(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】神経セロイドリポフスチン症のための遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20230508BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230508BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20230508BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230508BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230508BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230508BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230508BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230508BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/57
A61K35/76
A61K9/08
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/28
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2019562418
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 US2018032278
(87)【国際公開番号】W WO2018209205
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-13
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】カッツ,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンデラー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】オルドー,ジュリエット
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530246(JP,A)
【文献】国際公開第2010/071832(WO,A1)
【文献】特表2015-518816(JP,A)
【文献】国際公開第2017/070678(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/164723(WO,A1)
【文献】Katz ML et al.,Extraneuronal pathology in a canine model of CLN2 neuronal ceroid lipofuscinosis after intracerebroventricular gene therapy that delays neurological disease progression,Gene Ther.,2017年02月,Vol. 24(4),pp. 215-223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AAV9カプシド及びその中にパッケージされたベクターゲノムを含む組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、前記ベクターゲノムは、
(a)AAV 5’逆位末端反復(ITR)配列;
(b)プロモーター;
(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列;および
(d)AAV 3’ITR配列
を含み、前記CLN2コード配列は、配列番号:3に記載のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である、前記rAAV。
【請求項2】
(c)の前記コード配列は、配列番号1のポリペプチドをコードする、配列番号:3のヌクレオチド1~1689である、請求項1に記載のrAAV。
【請求項3】
前記プロモーターは、
(i)ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーター;及び/又は、
(ii)CBAプロモーター配列及びサイトメガロウイルスエンハンサーエレメントを含むハイブリッドプロモーター
である、請求項1又は2に記載のrAAV。
【請求項4】
前記AAV 5’ITR配列及び/または
前記AAV 3’ITR配列はAAV2由来のものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のrAAV。
【請求項5】
前記ベクターゲノムはポリAをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のrAAV。
【請求項6】
前記ポリAは合成ポリAであるか、又はウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子、ヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子、SV40遺伝子若しくはウサギβ-グロビン(RGB)遺伝子由来のものである、請求項5に記載のrAAV。
【請求項7】
前記ベクターゲノムがイントロンをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のrAAV。
【請求項8】
前記イントロンは、
ニワトリベータアクチン(CBA
)遺伝子、ヒトベータグロビン
遺伝子、IVS2
遺伝子、SV40
遺伝子、bGH
遺伝子、アルファ-グロブリン
遺伝子、ベータ-グロブリン
遺伝子、コラーゲン
遺伝子、オボアルブミン
遺伝子、またはp53
遺伝子由来のものである、請求項7に記載のrAAV。
【請求項9】
前記ベクターゲノムがエンハンサーをさらに含む、請求項1~8のい
ずれか1項に記載のrAAV。
【請求項10】
前記エンハンサーは、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサー、TTRエンハンサー、
およびen34
エンハンサー、
またはApoE
エンハンサーである、請求項9に記載のrAAV。
【請求項11】
前記ベクターゲノムは、サイズが3キロベース~5.5キロベースである、請求項1~10のいずれか1項に記載のrAAV。
【請求項12】
前記ベクターゲノムは、サイズが4キロベースである、請求項11に記載のrAAV。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のrAAV、及び、(i)中枢神経系への送達に適した;又は(ii)
脳室内(ICV
)送達に適した、薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む、組成物。
【請求項14】
バッテン病を有する対象への投与に適した水性懸濁液であって、前記懸濁液は、水性懸濁化液体と、バッテン病に対する治療法として有用な組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の1×10
9~1×10
15ゲノムコピー(GC)またはウイルス粒子とを含み、前記rAAVはAAV9カプシドを有し、ならびにその中にパッケージされた、
(a)AAV 5’逆位末端反復(ITR)配列;
(b)プロモーター;
(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列;及び
(d)AAV 3’ITR配列
を含むベクターゲノムを有し、前記CLN2コード配列は、配列番号:3に記載のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である、前記水性懸濁液。
【請求項15】
前記
水性懸濁液は、
(i)髄腔内送達に適しているか;又は、
(ii)ICV及び髄腔内腰部(IT-L)注射から選択される髄腔内送達に適している、請求項14に記載の
水性懸濁液。
【請求項16】
前記
水性懸濁液は、前記水性懸濁化液体中に溶解した界面活性剤、防腐剤、及び/またはバッファーをさらに含む、請求項14又は15に記載の
水性懸濁液。
【請求項17】
前記プロモーターは配列番号:5のヌクレオチド3396~4061であり、かつヒトTPP1をコードする前記コード配列は配列番号:3である、請求項14~16のいずれか1項に記載の
水性懸濁液。
【請求項18】
前記AAV 5’ITR配列は配列番号:5のヌクレオチド3199~3328であり、かつ前記AAV 3’ITR配列は配列番号:5のヌクレオチド248~377である、請求項14~17のいずれか1項に記載の
水性懸濁液。
【請求項19】
前記ベクターゲノムは、配列番号:5のヌクレオチド33~159のポリA配列をさらに含む、請求項14~18のいずれか1項に記載の
水性懸濁液。
【請求項20】
バッテン病を有する対象の治療に用いるための、請求項1~12のいずれか1項に記載のrAAV、請求項13に記載の組成物、又は請求項14~19のいずれかに記載の
水性懸濁液。
【請求項21】
前記rAAVの投与量は、水性懸濁液中1×10
9~1×10
16ゲノムコピー(GC)である、請求項20に記載のrAAV、組成物又は
水性懸濁液。
【請求項22】
前記rAAV、前記組成物又は前記
