(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】色変換テーブル作成方法、印刷方法、色変換方法、および色変換テーブル作成プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/60 20060101AFI20230508BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
H04N1/60
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2019178326
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121348
【氏名又は名称】川原 健児
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥田 邦廣
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】有薗 重徳
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-237617(JP,A)
【文献】特開2005-059362(JP,A)
【文献】特開2014-135544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46-62
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含
み、
前記使用不可領域設定ステップでは、特色の色値ごとに、前記使用不可領域に対応付けられるプロセスカラーの色値の領域が定められることを特徴とする、色変換テーブル作成方法。
【請求項2】
前記評価ステップは、
特色の色値とプロセスカラーの色値との複数の組み合わせに対応する複数のパッチからなる粒状性検査チャートを印刷する粒状性検査チャート印刷ステップと、
粒状性測定装置を用いて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性についての評価値の測定を行う評価値測定ステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の色変換テーブル作成方法。
【請求項3】
前記対応付けステップでは、色変換後のプロセスカラーの色値が粒状性を許容できる範囲内で最小となるよう、前記対応関係が定められることを特徴とする、請求項1
または2に記載の色変換テーブル作成方法。
【請求項4】
プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含み、
前記対応付けステップでは、横軸を特色の色値とし縦軸をプロセスカラーの色値とする座標平面上に特色の色値に対応する色変換後のプロセスカラーの色値を示す曲線を表示したときに当該曲線が複数の極大値を有していれば、当該曲線が極大値を1つだけ有するよう色変換後のプロセスカラーの色値が補正されることを特徴とする
、色変換テーブル作成方法。
【請求項5】
プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含み、
前記対応付けステップでは、色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれない範囲内で、粒状性の良好さについての優先度が高いほどプロセスカラーの色値は大きくなり、かつ、色域の広さについての優先度が高いほどプロセスカラーの色値は小さくなるよう、色変換後のプロセスカラーの色値が決定されることを特徴とする
、色変換テーブル作成方法。
【請求項6】
プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含み、
対象の特色の代替色を構成する2つのプロセスカラーを第1プロセスカラーおよび第2プロセスカラーと定義したとき、前記色変換テーブルを用いた色変換によって前記第1プロセスカラーの色値と前記第2プロセスカラーの色値との組み合わせが前記第1プロセスカラーの色値と前記第2プロセスカラーの色値と前記対象の特色の色値との組み合わせに変換され
、
前記評価ステップでは、前記対象の特色の色値と前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価が行われ、
前記使用不可領域設定ステップでは、前記対象の特色の色値と前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域が定められ、
前記対応付けステップでは、色変換後についての前記対象の特色の色値と前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前の前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値と色変換後の前記対象の特色の色値と色変換後の前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値との対応関係が定められることを特徴とする
、色変換テーブル作成方法。
【請求項7】
前記対象の特色は、青色であることを特徴とする、請求項
6に記載の色変換テーブル作成方法。
【請求項8】
前記第1プロセスカラーは、シアンであって、
前記第2プロセスカラーは、マゼンタであることを特徴とする、請求項
7に記載の色変換テーブル作成方法。
【請求項9】
プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを用いた印刷方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含み、
前記評価ステップは、
特色の色値とプロセスカラーの色値との複数の組み合わせに対応する複数のパッチからなる粒状性検査チャートを印刷する粒状性検査チャート印刷ステップと、
粒状性測定装置を用いて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性についての評価値の測定を行う評価値測定ステップと
を含み、
前記印刷方法は、更に、
前記テーブル作成ステップで作成された色変換テーブルを前記粒状性検査チャートを印刷した印刷装置とは異なる印刷装置に格納する色変換テーブル格納ステップと、
前記色変換テーブル格納ステップで格納された色変換テーブルを用いて、前記第1の印刷データから前記第2の印刷データへの色変換を行う色変換ステップと、
前記第2の印刷データを用いて、前記色変換テーブル格納ステップで前記色変換テーブルが格納された印刷装置により印刷を行う印刷ステップと
を含むことを特徴とする、印刷方法。
【請求項10】
プロセスカラーの色値のみからなる入力データを特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる印刷用のデータに変換する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう
、色変換前についてのプロセスカラーの色値を色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせに対応付けた色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと、
カラーチャート生成用のデータに前記テーブル作成ステップで作成された色変換テーブルを適用して、対象の印刷装置でカラーチャートを印刷するカラーチャート印刷ステップと、
前記カラーチャートの測色を行う測色ステップと、
前記測色ステップで得られた測色結果に基づいて出力用のカラープロファイルを生成するカラープロファイル生成ステップと、
入力用のカラープロファイルを用いて前記入力データをデバイス非依存データに変換する第1変換ステップと、
前記カラープロファイル生成ステップで生成された出力用のカラープロファイルを用いて前記デバイス非依存データを第1の印刷データに変換する第2変換ステップと、
前記テーブル作成ステップで作成された色変換テーブルを用いて前記第1の印刷データを前記対象の印刷装置での印刷に使用される第2の印刷データに変換する第3変換ステップと
を含
み、
前記使用不可領域設定ステップでは、特色の色値ごとに、前記使用不可領域に対応付けられるプロセスカラーの色値の領域が定められることを特徴とする、色変換方法。
【請求項11】
プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成するプログラムであって、
コンピュータに、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に行われた粒状性の評価結果の入力を受け付ける評価結果入力受け付けステップと、
前記評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を実行させ
、
前記使用不可領域設定ステップでは、特色の色値ごとに、前記使用不可領域に対応付けられるプロセスカラーの色値の領域が定められることを特徴とする、色変換テーブル作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特色のインクを用いて印刷を行う際に使用する色変換テーブルの作成方法およびその色変換テーブルを用いた色変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷に関し、ラベル・パッケージの分野では、色の表現力を高めるために特色が多用される傾向にある。また、企業のブランドイメージを保つため、色の再現性が重視されて同じ特色が継続的に使用されることもある。ところで、近年、印刷業界では、デジタル印刷装置の普及が進んでいる。デジタル印刷装置によれば、印刷版を使用しないため、印刷版の交換・再作製という作業が発生することがない。すなわち、デジタル印刷装置を採用することにより、特に小ロットの印刷を低コストで行うことが可能となり、デザインやコンテンツの制作の短納期化の要求へも低コストで対応することが可能となる。
【0003】
ところが、従来の一般的なデジタル印刷装置では、プロセスカラーと呼ばれる特定の色(C:シアン、M:マゼンタ、Y:黄色、K:黒色)のインクを使用して印刷が行われるため、彩度の高い特色を忠実に再現することは困難である。そこで、広い色域(色再現範囲)を得るためにCMYK以外の色(例えば、オレンジ、緑色、青色)のインクを搭載できるようにしたデジタル印刷装置も開発されている。5色以上のインクを使用する場合はもちろん、デジタル印刷装置で得られた印刷物に関しては、その粒状性が印刷品質を決める重要な要素の1つとなる。
【0004】
特開2005-335191号公報には、ライトインクを用いたプリンタで粒状感を低減する手法として次のような手法が開示されている。CMYKのインク以外に少なくともブルー、ライトシアン、およびライトマゼンタのインクを用いるプリンタにおいて、印刷物の粒状感を低減するために、ブルーの色相を再現する際にホワイトに近い色の印刷には
図20に示すようにライトインク(ライトシアンのインクLcおよびライトマゼンタのインクLm)を用いる。
【0005】
また、ライトインクを搭載していないプリンタに関し、ハイライト部分の色(明度が高い色)を再現する際に印刷物の粒状感を低減するために高濃度のインクを用いずに低濃度のインクを用いるという手法も知られている。例えば、CMYKのインクを使用する一般的なプリンタにおいて、グレイに関して
図21に示すように中間階調部分よりも暗い色についてのみKのインクが用いられるよう色分解が行われる。この手法によれば、人の目にとって感度の高い肌色部分に高濃度のインクが使用されることが抑制され、肌色部分に関して滑らかな階調表現が実現されるという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ハイライト部分についての粒状感は、紙白に高濃度のインクが少量付着したときに高濃度のインクの点が目立つことによって生じる。このようなハイライト部分についての粒状感は、上述した従来の手法によって低減することができる。ところが、広い色域を得るために5色以上のインクを使用するデジタル印刷装置(CMYKのインクに加えて高彩度インクを使用するデジタル印刷装置)においては、中間階調部分で粒状感が顕著になることがある。例えば、CMYKのインクに加えて青色のインクを使用するデジタル印刷装置において、ハイライト部分ではなく中間階調部分で粒状感が大きくなるケースがある。これは、インク特性、印刷媒体(印刷用紙など)、印刷方式などの相互の関係によっては濡れ性の影響によりインクが印刷媒体に広がらず紙白とインク付着部との間に濃淡差が発生することに起因している。特に高濃度のインクが使用されている場合には、その濃淡差が強調され、粒状感が大きくなる。
【0008】
そこで、本発明は、プロセスカラーのインクに加えて高彩度インクを用いて印刷が行われる際の印刷物の粒状感を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含み、
前記使用不可領域設定ステップでは、特色の色値ごとに、前記使用不可領域に対応付けられるプロセスカラーの色値の領域が定められることを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記評価ステップは、
特色の色値とプロセスカラーの色値との複数の組み合わせに対応する複数のパッチからなる粒状性検査チャートを印刷する粒状性検査チャート印刷ステップと、
粒状性測定装置を用いて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性についての評価値の測定を行う評価値測定ステップと
を含むことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記対応付けステップでは、色変換後のプロセスカラーの色値が粒状性を許容できる範囲内で最小となるよう、前記対応関係が定められることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含み、
