(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】梁材
(51)【国際特許分類】
E04C 3/12 20060101AFI20230508BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
E04C3/12
B27M3/00 F
B27M3/00 H
(21)【出願番号】P 2019191319
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】濱田 真
(72)【発明者】
【氏名】前川 利雄
(72)【発明者】
【氏名】三宅 朗彦
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-014614(JP,U)
【文献】特開2018-189185(JP,A)
【文献】特開2006-125034(JP,A)
【文献】特開平09-177172(JP,A)
【文献】実開昭50-110917(JP,U)
【文献】特開2008-019576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00 - 3/46
B27M 1/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4枚の長尺な四角形状の木製板材の長辺縁側同士が接合部を介して接合されて構成された断面四角形状の中空空間を有した梁材であって、
接合部は、
一方の木製板材の一方の板面における長辺縁側の位置に当該長辺縁に沿って延長する板面が接触した状態で一方の木製板材に固定された固定板と、当該固定板における一方の長辺縁より当該一方の木製板材から離れる方向に延長する連結板とを有した断面L字状の金属製の連結部材と、
他方の木製板材の長辺縁に沿った一方の長辺縁側端面から当該長辺縁に沿った方向及び当該一方の長辺縁側端面と対向する他方の長辺縁側端面に近づく方向に延長するように形成された溝と、を備え、
一方の木製板材に固定された連結部材の連結板が他方の木製板材の溝に挿入されて当該溝に挿入された連結板と他方の木製板材とが中空空間の外側に位置される他方の木製板材の板面側から取付けられたねじによって連結された構成であることを特徴する梁材。
【請求項2】
連結部材は、木製板材の長辺縁の長さに対応した長さの山形鋼であり、
溝は、他方の木製板材の短辺縁に沿った一方の短辺縁側端面と当該一方の短辺縁側端面と対向する他方の短辺縁側端面とに亘って連続した溝であることを特徴する請求項1に記載の梁材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の梁材の端部に端部接合手段を備えた梁材を複数個用い、一方の梁材の端部接合手段と他方の梁材の端部接合手段とが接合されて構成された梁材であって、
一方の梁材の端部接合手段は、連結部材の端部が、木製板材の長辺縁に沿った方向の一方の端面から長辺縁に沿った方向に突出するように構成され、
他方の梁材の端部接合手段は、連結部材の端部が、木製板材の長辺縁に沿った方向の他方の端面よりも梁材の中空空間側に位置されて、連結部材の端部の端面と木製板材の長辺縁に沿った方向の他方の端面との間の距離が、一方の梁材の木製板材の一方の端面から突出する連結部材の端部の長さよりも長くなるように構成され、
一方の梁材の端部接合手段における木製板材の一方の端面から突出する連結部材の端部が、他方の梁材の端部接合手段における木製板材の他方の端面に開口する溝に挿入されて、当該溝に挿入された一方の梁材の連結部材の端部と他方の梁材の木製板材とが中空空間の外側から取付けられたねじによって連結されたことを特徴する梁材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を用いて形成された中空空間を有した梁材に関する。
【背景技術】
【0002】
中大規模の木造建築物に用いる梁として、軽量化を図るために、CLT等の集成材を接着剤で接合して形成された中空空間を有した梁材が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】KEY-TEC 製品情報 「KEYLAM MEGA BEAM」、株式会社キーテック、http://www.key-tec.co.jp/products-html/igata.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した中空空間を有した梁材は、中空空間を有しない中実な梁材と比べて剛性が低くなってしまうという課題がある。
