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特許7273721対象の喫煙ステータスを区別するための診断テスト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】対象の喫煙ステータスを区別するための診断テスト
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230508BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G01N33/53 S
G01N33/543 521
G01N33/543 511D
G01N33/53 G
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019554369
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2018063228
(87)【国際公開番号】W WO2018211126
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】17172100.4
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】リューディッケ フランク
(72)【発明者】
【氏名】パイチュ マヌエル シー
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-181101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0316926(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0072959(US,A1)
【文献】国際公開第2016/118886(WO,A1)
【文献】特開2014-055794(JP,A)
【文献】特開2012-215420(JP,A)
【文献】LUDICKE F. et al.,Reduced Exposure to Harmful and Potentially Harmful Smoke Constituents With the Tobacco Heating System 2.1,Nicotine & Tobacco Research,2016年07月01日,vol.19, No.2,pp.168-175
【文献】RAJA, M. et al.,Diagnostic Methods for Detection of Cotinine Level in Tabacco Users: A Review,Journal of Clinical and Diagnostic Research,2016年03月,Vol.10, No.3,pp.4-6
【文献】ALWIS, K. U. et al.,Acrolein Exposure in U.S. Tobacco Smokers and Non-Tobacco Users: NHANES 2005-2006,Environmenntal Health Perspectives,2015年12月01日,vol.123,pp.1302-1308
【文献】ALWIS, L. U. et al.,Simultaneous analysis of 28 urinary VOC metabolites using ultra high performance liquid chromatography coupled with electrospray ionization tandem mass spectrometry (UPLC-ESI/MSMS),Analytica Chimica Acta,2012年10月31日,Vol.750,pp.152-160
【文献】JAIN, R. M. et al.,Distributions of selected urinary metabolites of volatile organic compounds by age, gender, race/ethnicity, and smoking status in a representative sample of U.S. adults,Enviromental Toxicology and Pharmacology,2015年,Vol.40,pp.471-479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の喫煙ステータスを判定するための装置であって、前記装置は、生体試料の中の二つまたは三つのたばこ煙曝露バイオマーカーの存在を検出するように、固相上に配置した複数の異なる特異的結合剤を備え、前記たばこ煙曝露バイオマーカーは、
(i)コチニンおよび総4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール(NNAL)、もしくは
(ii)コチニンおよびN-アセチル-S-[2-カルボキシエチル]-L-システイン(CEMA)、または
(iii)コチニン、総NNAL、およびCEMA、
から成り、
前記装置は、燃焼式たばこの現喫煙者を、燃焼式ではなく加熱式たばこである無煙代替物に切り替えた対象もしくは禁煙した対象から区別することができる、上記装置。
【請求項2】
前記装置は、競合イムノアッセイを実施するように構成された、携帯用側方流動イムノアッセイ装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記携帯用側方流動イムノアッセイ装置は、(i)試料パッド、(ii)コンジュゲートパッド、および(iii)少なくとも一つの検出ゾーンを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記コンジュゲートパッドは、個別に、(i)コチニンおよび総NNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、総NNAL、およびCEMA、を結合することができる、標識された特異的結合剤を含み、またはそれらから成る、、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
(a)前記コンジュゲートパッドは、その上に配置される標識された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、前記特異的結合剤は、個別に、(i)コチニンおよび総NNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、総NNAL、およびCEMA、に結合することができ、かつそれらとともに標識された特異的結合剤抱合体を形成することができ、ならびに
(b)前記検出ゾーンは、固定化された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、前記特異的結合剤は、個別に、(i)コチニンおよび総NNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、総NNAL、およびCEMA、へ結合することができる、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
(a)前記コンジュゲートパッドは、(i)その上に配置された、標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識された総NNALもしくはその類似体、もしくは(ii)その上に配置された、標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたCEMAもしくはその類似体、または(iii)その上に配置された、標識されたコチニンまたはその類似体、標識された総NNALもしくはその類似体、および標識されたCEMAもしくはその類似体、を含み、またはそれらから成り、
(b)前記検出ゾーンは、個別に、(i)前記標識されたコチニンもしくは前記その類似体、前記標識された総NNALもしくは前記その類似体、および試料中に現れ得るコチニンおよび総NNAL、もしくは(ii)前記標識されたコチニンもしくは前記その類似体、前記標識されたCEMAもしくは前記その類似体、および試料中に現れうるコチニンおよびCEMA、または(iii)前記標識されたコチニンもしくは前記その類似体、前記標識された総NNALもしくは前記その類似体、前記CEMAもしくは前記その類似体、ならびに試料中に現れうるコチニン、総NNAL、およびCEMA、を結合できる固定化された特異的結合剤を含み、またはそれらから成る、請求項3または請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記特異的結合剤は、色付き粒子で標識される、請求項4~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記検出ゾーンに、所定量の固定化された特異的結合剤が存在し、前記特異的結合剤は、試料中のたばこ煙暴露バイオマーカーのレベルが、所定の閾値より高い場合に信号を生成することが可能である、請求項3~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記閾値は、(i)24時間尿中のコチニンが約200ng/ml以上、および24時間尿中の総NNALが約10pg/ml以上もしくは24時間尿中のCEMAが約5ng/ml以上、または(ii)24時間尿中のコチニンが約200ng/ml以上、24時間尿中の総NNALが約10pg/ml以上、および24時間尿中のCEMAが約5ng/ml以上であり、数値前の「約」は、数値から+/-10%の範囲の変動を含むことを意味する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、(i)約200~800ng/mlの量である24時間尿中のコチニン、もしくは(ii)約10~125pg/mlの量である24時間尿中の総NNAL、もしくは(iii)約5~80ng/mlの量である24時間尿中のCEMA、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)のうちの少なくとも二つの組み合わせを検出するように適合し、数値前の「約」は、数値から+/-10%の範囲の変動を含むことを意味する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
(i)前記装置の試験ライン上にあるコチニン、総NNAL、およびCEMAの目視可能な指標は、前記検出の閾値を超えていないことを示しており、禁煙者であることを示し、
(ii)前記装置の試験ライン上にコチニンの目視可能な指標がないことは、前記検出の閾値を超えていることを示しており、前記装置の試験ライン上にある総NNAL、およびCEMAの目視可能な指標は、前記検出の閾値を超えていないことを示しており、加熱式たばこに曝露された対象であることを示し、
(iii)(a)前記装置の試験ライン上にコチニンおよび総NNALの目視可能な指標がないことは、前記検出の閾値を超えていることを示しており、かつ前記装置の試験ライン上にCEMAの目視可能な指標は、前記検出の閾値を超えていないことを示しており、もしくは(b)前記装置の試験ライン上にコチニン、総NNAL、およびCEMAの目視可能な指標がないことは、前記検出の閾値を超えていることを示しており、燃焼式たばこに曝露された対象であることを示す、請求項8~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
対象の喫煙ステータスを判定するための装置であって、
(a)請求項1~11のいずれか一項に記載の装置を受けるために適合する容器と、
(b)前記装置の少なくとも一つのデジタル画像を取得するように適合する撮像装置と、
(c)前記少なくとも一つのデジタル画像を処理するように適合するプロセッサと、を備える、装置。
【請求項13】
(a)コチニンと、総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上とからなるバイオマーカーの数量の基準値もしくはベースライン値を含む、またはそれらから成るコンピュータデータリポジトリであって、前記基準値またはベースライン値が、対象の喫煙ステータスを判定するために、既知の数量のコチニンと、総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上とを表す、コンピュータデータリポジトリと、
(b)対象の前記喫煙ステータスの判定を行うために、前記データレポジトリにアクセスし、前記対象の試料内の前記コチニンと、総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上との数量に関する情報と組み合わせて、前記データレポジトリからの情報を使用するようにプログラムされた、コンピュータシステムとを備える、システムであって、
前記システムは、燃焼式たばこの現喫煙者を、燃焼式ではなく加熱式たばこである無煙代替物に切り替えた対象もしくは禁煙した対象から区別することができる、上記システム。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の装置を備える、キット。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の装置の使用を含む、対象の前記喫煙ステータスを判定するための方法。
【請求項16】
対象の喫煙ステータスを判定するための方法であって、
(a)試料中の(i)コチニンおよび総NNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、総NNAL、およびCEMA、からなるバイオマーカーの量を検出することであって、前記試料を、(i)抗コチニンおよび抗総NNAL特異的結合剤、または(ii)抗コチニンおよび抗CEMA特異的結合剤、または(iii)抗コチニン、抗総NNAL、および抗CEMA特異的結合剤と接触させることと、結合を検出することと、
(b)前記対象の前記喫煙ステータスを判定することと、を含み、
24時間尿中の前記総NNALの量が、調査期間の5日目に約17~40pg/mlであるか、および/または、24時間尿中の前記CEMAの量が、調査期間の5日目に約4~15ng/mlの間であるか、および、24時間尿中の前記コチニンの量が、調査期間の5日目に約10~42ng/mlであることが、禁煙者を示し、
24時間尿中の前記総NNALの量が、調査期間の5日目に約37~115pg/mlであるか、または24時間尿中の前記CEMAの量が、調査期間の5日目に約31~90ng/mlであること、およびコチニンの量が、調査期間の5日目に24時間尿中約456~1300ng/mlの間であることが、燃焼式たばこに曝露された対象を示し、
24時間尿中の前記総NNALの量が、調査期間の5日目に約17~41pg/mlであること、および/または、24時間尿中の前記CEMAの量が、調査期間の5日目に約5~12ng/mlとの間であること、および24時間尿中の前記コチニンの量が、調査期間の5日目に約652.5~1115ng/ml間であることが、加熱式たばこに曝露された対象を示し、
数値前の「約」は、数値から+/-10%の範囲の変動を含むことを意味する、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、生物学的診断の分野に関する。特に、本発明は、対象の喫煙ステータスを判定または区別するための方法、装置、システム、およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
たばこが燃焼されるのではなく加熱される、多くのエアロゾル発生物品が、当該技術分野において提唱されてきた。加熱式エアロゾル発生物品において、エアロゾルは基体(たばこなど)を加熱することによって生成される。多数の研究は、熱分解および燃焼温度より低い温度にたばこを加熱することで、紙巻たばこの煙の中に見つかる一部の毒物を低減または排除する可能性があることを示している。たばこを燃やす代わりに、通常300℃より低い温度で加熱することは、ニコチンを放出するには十分であるが、著しい熱分解を引き起こすには十分高くない。これらの温度では、エアロゾル組成物は、紙巻たばこの煙の中に見つかるものよりも単純になる。たばこの燃焼によって、紙巻たばこの煙の中に多くの有害成分および潜在的有害成分(HPHC)が形成される。したがって、たばこを燃やす代わりに、温度を下げて加熱することで、HPHCを実質的に低減または排除できる。既知の加熱式エアロゾル発生物品としては、例えば、電気加熱式エアロゾル発生物品、およびエアロゾルが可燃性燃料要素または熱源から、物理的に分離されたエアロゾル形成材料への熱の伝達によって生成されるエアロゾル発生物品が挙げられる。喫煙中、揮発性化合物は、燃料要素からの熱伝達によってエアロゾル形成基体から放出され、エアロゾル発生物品を通して引き出された空気中に同伴される。放出された化合物は冷めるにつれて凝縮してエアロゾルを形成し、これを消費者が吸い込む。また、ニコチン含有エアロゾルが、燃焼を用いずに、また一部の場合には加熱を用いずに、例えば化学反応によって、たばこ材料、たばこ抽出物、または他のニコチン源から生成されるエアロゾル発生物品も知られている。
【0003】
たばこを燃焼するのではなく加熱する、これらの無煙代替物(例えば、非燃焼加熱式製品)は、喫煙者に従来の紙巻たばこの代替を提供し、これによって、ニコチンを未だ送達しながら、たばこから放出される有害な化学物質を低減させうる。
【0004】
当該技術分野において、対象の喫煙ステータスを区別または判定する、迅速でコスト効果が高く使用が簡単な診断テストのニーズが存在する。例えば、無煙代替物に切り替えた人もしくは禁煙した人と、従来の紙巻たばこの現喫煙者を区別する、または判定する必要性が当該技術分野にはある。そのような試験には、様々な用途がある。例えば、試験は、喫煙ステータスに基づいて対象の識別およびスクリーニングのために、臨床試験で使用され得る。さらなる例として、試験は、無煙代替物への切り替え、および切り替えの遵守を監視するために、コンプライアンス試験としての保険目的で使用され得る。本発明は、これらのニーズおよび他の必要性に対処することを探究する。
【発明の概要】
【0005】
少なくとも二つの代謝物が、対象の喫煙ステータスを区別または判定するために検出される方法、装置、システム、およびキットを本明細書に開示する。代謝物をたばこ煙曝露バイオマーカーとして使用することができる。例えば、従来の紙巻たばこの現喫煙者は、無煙代替物(例えば、非燃焼加熱式製品)に切り替えた対象、または禁煙した対象と区別できる。さらなる例として、無煙代替物の喫煙者は、禁煙した対象と区別できる。約二日間の禁煙後の尿、唾液、または血液では全く検出できないが、無煙代替物へ切り替えた人の中にはまだ存在するであろう、コチニンに加えて、一つまたは二つの他のたばこ煙曝露バイオマーカーが、尿中で検出されうる。一つのそのような代謝物は4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール(NNAL)であり、これはニコチン由来のニトロソアミンケトン(NNK)(4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン、たばこ特異的ニトロソアミンとしても知られる)の代謝物であって、大抵17時間と推定される半減期で尿中にて測定される。別の代謝物は、2-シアノエチルメルカプツール酸(CEMA)であり、これはアクリロニトリル(可燃性たばこ製品由来の揮発性化合物)の代謝物である。特定の実施形態では、コチニンおよび総NNALのみが測定される。言い換えれば、コチニンおよび総NNALは、たばこ煙曝露バイオマーカーとしてのみ測定される。総NNALは、NNALおよびNNAL-Glucを意味する。特定の実施形態では、コチニンおよびCEMAのみが測定される。言い換えれば、コチニンおよびCEMAは、たばこ煙曝露バイオマーカーとしてのみ測定される。特定の実施形態では、コチニン、および総NNAL、ならびCEMA(のみ)が測定される。言い換えれば、総NNALおよびCEMAは、たばこ煙曝露バイオマーカーとしてのみ測定される。したがって、たばこ煙曝露バイオマーカーとして検出される代謝物は、コチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAのみから成る。言い換えれば、たばこ煙曝露バイオマーカーとして検出される代謝物は、コチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAのみである。これらの代謝物は、個人の喫煙ステータスを示し、ニコチン代謝物が存在するままであるのに対して、無煙製品への切り替えに伴い時間と共に尿から消失する。一実施形態では、診断テストには24時間尿などの尿を利用する。診断テストでは、コチニン、ならび総NNALおよび/またはCEMAの二つまたは三つの読み取り値を提供することが適切である。診断テストでは、三つまたは四つの読み取り値、つまり、コチニン、ならび総NNALおよび/またはCEMAの二つまたは三つの読み取り値と、尿中にたばこ代謝物が全くない対象に対して試験が効果的であることを実証するための陽性対照とを提供することが適切である。陽性対照は、例えば、クレアチニン、もしくはアルブミン、またはタム・ホースフォールタンパク質(THP)などの尿に特異的なタンパク質でありうる。他の対照の形態、例えば、本明細書に記載する通りに試験される試料の完全性、特に、不純物が混ざっていないことを測定するための対照などを追加する、または含めることができる。
【0006】
一態様では、対象の喫煙ステータスを判定するための装置について記載し、装置は、生体試料の中に二つまたは三つのたばこ煙曝露バイオマーカーの存在を検出するように、固相上に配置した複数の異なる特異的結合分子を備え、たばこ煙曝露バイオマーカーは、(i)コチニンおよび総4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール(NNAL)、もしくは(ii)コチニンおよびN-アセチル-S-[2-カルボキシエチル]-L-システイン(CEMA)、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAから成る。
【0007】
装置は、競合イムノアッセイを実施するように構成された、携帯用側方流動イムノアッセイ装置、好ましくは尿試験紙であることが適切である。
【0008】
携帯用側方流動イムノアッセイ装置は、(i)試料パッド、(ii)コンジュゲートパッド、および(iii)少なくとも一つの検出ゾーンを備えることが適切である。
【0009】
コンジュゲートパッドは、標識された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、各々が個別に、(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAを結合できることが適切であり、標識された特異的結合剤の各々は、抗体またはその断片、アプタマー、フォトアプタマー、アフィマー(affimer)、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、または小分子である。
【0010】
(a)コンジュゲートパッドは、その上に配置される標識された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、各々が、(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAという代謝物を個別に結合でき、標識された特異的結合剤代謝物抱合体を形成でき、(b)検出ゾーンは、固定化された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、各々が代謝物へ個別に結合できることが適切である。