前記対応付けステップでは、横軸を特色の色値とし縦軸をプロセスカラーの色値とする座標平面上に特色の色値に対応する色変換後のプロセスカラーの色値を示す曲線を表示したときに当該曲線が複数の極大値を有していれば、当該曲線が極大値を1つだけ有するよう色変換後のプロセスカラーの色値が補正されることを特徴とする。
【0013】
第5の発明は、プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含み、
前記対応付けステップでは、色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれない範囲内で、粒状性の良好さについての優先度が高いほどプロセスカラーの色値は大きくなり、かつ、色域の広さについての優先度が高いほどプロセスカラーの色値は小さくなるよう、色変換後のプロセスカラーの色値が決定されることを特徴とする。
【0014】
第6の発明は、プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含み、
対象の特色の代替色を構成する2つのプロセスカラーを第1プロセスカラーおよび第2プロセスカラーと定義したとき、前記色変換テーブルを用いた色変換によって前記第1プロセスカラーの色値と前記第2プロセスカラーの色値との組み合わせが前記第1プロセスカラーの色値と前記第2プロセスカラーの色値と前記対象の特色の色値との組み合わせに変換され、
前記評価ステップでは、前記対象の特色の色値と前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価が行われ、
前記使用不可領域設定ステップでは、前記対象の特色の色値と前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域が定められ、
前記対応付けステップでは、色変換後についての前記対象の特色の色値と前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前の前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値と色変換後の前記対象の特色の色値と色変換後の前記第1プロセスカラーおよび前記第2プロセスカラーの色値との対応関係が定められることを特徴とする。
【0016】
第7の発明は、第6の発明において、
前記対象の特色は、青色であることを特徴とする。
【0017】
第8の発明は、第7の発明において、
前記第1プロセスカラーは、シアンであって、
前記第2プロセスカラーは、マゼンタであることを特徴とする。
【0018】
第9の発明は、プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを用いた印刷方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を含み、
前記評価ステップは、
特色の色値とプロセスカラーの色値との複数の組み合わせに対応する複数のパッチからなる粒状性検査チャートを印刷する粒状性検査チャート印刷ステップと、
粒状性測定装置を用いて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性についての評価値の測定を行う評価値測定ステップと
を含み、
前記印刷方法は、更に、
前記テーブル作成ステップで作成された色変換テーブルを前記粒状性検査チャートを印刷した印刷装置とは異なる印刷装置に格納する色変換テーブル格納ステップと、
前記色変換テーブル格納ステップで格納された色変換テーブルを用いて、前記第1の印刷データから前記第2の印刷データへの色変換を行う色変換ステップと、
前記第2の印刷データを用いて、前記色変換テーブル格納ステップで前記色変換テーブルが格納された印刷装置により印刷を行う印刷ステップと
を含むことを特徴とする。
【0019】
第10の発明は、プロセスカラーの色値のみからなる入力データを特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる印刷用のデータに変換する方法であって、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に粒状性の評価を行う評価ステップと、
前記評価ステップで得られた評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう、色変換前についてのプロセスカラーの色値を色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせに対応付けた色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと、
カラーチャート生成用のデータに前記テーブル作成ステップで作成された色変換テーブルを適用して、対象の印刷装置でカラーチャートを印刷するカラーチャート印刷ステップと、
前記カラーチャートの測色を行う測色ステップと、
前記測色ステップで得られた測色結果に基づいて出力用のカラープロファイルを生成するカラープロファイル生成ステップと、
入力用のカラープロファイルを用いて前記入力データをデバイス非依存データに変換する第1変換ステップと、
前記カラープロファイル生成ステップで生成された出力用のカラープロファイルを用いて前記デバイス非依存データを第1の印刷データに変換する第2変換ステップと、
前記テーブル作成ステップで作成された色変換テーブルを用いて前記第1の印刷データを前記対象の印刷装置での印刷に使用される第2の印刷データに変換する第3変換ステップと
を含み、
前記使用不可領域設定ステップでは、特色の色値ごとに、前記使用不可領域に対応付けられるプロセスカラーの色値の領域が定められることを特徴とする。
【0020】
第11の発明は、プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルを作成するプログラムであって、
コンピュータに、
特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す領域毎に行われた粒状性の評価結果の入力を受け付ける評価結果入力受け付けステップと、
前記評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせを表す複数の領域のうちの使用不可領域を定める使用不可領域設定ステップと、
色変換後についての特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせが前記使用不可領域に含まれることのないよう、色変換前のプロセスカラーの色値と色変換後の特色の色値と色変換後のプロセスカラーの色値との対応関係を定める対応付けステップと、
前記対応付けステップで定められた対応関係が満たされるよう前記色変換テーブルを作成するテーブル作成ステップと
を実行させ、
