(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】波付管
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20230508BHJP
H02G 9/06 20060101ALI20230508BHJP
F16L 11/11 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
H02G3/04 068
H02G9/06
F16L11/11
(21)【出願番号】P 2019227865
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 一啓
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-19909(JP,A)
【文献】特開2003-87945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 9/06
F16L 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向外方に凸設された蛇腹凸部および径方向内方に凹設された蛇腹凹部が管軸に沿って連続し、周方向に略均一な厚みを有する蛇腹管状の基部と、
周方向に相対的に厚肉な部位を部分的に構成するように前記基部の内周部から径方向内方に突出高さh1,h2で隆起し、周方向に互いに間隔をあけて長尺方向に延びる複数の突条部と、を備え、
前記蛇腹凸部における突出高さh1が、前記蛇腹凹部における突出高さh2よりも大きいことを特徴とする波付管。
【請求項2】
前記蛇腹凹部における前記突条部の内面が、前記蛇腹凸部における前記突条部の内面よりも径方向内方に位置することを特徴とする請求項1に記載の波付管。
【請求項3】
前記突条部は、前記蛇腹凸部において周方向に幅w1を有し、径方向内方に向かうにつれて、前記幅w1が減少することを特徴とする請求項1または2に記載の波付管。
【請求項4】
前記突条部は、前記蛇腹凸部を管軸に垂直な平面に沿って切断した横断面視において、前記突出高さh1が略一定となる頂面を定める頂辺、および、前記頂辺の両側で前記突出高さh1が直線的に変化する一対の傾斜辺とを有し、前記一対の傾斜辺の径方向内方への延長線同士の交点が前記基部の軸心と前記頂辺との間に位置することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の波付管。
【請求項5】
前記蛇腹凸部において、前記突条部の突出高さh1が前記基部の肉厚T1以上であり、且つ、前記蛇腹凹部において、前記突条部の突出高さh2が前記基部の肉厚T2よりも小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の波付管。
【請求項6】
前記突条部を管軸に沿って切断した縦断面視において、前記蛇腹凹部の長尺方向の中心位置の内面は、前記蛇腹凸部の長尺方向の中心位置の内面よりも径方向内方に位置することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の波付管。
【請求項7】
前記蛇腹凹部の長尺方向の中心位置において、前記突条部の周方向の最大突出高さh2が1mm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の波付管。
【請求項8】
前記複数の突条部は、周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の波付管。
【請求項9】
前記蛇腹凸部を管軸に垂直な平面に沿って切断した横断面視において、前記複数の突条部の底辺の円弧長jの合計長さは、前記隣接する突条部の間の前記基部の内面の円弧長uの合計長さ以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の波付管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の波付管に関する。
【背景技術】
【0002】