【0011】
(a)コンジュゲートパッドは、その上に配置される標識された代謝物を含み、またはそれらから成り、標識された代謝物は、(i)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたNNALもしくはその類似体、もしくは(ii)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたCEMAもしくはその類似体、または(iii)標識されたコチニンまたはその類似体、および標識されたNNALもしくはその類似体、ならびに標識されたCEMAもしくはその類似体から成り、(b)検出ゾーンは、固定化された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、各々が個別に、(i)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたNNALもしくはその類似体、ならびに試料中に現れ得るコチニンおよびNNAL、もしくは(ii)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたCEMAもしくはその類似体、ならびに試料中に現れ得るコチニンおよびCEMA、または(iii)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたNALもしくはその類似体、および標識されたCEMAもしくはその類似体、ならびに試料中に現れ得るコチニン、およびNNAL、およびCEMAを結合できることが適切である。
【0012】
特異的結合分子は、色付き粒子、適切には金ナノ粒子で随意に標識され、特異的結合分子の各々に対する標識が、同一または異なることが適切である。
【0013】
閾値は、(i)24時間の尿コチニンが約200ng/ml以上、および24時間尿中の総NNALが約10pg/ml以上もしくは24時間尿のCEMAが約5ng/ml以上、または(ii)24時間の尿コチニンが約200ng/ml以上、もしくは24時間尿中の総NNALが約10pg/ml以上、もしくは24時間尿のCEMAが約5ng/ml以上であることが適切である。
【0014】
装置は、(i)約200~800ng/mlの量である24時間の尿コチニン、もしくは(ii)約10~125pg/mlの量である24時間尿中の24時間尿の総NNAL、もしくは(iii)約5~80ng/mlの量である24時間尿のCEMA、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)のうちの少なくとも二つの組み合わせを検出するように適合することが適切である。
【0015】
(i)装置の試験ライン上にある(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標は、検出の閾値を超えておらず、非喫煙対象を示すことを表示し、(ii)装置の試験ライン上に(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標がないことは、検出の閾値を超えていたことを表示し、装置の試験ライン上にある(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標は、検出の閾値を超えておらず、加熱式たばこに曝露された対象を示すことを表示し、(iii)装置の試験ライン上に(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標がないことは、検出の閾値を超えており、燃焼式たばこに曝露された対象を示すことを表示することが適切である。
【0016】
別の態様では、対象の喫煙ステータスを判定するための装置を開示し、装置は、(a)本明細書に記載する装置を受けるために適合する容器と、(b)装置の少なくとも一つのデジタル画像を取得するように適合する撮像装置と、(c)少なくとも一つのデジタル画像を処理するように適合するプロセッサとを備える。
【0017】
別の態様では、(a)コチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上の数量の基準値もしくはベースライン値を含む、またはそれらから成るコンピュータデータリポジトリであって、基準値またはベースライン値が、対象の喫煙ステータスを判定するために、既知の数量の代謝物を表す、コンピュータデータリポジトリと、(b)対象の喫煙ステータスの判定を行うために、データレポジトリにアクセスし、対象の試料内の代謝物の数量に関する情報と組み合わせて、データレポジトリからの情報を使用するようにプログラムされた、コンピュータシステムと、を備える、システムを開示する。
【0018】
別の態様では、本明細書に記載する装置と、随意でキットを操作するための一組の説明書と、随意で対象の喫煙ステータスを判定するための一組の説明書とを備える、キットを開示する。
【0019】
別の態様では、本明細書に記載する装置の使用を含む、対象の喫煙ステータスを判定するための方法を開示する。
【0020】
別の態様では、対象の喫煙ステータスを判定するための方法を開示し、方法は、(a)試料中の(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの量を検出することであって、代謝物は、コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAから成る、ことと、試料の抗コチニン、および抗NNAL、ならびに抗CEMA特異的結合剤との接触と、結合の検出とを含むことと、(b)対象の喫煙ステータスを判定することとを含み、コチニンの量が、調査期間の5日目に、24時間尿中約10.6ng/mlと41.5ng/mlとの間であるかが、禁煙者を示し、調査期間の5日目に、総NNALの量が、24時間尿中約37.7pg/mlと115pg/mlとの間であり、CEMAの量が、24時間尿中約31.1ng/mlと90ng/mlとの間であるかが、燃焼式たばこに曝露された対象を示し、コチニンの量が、調査期間の5日目に、24時間尿中約652.5ng/mlと1115ng/ml、ng/ml以上との間であるかが、加熱式たばこに曝露された対象を示す。
【0021】
また、対象の喫煙ステータスの変化の進行を監視する方法も開示し、方法は、(i)対象からの少なくとも二つの生体試料上で、本明細書に記載する方法を実施することであって、各試料が異なる時点で採取される、ことと、(ii)異なる時点の各々に取られた測定値を比較することであって、測定値の経時的変化が、対象の喫煙ステータスが経時的に変化したことを示す、こととを含む。
【0022】
また、対象の喫煙ステータスを判定するための方法も開示し、方法は、(i)対象からの試料中の二つまたは三つの代謝物の数量の値を表すデータを受信することであって、代謝物は、コチニンと、総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上とから成る、ことと、(ii)コンピュータ上のデータリポジトリにアクセスすることであって、データリポジトリが、対象の喫煙ステータスを判定するための診断に関する、コチニン、ならびに総NNALおよび/もしくはCEMAの数量に対する基準値またはベースライン値を含む、ことと、(iii)(i)で受信したデータを、(ii)に記載したコンピュータ上のデータリポジトリの中の基準値または基準値と比較し、それによって対象の喫煙ステータスを判定することとを含む。
【0023】
また、対象の喫煙ステータスを区別または判定するための方法を開示し、方法は、(i)対象からの試料を得るまたは提供することと、(ii)抗コチニン、ならびに抗総NNALおよび/もしくは抗CEMA抗体、またはその断片と試料を接触させ、コチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAと抗体との間の結合を検出することによって、試料中の二つまたは三つの代謝物の量を検出することであって、代謝物は、コチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAから成る、ことと、(iii)試料中のコチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAの存在の検出に基づいて、対象の喫煙ステータスを判定することと、を含む。
【0024】
さらなる態様は、対象の喫煙ステータスを判定し、従来の紙巻たばこの喫煙を低減するように、一つ以上の療法を施す方法に関し、方法は、(i)対象からの試料を得るまたは提供することと、(ii)二つまたは三つの代謝物が試料中に存在するかを検出することであって、代謝物がコチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAから成る、ことと、(iii)対象の喫煙ステータスを判定することと、(iv)(iii)で得られた結果に応じて、従来の紙巻たばこの喫煙を低減するように、一つ以上の療法の有効量を投与することとを含む。
【0025】
さらなる態様は、対象の従来の紙巻たばこの喫煙を診断および低減する方法に関し、方法は、(i)対象から試料を得ることと、(ii)コチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上が、試料中に存在するかを検出することと、(iii)喫煙者と診断された対象に、対象の従来の紙巻たばこの喫煙を低減するように、一つ以上の療法の有効量を投与することとを含む。
【0026】
本方法は、ある特定のインビトロまたはエクソビボの処理および分析工程を、対象から得た試料上に適用する点から、インビトロまたはエクソビボの使用としての資格を十分に有しうる。
【0027】
方法は、二つ以上の連続する時点で対象に実施してもよく、連続する時点でのそれぞれの成果が比較されてもよく、それによって、連続する時点でのコチニン、総NNAL、および/またはCEMAの検出間における変化の有無が判定される。そのように適用される場合、方法は、経時的に対象内のコチニン、総NNAL、および/またはCEMAの検出の変化を監視するように使用されうる。例えば、ベースライン値または基準値と比較した、対象からの試料中の代謝物の数量の偏差が、対象の喫煙ステータスを示してもよい。
【0028】
特定の実施形態では、検出を考慮して、例えば、臨床医または会社がどのような措置を取るべきかの判定を、コンピュータが実施する。特定の実施形態では、コンピュータを使用して、結果および/または取るべき措置を報告できる。
【0029】
特定の実施形態では、対象の試料中で測定された、各特異的代謝物レベルに起因する、0から1の間の個別スコアの合計に基づいて、アルゴリズムが開発されてもよい。その後、合計が特定の閾値を超える場合、喫煙ステータスが予測されうる。いくつかの実施形態では、各個別代謝物スコアの重みは、アルゴリズムの性能を改善するように調整されてもよい。
【0030】
また、対象の喫煙ステータスを判定するためのキットも提供され、キットは、(i)生体試料中のたばこ煙曝露バイオマーカーの存在を検出するように適合する、第一装置であって、たばこ煙曝露バイオマーカーは、コチニンから成る、第一装置と、(ii)生体試料中のたばこ煙曝露バイオマーカーの存在を検出するように適合する、第二装置であって、たばこ煙曝露バイオマーカーは、NNALから成る、第二装置と、および/または(iii)生体試料中のたばこ煙曝露バイオマーカーの存在を検出するように適合する、第三装置であって、たばこ煙曝露バイオマーカーはCEMAから成る、第三の装置と、随意でキットを操作するための一組の説明書と、随意で対象の喫煙ステータスを判定するための一組の説明書とを備える、またはそれらから成る。
【0031】
発明の効果
本開示は、対象の喫煙ステータスを判定、解読、または区別する、迅速でコスト効果が高く使いやすい診断テストを提供する。
【0032】
本開示は、対象の喫煙ステータスを判定するために、他の試験と比較して向上した識別力を有しうる。
【0033】
本開示は、集団の中で対象の特定種類の喫煙ステータスを判定するために、向上した識別力を有してもよい。例えば、識別力は、特定の民族群または特定の年齢集団でより優れていてもよい。
【0034】
有利なことに、本開示によって、尿の総NNAL、尿のCEMA、および尿コチニンの同時検出を可能にできる。特に、本開示によって、約10~125pg/mlの量である24時間尿中の尿の総NNAL、および約5~80ng/mlの量である24時間尿中の尿のCEMA、ならびに約200~800ng/mlの量である尿コチニンの同時検出を可能にし、対象の喫煙ステータスを判定または区別できる。本開示は、メントールおよび非メントールの喫煙製品を使用する対象の喫煙ステータスを判定するために、向上した識別力を有してもよい。メントール紙巻たばこは概して、非メントール紙巻たばこに類似した方法で構成され、メントールは製造工程中のいくつかの段階のうちのいずれか一つで加えられる。メントールは、例えば、蒸留されたコーンミント油に由来してもよく、または合成で生み出されてもよい。メントール紙巻たばこは通常、重量で少なくとも0.3%のメントール含有量を持つ。低タールのメントール紙巻たばこは、最大2%のメントールレベルを有しうる。非メントール紙巻たばこ用のたばこブレンドと比較して、メントール紙巻たばこは、バーレーたばこよりも多く熱風乾燥処理され、オリエント葉たばこよりも熱風乾燥処理が少ない傾向がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】CEMA:箱の底部は、第一四分位数(観測値の25%はこの値の下方にある)であり、上部は第三四分位数(観測値の75%はこの値の下方にある)であり、中央バーは観測値の中央値である。ひげは、最小観測値および最大観測値へそれぞれ延びる。
図2】総NNAL:箱の底部は、第一四分位数(観測値の25%はこの値の下方にある)であり、上部は第三四分位数(観測値の75%はこの値の下方にある)であり、中央バーは観測値の中央値である。ひげは、最小観測値および最大観測値へそれぞれ延びる。
図3】遊離のコチニン:箱の底部は、第一四分位数(観測値の25%はこの値の下方にある)であり、上部は第三四分位数(観測値の75%はこの値の下方にある)であり、中央バーは観測値の中央値である。ひげは、最小観測値および最大観測値へそれぞれ延びる。
図4】対象の喫煙ステータスを判定するための、側方流動試験用細片を包含する尿試験紙の例。本例示的実施形態では、対象の三つの異なる喫煙ステータスを判定するように、三つの異なる尿試験紙が使用される。一実施形態では、尿試験紙は、10~125pg/mlの量である24時間尿中の尿の総NNAL、および5~80ng/mlの量である24時間尿中の尿のCEMAを検出するのに十分な感度がある。別の実施形態では、尿試験紙は、10~125pg/mlの量である24時間尿中の尿の総NNAL、および5~80ng/mlの量である24時間尿中の尿のCEMA、ならびに約200~800ng/mlの量である尿コチニンを検出するのに十分な感度がある。喫煙ステータスは、尿試験紙を使用して推定できる。
図5】対象の喫煙ステータスを判定するための、側方流動試験用細片を包含する尿試験紙の例。本例示的実施形態では、対象の三つの異なる喫煙ステータスを判定するために、単一の尿試験紙が使用される。単一の尿試験紙は、装置に包含される側方流動試験用細片の向かい合った端部に、試料パッドの形態である多孔性要素と、一つ以上の吸収パッドの形態である多孔性要素とを包含する。さらに、コチニンのコロイド金コンジュゲート(CGC)、総NNAL CGC、およびCEMA CGCを含む試料の多孔性要素に隣接して下流(試料の流れの方向)に、コンジュゲートパッドの形態で多孔性要素が含まれる。必要に応じて、他の種類の標識を使用できる。コンジュゲート多孔性要素の下流に隣接して、連続して配設される三つの試験ラインが検出ゾーンに含まれる。一つの第一試験ライン1は、抗コチニンモノクローナル抗体またはその断片を含有しうる。この試験ラインは、検出閾値を約200ng/ml以上の閾値量で超えた(例えば、アッセイの形式によって、消失する、または表示される)ことを示すように構成されうる。一つの続く第二試験ライン2は、抗総NNALモノクローナル抗体またはその断片を含有しうる。この試験ラインは、検出閾値を約10pg/ml以上の閾値量で超えた(例えば、アッセイの形式によって、消失する、または表示される)ことを示すように構成されうる。一つの第三試験ライン3は、抗CEMAモノクローナル抗体またはその断片を含有しうる。この試験ラインは、検出閾値を約5ng/ml以上の閾値量で超えた(例えば、アッセイの形式によって、消失する、または表示される)ことを示すように構成されうる。必要に応じて、対照ラインも含めることができる。必要に応じて、他の種類の特異的結合剤を使用できる。
図6図5の尿試験紙を使用して競合形式で得られる、試験解釈の結果例。対象の喫煙ステータスに関連しうる、例示的な解釈例は以下の通りである。「陰性」と標識されたボックス=コチニン試験ライン、NNAL試験ライン、CEMA試験ラインの目視可能な指標は、検出閾値は通過しておらず、非喫煙対象を示すことを表示する。「コチニン陽性」と標識されたボックス=コチニンに目視可能な指標がないことは、検出閾値を通過したことを示す。NNALラインおよびCEMAライン目視可能な指標が存在することは、検出閾値は通過しておらず、加熱式たばこ(エアロゾル)にのみ曝露された対象を示すことを表示する。。「コチニンおよび総NNAL陽性、ならびに/またはコチニン、総NNAL、およびCEMA陽性」と標識されたボックス=コチニンおよび総NNALに目視可能な指標がないことは、検出閾値を通過したことを示し、またはコチニン、および総NNAL、ならびにCEMAに目視可能な指標がないことは、検出閾値は通過し、燃焼式たばこに曝露された対象を示すことを表示する。
【0036】
定義
本開示で使用される段落の見出しは系統立てるためであり、限定することを意図していない。他に断りがない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。矛盾がある場合は定義を含めて本文書が適用される。好ましい方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載するものと類似または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験で使用しうる。本明細書で開示する材料、方法、および例は単なる例示であり、制限することを意図していない。本明細書で使用する時、単数形(「一つの(a、an)」および「その(the)」)は、単数および複数の対象両方を含むが、その文脈によってそうでないことが明らかに示される場合はその限りではない。
【0037】
「および/または」という用語は、(a)もしくは(b)、または(a)および(b)の両方を意味する。
【0038】
本明細書で使用する「備える(comprising、comprises)」および「で構成される(comprised of)」という用語は、「含む(including、includes)」または「包含する、含有する(containing、contains)」と同義であり、包括的または開放式であり、追加で列挙していない部材、要素、または方法のステップを除外しない。「から成る(consisting of)」という用語は、追加の構成要素が除外され、列挙された要素のみを有し、それ以上の要素を持たないことを意味する。
【0039】
終点までの数値範囲の列挙には、それぞれの範囲内に包摂されるすべての数および割合、ならびに列挙される終点が含まれる。
【0040】
パラメータ、量、時間の長さ、およびこれらに類するものなどの測定可能な値を参照するときに、本明細書で使用する「約」という用語は、変動が本開示で実施するのに適切である限り、特定の値のおよび特定の値からの変動、具体的には、特定の値のおよび特定の値からの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0.1%以下を網羅することを意味する。「約」という修飾子が言及する値もまた、それ自体で具体的かつ好ましく開示されることは理解されるものとする。
【0041】
部材群のうち一つ以上の部材など、「一つ以上」という用語は、それ自体明瞭であり、さらなる例証を用いると、この用語は、とりわけ部材のいずれか一つへの言及、または例えば、部材のうちいずれの≧3つ、≧4つ、≧5つ、≧6つ、または≧7つなど、部材のうちいずれか二つ以上、および最大ですべての部材への言及を網羅する。
【0042】
「喫煙者」という用語は、過去5年間にたばこ製品を吸っていた対象を示す。喫煙者は概して、現喫煙者である。喫煙者は、生涯で少なくとも100本のたばこ製品を吸っており、その時点で毎日または週に数日(毎日ではない)たばこを吸っていてもよい。
【0043】
本明細書で使用する「非喫煙者」という用語は、以前喫煙者であったが、たばこ製品を過去5年間吸っていない対象を意味する。非喫煙者は、禁煙していたとみなされるであろう。
【0044】
「代謝物」という用語は、当該技術分野で広く知られており、代謝または代謝プロセスによって生み出される、いかなる物質を広く表してもよい。別の言い方をすれば、代謝物は代謝から生じる最終産物である。用語は、対象における定性的および/または定量的評価が、単独でまたは他のデータと組み合わせて、切り替えの遵守に応じて、対象のステータスに関する情報を有する、代謝物の検出可能な部分も網羅する。代謝物は通常、可燃性たばこ製品に由来する小分子である。とりわけ経時的な代謝物の監視によって、対象の切り替え遵守の経過を、経時的に判定することが可能になってもよい。
【0045】
本明細書で使用する「対象」という用語は、通常ヒトを表すが、ヒト以外の動物、好ましくは温血動物、より好ましくは胎生動物、一層より好ましくは、例えば、ヒト以外の霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタ、およびこれらに類するものなどの哺乳類への言及も網羅してもよい。
【0046】
本明細書で使用する「試料」または「生体試料」という用語は、対象から得られたいずれの生物学的標本も含む。試料には、限定されないが、全血、血漿、血清、赤血球、白血球(例えば、、末梢血単核細胞)、唾液、尿、便(すなわち、大便)、涙、汗、皮脂、乳頭吸引液、管洗浄液、腫瘍滲出液、滑液、脳脊髄液、リンパ液、細針吸引液、羊水、いかなる他の体液、切り取った爪、細胞溶解液、細胞分泌物、炎症液(inflammation fluid)、膣分泌物、または好ましくは胎盤の生検などの生検材料を含んでもよい。好ましい試料は、検出可能な数量で、本明細書に教示するいかなる一つ以上の代謝物を含む試料を含んでもよい。一実施形態では、試料は全血、または例えば、血漿、血清、または細胞ペレットなど、その分画成分であってもよい。試料は、対象から試料を検出、除去、または分離することが可能な、最小限の侵襲的方法によって容易に得られるのが好ましい。試料は、組織試料および生検、組織のホモジネート、ならびにこれらに類するものも含んでもよい。「血漿」という用語は、概して、細胞を含有しないが、血液細胞(赤血球、白血球、血小板など)が、栄養素、糖類、タンパク質、ミネラル、酵素などを含有して、通常は懸濁している、血液の実質的に無色の水性液体を表す。最も適切な実施形態では、得るのが容易で非侵襲的あるために、試料は尿(24時間尿など)である。24時間尿の収集は、全24時間にわたって容器に対象の尿を収集することによって行われる。
【0047】
