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特許7273710架橋シリコーン樹脂、フィルム、電子機器、及び関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】架橋シリコーン樹脂、フィルム、電子機器、及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/52 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
C08G77/52
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019514718
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017054435
(87)【国際公開番号】W WO2018064543
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】62/402,282
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペン-フェイ・フー
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】杉江 渉
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-284999(JP,A)
【文献】特開2000-265065(JP,A)
【文献】特表2011-516626(JP,A)
【文献】特開特開2014-205823(JP,A)
【文献】特開2013-57031(JP,A)
【文献】特開2004-339482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00 - 77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
(HSiO3/2(SiO3/2-X-SiO3/2 (1)
[式中、下付き文字xは0.8以上1未満であり、下付き文字yは0超0.2以下であり、x+y=1であり、Xは、-(CH-SiRR-X’-SiRR-(CH-の式で表され、式中、q及びq’はそれぞれ独立して2~6から選択される整数であり、各R及びRは独立して置換若しくは非置換ヒドロカルビル基から選択され、X’はアリーレン基を含む二価の連結基である。]
を有する架橋シリコーン樹脂であって、前記シリコーン樹脂の各(HSiO3/2基は、ポリスチレン標準に基づいて較正したゲル浸透クロマトグラフィにより測定すると、3,000~00,000の重量平均分子量を有する、架橋シリコーン樹脂。
【請求項2】
X’が一般式(3):
-(C6-k4-k)-[(Z)-(C6-k’4-k’Y’k’)]- (3)
[式中、pは0又は1~3から選択される整数であり、rは0又は1であり、k及び各k’は
独立して、0、又は1~4から選択される整数であり、Y及び各Y’はN、O及びSから独立して選択され、各Zは、O、S、SiR 、CO、CR 、SO、PO、及びNR[式中、各Rは独立してH、又は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基である。]から独立して選択される。]
を有する、請求項1に記載の架橋シリコーン樹脂。
【請求項3】
請求項1に記載の架橋シリコーン樹脂の調製方法であって、前記方法は、初期シリコーン樹脂と架橋化合物とを反応させて、前記架橋シリコーン樹脂を得ることを含み、前記初期シリコーン樹脂は、ポリスチレン標準に基づいて較正したゲル浸透クロマトグラフィにより測定すると、1,500~100,000の重量平均分子量を有し、一般式(HSiO3/2n’[式中、n’は1である。]を有し、前記架橋化合物は、一般式(4):
-Z’-R (4)
[式中、各Rは独立して、末端エチレン性不飽和基を含み、Z’はアリーレン基を含む。]を有する、
方法。
【請求項4】
Z’は一般式(5):
-SiRR-X’-SiRR- (5)
[式中、各R及びRは独立して選択され、上記で定義されており、X’は一般式(3):
-(C6-k4-k)-[(Z)-(C6-k’4-k’Y’k’)]- (3)
[式中、pは0、又は1~3から選択される整数であり、rは0又は1であり、k及び各k’は独立して、0、又は1~4から選択される整数であり、Y及び各Y’はN、O、及びSから独立して選択され、各ZはO、S、SiR 、CO、CR 、SO、PO、及びNR[式中、各Rは独立してH、又は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基である。]から独立して選択される。]を有する二価の連結基である。]
を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
架橋シリコーン樹脂を用いるフィルムの形成方法であって、前記方法は、
前記架橋シリコーン樹脂を基材に適用して層を形成することと、
前記層をアニールして基材上にフィルムを形成することと、を含み、
前記架橋シリコーン樹脂が、請求項1又は2に記載の架橋シリコーン樹脂である、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法に従い形成したフィルム。
【請求項7】
0超~10マイクロメートルの厚さを有する、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
電子部品と、前記電子部品に隣接して配置されたフィルムと、を含む電子機器であって、前記フィルムは、請求項6又は7に記載のフィルムである、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年9月30日出願の米国仮特許出願第62/402,282号に対する優先権及びその全ての利点を主張するものであり、その内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は概して、シリコーン樹脂に関し、より具体的には、優れた物性を有するフィルムを形成する架橋シリコーン樹脂、並びに関連する方法、フィルム、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0003】
シリコーン樹脂は、当該技術分野において周知であり、様々な最終使用用途で利用されている。シリコーン樹脂は典型的には、Tシロキシ単位(RSiO3/2)、及び/又はQシロキシ単位(SiO4/2)[式中、Rは置換基である。]の存在に起因する三次元網目を含む。シリコーン樹脂の諸特性はとりわけ、架橋密度、及びシロキシ単位のモル分率に応じて異なる。架橋密度が増加することにより、典型的には、より大きな硬度及び/又は剛性を有するシリコーン樹脂が得られる。シリカ又はガラスは、Qシロキシ単位を含む。
【0004】
T樹脂、又はシルセスキオキサンは多くの場合、スピンオングラス(SOG)用途のために用いられ、これにより、T樹脂が基材に適用され、スピンして層となり、アニールされてスピンオングラス(SOG)フィルムが得られる。SOGフィルムは、液状の、例えば溶媒中のT樹脂から形成可能であり、その後アニールして、ガラスに類似する性質を有するSOGフィルムを得ることができるという点で望ましい。SOGフィルムの誘電特性により、特に電子機器業界での多くの最終使用用途が可能となる。
【0005】
しかし、ガラスとは異なり、SOGフィルムは多くの場合、脆性であり、高温ではひび割れを被る。これは特に、一定のSOGフィルム厚にて問題であり得る。したがって、耐熱性、及びひび割れへの耐性が、SOGフィルムの潜在的な最終使用用途、及びこのようなSOGフィルムを調製するのに好適なT樹脂を限定する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、架橋シリコーン樹脂を提供する。架橋シリコーン樹脂は、一般式(1):
(HSiO3/2(SiO3/2-X-SiO3/2 (1);