本発明は、中空空間を有した梁材であって、軽量化を図れるとともに剛性を向上できる梁材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る梁材は、4枚の長尺な四角形状の木製板材の長辺縁側同士が接合部を介して接合されて構成された断面四角形状の中空空間を有した梁材であって、接合部は、一方の木製板材の一方の板面における長辺縁側の位置に当該長辺縁に沿って延長する板面が接触した状態で一方の木製板材に固定された固定板と、当該固定板における一方の長辺縁より当該一方の木製板材から離れる方向に延長する連結板とを有した断面L字状の金属製の連結部材と、他方の木製板材の長辺縁に沿った一方の長辺縁側端面から当該長辺縁に沿った方向及び当該一方の長辺縁側端面と対向する他方の長辺縁側端面に近づく方向に延長するように形成された溝と、を備え、一方の木製板材に固定された連結部材の連結板が他方の木製板材の溝に挿入されて当該溝に挿入された連結板と他方の木製板材とが中空空間の外側に位置される他方の木製板材の板面側から取付けられたねじによって連結された構成としたので、中空空間を有した梁材であって、軽量化を図れるとともに剛性を向上できる梁材を提供できる。
また、連結部材は、木製板材の長辺縁の長さに対応した長さの山形鋼であり、溝は、他方の木製板材の短辺縁に沿った一方の短辺縁側端面と当該一方の短辺縁側端面と対向する他方の短辺縁側端面とに亘って連続した溝としたので、剛性をより向上できる梁材を提供できる。
また、上述した梁材の端部に端部接合手段を備えた梁材を複数個用い、一方の梁材の端部接合手段と他方の梁材の端部接合手段とが接合されて構成された梁材であって、一方の梁材の端部接合手段は、連結部材の端部が、木製板材の長辺縁に沿った方向の一方の端面から長辺縁に沿った方向に突出するように構成され、他方の梁材の端部接合手段は、連結部材の端部が、木製板材の長辺縁に沿った方向の他方の端面よりも梁材の中空空間側に位置されて、連結部材の端部の端面と木製板材の長辺縁に沿った方向の他方の端面との間の距離が、一方の梁材の木製板材の一方の端面から突出する連結部材の端部の長さよりも長くなるように構成され、一方の梁材の端部接合手段における木製板材の一方の端面から突出する連結部材の端部が、他方の梁材の端部接合手段における木製板材の他方の端面に開口する溝に挿入されて、当該溝に挿入された一方の梁材の連結部材の端部と他方の梁材の木製板材とが中空空間の外側から取付けられたねじによって連結されたことを特徴するので、ロングスパンの梁材を簡単容易に製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】梁材の製作手順を示す斜視図(実施形態1)。
【
図4】梁材の製作手順を示す断面図(実施形態1)。
【
図5】ロングスパンの梁材の製作手順を示す斜視図(実施形態2)。
【
図6】ロングスパンの梁材の製作手順を示す斜視図(実施形態3)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る梁材1は、
図1に示すように、4枚の長尺な四角形状の木製板材の長辺縁側同士が接合部2を介して接合されて構成された断面四角形状の中空空間1Hを有した梁材1である。
【0008】
4枚の長尺な四角形状の木製板材は、梁材1の上面を形成する平板である上板3、梁材1の互いに対向する一対の側面を形成する平板である一対の側板4,4、及び、梁材1の下面を形成する平板である下板5である。
【0009】
平板である上板3、側板4,4、下板5を形成する木製板材は、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材により形成される。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
【0010】
上板3及び下板5は、例えば、板厚90mm、長辺の長さ6000mm(6m)、短辺の長さ500mmの長尺平板である。
側板4は、例えば、板厚90mm、長辺の長さ6000mm、短辺の長さ1200mmの長尺平板である。