代謝物などの分子は、分子もしくは分子群の有無、および/または数量が、好ましくは、実質的に他の分子を除いて試料中で検出または判定されたときに、試料中で「測定」される。例えば、代謝物は、本明細書に記載するような実験室検査によって測定されてもよい。
【0048】
「数量」、「量」、および「レベル」という用語は同義であり、概して当該技術分野ではよく理解されている。代謝物、分子、または分析物に関して、用語は、特に、試料中の代謝物、分子、もしくは分析物の絶対定量、または試料中の代謝物、分子、もしくは分析物の相対定量、すなわち、本明細書に教示するようなベースライン値または基準値に対してなど、別の値に対する、または代謝物、分子、もしくは分析物のベースライン発現を示す値の範囲に対する定量を指してもよい。これらの値または範囲は、単一の対象、または対象群から得られてもよい。試料中の代謝物、分子、または分析物の絶対数量は、有利なことに、重量もしくはモル量として、またはより一般的には、濃度、例えば、容積当たりの重量、もしくは体積当たりのモルとして表現されてもよい。
【0049】
検出の文脈における「閾値」という用語は、特定のもしくは定義された量、もしくは数量、または濃度に達する、またはそれらを超える点を意味する。例えば、イムノアッセイ装置上の試験ラインは、閾値の量、もしくは数量、または濃度に達する、またはそれらを超えるときに、視覚的変化を生み出すように構成されうる。
【0050】
「小分子」という用語は、概して医薬品で使用される有機分子に匹敵するサイズを有する化合物、好ましくは有機化合物を指す。この用語には、生物学的マクロ分子(例えば、タンパク質、核酸など)は除外する。好ましい有機小分子の範囲は、最大約5000Daのサイズであり、例えば、最大約4000、好ましくは最大3000Da、より好ましくは最大2000Da、一層より好ましくは最大約1000Da、例えば、最大約900、800、700、600または最大約500Daである。
【0051】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、修飾語句「精製」をも網羅するのが好ましい。本明細書で使用されるとき、代謝物に関連する「精製された」という用語は、絶対純度を必要としない。代わりに、他の分子に対する存在量(質量、もしくは重量、または濃度で簡便に表現される)が生体試料中よりも大きい、分離した環境に、そのような代謝物があることをこの用語は表す。分離した環境は、例えば、単一溶液、ゲル、沈殿物、凍結乾燥物など、単一の培地を表す。精製された代謝物は、例えば、クロマトグラフィー、分取電気泳動、遠心分離、沈殿、アフィニティー精製などを含む既知の方法によって得られてもよい。
【0052】
本明細書全体を通して使用する「特異的に結合する」という用語は、薬剤(本明細書では「特異的結合剤」とも表す)が、無作為または無関係な他の分子を実質的に除いた、かつ随意で、構造上において関連する他の分子を実質的に除いた、一つ以上の所望の分子に結合することを意味する。「特異的に結合する」という用語は、薬剤がその意図される標的にのみ結合することを必ずしも必要としない。例えば、結合条件下でのそのような意図される標的に対する親和性が、非標的分子に対する親和性よりも、少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、さらにより好ましくは少なくとも約25倍、まだより好ましくは少なくとも約50倍、一層より好ましくは少なくとも約100倍以上である場合、薬剤は、対象の標的に特異的に結合すると考えられてもよい。特異的結合剤の例は、抗体もしくはその断片、アプタマー、アフィマー(affimer)、フォトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、または小分子である。好ましい特異的結合剤は、抗体もしくはその断片、アプタマー、またはアフィマーである。
【0053】
本明細書で使用するとき、「抗体」という用語はその最も広い意味で使用され、概して、いかなる免疫結合剤も指す。この用語は、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つのインタクト抗体から形成される多価抗体(例えば、2価、3価またはそれ以上の原子価)および/または多特異性抗体(例えば、二重またはそれ以上の特異性抗体)、ならびに所望の生物活性(特に、対象の抗原を特異的に結合する能力)を呈する場合の抗体断片だけでなく、そのような断片の多価および/または多特異性複合体をも網羅する。「抗体」という用語は、免疫化を含む方法によって生成される抗体を含むだけでなく、対象の抗原上にあるエピトープに特異的に結合できる、少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を網羅するように作られる、例えば、組換え発現ポリペプチドといった、いかなるポリペプチドをも含む。したがって、この用語は、インビトロまたはインビボで生み出されるかにかかわらず、そのような分子に適用される。
【0054】
「アプタマー」という用語は、一本鎖もしくは二本鎖オリゴDNA、オリゴRNA、もしくはオリゴDNA/RNA、またはそれらのいかなる類似体を指し、ペプチドなどの標的分子に特異的に結合してもよい。有利なことに、アプタマーは、標的に対して、非常に高い特異性および親和性(例えば、1×109-1オーダーのKA)を表示しうる。アプタマー製造については、とりわけ、米国特許第5,270,163号、Ellington & Szostak 1990(Nature 346:818~822)、Tuerk & Gold 1990(Science 249:505~510)、またはKlussmannの「Aptamer Handbook:Functional Oligonucleotides and Their Applications」(Wiley編、VCH 2006、ISBN 3527310592)に記載されている。「フォトアプタマー」という用語は、標的分子と共有結合、または架橋してもよい、一つ以上の光反応性官能基を含有するアプタマーを指す。
【0055】
「調査期間」に関しては、対象に自身が選んだ従来の紙巻たばこのブランドを、2日間吸うことを許可することによって、ベースライン測定を行う。この2日の期間後、対象は次に、従来の紙巻たばこを吸うことを継続するか、無煙代替物に切り替えるか、または禁煙するかを選択する。その後、調査期間を開始する。「アフィマー」という用語は、抗体のタンパク質に対して類似の特異性および親和性を持ち、標的分子に結合する高度に安定したタンパク質を指す。モノクローナル抗体の認識能力を模倣するように設計された、改変された非抗体結合タンパク質である。例えば、これら改変されたタンパク質は、約12~14kDaであり、植物からのシスタチンAのコンセンサス配列に基づきうる(Avacta、英国ケンブリッジ)。例えば、TiedeらのeLife(2017年)6:e24903、国際公開第2006/131749号、国際公開第2009/136182号、および国際公開第2014/125290号を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本開示で使用する段落の見出しは系統立てるためであり、限定することを意図していない。
【0057】
代謝物
本明細書に記載するたばこ煙曝露バイオマーカーとして使用される代謝物に対する、それぞれの数量または測定値は、同時に、別個に、または個別に評価されうる。本明細書に記載する代謝物は、実質的に同時または同時に評価されることが適切である。本明細書に記載する代謝物は、同じ時点で同時に評価されることが適切である。代謝物の量を使用して、対象が従来の紙巻たばこの現喫煙者であるかを立証できる。代謝物の量を使用して、対象が無煙代替物の消費者であるかを立証できる。代謝物の量を使用して、対象が禁煙したかを立証できる。便利なことに、これは単一の試験で遂行できる。ある特定の実施形態では、代謝物の量は、有利なことに、従来の紙巻たばこの現喫煙者を、無煙代替物に切り替えたか、または禁煙したかの対象と区別するために、対象の切り替えプロフィールを立証するように使用されうる。切り替え遵守行動を経時的に評価して、切り替え行動の進行を監視してもよい。
【0058】
代謝物は、コチニンおよび総NNAL、もしくはコチニンおよびCEMA、またはコチニン、および総NNAL、ならびにCEMAを含みうる、もしくはそれらから成りうる、またはそれらから本質的に成りうる。代謝物は、コチニンおよび総NNALのみ、もしくはコチニンおよびCEMAのみ、またはコチニン、および総NNAL、ならびにCEMAのみでありうることが適切である。したがって、代謝物は、コチニンおよび総NNALから成る、もしくはコチニンおよびCEMAから成る、またはコチニン、および総NNAL、ならびにCEMAから成る。特定の実施形態では、異性体(立体異性体、および/もしくは幾何異性体、および/または光学異性体、ならびにそれらの混合物など)、化学誘導体、模倣体、変異体、溶媒和物、およびこれらの代謝物の塩を網羅することが意図されている。
【0059】
たばこ煙曝露バイオマーカーとして使用される代謝物の検出に加えて、試料のより一般的な特性を、同時に、別個に、および/または個別に評価できる。例えば、試料の不純物混和または希釈を試験するために、特定の特徴を検出できる。例えば、尿試料の場合、pH、比重、オキシダント、亜硝酸塩、グルタルアルデヒド、およびクレアチニンのレベルのうちの一つ以上などの特徴が、尿試料中で測定されてもよい。これらのより一般的な特徴は、例えば、さらなる側方流動試験用細片またはこれらに類するものを、装置に組み込むことによって、対象の喫煙ステータスを判定するための装置を使用して検出できる。
【0060】
コチニン
ニコチンは、ピリジンおよびピロリジン環から構成される3級アミンである。ニコチンは、大きな初回通過効果を受け、その間に肝臓が吸入量の80~90%を代謝する。ニコチンの主要代謝物はコチニンである一方、ニコチン-1’-N-オキシドは、微量代謝物である(喫煙者によって吸収されるニコチンの4~7%のみ)。ニコチンのコチニンへの形質転換は、次の二つの工程、1)CYP2A6活性化、および2)細胞質アルデヒドオキシダーゼによる酸化を伴う。コチニンはまた、トランス-3’-ヒドロキシコチニンへ広範に代謝される。マウスの最も豊富な代謝物は、トランス-3’-ヒドロキシコチニンであり、40~60%を占める一方、コチニン自体はニコチンの用量の約15%のみを占める。また、喫煙者の尿中で検出される、主なニコチン代謝物でもある。様々な生体液中のコチニンレベルは、たばこユーザーのニコチンの摂取を推定するために広く使用されている。ニコチン摂取の定量的マーカーとしてのコチニンの有用性は、ニコチンのコチニンへの百分率換算、およびコチニンの排せつ速度における個別の変動によって制限される。
【0061】
ニコチンの総クリアランス速度は約1200mL/分である。コチニンの代謝は、総クリアランスの平均値45mL/分でより一層遅い。トランス-3’-ヒドロキシコチニンの総クリアランスもまた、ある程度遅く約82mL/分である。禁煙中の成人喫煙者にニコチンを静脈内注入すると、ニコチンは2.3時間、コチニンは17.5時間、およびトランス-3’-ヒドロキシコチニンは6.6時間の半減期を示した。
【0062】
コチニンは、約20時間のインビボ半減期を有し、たばこ使用の使用後数日間は検出できる。血液、唾液、および尿中のコチニンレベルは、たばこの煙への曝露量に比例する。コチニンレベル10ng/Ml未満は、能動喫煙がないことを示す。10ng/mLから100ng/mLの値は、軽い喫煙または中程度の曝露を示す。300ng/mLを超えるレベルは、1日に20本より多い紙巻たばこを消費する、重度喫煙者ステータスを示す。尿では、11ng/mLと30ng/mLとの間の値が、軽度または中程度の喫煙を示し、能動喫煙者のレベルは約500ng/mL以上である。唾液では、1ng/mLと30ng/mLとの間の値が、軽度または中程度の喫煙を示し、能動喫煙者のレベルは約約100ng/mL以上である。コチニンを検出するための方法には、比色法、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、高性能液体クロマトグラフィー、および放射イムノアッセイ(RIA)が含まれる。コチニン当量測定値には、ピリジン誘導体(具体的には、ニコチン代謝物)を判定するために、シアン化物および発色団生成試薬を使用してもよい。コチニンを検出するための他の方法には、二重特異性抗体を含む様々な形式に変換できる、抗コチニン抗体またはその断片の使用を含む。抗コチニン抗体またはその断片は、本明細書に記載する通り、イムノブロット、酵素イムノアッセイ、免疫親和性精製、およびインビボ放射免疫撮像法、ならびにこれらに類するものを含む、様々な形式に適用できる。コチニンを測定するための方法は、当該技術分野において、例えば、BMB Rep.(2014年)3月;47(3):130~134、J Clin Diagn Res.(2016年)3月;10(3):ZE04~ZE06、およびTher Drug Monit.(2009年)2月;31(1):14~30で十分に裏付けられている。
【0063】
本開示による装置および方法は、適切には5日後の24時間尿で、約11ng/mlから約500ng/mlの範囲の尿中のコチニンを検出するように構成されることが適切である。
【0064】
本開示による装置、方法、およびキットは、約459ng/mlから約1350ng/ml、もしくは約339~959ng/ml、または約546~1160ng/mlの範囲の(遊離の)コチニンを検出するように構成されることが適切である。これらの値は、尿中、適切には24時間尿中で判定されることが適切である。本開示による装置、方法、およびキットは、約200ng/mlから約800ng/mlの範囲の(遊離の)コチニンを検出するように構成されることが適切である。これらの値は、尿中、適切には24時間尿中で判定されることが適切である。
【0065】
本開示による装置、方法、およびキットは、約11ng/mlから約30ng/mlの範囲の(遊離の)コチニンを検出するように構成されることが適切である。これらの値は、尿中、適切には24時間尿中で判定されることが適切である。
【0066】
本開示による装置、方法、およびキットは、結果を視覚的に表示するように構成されることが適切である。結果は、機械を使用して、または眼で判定できる。特定の実施形態では、結果は眼で判定される。一実施形態では、装置、方法、およびキットは、24時間尿中で200ng/ml以上のコチニンの閾値レベルを超えたときに、結果を視覚的に表示するように構成される。別の実施形態では、装置、方法、およびキットは、24時間尿中で300ng/ml以上、もしくは400ng/ml以上、もしくは500ng/ml以上、または600ng/ml以上のコチニンの閾値レベルを超えたときに、結果を視覚的に表示するように構成される。
【0067】
NNAL
NNALは、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の代謝物である。喫煙者の24時間尿中に排泄される総NNAL(NNALおよびNNAL-Gluc)のベースラインレベルは、通常1.1~2.9nmol/24hの範囲(すなわち、230~607ng/24h)である。非喫煙者が他のたばこ製品、ニコチン置換製品を使用しておらず、副流煙にも曝露していない場合、NNALもNNNも、原則として、非喫煙者の尿中で検出不可能であり、その場合、レベルは0.1nmolの範囲である。
【0068】
研究では、20CPD以上を消費する喫煙者は、5日間の拘束期間中に、20、15、5、または0CPDを正確に喫煙する必要があった。結果は、紙巻たばこ数と尿中NNALレベル(すなわち、それぞれ624、549、422、および311ng/24h)との間に用量相関を示した。
【0069】
10日から最長45日の間と推定されるNNALの長い半減期が原因で、短期間の禁煙研究におけるNNALレベルは、非喫煙者のレベルに達せず、3日から8日の間続く研究ではおよそ1/3から1/4倍に減少する。最長56日続く禁煙研究では、総NNALのレベルは、研究終了時に非喫煙者について記載するレベル(すなわち、ベースライン時の2.70nmol/24hに対して、56日目で0.13nmol/24h)に達し、28日後および42日後で、これらのレベルより上のままのようであった(すなわち、それぞれ0.26nmol/24hおよび0.2nmol/24h)。
【0070】
NNALは、LC-MS/MSまたはGC/MS、およびこれらに類するものを含め、当該技術分野で既知である、いかなる従来の方法を使用しても検出できる。さらに、NNALは、NNALに特異的に結合し、随意で免疫原性担体に結合される、抗体またはその断片を使用して検出できる。そのような抗体は、国際公開第2009/010296号に記載されている。
【0071】
Hazizaらの Data in Brief 10(2017年)、283~293は、24時間尿中の総NNALレベルについて記載している。ベースライン測定は、対象に自身が選んだ従来の紙巻たばこのブランドを、2日間吸うことを許可することによって行われる。この2日の期間後、次に(i)従来の紙巻たばこを吸うことを継続してもらう、(ii)無煙代替物に切り替えてもらう、または(iii)禁煙してもらうように対象を選択する。5日間の調査期間後に、それから24時間尿を集めて、その中の代謝物レベルを測定する。従来の紙巻たばこの消費者では、ベースラインの総NNALは、84~131pg/mgクレアチニン(105pg/mgクレアチニン)である。5日目に、これが85~133pg/mgクレアチニン(107pg/mgクレアチニン)に増加する。ベースラインと比較して、これは-2.8%から10.5%の変化(平均増加率3.9%)を表す。
【0072】
無煙代替物の消費者では、ベースライン総NNALは、95~129pg/mgクレアチニン(111pg/mgクレアチニン)である。5日目に、これが42~58pg/mgクレアチニン(49pg/mgクレアチニン)に減少する。ベースラインと比較して、これは-57%から-51%の変化(平均減少率-54%)を表す。
【0073】
禁煙者では、ベースライン総NNALは、94~150pg/mgクレアチニン(119pg/mgクレアチニンである。5日目に、これが31~54pg/mgクレアチニン(41pg/mgクレアチニン)に減少する。ベースラインと比較して、これは-67%から-61%の減少(平均減少率-63.9%)を表す。
【0074】
本開示による装置、方法、およびキットは、約10pg/mlから約125pg/mlの範囲の総NNALを検出するように構成されることが適切である。
【0075】
本開示による装置、方法、およびキットは、約30pg/mgクレアチニンから約160pg/mgクレアチニンの範囲の総NNALを検出するように構成されることが適切である。
【0076】
本開示による装置、方法、およびキットは、約85~133pg/mgクレアチニンまたは約85~125pg/mgクレアチニンの範囲の総NNALを検出するように構成されることが適切である。本開示による装置、方法、およびキットは、約107pg/mgクレアチニンの量の総NNALを検出するように構成されることが適切である。これらの量は、従来の紙巻たばこユーザーに対する診断に用いる。
【0077】
本開示による装置、方法、およびキットは、約42~58pg/mgクレアチニンの範囲の総NNALを検出するように構成されることが適切である。本開示による装置、方法および、キットは、49pg/mgクレアチニンの量の総NNALを検出するように構成されることが適切である。これらの量は、無煙代替物ユーザーに対する診断に用いる。
【0078】
本開示による装置、方法、およびキットは、約31~54pg/mgクレアチニンの範囲の総NNALを検出するように構成されることが適切である。本開示による装置、方法、およびキットは、41pg/mgクレアチニンの量の総NNALを検出するように構成されることが適切である。これらの量は、禁煙者に対する診断に用いる。
【0079】
本開示による装置、方法、およびキットは、約33ng/mlから約132pg/mlまで、もしくは約33ng/mlから約125pg/mlまで、もしくは約2.5pg/mlと46pg/mlとの間、もしくは約10pg/mlと46pg/mlとの間、もしくは約37pg/mlと115ng/mlとの間、または約17~41ng/mlの範囲の総NNALを検出するように構成されることが適切である。これらの値は、尿中、適切には24時間尿中で判定されることが適切である。本開示による装置、方法、およびキットは、結果を視覚的に表示するように構成されることが適切である。結果は、機械を使用して、または眼で判定できる。特定の実施形態では、結果は眼で判定される。
【0080】
特定の実施形態では、結果は眼で判定される。一実施形態では、装置、方法、およびキットは、24時間尿中で10pg/ml以上であるNNALの閾値レベルを超えたときに、結果を視覚的に表示するように構成される。別の実施形態では、装置、方法、およびキットは、24時間尿中で10pg/ml以上、もしくは20pg/ml以上、もしくは30pg/ml以上、または40pg/ml以上であるNNALの閾値レベルを超えたときに、結果を視覚的に表示するように構成される。
【0081】
CEMA
CEMAは、アクロレイン曝露の特異的尿バイオマーカーである。アクロレインが人体から排除される主な経路は、肝臓のグルタチオン(GSH)との抱合の後に、酵素による切断およびN-アセチル化が続き、腎臓にS-(3-オキソプロピル)-N-アセチルシステイン(OPMA)を形成する。OPMAのアルデヒド基の減少によって、3HPMA、すなわちアクロレイン曝露の主要尿代謝物が形成され、OPMAのアルデヒド基の酸化によって、N-アセチル-S-[2-カルボキシエチル]-L-システイン(CEMA)が微量代謝物として形成される。
【0082】
CEMAの尿中排泄は、非喫煙者よりも喫煙者で一貫して高いことが示された。非喫煙者の範囲は、大抵2ng/mLを下回り、喫煙者の20ng/mLから205ng/mLより高いレベルに増加する。研究では、喫煙者は、187±181μg/L(平均±SD)または184μg/LのCEMAを排泄した一方、非喫煙者は、4.6±35μg/Lまたは1.9μg/Lのみを排泄した。
【0083】
5日間の拘束期間中に20、15、5、または0CPDを正確に喫煙する必要があった、20CPD以上を消費する喫煙者は、紙巻たばこの数と尿のCEMAレベル(すなわち、それぞれ218.0、168.0、93.2、および38.3μg/24h)との間に用量相関を示した。5日から8日の禁煙研究では、約1/7から1/10の著しく低い尿中のCEMAレベルを示した。
【0084】
エレクトロスプレーイオン化タンデム型質量分析と連結された、超高性能液体クロマトグラフィーなど、CEMAを測定するための様々な方法が当該技術分野で知られている。尿中のCEMAの判定についてはまた、Anal.Bioanal.Chem.(2009年)393:969~981、およびAnal Biochem.(2012年)430(1):75~82にも記載された。さらに、CEMAは、CEMAに特異的に結合し、随意で免疫原性担体に結合される、モノクローナル抗体などの抗体、またはその断片を使用して検出できる。例えば、国際公開第2009/010296号に記載される方法を用いることができる。
【0085】
Hazizaらの Data in Brief 10(2017年)、283~293は、24時間尿中のCEMAレベルについて記載している。ベースライン測定は、対象に自身が選んだ従来の紙巻たばこのブランドを、2日間吸うことを許可することによって行われる。この2日の期間後、次に、従来の紙巻たばこを吸うことを継続してもらう、無煙代替物に切り替えてもらう、または禁煙してもらうように対象を選択する。5日間の調査期間後に、それから24時間尿を集めて、その中の代謝物レベルを測定する。