[式中、x+y=1となるように、x及びyはそれぞれ>0~<1であり、Xは、シラリレン(silarylene)基、又は-(CHSiRR[O(SiRRO)]SiRR-(CHq’-基[式中、nは1~10の整数であり、各R及びRは独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、q及びq’はそれぞれ独立して、0、又は1~6から選択される整数である。]を含む二価の基である。]
を有する。
【0007】
架橋シリコーン樹脂の調製方法もまた、開示される。本方法は、初期シリコーン樹脂と架橋化合物(bridging compound)とを反応させて、架橋シリコーン樹脂を得ることを含む。初期シリコーン樹脂は、一般式(HSiO3/2n’[式中、n’は1である。]を有する。架橋化合物は、一般式(4):
-Z’-R (4);
[式中、各Rは独立して、初期シリコーン樹脂のケイ素結合水素原子と反応性である官能基であり、Z’はアリーレン基又はシロキサン部分を含む。]
を有する。
【0008】
本発明は、架橋シリコーン樹脂を用いるフィルムの形成方法もまた提供する。本方法は、架橋シリコーン樹脂を基材に適用することを含む。本方法は、基材上の架橋シリコーン樹脂からフィルムを形成することを更に含む。本方法に従い形成したフィルムが更に、本発明により提供される。
【0009】
更に、本発明は電子機器を提供する。電子機器は、電子部品と、電子部品に隣接して配置された架橋シリコーン樹脂から形成されたフィルムと、を含む。
【0010】
最終的に、本発明は、電子機器の絶縁方法を提供する。本方法は、電子部品が20℃超~1,000℃の高温を有するように、電子機器を稼働させること(powering)を含む。フィルムは電子部品を絶縁し、高温におけるひび割れに対する実質的な耐性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、架橋シリコーン樹脂、及び架橋シリコーン樹脂の調製方法を提供する。架橋シリコーン樹脂は優れた諸特性を有し、多数の最終使用用途に好適である。例えば、架橋シリコーン樹脂は、誘電特性、高温での実質的な耐クラック性、及び耐熱性を含む優れた諸特性を有するフィルムを形成する。したがって、本発明は、架橋シリコーン樹脂を用いるフィルムの形成方法、及びそれにより形成したフィルムもまた提供する。フィルムの優れた物性の観点から、電子機器、及び電子機器の絶縁方法が更に提供される。しかし、架橋シリコーン樹脂の最終使用用途は、フィルム又は電子機器に限定されない。例えば、架橋シリコーン樹脂を組成物(例えば、接着剤、化粧品など)中の構成成分として利用することができ、架橋シリコーン樹脂を利用して、フィルム以外の物品を形成することなどができる。
【0012】
架橋シリコーン樹脂は、一般式(1):
(HSiO3/2(SiO3/2-X-SiO3/2 (1);
[式中、x+y=1となるように、x及びyはそれぞれ>0~<1であり、Xは、シラリレン基、又は-(CHSiRR[O(SiRRO)]SiRR-(CHq’-基[式中、nは1~10の整数であり、各R及びRは独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、q及びq’はそれぞれ独立して、0、又は1~6から選択される整数である。]を含む二価の基である。]
を有する。
【0013】
下付き文字x及びyはモル分率であり、x+y=1となるように、>0~<1から独立して選択される。特定の実施形態において、xは0.5~<1、あるいは0.6~<1、あるいは0.7~<1、あるいは0.8~<1である。これらの、又は他の実施形態において、yは>0~0.5、あるいは>0~0.4、あるいは>0~0.3、あるいは>0~0.2である。しかし、他の実施形態において、上記の具体的な例の範囲が反転するように、yはxよりも大きくてよい。
【0014】
Xは二価の基である。第1実施形態において、Xはシラリレン基を含む。シラリレン基は、少なくとも1個のケイ素結合アリーレン基を含む任意の二価の基であり得る。特定の実施形態において、アリーレン基は、X中の2個のケイ素原子間で結合される。Xがシラリレン基である場合を含む、Xの具体例は、以下に存在する。
【0015】
第2の実施形態において、Xは-(CHSiRR[O(SiRRO)]SiRR-(CHq’-基[式中、nは1~10の整数であり、各R及びRは独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、q及びq’はそれぞれ独立して、0、又は1~6から選択される整数である。]である。この第2の実施形態において、Xは二価のシロキサンと呼ばれる場合もある。対照的に、Xに関して上記した第1の実施形態において、シラリレン基としてのXは典型的には、シロキサン(Si-O-Si)結合を含有しない。
【0016】
各R及びRは独立して選択され、互いに同じであっても、又は異なっていてもよい。Rに関する本明細書のあらゆる記述はまた、独立してRにも適用され、その逆もまた同様である。R及び各Rは独立して直鎖状、分岐状、及び/又は環状であってよい。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、及び飽和又は非共役環状基を包含する。アリール基は単環式又は多環式であってよい。直鎖状及び分岐状ヒドロカルビル基は独立して、飽和又は不飽和であってよい。例えば、直鎖状ヒドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。直鎖状及び環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例は、アラルキル基である。「置換された」とは、1個以上の水素原子が、水素以外の原子(例えば、ハロゲン原子、例えば塩素、フッ素、臭素など)で置換され得る、又は、R及び/又はRの鎖内の1個の炭素原子が、炭素以外の1個の原子で置換され得る、即ち、R及び/又はRが、鎖内に1個以上のへテロ原子、例えば酸素、硫黄、窒素などを含み得ることを意味する。
【0017】
典型的には、各R及びRのヒドロカルビル基は独立して、アルキル又はアリール基を含む。アルキル基は典型的には、1~30個の炭素原子、あるいは1~24個の炭素原子、あるいは1~20個の炭素原子、あるいは1~12個の炭素原子、あるいは1~10個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1~3個の炭素原子、あるいは1又は2個の炭素原子を有する、あるいはメチル基である。アリール基は典型的には、5~9個の炭素原子、あるいは6~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有する。
【0018】
上記Xの第2の実施形態において、架橋シリコーン樹脂は、一般式:
(HSiO3/2(SiO3/2-(CHSiRR[O(SiRRO)]SiRR-(CHq’-SiO3/2[式中、x、q、R、R、n、q’、及びyは上記で定義されている。]を有する。特定の実施形態において、q及びq’はそれぞれ、0である。これは典型的には、架橋シリコーン樹脂が縮合反応により調製される場合である。別の実施形態において、q及びq’はそれぞれ、2である。これは典型的には、架橋シリコーン樹脂がヒドロシリル化反応により調製される場合である。後者の実施形態において、q及びq’のそれぞれは独立して2より大きい、例えば6である。2は、ヒドロシリル化反応がケイ素結合ビニル基を伴う場合のq及びq’に関して典型的であり、これらはそれぞれ、q及びq’により示される最適な二価の基となる。ヒドロシリル化反応は、ビニル基以外のケイ素結合基、例えばケイ素結合ヘキセニル基を伴ってよく、この場合、q及びq’は2以外である。
【0019】
Xの2つの実施形態を上記したが、架橋シリコーン樹脂は、Xにより表される、異なっており、かつ独立して選択される二価の基を有するシロキシ単位を含んでよい。異なる言い方をすると、架橋シリコーン樹脂は上記した2つの実施形態の組み合わせを含んでよい。
【0020】
上記したXの第1の実施形態において、Xはシラリレン基を含む。シラリレン基を含むXの具体的な一例は、以下の一般式(2):
-(CH-SiRR-X’-SiRR-(CHq’- (2);
[式中、q及びq’はそれぞれ独立して選択され、上記で定義されており、R及びRは独立して選択され、上記で定義されており、X’はアリーレン基を含む二価の連結基である。]