水性懸濁液は髄腔内投与される、請求項21に記載のrAAV、組成物又は
水性懸濁液。
【請求項23】
前記rAAVは、少なくとも1~20ミリリットルを含む容量中1×10
9~1×10
13rAAVの投薬量で投与される、請求項21又は22に記載のrAAV、
水性懸濁液又は組成物。
【請求項24】
前記対象はヒトである、請求項21~23のいずれか1項に記載のrAAV、
水性懸濁液又は組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子書式で提出された資料の参照による組み入れ
本出願者は、本明細書とともに電子書式で申請される配列表資料を参照により本明細書によって組み入れる。このファイルは、「UPN-17-8151PCT_Seq_List_ST25.txt」と名前を付されている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
神経セロイドリポフスチン症(NCL)は、希少でかつ遺伝性の神経変性障害の群である。それらは、最もよく見られる神経遺伝性貯蔵症であると見なされており、自家蛍光性脂肪色素に似たセロイド及びリポフスチンの蓄積が患者において見られる。NCLは、筋肉の緊張または痙攣の異常な増加、失明または視覚の問題、認知症、筋肉協調運動の欠如、知的障がい、運動障害、発作、及び不安定な歩行を含めた、変動的であるが進行性の症状を伴う。この疾患の頻度は、12,500個体あたりおよそ1人である。主な3つのタイプのNCLがある:成人型(クーフス病またはパリー病);若年型;及び遅発性乳児型(ジャンスキー-ビールショウスキー(Jansky-Bielschowsky)病)。神経セロイドリポフスチン症(NCL)は、もともと、彼らの発症の年齢及び臨床症状(本明細書において記される)によって定義された。しかしながら、それらは、その後より新しい分子知見に基づいて再分類されており、それは、臨床表現型によって以前に示唆されていたよりも、種々の遺伝的バリアントに対するはるかに多くの重複の証拠を提供している。
【0003】
少なくとも20種の遺伝子がNCLと関連して同定されている。CLN2変異を有するNCL患者は、トリペプチジルペプチダーゼ1(TTP1)と呼ばれるペプスタチン非感受性リソソームペプチダーゼを欠損している。TTP1は、ポリペプチドのN末端からトリペプチドを除去する。CLN2遺伝子の13個のエクソンのすべてにおいて変異が報告されている。一部の変異は、より長引く過程をもたらす。発症は通常では乳児期後期であるが、より遅い発症が記載されている。58個を上回る数の変異がCLN2において記載されている。
【0004】
バッテン病の一形態であるCLN2病は、100,000人の生児出生あたり0.07~0.51という推定発生率を有する希少なリソソーム貯蔵障害(LSD)である(Augestad et al.,2006;Claussen et al.,1992;Mole et al.,2013;National Batten Disease
Registry;Poupetova et al.,2010;Santorelli et al.,2013;Teixeira et al.,2003)。CLN2病は、染色体11q15に位置し及び可溶性リソソーム酵素トリペプチジルペプチダーゼ-1(TPP1)をコードするCLN2遺伝子における変異によって引き起こされる、致死性の常染色体劣性神経変性LSDである。CLN2遺伝子における変異、及びそれに続くTPP1酵素活性の欠損は、貯蔵物質のリソソーム蓄積、ならびに脳及び網膜の神経変性をもたらす(Liu et al.,1998;Wlodawer et al.,2003)。CLN2病は、通常では反復性発作(てんかん)及び運動協調困難(運動失調)を含めた初期特質を有する、2~4歳での早期発症を特徴とする。当該疾患は、以前に習得した技能の喪失(発達退行)ももたらす。てんかんは医学的療法にしばしば不応性であり、精神運動機能の全般的崩壊は、小児期中期までの早死前に3回目~5回目の誕生日の間で急速かつ一様である(Schulz et al.,2013)(Nickel
M et al.,2016;Worgall et al.,2007)。
【0005】
CLN2病の治療のための、組み換えTPP1(Brineura(登録商標)セルリポナーゼアルファ、BioMarin Pharmaceuticals)を用いた酵素補充(replacement)療法(ERT)が米国(US)及び欧州連合(EU)において近年承認され、永久埋め込み型デバイスを介した側脳室への隔週注入として投与されている。Brineura(登録商標)の臨床的有益性は、FDAによって、運動機能の安定化に限定されると指定されたが、一方で欧州医薬品庁(EMA)は、言語技能にもプラスの影響があると判定した(Brineura(登録商標)、FDA承認審査概要(Summary Basis of Approval);Brineura(登録商標)、European Public Assessment Report[EPAR];Schulz et al.,2016)。Brineura(登録商標)は、脳内にポートを直接埋め込むための専門知識を要し、脳室内(ICV)投与に精通している訓練を受けた専門家によって医療背景において2週間ごとの4時間の注入の間に投与されなければならない。一部にはそれぞれ7時間及び11.5日間であると推定されるBrineura(登録商標)の短いCSF半減期及びリソソーム半減期に起因して、反復注入が必要である(Brineura(登録商標)、EPAR)。ゆえに、ERTの反復投与に伴う重い患者負担及び罹患率なく、CLN2病を有する患者の中枢神経系(CNS)において永続性がありかつ長期にわたるTPP1酵素活性を提供し得る新しい療法に対する重大な満たされていない必要性が残る。それゆえ、CLN2病を治療することを必要としている対象においてTPP1を送達する及び発現させるのに有用な組成物が必要とされる。イヌTPP1を発現する組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)(rAAV2.caTPP1)の1回限りの投与は、主として上衣細胞におけるTPP1の高発現及び脳脊髄液中への当該酵素の分泌をもたらし、臨床的有益性につながることが示された。Katz et al,Sci Transl Med.2015 Nov 11;7(313):313ra180;及びKATZ,et al,Gene therapy 2017 Feb 24(4):215-223を参照されたく、それらは参照により本明細書に組み入れられる。しかしながら、AAV2は、脳実質に浸透せずかつニューロンを標的にせず、ゆえに、新規の神経向性AAVを用いて達成され得るものと比較して、予想される有益性が限定される。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
1つの態様において、ヒトトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)をコードする、配列番号:3のコドン最適化された操作された核酸配列が本明細書において提供される。
【0007】
別の態様において、ヒトTPP1をコードする、コドン最適化されたCLN2核酸配列である配列番号:3が本明細書において提供される。1つの実施形態において、コドン最適化されたヒトCLN2は、配列番号:2の天然ヒトコード配列と少なくとも70%同一である。配列番号:2(天然)及び配列番号:3(コドン最適化)のアライメントは、
図15A~15Bに提供されている。
【0008】
別の態様において、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が提供される。1つの実施形態において、rAAVは、AAVカプシド及びその中にパッケージされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムは、(a)AAV 5’逆位末端反復(ITR)配列;(b)プロモーター;(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列;及び(d)AAV 3’ITRを含む。
【0009】
1つの態様において、本明細書において記載されるrAAVのいずれか、及び薬学的に許容されるキャリアまたは賦形剤を含む組成物が提供される。1つの実施形態において、組成物は、脳室内(ICV)または髄腔内(IT)送達に適している。
【0010】
さらに別の態様において、バッテン病を有する対象への投与に適した水性懸濁液が提供される。1つの実施形態において、懸濁液は、水性懸濁化液体と、バッテンに対する治療法として有用な組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の約7.5×1012GC(7.5×109GC/グラム脳)~約1×1015GC(1×1012GC/グラム脳)またはウイルス粒子とを含み、当該rAAVはAAVカプシドを有し、ならびにその中にパッケージされた、(a)AAV 5’逆位末端反復(ITR)配列;(b)プロモーター;(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列;及び(d)AAV 3’ITRを含むベクターゲノムを有する。
【0011】
別の態様において、本明細書において記載されるrAAVを用いて、バッテンを有する対象を治療する方法が提供される。
【0012】
他の態様及び実施形態は、本明細書において記載される情報に基づいて容易に明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】AAV.CB7.CI.hTPP1co.RBGベクターゲノムの概略的表示である。ITRは、AAV2逆位末端反復を表す。CB7は、サイトメガロウイルスエンハンサーを有するニワトリベータアクチンプロモーターを表す。RBGポリAは、ウサギベータグロビンポリアデニル化シグナルを表す。