【0086】
従来の紙巻たばこの消費者では、ベースラインCEMAは、83~115ng/mgクレアチニン(98ng/mgクレアチニン)である。5日目には、これが85~115ng/mgクレアチニン(99.5ng/mgクレアチニン)に増加する。ベースラインと比較して、これは-4%から12%の変化(平均増加率4.2%)を表す。
【0087】
無煙代替物の消費者では、ベースラインCEMAは、85~112ng/mgクレアチニン(98ng/mgクレアチニン)である。5日目に、これが11~15ng/mgクレアチニン(13ng/mgクレアチニン)に減少する。ベースラインと比較して、これは-87%から-85%の変化(平均減少率-86%)を表す。
【0088】
禁煙者では、ベースラインCEMAは、89~119ng/mgクレアチニン(103ng/mgクレアチニン)である。5日目に、これが10~15ng/mgクレアチニン(12ng/mgクレアチニン)に減少する。ベースラインと比較して、これは-88から-85%の減少(平均減少率-86%)を表す。
【0089】
本開示による装置および方法は、約11ng/mgクレアチニンから約120ng/mgクレアチニンの範囲のCEMAを検出するように構成されることが適切である。
【0090】
本開示による装置および方法は、約11ng/mgクレアチニンから約80ng/mgクレアチニンの範囲のCEMAを検出するように構成されることが適切である。
【0091】
本開示による装置および方法は、約5ng/mgクレアチニンから約80ng/mgクレアチニンの範囲のCEMAを検出するように構成されることが適切である。
【0092】
これらの量は従来の紙巻たばこユーザーに対する診断に用い、読み取り値は5日の調査期間後に24時間尿で採取される。
【0093】
本開示による装置、方法、およびキットは、約11~15pg/mgクレアチニンの範囲のCEMAを検出するように構成されることが適切である。本開示による装置、方法、およびキットは、13ng/mgクレアチニンの量のCEMAを検出するように構成されることが適切である。これらの量は無煙代替物ユーザーに対する診断に用い、読み取り値は5日の調査期間後に24時間尿で採取される。
【0094】
本開示による装置、方法、およびキットは、約10~15ng/mgクレアチニンの範囲のCEMAを検出するように構成されることが適切である。本開示による装置、方法、およびキットは、12ng/mgクレアチニンの量のCEMAを検出するように構成されることが適切である。これらの量は禁煙者に対する診断に用い、読み取り値は5日の調査期間後に24時間尿で採取される。
【0095】
本開示による装置、方法、およびキットは、約32ng/mlから約98ng/ml、もしくは約7~17ng/ml、もしくは約31ng/mlと90ng/mlとの間、または約5ng/mlから12ng/mlの範囲のCEMAを検出するように構成されることが適切である。これらの値は、尿中、適切には24時間尿中で判定されることが適切である。
【0096】
本開示による装置、方法、およびキットは、結果を視覚的に表示するように構成されることが適切である。結果は、機械を使用して、または眼で判定できる。特定の実施形態では、結果は眼で判定される。
【0097】
特定の実施形態では、結果は眼で判定される。一実施形態では、装置、方法、およびキットは、24時間尿中で10pg/ml以上であるCEMAの閾値レベルを超えたときに、結果を視覚的に表示するように構成される。別の実施形態では、装置、方法、およびキットは、24時間尿中で20pg/ml以上、30pg/ml以上、40pg/ml以上、または50pg/ml以上であるCEMAの閾値レベルを超えたときに、結果を視覚的に表示するように構成される。
【0098】
代謝物の量
本明細書に記載するように、代謝物の量は、表1に提示する、例えば5日目のデータを使用して、対象の喫煙ステータスを解読するために測定できる。
【0099】
例えば、24時間尿中の総NNALの量が、調査期間の5日目に約37~115pg/mlであるか、および/もしくは24時間尿中のCEMAの量が、調査期間の5日目に約31~90ng/mlであるか、ならびに/または24時間尿中のコチニンの量が、調査期間の5日目に約456~1300ng/mlであるかは、対象が、従来の紙巻たばこの消費者であることを示す。ベースライン測定は、対象に自身が選んだ従来の紙巻たばこのブランドを、2日間吸うことを許可することによって行われる。この2日の期間後、対象は次に、自身の好みに従って、従来の紙巻たばこを吸うことを継続するか、無煙代替物に切り替えるか、または禁煙するかを選択する。5日間の調査期間後に、それから24時間尿を集めて、その中の代謝物レベルを測定する。
【0100】
さらなる例として、24時間尿中の総NNALの量が、調査期間の5日目に約17~40pg/mlであるか、および/もしくは24時間尿中のCEMAの量が、調査期間の5日目に約5~11ng/mlであるか、ならびに/または24時間尿中のコチニンの量が、調査期間の5日目に約10~42ng/mlであるかは、対象が、無煙代替品の消費者であることを示す。ベースライン測定は、対象に自身が選んだ従来の紙巻たばこのブランドを、2日間吸うことを許可することによって行われる。この2日の期間後、対象は次に、自身の好みに従って、従来の紙巻たばこを吸うことを継続するか、無煙代替物に切り替えるか、または禁煙するかを選択する。5日間の調査期間後に、それから24時間尿を集めて、その中の代謝物レベルを測定する。
【0101】
さらなる例として、24時間尿中の総NNALの量が、調査期間の5日目に約17~40pg/mlであるか、および/もしくは24時間尿中のCEMAの量が、調査期間の5日目に約4~15ng/mlであるか、ならびに/または24時間尿中のコチニンの量が、調査期間の5日目に約10~42ng/mlであるかは、対象が禁煙していたことを示す。ベースライン測定は、対象に自身が選んだ従来の紙巻たばこのブランドを、2日間吸うことを許可することによって行われる。この2日の期間後、対象は次に、自身の好みに従って、従来の紙巻たばこを吸うことを継続するか、無煙代替物に切り替えるか、または禁煙するかを選択する。5日間の調査期間後に、それから24時間尿を集めて、その中の代謝物レベルを測定する。
【0102】
喫煙ステータスの診断に用いる、上に示した代謝物の量を考慮して、方法、装置、およびキットは、これらの診断レベルを測定できるように構成される。方法、装置、およびキットは、これらの診断レベルが迅速かつ使いやすい形式で測定できるように構成されることが適切である。特定の実施形態では、24時間尿中の総NNALの量が、調査期間の5日目に約37~115pg/mlであり、および/もしくは24時間尿中のCEMAの量が、調査期間の5日目に約31~90ng/mlであり、ならびに/または24時間尿中のコチニンの量が、調査期間の5日目に約456~1300ng/mlであることは、対象が従来の紙巻たばこの消費者であるという診断に用いるため、これらのときを示すように、方法、装置、およびキットが構成される。
【0103】
特定の実施形態では、方法、装置、およびキットは、24時間尿中の総NNALの量が、調査期間の5日目に約17~40pg/mlであり、および/もしくは24時間尿中のCEMAの量が、調査期間の5日目に約5~11ng/mlであり、ならびに/または24時間尿中のコチニンの量が、調査期間の5日目に約10~42ng/mlであるときが、対象が無煙代替品の消費者であることを示すことを表示するように構成される。
【0104】
特定の実施形態では、方法、装置、およびキットは、24時間尿中の総NNALの量が、調査期間の5日目に約17~40pg/mlであり、および/もしくは24時間尿中のCEMAの量が、調査期間の5日目に約4~15ng/mlであり、ならびに/または24時間尿中のコチニンの量が、調査期間の5日目に約10~42ng/mlであることは、対象が禁煙していたという診断に用いるため、これらのときを示すように、方法、装置、およびキットが構成される。
【0105】
一つの例示的なアッセイ形式では、従来の紙巻たばこの消費者である対象の診断に用いる一つの試験、無煙代替品の消費者である対象の診断に用いる一つの試験、および禁煙していた対象の診断に用いる一つの試験に対応して、三つの個別試験を実行できる。一つの例示的な試験形式は、尿試験紙などの、携帯用側方流動イムノアッセイ装置であり、試験対象の試料は、三つの異なる携帯用側方流動イムノアッセイ装置で検証され、各々は異なる三つの喫煙ステータス各々の診断に用いるように構成される。別の試験形式では、三つ全ての試験を一つの携帯用側方流動イムノアッセイ装置に統合できる。
【0106】
好ましい実施形態では、CEMAおよびコチニンによって、少なくとも75%の特異性および感度で、2日後に従来の紙巻たばこ喫煙者と禁煙者との分離を確実にすることができる。
【0107】
2日目に、従来の紙巻たばこ喫煙者のCEMAレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約32ng/mlから約98ng/mlの間となる。
【0108】
2日目に、従来の紙巻たばこ喫煙者のコチニンレベルは、約459ng/mlから約1350ng/mlの間となる。総NNALは5日目から30日目の間、同じレベルの弁別を提供する。5日目から30日目の間に、従来の紙巻たばこ喫煙者の総NNALレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約33pg/mlから約132pg/mlの間となる。
【0109】
2日目に、禁煙者のCEMAレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約7~17ng/mlとなる。
【0110】
2日目に、禁煙者のコチニンレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約339~959ng/mlとなること。
【0111】
5日目から30日目の間に、禁煙者の総NNALレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約2.5~46pg/mlとなる。
【0112】
無煙代替品の消費者は、少なくとも75%の特異性および感度により、5日目の後、CEMAおよび総NNALに基づいて従来の紙巻たばこ喫煙者と区別できる。
【0113】
5日目に、従来の紙巻たばこ喫煙者のCEMAレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約31ng/mlと90ng/mlとの間となる。
【0114】
5日目に、従来の紙巻たばこ喫煙者の総NNALレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約37ng/mlと115ng/mlとの間となる。
【0115】
5日目に、無煙代替品の消費者のCEMAレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約5ng/mlから12ng/mlの間となる。
【0116】
5日目に、無煙代替品の消費者の総NNALレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約17~41ng/mlとなる。
【0117】
無煙代替品の消費者は、2日後に遊離のコチニンに基づいて禁煙者と区別できる(少なくとも75%の特異性および感度で)。
【0118】
2日目に、無煙代替品の消費者の遊離のコチニンレベルは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約546~1160ng/mlとなる。
【0119】
2日目に、禁煙者の遊離のコチニンは、適切には尿中で、より適切には24時間尿で、約128~313ng/mlとなる。
【0120】
一実施形態では、コチニンの量が、調査期間の5日目に、24時間尿中で約10.6ng/mlと41.5ng/mlとの間であるかが、禁煙者を示し、調査期間の5日目に、総NNALの量が、24時間尿中で約37.7pg/mlと115pg/mlとの間であり、かつCEMAの量が、24時間尿中で約31.1ng/mlと90ng/mlとの間であるかが、燃焼式たばこに曝露された対象を示し、コチニンの量が、調査期間の5日目に、24時間尿中で約652.5ng/mlと1115ng/mlng/ml以上との間であるかが、加熱式たばこに曝露された対象を示す。
【0121】
これらの値は、表1および図1から図3に提示するデータより理解され得る。
【0122】
代謝物の基準値
基準値は、対象に検出された一つ以上の代謝物の量を、既知の基準値に対して比較して、対象の喫煙ステータスに関する判定に達するように用いることができる。基準値を上回る、もしくは下回る、または基準値と同じ値は、閾値を越えていたことを示しうる。例えば、ベースライン値を上回るまたは下回る値が、閾値を超えていたことを示してもよい。
【0123】
ベースラインと比較して、24時間尿中における、総NNALの-2.8%から10.5%の変化(平均増加率3.9%)は、5日間の調査期間後の従来の紙巻たばこの消費者を示す。
【0124】
ベースラインと比較して、24時間尿中における、総NNALの-57%から-51%の変化(平均減少率-54%)は、5日間の調査期間後の無煙代替品の消費者を示す。
【0125】
ベースラインと比較して、24時間尿中における、総NNALの-67%から-61%の減少(平均減少率-63.9%)は、5日間の調査期間後の禁煙者を示す。
【0126】
ベースラインと比較して、24時間尿中における、CEMAの-4%から12%の変化(平均増加率4.2%)は、5日間の調査期間後の従来の紙巻たばこの消費者を示す。
【0127】
ベースラインと比較して、24時間尿中における、CEMAの-87%から-85%の変化(平均減少率-86%)は、5日間の調査期間後の無煙代替品の消費者を示す。
【0128】
ベースラインと比較して、24時間尿中における、CEMAの-88%から-85%の減少(平均減少率-86%)は、5日間の調査期間後の禁煙者を示す。
【0129】
基準値は、本明細書に教示する通りの方法および使用内(すなわち、方法および使用の工程を構成する)、または方法および使用の外部(すなわち、方法および使用の工程を構成しない)のどちらかに確立されてもよい。したがって、本明細書に教示する方法または使用のうちのいずれか一つは、必要な基準値を確立する工程を含みうる。ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、2日目におけるCEMAレベルの1.5%から18%の減少は、従来の紙巻たばこの喫煙者を示す。
【0130】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、2日目における遊離のコチニンレベルの16%の減少から6%の増加は、従来のものの喫煙者を示す。
【0131】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、5日目における総NNALの20%の減少から6%の増加は、従来的な紙巻たばこの喫煙者を示す。ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、30日目における総NNALの29%の減少から17.5%の増加は、従来の紙巻たばこの喫煙者を示す。
【0132】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、2日目におけるCEMAレベルの79%から80%の減少は、禁煙者を示す。
【0133】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、2日目におけるコチニンレベルの74%から78%の減少は、禁煙者を示す。
【0134】
ベースラインと比較して、5日目における総NNALの56%から67%の減少は、禁煙者を示す。ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、30日目における総NNALの68%から72%の減少は、禁煙者を示す。
【0135】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、5日目におけるCEMAレベルの9.5%から20.6%の減少は、従来の紙巻たばこの消費者を示す。
【0136】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、5日目における総NNALレベルの19%の減少から5%の増加は、従来の紙巻たばこの消費者を示す。
【0137】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、5日目におけるCEMAレベルの83%から84%の減少は、無煙代替品の消費者を示す。
【0138】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、5日目における総NNALレベルの55%から58%の減少は、無煙代替品の消費者を示す。
【0139】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、2日目における遊離のコチニンの74%から77%の減少は、禁煙者を示す。
【0140】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、2日目における遊離のコチニンの0.3%から4%の減少は、無煙代替品の消費者を示す。
【0141】
ベースラインと比較して、適切には尿中、より適切には24時間尿中の、2日目における遊離のコチニンの74%から78%の減少は、禁煙者を示す。
【0142】
これらの値は、表1および図1から図3に提示するデータに基づいて計算される。
【0143】
クレアチニンへの正規化
定量的結果が必要とされるとき、および正常な腎機能の対照を提供するためなど、いくつかの実施形態では、本発明の方法はクレアチニン測定値を含むことができ、NNALおよびCEMAなどの代謝物の値を、尿クレアチニンに正規化する。そのような正規化は、半定量試験または定性試験には必要ない。尿試験紙などの携帯用側方流動イムノアッセイ装置は通常、半定量または定性的な結果を報告しているため、クレアチニンへの正規化は本開示のこれら実施形態では必要ない。さらに、定量的な結果が必要な場合でも、尿試料中のクレアチニンに対する基準値が導き出されているため、クレアチニン対照の使用が、常に重要または必須ではあるわけではない(例えば、Occupational Medicine(2011年)、61巻、第5版、349~353ページを参照)。
【0144】
代謝物の検出
代謝物の量、もしくは数量、またはレベルは、当該技術分野で知られ、本明細書に記載しうるような、いかなる適切な技術によって測定されてもよい。例えば、それぞれの代謝物に特異的に結合できる結合剤を用いてもよい。結合剤は、とりわけ、抗体もしくはその断片、アプタマー、アフィマー、フォトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、または小分子であってもよい。例えば、イムノアッセイ技術、もしくは質量分析解析法、もしくはクロマトグラフィー法、またはそれら方法の組み合わせを用いてもよい。
【0145】
特定の実施形態では、いかなる一つ以上の代謝物の存在および/または数量も、イムノアッセイ技術を使用して測定されうる。様々な種類のイムノアッセイ技術が、当該技術分野で知られている。一つの形式では、代謝物は、標識された検出試薬に抱合され、特異的結合剤に特異的に結合するように競合できる。試料中における代謝物の有無は、可視(または測定可能な)信号の有無によってそれぞれ測定される。別の形式では、標識された検出試薬は、複合体を形成する代謝物に結合し、複合体は特異的結合剤によって固体支持体上に固定化される。液体試料中における代謝物の有無は、可視(または測定可能な)信号の有無によって測定される。様々な装置が当該技術分野で周知であり、さらにそれらについて本明細書に記載する。そのような装置は、簡単かつ素早く使用できるため、一般的には1回の使用および家庭での使用に適しており、結果は肉眼で見えるように視覚化できる。
【0146】
一部の状況では、例えば、肉眼での解釈が不可能であるか、または不確実性を生じる場合、代謝物の存在および/または数量を判定するために、より複雑な装置が必要とされる場合がある。そのような装置は、イムノクロマトグラフィー装置を受けるために適合する容器と、装置の明確な領域の少なくとも一つのデジタル画像を取得するように適合する撮像装置と、少なくとも一つのデジタル画像を処理するように適合するプロセッサと、定性的および/または定量的評価の結果を報告するための手段とを含むことができる。そのような装置は、国際公開第2016/075405号に記載されており、イムノクロマトグラフィー装置上に配置された液体試料に含有される可能性が高い、少なくとも一つの代謝物の定性的および/または定量的評価のためのシステムが開示されている。評価システムは、読み取り装置と分析装置とを備え、構造上互いに分離しうる。読み取り装置は、イムノクロマトグラフィー装置を受けるように適合する容器、およびその表示領域の少なくとも一つのデジタル画像を取得するための撮像装置を備える。分析装置は、少なくとも一つのデジタル画像を処理するように適合するプロセッサをさらに備えることができ、これは液体試料に含有されうる、少なくとも一つの代謝物の定性的および/または定量的評価に適している。分析装置は、評価の結果を出力するための手段をさらに含んでもよい。評価システムは、読み取り装置から遠隔分析装置に取得した少なくとも一つのデジタル画像を、例えば、通信ネットワークを介して送信するように適合した装置をさらに備えることができる。読み取り装置は携帯型装置でありうる。撮像装置は、光学(または写真)センサーと、アナログデジタル変換器と、プロセッサ、および変換器より来るデータからデジタル画像を生成するように適合しうるコンピュータプログラムを備える処理モジュールとを備えることができる。光学センサーは、電磁放射をアナログ電気信号に変換するための感光性電子部品でありうる。得られた信号は、アナログデジタル変換器によってデジタル化され、次に処理モジュールによって処理されて、イムノクロマトグラフィー装置の顕色ゾーンに対応するデジタル画像が得られる。少なくとも一つのデジタル画像を送信するように適合する装置は、読み取り装置から少なくとも一つのデジタル画像を送信できる、有線手段または無線手段を含むことができる。読み取り装置によって取得されたデジタル画像は、専用コンピュータサーバなどの遠隔分析装置へ送信できる。動作中、読み取り装置は送信装置と対となり、それらの間でのデータ交換を可能にできる。分析される試料をイムノクロマトグラフィー装置に配置し、十分な時間インキュベートできる。読み取り装置は次に、送信装置への送信のために、イムノクロマトグラフィー装置からデジタル画像を取得できる。その後、デジタル画像を送信装置によって分析装置へ送信できる。分析装置によって受信される各デジタル画像は、分析のために処理できる。
【0147】
非限定的な例では、イムノアッセイ技術は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法、DRIイムノアッセイ、定量イムノアッセイ、側方流動イムノアッセイ、マイクロ流体イムノアッセイ、および凝集イムノアッセイ技術を使用し、好ましくはELISAを使用する。一実施形態では、側方流動イムノアッセイの使用が好ましい。別の実施形態では、競合形式の側方流動イムノアッセイの使用が好ましい。別の方法として、または追加的に、本明細書に教示するような、いかなる一つ以上の代謝物の存在および/または数量は、抗体もしくはクロマトグラフィーに基づく技術を使用して、競合結合アッセイを使用して、ならびに/または誘導体化剤および/もしくは着色剤付き薬剤を使用して測定されてもよい。好ましい実施形態では、本明細書に教示するような、いかなる一つ以上の代謝物の存在および/または数量は、それぞれのマーカーに特異的に結合できる結合剤を使用して、好ましいが非限定的な例においては、アプタマー、抗体もしくはその断片、アフィマー、フォトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、または小分子を使用して、好ましくは、アプタマー、アフィマー、もしくは抗体を使用して、より好ましくは、抗体もしくはその断片、またはアフィマーを使用して測定されてもよい。