即ち、梁材1の外形寸法は、例えば、梁の長さ(スパン)が6000mm、梁成が1380mm、梁幅が500mmである。
【0011】
接合部2は、一方の木製板材としての上板3又は一方の木製板材としての下板5に固定された断面L字状の長尺な金属製の連結部材としての山形鋼6と、他方の木製板材としての側板4,4に形成された溝7と、
図2乃至
図4に示すように、山形鋼6の固定板61を上板3又は下板5に固定するねじ(ビス)8と、溝7に挿入された山形鋼6の連結板62と側板4とを連結するねじ(ビス)9とで構成される。
【0012】
図2に示すように、山形鋼6としては、上板3の一方の板面となる下面31における一方の長辺縁32側の位置に当該長辺縁32に沿うように設けられる第1の山形鋼6Aと、上板3の下面31における他方の長辺縁33側の位置に当該長辺縁33に沿うように設けられる第2の山形鋼6Bと、下板5の一方の板面となる上面51における一方の長辺縁52側の位置に当該長辺縁52に沿うように設けられる第3の山形鋼6Cと、下板5の上面51における他方の長辺縁53側の位置に当該長辺縁53に沿うように設けられる第4の山形鋼6Dとを使用する。
【0013】
即ち、
図2乃至
図4に示すように、第1の山形鋼6Aは、上板3の下面31における一方の長辺縁32側の位置に当該一方の長辺縁32に沿って延長する板面が接触した状態で上板3に固定される固定板61と、当該固定板61における上板3の下面31の一方の長辺縁32に近い一方の長辺縁63より当該上板3から離れる方向(下方)に延長して固定板63の板面と略直交する板面を有した連結板62とを備えた構成である。
同様に、第2の山形鋼6Bは、上板3の下面31における他方の長辺縁33側の位置に当該他方の長辺縁33に沿って延長する板面が接触した状態で上板3に固定される固定板61と、当該固定板61における上板3の下面31の他方の長辺縁33に近い一方の長辺縁63より当該上板3から離れる方向(下方)に延長して固定板63の板面と略直交する板面を有した連結板62とを備えた構成である。
【0014】
さらに、第3の山形鋼6Cは、下板5の上面51における一方の長辺縁52側の位置に当該一方の長辺縁52に沿って延長する板面が接触した状態で下板5に固定される固定板61と、当該固定板61における下板5の上面51の一方の長辺縁52に近い一方の長辺縁63より当該下板5から離れる方向(上方)に延長して固定板63の板面と略直交する板面を有した連結板62とを備えた構成である。
同様に、第4の山形鋼6Dは、下板5の上面51における他方の長辺縁53側の位置に当該他方の長辺縁53に沿って延長する板面が接触した状態で下板5に固定された固定板61と、当該固定板61における下板5の上面51の他方の長辺縁53に近い一方の長辺縁63より当該下板5から離れる方向(上方)に延長して固定板63の板面と略直交する板面を有した連結板62とを備えた構成である。
【0015】
つまり、
図4に示すように、各山形鋼6A,6B,6Dは、上板3又は下板5にねじ8によって固定された固定板61と、固定板61の一方の長辺縁63より延長する連結板62とを備えた断面L字状の長尺鋼材である。
即ち、山形鋼6は、固定板61の板面と連結板62の板面とのなす角度が略90°となるように形成された断面L字状の長尺鋼材である。
【0016】
図2乃至
図4に示すように、一方の側板4Aには、一方の側板4Aの一方の長辺縁側端面(上端面)41から当該一方の長辺縁側端面41と対向する他方の長辺縁側端面(下端面)42に近づく方向及び当該一方の長辺縁側端面41の長手方向に延長するように形成された第1の溝7Aと、一方の側板4Aの他方の長辺縁側端面(下端面)42から当該他方の長辺縁側端面42と対向する一方の長辺縁側端面(上端面)41に近づく方向及び当該他方の長辺縁側端面42の長手方向に延長するように形成された第2の溝7Bとが形成されている。
【0017】
同様に、他方の側板4Bには、他方の側板4Bの一方の長辺縁側端面(上端面)41から当該一方の長辺縁側端面41と対向する他方の長辺縁側端面(下端面)42に近づく方向及び当該一方の長辺縁側端面41の長手方向に延長するように形成された第3の溝7Cと、他方の側板4Bの他方の長辺縁側端面(下端面)42から当該他方の長辺縁側端面42と対向する一方の長辺縁側端面(上端面)41に近づく方向及び当該他方の長辺縁側端面42の長手方向に延長するように形成された第4の溝7Dとが形成されている。