のものである。一般式(2)の実施形態において、アリーレン基(X’により表される)は、それぞれのSiRRブロック中の、2個の隣接したケイ素原子間で直接結合している。そのため、X’は、一般式(2)がシラリレン基を表すように、それ自体がアリーレン基であってよい、又は、X’は、X’自体が、Xの反対のSiRRブロック中にあるものに加えて、ケイ素原子を含むようにシラリレン基であってよい。
【0021】
上記の一般式(2)において、X’により表されるアリーレン基は、任意のアリーレン基であってよい。典型的には、X’は、Xがシラリレン基となるようなアリーレン基であるが、X’自体はシラリレン基を構成しない。これらの実施形態において、Xは依然としてシラリレン基を含むが、X’は単に、アリーレン基を含む。あるいは、X’及びXはそれぞれ、シラリレン基を含んでよい。
【0022】
X’がアリーレン基(ただしシラリレン基ではない)を含む場合、X’の具体的な一例は、一般式(3):
【0023】
【化1】
【0024】
[式中、pは0、又は1~3から選択される整数であり、rは0又は1であり、k及び各k’は独立して、0、又は1~4から選択される整数であり、Y及び各Y’はN、O及びSから独立して選択され、各Zは、O、S、SiR 、CO、CR 、SO、PO、及びNR[式中、各Rは独立してH、又は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基である。]から独立して選択される。]
で説明される。置換及び非置換ヒドロカルビル基の例は、R及びRに関して上記で説明される。
【0025】
上記のX’の実施形態において、それぞれk及びk’により示されるY及びY’は、一般式(3)の対応する芳香族構造体の一部であり得る任意のヘテロ原子である。典型的には、k及びk’はそれぞれ0であり、Y及びY’により表される任意のヘテロ原子がそれぞれ、不存在である。
【0026】
下付き文字rにより表されるZは任意のへテロ原子である、又は隣接した芳香族構造体間に存在する部分である。下付き文字rは、下付き文字pにより表されるブロックが0より大きい場合に、各反復ブロックがZを含み得る又は含み得ず、Zは、存在する任意の例から独立して選択されるように独立して選択される。
【0027】
rが0である場合、pは0であり、k’は0であり、X’は一般式-(C)-を有する。この特定の実施形態において、Xは、一般式-(CH-SiRR-(C)-SiRR-(CHq’-[式中、q、R、R、q’は上記で定義されている。]を有する。特定の実施形態において、q及びq’はそれぞれ、2である。X’、又は-(C)-は、ケイ素原子間で結合される。これらの結合は、-(C)-の任意の場所、即ちオルト、メタ、及び/又はパラ位に存在することができる。
【0028】
別の実施形態において、rは0であり、pは1である。k及びk’がそれぞれ0である場合、本実施形態において、X’は一般式:-(C)-(C)-を有し、Xは、-(CH-SiRR-(C)-(C)-SiRR-(CHq’-[式中、q、R、R、q’は上記で定義されている。]を有する。特定の実施形態において、q及びq’はそれぞれ、2である。X’、又は-(C)-(C)-は、ケイ素原子間で結合される。これらの結合は、それぞれの-(C)-の任意の場所、即ちオルト、メタ、及び/又はパラ位に存在することができる。
【0029】
更に他の実施形態において、rは1であり、pは1である。k及びk’がそれぞれ0である場合、X’は、例えば、Zの選択に応じて、以下の構造のいずれかを有し得る:
【0030】
【化2】
【0031】
は上記で定義されており、独立してH、又は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基である。これらは単に、X’に関しての好適な種の代表的な例である。
【0032】
X’に関して上記した具体例に関して、Xは、以下の対応する構造(X’の代表的な例が上記で説明されている順に提示)を有する:
【0033】
【化3】
【0034】
更にあるいは、別の実施形態において、rは1であり、p>1、即ち、pは2又は3である。これらの実施形態において、Zは独立して、pにより示される各ブロックに存在している、又は不存在であることができ、pにより示される2つ以上のブロック中に存在する場合、独立して選択されてよい。
【0035】
様々な実施形態において、架橋シリコーン樹脂は、ポリスチレン標準に基づいて較正したゲル浸透クロマトグラフィ技術(GPC)により測定すると、100~5,000、あるいは115~4,000、あるいは130~1,000の重量平均分子量(M)を有する。
【0036】
上記で説明したとおり、架橋シリコーン樹脂の調製方法(「調製方法」)もまた、開示される。調製方法は、初期シリコーン樹脂と架橋化合物とを反応させて、架橋シリコーン樹脂を得ることを含む。
【0037】
初期シリコーン樹脂は、一般式(HSiO3/2n’[式中、n’は1である。]を有する。初期シリコーン樹脂は水素シルセスキオキサン樹脂(HSQ)であり、これは、Tシロキシ単位を含む、あるいはから本質的になる、あるいはからなる樹脂である。水素シルセスキオキサン樹脂、及びその調製方法は、当技術分野において周知である。
【0038】
典型的には、初期シリコーン樹脂は典型的には、ポリスチレン標準に基づいて較正したゲル浸透クロマトグラフィ技術(GPC)により測定すると、1,500~100,000、あるいは2,000~50,000、あるいは3,000~30,000の重量平均分子量(M)を有する。
【0039】
架橋シリコーン樹脂を調製する際に、初期シリコーン樹脂はビヒクル、あるいは溶媒中に配置されてよい。ビヒクルは、初期シリコーン樹脂を担持するための、あるいは、初期シリコーン樹脂を少なくとも部分的に可溶化するための、あるいは初期シリコーン樹脂を可溶化するための、任意のビヒクルであってよい。
【0040】
好適なビヒクルの例としては、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、及びドデカンなどの飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン及びシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、及びメシチレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンなどの環状エーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノールなどのアルコール;メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、又はエチレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテル;トリクロロエタン、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、塩化メチレン、又はクロロホルムなどのハロゲン化アルカン;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;アセトニトリル;ホワイトスピリット;ミネラルスピリット;ナフサ;並びに、ブロモベンゼン及びクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素が挙げられるが、これらに限定されない。異なるビヒクルの組み合わせもまた、利用することができる。
【0041】
初期シリコーン樹脂がビヒクル中に配置される場合、ビヒクル及び初期シリコーン樹脂の相対量は、変化し得る。典型的には、相対量は、初期シリコーン樹脂とビヒクルとの混合物の、所望の粘性又は流動性に基づき選択される。特定の実施形態において、混合物は、混合物重量を基準として、0超~50重量%、あるいは2.5~47.5重量%、あるいは5~42.5重量%、あるいは7.5~40重量%、あるいは10~30重量%の量で初期シリコーン樹脂を含む。これらの実施形態において、混合物の残部は通常、ビヒクルである。
【0042】
特定の実施形態において、架橋化合物は、一般式(4):
-Z’-R (4);
[式中、各Rは独立して、初期シリコーン樹脂のケイ素結合水素原子と反応性である官能基であり、Z’はアリーレン基又はシロキサン部分を含む。]