【0148】
結合剤
特異的結合剤は、親和性定数(KA)を用いてその意図された標的に結合してもよく、かかる結合はKA≧1×106-1、より好ましくはKA≧1×107-1、まだより適切にはKA≧1×108-1、一層より適切にはKA≧1×109-1、さらにより適切にはKA≧1×1010-1またはKA≧1×1011-1であり、式中、KA=[SBA_T]/[SBA][T]であり、SBAは特異的結合剤を表し、Tは意図された標的を表す。KAの判定は、例えば、平衡透析およびスキャッチャードプロット分析を使用してなど、当該技術分野で知られる方法によって遂行されてもよい。
【0149】
抗体
抗体を使用して、本明細書に記載する代謝物のうちの一つ以上を検出できる。抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMクラスのうちのいずれであってもよく、好ましくはIgGクラス抗体である。抗体は、ポリクローナル抗体、例えば、そこから精製される(例えば、アフィニティー精製した)抗血清またはイムノグロブリンであってもよい。抗体は、モノクローナル抗体、またはモノクローナル抗体の混合物であってもよい。モノクローナル抗体は、より高い選択性および再現性を持つ、ある特定の抗原、または抗原内のある特定のエピトープを標的にできる。一例としては、限定はされないが、モノクローナル抗体は、Kohlerら (1975年)(Nature 256:495)により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作られてもよく、または組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号のような)によって作られてもよい。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clacksonら (1991年)(Nature 352:624~628)およびMarksら (1991年)(J Mol Biol 222:581~597)により記載されたような技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから分離されてもよい。
【0150】
抗体は抗体断片であってもよい。「抗体断片」は、抗原結合またはその可変領域を備える、インタクトな抗体の一部分を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、およびscFv断片、二重特異性抗体、線形抗体、単鎖抗体分子、ならびに例えば、バイボディ(dibody)、トリボディ(tribody)、および多体といった、抗体断片から形成される多価抗体および/または多重特異性抗体を含む。上のFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvなどの記号表示は、技術分野で確立された(art-established)意味を有することを意図している。
【0151】
抗体という用語は、いかなる動物種、好ましくは、例えば、鳥類および哺乳類を含む脊椎動物種に由来する一つ以上の部分を起源とする、またはそれらを含む抗体を含む。限定されないものの、抗体は、鶏、七面鳥、ガチョウ、アヒル、ホロホロ鳥、ウズラ、またはキジであってもよい。また限定されないものの、抗体は、ヒト、ネズミ科(例えば、マウス、ラットなど)、ロバ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラクダ(例えば、フタコブラクダおよびヒトコブラクダ)、ラマ(例えば、アルパカ、ラマ、またはビクーニャ)、またはウマであってもよい。
【0152】
当業者は、抗体が、一つ以上のアミノ酸の欠失、追加、および/または置換(例えば、保存的置換)を含んでもよく、ただしそのような変更によっても、それぞれの抗原の結合が保持されることを理解するであろう。抗体はまた、その成分アミノ酸残基(例えば、グリコシル化など)の一つ以上の自然なまたは人工的な改変を含んでもよい。
【0153】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびにそれらの断片の製造方法は、組み換え型抗体またはその断片の製造方法と同様に、当該技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane「Antibodies:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク、1988年)、Harlow and Lane「Using Antibodies:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨーク、1999年、ISBN 0879695447)、「Monoclonal Antibodies:A Manual of Technique」(Zola編、CRC Press 1987、ISBN 0849364760)、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」(Dean & Shepherd編、Oxford University Press 2000、ISBN 0199637229)、Methods in Molecular Biology248巻「Antibody Engineering:Methods and Protocols」(Lo編、Humana Press 2004、ISBN 1588290921)を参照)。
【0154】
結合分子は、別の薬剤による(例えば、プローブ結合パートナーによる)検出を許可するタグで標識されてもよい。そのようなタグは、例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、hisタグ、mycタグ、マルトース、マルトース結合タンパク質、または結合パートナーを有する、当該技術分野で知られるいかなる他の種類のタグであり得る。プローブ:結合パートナーの配設で利用可能な会合の例は、いかなるものであってもよく、例えば、ビオチン:ストレプトアビジン、hisタグ/金属イオン(例えば、Ni2+)、マルトース/マルトース結合タンパク質を含む。
【0155】
結合分子または結合分子コンジュゲートは、検出を促進するように、検出剤と関連付けられてもよく、または結合剤に付着してもよい。ラボ検出剤の例には、発光標識、染料などの比色標識、蛍光標識、または電気活性剤(例えば、フェロシアン化物)などの化学標識、酵素、放射活性標識、もしくは高周波標識を含むが、これらに限定されない。より一般的には、検出剤は粒子である。本発明の実践に有用な粒子の例には、コロイド金粒子、コロイド硫黄粒子、コロイドセレン粒子、コロイド硫酸バリウム粒子、コロイド硫酸鉄粒子、ヨウ素酸金属粒子、ハロゲン化銀粒子、シリカ粒子、コロイド金属(含水)酸化物粒子、コロイド硫化金属粒子、コロイドセレン化鉛粒子、コロイドセレン化カドミウム粒子、コロイド金属リン酸塩粒子、コロイド金属フェライト粒子、有機層または無機層で被覆されている、上述のコロイド粒子のいずれか、タンパク質分子もしくはペプチド分子、リポソーム、またはポリスチレンラテックスビーズなどの有機ポリマーラテックス粒子が含まれるがこれらに限定されない。好ましい粒子はコロイド金粒子である。コロイド金は、G.Frensの1973 Nature Physical Science、241:20(1973年)に概説される方法など、いかなる従来の手段によって作られてもよい。代替的方法は、米国特許第5,578,577号、第5,141,850号、第4,775,636号、第4,853,335号、第4,859,612号、第5,079,172号、第5,202,267号、第5,514,602号、第5,616,467号、第5,681,775号に記載されうる。
【0156】
抗CEMA抗体
本明細書に記載するように、CEMAは、CEMAに特異的に結合し、随意で免疫原性担体に結合される、モノクローナル抗体などの抗体、またはその断片を使用して検出できる。例えば、本明細書に記載する方法、または国際公開第2009/010296号を用いることができる。さらなる態様は、免疫原性担体に結合されたCEMAを含むコンジュゲートに関する。また、CEMAを免疫原性担体に結合することによって得られる、コンジュゲートについて開示する。免疫原性担体は、例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、またはポリマーでありうる。コンジュゲートの調製方法もまた開示し、方法は、(a)免疫原性担体を活性化することと、(b)工程a)で得られた活性化免疫原性担体をCEMAに結合することとを含む。本開示のさらなる態様は、CEMAに特異的に結合できる、抗CEMA抗体またはその断片に関する。本明細書に記載するコンジュゲートを用いてヒト以外の動物を免疫化することを含む、この抗体またはその断片を生み出す方法も開示する。コンジュゲートを含む医薬組成物はまた、試料を抗CEMA抗体またはその断片にさらすことと、抗体またはその断片のCEMAへの結合を検出することとを含む、試料中のCEMAを検出する方法として開示する。結合は、試料中のCEMAの存在を示す。また、対象からの試料を、本明細書に記載するコンジュゲートにさらすことと、抗体またはその断片へのコンジュゲートの結合を検出することとを含む、CEMAに特異的な抗体またはその断片の検出方法についても記載する。
【0157】
抗CEMA抗体を産生させる一つの方法は、ハイブリドーマの使用を伴う。病原体を含まないBALB/cマウスは、完全なFreundのアジュバント(Sigma社)を使用してCEMAコンジュゲートで刺激されうる。マウスは、14日目、16日目、28日目、30日目、42日目、および44日目に、コレラ毒素(Sigma社)の存在下で同じ用量の抗原を用いて、胃管挿入で追加免疫されうる。血清は、0日目、14日目、28日目、42日目、55日目、および84日目に抜き出され、抗CEMA抗体価は直接ELISAによって測定できる。ハイブリドーマ融合の三日前に、不完全なFreundのアジュバント(Sigma社)を用いて、最も高いCEMA特異的抗体価を有するマウスに、最終的な追加免疫を実施しうる。ClonaCell(商標)-HY完全キット(StemCell Technologies社)を使用してハイブリドーマを生み出すことができる。簡潔に述べると、免疫化マウスの脾臓からの脾細胞を洗浄し、親骨髄腫細胞を伴うPEG含有培地中でインキュベートする。24時間の増殖後、細胞はハイブリドーマ用に、メチルセルロースベースのHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミン)選択培地と混合される。混合物を皿上に蒔いて37℃でインキュベートし、融合細胞を14日間成長させる。次いで、ハイブリドーマコロニーを採集し、成長培地を持つ96ウェルプレートに移動させうる。37℃で4日間成長させた後、直接ELISAによって、特異的[NNK-C2]抗体の存在に対して各上清を試験できる。陽性クローンは、mAb産生用のタンパク質を含まない栄養補助剤である、HyClone HyQ PF-Mab(Perbio Sciences社)が補充されたRPMI-1640培地にさらに適合した。
【0158】
検出
いかなる既存の、利用可能な、または従来の分離、検出、および定量法を本明細書で使用して、試料中の代謝物(本明細書に教示するような、いかなる一つ以上の代謝物を含む、試料中のそのように測定すべき対象のいかなる分子または分析物も、以下の本明細書ではまとめて代謝物と称してもよい)の有無(例えば、読み出し情報が存在する場合と存在しない場合、または検出可能な量と検出不可能な量)、および/もしくは数量(例えば、読み出し情報が、例えば、絶対濃度または相対濃度など、絶対的な数量の場合と相対的な数量の場合)を判定、もしくは検出、または測定してもよい。
【0159】
例えば、そのような方法には、生化学的アッセイ法、イムノアッセイ法、競合結合アッセイ、サンドイッチ結合アッセイ、質量分析解析法、もしくはクロマトグラフィー法、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0160】
競合結合アッセイおよびイムノアッセイ
競合結合アッセイおよびイムノアッセイを使用して、本明細書に記載する代謝物のうちの一つ以上を検出できる。これらの方法は、試料中で一つ以上の対象代謝物を検出するためのものとして知られ、対象代謝物用アッセイの特異性が、一般的には抗体である特異的結合剤と、対象の代謝物との間の特異的結合によって与えられる。定量アッセイを使用して、血漿または血清などの生体マトリックス中の特異的部分の量を測定する。イムノアッセイ技術には、直接ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、間接ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISA、マルチプレックスELISA、放射イムノアッセイ(RIA)技術、および当該技術分野で知られる他の類似技術が含まれるが、これらに限定されない。これらのイムノアッセイ法の原理は、例えば、John R.Crowtherの「The ELISA Guide book」(1st ed.、Humana Press 2000、ISBN 0896037282)によって、当該技術分野で知られている。
【0161】
さらなる説明として、限定はされないが、直接ELISAは、マイクロウェルプレートなどの固体支持体上に固定化された試料中、標的抗原に結合し、それによって定量化するように、標識された一次抗体またはその断片を用いる。間接ELISAは、標的抗原に結合する非標識一次抗体と、抗原結合性一次抗体を認識し、定量化することを可能にする標識二次抗体とを使用する。サンドイッチELISAでは、標的抗原は、抗原内の一つの抗原部位に結合する、固定化された「捕捉」抗体を用いて、試料から捕捉され、非結合代謝物を除去した後、そのように捕捉された抗原が、抗原内の別の抗原部位に結合する「検出」抗体を使用して検出され、検出抗体は、直接標識されてもよく、または上記のように間接的に検出可能であってもよい。競合ELISAは、一次抗体または標的抗原のいずれかでありうる、標識された「競合体」を使用する。実施例では、固定化された非標識一次抗体は、試料と共にインキュベートされ、この反応が平衡に達することが可能になり、次いで標識された標的抗原が追加される。後者は、その結合部位がまだ、試料からの標識されていない標的抗原に占有されていない場所ならどこであろうとも、一次抗体に結合する。したがって、標識された結合抗原の検出量は、試料内の非標識抗原の量と逆の相関がある。マルチプレックスELISAでは、通常、複数の配列アドレスで、単一区画(例えば、マイクロプレートウェル)内の二つ以上の代謝物を同時に検出することが可能になる(さらなる指針として、例えば、Nielsen & Geierstanger 2004.J Immunol Methods 290:107-20、およびLingらの2007.Expert Rev Mol Diagn 7:87~98を参照)。理解されるように、ELISA技術における標識は大抵、酵素(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼなど)抱合によるものであり、終点は通常、比色、化学発光または蛍光、磁気、圧電気、焦電気、およびその他である。
【0162】
放射イムノアッセイ
放射イムノアッセイ(RIA)を使用して、本明細書に記載する代謝物のうちの一つ以上を検出できる。これは競合をベースとした技術であり、既知の数量の放射能で標識された(例えば、125Iまたは131I標識された)標的抗原を、抗体またはその断片と混合し、その後、試料からの非標識抗原または「低温」抗原を追加し、置換された標的抗原の量を測定することを伴う(例えば、指針として、「An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques」(Chard T編集による、Elsevier Science 1995、ISBN 0444821198を参照)。
【0163】
マイクロ流体システム
マイクロ流体システムを使用して、本明細書に記載する代謝物のうちの一つ以上を検出できる。これらは微小電気機械システム(MEMS)技術によって製作され、大抵「ラボオンチップ」(LOC)、「バイオチップ」、または「マイクロ総合分析システム」と呼ばれる。これらは多くの場合、大規模な対応物の小型化版として想定される。これらの小型化システムは、従来実験室で実施される全体プロトコルを遂行できる。試料前処理、試料/試薬輸送、混合、反応、分離、検出、および産物収集をすべて、単一のLOCシステム上で自動的に実施できる。マイクロポンプ、マイクロバルブ、マイクロフィルター、マイクロリアクター、およびマイクロセパレーターなどの機能的マイクロ流体装置は、特定のアッセイを実施するように、微細加工されさらに統合されてもよい。これらの開発されたLOCシステムの利点には、試料/試薬消費量の少なさ、汚染リスクの低減、感度の向上、単位コストの削減、低電力消費量、ならびに高い信頼性および機能性が含まれる。より重要なことは、コンパクトな形態から生じる携帯性であり、ポイントオブケア(POC)適用の鍵となる要因である。
【0164】
凝集イムノアッセイ
凝集イムノアッセイを使用して、本明細書に記載する代謝物のうちの一つ以上を検出できる。これらは、抗体またはその断片の、抗原-DNA抱合体への結合および凝集(塊形成)を利用し、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)を含む方法によって、DNA鎖の連結および続く定量化が可能になる。凝集PCR(ADAP)は、こうした抗体結合を検出するための超高感度液相法である。他のイムノPCR(IPCR)検出方法のように、ADAPは、抗体‐抗原認識の特異性とPCRの感度とを組み合わせる。ADAPは、5~6桁にわたる動的な範囲で、試料2μl中の抗体のモル量(ゼプトモルからアトモル)を検出する。例えば、ADAPにより、FDAが承認した放射イムノアッセイに対して1000倍増加した感度で、ヒトである患者の血漿から抗サイログロブリン自己抗体を検出することが可能になる。ADAPではまた、一つの実験で複数の抗体を同時に検出することが可能になる。
【0165】
DRI技術
DRI技術を使用して、本明細書に記載する代謝物のうちの一つ以上を検出できる。DRI技術の一例は、Thermo Scientific(商標)によって提供されるものであり、酵素グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)で標識された薬剤または薬剤代謝物と、固定量の特異的抗体結合部位の試料からの遊離薬剤との間の競合に基づく。試料からの遊離薬剤がない場合、特異的抗体はG6PDHで標識された薬剤に結合する。結果として、酵素活性は抑制される。薬剤は試料中に存在する場合、限定的な数の抗体結合部位に対して、酵素‐薬剤コンジュゲートと競合し、結果としてより活性のある酵素が得られる。この現象によって、尿中の薬剤濃度と酵素活性との間に直接的な関係が生まれる。酵素G6PDH活性は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)をNADHに変換する能力を測定することによって、340nmの分光測定で判定される。
【0166】
イムノクロマトグラフィー
イムノクロマトグラフィーは、本明細書に記載する代謝物のうちの一つ以上を検出するように使用できる、本開示の好ましい検出方法である。これはまた、側方流動イムノクロマトグラフィーアッセイとしても知られる。イムノクロマトグラフィーは、専門の高価な機器を必要とせずに、尿などの試料中の分析物の存在(または欠如)を検出するための単純な装置に統合されうる。イムノクロマトグラフィーはまた、以下に論じるように、携帯用側方流動イムノアッセイ装置に統合できる。
【0167】
イムノクロマトグラフィーの一般原理は、側方流動試験用細片の様々なゾーンを通る外力の補助なしに、毛細管作用によって移動する、検出すべき代謝物を含有する液体試料に基づく。側方流動試験用細片は、代謝物と相互作用できる分子を付着させる、重合体細片でありうる。典型的な側方流動試験用細片は、安定性および取り扱いのために裏当てカード上に取り付けられる、重なり合う膜から成る。そのような側方流動試験用細片は、試料で濡れると、代謝物の存在下で視覚的に変化し、および/または試料中の代謝物の濃度を示す、一つ以上の多孔性要素を含むことができる。試料は、吸着性試料パッド上の細片の一端に塗布され、側方流動試験用細片を通って遊走する。隣接する多孔性要素は、検出されている代謝物に特異的で、標識された特異的結合剤を通常含有する、コンジュゲートパッドである。全体で、標識された特異的結合剤‐代謝物抱合体を形成することができる。特異的結合剤に標識を関連付ける、または付着させる方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、欧州特許第007654号に記載されている。抱合体は、細片に沿って、検出ゾーンと呼ばれる次の隣接する多孔性要素の中へ遊走する。これは、抱合体中に存在する代謝物を結合するように構成され、固定化された特異的結合剤など、特定の生物学的構成要素を伴う、ニトロセルロースなどの多孔性膜である。これは、検出ゾーンの一つ以上の試験ラインにおいて起こることが適切である。代謝物を認識すると、検出ゾーンの試験ラインに対する応答が生み出される。試験ラインが表す結果は、目によって、または専用のリーダーを使用して評価できる。液体は、細片材料の毛細管力によって側方流動試験用細片を横切って流れ、この動きを維持するために、吸収パッドと呼ばれる、検出ゾーンに隣接するさらなる多孔性要素が随意で存在する。これを、細片の端部に置いて、余分な試薬を毛管作用で運び、液体の逆流を防止する。同一条件下で複数の代謝物を同時に試験するために、異なる代謝物に対する特異的結合剤を含有する追加の試験ラインを、配列形式で固定化できる。そのような構成は、代謝物を検出するだけではなく、本開示において特に有用である。
【0168】
さらに詳細には、側方流動試験用細片は、概して、(i)試料パッドと、(ii)コンジュゲートパッドと、(iii)検出ゾーンと、(iv)任意の吸収パッドとを含む。試料パッドおよび任意の吸収パッドは、側方流動試験用細片の向かい合った端部に置かれる。通常コンジュゲートパッドは試料パッドに隣接し、検出ゾーンはコンジュゲートパッドに隣接し、任意の吸収パッドは検出ゾーンに隣接する。
【0169】
側方流動試験用細片の第一要素は、本明細書で試料パッドと呼ぶ、試料のための多孔性要素である。これは海綿体としての役割を果たし、余分な試料流体を保持する。通常、セルロース繊維もしくはガラス繊維、またはそれらの組み合わせで作られる。その機能は、側方流動試験用細片の他の構成要素へ、試料を輸送することである。試料パッドは、滑らかで連続的かつ均質に試料を輸送できなくてはならない。試料パッドは、必要に応じて、緩衝塩および界面活性剤などの溶液で含浸できる。浸漬すると、流体は側方流動試験用細片の第二要素へ遊走する。