前記使用不可領域設定ステップでは、特色の色値ごとに、前記使用不可領域に対応付けられるプロセスカラーの色値の領域が定められることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記第1の発明によれば、粒状性の評価結果に基づいて、特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせについての使用不可領域が定められる。そして、色変換後についての“特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせ”が使用不可領域に含まれることのないよう、プロセスカラーの色値のみからなる第1の印刷データから特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる第2の印刷データへの色変換を行うための色変換テーブルが作成される。そのような色変換テーブルに基づく色変換後の印刷データ(第2の印刷データ)を用いて印刷が実行されることにより、粒状感の小さい高品質な印刷物が得られる。以上のように、プロセスカラーのインクに加えて高彩度インクを用いて印刷が行われる際の印刷物の粒状感が低減される。
【0022】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0023】
上記第3の発明によれば、印刷物の粒状感を低減しつつ、できるだけ広い色域を用いた色再現が可能となる。
【0024】
上記第4の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。また、色変換に起因するトーンジャンプの発生が防止される。
【0025】
上記第5の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。また、色変換後のプロセスカラーの色値を決定する際に粒状性の良好さと色域の広さとのバランスが調整されるので、印刷物の粒状感を低減しつつ所望の色域で色再現を行うことが可能となる。
【0026】
上記第6の発明によれば、特色の代替色として2つのプロセスカラーを用いるケースにおいて、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0028】
上記第7の発明によれば、高彩度インクとして青色のインクを用いた印刷を行うケースにおいて、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0029】
上記第8の発明によれば、上記第7の発明と同様の効果が得られる。
【0030】
上記第9の発明によれば、色変換後のデータ(第2の印刷データ)を用いて印刷を行う印刷装置が粒状性検査チャートを印刷した印刷装置とは異なっていても上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0031】
上記第10の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0032】
上記第11の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】或る粒状性測定装置を用いて印刷物の粒状性の評価を行った結果(C値とM値との組み合わせに対応する評価値)を示す図である。
【
図2】或る粒状性測定装置を用いて印刷物の粒状性の評価を行った結果(B値とM値との組み合わせに対応する評価値)を示す図である。
【
図3】C値、M値、B値、およびK値の様々な組み合わせに対応する測色値を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態における印刷システムの全体構成図である。
【
図5】上記実施形態におけるインクジェット印刷装置の一構成例を示す模式図である。
【
図6】上記実施形態における印刷データ処理装置のハードウェア構成図である。
【
図7】上記実施形態において、印刷対象の入力データを受け取ってから印刷出力を実行するまでの全体の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】上記実施形態において、印刷対象の入力データを受け取ってから印刷出力を実行するまでのデータの流れを説明するための図である。
【
図9】上記実施形態において、特色分解LUT作成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】上記実施形態において、特色分解LUT作成処理に必要な機能について説明するための機能ブロック図である。
【
図11】上記実施形態において、粒状性検査チャートについて説明するための図である。
【
図12】上記実施形態において、使用不可領域について説明するための図である。
【
図13】上記実施形態において、使用不可領域に基づいて決定される最小CM値について説明するための図である。
【
図14】上記実施形態において、
図13に示す“B値と最小CM値との関係”を曲線で表した図である。
【
図15】上記実施形態において、補正後の最小CM値について説明するための図である。
【
図16】上記実施形態において、
図15に示す“B値と最小CM値との関係”を曲線で表した図である。
【
図17】上記実施形態において、入力CM値と出力B値と出力CM値との対応関係の設定について説明するための図である。
【
図18】上記実施形態において、入力CM値と出力B値と出力CM値との対応関係の例を示す図である。
【
図19】上記実施形態において、粒状性の良好さと色域の広さとのバランスの調整について説明するための図である。
【
図20】従来例に関し、特開2005-335191号公報に開示された手法について説明するための図である。
【
図21】従来例に関し、中間階調部分より暗い色についてのみ黒色のインクを用いるという手法について説明するための図である。
【
図22】上記実施形態の変形例における印刷システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<0.基礎検討>
実施形態について説明する前に、高彩度インクを用いた印刷が行われる際の印刷物の粒状性について説明する。なお、以下において、各色の色値は網点パーセントで表している(すなわち、最小値を0かつ最大値を100とする)。
【0035】
図1および
図2に、或る粒状性測定装置を用いて印刷物の粒状性の評価を行った結果(評価値)を示している。なお、評価値が大きいほど粒状感は大きい。
図1には、C値(シアンの色値)とM値(マゼンタの色値)との組み合わせに対応する評価値を示している。例えば、C値が50かつM値が60のケースにおける評価値は2.7である。
図2には、B値(青色の色値)とM値との組み合わせに対応する評価値を示している。例えば、B値が50かつM値が60のケースにおける評価値は3.4である。
【0036】
図1および
図2において、M値が0である行に着目する。
図1における該当の行には、シアンのインクのみが用いられたケースにおけるシアンの色値ごとの評価値が示されている。