管内部に電線を収容して保護する保護管や、ガスや水などの流体を運搬する導管等の多くの用途の管に蛇腹状の波付管が用いられている。一般的に、波付管は、蛇腹凹部および蛇腹凸部が交互に長尺方向に連続する蛇腹形状を有し、自在に屈曲可能である。波付管は、自在に蛇行するように屈曲する一方で、直線的に配管される部位では、自身が直線に近い形状を出来るだけ維持することが求められる。このため、直線配管の際により高い直線性を発揮する波付管が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、直線配管部における通線作業に適した非フレキシブル性の直線状波付管を開示する。直線状波付管は、管の外周方向に沿って外周面に独立した波形状を有する蛇腹状または外周面に螺旋状の波形状を有する管からなる。直線状波付管は、山部内径が谷部外径より小さく、山部が中実で山部肉厚が谷部肉厚より厚く、且つ、最大内径(山部内径)と最小内径(谷部内径)の差が1mm以下であるように構成されている。そして、直線状波付管は、直線状配管部に配置された熱可塑性合成樹脂よりなる配置後も直線性を保つ人が手で容易に曲げることができない程度の非フレキシブル性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の直線状波付管では、管内部において山部の内部空間を合成樹脂材料で埋めることによって波付管の直線性を確保しているが、直線状波付管全体に亘って山部の厚みが周方向全体で増加することにより、通常の波付管と比べて、波付管の自体の重量が大幅に大きくなる。また、当該波付管は、山部の内側が中実のため、人の手で容易に曲げることができず、通常の波付管と比べて、直線配管以外の用途全般において取り扱い性が悪いことが問題として挙げられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、直線配管時の直線性を維持しつつ、軽量で取り扱いに優れた波付管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の波付管は、径方向外方に凸設された蛇腹凸部および径方向内方に凹設された蛇腹凹部が管軸に沿って連続し、周方向に略均一な厚みを有する蛇腹管状の基部と、
周方向に相対的に厚肉な部位を部分的に構成するように前記基部の内周部から径方向内方に突出高さh1,h2で隆起し、周方向に互いに間隔をあけて長尺方向に延びる複数の突条部と、を備え、
前記蛇腹凸部における突出高さh1が、前記蛇腹凹部における突出高さh2よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の波付管は、請求項1に記載の波付管において、前記蛇腹凹部における前記突条部の内面が、前記蛇腹凸部における前記突条部の内面よりも径方向内方に位置することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の波付管は、請求項1または2に記載の波付管において、前記突条部は、前記蛇腹凸部において周方向に幅w1を有し、径方向内方に向かうにつれて、前記幅w1が減少することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の波付管は、請求項1から3のいずれか一項に記載の波付管において、前記突条部は、前記蛇腹凸部を管軸に垂直な平面に沿って切断した横断面視において、前記突出高さh1が略一定となる頂面を定める頂辺、および、前記頂辺の両側で前記突出高さh1が直線的に変化する一対の傾斜辺とを有し、前記一対の傾斜辺の径方向内方への延長線同士の交点が前記基部の軸心と前記頂辺との間に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の波付管は、請求項1から4のいずれか一項に記載の波付管において、前記蛇腹凸部において、前記突条部の突出高さh1が前記基部の肉厚T1以上であり、且つ、前記蛇腹凹部において、前記突条部の突出高さh2が前記基部の肉厚T2よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の波付管は、請求項1から5のいずれか一項に記載の波付管において、前記突条部を管軸に沿って切断した縦断面視において、前記蛇腹凹部の長尺方向の中心位置の内面は、前記蛇腹凸部の長尺方向の中心位置の内面よりも径方向内方に位置することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の波付管は、請求項1から6のいずれか一項に記載の波付管において、前記蛇腹凹部の長尺方向の中心位置において、前記突条部の周方向の最大突出高さh2が1mm以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の波付管は、請求項1から7のいずれか一項に記載の波付管において、前記複数の突条部は、周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の波付管は、請求項1から8のいずれか一項に記載の波付管において、前記蛇腹凸部を管軸に垂直な平面に沿って切断した横断面視において、前記複数の突条部の底辺の円弧長jの合計長さは、前記隣接する突条部の間の前記基部の内面の円弧長uの合計長さ以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の波付管によれば、突条部が蛇腹管状の基部の内周部から隆起し、蛇腹凸部における突出高さh1が蛇腹凹部における突出高さh2よりも大きくなるように周方向の一部に相対的に厚肉な部位を形成したことによって、波付管は直線配管時の直線性を具備する。他方、波付管の周方向の突条部が存在しない部位において相対的な薄肉部が存在することによって、波付管は比較的に軽く、なお且つ、曲げ容易性をも有している。また、突条部が周方向の一部にしか形成されていないので、管の内部空間を広く確保でき、管内部を通過する配線の通線抵抗をも小さくすることが可能である。したがって、本発明は、直線性を維持しつつ、軽量で取り扱いに優れた波付管を提供するものである。
【0017】
請求項2に記載の波付管によれば、請求項1の発明の効果に加え、蛇腹凸部における突条部の内面が蛇腹凹部における突条部の内面を越えて突出することを抑えることにより、内部空間の容積低下や通線性低下(通線抵抗上昇)を抑えることが可能である。
【0018】
請求項3に記載の波付管によれば、請求項1または2の発明の効果に加え、蛇腹凸部における突条部の周方向に幅w1が径方向内方に向かうにつれて減少することにより、波付管の蛇腹凸部の横断面視(蛇腹凸部を管軸に垂直な平面に沿って切断した断面視)において、断面において突条部が占有する面積を効果的に減少させ、直線配管時の直線性を大きく犠牲にすることなく、内部空間の容積低下や通線性低下を抑えることが可能である。
【0019】
請求項4に記載の波付管によれば、請求項1から3のいずれかの発明の効果に加え、蛇腹凸部の横断面視において、突条部が基部側の底辺が幅広な略台形形状を有することによって、突条部を矩形状とした場合と比べて、突条部の体積の増加を抑えて、効率的に直線性を高めることができる。
【0020】
請求項5に記載の波付管によれば、請求項1から4のいずれかの発明の効果に加え、波付管の突条部と基部の合計厚みが、その内面が径方向外方に位置する蛇腹凸部で2倍以上に大きくなり、他方、その内面が径方向内方に位置する蛇腹凹部で合計厚みの増加が抑えられたことによって、波付管の内部空間の容積を十分に確保しつつ、直線性を効率的に向上させることができる。
【0021】
請求項6に記載の波付管によれば、請求項1から5のいずれかの発明の効果に加え、波付管の縦断面視において、蛇腹凹部の長尺方向の中心位置が蛇腹凸部の長尺方向の中心位置よりも径方向内方に位置することにより、必要以上に蛇腹凸部が厚くなることを抑え、直線性を確保しつつ波付管を軽量化することができる。
【0022】
請求項7に記載の波付管によれば、請求項1から6のいずれかの発明の効果に加え、蛇腹凹部の長尺方向の中心位置において、突条部の周方向の最大突出高さh2を1mm以下に抑えることにより、波付管の内部空間の容積を十分に確保することができる。
【0023】
請求項8に記載の波付管によれば、請求項1から7のいずれかの発明の効果に加え、複数の突条部が周方向に等間隔で配置されていることにより、周方向において曲げ性が高い箇所が特定の部位に偏ることを防止することができる。
【0024】
請求項9に記載の波付管によれば、請求項1から8のいずれかの発明の効果に加え、波付管の周方向において、突条部の底辺の円弧長の合計長さが、基部内面の円弧長の合計長さ以上であることにより、直線性とともに管の強度を向上させることができる。また、所望の直線性を達成するために、突条部の底辺を大きくすることにより、突出部の突出量を減少させることができ、より広い内部空間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態(第1実施形態)の波付管の正面図。