【0170】
側方流動試験用細片の第二要素は、抱合体用の多孔性要素であり、本明細書ではコンジュゲートパッドと呼ばれる。ここには、各々代謝物(または特定のアッセイ形式では、代謝類似体)を個別に結合できる、標識された特異的結合剤が存在する。ガラス繊維、セルロース、およびポリエステルは、コンジュゲートパッドを作るために使用される材料の典型的な例である。標識された特異的結合剤が、コンジュゲートパッドの中に、例えば、塩‐糖マトリックスといったマトリックスの乾燥形式で存在し得る。標識された特異的結合剤は、標識された抗体もしくはその断片、もしくはアプタマー、もしくはアフィマー、またはこれらに類するものでありうる。本明細書に記載する代謝物の各々を検出するために、少なくとも二つの異なる特異的結合剤(例えば、三つの特異的結合剤)が通常使用される。その量は必要に応じて調整され、各代謝物に対してアッセイの感度を微調整できる。使用する各特異的結合剤の量は、通常異なる。特異的結合剤は、必要に応じて同一のまたは異なる標識で標識できる。試料流体は特異的結合剤を可溶化し、一つの組み合わせた輸送作用において、コンジュゲートパッドを通って流れ、標識された特異的結合剤‐代謝物抱合体を形成しながら、試料および特異的結合剤が混合される。
【0171】
一実施形態では、コンジュゲートパッドは、標識された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、各々は、(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAを個別に結合できることが適切であり、標識された特異的結合剤の各々は、抗体もしくはその断片、アプタマー、フォトアプタマー、アフィマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、または小分子である。
【0172】
側方流動試験用細片は、別の分子が固定化される、試験ラインなどの一つ以上の検出ゾーンを有する。検出ゾーンは、通常ニトロセルロース膜である。通常、結合のために標識された特異的結合剤‐代謝物抱合体を捕捉できる、または競合する、特異的結合剤を各々含有する、少なくとも二つの試験ラインがある。任意の対照ラインも含まれうる。検出ゾーンの正確な構成は、以下に説明するように、アッセイのサンドイッチ形式または競合形式など、アッセイの形式に依存する。
【0173】
一態様では、対象の喫煙ステータスを判定するための装置を開示し、装置は、生体試料の中に二つまたは三つのたばこ煙曝露バイオマーカーの存在を検出するように、固相上に配置した複数の異なる特異的結合分子を備え、たばこ煙曝露バイオマーカーは、(i)コチニンおよび総4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール(NNAL)、もしくは(ii)コチニンおよびN-アセチル-S-[2-カルボキシエチル]-L-システイン(CEMA)、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAから成る。装置は、サンドイッチ形式または競合形式で使用するように構成できる。特定の実施形態では、競合形式の使用が好ましい。
【0174】
サンドイッチ形式のアッセイでは、試料は遊走すると、最初にコンジュゲートパッドに遭遇する。代謝物が試料中に存在する場合、コンジュゲートパッドの中の特異的結合剤は、代謝物に結合して、標識された特異的結合剤‐代謝物抱合体を形成し、抱合体は遊走し、続いて検出ゾーンに到達する。検出ゾーンはまた、代謝物に対する特異的結合剤を含有する。試料が検出ゾーンに到達すると、標識された特異的結合剤‐代謝物抱合体が、代謝物に対する特異的結合剤によって捕捉されうるが、コンジュゲートパッドからの特異的結合剤が結合する部位またはエピトープに対して、異なる部位またはエピトープで捕捉されうる。代謝物は、抗体の間に挟まれて複合体を形成する。これにより、視覚的変化、通常は線が現れ、試験から閾値を超えたことを読み取ることが可能になる。サンドイッチアッセイの大部分にも、代謝物が存在するかどうかにかかわらず表示される対照ラインがある。必要に応じて、標識された余分な抗体を二次抗体によって捕捉できる。
【0175】
サンドイッチ形式で使用するために構成された装置の一実施形態では、(a)コンジュゲートパッドは、その上に配置される標識化された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、各々が、(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAという代謝物を個別に結合でき、標識された特異的結合剤代謝物抱合体を形成することができ、(b)検出ゾーンは、固定化された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、各々が代謝物へ個別に結合できる。
【0176】
一例示的形式では、装置の試験ライン上にある(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの指標が目視できないことは、検出の閾値を超えておらず、非喫煙対象を示すことを表示し、装置の試験ライン上にある(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標が、検出の閾値を超えていたと表示し、装置の試験ライン上にある(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの指標が目視できないことは、検出の閾値を超えておらず、加熱式たばこに曝露された対象を示すことを表示し、装置の試験ライン上にある(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標は、検出の閾値を超えており、燃焼式たばこに曝露された対象を示すことを表示する。試験ラインが、表1に提示するデータ、例えば、5日目の結果を使用して、これらの結果を示すよう構成されるように、装置を構成できる。
【0177】
競合形式では、試料は装置内で遊走すると、標識された抱合体、すなわち、標識された代謝物または標識された代謝物の類似体を含有する、コンジュゲートパッドにまず遭遇する。通常、標識は、抗体またはその断片など、特異的結合剤の使用を通して、代謝物またはその類似体に関連付けられるか、またはそれに付着する。標識された抱合体は、試料の存在下で可溶化されて、試料に含有される代謝物と、および標識された代謝物またはその類似体との混合物を形成する。
【0178】
検出ゾーンでは、代謝物に対する別の特異的結合剤を固定化して、試験ラインを形成する。遊走する試料流体が検出ゾーンへ流入すると、固定化された特異的結合剤に結合するために、試料代謝物と標識化合物との間で競合が発生する。検出ゾーンの中の固定化された特異的結合剤は、標識された特異的結合剤が結合される部位に対して、代謝物上の異なる部位に結合する。
【0179】
競合形式で使用するために構成される装置の一実施形態では、(a)コンジュゲートパッドは、その上に配置された標識された代謝物を含み、またはそれらから成り、標識された代謝物は、(i)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたNNALもしくはその類似体、もしくは(ii)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたCEMAもしくはその類似体、または(iii)標識されたコチニンまたはその類似体、および標識されたNNALもしくはその類似体、ならびに標識されたCEMAもしくはその類似体から成り、(b)検出ゾーンは、固定化された特異的結合剤を含み、またはそれらから成り、各々が個別に、(i)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたNNALもしくはその類似体、ならびに試料中に存在しうるコチニンおよびNNAL、もしくは(ii)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたCEMAもしくはその類似体、ならびに試料中に存在しうるコチニンおよびCEMA、または(iii)標識されたコチニンもしくはその類似体、および標識されたNNALもしくはその類似体、および標識されたCEMAもしくはその類似体、ならびに試料中に存在しうるコチニンおよびNNALおよびCEMAを結合できる。
【0180】
競合形式の一例示的実施形態では、(i)装置の試験ライン上にある(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標は、検出の閾値を超えておらず、非喫煙対象を示すことを表示し、(ii)装置の試験ライン上に(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標がないことは、検出の閾値を超えていたことを表示し、装置の試験ライン上にある(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標は、検出の閾値を超えておらず、加熱式たばこに曝露された対象を示すことを表示し、(iii)装置の試験ライン上にある(i)コチニンおよびNNAL、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAの目視可能な指標がないことは、検出の閾値を超えており、燃焼式たばこに曝露された対象を示すことを表示する。試験ラインが、表1に提示するデータ、例えば、5日目の結果を使用して、これらの結果を示すよう構成されるように、装置を構成することができる。この競合形式は、概して、二つの特異的結合剤を同時に結合できない、低分子量化合物に適する。試験ラインにおける信号の欠如は、代謝物の存在を示す一方、信号の出現は陰性の結果を示す。特定の実施形態では、本開示での使用には競合形式が好ましい。
【0181】
マルチプレックス形式はまた、単一の細片で複数の代謝物を検出するときにも使用できる。マルチプレックス検出形式は、例えば、側方流動試験用細片の長さまたは検出ゾーンの長さを増やすことによって、様々な方法で構築されうる。マルチプレックス形式は、サンドイッチ形式または競合形式と共に使用できる。特定の実施形態では、マルチプレックス競合形式が好ましい。
【0182】
コンジュゲートパッドおよび検出ゾーンを通過した後、流体は、本明細書では吸収パッドと呼ぶ、最終多孔性要素に進入できる。これは廃棄物容器として機能し、任意の特徴部である。
【0183】
側方流動試験用細片の様々な部分は、支持体として機能し、細片を取り扱うことを容易にする裏当てカードの上に固定されるか、または取り付けられる。
【0184】
試料中の代謝物レベルが、特定の所定の閾値レベル、もしくは基準値、またはベースライン値よりも高くなると信号が形成される、定性的または半定量的な結果を得るために、所定の量の固定された特異的結合剤が検出ゾーンに存在してもよい。これにより、あらかじめ定められた通りの閾値レベルまたは閾値に対応して、試料中に存在する、ある一定量の代謝物を捕捉することが可能になる。結合される代謝物(存在する場合)の残量は、その後、任意のさらなる検出ゾーンへさらに遊走することが可能であってもよく、続いて、試料中の代謝物レベルが、所定の閾値レベルまたは閾値より高い場合に、検出可能な信号のみを生み出す。
【0185】
アッセイ形式に応じて、色または信号の強度が、基準色または信号チャートと比較されてもよい。別の方法として、色もしくは信号の量または強度は、例えば、吸光センサーまたは光放射量メーター(light emission meter)を備える電子装置で測定され、形成される信号強度または色吸収の数値がもたらされてもよい。本実施形態は、一定期間にわたり対象の代謝物レベルを監視するのに、特に適切であり得る。
【0186】
さらなる実施形態では、検出ゾーンの色または信号の強度は、信号の強度が特定の閾値信号を上回る時、もしくは下回る時を示し、試験が陽性であることを示す、基準色または信号チャートのいずれかと比較されてもよい。別の方法として、上で論じたように、色もしくは信号の量または強度は、電子装置で測定されてもよく、その結果、形成される信号強度または色吸収の数値がもたらされ、その後、陰性結果または陽性結果の形態で対象に表示されてもよい。
【0187】
イムノクロマトグラフィーを遂行する際の典型的な工程は、(a)標識された特異的結合剤を調製し、代謝物に対して標識された特異的結合剤を捕捉すること、(b)標識された特異的結合剤を、側方流動試験用細片のコンジュゲートパッド上に配置し、特異的結合剤を側方流動試験用細片の検出ゾーン上に固定化すること、(iii)構成要素を側方流動試験用細片上に組み立てること、(iv)任意のバッファと共に、試料パッドに試験される試料を追加すること、(v)試料を待って、側方流動試験用細片を通って流れること、および(vi)検出ゾーンで結果を読み取ることである。
【0188】
側方流動試験用細片は、総NNALもしくはCEMA、およびコチニンを検出するように構成でき、または総NNAL、およびCEMA、ならびにコチニンを検出するように構成できる。側方流動試験用細片は、尿中にたばこ代謝物を全く持たない対象に対して試験が効果的であることを実証する(例えば、クレアチン、アルブミン、またはマーカーとしてのタム・ホースフォールタンパク質(THP)など、尿に特異的なタンパク質を使用して)、陽性対照を含むように構成されうる。したがって、別の実施形態では、側方流動試験用細片は、総NNALもしくはCEMA、およびコチニン、ならびに陽性対照を検出するように構成され、または総NNAL、およびCEMA、およびコチニン、ならびに陽性対照を検出するように構成されうる。
【0189】
側方流動試験用細片は、装置として直接使用でき、または必要に応じて、ハウジングに統合できる。したがって、側方流動試験用細片を備える装置も開示する。
【0190】
ほとんどのイムノクロマトグラフィー試験は、完全に定性的に動作する。しかしながら、検出ゾーンの強度を測定して、試料中の代謝物の数量を判定することは可能である。側方流動リーダーとして知られる手持ち式診断装置が、いくつかの企業によって使用され、完全な定量的アッセイ結果を提供している。CMOS(相補型金属酸化膜半導体)またはCCD(電荷結合素子)検出技術のいずれかと併せて、照明用の光の特有な波長を利用することによって、実際の試験ラインの信号の多い画像が生み出されうる。ある特定の試験タイプおよび媒体のために特に設計された画像処理アルゴリズムを使用して、試験ライン強度がその後、分析物濃度と相関してもよい。そのような一つの手持ち式側方流動装置プラットフォームは、Detekt Biomedical LLCによって作られている。代替的な非光学技術はまた、定量的アッセイ結果を報告することもできる。そのような一例が、磁気イムノアッセイ(MIA)である。試料流体の毛細管ポンピングの変動を減少させることは、定性から定量的な結果へ移動する別のアプローチである。
【0191】
本明細書に記載するように、抗体およびその断片は、免疫化学的相互作用によって代謝物に特異的に結合する検出ゾーンで、特異的結合剤としてよく使用される。アプタマーまたはアフィマーは時に、製造の容易さ、簡単な標識化、安定性の向上、再現性の向上、および汎用性の向上から抗体よりも好ましい。
【0192】
特異的結合剤は標識され、多種多様なそのような標識は当該技術分野で周知である。これらには、金ナノ粒子、セレンナノ粒子、量子ドット、色付きラテックスビーズ、磁性粒子、炭素ナノ粒子、銀ナノ粒子、アップコンバージョン蛍光体、有機フルオロフォア、織物色素、リポソーム、および酵素が含まれうる。コロイド金ナノ粒子は、最もよく使用される標識の一つである。コロイド金は不活性であり、ほぼ完全な球状粒子を生み出す。これらの粒子には、生体分子に対して非常に高い親和性があり、容易に官能基化できる。金ナノ粒子の光学特性は通常、感度を高める。金ナノ粒子の光学信号は、必要に応じて、銀、金ナノ粒子、および酵素の堆積によって増幅され得る。金ナノ粒子を使用する場合、定性分析または半定量分析が、検出ゾーンの目視検査により遂行されうる。目視検査の主な利点は、装置の使用を簡略化し、即時に決定することを可能にする、迅速な定性的回答が得られることである。定量化のためには、光学細片リーダーを使用できる。
【0193】
実践的なイムノクロマトグラフィーに関する追加情報は、2008年3月15日に出版されたP.J.Daviesらのハンドブック「Lateral flow immunochromatography assays」(Wiley Online Library)に見出すことができる。
【0194】
携帯用側方流動イムノアッセイ装置
別の実施形態では、本開示は、本明細書に記載する代謝物のうちの一つ以上を検出する、尿試験紙などの携帯用側方流動イムノアッセイ装置を提供する。装置は、イムノクロマトグラフィーの原理を使用でき、上で論じたように、側方流動試験用細片を含むことができ、またはそれらから成りうる。
【0195】
本開示の一態様による、サンドイッチ形式の携帯用側方流動イムノアッセイ装置で使用するための側方流動試験用細片について、ここに記載する。側方流動試験用細片は(i)試料パッド、(ii)コンジュゲートパッド、(iii)検出ゾーン、および(iv)任意の吸収パッドを含む。試料パッドおよび任意の吸収パッドは、側方流動試験用細片の向かい合った端部に置かれる。通常コンジュゲートパッドは試料パッドに隣接し、検出ゾーンはコンジュゲートパッドに隣接し、任意の吸収パッドは検出ゾーンに隣接する。
【0196】
側方流動試験用細片の第一要素は、試料パッドである。尿などの試料に浸漬されると、流体はコンジュゲートパッドへ遊走する。ここには、各々代謝物と個別に結合できる、標識された特異的結合剤が存在する。したがって、例えば、抗体またはその断片、アプタマー、またはアフィマーなど、各々(i)コチニンおよび総NNAL、(ii)コチニンおよびCEMA、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMAに個別に結合できる、標識された特異的結合剤が存在する。その量は必要に応じて調整され、各代謝物に対してアッセイの感度を微調整できる。使用する各特異的結合剤の量は、通常異なる。
【0197】
検出ゾーンは、(i)コチニンおよび総NNAL標識抗体複合体、もしくは(ii)コチニンおよびCEMA標識抗体複合体、または(iii)コチニン、およびNNAL、ならびにCEMA標識抗体複合体を個別に捕捉できる、特異的結合剤を各々含有する、少なくとも二つの試験ラインを含む。検出ゾーンの正確な構成は、上で論じたように、アッセイのサンドイッチ形式または競合形式など、アッセイの形式に依存する。一実施形態では、検出ゾーンの閾値は、(i)24時間の尿コチニンが約200ng/ml以上、かつ閾値は24時間尿中の総NNALが約10pg/ml以上、もしくは閾値は24時間尿のCEMAが約5ng/ml以上であり、検出の閾値を超えたときに検出可能な信号が生成され、または(ii)閾値は24時間の尿コチニンが約200ng/ml以上、および閾値は24時間尿中の総NNALが約10pg/ml以上、ならびに閾値は24時間尿のCEMAが約5ng/ml以上であり、検出の閾値を超えたときに検出可能な信号が生成される。
【0198】
携帯用側方流動イムノアッセイ装置は、通常、液密のまたは液体不浸透性ハウジングなど、ハウジングに包含された側方流動試験用細片を備えて、装置の試料への浸漬を可能にし、側方流動試験用細片のそれら必要な要素のみを濡らすことが可能になる。装置は通常、細長い形状を有し、その寸法は、装置の実際の使用に応じて異なることができ、例示的な寸法は、長さが6cmから8cmで幅が3mmから6mmである。
【0199】
携帯用側方流動イムノアッセイ装置のさらなる一例が、国際公開第2007/023372号に記載され、液体試料中の代謝物を判定するための装置を開示し、装置は毛管拡散手段を備え、その上でa)試料パッドと、b)可視マーカーおよび/または測定可能なマーカーに抱合され、毛管拡散手段において湿潤状態で毛管拡散によって自由に遊走できる、代謝物に特異的な検出試薬を含む、上流放出ゾーンと、c)一方に代謝物に特異的な結合剤を、毛管拡散方向に連続的に、および他方に固定化された代謝物または代謝物の類似体を含む、少なくとも二つの下流コンジュゲートパッドと、が実体化される。試薬によって、サンドイッチ形式で試料中の代謝物の判定が可能になる。
【0200】
本明細書での使用が企図される携帯用側方流動イムノアッセイ装置の別の例も、液体試料中の代謝物を判定するための装置を開示する国際公開第2007/023372号に記載され、装置は毛管拡散手段を備え、その上で、a)試料パッドと、b)可視マーカーおよび/または測定可能なマーカーに抱合され、毛管拡散手段において湿潤状態で毛管拡散によって自由に遊走できる、代謝物に特異的な検出試薬を含む、上流放出ゾーンと、c)一方に代謝物に特異的な結合剤を、毛管拡散方向に連続的に、および他方に固定化された代謝物または代謝物の類似体を含む、少なくとも二つの下流コンジュゲートパッドと、が実体化される。検出試薬および代謝物、すなわち代謝物類似体によって、競合形式で試料中の対象代謝物の判定が可能になる。検出試薬は、コンジュゲートパッドの上流に形成される検出ゾーンに、余分に配置できる。
【0201】
本明細書での使用が企図される携帯用側方流動イムノアッセイ装置の別の例は、例えば、欧州特許第1657550号に記載されるように、二つ以上の(例えば、いくつかの)代謝物の同時判定用に構造化されるものである。装置は毛管拡散手段を備え、その上に、a)試料パッドと、b)各々が代謝物のうちの一つに対して特異的で、可視マーカーおよび/または測定可能なマーカーに抱合され、毛管拡散手段において湿潤状態で毛管拡散によって自由に遊走できる、検出試薬の混合物を含む、上流コンジュゲートパッドと、c)各々が、代謝物のうちの一つである、特定の特異的結合剤を含む、下流コンジュゲートパッドであって、遊走方向によって連続して分布している下流コンジュゲートパッドとが実体化される。
【0202】
本明細書での使用が企図される携帯用側方流動イムノアッセイ装置の別の例が、米国特許第2015/168397号に記載されている。液体試料中に含有されることができる、少なくとも一つ(または二つ以上)の代謝物の存在および/または量を判定するための装置が開示され、装置は、液体試料が、毛管移動の方向および手段にしたがって、横方向に遊走することを意図する、毛管拡散手段を備える。毛管拡散手段は、試料を配置するための試料パッドと、毛管拡散手段の中で液体試料が遊走する結果として移動できる、少なくとも一つ(または二つ以上)の検出試薬を含む、上流コンジュゲートパッドと、毛管拡散手段上に固定された、少なくとも一つ(または二つ以上)の特異的結合剤を各々含むことができる、少なくとも二つのコンジュゲートパッドとを備える。装置は、毛管拡散手段上に形成され、コンジュゲートパッドのうちの少なくとも一つの下流に位置する、少なくとも一つの下流検出ゾーンをさらに含みうる。下流検出ゾーンは、毛管拡散手段の中で液体試料が遊走する結果として移動できる、少なくとも一つ(二つ以上)の検出試薬を含むことができる。検出試薬および/または特異的結合剤はその後、代謝物に特異的に結合、および/または相互に特異的に結合でき、複合体を形成して、その相補的捕捉ゾーンにおける液体試料中の代謝物の判定が可能になる。
【0203】
本出願の図4に目を向けると、対象の喫煙ステータスを判定または区別するための、尿試験紙の形態である、携帯用側方流動イムノアッセイ装置の別の実施例を記載している。異なる喫煙ステータス結果が示されている。一実施形態では、尿試験紙は、10~125pg/mlの量である24時間尿中の尿の総NNAL、および5~80ng/mlの量である24時間尿中の尿のCEMAを検出するのに十分な感度がある。別の実施形態では、尿試験紙は、10~125pg/mlの量である24時間尿中の尿の総NNAL、および5~80ng/mlの量である24時間尿中の尿のCEMA、ならびに約200~800ng/mlの量である尿コチニンを検出するのに十分な感度がある。喫煙ステータスは、尿試験紙を使用して推定できる。