【
図1B】AAV.hTPP1coベクターの産生プラスミドのマップを提供している。
【
図2】実施例2に記載される、AAV.hTPP1coをトランスフェクトされた細胞(三角形)及び対照細胞(四角形)の培養上清において測定されたTPP1酵素活性の折れ線グラフである。
【
図3】
図3A~3Dは、実施例3に記載される、処理を有しないまたは11×10
11GCのAAV.hTPP1coのICV投与を有する野生型マウスの脳(
図3A)、CSF(
図3B)、血清(
図3C)、及び肝臓(
図3D)において測定されたTPP1酵素活性を提供している。
【
図4】
図4Aは、PBSのみ(雄、閉じた直立三角形;雌、閉じた逆位三角形)、3×10
9GC(雄、ひし形;雌、開いた丸)、または3×10
11GC(雄、十字;雌、開いた三角形)のAAV.hTPP1coベクターで処理されたTPP1 KOマウスの生存曲線である。野生型マウス(雄、閉じた丸;雌、開いた四角形)が対照として働いた。各群において、雄及び雌動物の両方をモニターし及び別個に記録して、潜在的な性別差を明らかにした。
図4Bは、
図4Aに示されるデータに基づいて算出された生存期間中央値を提供している。
【
図5】PBSのみ(雌、閉じた三角形)、3×10
9GC(雄、開いたひし形)、または3×10
11GC(雄、開いた四角形;雌、開いた三角形)のAAV.hTPP1coで処理されたTPP1 KOマウスの体重をグラムで示した折れ線グラフである。野生型マウス(雄、閉じた丸;雌、閉じた四角形)が対照として働いた。
【
図6】実施例5に記載される、PBSのみ、3×10
9GC、または3×10
11GCのAAV.hTPP1coで処理されたTPP1 KOマウスにおいて試験された運動協調性アッセイの結果を提供している。野生型マウスが対照として働いた。各群において、雄及び雌動物の両方を試験し及び別個に記録して、潜在的な性別差を明らかにした。落下するまでの潜時を、ロッド上で過ごした時間として秒で測定した。
【
図7A】実施例5に記載される、PBSのみ、3×10
9GC、または3×10
11GCのAAV.hTPP1coで処理されたTPP1 KOマウスの血清における抗TPP1抗体の作出及び量を示したELISA結果である。野生型マウスが対照として働いた。各群において、雄及び雌動物の両方を試験し及び別個に記録して、潜在的な性別差を明らかにした。測定された光学密度(OD)をy軸にプロットした。より高いOD値ほど、より大きな量の抗TPP1抗体を示す。
【
図7B】実施例5に記載される、PBSのみ、3×10
9GC、または3×10
11GCのAAV.hTPP1coで処理されたTPP1 KOマウスの血清において試験されたTPP1酵素活性の結果を提供している。野生型マウスが対照として働いた。各群において、雄及び雌動物の両方を試験し及び別個に記録して、潜在的な性別差を明らかにした。
【
図8】実施例5に記載される、TPP1 KOマウスならびに野生型マウスの側脳室(LV)、海馬、及び視床の一部を含む脳区画において試験されたTPP1酵素活性の結果を提供している。0.1~10μgのBSAを陰性対照として利用した。
【
図9】実施例5に記載される、PBSのみまたは3×10
11GCのAAV.hTPP1coを注射されたTPP1 KOマウス、及びPBSのみを注射された野生型マウスの、脳区画(側脳室(LV)、海馬、及び視床の一部を含み、LV区画と名前を付されている)ならびに小脳及び肝臓において試験されたTPP1酵素活性の結果を提供している。
【
図10】実施例4に記載される、PBSのみまたは1×10
11GCのAAV.hTPP1coで処理されたTPP1 KO及び野生型マウスの血清において試験されたTPP1酵素活性の結果を提供している。
【
図11】実施例4に記載される、PBS(KO+PBS、n=3)または1×10
11GCのAAV.hTPP1co(KO+1e11GC、n=5)を注射されたKOマウスの体重を提供している。
【
図12】
図12Aは、実施例4に記載される、PBSのみ(KO+PBS、n=4)または1×10
11GCのAAV.hTPP1co(KO+1e11GC、n=4)で処理されたTPP1 KOマウスにおいて試験されたロッキングロータロッドアッセイの結果を提供している。落下するまでの潜時を、ロッド上で過ごした時間として秒で測定した。
図12B及び12Cは、実施例4に記載される、注射の日に開始する試験(D0)または注射の60日後に開始する試験(D60)における、PBSのみ(KO+PBS、n=4)または1×10
11GCのAAV.hTPP1co(KO+1e11GC、n=4)で処理されたTPP1 KOマウスにおいて試験された加速式ロータロッドアッセイの結果を提供している。落下するまでの潜時を、ロッド上で過ごした時間として秒で測定した。
【
図13】
図13A及び13Bは、TPP1配列の配列番号:2(天然)及び配列番号:3(コドン最適化)のアライメントを提供している。
【
図14】CLN2のAAVrh10ベクターに基づく送達が、CLN2-/-マウス(CLN2病のTpp1tm1Plobマウスモデル)において生存期間を引き延ばすことを立証している。Sondhi et al.,2008から再現された図。
【
図15】Tpp1m1jマウス(「KO」と印される;n=60)及び野生型同腹仔対照(n=40)の生存曲線を示している。生存期間中央値は、雄及び雌に対してそれぞれ16及び19週間であることが観察された。雄における早期死亡は、ケージ闘争誘発性発作に起因した。
【
図16】
図16A~16Bは、1及び3ヶ月齢のTpp1m1j(KO)及び野生型同腹仔(WT)におけるTPP1酵素活性を示している(肝臓、
図16A;及び大脳、
図16B)。雌動物に対するデータは青で印され;雄動物に対するデータは黒で印される。
【
図17】早くも1ヶ月齢(発症前)のTpp1m1jマウスの皮質及び海馬において観察された進行性のアストロサイトーシスを示している。結果(GFAPスコア)は、20×倍率視野あたりのアストロサイトの平均数である。
***対応のないマン・ホイットニー検定。
【
図18】
図18A及び18Bは、神経行動学的評価を提供している。
図18A:注射後11週の時点において、運動協調性アッセイは、高用量動物に対して表現型の補正を示唆するが、低用量または未処理のTPP11m1J対照動物に対してはそうではない。運動協調性は、ロッキングロータロッド上(10rpm、回転ごとに方向を変える)での180秒間の試行中に記録された、落下するまでの潜時と相関する。
図18B:注射後20週の時点において、生存動物に対して実施された運動学習アッセイは、WT対照と高用量動物との間に差がないことを示した。運動学習は、連続3日間加速式ロータロッド上(300秒での5~40rpm)で記録された、落下するまでの潜時と相関する。図中に描かれた用量レベルは、動物あたりの総/GCに基づき、7.5×109及び7.5×1011GC/g脳質量と等価である。対応のないマン・ホイットニー検定によるP値。
【
図19】生存動物における注射後30週(34週齢)の時点での脳及び肝臓におけるTPP1酵素活性を立証している。
図19:WT及び高用量動物(分析のための生存した低用量動物はいなかった)。M=雄;F=雌。
【
図20】生存動物における注射後30週(34週齢)の時点での脳及び肝臓におけるTPP1酵素活性を立証している。
図20:AAV9.CB7.TPP1の投与後のTPP1酵素活性の増加。高用量動物において、TPP1酵素活性は、注射後30週の時点で、大脳、小脳、及び肝臓において超生理学的レベルまで増加した。M=雄;F=雌;WT=野生型同腹仔。
【
図21】
図21A~21Cは、高用量及びTpp1m1Jマウス(注射後30週;7.5moと名前を付されている)及び対照動物(15週齢;3moと名前を付されている)の脳におけるアストロサイトーシスの補正を立証している。実施例5に記載されるように、TPP1 KOマウスにPBSのみまたは3×10
11GCのAAV.hTPP1coを注射し、ならびに野生型マウスにPBSのみを注射した。GFAPスコアを、高用量群における動物の脳の3つの異なる部分(海馬-
図21A;皮質-
図21B;脳幹-
図21C)において確立し、調査の終わりの時点で生きているビヒクル対照動物はいなかったことから、自然病歴調査からの15週齢Tpp1m1j対照マウスにおけるGFAPスコアと比較した。20×倍率視野あたりのアストロサイトの平均数として提示されたデータ。対応のないマン・ホイットニー検定によるP値。
【
図22】
図22A及び22Bは、3×1011GCのAAV9.CB7.hTPP1coの脳室内注射で処理されたKOマウスの生存率の増加を立証している。ビヒクル処理されたすべてのKO動物は、死んで発見されまたは19週齢の前に人道的に安楽死し、一方でベクター処理された雌(KO 3e11 F)の67%及びベクター処理された雄(KO 3e11 M)の57%は、予定された23週目の評価項目の時点で生きていた。
****ログ-ランク・マンテル-コックス検定、p<0.0001。
図22Aは、性別及び処理によってグループ分けされた生存率を示している。
図22Bは、性別を組み合わせた生存率を示している。
【
図23】
図23A及び23Bは、
図22A及びBにあるように処理されたマウスにおける週平均体重を示している。ビヒクル処理されたKOマウスは、注射の6週間後に重量を失い始めた。ベクター処理された動物は、屠殺までそれらの体重を維持した。
【
図24】