【
図3】
図1の波付管の蛇腹凸部の(a)A-A横断面図、および(b)その部分拡大図。
【
図4】
図1の波付管の蛇腹凹部の(a)B-B縦断面図、および(b)その部分拡大図。
【
図5】
図2の波付管の基部の(a)C-C横断面図、および(b)その部分拡大図。
【
図6】
図2の波付管の突条部の(a)D-D縦断面図、および(b)その部分拡大図。
【
図7】本発明の別実施形態(第2実施形態)の波付管の正面図。
【
図9】
図7の波付管の蛇腹凸部の(a)E-E横断面図、および(b)その部分拡大図。
【
図10】
図7の波付管の蛇腹凹部の(a)F-F横断面図、および(b)その部分拡大図。
【
図11】
図8の波付管の基部の(a)G-G縦断面図、および(b)その部分拡大図。
【
図12】
図8の波付管の突条部の(a)H-H縦断面図、および(b)その部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図または概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0027】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態の波付管100は、合成樹脂からなる長尺の蛇腹状の可撓管である。波付管100は、円形の横断面を有する。
図1は、本発明の一実施形態の波付管100の正面図であり、
図2は、該波付管100の平面図である。波付管100は、内面および外面を有するとともに、管内部の径方向中心に軸心108を有する管軸に沿って延びる長尺形状をなしている。また、波付管100では、径方向外方に凸設された蛇腹凸部101および径方向内方に凹設された蛇腹凹部102が管軸に沿って交互に連続して屈曲可能に構成されている。この波付管100の蛇腹部分が長尺方向において自在に蛇行するように屈曲可能である。なお、本実施形態の波付管100は、一般的な波付管と同様の外観を有し、その内部構造に特徴を有している。また、本実施形態の波付管100は、一般的なブロー成形工程や真空成形工程によって製造され得る。
【0028】
波付管100は、蛇腹環状の基部105と、管内面に形成された複数の突条部110から構成されている。
図3乃至
図6を参照して、波付管100の構成を詳細に説明する。
図3は、蛇腹凸部101(長尺方向の中心部)を管軸に垂直な平面に沿って切断した
図1のA-A横断面視を示す。
図4は、蛇腹凹部102(長尺方向の中心部)を管軸に垂直な平面に沿って切断した
図1のB-B横断面視を示す。
図5は、基部105を管軸に沿って切断した
図2のC-C縦断面視を示す。
図6は、突条部110(周方向の中心部)を管軸に沿って切断した
図2のD-D縦断面視を示す。なお、
図3、
図4および
図6において、基部105の内周部106を仮想線で示した。
【0029】
基部105は、所定厚で管軸方向(または長尺方向)に延びる蛇腹管状の肉部として定められる。換言すると、基部105は、一般的な蛇腹管と同様の形状を有する部位である。基部105は、
図5に示すように、径方向外方に凸設された蛇腹凸部101、径方向内方に凹設された蛇腹凹部102、および、蛇腹凸部101と蛇腹凹部102とを径方向に連結する側壁部103からなる。そして、蛇腹凸部101と蛇腹凹部102とが側壁部103を介して管軸方向に交互に連続することで、基部105の蛇腹形状が構成されている。また、基部105は、
図3および
図4に示すように、管内部を向く内周部106および管外部を向く外周部107を有し、蛇腹凸部101および蛇腹凹部102の両方において、周方向において略同一の厚みを有する略円環状の肉部として定められる。
【0030】
波付管100の縦断面図(
図5参照)において、隣り合う蛇腹凸部101(または蛇腹凹部102)の管軸方向の中心間の距離は、連続する蛇腹のピッチPによって定められる。また、基部105は、軸心108から蛇腹凸部101の外面までの距離を示す最大外径Doと、軸心108から蛇腹凹部101の内面までの最小距離を示す最小内径Diを有する(
図5参照)。そして、蛇腹凸部101は、管軸方向に長さL1を有し、蛇腹凹部101は、管軸方向に長さL2を有する。さらに、波付管100の横断面図(