【0018】
図2に示すように、第1の溝7A及び第2の溝7Bは、一方の側板4Aの一方の短辺縁側端面45と他方の短辺縁側端面46とに亘って連続するように形成される。
同様に、第3の溝7C及び第4の溝7Dは、他方の側板4Bの一方の短辺縁側端面45と他方の短辺縁側端面46とに亘って連続するように形成される。
【0019】
図4に示すように、第1の溝7A及び第2の溝7Bは、一方の側板4Aの中空空間1H側に位置される板面43よりも一方の側板4Aの外側となる板面(中空空間1H側に位置される板面43と対向する板面)44に近い位置に形成される。
同様に、第3の溝7C及び第4の溝7Dは、他方の側板4Bの中空空間1H側に位置される板面43よりも他方の側板4Bの外側となる板面(中空空間1H側に位置される板面43と対向する板面)44に近い位置に形成される。
例えば、
図4(a)に示すように、側板4(4A,4B)の外側となる板面44と溝7(溝7A~溝7D)との間の距離aは、例えば、十数mm~30mm程度となるように設定すればよい。
【0020】
また、一方の側板4Aに形成された第1の溝7Aは、一方の長辺縁側端面(上端面)41から他方の長辺縁側端面(下端面)42に近づく方向の長さ(溝深さ)が、第1の山形鋼6Aの連結板62の高さ寸法に対応した長さに形成されており、かつ、一方の側板4Aに形成された第2の溝7Bは、他方の長辺縁側端面(下端面)42から一方の長辺縁側端面(上端面)41に近づく方向の長さ(溝深さ)が、第3の山形鋼6Cの連結板62の高さ寸法に対応した長さに形成されている。
同様に、他方の側板4Bに形成された第3の溝7Cは、一方の長辺縁側端面(上端面)41から他方の長辺縁側端面(下端面)42に近づく方向の長さ(溝深さ)が、第2の山形鋼6Bの連結板62の高さ寸法に対応した長さに形成されており、かつ、他方の側板4Bに形成された第4の溝7Dは、他方の長辺縁側端面(下端面)42から一方の長辺縁側端面(上端面)41に近づく方向の長さ(溝深さ)が、第4の山形鋼6Dの連結板62の高さ寸法に対応した長さに形成されている。
【0021】
また、
図2乃至
図4に示すように、一方の側板4A及び他方の側板4Bにおいて、一方の長辺縁側端面(上端面)41における溝7(第1の溝7A,第3の溝7C)の位置から中空空間1H側に位置される板面43までの間は、山形鋼6(第1の山形鋼6A,第2の山形鋼6B)の固定板61の板厚分だけ削られた固定板載置面47に形成されている。
同等に、一方の側板4A及び他方の側板4Bにおいて、他方の長辺縁側端面(下端面)42における溝7(第2の溝7B,第4の溝7D)の位置から中空空間1H側に位置される板面43までの間は、山形鋼6(第3の山形鋼6C,第4の山形鋼6D)の固定板61の板厚分だけ削られた固定板載置面47に形成されている。
【0022】
各溝7(7A乃至溝7D)、固定板載置面47は、例えば、電動溝切カッター等を用いて形成すればよい。
また、各溝7(7A乃至溝7D)の溝幅寸法は、各山形鋼6(6A乃至溝6D)の連結板62の板厚に対応した寸法で、連結板62が嵌合されるような寸法に形成されることが好ましい。
【0023】
また、
図2に示すように、各山形鋼6A乃至6Dの各固定板61,61…には、ねじ8を通すためのねじ通し孔65が、固定板61の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて複数形成されている。
また、各山形鋼6A乃至6Dの各連結板62,62…には、ねじ9を通すためのねじ通し孔66が、連結板62の長手方向に沿って所定の間隔を隔てて複数形成されている。
さらに、一方の側板4A及び他方の側板4Bにおける外側となる板面44における一方の長辺縁側端面(上端面)41側、及び、他方の長辺縁側端面(下端面)42側には、板面44から溝7に亘って貫通して連結板62のねじ通し孔66に連通するねじ通し孔48が長辺縁に沿って所定の間隔を隔てて複数形成されている。
【0024】
次に、梁材1の組立方法について説明する。
図3(a),
図4(a)に示すように、まず、上板3の下面31における一方の長辺縁32側の位置に第1の山形鋼6Aの固定板61を設置して当該固定板61のねじ通し孔65にねじ8を通して当該ねじ8を上板3に締結することにより第1の山形鋼6Aを上板3に固定する。同様に、上板3の下面31における他方の長辺縁33側の位置に第2の山形鋼6Bの固定板61を設置して当該固定板61のねじ通し孔65にねじ8を通して当該固定ねじ8を上板3に締結することにより第2の山形鋼6Bを上板3に固定する。