図2における該当の行には、青色のインクのみが用いられたケースにおける青色の色値ごとの評価値が示されている。両者の比較により、シアンのインクのみが用いられたケースよりも青色のインクのみが用いられたケースの方が粒状性が悪いことが把握される。青色のインクのみが用いられたケースでは、B値が50以上70以下であるときに特に粒状感が大きくなっている。また、
図2より、M値を大きくすれば粒状感が小さくなることが把握される。すなわち、青色のインクを使用するときにはB値に応じて例えばマゼンタのインクを所定量以上用いることによって印刷物の粒状感を小さくすることができると考えられる。なお、
図1における評価値の最大値は3.4であるので、以下の実施形態では評価値が3.4以下であれば粒状性を許容できると仮定している。
【0037】
図3には、C値、M値、B値、およびK値(黒色の色値)の様々な組み合わせに対応する測色値を示している。なお、L
*値が明度に相当する。
図3より、同一明度の複数のケースに着目すると、B値の割合が大きいほど彩度が高くなることが把握される。すなわち、C値やM値の割合を小さくしてB値の割合を大きくすることによって広い色域を用いた色再現が可能となる。ところが、上述したように、粒状感を小さくするためには例えばM値を大きくする必要がある。以上のように、粒状性の良好さと色域の広さとはトレードオフの関係にある。そこで、以下の実施形態では、粒状性の良好さと色域の広さとのバランスを考慮しつつ、高彩度インクを用いた印刷が行われる。
【0038】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0039】
<1.印刷システムの全体構成>
図4は、本発明の一実施形態における印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、インクジェット印刷装置100と、印刷データに対してRIP処理などの各種処理を施す印刷データ処理装置200と、色の測定を行う測色機300とによって構成されている。インクジェット印刷装置100と印刷データ処理装置200と測色機300とは通信回線CLによって互いに接続されている。なお、測色機300は、通信回線CLを介することなく、直接印刷データ処理装置200に接続されていてもよい。インクジェット印刷装置100は、印刷版を用いることなくデジタルデータである印刷データに基づいて印刷を行う。インクジェット印刷装置100は、印刷機本体120とそれを制御する印刷制御装置110とによって構成されている。
【0040】
本実施形態におけるインクジェット印刷装置100は、プロセスカラーのインクに加えて特色のインクを用いて印刷を行うことができるように構成されている。それ故、特色のインクを用いた印刷が実行される際には、プロセスカラーの色値のみからなる印刷データを特色の色値とプロセスカラーの色値とからなる印刷データに変換する「特色分解」と呼ばれる色変換処理が行われる。本実施形態においては、その特色分解に用いるルックアップテーブル(以下、「特色分解LUT」といい、特色分解LUTには符号65を付す。)が印刷データ処理装置200で生成される。また、特色分解を実行するための機能的な構成要素である特色分解部112が印刷制御装置110に含まれている。特色分解部112は、印刷データ処理装置200から与えられた特色分解LUT65を用いて、特色分解を行う。
【0041】
インクジェット印刷装置100に関しては2色以上の特色のインクを搭載できるものも存在するが、ここでは、1色の特色のインクを搭載できるインクジェット印刷装置100を例に挙げて説明する。具体的には、特色のインクとして青色のインクを搭載したインクジェット印刷装置100を例に挙げて説明する。従って、以下に示す例では、特色分解によって、C値,M値,Y値,およびK値からなる印刷データ(以下、「CMYKデータ」という。)がC値,M値,Y値,K値,およびB値からなる印刷データ(以下、「CMYKBデータ」という。)に変換される。すなわち、特色分解部112は、CMYKデータをCMYKBデータに変換する。
【0042】
<2.インクジェット印刷装置の構成>
図5は、本実施形態におけるインクジェット印刷装置100の一構成例を示す模式図である。上述したように、このインクジェット印刷装置100は、印刷機本体120とそれを制御する印刷制御装置110とによって構成されている。
【0043】
印刷機本体120は、基材である印刷用紙(例えばロール紙)122を供給する用紙送出部121と、印刷用紙122を印刷機構内部へと搬送するための第1の駆動ローラ123と、印刷機構内部で印刷用紙122を搬送するための複数個の支持ローラ124と、印刷用紙122に紫外線硬化型インクを吐出して印刷を行う印字部125と、印刷後の印刷用紙122に対して紫外線を照射する紫外線照射部126と、ダンサローラ127と、印刷用紙122を印刷機構内部から出力するための第2の駆動ローラ128と、印刷後の印刷用紙122を巻き取る用紙巻取部129とを備えている。このように第1の駆動ローラ123と第2の駆動ローラ128とにより印刷用紙122は用紙送出部121から用紙巻取部129に向けて一定の搬送方向で搬送される。
【0044】
印字部125には、C(シアン),M(マゼンタ),Y(黄色),K(黒色),およびB(青色)のインクをそれぞれ吐出するC用インクジェットヘッド125c,M用インクジェットヘッド125m,Y用インクジェットヘッド125y,K用インクジェットヘッド125k,およびB用インクジェットヘッド125bが含まれている。このような構成により、本実施形態においては、プロセスカラーのインクに加えて特色である青色のインクを用いて印刷が行われる。
【0045】
印刷制御装置110は、以上のような構成の印刷機本体120の動作を制御する。印刷制御装置110に印刷出力の指示コマンドが与えられると、印刷制御装置110は、印刷用紙122が用紙送出部121から用紙巻取部129へと搬送されるよう、印刷機本体120の動作を制御する。そして、印刷用紙122の搬送過程において、まず印字部125内の各インクジェットヘッド125c,125m,125y,125k,および125bからのインクの吐出による印字が行われ、次に紫外線照射部126によって印刷用紙122に吐出されたインクの硬化が行われる。
【0046】
<3.印刷データ処理装置のハードウェア構成>
図6は、本実施形態における印刷データ処理装置200のハードウェア構成図である。この印刷データ処理装置200は、パソコンによって実現されており、CPU21と、ROM22と、RAM23と、補助記憶装置24と、キーボード等の入力操作部25と、表示部26と、光学ディスクドライブ27と、ネットワークインタフェース部28とを有している。通信回線CL経由で送られてくるデータは、ネットワークインタフェース部28を介して印刷データ処理装置200の内部へと入力される。印刷データ処理装置200で生成された印刷データ(上記CMYKデータ)は、ネットワークインタフェース部28を介して通信回線CL経由でインクジェット印刷装置100に送られる。
【0047】