図3参照)において、蛇腹凸部101における基部105は、肉厚T1を有し、蛇腹凸部102における基部105は肉厚T2を有する。ここで、L1とL2とはほぼ等しい。また、T1はT2とほぼ等しい。すなわち、基部105は、管軸方向において略均一な厚みを有する。そして、基部105の内周部106に複数の突条部110が凸設されている。
【0031】
複数の突条部110は、波付管100の直線性を向上させるべく、周方向に相対的に厚肉な部位を部分的に構成するものである。特には、複数の突条部110は、
図3、
図4および
図6に示すように、基部105の内周部106から径方向内方に隆起し、周方向に互いに間隔をあけて管軸方向に延びている。突条部110は、その内面において最も径方向内側に突出した頂面を有する。各突条部110は、基部105の内周部106に一体的に突出形成され、蛇腹凸部101および蛇腹凹部102の内面上を管軸に沿って直線的且つ連続的に延伸している。本実施形態では、突条部110の数は10条であり、複数の突条部110が等間隔で離隔している。すなわち、波付管100の内周面には、周方向に凹面および凸面が規則的に交互に連続し、基部105内面が凹面を形成し、突条部110内面が凸面を形成している。そして、軸心108を隔てて、突条部110内面同士が直径方向に対面し、且つ、基部105内面同士が直径方向に対面している。当該構造により、管の内径測定が容易となる。
【0032】
各突条部110は、
図3に示す蛇腹凸部101の横断面視において基部105の内周部106から突出高さh1で隆起し、
図4に示す蛇腹凹部102の横断面視において、基部105の内周部106から突出高さh2で隆起している。なお、突出高さh1,h2は、各部位の隆起量に応じて変動する。すなわち、基部105の厚みT1,T2と突条部110の突出高さh1,h2との合算(h1+T1,h2+T2)が、波付管100の管壁の合計厚みとなる。本実施形態の波付管100は、所望の直線性の達成、より広い管内部空間の確保、軽量化、通線性の向上等を目的として、突条部110の隆起量が蛇腹凸部101と蛇腹凹部102とで相違するように設計された。
【0033】
突条部110は、
図6(a)に示す縦断面視において、軸心108を向く頂面(または内面)が漸次的に波のように変化しつつ長尺方向に連続的に延在している。
図6(b)に示すように、突条部110の蛇腹凸部101における突出高さh1は、蛇腹凹部102における突出高さh2よりも大きい。換言すると、蛇腹凸部101における突条部110上の管壁の厚み(h1+T1)は、蛇腹凹部102における管壁の厚み(h2+T2)よりも大きい。また、蛇腹凹部102における突条部110の頂面が、蛇腹凸部101における突条部110の頂面よりも径方向内方に位置している。さらに、蛇腹凸部101における突条部110の頂面が、基部105の内周部106の最小径の内面(蛇腹凹部102内面)よりも径方向外方に位置している。そして、突条部110は、蛇腹凸部101および蛇腹凹部102の管軸方向の略中央近傍において、蛇腹凸部101における突出高さh1が基部105の肉厚T1以上であり、且つ、蛇腹凹部102における突出高さh2が基部105の肉厚T2以下であるように構成されている。換言すると、波付管100の突条部110における管壁が、蛇腹凸部101において、他の部位の管壁の2倍以上の肉厚になり、他方、蛇腹凹部101において、他の部位の管壁の2培以下の肉厚に抑えられる。
【0034】
突条部110は、
図3に示すように、蛇腹凸部101において略台形形状の隆起として形成されている。より具体的には、突条部110は、周方向に略直線状を成す頂辺111、該頂辺111の周方向両側で傾斜する一対の傾斜辺112、および、頂辺111に対向し、周方向に円弧状を成す底辺113を有する。底辺113が基部105と突条部110との境界線を定める。突条部110は、頂辺111において、周方向で最大の突出高さh1を有し、そこでは突出高さh1がほぼ一定である。そして、この頂辺111は、軸心108を向く突条部110の略平面状の頂面を形成する。また、傾斜辺112において、突条部110の突出高さh1が直線的に変化している。そして、一対の傾斜辺112の径方向内方への延長線同士の交点109が、基部105の軸心108と頂辺111との間に位置している。すなわち、交点109が軸心108と頂辺111との間に位置するように、波付管100の寸法形状を設計することにより、傾斜辺112を急勾配にならないように比較的緩やかな傾斜とすることができる。すなわち、傾斜辺112の傾斜の度合いを抑えることにより、突条部110は、その底辺112が幅広な略台形形状を有することができる。本実施形態の波付管100は、突条部110を矩形状とした場合や傾斜辺112を急勾配とした場合と比べて、蛇腹凸部101における突条部110の体積または重量の増加を抑えて、効率的に波付管100の直線性を高めることができる。