さらに、下板5の上面51における一方の長辺縁52側の位置に第3の山形鋼6Cの固定板61を設置して当該固定板61のねじ通し孔65にねじ8を通して当該ねじ8を下板5に締結することにより第3の山形鋼6Cを下板5に固定する。同様に、下板5の上面51における他方の長辺縁53側の位置に第4の山形鋼6Dの固定板61を設置して当該固定板61のねじ通し孔65にねじ8を通して当該ねじ8を下板5に締結することにより第4の山形鋼6Dを下板5に固定する。
【0025】
次に、
図3(b),
図4(b)に示すように、上板3に固定された第1の山形鋼6Aの連結板62を一方の側板4Aの第1の溝7Aに挿入するとともに第1の山形鋼6Aの固定板61を一方の側板4Aの一方の長辺縁側端面(上端面)41の横の固定板載置面47上に載置し、かつ、上板3に固定された第2の山形鋼6Bの連結板62を他方の側板4Bの第3の溝7Cに挿入するとともに第2の山形鋼6Bの固定板61を他方の側板4Bの一方の長辺縁側端面(上端面)41の横の固定板載置面47上に載置する。その後、ねじ9を側板4A,4Bの外側の板面44,44側から当該外側の板面44,44に形成されたねじ通し孔48及び連結板62のねじ通し孔66に通して一方の側板4A及び他方の側板4Bに締結することにより、上板3に固定された第1の山形鋼6Aの連結板62を一方の側板4Aに連結するとともに、上板3に固定された第2の山形鋼6Bの連結板62を他方の側板4Bに連結する。
同様に、下板5に固定された第3の山形鋼6Cの連結板62を一方の側板4Aの第2の溝7Bに挿入するとともに第3の山形鋼6Cの固定板61を一方の側板4Aの他方の長辺縁側端面(下端面)42の横の固定板載置面47下に設置し、かつ、下板5に固定された第4の山形鋼6Dの連結板62を他方の一方の側板4Bの第4の溝7Dに挿入するとともに第4の山形鋼6Dの固定板61を他方の側板4Bの他方の長辺縁側端面(下端面)42の横の固定板載置面47下に設置する。その後、ねじ9を側板4A,4Bの外側の板面44側から当該外側の板面44,44に形成されたねじ通し孔48及び連結板62のねじ通し孔66に通して一方の側板4A及び他方の側板4Bに締結することにより、下板5に固定された第3の山形鋼6Cの連結板62を一方の側板4Aに連結するとともに、下板5に固定された第4の山形鋼6Dの連結板62を他方の側板4Bに連結する。
【0026】
以上により、上板3の一方の長辺縁32側と一方の側板4Aの一方の長辺縁側(上端縁側)とが接合部2を介して接合され、上板3の他方の長辺縁33側と他方の側板4Bの一方の長辺縁側(上端縁側)とが接合部2を介して接合されるとともに、下板5の一方の長辺縁52側と一方の側板4Aの他方の長辺縁側(下端縁側)とが接合部2を介して接合され、下板5の他方の長辺縁53側と他方の側板4Bの他方の長辺縁側(下端縁側)とが接合部2を介して接合されて構成された梁材1が構成される(
図3(b),
図4(b)参照)。
【0027】
実施形態1に係る梁材1によれば、断面四角形状の中空空間1Hを有しているので、軽量化が図れ、かつ、接合部2に山形鋼6を用いているので、剛性を向上できる。
即ち、非特許文献1に開示された梁材は、断面四角形状の中空空間を有しているので、軽量化が図れるが、木製板材同士が接着剤によって接合されているだけなので、剛性が小さくなってしまい、材軸方向と垂直な方向に変形しやすい(たわみやすい)梁材となってしまう。
一方、実施形態1に係る梁材1によれば、4枚の長尺な四角形状の木製板材の長辺縁側同士が山形鋼6を用いた接合部2により接合された構成としたので、軽量化が図れ、かつ、非特許文献1に開示された梁材と比べて剛性が高く、たわみにくい梁材1となる。
また、実施形態1に係る梁材1によれば、長尺な四角形状の木製板材の長辺縁に沿って連続するように設けられた山形鋼6を備えた構成としたので、剛性を向上でき、ロングスパン化が可能な梁材1を提供できる。
即ち、木製板材(上板3、側板4,4、下板5)の長辺縁の長さに対応した長さの山形鋼6を用いるとともに、他方の木製板材(側板4)の短辺縁に沿った一方の短辺縁側端面45と当該一方の短辺縁側端面45と対向する他方の短辺縁側端面46とに亘って連続した溝7を用いたので、剛性をより向上できる梁材1を提供できる。