図22A及び22Bにあるように処理されたマウスにおける週平均夜間動作を示している。週平均夜間動作速度モニタリングは、臨床症状の発症前の治療効力を示している。Rプログラム内の線形混合効果モデリングを用いて比較を行った。分析は、性別によって階層化されなかった。統計的有意性を0.05レベルで査定した。KO動物における処理効果は、Vium40日目から有意であった(注射後7.7週;14.7週齢)。
【
図25】
図25A及び25Bは、処理されたKOマウスにおいて神経炎症が低下することを立証している。(A)10×視野あたりの皮質アストロサイト平均カウント数。黒の記号は雌、開いた記号は雄。死んで発見された動物は、自己融解に起因して除外された。(B)抗GFAP抗体を用いた、アストロサイトの代表的な免疫染色。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書において記載される方法及び組成物は、NCLの治療のためにそれを必要としている対象に、ヒトトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)タンパク質をコードするCLN2核酸配列を送達するための組成物及び方法を伴う。1つの実施形態において、そのような組成物は、配列番号:3に示されるものなどのCLN2コード配列のコドン最適化を伴う。より低い用量の試薬が用いられ得ることから、産物の効力を増加させ、ゆえに安全性を増加させることが望ましい。配列番号:2に示される天然CLN2コード配列を含む組成物も本明細書に包含される。
【0015】
CLN2としても知られるTPP1遺伝子は、トリペプチジルペプチダーゼI活性を有するリソソームセリンプロテアーゼであるトリペプチジルペプチダーゼ1をコードする。それは、リソソームプロテイナーゼによって産生される分解産物からトリペプチドを生成しかつ非置換N末端を有する基質を要する、非特異的リソソームペプチダーゼとして作用するとも考えられている。本明細書において使用するとき、「TPP1」、「CLN2」、及び「トリペプチジルペプチダーゼ1」という用語は、コード配列に言及する場合、互換可能に用いられる。ヒトトリペプチジルペプチダーゼ1をコードする天然核酸配列は、NCBI Reference Sequence NM_000391.3で報告されており、本明細書で配列番号:2に再現される。ヒトトリペプチジルペプチダーゼ1の2つのアイソフォームが、UniProtKB/Swiss-ProtアクセッションO14773-1及びO14773-2(本明細書で配列番号:1及び4として再現される)として報告されている。CLN2遺伝子における変異は、遅発性乳児型NCL(LINCL)病と関連性がある。
【0016】
例示的なAAV.hTPP1coベクターが本明細書において記載され、それは本明細書においてAAV9.CB7.hCLN2と呼ばれることもある。これらの用語の使用は互換可能である。加えて、1つの実施形態において、AAV9.CB7.hCLN2ベクターに言及する場合、本明細書において記載される構成要素を利用した代替的な実施形態が企図される。
【0017】
本発明のある特定の実施形態において、対象は神経セロイドリポフスチン症(NCL)を有し、それを治療するために本発明の構成要素、組成物、及び方法は設計される。本明細書において使用するとき、本明細書において用いられる「対象」という用語は、ヒト、獣医学的動物または家畜、飼いならされた動物またはペット、及び臨床研究に通常用いられる動物を含めた、哺乳類動物を意味する。1つの実施形態において、これらの方法及び組成物の対象はヒトである。さらに他の適切な対象には、限定されることなく、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、非ヒト霊長類等が含まれる。本明細書において使用するとき、「対象」という用語は、「患者」と互換可能に用いられる。
【0018】
神経セロイドリポフスチン症(NCL)は、進行性の知的後退及び運動機能後退、発作、ならびに早死を特徴とする、遺伝性の神経変性リソソーム貯蔵障害の群である。視力喪失は、ほとんどの形態の特質である。臨床表現型は、発症の年齢及び臨床的特質の出現の順序に従って、乳児、後期乳児、若年、成人、及び北部てんかん(精神遅滞を伴う進行性てんかん[EPMR]としても知られる)に伝統的に特徴付けされている。しかしながら、遺伝子及びアレル異質性が存在し;提唱される新しい命名及び分類システムは、責任遺伝子及び疾患発症時の年齢の両方を考慮するように開発されている;例えば、古典的な遅発性乳児型であるCLN2病。第一の症状は、典型的に2~4歳に出現し、通常ではてんかんから始まり、その後に発達の診査事項の退行、ミオクローヌス運動失調、及び錐体路徴候が続く。視覚機能障害は、典型的に4~6歳で出現し、明/暗認識のみまで急速に進行する。平均余命は6歳~10代前半に及ぶ。本明細書において使用するとき、「バッテン病」という用語は、CLN2病を指すために用いられ、それは「NCL」と互換可能に用いられる。
【0019】
1つの態様において、ヒト(h)TPP1をコードするコドン最適化された操作された核酸配列が提供される。ある特定の実施形態において、天然TPP1配列(配列番号:2)と比較して翻訳を最大限に高めるように設計された、操作されたヒト(h)TPP1 cDNAが本明細書において提供される(配列番号:3として)。好ましくは、コドン最適化されたTPP1コード配列は、全長天然TPP1コード配列(配列番号:2)と約80%未満の同一性、好ましくは約75%の同一性、またはそれを下回る割合を有する。1つの実施形態において、コドン最適化されたTPP1コード配列は、配列番号:2の天然TPP1コード配列と約74%の同一性を有する。1つの実施形態において、コドン最適化されたTPP1コード配列は、AAV媒介性送達(例えば、rAAV)後の、天然TPP1と比較して向上した翻訳率を特徴とする。1つの実施形態において、コドン最適化されたTPP1コード配列は、配列番号:2の全長天然TPP1コード配列と約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%未満、またはそれを下回る割合の同一性を共有する。1つの実施形態において、コドン最適化された核酸配列は、配列番号:3のバリアントである。別の実施形態において、コドン最適化された核酸配列は、配列番号:3と約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、またはそれを上回る割合の同一性を共有する配列である。1つの実施形態において、コドン最適化された核酸配列は配列番号:3である。別の実施形態において、核酸配列は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化される。他の実施形態において、異なるTPP1コード配列が選択される。
【0020】
核酸配列の文脈における「同一性パーセント(%)」、「配列同一性」、「配列同一性パーセント」という用語は、対応するようにアラインされた場合に同じである2つの配列における残基を指す。配列同一性比較の長さはゲノムの全長にわたり得、遺伝子コード配列の全長または少なくとも約500~5000ヌクレオチドのフラグメントが所望される。しかしながら、より小さなフラグメント、例えば少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約20~24ヌクレオチド、少なくとも約28~32ヌクレオチド、少なくとも約36ヌクレオチド、またはそれを上回る数のヌクレオチドの間での同一性も所望され得る。
【0021】
同一性パーセントは、タンパク質、ポリペプチド、約32アミノ酸、約330アミノ酸、もしくはそのペプチドフラグメントの全長にわたるアミノ酸配列、または対応する核酸配列コード配列に対して容易に決定され得る。適切なアミノ酸フラグメントは、長さが少なくとも約8アミノ酸であり得、最高で約700アミノ酸であり得る。一般的に、2つの異なる配列間の「同一性」、「相同性」、または「類似性」に言及する場合、「同一性」、「相同性」、または「類似性」は、「アラインされた」配列を参照して決定される。「アラインされた」配列または「アライメント」とは、参照配列と比較して、失われたまたは付加的な塩基またはアミノ酸に対する補正をしばしば含有する、複数の核酸配列またはタンパク質(アミノ酸)配列を指す。
【0022】
同一性は、配列のアライメントを調製することによって、ならびに当技術分野において公知のまたは市販の多様なアルゴリズム及び/またはコンピュータープログラム[例えば、BLAST、ExPASy;ClustalO;FASTA;例えばNeedleman-Wunschアルゴリズム、Smith-Watermanアルゴリズムを用いた]
の使用を通じて決定され得る。アライメントは、多様な公的にまたは商業的に使用可能な多重配列アライメントプログラムのいずれかを用いて実施される。配列アライメントプログラム、例えば「Clustal Omega」、「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、及び「Match-Box」プログラムは、アミノ酸配列に対して使用可能である。一般的に、これらのプログラムのいずれかは初期設定で用いられるが、とはいえ当業者であれば必要に応じてこれらの設定を変更し得る。あるいは、当業者であれば、少なくとも、参照されたアルゴリズム及びプログラムによって提供されるもののレベルの同一性またはアライメントを提供する別のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムを利用し得る。例えば、J.D.Thomson et al,Nucl.Acids.Res.,「A comprehensive comparison of multiple sequence
alignments」,27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0023】