を有する、方法。典型的には、各Rは、架橋成分中でケイ素結合している、即ち、Z’は各Rが結合するケイ素原子を含む。架橋化合物は、初期シリコーン樹脂との反応後に、架橋シリコーン樹脂中にXを形成する。
【0043】
初期シリコーン樹脂と架橋化合物の相対量は、これらの構成成分の選択、及び、架橋化合物中のR官能基に対する、初期シリコーン樹脂中のケイ素結合水素原子の所望の比、並びに、架橋シリコーン樹脂の所望の構造に左右される。架橋化合物中のR官能基に対する、初期シリコーン樹脂中のケイ素結合水素原子のモル比は、例えば40:1~1:1、あるいは20:1~2:1、あるいは10:1~5:1で変化し得る。
【0044】
特定の実施形態において、Z’は一般式(5):
-SiRR-X’-SiRR- (5);
[式中、各R及びRは独立して選択され、上記で定義され、X’は上記で定義されている。]
を有する。
【0045】
は、初期シリコーン樹脂のケイ素結合水素原子と反応性である。特定の実施形態において、Rはエチレン性不飽和基を含む。不飽和基は典型的には、Rの末端に存在する。このような実施形態では、Rは独立して、アルケニル基及び/又はアルキニル基であり得る。Rがエチレン性不飽和基を含む場合、架橋化合物と初期シリコーン樹脂との反応は、ヒドロシリル化反応である。
【0046】
架橋化合物の各Rがビニル基である場合、そしてZ’がアリーレン基を含む場合、架橋シリコーン樹脂に関する上記Xの代表的な例に概ね対応する、好適な架橋化合物の代表的な例が以下に存在する(上記したものと同じ順序):
【0047】
【化4】
【0048】
[式中、R及びRは上記で定義されている。]。
【0049】
上記の代表的な例において、各Rはケイ素結合ビニルである。これらの代表的な例において、架橋化合物のZ’は、アリーレン化合物として、上記の一般式(5)のとおりのシラリレン化合物を含む。しかし、一般式は、各Rに起因し、Z’に起因しないケイ素原子と異なって提示されることがあり、Z’はアリーレン化合物であり、各Rは、これらの特定の実施形態において、-SiRR-CH=CHである。更に、上記のアリーレン基はシロキサン部分と置き換えることができ、かつ/又は、上記のビニル基はヒドロキシル基と置き換えることができる。
【0050】
架橋シリコーン樹脂のXが-(CHSiRR[O(SiRRO)]SiRR-(CHq’-である場合、q及びq’がそれぞれ2である場合の架橋された化合物(bridged compound)の具体的な一例は、CH=CH-SiRR[O(SiRRO)]SiRR-CH=CH[nは上記で定義されている。]である。これは、それぞれ2であるq及びq’に対応する。本実施形態において、Rは再び、ケイ素結合ビニルであり、Z’はシロキサン部分、この場合は、SiRR[O(SiRRO)]SiRRである。
【0051】
架橋化合物と初期シリコーン樹脂とのヒドロシリル化反応は、典型的にはヒドロシリル化反応用触媒の存在下で生じ、この触媒は、白金族金属又は白金族金属含有化合物を含む、周知のヒドロシリル化反応用触媒のいずれかであることができる。
【0052】
白金族金属とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金、並びにこれらの任意の錯体を意味する。典型的には、白金族金属は、ヒドロシリル化反応におけるその高い活性に基づき、白金である。ヒドロシリル化反応用触媒に有用な、白金族金属含有触媒としては、Willingによる米国特許第3,419,593号、及びBrownらによる同5,175,325号により記載されているとおりに調製される白金錯体が挙げられ、これらの明細書はそれぞれ、このような錯体及びその調製を示すために、参照として本明細書に組み込まれている。有用な白金族金属含有触媒の他の例を、Leeらによる米国特許第3,989,668号、Changらによる米国特許第5,036,117号、Ashbyによる米国特許第3,159,601号、Larnoreauxによる米国特許第3,220,972号、Chalkらによる米国特許第3,296,291号、Modicによる米国特許第3,516,946号、Karstedtによる米国特許第3,814,730号、Chandraらによる米国特許第3,928,629号、に見出すことができ、その全容は参照により本明細書に組み込まれ、有用な白金族金属含有触媒及びそれらの調製方法を示す。白金族含有触媒は、白金族金属、シリカゲル若しくは粉末木炭等の担体上に付着した白金族金属、又は白金族金属の化合物若しくは錯体であってよい。白金含有触媒の具体例としては、六水和物型若しくは無水物型いずれかの塩化白金酸、及び又は、塩化白金酸を、ジビニルテトラメチルジシロキサン等の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させること、を含む、方法により得られる白金含有触媒、又は米国特許第6,605,734号に記載のとおりのアルケン-白金-シリル錯体が挙げられる。これらのアルケン-白金-シリル錯体は、例えば、0.015モルの(COD)PtClを、0.045モルのCOD及び0.0612モルのHMeSiClと混合することにより調製することができる。
【0053】
ヒドロシリル化触媒は、その表面に白金族金属を有する固体支持体を含む担持ヒドロシリル化触媒であることもできる。担持触媒の例としては、白金担持炭素、パラジウム担持炭素、ルテニウム担持炭素、ロジウム担持炭素、白金担持シリカ、パラジウム担持シリカ、白金担持アルミナ、パラジウム担持アルミナ、及びルテニウム担持アルミナが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
ヒドロシリル化反応用触媒はまた、あるいは、照射及び/又は加熱により硬化を開始し得る、光活性可能なヒドロシリル化反応用触媒であることができる。光活性可能なヒドロシリル化反応用触媒は、特に、150~800ナノメートル(nm)の波長を有する放射線に曝露すると、ヒドロシリル化反応を触媒可能な任意のヒドロシリル化反応用触媒であることができる。光活性可能なヒドロシリル化触媒は、白金族金属又は白金族金属を含有する化合物を含む、周知のヒドロシリル化触媒の任意のものとすることができる。白金族金属としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが挙げられる。典型的には、白金族金属は、ヒドロシリル化反応におけるその高い活性に基づき、白金である。本発明の組成物にて使用するための、特定の光活性可能なヒドロシリル化反応用触媒の適合性は、ルーチン実験により速やかに測定することができる。
【0055】
本発明の目的に好適な光活性可能なヒドロシリル化反応用触媒の具体例としては、白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオアート)、白金(II)ビス(2,4-ヘキサンジオアート)、白金(II)ビス(2,4-ヘプタンジオアート)、白金(II)ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオアート)、白金(II)ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオアート)、白金(II)ビス(1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオアート)などの、白金(II)β-ジケトナート錯体;(Cp)トリメチル白金、(Cp)エチルジメチル白金、(Cp)トリエチル白金、(クロロ-Cp)トリメチル白金、及び(トリメチルシリル-Cp)トリメチル白金などであって、Cpがシクロペンタジエニルを表す、(η-シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体;[Pt[CNNNOCH、Pt[p-CN-CNNNOC11、Pt[p-HCOCNNNOC11、Pt[p-CH(CH-CNNNOCH、1,5-シクロオクタジエンPt[p-CN-CNNNOC11、1,5-シクロオクタジエンPt[p-CHO-CNNNOCH、[(CP]Rh[p-CN-CNNNOC11]、及びPd[p-CH(CH-CNNNOCH(式中、xは1、3、5、11、又は17である)等のトリアゼンオキシド-遷移金属錯体;(η-1,5-シクロオクタジエニル)ジフェニル白金、(η-1,3,5,7-シクロオクタテトラエニル)ジフェニル白金、(η-2,5-ノルボラジエニル)ジフェニル白金、(η-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-ジメチルアミノフェニル)白金、(η-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-アセチルフェニル)白金、及び(η-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-トリフルオロメチルフェニル)白金等の、(η-ジオレフィン)(σ-アリール)白金錯体が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、光活性可能なヒドロシリル化反応用触媒は、Pt(II)β-ジケトナート錯体であり、より典型的には、触媒は白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオアート)である。ヒドロシリル化反応用触媒は、単一の光活性可能なヒドロシリル化反応用触媒、又は2種以上の異なる光活性可能なヒドロシリル化反応用触媒を含む混合物であることができる。