【0028】
また、実施形態1に係る梁材1によれば、上板3と側板4とを連結する山形鋼6の連結板62、又は、下板5と側板4とを連結する山形鋼6の連結板62を、側板4の外側の板面44に近い位置に形成された溝7に挿入して、側板4の外側の板面44側からねじ9を使用して、ねじ通し孔48、及び、連結板62のねじ通し孔66に通して締結することにより、上板3と側板4、又は、下板5と側板4を連結する構成としたので、ねじ9の締結作業を梁材1を構成する木製板材で囲まれた中空空間1H側からではなく、梁材1を構成する木製板材の外面側(外側)から行うことができるようになり、梁材1の組立作業を容易に行える。
【0029】
実施形態2
上述した梁材1よりも長い梁長のロングスパンの梁材が必要となる場合、上述した梁材1の端部に、
図5に示すような端部接合手段80Aを備えた構成の梁材1A及び端部接合手段80Bを備えた構成の梁材1Bを用いることで、ロングスパンの梁材1Xを得ることができる。
【0030】
即ち、一方の梁材1の一方の梁端部が端部接合手段80Aに形成された梁材1Aの当該端部接合手段80Aと他方の梁材1の他方の梁端部が端部接合手段80Bに形成された梁材1Bの当該端部接合手段80Bとを接合することにより、ロングスパンの梁材1Xを形成できる。
【0031】
図5(a)に示すように、一方の梁材1Aの端部接合手段80Aは、連結部材としての山形鋼6の長手方向の一方の端部が、木製板材(上板3、側板4,4、下板5)の長辺縁に沿った方向の一方の端面1aから長辺縁に沿った方向に突出するように構成される。
また、他方の梁材1Bの端部接合手段80Bは、山形鋼6の長手方向の他方の端面6bが、木製板材(上板3、側板4,4、下板5)の長辺縁に沿った方向の他方の端面1bよりも梁材1Bの中空空間1H側の位置、換言すれば、木製板材(上板3、側板4,4、下板5)の長辺縁に沿った方向の他方の端面1bから反対側の端面(一方の端面)に近づく方向に後退した位置に設置されて、山形鋼6の他方の端面6bと木製板材(上板3、側板4,4、下板5)の他方の端面1bとの間の距離bが、一方の梁材1Aの木製板材の一方の端面1aから突出する山形鋼6の端部の突出長さよりも若干長くなるように構成される。
【0032】
実施形態2においては、一方の梁材1Aのおける木製板材の長辺縁に沿った方向の一方の端面1a、即ち、上板3、側板4,4、下板5の長辺縁に沿った方向のそれぞれの一方の端面が同一平面上に形成され、かつ、他方の梁材1Bのおける木製板材の長辺縁に沿った方向の他方の端面1bは、即ち、上板3、側板4,4、下板5の長辺縁に沿った方向のそれぞれの他方の端面が同一平面上に形成された構成とした。
【0033】
一方の梁材1Aの端部接合手段80Aと他方の梁材1Bの端部接合手段80Bとの接合方法は、
図5(a),(b)に示すとおりである。
まず、一方の梁材1Aの木製板材の一方の端面1aから突出する山形鋼6の端部を、他方の梁材1Bの他方の端部における木製板材の他方の端面1bに開口する溝7に挿入して、当該一方の梁材1Aの木製板材の一方の端面1aから突出する山形鋼6の端部の端面6aと他方の梁材1Bにおける山形鋼6の長手方向の他方の端面6bとを接近させるとともに、一方の梁材1Aの木製板材の一方の端面1aと他方の梁材1Bの木製板材の他方の端面1bとを接触させた状態に設定する。
次に、他方の梁材1Bの木製板材の他方の端面1bに開口する溝7に挿入した一方の梁材1Aの山形鋼6と他方の梁材1Bの側板4とをねじ9を用いて連結する。即ち、ねじ9を側板4,4の外側の板面44,44側から当該外側の板面44,44に形成されたねじ通し孔48及び山形鋼6の連結板62のねじ通し孔66に通して側板4に締結する。
以上により、梁材1Aと梁材1Bとが接合されたロングスパンの梁材1Xが形成される。
即ち、一方の梁材1Aの山形鋼6の端部を他方の梁材1Bの溝7に挿入して、他方の梁材1Bの側板4の外側からねじ9を締結するだけで、ロングスパンの梁材1Xを簡単容易に製作できるようになる。
【0034】
実施形態2によれば、
図5に示すような端部接合手段80Aを備えた構成の梁材1A及び端部接合手段80Bを備えた構成の梁材1Bを用いるので、トラック等の運搬車両によって工場から現場に運搬可能な長さに工場内で形成された梁材1A及び梁材1Bを現場において容易に接合できるようになり、現場において、ロングスパンの梁材1Xを簡単容易に製作できるようになる。