多重配列アライメントプログラムは、核酸配列に対しても使用可能である。そのようなプログラムの例には、「Clustal Omega」、「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」、及び「MEME」が含まれ、それはインターネット上でウェブサーバーを通じてアクセス可能である。そのようなプログラムのための他の供給元は、当業者に公知である。あるいは、Vector NTIユーティリティーも用いられる。上で記載されるプログラムに含有されるものを含めた、ヌクレオチド配列同一性を測定するために用いられ得る当技術分野において公知のいくつかのアルゴリズムも存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1におけるプログラムであるFasta(商標)を用いて比較され得る。Fasta(商標)は、クエリー及び検索配列間での最良の重複の領域のアライメント及び配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、参照により本明細書に組み入れられるGCGバージョン6.1において提供されるその初期設定パラメーター(スコア行列に対する6というワードサイズ及びNOPAMファクター)を有するFasta(商標)を用いて決定され得る。
【0024】
コドン最適化されたコード領域は、様々な異なる方法によって設計され得る。この最適化は、オンラインで使用可能である方法(例えば、GeneArt)、公開された方法、またはコドン最適化サービスを提供する会社、例えばDNA2.0(Menlo Park,CA)を用いて実施され得る。1つのコドン最適化法は、例えば米国国際特許公報第WO2015/012924号に記載されており、それは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。例えば、米国特許公報第2014/0032186号及び米国特許公報第2006/0136184号も参照されたい。適切には、産物に対するオープンリーディングフレーム(ORF)の全長が改変される。しかしながら、一部の実施形態において、ORFのフラグメントのみが変更され得る。これらの方法の1つを用いることによって、任意の所定のポリペプチド配列に頻度を適用し得、当該ポリペプチドをコードするコドン最適化されたコード領域の核酸フラグメントを産生し得る。
【0025】
コドンへの実際の変化を実施するために、または本明細書において記載されるように設計されたコドン最適化されたコード領域を合成するために、いくつかの選択肢が使用可能である。そのような改変または合成は、当業者に周知の標準的でかつルーチン的な分子生物学的操縦を用いて実施され得る。1つの手法において、長さがそれぞれ80~90ヌクレオチドの及び所望の配列の長さに及ぶ一連の相補的オリゴヌクレオチド対は、標準的方法によって合成される。これらのオリゴヌクレオチド対は、アニーリングがあると、それらが、付着末端を含有する80~90塩基対の二本鎖フラグメントを形成するように合成され、例えば、対における各オリゴヌクレオチドは、対における他方のオリゴヌクレオチドに相補的である領域を3、4、5、6、7、8、9、10塩基、またはそれを上回る数
の塩基越えて伸長するように合成される。オリゴヌクレオチドの各対の一本鎖末端は、オリゴヌクレオチドのもう一方の対の一本鎖末端とアニールするように設計される。オリゴヌクレオチド対をアニールさせ、次いでこれら二本鎖フラグメントのおよそ5~6個を一本鎖付着末端を介して一緒にアニールさせ、次いでそれらを一緒にライゲーションし、標準的な細菌クローニングベクター、例えばInvitrogen Corporation,Carlsbad,Califから入手可能なTOPO(登録商標)ベクター内にクローニングする。次いで、構築物を標準的方法によってシーケンスする。一緒にライゲーションされた80~90塩基対フラグメントの5~6個のフラグメント、すなわち約500塩基対のフラグメントからなるこれら構築物のいくつかを、所望の配列全体が一連のプラスミド構築物において表されるように調製する。次いで、これらプラスミドのインサートを適当な制限酵素で切り取り、一緒にライゲーションして最終構築物を形成する。次いで、最終構築物を標準的な細菌クローニングベクター内にクローニングし、シーケンスする。付加的な方法は、当業者に即座に明白であろう。加えて、遺伝子合成は、商業的に容易に利用可能である。
【0026】
「操作された」によって、本明細書において記載されるTPP1タンパク質をコードする核酸配列が組み立てられ、例えば非ウイルス性送達システム(例えば、RNAに基づくシステム、ネイキッドDNA等)を作出するために、またはパッケージング宿主細胞においてウイルスベクターを作出するために、及び/または対象における宿主細胞への送達のために、その上に乗せたTPP1配列を宿主細胞に移動させる任意の適切な遺伝子エレメント、例えばネイキッドDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム等の中に置かれることを意味する。1つの実施形態において、遺伝子エレメントはプラスミドである。そのような操作された構築物を作製するために用いられる方法は、核酸操縦における当業者に公知であり、遺伝子操作、組み換え操作、及び合成技法を含む。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0027】
本明細書において使用するとき、「宿主細胞」という用語は、組み換えAAVが産生プラスミドから産生されるパッケージング細胞株を指し得る。代替的に、「宿主細胞」という用語は、コード配列の発現が所望される任意の標的細胞を指し得る。ゆえに、「宿主細胞」とは、任意の手段、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソーム送達、膜融合技法、DNAでコーティングした高速弾、ウイルス感染、及び原形質融合によって細胞内に導入されている外因性または異種DNAを含有する原核または真核細胞を指す。本明細書におけるある特定の実施形態において、「宿主細胞」という用語は、ウイルスベクターまたは組み換えウイルスを作出し及びパッケージするために採用される細胞を指す。本明細書における他の実施形態において、「宿主細胞」という用語は、本明細書において記載される組成物のインビトロ査定のための、様々な哺乳類種のCNS細胞の培養物を指す。さらに他の実施形態において、「宿主細胞」という用語は、バッテン病に対してインビボで治療されている対象の脳細胞に言及することを意図される。そのような宿主細胞には、脳室系の上皮層である上衣を含めたCNSの上皮細胞が含まれる。他の宿主細胞には、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、及びミクログリアが含まれる。
【0028】
本明細書において使用するとき、「治療」または「治療すること」という用語は、バッテン病の1つまたは複数の症状を改善する目的で、本明細書において記載される1種または複数種の化合物または組成物を対象に投与することを包含すると定義される。ゆえに、「治療」には、神経セロイドリポフスチン症(NCL)の発症もしくは進行を低下させること、疾患を予防すること、疾患症状の重症度を低下させること、または失明の進行を含
めたそれらの進行を遅滞させること、疾患症状を取り除くこと、疾患の発症を遅らせること、または所定の対象における疾患の進行もしくは療法の効力をモニターすることのうちの1つまたは複数が含まれ得る。
【0029】
1つの実施形態において、TPP1をコードする核酸配列は、それに共有結合で連結された、タグポリペプチドをコードする核酸をさらに含む。タグポリペプチドは、限定されることなく、mycタグポリペプチド、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグポリペプチド、緑色蛍光タンパク質タグポリペプチド、myc-ピルビン酸キナーゼタグポリペプチド、His6タグポリペプチド、インフルエンザウイルス・ヘマグルチニンタグポリペプチド、flagタグポリペプチド、及びマルトース結合タンパク質タグポリペプチドを含めた、公知の「エピトープタグ」から選択され得る。
【0030】
別の態様において、TPP1をコードする核酸配列を含む発現カセットが提供される。1つの実施形態において、配列は、コドン最適化された配列である。別の実施形態において、コドン最適化された核酸配列は、ヒトTPP1をコードする配列番号:3である。
【0031】
本明細書において使用するとき、「発現カセット」とは、TPP1タンパク質に対するコード配列、プロモーターを含み、かつそれに対する他の調節配列を含み得る核酸分子を指し、そのカセットはウイルスベクター(例えば、ウイルス粒子)のカプシド内にパッケージされ得る。典型的に、ウイルスベクターを作出するためのそのような発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルによって隣接された本明細書において記載されるCLN2配列、及び本明細書において記載されるものなどの他の発現制御配列を含有する。例えば、AAVウイルスベクターに関して、パッケージングシグナルは、5’逆位末端反復(ITR)及び3’ITRである。AAVカプシド内にパッケージされた場合、発現カセットと連動したITRは、本明細書において「組み換えAAV(rAAV)ゲノム」または「ベクターゲノム」と呼ばれ得る。1つの実施形態において、発現カセットは、TPP1タンパク質をコードするコドン最適化された核酸配列を含む。1つの実施形態において、カセットは、TPP1をコードするコドン最適化された核酸配列の宿主細胞における発現を指揮する発現制御配列と作動可能なように結び付いたコドン最適化されたCLN2を提供する。