【0056】
ヒドロシリル化反応用触媒の濃度は、架橋化合物と初期シリコーン樹脂とのヒドロシリル化反応を触媒するのに十分なものである。ヒドロシリル化反応用触媒の濃度は、典型的には、架橋化合物及び初期シリコーン樹脂の総合重量を基準にして、0.1~1000ppmの白金族金属、あるいは0.5~100ppmの白金族金属、あるいは1~25ppmの白金族金属を提供する。
【0057】
これらの、又は他の実施形態において、Rはヒドロキシル基を含む、あるいは、Rはヒドロキシル基である。これらの実施形態において、架橋化合物と初期シリコーン樹脂との反応は、縮合反応である。
【0058】
これらの実施形態において、Rは最初に、任意の加水分解性基であってよい。加水分解性基はまず、水の存在下にて加水分解を受けてヒドロキシル基を得、続いて、初期シリコーン樹脂のケイ素結合水素原子と縮合して、架橋シリコーン樹脂を(そして水を副生成物として)得る。これらの実施形態において、架橋された化合物は加水分解を受け、続いて初期シリコーン樹脂と縮合することができる。
【0059】
ケイ素に結合した際の加水分解性基の例としては、H、ハロゲン化物基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、カルボキシ基、アルキルイミノキシ基、アルケニルオキシ、及びN-アルキルアミド基が挙げられる。
【0060】
架橋シリコーン樹脂のXが-(CHSiRR[O(SiRRO)]SiRR-(CHq’-である場合、架橋された化合物の具体的な一例は、OH-SiRR[O(SiRRO)]SiRR-OH[nは上記で定義されている。]である。これは、それぞれ0であるq及びq’に対応する。本実施形態において、Rはケイ素結合ヒドロキシルであり、Z’はシロキサン部分、この場合は、SiRR[O(SiRRO)]SiRR[式中、nは上記で定義されている。]である。
【0061】
架橋化合物と初期シリコーン樹脂との縮合反応は、典型的には、任意の縮合触媒であることができる触媒の存在下で生じる。
【0062】
好適な縮合触媒の例としては、カルボン酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、及び/又は吉草酸などの酸;塩基;ジブチルスズジオクトエート、鉄ステアレート、及び/又は鉛オクトエートなどの有機酸の金属塩;テトライソプロピルチタネート及び/又はテトラブチルチタネートなどのチタン酸エステル;アセチルアセトナトチタンなどのキレート化合物;例えば、好適なヒドロシリル化反応用触媒として上記で説明したもののいずれかを含む、白金含有触媒などの遷移金属触媒;アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。利用する場合、縮合触媒は典型的には触媒量、例えば、架橋化合物及び初期シリコーン樹脂の総合重量を基準にした100重量部に対して、0超~5重量%、あるいは0.0001~1重量%、あるいは0.001~0.1重量%の量で利用される。
【0063】
がエチレン性不飽和基を含む場合、下付き文字q及びq’はそれぞれ、典型的には架橋シリコーン樹脂のX中において少なくとも2である。Rがヒドロキシル基である場合、下付き文字q及びq’はそれぞれ、典型的には、架橋シリコーン樹脂のX中において0である。
【0064】
架橋シリコーン樹脂を得る反応は、周囲条件にて、又は修正条件にて実施することができる。例えば、反応は高温(例えば、周囲温度より高く100℃以下)で、撹拌/剪断下にて、真空下にて、不活性雰囲気下にて、などで実施することができる。架橋シリコーン樹脂は典型的には反応混合物中で形成され、調製方法は、例えば濾過により、反応混合物から架橋シリコーン樹脂を単離することを更に含んでよい。
【0065】
当業者は速やかに、このような架橋化合物の調製方法を理解する。ほんの一例として、Xが-(CH-Si(CH-(C)-O-(C)-Si(CH-(CH-である場合、架橋化合物は、以下の反応機構に従い形成することができる:
【0066】
【化5】
【0067】
ここで、Viはビニル基を示し、Meはメチル基を示す。
【0068】
初期シリコーン樹脂及び架橋化合物は、架橋シリコーン樹脂の所望の最終性質に応じて、様々な量又は比で反応させることができる。特定の実施形態において、架橋化合物は、架橋化合物及び初期シリコーン樹脂の総合重量を基準にして、0超~30重量%、あるいは0超~20重量%、あるいは0超~15重量%、あるいは0超~10重量%の量で利用される。
【0069】
本発明は、架橋シリコーン樹脂を用いるフィルムの形成方法(「フィルムの調製方法」)もまた提供する。フィルムの調製方法は、架橋シリコーン樹脂を基材に適用することを含む。フィルムの調製方法は、基材上の架橋シリコーン樹脂からフィルムを形成することを更に含む。架橋シリコーン樹脂を用いるフィルムの形成は、架橋シリコーン樹脂又はフィルムにて、任意の物理的及び/又は化学的変化が存在するかしないかに関わらず、架橋シリコーン樹脂を基材に単に適用することと、乾燥させることと、アニールすることと、を包含する。
【0070】
特定の実施形態において、架橋シリコーン樹脂を基材に適用することは、架橋シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物とビヒクルとを基材に適用することを含む。ビヒクルは架橋シリコーン樹脂を担持し得る、あるいは部分的に可溶化し得る、あるいは完全に可溶化し得る。ビヒクルは概ね、シリコーン組成物が湿潤形態で適用されることができるように、シリコーン組成物の粘性を低下させる。
【0071】
ビヒクルは、任意の好適なビヒクルであってよい。好適なビヒクルの例としては、n-ペンタン、ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、及びドデカンなどの飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン及びシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、及びメシチレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)及びジオキサンなどの環状エーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノールなどのアルコール;メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、又はエチレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテル;トリクロロエタン、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、塩化メチレン、又はクロロホルムなどのハロゲン化アルカン;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;アセトニトリル;ホワイトスピリット;ミネラルスピリット;ナフサ;並びに、ブロモベンゼン及びクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素が挙げられるが、これらに限定されない。複数のビヒクルの組み合わせもまた、利用することができる。