【0035】
また、蛇腹凸部101において、各突条部110は、一対の傾斜辺112,112の周方向の距離として、周方向の幅w1を有している。この幅w1は、突条部110が管内部空間において占有する面積を減少させるべく、径方向内方に向かうにつれて減少している。そして、突条部110の底辺113は、周方向において幅w1が最大となった円弧長jを有する。他方、基部105の内面は、隣接する突条部110の間に円弧長uを有する。この円弧長uは、周方向に隣接する突条部110の間隔を示している。突条部110の円弧長jが基部105の内面の円弧長u以上であることから、波付管100の周方向全体において、突条部110が占める周長の割合が半分以上となる。すなわち、突条部110の裾部分が広がって、直線性とともに管の強度を効果的に向上させることができる。
【0036】
他方、突条部110は、
図4に示すように、蛇腹凹部102において略矩形状の隆起として形成されている。蛇腹凹部102の隆起量は、蛇腹凸部101と比べて小さい。より具体的には、突条部110は、周方向に円弧状を成す頂辺115、該頂辺115の周方向両側で径方向外側に延びる一対の側辺116、および、頂辺115に対向し、周方向に円弧状を成す底辺117を有する。なお、蛇腹凸部101の突条部110の頂辺111は、当該頂辺115の円弧よりも大きい曲率半径の円弧状を成すように形成されてもよい。底辺117は、基部105と突条部110との境界線を定める。また、突条部110は、頂辺115において、周方向で最大の突出高さh2を有し、そこでは突出高さh2がほぼ一定である。波付管100の内部空間の容積を十分に確保するために、蛇腹凹部102の長尺方向の中心位置において、突条部110の周方向の最大突出高さh2が1mm以下であることが好ましい。そして、この頂辺115は、軸心108を向く突条部110の頂面を形成する。ここで、突条部110の突出高さh2が基部105の厚みT2と比べても小さいことから、側辺116は直線状でなく緩やかな湾曲部位として形成されている。
【0037】
また、蛇腹凹部102において、各突条部110は、一対の側辺116,116の周方向の距離として、周方向の幅w2を有している。突条部110の頂辺115は、周方向において幅w2が最小となった円弧長kを有する。突条部110の底辺117は、周方向において幅w2が最大となった円弧長lを有する。他方、基部105の内面は、隣接する突条部110の間に円弧長vを有する。この円弧長vは、周方向に隣接する突条部110の間隔を示している。蛇腹凹部102では、蛇腹凸部101と異なり、突条部110の円弧長lが基部105の内面の円弧長v以下であることから、波付管100の周方向全体において、突条部110が占める周長の割合が半分以下となる。蛇腹凹部102を蛇腹凸部101と対照的な構造とすることにより、波付管100の曲げ性を確保している。
【0038】
また、管軸方向において、蛇腹凸部101の中心位置における各突条部110頂面(頂辺111)を繋いだ凸部仮想円を定めた。凸部仮想円は、各突条部110の頂面において、最も径方向外方に膨らんだ箇所を繋いでおり、最大の直径を有する。他方、管軸方向において、蛇腹凹部102の中心位置における各突条部110頂面(頂辺115)を繋いだ凹部仮想円を定めた。凸部仮想円は、各突条部110の頂面において、最も径方向内方に張り出した箇所を繋いでおり、最小の直径を有する。そして、凹部仮想円の直径は、凸部仮想円の直径よりも大きい。すなわち、突条部110の頂面(径方向略中央)を管軸に沿って切断した縦断面視において、蛇腹凹部102の長尺方向の中心位置の内面は、蛇腹凸部101の長尺方向の中心位置の内面よりも径方向内方に位置する。
【0039】