【0032】
別の実施形態において、AAVベクターにおける使用のための発現カセットが提供される。その実施形態において、AAV発現カセットは、少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)配列を含む。別の実施形態において、発現カセットは、5’ITR配列及び3’ITR配列を含む。1つの実施形態において、5’及び3’ITRは、任意で、TPP1をコードするコドン最適化された核酸配列の宿主細胞における発現を指揮する付加的な配列とともに、TPP1をコードするコドン最適化された核酸配列に隣接する。ゆえに、本明細書において記載されるように、AAV発現カセットは、その5’末端で5’AAV逆位末端反復配列(ITR)によって及びその3’末端で3’AAV ITRによって隣接された、上で記載される発現カセットを記載することを企図される。ゆえに、このrAAVゲノムは、AAVウイルス粒子内に発現カセットをパッケージするために要される最小配列、すなわちAAV 5’及び3’ITRを含有する。AAV ITRは、本明細書において記載されるものなど、任意のAAVのITR配列から獲得され得る。これらのITRは、結果として生じる組み換えAAVにおいて採用されるカプシドと同じAAV起源のもの、または異なるAAV起源のもの(AAV偽型を産生する)であり得る。1つの実施形態において、AAV2由来のITR配列またはその欠失型(ΔITR)が便宜上及び規制当局承認を早めるために用いられる。しかしながら、他のAAV供給源由来のITRが選択され得る。ITRの供給源がAAV2由来であり、かつAAVカプシドが別のAAV供給源由来である場合、結果として生じるベクターは偽型と称され得る。典型的に、AAVベクターゲノムは、AAV 5’ITR、TPP1コード配列及び任意の調節配列
、ならびにAAV 3’ITRを含む。しかしながら、これらエレメントの他の構成が適切であり得る。D配列及び末端分解部位(terminal resolution site)(trs)が欠失しているΔITRと称される、5’ITRの短縮型が記載されている。他の実施形態において、全長AAV 5’及び3’ITRが用いられる。次いで、各rAAVゲノムは、産生プラスミド内に導入され得る。
【0033】
本明細書において使用するとき、「調節配列」、「転写制御配列」、または「発現制御配列」という用語は、イニシエーター配列、エンハンサー配列、及びプロモーター配列などのDNA配列を指し、それは、それらが作動的に連結されているタンパク質コード核酸配列の転写を誘導する、抑制する、または別様に制御する。
【0034】
本明細書において使用するとき、「作動的に連結された」または「作動可能なように結び付いた」という用語は、TPP1をコードする核酸配列と近接している発現制御配列、及び/またはトランスでもしくは少し離れて作用してその転写と発現を制御する発現制御配列の両方を指す。
【0035】
1つの態様において、本明細書において記載される発現カセットのいずれかを含むベクターが提供される。本明細書において記載されるように、そのようなベクターは、多様な起源のプラスミドであり得、本明細書においてさらに記載される組み換え複製欠陥ウイルスの作出のためのある特定の実施形態において有用である。
【0036】
本明細書において用いられる「ベクター」とは、外因性のまたは異種のまたは操作された核酸導入遺伝子が挿入され得る核酸分子であり、それは次いで適当な宿主細胞内に導入され得る。ベクターは、好ましくは、1つまたは複数の複製の起点、及び組み換えDNAが挿入され得る1つまたは複数の部位を有する。ベクターは、ベクターを有する細胞が有しないものから選択され得る手段をしばしば有し、例えばそれらは薬物耐性遺伝子をコードする。よく用いられるベクターには、プラスミド、ウイルスゲノム、及び(主に酵母及び細菌における)「人工染色体」が含まれる。ある特定のプラスミドが本明細書において記載される。
【0037】
1つの実施形態において、ベクターは、その記載される発現カセット、例えば「ネイキッドDNA」、「ネイキッドプラスミドDNA」、RNA、及びmRNAを含む非ウイルス性プラスミドであり;例えばミセル、リポソーム、カチオン性脂質-核酸組成物、ポリグリカン組成物及び他のポリマー、脂質及び/またはコレステロールに基づく核酸抱合体、ならびに本明細書において記載されるものなどの他の構築物を含めた、様々な組成物ならびにナノ粒子と共役される。例えば、X.Su et al,Mol.Pharmaceutics,2011,8(3),pp774-787;ウェブ公開:2011年3月21日;WO2013/182683、WO2010/053572、及びWO2012/170930を参照されたく、そのすべては参照により本明細書に組み入れられる。そのような非ウイルス性TPP1ベクターは、本明細書において記載される経路によって投与され得る。ウイルスベクターまたは非ウイルス性ベクターは、遺伝子導入及び遺伝子療法適用における使用のために、生理学的に許容されるキャリアとともに製剤化され得る。
【0038】
別の実施形態において、ベクターは、その中で記載される発現カセットを含むウイルスベクターである。「ウイルスベクター」は、外因性または異種CLN2核酸導入遺伝子を含有する複製欠陥ウイルスとして定義される。1つの実施形態において、本明細書において記載される発現カセットは、薬物送達にまたはウイルスベクターの産生に用いられるプラスミド上に操作され得る。適切なウイルスベクターは、好ましくは複製欠陥であり、脳細胞を標的にするものの中から選択される。ウイルスベクターには、アデノウイルス;ヘルペスウイルス;レンチウイルス;レトロウイルス;パルボウイルス等を含むがそれらに
限定されない、遺伝子療法に適した任意のウイルスが含まれ得る。しかしながら、理解をしやすくするために、アデノ随伴ウイルスが例示的なウイルスベクターとして本明細書において参照される。
【0039】
「複製欠陥ウイルス」または「ウイルスベクター」とは、関心対象の遺伝子を含有する発現カセットがウイルスカプシドまたはエンベロープ内にパッケージされており、任意のウイルスゲノム配列も当該ウイルスカプシドまたはエンベロープ内にパッケージされている場合に複製欠損である、合成または組み換えウイルス粒子を指す;すなわち、それらは子孫ビリオンを作出し得ないが、標的細胞に感染し得る能力を保持する。1つの実施形態において、ウイルスベクターのゲノムは、複製するために要される酵素をコードする遺伝子を含まない(ゲノムは「実質がない(gutless)」ように操作され得、増幅及び人工ゲノムのパッケージングに要されるシグナルによって隣接された関心対象の導入遺伝子のみを含有する)が、これらの遺伝子は産生の間に供給され得る。それゆえ、複製に要されるウイルス酵素の存在下を除いて、複製及び子孫ビリオンによる感染は生じ得ないことから、それは遺伝子療法における使用にとって安全であると考えられる。
【0040】
別の実施形態において、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターが提供される。rAAVは、AAVカプシド、及びその中にパッケージされたベクターゲノムを含む。ベクターゲノムは、1つの実施形態において、(a)AAV 5’逆位末端反復(ITR)配列;(b)プロモーター;(c)ヒトTPP1をコードするコード配列;及び(d)AAV 3’ITRを含む。別の実施形態において、ベクターゲノムは、本明細書において記載される発現カセットである。1つの実施形態において、CLN2配列は、全長TPP1タンパク質をコードする。1つの実施形態において、TPP1配列は、配列番号:1のタンパク質配列である。別の実施形態において、コード配列は、配列番号:3またはそのバリアントである。
【0041】
パルボウイルスファミリーのメンバーであるアデノ随伴ウイルス(AAV)は、4.7キロベース(kb)~6kbの一本鎖線状DNAゲノムを有する小さなエンベロープを持たない正二十面体ウイルスである。公知のAAV血清型には、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9等がある。ITRまたは他のAAV構成要素は、AAVから、当業者に使用可能な技法を用いて容易に単離され得るまたは操作され得る。そのようなAAVは、学術的、商業的、または公的な供給元(例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection),Manassas,VA)から単離され得る、操作され得る、または獲得され得る。あるいは、AAV配列は、文献において、または例えばGenBank、PubMedなどのデータベースにおいて入手可能であるものなどの公開された配列を参照することにより、合成手段または他の適切な手段によって操作され得る。AAVウイルスは、従来の分子生物学技法によって操作され得、核酸配列の細胞特異的送達のために、免疫原性を最小限に抑えるために、安定性及び粒子寿命を調整するために、効率的な分解のために、核への精確な送達のために等、これらの粒子を最適化するのを可能にする。
【0042】
AAVのフラグメントは、多様なベクターシステム及び宿主細胞において容易に利用され得る。望ましいAAVフラグメントには、vp1、vp2、vp3、及び超可変領域を含めたcapタンパク質、rep78、rep68、rep52、及びrep40を含めたrepタンパク質、ならびにこれらのタンパク質をコードする配列がある。そのようなフラグメントは、単独で、他のAAV血清型配列もしくはフラグメントと組み合わせて、または他のAAVもしくは非AAVウイルス配列由来のエレメントと組み合わせて用いられ得る。本明細書において使用するとき、人工AAV血清型には、限定されることなく、天然に存在しないカプシドタンパク質を有するAAVが含まれる。そのような人工カプシ
