含まれる船舶の全体像がより視認しやすいように設定される。図4は、表示部20に表示されたISAR画像30の一例である。表示部20には、船舶31が表示されている。図4の例では、船舶31のマストの影が船尾に重なり、船尾が非常に暗くなっている。このため、船尾の形状が視認できない状態である。図4において、船尾を破線で示している。
【0028】
ユーザは、表示部20に表示された船舶を視認する。そして、ユーザは、表示部20に表示された船舶のLOAを測定する。具体的には、ユーザは、入力部19を操作し、船舶の船首と船尾とにそれぞれ2本の測定ラインを置くものとする。
【0029】
続いて、画像処理部17は、測定ラインの情報が入力部19に入力されたか否かを監視している(ステップS102)。
【0030】
ステップS102において測定ラインの情報が入力された場合、表示処理部21は、表示部20のうちユーザが指示した位置に、2本の測定ラインを表示する(ステップS103)。図5は、表示部20に表示された2本の測定ライン32-1、32-2の一例である。船首は視認できるため、測定ライン32-1は、船首に合わせて置かれている。一方で、船尾は視認できないため、測定ライン32-2は、船尾に合わせて置かれていない。
【0031】
続いて、輝度調整部22は、2本の測定ラインの外側の領域を判定する(ステップS104)。図5では、測定ライン32-1、32-2の外側の領域は、領域33-1、33-2で示されている。領域33-1、33-2は、ISAR画像30のうち測定ライン32-1、32-2で挟まれた領域以外の領域である。
【0032】
続いて、輝度調整部22は、2本の測定ラインの外側の領域の輝度を、2本の測定ラインの内側の領域の輝度よりも高くする(ステップS105)。輝度は、表示部20の画面に表示された画像の輝度である。図6は、輝度を調整した画像の一例である。領域33-1、33-2の輝度を高くすることで、船尾が視認できるようになっている。ステップS105では、2本の測定ラインの外側の領域の輝度を高くするのに加えて、2本の測定ラインの内側の領域の輝度を低くするようにしてもよい。
【0033】
続いて、画像処理部17は、測定ラインの情報が入力部19に入力されたか否かを監視している(ステップS106)。
【0034】
ステップS106において、ユーザは、例えば船尾が視認できた場合、測定ラインの位置を変更する。ステップS106において測定ラインの情報が入力された場合、表示処理部21は、2本の測定ラインの位置(表示位置)を更新する(ステップS107)。図7は、測定ラインが変更された画像の一例である。ユーザは、領域33-2で船尾が視認できたので、測定ライン32-2を船尾の位置に変更する。
【0035】
続いて、LOA測定部23は、2本の測定ライン間の距離を算出し、LOAを測定する(ステップS108)。
【0036】
一方、ステップS106において測定ラインの情報が入力されない場合、ステップS108に移行する。具体的には、LOA測定部23は、ステップS105から所定時間が経過しても測定ラインが更新されない場合、処理を開始する。
【0037】
続いて、データ出力部24は、測定したLOAを、ユーザが確認できる状態で出力する(ステップS109)。ステップS109の出力方法としては、例えば、データ出力部24は、測定したLOAを、表示部20に表示する。
【0038】
[3] 実施形態の効果
以上詳述したように本実施形態では、表示処理部21は、ユーザの指示に応じて、ISAR画像が表示された表示部20に、LOAを測定するための2本の測定ラインを表示する。輝度調整部22は、ISAR画像のうち2本の測定ラインの外側の領域を判定し、この領域の輝度を高くする。表示処理部21は、ユーザの指示に応じて、2本の測定ラインの位置を更新する。そして、LOA測定部23は、2本の測定ライン間の距離を演算し、船舶の全長(LOA)を測定するようにしている。
【0039】
従って本実施形態によれば、2本の測定ラインの外側の領域において、視認性を向上させることができる。これにより、ユーザは、ISAR画像のうち船首と船尾とにより正確に2本の測定ラインを置くことができる。この結果、LOAをより正確に測定することが可能である。
【0040】
上記実施形態に係るレーダ装置10は、航空機に搭載されることが好適である。また、レーダ装置10は、地上に配置されるようにしてもよい。
【0041】
上記実施形態では、レーダの目標として船舶を例に挙げ、船舶のISAR画像を取得するようにしている。しかし、これに限定されず、船舶以外の移動する物体を目標に設定することも可能である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10…レーダ装置、11…アンテナ、12…サーキュレータ、13…送信部、14…受信部、15…信号処理装置、16…ISAR画像生成部、17…画像処理部、18…記憶部、19…入力部、20…表示部、21…表示処理部、22…輝度調整部、23…LOA測定部、24…データ出力部、30…ISAR画像、31…船舶、32-1,32-2…測定ライン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7