本実施形態の波付管100は、通常の曲げ性を有する相対的に薄肉の基部105(突条部110が形成されない箇所)と、厚肉の突条部110とが周方向に併存することにより、所定の直線性とともに曲げ性および軽量性をバランス良く具備するものである。すなわち、波付管100は、直線配管後は直線性を保つことができるが、人の手で比較的容易に曲げることができる程度のフレキシブル性を有する。また、突条部110は、蛇腹凸部101の内部を優先的に肉部で埋めること、および、その横断面視形状を台形形状としたことにより、実質的な内部空間の縮小や通線性の低下を効果的に抑えつつ、所定の直線性を維持するものである。
【0040】
なお、本実施例の波付管100は、例示的に以下の寸法を有する。
・最大外径Do= 30.5mm
・最小内径Di= 23.5mm
・ピッチP= 4.7mm
・基部の肉厚T1,T2= 1.1mm
・基部の管軸方向の長さL1,L2= 3.2mm
・蛇腹凸部における突条部の最大突出高さh1=2.5mm
・蛇腹凸部における突条部頂辺の径方向幅i=2.8mm
・蛇腹凸部における突条部底辺の円弧長j=4.5mm
・蛇腹凸部における突条部間の基部内面の円弧長u=4.4mm
・蛇腹凹部における突条部の最大突出高さh2=0.8mm
・蛇腹凹部における突条部頂辺の円弧長k=2.7mm
・蛇腹凹部における突条部底辺の円弧長l=3.5mm
・蛇腹凹部における突条部間の基部内面の円弧長v=3.8mm
【0041】
以下、本発明に係る一実施形態の波付管100の作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態の波付管100によれば、突条部110が蛇腹管状の基部105の内周部106から隆起し、蛇腹凸部101における突出高さh1が蛇腹凹部102における突出高さh2よりも大きくなるように周方向の一部に相対的に厚肉な部位を形成したことによって、波付管100は直線配管時の直線性を具備する。他方、波付管100の周方向の突条部110が存在しない部位において相対的な薄肉部が存在することによって、波付管100は比較的に軽く、なお且つ、曲げ容易性をも有している。また、突条部110が周方向の一部にしか形成されていないので、管の内部空間を広く確保でき、管内部を通過する配線の通線抵抗をも小さくすることが可能である。したがって、本実施形態の波付管100は、直線性とともに、軽量性および優れた取り扱い性を併せ持つものである。
【0043】
[第2実施形態]
次に、
図7乃至
図12を参照して、本発明の第2実施形態について説明する第2実施形態において、下二桁の符番が共通する構成要素は、特定のない限り、同一または類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0044】
図7乃至
図12は、本発明の別実施形態の波付管200を示している。波付管200は、径方向外方に凸設された蛇腹凸部201および径方向内方に凹設された蛇腹凹部202が管軸に沿って連続し、周方向に略均一な厚みを有する蛇腹管状の基部205と、周方向に相対的に厚肉な部位を部分的に構成するように基部205の内周部206から径方向内方に突出高さh1,h2で隆起し、周方向に互いに間隔をあけて長尺方向に延びる複数の突条部210と、を備える。当該波付管200では、第1実施形態と同様に、蛇腹凸部201における突出高さh1が、蛇腹凹部202における突出高さh2よりも大きい。
【0045】
波付管200では、突条部210は6条であり、第1実施形態と比べて、各突条部210が周方向により幅広に形成されている。特には、
図9に示す蛇腹凸部201の横断面視において、第1実施形態と比べて、突条部210の頂辺211が円弧状を成し、傾斜辺212の傾斜角がより緩やかなものとなり、そして、底辺213がより幅広となっている。また、
図10に示す蛇腹凹部202の横断面視において、突条部210の頂辺215が、直線状を成し、あるいは、蛇腹凸部201の頂辺211の円弧よりも大きい曲率半径の円弧状を成すように形成されている。また、
図10に示すように、突条部210の側辺216の傾斜が緩やかであり、頂辺215と底辺217とが近接し、頂辺215の径方向内方への突出が抑えられている。なお、頂辺215および側壁216の境界が明確に区別されない程度に、その屈折角が緩やかであることから、
図10では頂辺215の長さが定義されていない。
【0046】