ドは、別のAAV血清型(公知または新規)から、同じAAV血清型の非近接部分から、非AAVウイルス供給源から、または非ウイルス供給源から獲得され得る異種配列と組み合わせて、本発明の新規のAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質のフラグメント)を用いて、任意の適切な技法によって作出され得る。人工AAV血清型は、限定されることなく、キメラAAVカプシド、組み換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシドであり得る。1つの実施形態において、ベクターは、AAV9 cap及び/またはrep配列を含有する。米国特許第7,906,111号を参照されたく、それは参照により本明細書に組み入れられる。
【0043】
1つの実施形態において、配列番号:6のアミノ酸配列を特徴とするAAV9カプシドを有するAAVベクターが本明細書において提供され、古典的遅発性乳児型神経セロイドリポフスチン症2(CLN2)遺伝子をコードする核酸は、それを必要としている患者におけるその発現を指揮する調節配列の制御下にある。
【0044】
本明細書において使用するとき、「AAV9カプシド」は、選択的スプライシングバリアントとして典型的に発現され、配列番号:6の種々の長さのタンパク質をもたらす、約60個の可変タンパク質(vp)の会合体であるDNAse耐性粒子を特徴とする。Genbankアクセッション番号AAS99264.1も参照されたく、それは参照により本明細書に組み入れられる。US7906111及びWO2005/033321も参照されたい。本明細書において使用するとき、「AAV9バリアント」には、例えばWO2016/049230、US8,927,514、US2015/0344911、及びUS8,734,809に記載されるものが含まれる。アミノ酸配列は配列番号:6に再現され、コード配列は配列番号:7に再現される。1つの実施形態において、AAV9カプシドには、配列番号:7、またはそれと少なくとも約90%、95%、95%、98%、もしくは99%の同一性を共有する配列によってコードされるカプシドが含まれる。
【0045】
最も大きなタンパク質であるvp1は、大抵、配列番号:6のアミノ酸配列の全長(配列番号:6のaa1~736)である。ある特定の実施形態において、AAV9 vp2タンパク質は、配列番号:6の138~736のアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態において、AAV9 vp3タンパク質は、配列番号:6の203~736のアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態において、vp1、2、または3タンパク質は、切り取りを有し得る(例えば、N末端またはC末端において1つまたは複数のアミノ酸)。AAV9カプシドは約60個のvpタンパク質から構成され、vp1、vp2、及びvp3は、会合したカプシド内に約1個のvp対約1個のvp2対約10~20個のvp3タンパク質の比率で存在する。この比率は、用いられる産生システムに応じて変動し得る。ある特定の実施形態において、vp2がない操作されたAAV9カプシドが作出され得る。
【0046】
DNA(ゲノムまたはcDNA)またはRNA(例えば、mRNA)を含めた、このAAV9カプシドをコードする核酸配列を設計することは当技術分野における技能の範囲内にある。ある特定の実施形態において、AAV9 vp1カプシドタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号:7に提供される。他の実施形態において、配列番号:7と70%~99.9%同一性の核酸配列を選択して、AAV9カプシドを発現させ得る。ある特定の他の実施形態において、核酸配列は、配列番号:7と少なくとも約75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または少なくとも99%~99.9%同一である。
【0047】
本明細書において使用するとき、「クレード」という用語は、それがAAVの群に関するとき、AAV vp1アミノ酸配列のアライメントに基づき、少なくとも75%のブートストラップ値(少なくとも1000回の複製についての)による近隣結合アルゴリズム
及びわずか0.05のポアソン補正距離測定を用いて判定される、互いに系統発生学的に関係しているAAVの群を指す。近隣結合アルゴリズムは文献に記載されている。例えば、M.Nei and S.Kumar,Molecular Evolution and Phylogenetics,Oxford University Press,New York(2000)を参照されたい。このアルゴリズムを実行するために用いられ得るコンピュータープログラムが入手可能である。例えば、MEGA v2.1プログラムは、改変型Nei-Gojobori法を実行する。これらの技法及びコンピュータープログラム、ならびにAAV vp1カプシドタンパク質の配列を用いれば、当業者であれば、選択されたAAVが、本明細書において同定されるクレードの1つに含有されるか、別のクレードに含有されるか、またはこれらのクレードから外れるかどうかを容易に判定し得る。例えば、G Gao,et al,J Virol,2004 Jun;78(10):6381-6388を参照されたく、それはクレードA、B、C、D、E、及びFを同定し、新規のAAVの核酸配列、GenBankアクセッション番号AY530553~AY530629を提供している。WO2005/033321も参照されたい。AAV9は、クレードF内にあることをさらに特徴とする。他のクレードF AAVには、AAVhu31及びAAVhu32が含まれる。
【0048】
本明細書において使用するとき、AAVに関して、バリアントという用語は、アミノ酸または核酸配列にわたって少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、またはそれを上回る割合の配列同一性を共有するものを含めた、公知のAAV配列に由来する任意のAAV配列を意味する。別の実施形態において、AAVカプシドには、任意の記載されるまたは公知のAAVカプシド配列からの最高で約10%の変動を含み得るバリアントが含まれる。つまり、AAVカプシドは、本明細書において提供される及び/または当技術分野において公知のAAVカプシドと、約90%の同一性~約99.9%の同一性、約95%~約99%の同一性、または約97%~約98%の同一性を共有する。1つの実施形態において、AAVカプシドは、AAV9カプシドと少なくとも95%の同一性を共有する。AAVカプシドの同一性パーセントを決定する場合、可変タンパク質(例えば、vp1、vp2、またはvp3)のいずれかにわたって比較がなされ得る。1つの実施形態において、AAVカプシドは、vp1、vp2、またはvp3にわたって、AAV9と少なくとも95%の同一性を共有する。
【0049】
本明細書において使用するとき、「人工AAV」とは、限定されることなく、天然に存在しないカプシドタンパク質を有するAAVを意味する。そのような人工カプシドは、異なる選択されたAAVから、同じAAVの非近接部分から、非AAVウイルス供給源から、または非ウイルス供給源から獲得され得る異種配列と組み合わせて、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質のフラグメント)を用いて、任意の適切な技法によって作出され得る。人工AAVは、限定されることなく、偽型AAV、キメラAAVカプシド、組み換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシドであり得る。1種のAAVのカプシドが異種カプシドタンパク質で置き換えられている偽型ベクターは、本発明において有用である。1つの実施形態において、AAV2/9及びAAV2/rh.10は、例示的な偽型ベクターである。
【0050】
別の実施形態において、自己相補的AAVが用いられる。「自己相補的AAV」とは、組み換えAAV核酸配列によって運ばれるコード領域が、分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計されている発現カセットを有するプラスミドまたはベクターを指す。感染があると、第二の鎖の細胞媒介性合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補的半分が会合して、即時の複製及び転写の準備ができている1つの二本鎖DNA(dsDNA)ユニットを形成する。例えば、D M McCarty et al,「Self-complementary recombinant adeno-associated
virus(scAAV) vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis」,Gene Therapy,(August 2001),Vol 8,Number 16,Pages 1248-1254を参照されたい。自己相補的AAVは、例えば米国特許第6,596,535号;第7,125,717号;及び第7,456,683号に記載されており、そのそれぞれは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。
【0051】
核酸配列またはタンパク質を記載するために用いられる「外因性」という用語は、核酸またはタンパク質が、それが染色体または宿主細胞において存在する場所には天然には存在しないことを意味する。外因性核酸配列は、同じ宿主細胞または対象に由来しかつそれに挿入されるが、天然でない状態で、例えば異なるコピー数で、または異なる調節エレメントの制御下に存在する配列も指す。