本実施形態においては、特色分解LUT65を作成するための色変換テーブル作成プログラム241が補助記憶装置24に格納されている。色変換テーブル作成プログラム241は、CD-ROMやDVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわちユーザーは、例えば、色変換テーブル作成プログラム241の記録媒体としての光学ディスク(CD-ROM、DVD-ROM等)270を購入して光学ディスクドライブ27に装着し、その光学ディスク270から色変換テーブル作成プログラム241を読み出して補助記憶装置24にインストールする。また、これに代えて、通信回線CLを介して送られる色変換テーブル作成プログラム241をネットワークインタフェース部28で受信して、それを補助記憶装置24にインストールするようにしてもよい。
【0048】
特色分解LUT65の作成の際には、補助記憶装置24に格納されている色変換テーブル作成プログラム241がRAM23に読み出され、そのRAM23に読み出された色変換テーブル作成プログラム241をCPU21が実行する。これにより、特色分解LUT65の作成に関わる各種処理を行う機能が印刷データ処理装置200によって提供される。
【0049】
<4.全体の処理手順>
図7および
図8を参照しつつ、印刷対象の入力データを受け取ってから印刷出力を実行するまでの全体の処理手順について説明する。なお、
図7は全体の処理手順を示すフローチャートであり、
図8はデータの流れを説明するための図である。
【0050】
印刷データ処理装置200に入力データ41が入力された後、まず、色変換テーブルとしての特色分解LUT65を作成する特色分解LUT作成処理が行われる(ステップS100)。特色分解LUT65は印刷条件毎に作成されるところ、印刷実行時の印刷条件に対応する特色分解LUT65が、印刷制御装置110内の特色分解部112に格納される。なお、設定可能な印刷条件の例としては、紙の種類、印刷速度、解像度などが挙げられる。
【0051】
次に、出力ICCプロファイル生成用のカラーチャートの印刷が行われる(ステップS200)。その際、カラーチャート生成用のデータにステップS100で作成された特色分解LUT65が適用される。これにより、出力ICCプロファイル220に基づくデータの変換(後述するステップS600)が、特色分解LUT65の内容を考慮して行われることになる。
【0052】
次に、測色機300によって、ステップS200で印刷されたカラーチャートの測色が行われる(ステップS300)。その後、ステップS300で得られた測色結果に基づいて、出力ICCプロファイル220の生成が行われる(ステップS400)。これに関し、ステップS300での測色の結果、カラーチャートの各パッチについて、例えばLab値が得られている。また、カラーチャートの各パッチについてのCMYK値(C値,M値,Y値,およびK値)は既知である。このようにして、例えばLab値とCMYK値との対応関係が取得されるので、当該対応関係に基づき出力ICCプロファイル220を生成することができる。
【0053】
出力ICCプロファイル220が生成された後、予め取得されている入力ICCプロファイル210を用いて、入力データ41をプロファイル接続空間(PCS)のデータ(例えば、CIELab色空間のデータ)であるデバイス非依存データ42に変換する処理が行われる(ステップS500)。そして、ステップS400で生成された出力ICCプロファイル220を用いてデバイス非依存データ42をCMYKデータ43に変換する処理が行われる(ステップS600)。ステップS600で生成されたCMYKデータ43は印刷データ処理装置200からインクジェット印刷装置100に送られる。
【0054】
その後、印刷制御装置110内の特色分解部112によって、特色分解LUT65を用いてCMYKデータ43をCMYKBデータ44に変換する処理(特色分解)が行われる(ステップS700)。そして、ステップS700で得られたCMYKBデータ44が印刷機本体120に送られて印刷が実行される(ステップS800)。これにより、印刷機本体120から印刷物45が出力される。本実施形態においては、後述のように特色分解LUT作成処理が行われることにより、高彩度インクが用いられたときの印刷物45の粒状感が従来よりも低減される。
【0055】
なお、本実施形態においては、ステップS200によってカラーチャート印刷ステップが実現され、ステップS300によって測色ステップが実現され、ステップS400によってカラープロファイル生成ステップが実現され、ステップS500によって第1変換ステップが実現され、ステップS600によって第2変換ステップが実現され、ステップS700によって第3変換ステップが実現されている。また、CMYKデータ43によって第1の印刷データが実現され、CMYKBデータ44によって第2の印刷データが実現されている。
【0056】
また、本実施形態においては印刷制御装置110で特色分解が行われるが、これには限定されず、印刷データ処理装置200で特色分解が行われても良い。
【0057】
<5.特色分解LUT作成処理>
次に、特色分解LUT作成処理(
図7のステップS100の処理)について詳しく説明する。
図9は、特色分解LUT作成処理の手順を示すフローチャートである。
図10は、特色分解LUT作成処理に必要な機能について説明するための機能ブロック図である。なお、本実施形態においては、青色が対象の特色であって、シアンが第1プロセスカラーに相当し、マゼンタが第2プロセスカラーに相当する。
【0058】
特色分解LUT作成処理の開始後、まず、粒状性の評価に用いる粒状性検査チャート61がインクジェト印刷装置100によって印刷される(ステップS110)。本実施形態における粒状性検査チャート61は、
図11に示すように、B値とCM値との複数の組み合わせに対応する複数のパッチからなる。なお、CM値とは、CとMが同じ値に設定されていることを前提とした上でのC値およびM値のことである。
図11に示す粒状性検査チャート61に関し、例えば符号71を付したパッチは、「B値=90、C値=70、M値=70」で印刷されたパッチである。以上のように、ステップS110では、特色の色値(ここではB値)とプロセスカラーの色値(ここではCM値)との複数の組み合わせに対応する複数のパッチからなる粒状性検査チャート61が印刷される。
【0059】
次に、粒状性検査チャート61の印刷状態に基づいて、B値とCM値との組み合わせを表す領域毎(パッチ毎)に粒状性の評価が行われる(ステップS120)。この粒状性の評価については、粒状性測定装置を用いて行うようにしても良いし、人が目視によって行うようにしても良い。すなわち、粒状性の評価を行う粒状性評価手段510は、粒状性測定装置によって実現されても良いし、人の目視による作業によって実現されても良い。但し、ここでは、粒状性測定装置を用いて粒状性の評価が行われるものと仮定する。従って、B値とCM値との組み合わせ毎に、粒状性を示す評価値が得られる。なお、ステップS130以降の処理をソフトウェア(プログラム)によって実現するためには、ユーザーによる評価結果の入力を例えば印刷データ処理装置200が受け付けるステップ(評価結果入力受け付けステップ)を設ける必要がある。