【0072】
シリコーン組成物中での架橋シリコーン樹脂の相対量は、変化し得る。様々な実施形態において、シリコーン組成物は、全て、シリコーン組成物の総重量を基準にして、5~75重量%、あるいは10~60重量%、あるいは15~55重量%、あるいは20~50重量%、あるいは10~30重量%、あるいは30~50重量%、あるいは12±2重量%、あるいは14±2重量%、あるいは16±2重量%、あるいは18±2重量%、あるいは20±2重量%、あるいは25±2重量%、あるいは30±2重量%、あるいは35±2重量%、あるいは40±2重量%、あるいは45±2重量%、あるいは50±2重量%、あるいは55±2重量%、あるいは60±2重量%、あるいは65±2重量%の量の架橋シリコーン樹脂を含む。
【0073】
架橋シリコーン樹脂(それ自体、又はシリコーン組成物中の)を適用することには、任意の好適な適用技術が含まれてよい。典型的には、シリコーン組成物はウェットコーティング技術により、湿潤形態で適用される。特定の実施形態において、架橋シリコーン樹脂は、i)スピンコーティング;ii)ブラシコーティング;iii)ドロップコーティング;iv)スプレーコーティング;v)ディップコーティング;vi)ロールコーティング;vii)フローコーティング;viii)スロットコーティング;ix)グラビアコーティング;又はx)i)~ix)のいずれかの組み合わせにより適用される。
【0074】
特定の実施形態において、架橋シリコーン樹脂はスピンコーティングにより適用される。これらの実施形態において、シリコーン組成物は、デバイスウエハ(例えば、半導体デバイスウエハ、例えばヒ化ガリウムウエハ、シリコン(Si)ウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ、上に配置されたSiOx’層を有するSiウエハ、又は、上に配置されるSiN層を有するSiウエハ)などの基材上に分配され、湿潤堆積物が得られる。下付き文字x’は、酸化ケイ素層中のケイ素原子1個あたりの、酸素原子の平均数を表す、有理数又は無理数である。典型的には、x’は1~4である。
【0075】
次に、湿潤堆積物及び基材を一定時間スピンコートし、スピン層を得る。基材上への湿潤堆積物のスピンコーティングにおいて、スピンコーティングを、最大スピン速度、及び、所望のスピン層の厚さを得るのに十分なスピン時間で実施してよい。最大スピン速度は、400~5,000、あるいは500~4,000、あるいは800~3,000毎分回転数(rpm)であってよい。
【0076】
ウエハ上への湿潤堆積物のスピンコーティングにおいて、スピン時間は0.5秒~10分であってよい。スピン時間は固定されてよい、例えば、30秒~2分で一定に維持されてよく、従来のスピンコーター装置を使用する当業者は次いで速やかに、スピン速度を調節して、特定の厚さを得ることができる。
【0077】
特定の実施形態において、フィルムの調製方法は、スピン層をアニールして、基材上にフィルムを形成することを更に含む。スピン層がアニールされると、フィルムは、スピンオングラス(SOG)層又はフィルムと呼ばれる場合がある。スピン層は典型的には、湿っている。そのため、例えば、スピン層の架橋シリコーン樹脂をアニーリングする前にスピン層から任意のビヒクルを移動させてフィルムを得るために、スピン層をアニーリングの前に、加熱してよい。
【0078】
典型的には、基材は一体化されたホットプレート、又は一体化された若しくは独立した焼成炉を有し、この炉は石英で裏打ちされていてもよい。基材及びスピン層を、例えば3個のホットプレート上で連続して、125~175℃、例えば150℃;次に175~225℃、例えば200℃、そして次に325~375℃、例えば350℃の温度で、それぞれ一定時間加熱する。一定時間は0秒超~10分、あるいは約1分であってよい。加熱工程では、あらゆるビヒクルを、架橋シリコーン樹脂から分離したシリコーン組成物から移動させ、乾燥フィルムを得る。加熱工程が開始するとまた、最終のアニーリングの前に、架橋シリコーン樹脂内で構造変化が開始する。環境湿度及び水は、架橋シリコーン樹脂内のT単位の更なる加水分解及び/又は縮合により、Q単位を得ることに寄与し得る。特定の実施形態において、上記の加熱工程の後、乾燥フィルムを周囲条件及び相対湿度に曝露してよい。
【0079】
次に、乾燥フィルムは典型的には、約300~900、あるいは350~500、あるいは375~425℃の温度でのアニーリングを受ける。概ね、アニーリングは不活性環境、例えば窒素下にて生じる。酸化によるSi-H結合の分離は典型的には、360℃を超える温度で生じる。しかし、少なくともいくつかのSi-H結合は概ね、アニーリングの後でも残る。
【0080】
フィルムは基材に(物理的に、及び/若しくは化学的に)結合することができる、又は、フィルムは基材から剥離可能である、あるいは別様においては取り外し可能であることができる。フィルムは基材に、物理的に結合することができる、及び/又は基材に化学的に結合することができる。
【0081】
様々な実施形態において、フィルムは、その最終使用用途に応じて、更なる処理を受ける。例えば、フィルムは、酸化物付着(例えば、SiO付着)、レジスト付着、及びパターニング、エッチング、化学ストリッピング若しくはプラズマストリッピング、金属被覆、又は金属付着を受けることができる。このような更なる処理技術は、周知である。このような付着は、化学蒸着(低圧化学蒸着、プラズマ誘起化学蒸着、及びプラズマ補助化学蒸着)、物理蒸着、又は他の真空蒸着技術であってよい。多くのこのような更なる処理技術には、高温、特に真空蒸着を伴い、優れた耐熱性の観点から、フィルムが十分に適している。
【0082】
フィルムは、最終使用用途に応じて変化し得る厚さを有する。典型的には、フィルムは、0超~10マイクロメートル(μm)、あるいは1.5~10マイクロメートル(μm)の厚さを有する。しかし、他の厚さ、例えば0.1~200μmも想到される。例えば、フィルムの厚さは、0.2~175μm;あるいは0.5~150μm;あるいは0.75~100μm;あるいは1~75μm;あるいは2~60μm;あるいは3~50μm;あるいは4~40μm;あるいは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90、100、150、175、及び200μmのいずれか1つであってよい。
【0083】
フィルムは、特に従来のスピンオングラス(SOG)フィルムと比較して、優れた物性を有する。例えば、多くの従来のSOGフィルムは、不十分な耐熱性を備えて脆性である。しかし、本発明のフィルムは、ひび割れに対して実質的な耐性を有し、高温での優れた耐熱性を有する。例えば、特定の実施形態において、フィルムは、i)100~1,000℃;ii)400~850℃;又はiii)i)及びii)の両方の高温まで加熱した際に、実質的にひび割れに耐える。
【0084】
本明細書で使用される場合、ひび割れに対する実質的な耐性とは、光学及び/又は走査電子顕微鏡下で目視により検査した場合、窒素下にて、500℃で60分加熱した場合に、フィルムが1.5マイクロメートル(μm)の厚さにてひび割れを示さないことを意味する。
【0085】
フィルムは、優れた耐熱性、及びパターニングへのエッチ選択性(フィルムが、上記で説明した更なる処理を受ける場合)もまた有する。
【0086】
本発明は、電子機器もまた提供する。電子機器は、電子部品と、電子部品に隣接して配置されるフィルムと、を含む。「隣接した」とは、フィルムが電子部品と隣接して、そして接触して、あるいは隣接するが離れて配置されることを意味する。フィルムが形成される基材は、電子機器の電子部品であってよい。
【0087】
電子機器は限定されず、「マイクロ電子機器」及び/又は「電子回路」とも呼ばれる場合がある。これらの代表的な例としては、シリコン系デバイス、ヒ化ガリウムデバイス、フォーカルプレーンアレイ、光学電子デバイス、光起電力セル、光デバイス、誘電体層、トランジスタのようなデバイスを作製するためのドープ誘電体層、キャパシタ及びキャパシタのようなデバイスを作製するための、シリコン含有色素充填バインダ系、多層デバイス、3Dデバイス、シリコンオンインシュレータ(SOI)デバイス、超格子デバイスなどが挙げられる。