【0204】
図5は、対象の喫煙ステータスを判定するための、尿試験紙の形態である携帯用側方流動イムノアッセイ装置の別の例を示す。この例では、対象の可能性のある三つの異なる喫煙ステータスを区別するために、尿試験紙が使用される。尿試験紙は、装置に包含される側方流動試験用細片の向かい合った端部に、試料パッドと任意の吸収パッドとを包含する。さらに、コチニンコロイド金標識の特異的結合剤、総NNALコロイド金標識の特異的結合剤、およびCEMA標識の特異的結合剤など、三つの異なる特異的結合剤を含有する試料パッドに隣接する、コンジュゲートパッドを含む。三つの異なる特異的結合剤の各々は、所望の濃度で存在しうる。各代謝物に対して、特異的結合剤の濃度は、その代謝物に対するアッセイの感度を微調整するように各々調整でき(例えば、検出閾値を変更(、これは通常の技能を有する者には日常的な実験である。
【0205】
コンジュゲートパッドに隣接して、三つの連続して配設される試験ラインを含む検出ゾーンが存在する。任意の対照ラインも含まれうる。尿試験紙は、競合形式で使用するように構成される。一つの試験ラインは、抗コチニンモノクローナル抗体またはその断片など、コチニンを検出するための手段を包含できる。この試験ラインは、約200ng/ml以上の閾値量で消失するように構成されうる。一つの試験ラインは、抗総NNALモノクローナル抗体またはその断片など、総NNALを検出するための手段を包含できる。この試験ラインは、約10pg/ml以上の閾値量で消失するように構成されうる。一つの試験ラインは、抗CEMAモノクローナル抗体またはその断片など、CEMAを検出するための手段を包含できる。この試験ラインは、約5ng/ml以上の閾値量で消失するように構成されうる。尿試験紙の種類を使用して得られうる、試験解釈の結果例を、図6に見ることができる。
【0206】
一実施形態では、装置は、たばこ煙曝露バイオマーカーの定性的判定用の競合形式試験装置である。そのような実施例を図5に示すことができる。装置は、液密のまたは不浸透性のハウジングの中に収容される、側方流動試験用細片を備え、装置の試料への浸漬が可能になる。ハウジングは、プラスチックを含む、またはプラスチックから成ることができる。試料は、尿などの液体試料でありうる。側方流動試験用細片は、細片に剛性を与えるプラスチックまたはPVC支持体など、支持体上で共に組み立てられる、重ね合わせた異なる多孔性要素で作られうる。細片は細長い形状を有し、その寸法は、装置の実際の使用に応じて異なることができ、例示的な寸法は、長さが6cmから8cmで幅が3mmから6mmである。試料パッドは、セルロース紙材料など、様々な吸収材料で作られうる。コンジュゲートパッドは、ガラス繊維など様々な材料で作られうる。側方流動試験用細片の一部を形成する他のパッドは、ニトロセルロースで作られうる。必要に応じて、パッドを組み立てる前に、パッドのうちの一つ以上は、試料の浸透性および/または毛管移動を得るために、化学的および/もしくは生化学的に処理または改変されうる。輸送または流動は、側方流動試験用細片全体中に、それに沿って発生しうる。必要な場合には、例えば、細片との必要な免疫化学的相互作用を、特に検出ゾーンの試験ラインの中で得るように、試薬をパッドの上へ持ってくる前または後に、類似の処理を実施できる。例示的検出剤は、コロイド金などの色付きの粒子である。そのような粒子は、異なるサイズ(通常、約40から約100ナノメートル)、および異なる色で利用可能である。コチニン、総NNAL、およびCEMAのうちの一つ以上、もしくは二つ以上、または三つ以上と色付き粒子(例えば、コロイド金)との異なる抱合体を、液相で共に混合し、コンジュゲートパッド上に配置して乾燥させうる。モノクローナル抗体など、三つの特定の抗コチニン、抗総NNAL、および抗CEMAに特異的な結合剤は、検出ゾーンの三つの異なる横断試験ラインの中で、またはそれに沿って、側方流動試験用細片のニトロセルロース膜上に配置され固定されうる。検出ゾーンの中の細片の下流端に対照ラインを形成するように、適切な特異的試薬も試験装置上に配置できる。モノクローナル抗体などの抗THPまたは抗クレアチニン特異的結合剤、またはその断片に合致する一対を、側方流動試験用細片上で使用して、検出ゾーンの中の細片の下流端でも尿陽性対照ラインを得られる。
【0207】
対象の喫煙ステータスを判定するキットについても開示し、キットは、尿試験紙上に配設される少なくとも二つの異なるコンジュゲートパッドを有する尿試験紙などの、携帯用側方流動イムノアッセイ装置と、各コンジュゲートパッド上に配置される、異なる特異的結合剤部分とを備え、各特異的結合剤は、本明細書に記載する代謝物のうちの異なる一つを捕捉できる。随意に、対象の喫煙ステータスを判定するための一組の説明書を、キットに含めることができる。
【0208】
対象の喫煙ステータスを判定するための、尿試験紙などの携帯用側方流動イムノアッセイ装置もまた開示し、装置は、装置上に配設される少なくとも二つの異なるコンジュゲートパッドと、各コンジュゲートパッド上に配置される異なる特異的結合剤とを備え、各特異的結合剤は、本明細書に記載する代謝物の異なる一つに個別に結合できる。
【0209】
対象の喫煙ステータスを判定するための、キットまたは装置の使用もまた開示する。
【0210】
自宅、臨床、または実験室で使用するための携帯用装置
また、本明細書で開示するのは、例えば、自宅で、または臨床もしくは実験室で使用するための装置などの携帯用装置、および対象の喫煙ステータスを判定するための装置を備えるキットである。
【0211】
したがって、関連する態様によって、対象からの試料中の、本明細書に教示する代謝物の存在および/または数量を測定できる携帯用試験装置が提供され、装置は、(i)対象から試料を得る手段と、(ii)試料中の代謝物の数量を測定するための手段と、(iii)試料中の代謝物の数量を可視化するための手段とを備える。
【0212】
実施形態では、可視化手段は、対象の代謝物の数量が、特定の基準値またはベースライン値から逸脱するか(例えば、値以下または以上であるか)を示すことができる。それゆえ、携帯用試験装置はまた、基準値もしくはベースライン値、またはそれらを確立するための手段を適切に含んでもよい。
【0213】
試料中の分子または分析物の相対数量は、基準値に対してなど、別の値に対する増加もしくは減少、または何倍の増加もしくは何分の一に減少と表現できる。第一変数および第二変数(例えば、第一数量および第二数量)の相対比較の実施は、第一変数および第二変数の絶対値を最初に判定する必要がありうるが、その必要がない場合もある。例えば、測定方法によって、第一変数および第二変数に対する定量化可能な読み出し情報(例えば、信号強度など)を生み出してもよく、読み出し情報は、変数の値の関数であり、まず読み出し情報をそれぞれの変数の絶対値に、実際に変換する必要なく、第一変数対第二変数の相対値を生み出すように、読み出し情報を直接比較できる。
【0214】
代謝物のいずれも、まとめて測定されてもよく、測定された数量は、まとめて測定された種の合計量に対応する。別の例では、いずれの代謝物も各々個別に測定してもよい。
【0215】
質量分析技術
また、この技術を使用して、本明細書に記載する代謝物のうちの一つ以上を検出することもできる。概して、分子の質量に関する正確な情報を得られる、いかなる質量分析(MS)技術も、本明細書において有用である。適切なMSおよびMS/MS技術、ならびにシステムは、とりわけ周知であり(例えば、LC/MS:A Practical User’s Guide(Marvin C.McMaster著、ISBN:9780471655312、Methods in Molecular Biology、vol.146)、「Mass Spectrometry of Proteins and Peptide」(Charman編、Humana Press 2000、ISBN 089603609x、Biemann 1990.Methods Enzymol 193:455-79、またはMethods in Enzymology、vol.402)、「Biological Mass Spectrometry」(Burlingame編、Academic Press 2005、ISBN 9780121828073)を参照)、本明細書で使用されてもよい。化学種または生物種の分析に適したMS配列、機器、およびシステムには、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)MS、MALDI-TOFポストソース分解(PSD)、MALDI-TOF/TOF、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF)MS、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、ESI-MS/MS、ESI-MS/(MS)n(nはゼロより大きい整数)、ESI 3Dまたはリニア(2D)イオントラップMS、ESI三連四重極形MS、ESI四重極直交TOF(Q-TOF)、ESIフーリエ変換MSシステム、シリコンを用いた脱離/イオン化(DIOS)、二次イオン質量分析(SIMS)、大気圧化学イオン化質量分析(APCI-MS)、APCI-MS/MS、APCI-(MS)n、大気圧光イオン化質量分析(APPI-MS)、APPI-MS/MS、およびAPPI-(MS)nを含むがこれらに限定されない。質量分析による化学種の検出および定量化は、とりわけFohlman Roepstorff & Fohlman(Biomed.Mass Spectrom.(1984年)11、601)により記載されたものなど、多重反応モニタリング(MRM)を伴ってもよい。MS分析方法は、有利なことに、例えば、クロマトグラフィー法、および本明細書の以下に記載する他の方法など、上流の化学種の分離または分留方法と組み合わされてもよい。
【0216】
クロマトグラフィー
クロマトグラフィーはまた、本明細書に記載する代謝物を含む、化学種を測定するためにも使用されうる。「クロマトグラフィー」という用語は、当該技術分野で呼ばれ、大いに利用可能である、化学物質を分離するための方法を網羅する。好ましいアプローチでは、クロマトグラフィーは、化学物質が静止液体もしくは固相(「固定相」)の周り、またはそれにわたって流れるとき、動く液体流または気体流(「移動相」)により運ばれる化学物質の混合物が、代謝物の差分のある分布の結果として、移動相と固定相との間で成分に分離するプロセスを指す。固定相は、大抵、細かく分割された固体、フィルター材料のシート、もしくは固体の表面上の液体の薄膜、またはこれらに類するものであってもよい。
【0217】
本明細書で使用するクロマトグラフィーは、好ましくは柱状であり(すなわち、固定相を柱の中に配置する、または詰め込む)、好ましくは液体クロマトグラフィー、およびさらにより好ましくは、HPLCである。クロマトグラフィーの詳細は、当該技術分野で周知であるが、さらなる指針として、例えば、Meyer M.、1998年、ISBN:047198373X、および「Practical HPLC Methodology and Applications」(Bidlingmeyer、B.A.、John Wiley & Sons Inc.、1993年)を参照のこと。例示的なクロマトグラフィーのタイプには、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、順相HPLC(NP-HPLC)、逆相HPLC(RP-HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィーなどのイオン交換クロマトグラフィー(IEC)、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、ゲル濾過クロマトグラフィーまたはゲル浸透クロマトグラフィーを含むサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、等電点電気泳動、イムノアフィニティーなどのアフィニティークロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、およびこれらに類するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0218】
キット
本開示はさらに、対象からの試料中に、本明細書に教示するような一つ以上の代謝物のレベルを検出するための手段を備える、本明細書に教示するような代謝物の検出用キットを提供する。好ましい実施形態では、そのような一つまたは複数のキットは、理想的には、自宅で、または総合診療で医師によって使用するために設計される。
【0219】
さらに開示するのは、キット、特に、対象において、本明細書に教示するように対象の喫煙ステータスを判定するキットであり、キットは、(i)特に対象からの試料中の、本明細書に教示するような代謝物を測定するための手段と、(ii)随意で、一つもしくは複数の代謝物に対する基準値、または基準値を確立するための手段とを備え、基準値は代謝物の検出を表す。
【0220】
家庭用検査キットにより、対象が医師に伝達できる読み出し情報を、対象に与えてもよく、その後、適切な行動を取ることができる。非限定的な例には、尿試験紙など、例えば、携帯用側方流動イムノアッセイ装置といった、固相に付着する、必要な代謝物に対する特異的結合分子を備えるシステムがある。一つの非限定的な例は、側方流動試験用細片、および標識された特異的結合剤を使用する(例えば、サンドイッチ形式で)ことであり、この組み合わせは、膜の洗浄を全く必要としない。側方流動試験用細片は、例えば、第一抗hCG抗体が支持体上に存在し、尿の流れによってhCGと複合体を形成して、可視化を可能にする固定化された第二抗hCG抗体上へ運ばれる、妊娠検査キットの分野において周知である。そのような家庭用検査装置、システム、またはキットの他の非限定的な例は、例えば、次の米国特許第6,107,045号、第6,974,706号、第5,108,889号、第6,027,944号、第6,482,156号、第6,511,814号、第5,824,268号、第5,726,010号、第6,001,658号、または米国特許出願第2008/0090305号もしくは第2003/0109067号において見出されうる。
【0221】
キットにおいて代謝物の存在および/または数量を測定するための手段は、代謝物に特異的に結合できる、一つ以上の特異的結合剤を含みうる。一つ以上の特異的結合剤は、とりわけ、抗体もしくはその断片、アプタマー、アフィマー、フォトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、または小分子であってもよい。本開示のキットは、一つ以上のアプタマー、アフィマー、または抗体もしくはその断片、より好ましくは、本明細書に教示するような一つ以上の代謝物に、特異的に結合できる一つ以上の抗体またはその断片を備えうる。結合剤は、有利なことに、固相もしくは支持体上に配置または固定化されてもよい。キットは、イムノアッセイ技術、もしくは質量分析解析技術、もしくはクロマトグラフィー技術、またはそれら技術の組み合わせを用いてもよい。キットは、イムノアッセイ技術、好ましいが非限定的な例において、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法、DRIイムノアッセイ、定量イムノアッセイ、側方流動イムノアッセイ、マイクロ流体イムノアッセイ、および凝集イムノアッセイ技術を用い、好ましく、ELISAを使用することが適切である。別の方法として、または追加的に、本明細書に教示するようないかなる一つ以上の代謝物の存在および/または数量は、抗体もしくはクロマトグラフィーに基づく技術を使用して、競合形式もしくはサンドイッチ形式の結合アッセイを使用して、ならびに/または誘導体化剤および/もしくは着色剤付き薬剤を使用して測定されてもよい。それゆえ、マーカーの数量を測定するための手段は、イムノアッセイ、例えば、抗体もしくはその断片、もしくはアプタマー、またはアフィマーを、別々にまたは組み合わせてのいずれかで用いるイムノアッセイ、例えば、ELISAまたはRIAアッセイであってもよい。
【0222】
従って、キット、特に、対象において、本明細書に教示するような代謝物の検出用キットを開示し、キットは、(i)特に対象からの試料中で、本明細書に記載する代謝物に特異的に結合できる一つ以上の特異的結合剤と、(ii)好ましくは、代謝物の既知の数量または濃度(例えば、対照、基準、および/または標準物質として使用するため)と、(iii)随意でおよび好ましくは、一つもしくは複数の代謝物に対する基準値、または基準値を確立するための手段とを備え、基準値は代謝物の検出を表す。(i)および/または(ii)の下にある構成要素は、本明細書に記述するように適切に標識されうる。
【0223】
また、対象の喫煙ステータスを判定するためのキットも開示し、キットは、(i)生体試料中のたばこ煙曝露バイオマーカーの存在を検出するように適合する、第一装置であって、バイオマーカーはコチニンから成る、第一装置、(ii)生体試料中のたばこ煙曝露バイオマーカーの存在を検出するように適合する、第二装置であって、バイオマーカーはNNALから成る、第二装置、および/または(iii)生体試料中のたばこ煙曝露バイオマーカーの存在を検出するように適合する、第三装置であって、バイオマーカーはCEMAから成る、第三装置、ならびに随意で対象の喫煙ステータスを判定するための一組の説明書を備える、またはそれらから成る。各デバイスは通常、固相に付着するコチニン、もしくは総NNAL、またはCEMAに対する特異的結合分子を備えることが適切であり、装置は、尿試験紙などの携帯用側方流動イムノアッセイ装置である。通常、第一装置の特異的結合分子は、約200~800ng/mlの量の尿コチニンを検出するよう適合する。通常、第二装置の特異的結合分子は、24時間尿中で10~125pg/mlの量の尿の総NNALを検出するよう適合する。通常、第三装置の特異的結合分子は、24時間尿中で5~80ng/mlの量の尿のCEMAを検出するよう適合する。代謝物の量は、イムノアッセイ、適切には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法、DRIイムノアッセイ、定量イムノアッセイ、側方流動イムノアッセイ、マイクロ流体イムノアッセイ、凝集イムノアッセイ、ELISA、もしくは適切には、抗体もしくはクロマトグラフィー競合結合アッセイ、または誘導体化剤および/もしくは着色剤付き薬剤を利用するアッセイを使用して測定できる。特異的結合分子は、抗体もしくはその断片、アプタマー、フォトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、もしくは小分子、またはそれらの二つ以上の組み合わせから成る群から選択されうる。各装置は、イムノクロマトグラフィー装置、適切には、側方流動イムノクロマトグラフィー装置でありうる。さらに開示するのは、本明細書で教示する代謝物の検出のための、本明細書に記載するようなキットの使用である。
【0224】
また、本明細書に教示するような代謝物に特異的に結合できる一つ以上の結合剤、好ましくは、結合剤の既知の数量もしくは濃度を含む、結合剤配列またはマイクロアレイも開示する。そのような結合剤は、本明細書に詳細に述べる通りでありうる。
【0225】
標識
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する試薬は、検出可能な標識を含みうる。「標識」という用語は、検出可能で、好ましくは定量化可能な読み出し情報または特性を提供するように使用でき、代謝物または特異的結合剤など、対象の実態の一部に付着してもよく、またはその一部にされてもよい、いかなる原子、分子、部分、または生体分子を指す。標識は、質量分析手段、分光学的手段、光学的手段、比色分析手段、磁性手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、または化学的手段によって適切に検出可能でありうる。標識には、染料;32P、33P、35S、125I、131Iなどの放射標識;高電子密度試薬;酵素(例えば、イムノアッセイでよく使用される西洋わさびフォスファターゼ(horse-radish phosphatise)またはアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatise));ビオチン‐ストレプトアビジンなどの結合部分;ジゴキシゲニンなどのハプテン;発光原部分、リン光性部分、または蛍光発生部分;質量タグ;および蛍光染料単独、または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)による発光スペクトルを抑制またはシフトできる部分と組み合わせた蛍光染料を含むが、これらに限定されない。色付き粒子(例えば、金ナノ粒子)など、他の種類の標識についても本明細書に記載する。
【0226】
例えば、標識は質量変更(mass-altering)標識であってもよい。質量変更標識は、代謝物の一つ以上の化学部分の中に、その対応する未標識代謝物に対して、明確な安定同位体の存在を伴うことが好ましい。質量分析用途において、質量標識部分は、正の対照、基準、および標準物質として特に有用である。特に、一つ以上の明確な同位体を含む分子は化学的に似ており、クロマトグラフィーおよび電気泳動で同様に分離し、また同じ方法でイオン化および断片化もする。しかしながら、適切な質量分析器では、そのような分子は識別可能なm/z比を表示し、そのため識別されうる。区別可能な安定同位体の対の例には、HおよびD、12Cおよび13C、14Nおよび15N、または16Oおよび18Oを含む。
【0227】
また、企図するのは、本明細書に教示するような代謝物の使用であり、随意で、代謝物の定性的または定量的検出アッセイ(測定方法)、特に、対象において本明細書に教示するような代謝物を検出するためのそのような方法における、(陽性)対照、基準、または標準物質としての検出可能な標識を含む。代謝物は、いかなる形態でも、とりわけ沈殿物として、溶液中では液体もしくは凍結したもの、または固相で、例えば、固体クロマトグラフィーマトリックス上で、もしくはガラス、もしくはプラスチック、もしくは他の適切な表面上で(例えば、配列またはマイクロアレイの一部として)など、共有結合もしくは非共有結合で固定化されて供給されてもよい。
【0228】
偏差
第一の値の第二の値からの「偏差」は、概して、いかなる方向(例えば、増加:第一の値>第二の値、または減少:第一の値<第二の値)、およびいかなる変更の程度をも網羅しうる。例えば、偏差は、比較を行っている第二の値に対して、限定するものではないが、第一の値における少なくとも約10%(約0.9倍以下)、もしくは少なくとも約20%(約0.8倍以下)、もしくは少なくとも約30%(約0.7倍以下)、もしくは少なくとも約40%(約0.6倍以下)、もしくは少なくとも約50%(約0.5倍以下)、もしくは少なくとも約60%(約0.4倍以下)、もしくは少なくとも約70%(約0.3倍以下)、もしくは少なくとも約80%(約0.2倍以下)、または少なくとも約90%(約0.1倍以下)の減少を網羅してもよい。
【0229】