【0060】
次に、ステップS120で得られた評価結果62に基づいて、B値とCM値との組み合わせを表す複数の領域(粒状性検査チャート61を構成する全てのパッチに対応する領域)のうちの使用不可領域が定められる(ステップS130)。使用不可領域は、粒状性を許容することができない“B値とCM値との組み合わせ”(換言すれば、CMYKBデータ44に含めるべきでない“B値とCM値との組み合わせ”)に対応する領域である。例えば、ステップS120で得られた評価値が所定値よりも大きい“B値とCM値との組み合わせ”に対応する領域が使用不可領域に設定される。本実施形態においては、評価値が3.4以下であれば粒状性を許容できると判断され、評価値が3.4を超える“B値とCM値との組み合わせ”に対応する領域が使用不可領域に設定される。
図12に示すような評価結果62が得られている場合には符号72を付した網掛け部分が使用不可領域に設定される。なお、使用不可領域の設定を行う使用不可領域設定手段520は、ソフトウェア(プログラム)によって実現されても良いし、人による判断によって実現されても良い。以上のようにして、ステップS130では、使用不可領域を特定する情報である使用不可領域情報63が得られる。
【0061】
次に、青色のインクを使用する際の特色分解後の値であってC値とM値とB値とによって構成される分解値を決定する処理が行われる(ステップS140)。詳しくは、ステップS140では、使用不可領域情報63に基づき、特色分解後についての“B値とCM値との組み合わせ”が使用不可領域に含まれることのないよう、“特色分解前のCM値”と“B値(特色分解後のB値)”と“特色分解後のCM値”との対応関係が定められる。なお、特色分解前の印刷データであるCMYKデータ43にはB値のデータは含まれていない。また、説明の便宜上、以下においては、特色分解前のCM値のことを「入力CM値」といい、B値(特色分解後のB値)のことを「出力B値」といい、特色分解後のCM値のことを「出力CM値」という。
【0062】
図12に示したような評価結果が得られている場合、ステップS140では、まず、
図13に示すように、B値のそれぞれについて(ここでは10刻みのB値について)、良好な粒状性を確実に得るために最低限必要とされるC値,M値である最小CM値が求められる。これに関し、例えば、
図12においてB値が70である列に着目すると、CM値が50以上の領域はいずれも使用不可領域ではない。従って、“B値=70”については、最小CM値は50に設定される。また、例えば、
図12においてB値が20である列に着目すると、CM値が10以下の領域およびCM値が40以上の領域が使用不可領域とはなっていない。このような場合、仮に最小CM値が0に設定されると、“B値=20”と“CM値=20”との組み合わせのデータや“B値=20”と“CM値=30”との組み合わせのデータがCMYKBデータ44に含まれ得ることとなり、良好な粒状性が得られないおそれがある。従って、“B値=20”については、最小CM値は40に設定される。
【0063】
図13に示す結果を横軸をB値とし縦軸を最小CM値とする座標平面上に表すと
図14に示すような曲線73が得られる。
図14から把握されるように、曲線73は2つの極大値を有している。ここで、仮に曲線73に従って出力CM値を決定した場合、特色分解によってトーンジャンプが引き起こされることが懸念される。そこで、B値と最小CM値との関係を表す曲線が複数の極大値を有している場合には、当該曲線が極大値を1つだけ有することとなるよう、各B値に対応する最小CM値が補正される。その際、粒状感が顕著に大きくなる“B値の範囲”の中央付近に最小CM値の最大値が現れるよう、各B値に対応する最小CM値が決定される。以上より、
図13に示した最小CM値は、例えば
図15に示すような値に補正される。これにより、B値と最小CM値との関係を表す曲線は、
図16に示すような曲線74となる。
【0064】
ステップS140では、以上のようにしてB値と最小CM値との関係が定められた後、入力CM値と出力B値と出力CM値との対応関係が決定される。これに関し、まず、入力CM値と出力B値との対応関係が設定される。入力CM値と出力B値との対応関係は、例えば
図17で符号76を付した曲線のように表される。次に、各B値に対応する最小CM値を考慮して、良好な粒状性が得られる範囲内で、各出力B値に対応する出力CM値が決定される。これにより、例えば
図17で符号77を付した曲線が得られる。以上のようにして得られたグラフ(
図17の曲線76,77)に基づいて、入力CM値と出力B値と出力CM値との対応関係が定められる(すなわち、分解値が決定される)。
図18に、入力CM値と出力B値と出力CM値との対応関係の例を示している。
【0065】
なお、分解値を決定する処理を行う分解値決定手段530は、ソフトウェア(プログラム)によって実現されても良いし、人による判断によって実現されても良い。以上のようにして、ステップS140では、入力CM値と出力B値と出力CM値との対応関係を示す分解値情報64が得られる。
【0066】
ところで、上述したように、粒状性の良好さと色域の広さとはトレードオフの関係にある。これに関し、出力B値に対応する出力CM値を調整することによって、粒状性の良好さと色域の広さとのバランスを調整することができる。具体的には、出力CM値が大きいほど粒状性は良好となり、出力CM値が小さいほど色域が広くなる。従って、粒状性の良好さが重視される場合には出力CM値のピーク点(
図17の曲線77の最大値)を高くすれば良く、また、色域の広さが重視される場合には出力CM値のピーク点を低くすれば良い。このように、本実施形態においては、入力CM値と出力B値と出力CM値との対応関係が設定される際、例えば
図19で符号79を付した範囲内で出力CM値のピーク点の調整が行われる。以上のように、ステップS140では、特色分解後についての“B値とCM値との組み合わせ”が使用不可領域に含まれない範囲内で、粒状性の良好さについての優先度が高いほど出力CM値は大きくなり、かつ、色域の広さについての優先度が高いほど出力CM値は小さくなるよう、各出力B値に対応する出力CM値が決定される。
【0067】
なお、分解値の決定がソフトウェア(プログラム)によって行われる場合、印刷データ処理装置200にモード設定手段540が設けられ、粒状性の良好さ又は色域の広さのいずれを重視するかを示す優先モードMOの設定がモード設定手段540によって行われる。そして、モード設定手段540によって設定された優先モードMOに応じて、分解値決定手段530による分解値の決定が行われる。
【0068】
最後に、ステップS140で定められた対応関係が満たされるよう、特色分解LUT生成手段550によって分解値情報64に基づき特色分解LUT65が作成される(ステップS150)。これにより、特色分解LUT作成処理は終了する。特色分解LUT作成処理の終了後、処理は
図7のステップS200に進む。
【0069】