【0088】
電子機器の電子部品は典型的には、半導電性構成部品、あるいは導電性構成部品である。フィルムは優れた誘電特性を有し、このような半導電性構成部品を、熱及び/又は電流から絶縁することができる。しかし、電気部品は、電気デバイスの任意の構成部品であることができ、これらは周知である。熱は、電気デバイスが利用される環境又は周囲条件に起因し得る。あるいは、熱は、電子機器の使用及び稼働に起因し得、概ね、電気機器の少なくとも様々な電気部品、特にこれらの導電性構成部品において、熱の発生をもたらす。
【0089】
電子機器の絶縁方法もまた、提供される。本方法は、電子部品が20℃超~1,000℃の高温を有するように、電子機器を稼働させることを含む。フィルムは電子部品を絶縁し、上記のとおり、高温にてひび割れに対する実質的な耐性を示す。フィルムの優れた誘電特性により、絶縁は典型的には、高温時の熱の絶縁、及び電子機器を稼働させる際の電流の絶縁にまで及ぶ。
【0090】
実施形態1は、一般式(1):
(HSiO3/2(SiO3/2-X-SiO3/2 (1);
[式中、x+y=1となるように、x及びyはそれぞれ>0~<1であり、Xは、シラリレン基、又は-(CHSiRR[O(SiRRO)]SiRR-(CHq’-基[式中、nは1~10の整数であり、各R及びRは独立して選択される置換又は非置換ヒドロカルビル基であり、q及びq’はそれぞれ独立して、0、又は1~6から選択される整数である。]を含む二価の基である。]
を有する。
【0091】
実施形態2は、Xが一般式(2):
-(CH-SiRR-X’-SiRR-(CHq’- (2);
[式中、q及びq’はそれぞれ独立して選択され、上記で定義されており、R及びRは独立して選択され、上記で定義されており、X’はアリーレン基を含む二価の連結基である。]
を有する、実施形態1に記載の架橋シリコーン樹脂に関する。
【0092】
実施形態3は、X’が一般式(3):
【0093】
【化6】
【0094】
[式中、pは0、又は1~3から選択される整数であり、rは0又は1であり、k及び各k’は独立して、0、又は1~4から選択される整数であり、Y及び各Y’はN、O及びSから独立して選択され、各Zは、O、S、SiR 、CO、CR 、SO、PO、及びNR[式中、各Rは独立してH、又は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基である。]から独立して選択される。]
を有する、実施形態2に記載の架橋シリコーン樹脂に関する。
【0095】
実施形態4は、実施形態1に記載の架橋シリコーン樹脂の調製方法に関する。実施形態4の方法は、初期シリコーン樹脂と架橋化合物とを反応させて、架橋シリコーン樹脂を得ることを含み、
初期シリコーン樹脂は、一般式(HSiO3/2n’[式中、n’は1である。]を有し、
架橋化合物は一般式(4):
-Z’-R (4);
[式中、各Rは独立して、初期シリコーン樹脂のケイ素結合水素原子と反応性である官能基であり、Z’はアリーレン基又はシロキサン部分を含む。]
を有する。
【0096】
実施形態5は、Z’が一般式(5):
-SiRR-X’-SiRR- (5);
[式中、各R及びRは独立して選択され、上記で定義されており、
X’は一般式(3):
【0097】
【化7】
【0098】
[式中、pは0、又は1~3から選択される整数であり、rは0又は1であり、k及び各k’は独立して、0、又は1~4から選択される整数であり、Y及び各Y’はN、O及びSから独立して選択され、各Zは、O、S、SiR 、CO、CR 、SO、PO、及びNR[式中、各Rは独立してH、又は置換若しくは非置換ヒドロカルビル基である。]から独立して選択される。]を有する、二価の基である。]
を有する、実施形態4に記載の方法に関する。
【0099】
実施形態6は、初期シリコーン樹脂と架橋化合物とを反応させることが、(i)ヒドロシリル化反応;(ii)縮合反応;又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせを含む、実施形態4又は5に記載の方法に関する。
【0100】
実施形態7は、初期シリコーン樹脂と架橋化合物とが触媒の存在下で反応する、実施形態4~6のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0101】
実施形態8は、架橋シリコーン樹脂を用いるフィルムの形成方法に関する。実施形態8の方法は、
架橋シリコーン樹脂を基材に適用することと、
架橋シリコーン樹脂からのフィルムを基材上に形成することと、を含み、
架橋シリコーン樹脂は実施形態1~3のいずれか1つに記載の架橋シリコーン樹脂である。
【0102】
実施形態9は、架橋シリコーン樹脂を適用することが、架橋シリコーン樹脂とビヒクルとを含むシリコーン組成物を適用することを含む、実施形態8に記載の方法に関する。
【0103】
実施形態10は、架橋シリコーン樹脂が、i)スピンコーティング;ii)ブラシコーティング;iii)ドロップコーティング;iv)スプレーコーティング;v)ディップコーティング;vi)ロールコーティング;vii)フローコーティング;viii)スロットコーティング;ix)グラビアコーティング;又はx)i)~ix)のいずれかの組み合わせにより適用される、実施形態8又は9に記載の方法に関する。
【0104】
実施形態11は、
シリコーン組成物を基材上でスピンさせて、基材上にスピン層を形成することと、
スピン層をアニールして基材上にフィルムを形成することと、
を更に含む実施形態9の方法に関する。
【0105】
実施形態12は、実施形態8~11のいずれかに記載の方法に従い形成したフィルムに関する。
【0106】
実施形態13は、0超~10ミクロンの厚さを有する、実施形態12のフィルムに関する。
【0107】
実施形態14は、i)100~1,000℃;ii)400~850℃;又はiii)i)及びii)の両方の温度まで加熱した際に、実質的にひび割れに耐える、実施形態12又は13に記載のフィルムに関する。
【0108】
実施形態15は、
電子部品と、
電子部品に隣接して配置されたフィルムと、
を含み、
フィルムが、実施形態12~14のいずれか1つに記載のフィルムである、電子機器に関する。
【0109】
実施形態16は、実施形態15の電子機器の使用に関する。
【0110】
実施形態17は、電子部品と、電子部品に隣接して配置されたフィルムと、を含む電子機器の絶縁方法に関する。実施形態17の方法は、
電子部品が20℃超~1,000℃の高温を有するように、電子機器を稼働させること
を含み、
フィルムは、実施形態12~14のいずれか1つに記載のフィルムであり、
フィルムは電子部品を絶縁し、高温におけるひび割れに対する実質的な耐性を示す。
【0111】
電子機器の電子部品は典型的には、半導電性構成部品、あるいは導電性構成部品である。フィルムは優れた誘電特性を有し、このような半導電性構成部品を、熱及び/又は電流から絶縁することができる。しかし、電気部品は、電気デバイスの任意の構成部品であることができ、これらは周知である。熱は、電気デバイスが利用される環境又は周囲条件に起因し得る。あるいは、熱は、電子機器の使用及び稼働に起因し得、概ね、電気機器の少なくとも様々な電気部品、特にこれらの導電性構成部品において、熱の発生をもたらす。
【0112】
電子機器の絶縁方法もまた、提供される。本方法は、電子部品が20℃超~1,000℃の高温を有するように、電子機器を稼働させることを含む。フィルムは電子部品を絶縁し、上記のとおり、高温にてひび割れに対する実質的な耐性を示す。フィルムの優れた誘電特性により、絶縁は典型的には、高温時の熱の絶縁、及び電子機器を稼働させる際の電流の絶縁の両方にまで及ぶ。
【0113】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。本明細書で様々な実施形態の具体的な特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュグループの各メンバーは、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0114】