例えば、偏差は、比較を行っている第二の値に対して、限定するものではないが、第一の値における少なくとも約10%(約1.1倍以上)、もしくは少なくとも約20%(約1.2倍以上)、もしくは少なくとも約30%(約1.3倍以上)、もしくは少なくとも約40%(約1.4倍以上)、もしくは少なくとも約50%(約1.5倍以上)、もしくは少なくとも約60%(約1.6倍以上)、もしくは少なくとも約70%(約1.7倍以上)、もしくは少なくとも約80%(約1.8倍以上)、もしくは少なくとも約90%(約1.9倍以上)、もしくは少なくとも約100%(約2倍以上)、もしくは少なくとも約150%(約2.5倍以上)、もしくは少なくとも約200%(約3倍以上)、もしくは少なくとも約500%(約6倍以上)、もしくは少なくとも約700%(約8倍以上)の、またはこれらに類する増加を網羅してもよい。
【0230】
偏差は、観察された統計的に有意な変更を指しうることが好ましい。例えば、偏差は、所与の集団における基準値の許容誤差から外れる、観察された変更を指してもよい(例えば、標準偏差もしくは標準誤差によって、またはその所定の複数の標準偏差もしくは標準誤差によって表され、例えば、±1xSD、もしくは±2xSD、もしくは±1xSE、または±2xSE)。偏差はまた、所与の集団の中の値によって定義される基準範囲を外れる値を指してもよい(例えば、その集団の中の値の≧40%、≧50%、≧60%、≧70%、≧75%、もしくは≧80%、もしくは≧85%、もしくは≧90%、もしくは≧95%、またはさらに≧100%を含む範囲の外)。
【0231】
観察された変更が、所与の閾値またはカットオフ値を超えている場合、偏差が結論付けられうる。そのような閾値またはカットオフ値は、例えば、少なくとも50%、もしくは少なくとも60%、もしくは少なくとも70%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の感度および/または特異性といった、検出方法の選ばれた感度および/または特異性を提供するために当該技術分野で概して知られているように選択されうる。
【0232】
さらなる方法
試料中の代謝物の存在および/または濃度は、上に固定化された代謝物に対する結合分子を有するチップを使用する、表面プラズモン共鳴法(SPR)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、生体発光共鳴エネルギー移動(BRET)、蛍光消光、蛍光偏光測定、または当該技術分野で知られる他の手段によって測定されうる。記載する結合アッセイのいずれも、試料中のいかなる代謝物の存在および/または濃度を判定するために使用されうる。それを行うためには、代謝物の結合分子を試料と反応させ、代謝物の濃度を、使用している結合アッセイに対して適切に測定する。アッセイを検証および較正するために、標準代謝物および/または結合分子の異なる濃度を使用した対照反応を、そのために実施してもよい。固相アッセイを用いる場合、インキュベーション後、洗浄工程が実施されて未結合代謝物を除去する。結合された代謝物は、所与の標識に対して適切に測定される(例えば、シンチレーション計測、蛍光、抗体染料など)。定性的な結果が所望される場合、対照群および異なる濃度が必要ない場合がある。当然、代謝物および結合分子の役割は入れ替わってもよく、当業者は、結合分子が試料に適用されるように、様々な試料濃度で方法を適合させてもよい。
【0233】
さらなる化学種の分離法、識別法、または定量法は、本開示において代謝物を測定するために、上述の分析方法のいずれかと随意に併せて使用してもよい。そのような方法には、化学抽出分配、毛管等電点電気泳動(CIEF)、毛管等速電気泳動(CITP)、毛管エレクトロクロマトグラフィー(CEC)、およびこれらに類するものを含む等電点電気泳動(IEF)、一次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)、毛管ゲル電気泳動(CGE)、毛細管ゾーン電気泳動(CZE)、ミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)、フリーフロー電気泳動(FFE)などを含むが、これらに限定されない。
【0234】
立体異性体および幾何異性体
本明細書に開示する代謝物は、立体異性体および/または幾何異性体として存在してもよい。それらは、一つ以上の不斉中心および/または幾何学的中心を持ってもよく、そのため二つ以上の立体異性形態および/または幾何学的形態に存在しうる。本開示は、個別の立体異性体およびその幾何異性体、ならびにそれらの混合物のすべての使用を企図している。
【0235】
従来の紙巻たばこの喫煙削減
試験をした対象が従来の紙巻たばこの消費者であると推定される場合、対象は、この試験結果に基づいて、従来の紙巻たばこを吸うのを減らすように、一つ以上の療法を施されてもよい。
【0236】
喫煙者が従来の紙巻たばこを吸うのを減らすのを支援するために、多くの療法が開発されており、優勢なのはニコチン置換療法である。ニコチン置換療法は、適切な送達システムによるニコチンの投与を伴う。現在市場に出ているニコチン置換製品には、(1)NicoDerm(登録商標) CQ(登録商標)(GlaxoSmithKline)、Habitrol(登録商標)(Novartis Consumer Health)、およびNicotrol(登録商標)(Pharmacia Consumer Healthcare)などの、ニコチン経皮パッチ、(2)Nicorette(登録商標)(GlaxoSmithKline)などのニコチンガム、(3)Nicotrol NS(登録商標)(Pharmacia Consumer Healthcare)などのニコチン鼻スプレー、ならびに(4)ニコチン吸入器(Nicotrol(登録商標)ニコチン吸入システム(Pharmacia Consumer Healthcare))を含む。禁煙のための療法として、抗うつ剤も開発または提案されてきた。そのような抗うつ剤のうちの一つは、ブプロピオンである。禁煙治療に対して提案される他の抗うつ剤には、ドキセピン、イミプラミンが含まれる。禁煙のための療法として、抗不安薬もまた調査または提案されており、これには、例えば、イソバレルアミド、ジアゼパム、メプロバメート、メトプロロール、オンダンセトロン、およびオクスプレノロールが含まれる。禁煙のための療法として調査されている薬剤の別のクラスは、ニコチン受容体拮抗薬であり、その例にはメカミラミン、ヘキサメトニウム、ジヒドロ-β-エリスロイジンおよびd-ツボクラリンが含まれる。薬剤のさらに別のクラスは、ナルトレキソン(17-(シクロプロピルメチル)-4,5-エポキシ-3,14-ジヒドロキシモ ヒナン(dihydroxymo hinan)-6-オンとしても知られる)、ナロキソン(4,5-エポキシ-3,14-ジヒドロキシ-17-(2-プロフェニル)モルフィナン-6-オンとしても知られる)、およびナルメフェン(5α-17-(シクロプロピルメチル)-4,5-エポキシ-6-メチレンモルフィナン-3,14-ジオールとしても知られる)などのオピオイド拮抗薬である。
【0237】
保険
本開示によって、対象の喫煙ステータスに基づいて、保険に対する適合性を判定する際、または保険料を計算する際の適用を見出すことができる。したがって、さらなる態様では、対象の喫煙ステータスに基づいて、保険に対する適合性を判定する、または保険料を計算するための方法を提供し、方法は、(i)対象からの生体試料において、試料中の二つまたは三つの代謝物の量を測定することであって、代謝物はコチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上から成る、ことと、(ii)(i)の測定値に基づいて、対象の喫煙ステータスを判定することと、(iii)(ii)の喫煙ステータスの判定に基づいて、保険への対象の適合性を判定すること、または対象の喫煙ステータスに基づいて保険料を計算することと、を含む。
【0238】
臨床試験
本開示によって、臨床試験における適用を見出すことができる。例として、臨床試験に準拠するには、対象がある特定の喫煙ステータスを有することが必要な場合、本開示を使用してこの喫煙ステータスを監視または確認することができる。したがって、さらなる態様では、対象の臨床試験に対する準拠を判定するための方法を提供し、方法は、(i)対象からの生体試料において、試料中の二つまたは三つの代謝物の量を測定することであって、代謝物はコチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上から成る、ことと、(ii)(i)の測定値に基づいて、対象の喫煙ステータスを判定することと、(iii)(ii)の喫煙ステータスの判定に基づいて、対象の臨床試験に対する準拠を判定することとを含む。
【0239】
対象が臨床試験の要件を遵守していないと判定された場合、対象は臨床試験から除外されてもよい。
【0240】
対象が臨床試験の要件を遵守していないと判定された場合、その対象が起源であるデータは、臨床試験から除外されてもよい。
【0241】
関連する態様では、対象が臨床試験の喫煙ステータスを遵守していないと判定されてもよく、その場合には、不適合の対象は試験から除外されてもよく、または不適合の対象からのデータは臨床試験から除外されてもよい。
【0242】
コンピューティング
システムについても本明細書に記載し、システムは、コチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上の数量の基準値を含む、またはそれらから成るコンピュータデータリポジトリであって、基準値が、対象の喫煙ステータスを判定するために、既知の数量の代謝物を表す、コンピュータデータリポジトリと、対象の喫煙ステータスの判定を行うために、データレポジトリにアクセスし、対象からの試料内の代謝物の数量に関する情報と組み合わせて、データレポジトリからの情報を使用するようにプログラムされた、コンピュータシステムと、を備える。システムの使用と、喫煙ステータスを判定するためのシステムの使用とを含む、対象の喫煙ステータスを判定するための方法も開示する。技術および装置は、プログラムされたコンピューティングシステムを含む、いかなる適切なハードウェア上に実装されてもよい。本開示は、多数の汎用もしくは専用コンピューティングシステムの環境または構成で動作する。使用に適しうる周知のコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例には、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、手持ち式またはラップトップ装置、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、セットトップボックス、プログラム可能な家庭用電化製品、ネットワークコンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記システムもしくは装置のいずれかを含む分散コンピューティング環境、またはクラウドベースの環境、およびこれらに類するものが含まれるが、これらに限定されない。コンピューティング環境は、プログラムモジュールなど、コンピュータ実行可能命令を実行してもよい。概して、プログラムモジュールには、ある特定のタスクを実施する、またはある特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などが含まれる。本開示はまた、通信ネットワークを介してリンクされる遠隔処理装置によってタスクが実施される、分散コンピューティング環境で実践されてもよい。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、メモリ記憶装置を含む、ローカルおよびリモートコンピュータ記憶媒体の両方に位置してもよい。本開示で使用するためのシステムのコンポーネントには、処理ユニットと、システムメモリと、システムメモリを含む様々なシステムコンポーネントを、処理ユニットへ連結するシステムバスとが含まれうるが、これらに限定されない。システムバスは、メモリバスまたはメモリコントローラ、周辺バス、および様々なバスアーキテクチャのいずれかを使用するローカルバスを含む、バス構造のうちのいくつかのタイプのいずれであってもよい。一例として、限定するものではないが、そのようなアーキテクチャには、ISA(Industry Standard Architecture)バス、MCA(Micro Channel Architecture)バス、EISA(Enhanced ISA)バス、VESA(Video Electronics Standards Association)ローカルバス、およびメザニン(Mezzanine)バスとしても知られるPCI(Peripheral Component Interconnect)バスを含む。コンピュータは通常、当該技術分野で周知の様々なコンピュータ可読媒体を含む。
【0243】
必要に応じて、試験は、試験結果の自動的な通信が、随意にリアルタイムで可能になるモバイルリーダーに関連付けられうる。
【0244】
本開示のさらなる態様を、以下の番号付きの段落に記載する。
1.対象の喫煙ステータスを判定するための方法であって、方法は、(i)対象からの生体試料において、試料中の二つまたは三つの代謝物の量を測定することであって、代謝物はコチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上から成る、ことと、(ii)(i)の測定値に基づいて、対象の喫煙ステータスを判定することとを含む。
【0245】
2.対象の喫煙ステータスを判定するための方法であって、方法は、(i)対象からの試料中の、二つまたは三つの代謝物の数量を測定することであって、代謝物はコチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上から成る、ことと、(ii)工程(i)で測定した通りの代謝物の数量を、コチニン、ならびに総NNALおよび/もしくはCEMAの既知の量を表す、基準値またはベースライン値と比較することと、(iii)(i)で測定した通りのコチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAの量の、基準値またはベースライン値から偏差、または偏差がないことを見つけることと、(iv)偏差または偏差がないという発見の原因を、対象の喫煙ステータスに帰することとを含む。
【0246】
3.対象の喫煙ステータスの変化の進行を監視する方法であって、方法は、(i)対象からの少なくとも二つの生体試料上で、段落1または段落2に記載の方法を実施することであって、各試料が異なる時点で採取される、ことと、(ii)異なる時点の各々に対して取られた測定値を比較することであって、測定値の経時的変化が、対象の喫煙ステータスが経時的に変化したことを示す、こととを含む。
【0247】
4.対象の喫煙ステータスを判定するための方法であって、方法は、(i)対象からの試料中の二つまたは三つの代謝物の数量の値を表すデータを受信することであって、代謝物はコチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上から成る、ことと、(ii)コンピュータ上のデータリポジトリにアクセスすることであって、データリポジトリが、対象の喫煙ステータスを判定するための診断に関する、コチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAの数量に対する基準値もしくはベースライン値を含む、ことと、(iii)(i)で受信した通りのデータを、(ii)に記載したコンピュータ上のデータリポジトリの中の基準値またはベースライン値と比較し、それによって対象の喫煙ステータスを判定することとを含む。
【0248】
5.対象の喫煙ステータスを区別する方法であって、方法は、(i)対象からの試料を得るまたは提供することと、(ii)抗コチニン、ならびに抗総NNALおよび/もしくは抗CEMA抗体と試料を接触させ、コチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAと抗体との間の結合を検出することによって、試料中の二つまたは三つの代謝物の量を検出することであって、代謝物は、コチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAから成る、ことと、(iii)試料中のコチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAの存在の検出に基づいて、対象の喫煙ステータスを判定することと、を含む。
【0249】
6.対象の喫煙ステータスを判定し、従来の紙巻たばこの喫煙を低減するための一つ以上の療法を施す方法であって、方法は、(i)対象からの試料を得るまたは提供することと、(ii)二つまたは三つの代謝物が試料中に存在するかを検出することであって、代謝物がコチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAから成る、ことと、(iii)対象の喫煙ステータスを判定することと、(iv)(iii)で得られた結果に応じて、従来の紙巻たばこの喫煙を低減するために、一つ以上の療法の有効量を施すこととを含む。
【0250】
7.対象の従来の紙巻たばこの喫煙を診断および低減する方法であって、方法は、(i)対象から試料を得ることと、(ii)コチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上が、試料中に存在するかを検出することと、(iii)喫煙者と診断された対象に、対象の従来の紙巻たばこの喫煙を低減するために、一つ以上の療法の有効量を施すこととを含む。
【0251】
8.段落1~7のいずれか一つに記載の方法であって、生体試料は尿であり、適切には24時間尿である。
【0252】
9.段落1~8のいずれか一つに記載の方法であって、代謝物の量は、生成された信号の量に基づいて測定される。
【0253】
10.段落1~9のいずれか一つに記載の方法であって、代謝物の量は、イムノアッセイ、適切には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法、DRIイムノアッセイ、定量イムノアッセイ、側方流動イムノアッセイ、マイクロ流体イムノアッセイ、凝集イムノアッセイ、ELISA、もしくは適切には、抗体もしくはクロマトグラフィー競合結合アッセイ、または誘導体化剤および/もしくは着色剤付き薬剤を利用するアッセイを使用して測定される。
【0254】
11.段落1~10のいずれか一つに記載の方法であって、代謝物の量ha、2日間および/または5日間の調査期間後に24時間尿中で測定されることが適切であり、代謝物の量が、代謝物の各々に対するベースライン値と比較される。
【0255】
12.対象の喫煙ステータスを判定するための装置であって、装置は、生体試料中の二つまたは三つの代謝物の存在を検出するように適合し、代謝物は、コチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAから成る。
【0256】
13.段落12に記載の装置は、固相に付着するコチニン、ならびに総NNALおよび/またはCEMAに対する特異的結合分子を備えることが適切であり、装置は、側方流動細片または尿試験紙装置である。
【0257】
14.システムは、(i)コチニン、ならびに総NNALおよびCEMAのうちの一つ以上の数量の基準値もしくはベースライン値を含む、またはそれらから成るコンピュータデータリポジトリであって、基準値またはベースライン値は、対象の喫煙ステータスを判定するために、既知の数量の代謝物を表す、コンピュータデータリポジトリと、(ii)対象の喫煙ステータスの判定を行うために、データレポジトリにアクセスし、対象からの試料内の代謝物の数量に関する情報と組み合わせて、データレポジトリからの情報を使用するようにプログラムされた、コンピュータシステムと、を備える。
【0258】
本発明については、下記の実施例にさらに記載し、実施例は、発明についてさらに詳細に記載するように提供する。本発明を遂行するためにこの時点で意図されている好ましい様式について記載する、本実施例は、本発明を例証することを意図し、限定を意図するものではない。
【実施例
【0259】
本実施例は、従来の紙巻たばこ(CC)における選択された煙成分への曝露の減少を実証するように、ランダム化された、オープンラベルの、3並行治療群の複数施設による対照研究である。研究には、CCの使用継続と比較して、非燃焼加熱式(無煙代替品(SW))製品へ切り替えた健康的な喫煙者、または禁煙を遵守している人(SA)を含め、5日間拘束し、通院設定で85日間の長期に及んだ。これは、自由喫煙試験であった。ベースライン測定は、対象に自身が選んだ従来の紙巻たばこのブランドを、2日間吸うことを許可することによって行われる。この2日の期間後、次に、従来の紙巻たばこを吸うことを継続してもらう、無煙代替物に切り替えてもらう、または禁煙してもらうように対象を選択する。その後、調査期間を開始する。代謝物の各々を測定するための方法は、HazizaらのData in Brief 10(2017年)、283~293に記載されている。
【0260】
拘束期間中、製品/投与計画割り当ての遵守(SW治療群およびCC治療群は、それぞれ無煙代替品およびCCのみを使用し、SA治療群は完全に禁煙する)を、対象が要求した時に各たばこスティック/CCを厳密に分配することによって確実なものとした。通院期間中、SW治療群にランダム化された対象は、HNB製品のみを使用するよう指示され、SA治療群にランダム化された対象は、禁煙するよう指示された。
【0261】
総NNAL(pg/ml)、CEMA(ng/ml)、および遊離のコチニン(ng/ml)を尿中で測定し、四分位範囲(IQR=[第一四分位数;第三四分位数])を以下の表で報告する。さらに、データは以下の図に箱ひげ図として表す。箱の底部は、第一四分位数(観測値の25%はこの値の下方にある)であり、上部は第三四分位数(観測値の75%はこの値の下方にある)であり、中央バーは観測値の中央値である。ひげは、最小観測値および最大観測値へそれぞれ延びる。
【0262】
図1図3および表1に見られる通り、CEMAおよびコチニンによって、少なくとも75%の特異性および感度で、2日後にはCCおよびSAの対象の分離を達成でき、一方、総NNALは5日目から30日目の間で同じレベルの弁別を提供する。SW治療群の対象は、少なくとも75%の特異性および感度で、5日目の後のCEMAおよび総NNALに基づいてCC治療群と区別できる。最後に、SW治療群の対象は、2日後の遊離のコチニンに基づいて(少なくとも75%の特異性および感度で)、SA治療群の対象と区別できる。
【0263】
本明細書に引用または記述されたあらゆる刊行物は、本出願の出願日以前に開示された関連情報を提供する。本明細書における記載は、発明者がそのような開示に先だって権利を与えられないことの承認としては解釈されない。上記の明細書で言及したすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な修正および変形が、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、当業者に明らかになるであろう。特定の好ましい実施形態に関連して本発明を説明してきたが、当然のことながら、特許請求する通りの本発明は、こうした特定の実施形態に不当に限定されるべきではない。実際に、本発明を実施するための記述された方法について、細胞生物学、分子生物学および植物体生物学の分野または関連する分野の当業者にとって明らかである様々な改良は、以下の特許請求の範囲の範囲内に収まるものであることが意図される。
【0264】
表1
全サンプリング時点に対する各治療群のCEMA、コチニン、および総NNALの四分位範囲(ISOR=[第一四分位数;第三四分位数])
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6