なお、本実施形態においては、ステップS110およびステップS120によって評価ステップが実現され、ステップS130によって使用不可領域設定ステップが実現され、ステップS140によって対応付けステップが実現され、ステップS150によってテーブル作成ステップが実現されている。また、ステップS110によって粒状性検査チャート印刷ステップが実現され、ステップS120によって評価値測定ステップが実現されている。
【0070】
<6.作成された特色分解LUTによる特色分解の具体例>
図18に示す対応関係に基づいて生成された特色分解LUT65による特色分解の具体例を説明する。ここでは、「C値=50、M値=40、Y値=10、K値=0」のCMYKデータ43を着目データとする。
【0071】
図18に示す対応関係は、入力CM値と出力B値と出力CM値との対応関係である。また、上述したように、CM値とは、CとMが同じ値に設定されていることを前提とした上でのC値およびM値のことである。しかしながら、着目データについては、C値とM値は異なる値である。このような場合、C値とM値のうちの共通する部分(すなわち、小さい方の値)を入力CM値とみなして特色分解を行う。着目データの例では、入力CM値は40とみなされる。従って、C値は、入力CM値に相当する「40」と残余値である「10」とに分離して処理が行われる。
図18に示す対応関係によれば、「入力CM値=40」に対応する出力B値は35である。従って、着目データについての出力B値は35となる。また、
図18に示す対応関係によれば、「入力CM値=40」に対応する出力CM値は60である。着目データについてのM値と入力CM値とは等しいので、着目データについての特色分解後のM値は60となる。着目データについての特色分解後のC値は、「入力CM値=40」に対応する出力CM値に上述の残余値を加算することによって求められる。すなわち、着目データについての特色分解後のC値は70となる。青色のインクが用いられてもY値およびK値には影響がないので、特色分解の前後でY値およびK値に変化はない。以上より、着目データについての特色分解後のデータ(CMYKBデータ44)は「C値=70、M値=60、Y値=10、K値=0、B値=35」となる。
【0072】
<7.効果>
本実施形態によれば、粒状性の評価結果に基づいて、特色の色値(B値)とプロセスカラーの色値(CM値)との組み合わせについての使用不可領域が定められる。そして、特色分解後についての“特色の色値とプロセスカラーの色値との組み合わせ”が使用不可領域に含まれることのないよう、特色分解LUT65が作成される。その特色分解LUT65に基づいて特色分解が施された印刷データを用いて印刷が実行されるので、粒状感の小さい高品質な印刷物が得られる。このように、プロセスカラーのインクに加えて高彩度インクを用いて印刷が行われる際の印刷物の粒状感が低減される。また、出力CM値を決定する際に粒状性の良好さと色域の広さとのバランスを調整することができるので、印刷物の粒状感を低減しつつ所望の色域で色再現を行うことが可能となる。
【0073】
<8.その他>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では高彩度インクとして青色のインクが使用されるケースを例に挙げて説明したが、高彩度インクとして青色のインク以外のインク(例えば、オレンジ色のインク、緑色のインク、紫色のインク)が使用される場合にも本発明を適用することができる。
【0074】
また、上記実施形態では紫外線硬化型インクが使用されるケースを例に挙げて説明したが、その他のインク、例えば水性インクが使用される場合にも本発明を適用することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、インクジェット印刷装置100によって粒状性検査チャート61を印刷し(
図9のステップS110)、同じインクジェット印刷装置100に対して、その粒状性検査チャート61に基づいて作成された特色分解LUT65を適用している。しかしながら、粒状性検査チャート61を印刷するインクジェット印刷装置と特色分解LUT65を適用するインクジェット印刷装置とは異なる装置であってもよい。これについて、上記実施形態の変形例として以下に説明する。
【0076】
図22を参照する。
図22は、上記実施形態の変形例に係る印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、第1インクジェット印刷装置100と、印刷データに対してRIP処理などの各種処理を施す印刷データ処理装置200と、色の測定を行う測色機300と、特色分解LUT65を格納する記憶装置400と、第2インクジェット印刷装置1000とによって構成されている。第1インクジェット印刷装置100と印刷データ処理装置200と測色機300と記憶装置400と第2インクジェット印刷装置1000とは通信回線CLによって互いに接続されている。
【0077】
第2インクジェット印刷装置1000の構成は
図5に示したインクジェット印刷装置(第1インクジェット印刷装置)100の構成と同様であるので、第2インクジェット印刷装置1000についての詳細な説明は省略する。
【0078】
特色分解LUT65は、上記実施形態と同様の手順(
図9参照)で印刷データ処理装置200にて作成された後、記憶装置400に記憶される。特色分解LUT65は記憶装置400から光学ディスクドライブ27を介して光学ディスク270に出力されてもよい。
【0079】
特色分解LUT65は、印刷データ処理装置200から通信回線CLを介して直接に第1インクジェット印刷装置100とは別の第2インクジェット印刷装置1000に送信される。もしくは、特色分解LUT65は、一旦、記憶装置400に記憶された後、通信回線CLを介して第2インクジェット印刷装置1000に送信される。あるいは、特色分解LUT65は、光学ディスク270を介して第2インクジェット印刷装置1000に供給される。このように送信または供給された特色分解LUT65は、第2インクジェット印刷装置1000の特色分解部1112に格納される。
【0080】
第2インクジェット印刷装置1000では、事前に作成された特色分解LUT65が特色分解部1112に格納される(色変換テーブル格納ステップ)。そして、
図7のステップS200~S600の工程が順番に実行される。その後、第2インクジェット印刷装置1000において、与えられたCMYKデータに対して特色分解LUT65を用いて色変換を行うことによってCMYKBデータが生成され(色変換ステップ)、そのCMYKBデータを用いて印刷用紙122に画像が印刷される(印刷ステップ)。
【符号の説明】
【0081】
43…CMYKデータ
44…CMYKBデータ
61…粒状性検査チャート
65…特色分解LUT
100…インクジェット印刷装置
110…印刷制御装置
112…特色分解部
120…印刷機本体
200…印刷データ処理装置
220…出力ICCプロファイル
241…色変換テーブル作成プログラム
300…測色機
510…粒状性評価手段
520…使用不可領域設定手段
530…分解値決定手段
540…モード設定手段
550…特色分解LUT生成手段