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び総じて、添付の特許請求の範囲内に入り、たとえ、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者は、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点を含む個々の数(又は分数)、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0115】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例
【0116】
本発明に従った架橋シリコーン樹脂を、以下で調製する。架橋シリコーン樹脂を調製する前に、特定の架橋化合物をまず調製する。
【0117】
調製例1:架橋化合物1
架橋化合物(架橋化合物1)を、グリニャール試薬により作製する。具体的に言えば、100グラムのp-ジブロモベンゼン、10グラムのマグネシウム、及び400グラムのジエチルエーテルをフラスコに配置し、混合物を形成する。混合物を加熱して還流し、還流状態にて6時間保持した後、室温まで冷却する。56.3グラムのビニルジメチルクロロシランをフラスコに配置し、フラスコの内容物を2時間撹拌する。ロータリーエバポレーターを使用して、フラスコからあらゆる揮発物を除去し、濃縮物を残す。濃縮物を次に、真空蒸留にて精製して架橋化合物1を単離し、これは4-ビス(ビニルジメチルシリル)ベンゼンである。
【0118】
調製例2:架橋化合物2
第2の架橋化合物(架橋化合物2)を、グリニャール試薬により作製する。具体的に言えば、100グラムのジブロモフェノキシ、10グラムのマグネシウム、及び400グラムのジエチルエーテルをフラスコで混ぜ合わせ、混合物を形成する。混合物を加熱して還流し、還流状態にて12時間保持した後、室温まで冷却する。40.5グラムのビニルジメチルクロロシランをフラスコに添加し、フラスコの内容物を2時間撹拌する。ロータリーエバポレーターを使用して、フラスコからあらゆる揮発物を除去し、濃縮物を残す。次に、濃縮物を真空蒸留にて精製し、架橋化合物2を単離し、これは4-ビス(ビニルジメチルシリル)フェノキシベンゼンである。
【実施例1】
【0119】
架橋シリコーン樹脂(架橋シリコーン樹脂1)を、本発明に従い作製する。
【0120】
具体的には、100グラムの水素シルセスキオキサン樹脂(12,000の分子量;トルエン中に32.0重量%)、3.2グラムの架橋化合物1、及び0.01グラムのKarstedt’s白金(Pt)触媒をフラスコで混ぜ合わせ、混合物を形成する。混合物を加熱して還流し、還流状態にて48時間撹拌し、シリコーン樹脂混合物を形成する。次に、シリコーン樹脂混合物を60℃まで冷却し、5グラムの活性炭をフラスコに配置して、懸濁液を形成する。次に、懸濁液を濾過し、濾液を、ロータリーエバポレーターを使用してプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と溶媒交換し、PGMEA溶液中に20重量%の架橋シリコーン樹脂1を形成する。架橋シリコーン樹脂1は、一般式(HSiO3/2(SiO3/2-CHCH-SiMe-C-SiMe-CHCH-SiO3/2[式中、xは0.979であり、yは0.021であり、Meはメチル基を示す。]を有する。
【実施例2】
【0121】
架橋シリコーン樹脂(架橋シリコーン樹脂2)を、本発明に従い作製する。
【0122】
具体的には、100グラムの水素シルセスキオキサン樹脂(12,000の分子量;トルエン中に32.0重量%)、1.6グラムの架橋化合物1、及び0.01グラムの白金(Pt)触媒をフラスコで混ぜ合わせ、混合物を形成する。混合物を加熱して還流し、還流状態にて48時間撹拌し、シリコーン樹脂混合物を形成する。次に、シリコーン樹脂混合物を60℃まで冷却し、5グラムの活性炭をフラスコに配置して、懸濁液を形成する。次に、懸濁液を濾過し、濾液を、ロータリーエバポレーターを使用してプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と溶媒交換し、PGMEA溶液中に20重量%の架橋シリコーン樹脂2を形成する。架橋シリコーン樹脂2は、一般式(HSiO3/2(SiO3/2-CHCH-SiMe-C-SiMe-CHCH-SiO3/2[式中、xは0.989であり、yは0.011であり、Meはメチル基を示す。]を有する。
【実施例3】
【0123】
架橋シリコーン樹脂(架橋シリコーン樹脂3)を、本発明に従い作製する。
【0124】
具体的には、100グラムの水素シルセスキオキサン樹脂(12,000の分子量;トルエン中に32.0重量%)、3.2グラムの架橋化合物2、及び0.01グラムの白金(Pt)触媒をフラスコで混ぜ合わせ、混合物を形成する。混合物を加熱して還流し、還流状態にて一晩撹拌してシリコーン樹脂混合物を形成する。次に、シリコーン樹脂混合物を60℃まで冷却し、活性炭をフラスコに配置して、10重量%の活性炭を含む懸濁液を形成する。次に、懸濁液を濾過し、濾液を、ロータリーエバポレーターを使用してプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と溶媒交換し、PGMEA溶液中に20重量%の架橋シリコーン樹脂3を形成する。架橋シリコーン樹脂3は、一般式(HSiO3/2(SiO3/2-CHCH-SiMe-C-O-C-SiMe-CHCH-SiO3/2[式中、xは0.983であり、yは0.017であり、Meはメチル基を示す。]を有する。
【実施例4】
【0125】
架橋シリコーン樹脂(架橋シリコーン樹脂4)を、本発明に従い作製する。
【0126】
具体的には、100グラムの水素シルセスキオキサン樹脂(12,000の分子量;トルエン中に32.2重量%)、2グラムの架橋化合物3(ヒドロキシル末端フェニルメチルオルガノポリシロキサン、4の平均重合度(DP)を有する)、及び0.2グラムの4-エチルモルホリンをフラスコで混ぜ合わせ、混合物を形成する。混合物を60℃まで加熱し、12時間撹拌した。2.0グラムの酢酸をフラスコに配置し、シリコーン樹脂混合物を得る。次に、シリコーン樹脂混合物を脱イオン水にて洗浄し、ロータリーエバポレーターを使用してプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と溶媒交換し、PGMEA溶液中に20重量%の架橋シリコーン樹脂4を形成する。架橋シリコーン樹脂4は、一般式(HSiO3/2(SiO3/2-(SiPhMeO)-SiO3/2[式中、xは0.992であり、yは0.008であり、Meはメチル基であり、Phはフェニル基を示し、nは4である。]を有する。
【0127】
フィルムのコーティング及び特性決定
実施例1~4で形成した架橋シリコーン樹脂のPGMEA溶液を利用して、基材、特にウエハ上にフィルムを形成することができる。特定のPGMEA溶液を、0.2ミリメートル(mm)のTEFLON(登録商標)フィルタで濾過し、次に、標準的な片面4インチ研磨低抵抗性ウエハ、又は両面研磨フーリエ変換赤外分光法(Karl Suss CT62スピンコーターによるFTIRウエハ、SUSS MicroTec Inc.of Corona,CAより市販)上にスピンコートし、スピンフィルムを得る。PGMEA溶液及びその中の架橋シリコーン樹脂の濃度、並びに選択した、スピンコーターの毎分回転数は、フィルムの所望の厚さを基準に選択することができる。窒素ガスパージをしながらラピッドサーマルプロセス(RTP)オーブンを使用して、スピンフィルムを180℃で60秒間ソフトベークし、ベークフィルムを得る。次に、ベークフィルムを350℃、450℃、550℃、650℃、又は800℃で60分間、窒素下にてアニールし、フィルムを得る。アニーリング後、ウエハ及びフィルムを室温まで冷却し、その後ひび割れについて光学顕微鏡を使用して検査する。J.A.Woollam Co.of Lincoln,NEから市販されている、J.A.Woollam楕円偏光計又はプロファイルメータを使用して、フィルムの厚さを測定する。
【0128】
本発明は、例示的な様式で説明されており、使用されている用語は限定目的よりも、むしろ説明のための言葉としての性質が意図されているものと理解されるべきである。明らかに本発明の多くの修正及び変更が上記教示から可能である。本発明は、具体的に記載した方法のとおり以外の方法でも実施され得る。