【0035】
実施形態3
実施形態2の一方の梁材1Aのように、上板3、側板4,4、下板5の長辺縁に沿った方向のそれぞれの一方の端面1aを同一平面上に形成せずに、
図6に示すように、上板3、下板5の長辺縁に沿った方向のそれぞれの一方の端面3a、一方の端面5aを同一平面上に形成するとともに、側板4,4の長辺縁に沿った方向のそれぞれの一方の端面4a,4aを同一平面上に形成した構成の端部接合手段80Cを有した一方の梁材1Cを製作する。さらに、実施形態2の他方の梁材1Bのように、上板3、側板4,4、下板5の長辺縁に沿った方向のそれぞれの他方の端面1bを同一平面上に形成せずに、
図6に示すように、上板3、下板5の長辺縁に沿った方向のそれぞれの他方の端面3b、5bを同一平面上に形成するとともに、側板4,4の長辺縁に沿った方向のそれぞれの他方の端面4b,4bを同一平面上に形成した構成の端部接合手段80Dを有した他方の梁材1Dを製作する。
そして、一方の梁材1Cの端部接合手段80Cと他方の梁材1Dの端部接合手段80Dとを接合することにより、ロングスパンの梁材1Yを製作する。
【0036】
尚、一方の梁材1Cは、上板3、下板5の一方の端面3a、一方の端面5aと側板4,4の一方の端面4a,4aとが同一平面上に位置されない構成以外の構成は、実施形態2の一方の梁材1Aと同じであるので、説明を省略する。
また、他方の梁材1Dは、上板3、下板5の他方の端面3b、他方の5aと側板4,4の一方の端面4b,4bとが同一平面上に位置されない構成以外の構成は、実施形態2の他方の梁材1Bと同じであるので、説明を省略する。
【0037】
実施形態3では、実施形態2と同様に、まず、一方の梁材1Cの山形鋼6の端部を他方の梁材1Dの溝7に挿入するとともに、一方の梁材1Cの上板3の一方の端面3aと他方の梁材1Dの他方の端面3bとを接触させ、一方の梁材1Cの下板5の一方の端面5aと他方の梁材1Dの下板5の他方の端面5bとを接触させ、かつ、一方の梁材1Cの側板4,4の一方の端面4a,4aと他方の梁材1Dの側板4,4の他方の端面4b,4bとを接触させた状態に設定する。その後、溝7に挿入した一方の梁材1Cの山形鋼6と他方の梁材1Dの側板4とをねじ9を用いて連結する。即ち、ねじ9を、側板4,4の外側の板面44,44側から当該外側の板面44,44に形成されたねじ通し孔48及び山形鋼6の連結板62のねじ通し孔66に通して、側板4に締結する。
以上により、梁材1Cと梁材1Dとが接合されたロングスパンの梁材1Yが形成される。
即ち、一方の梁材1Cの山形鋼6の端部を他方の梁材1Dの溝7に挿入して、他方の梁材1Dの側板4の外側からねじ9を締結するだけで、ロングスパンの梁材1Yを簡単容易に製作できるようになる。
【0038】
実施形態3によれば、一方の梁材1Cの端部接合手段80Cと他方の梁材1Dの端部接合手段80Dとの接合面において、一方の梁材1Cの上板3の一方の端面3aと他方の梁材1Dの上板3の他方の端面3bとの接合面や一方の梁材1Cの下板5の一方の端面5aと他方の梁材1Dの下板5の他方の端面5bとの接合面と、一方の梁材1Cの側板4,4の一方の端面4a,4aと他方の梁材1Dの側板4,4の他方の端面4b,4bとの接合面とが、同一平面上に位置されないため、実施形態2のロングスパンの梁材1Xと比べて剛性の大きいロングスパンの梁材1Y、即ち、たわみ防止効果に優れたロングスパンの梁材1Yを得ることができる。
【0039】
尚、山形鋼6の固定板61と上板3との固定、山形鋼6の固定板61と下板5との固定は、ねじ8と接着剤とを併用してもよい。
また、山形鋼6の連結板62と側板4との連結は、ねじ9と接着剤とを併用してもよい。
【0040】
また、CLT又は集成材により形成された木製板材を用いた梁材を例示したが、本発明の梁材は、無垢材により形成された木製板材を用いた梁材であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,1A~1D 梁材、1H 中空空間、2 接合部、3 上板(一方の木製板材)、
4 側板(他方の木製板材)、5 下板(一方の木製板材)、6 山形鋼(連結部材)、7 溝、9 ねじ、44 側板(他方の木製板材)の板面、
45 側板(他方の木製板材)の一方の短辺側端面、
46 側板(他方の木製板材)の他方の短辺側端面、61 固定板、62 連結板、
80A~80D 端部接合手段。