本実施形態の波付管200は、相対的に薄肉の通常の曲げ性を有する基部205(突条部210が形成されない箇所)と、厚肉の突条部210とが周方向に併存することにより、所定の直線性とともに曲げ性および軽量性をバランス良く具備するものである。すなわち、波付管200は、直線配線後は直線性を保つことができるが、人の手で比較的容易に曲げることができる程度のフレキシブル性を有する。また、突条部210は、蛇腹凸部201の内部を優先的に肉部で埋めること、および、その横断面視形状を台形形状としたことにより、実質的な内部空間の縮小や通線性の低下を効果的に抑えつつ、所定の直線性を維持するものである。特には、本実施形態の波付管200は、より隆起が緩やかな突条部210を形成したことにより、波付管200の内面がより滑らかになり、より優れた通線性を有している。また、10条の波付管100に対して、6条の波付管200では、蛇腹凹部202の突条部210の突出高さh2を低くして、内部空間を確保し、蛇腹凹部202における突条部210の底辺217の円弧長lを突条部210間の基部205内面の円弧長vよりも大きくして、直進性を高めている
【0047】
なお、本実施例の波付管200は、例示的に以下の寸法を有する。
・最大外径Do= 30.5mm
・最小内径Di= 23.5mm
・ピッチP= 4.7mm
・基部の肉厚T1,T2= 1.1mm
・基部の管軸方向の長さL1,L2= 3.2mm
・蛇腹凸部における突条部の最大突出高さh1=2.0mm
・蛇腹凸部における突条部頂辺の径方向幅i=3.0mm
・蛇腹凸部における突条部底辺の円弧長j=8.4mm
・蛇腹凸部における突条部間の基部内面の円弧長u=6.3mm
・蛇腹凹部における突条部の最大突出高さh2=0.5mm
・蛇腹凹部における突条部底辺の円弧長l=6.5mm
・蛇腹凹部における突条部間の基部内面の円弧長v=5.7mm
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態や変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。
【0049】
(1)上記実施形態では、複数の突条部が周方向に等間隔に形成されたが、本発明は上記実施形態に限定されず、突条部の間隔は任意に異なってもよい。なお、突条部の間隔が周方向に均等に配分されなくても、突条部間の基部内面の円弧長の合算は、周全体の長さの半分以下であることが好ましい。
【0050】
(2)上記実施形態では、各突条部が同一形状および同一寸法に形成されたが、本発明は上記実施形態に限定されず、各突条部の形状寸法が互いに異なってもよい。
【0051】
(3)上記実施形態では、波付管は円筒管であるが、本発明は上記実施形態に限定されず、
本発明の技術的思想は、円筒管に限らず、角形、楕円形の管にも応用できる。
【0052】
(4)上記実施形態において、6条、10条の突条部を有する波付管を説明したが、複数の突条部とは、2以上の突条部を意味し、突条部の条数は奇数でも偶数でもよく、適宜変更されてもよい。
【0053】
(5)上記実施形態において、各突条部が管軸に沿って直進しているが、本発明は上記実施形態に限定されず、突条部は管軸に対して傾斜して延伸してもよく、あるいは、長尺方向において曲がりを有してもよい。さらには、複数の突条部は、管軸を中心として管内面において螺旋を描くように延伸してもよい。
【0054】
(6)上記実施形態において、各突条部が波付管の長尺方向全体に亘って延伸しているが、本発明は上記実施形態に限定されず、突条部が、長尺方向の一部分に形成されてもよく、または、長尺方向において断続的に形成されてもよい。
【0055】
(7)上記実施形態において、蛇腹凹部および蛇腹凸部は、各々が1つの閉塞した環体を形成するように形成されたが、本発明は上記実施形態に限定されず、蛇腹凹部および蛇腹凸部が管軸方向に沿って螺旋状に連続的に延伸してもよい。すなわち、本発明の波付管および基部は、螺旋蛇腹状の管であってもよい。
【0056】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0057】
100 波付管
101 蛇腹凸部
102 蛇腹凹部
103 側壁部
105 基部
106 内周部
107 外周部
108 軸心
109 交点
110 突条部
111 頂辺(蛇腹凸部)
112 傾斜辺(蛇腹凸部)
113 底辺(蛇腹凸部)
115 頂辺(蛇腹凹部)
116 側辺(蛇腹凹部)
117 底辺(蛇腹凹部)