【0052】
核酸配列またはタンパク質を記載するために用いられる「異種」という用語は、核酸またはタンパク質が、それが発現される宿主細胞または対象とは異なる生物、または同じ生物の異なる種に由来したことを意味する。「異種」という用語は、タンパク質、またはプラスミド、発現カセット、もしくはベクターにおける核酸に関連して用いられる場合、タンパク質または核酸が別の配列または部分配列とともに存在し、問題になっているタンパク質または核酸は天然における互いに対する同じ関係性で見い出されないことを示す。
【0053】
さらに別の実施形態において、本明細書において記載されるもののいずれかを含めた発現カセットを採用して、組み換えAAVゲノムを作出する。
【0054】
1つの実施形態において、本明細書において記載される発現カセットは、ウイルスベクターを作出するのに及び/または宿主細胞への送達に有用な適切な遺伝子エレメント(ベクター)、例えばネイキッドDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム等の中に操作され、それはその上に乗せたCLN2配列を移動させる。選択されたベクターは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技法、DNAでコーティングした高速弾、ウイルス感染、及び原形質融合を含めた、任意の適切な方法によって送達され得る。そのような構築物を作製するために用いられる方法は、核酸操縦における当業者に公知であり、遺伝子操作、組み換え操作、及び合成技法を含む。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい。
【0055】
発現カセットまたはrAAVゲノムまたは産生プラスミドをビリオン内にパッケージすることに関して、ITRは、発現カセットと同じ構築物においてシスで要される唯一のAAV構成要素である。1つの実施形態において、複製(rep)及び/またはカプシド(cap)に対するコード配列をAAVゲノムから取り出し、トランスでまたはパッケージング細胞株によって供給して、AAVベクターを作出する。
【0056】
対象への送達に適したAAVウイルスベクターを作出する及び単離するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許7790449;米国特許7282199;WO2003/042397;WO2005/033321;WO2006/110689;及びUS7588772B2を参照されたい。1つのシステムにおいて、産生細胞株に、ITRによって隣接された導入遺伝子をコードする構築物、ならびにrep及びcapをコードする構築物(複数可)を一過性にトランスフェクトする。第二のシステムにおいて、rep及びcapを安定に供給するパッケージング細胞株に、ITRによって隣接された導入遺伝子をコードする構築物を一過性にトランスフェクトする。これらの
システムのそれぞれにおいて、AAVビリオンは、ヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスによる感染に応答して産生され、混入ウイルスからのrAAVの分離を要する。より最近では、AAVを回復させるためにヘルパーウイルスによる感染を要しないシステムが開発されており、要されるヘルパー機能(すなわち、アデノウイルスE1、E2a、VA、及びE4またはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52、及びUL29、ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼ)は、システムによってトランスでも供給される。これらのより新しいシステムにおいて、ヘルパー機能は、要されるヘルパー機能をコードする構築物での細胞の一過性トランスフェクションによって供給され得る、または細胞は、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定に含有するように操作され得、その発現は転写もしくは転写後レベルで制御され得る。
【0057】
「単離された」という用語は、物質が、その本来の環境(例えば、それが天然に存在する場合には天然環境)から取り出されることを意味する。例えば、生きた動物に存在している天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然システムにおいて共存する物質の一部またはすべてから分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、たとえその後に天然システムに再導入されるとしても、単離されている。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、及び/またはそのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは組成物の一部であり得、かつそのようなベクターもしくは組成物がその天然環境の一部でないという点において依然として単離された状態であり得る。
【0058】
さらに別のシステムにおいて、ITR及びrep/cap遺伝子によって隣接された発現カセットは、バキュロウイルスに基づくベクターによる感染によって昆虫細胞内に導入される。これらの産生システムについての総説に関しては、一般的に、例えばZhang
et al,2009,「Adenovirus-adeno-associated
virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production」,Human Gene Therapy 20:922-929を参照されたく、その内容は参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。これらの及び他のAAV産生システムを作製する及び使用する方法も、以下の米国特許に記載されており、そのそれぞれの内容は参照によりその全体として本明細書に組み入れられる:5,139,941;5,741,683;6,057,152;6,204,059;6,268,213;6,491,907;6,660,514;6,951,753;7,094,604;7,172,893;7,201,898;7,229,823;及び7,439,065。一般的に、例えばGrieger&Samulski,2005,「Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production and clinical
applications」,Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145;Buning et al.,2008,「Recent developments in adeno-associated virus
vector technology」,J.Gene Med.10:717-733;及び下記で引用される参考文献を参照されたく、そのそれぞれは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。
【0059】
本発明の任意の実施形態を構築するために用いられる方法は、核酸操縦における当業者に公知であり、遺伝子操作、組み換え操作、及び合成技法を含む。例えば、Green and Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。同様に、rAAVビリオンを作出する方法は周知であり、適切な方法の選択は本発明に対する限
定ではない。例えば、K.Fisher et al,(1993)J.Virol,70:520-532及び米国特許第5,478,745号を参照されたい。
【0060】
「プラスミド」は、一般的に、当業者によく知られている標準的な命名規則に従い、先行する小文字のp及び/またはそれに続く大文字及び/または数字によって本明細書において指定される。本発明に従って用いられ得る多くのプラスミドならびに他のクローニング及び発現ベクターは、当業者に周知であり及び容易に使用可能である。さらに、当業者であれば、本発明における使用に適したいくつもの他のプラスミドを容易に構築し得る。本発明における、そのようなプラスミドならびに他のベクターの特性、構築、及び使用は、本開示から当業者に容易に明白であろう。
【0061】
1つの実施形態において、産生プラスミドは、本明細書において記載されるもの、または参照により本明細書に組み入れられるWO2012/158757に記載されるものである。rAAVベクターを産生することにおける使用のための、様々なプラスミドが当技術分野において公知であり、本明細書において有用である。産生プラスミドを、AAV cap及び/またはrepタンパク質を発現する宿主細胞において培養する。宿主細胞において、各rAAVゲノムはレスキューされかつカプシドタンパク質またはエンベロープタンパク質内にパッケージされて、感染性ウイルス粒子を形成する。
【0062】
1つの態様において、上で記載される発現カセットを含む産生プラスミドが提供される。1つの実施形態において、産生プラスミドは
図1Bに示されるものである。このプラスミドは、rAAV-ヒトコドン最適化TPP1ベクターの作出のために実施例において用いられる。そのようなプラスミドは、5’AAV ITR配列;選択されたプロモーター;ポリA配列;及び3’ITRを含有するものであり;加えて、それは、ニワトリベータ-アクチンイントロンなどのイントロン配列も含有する。例示的な略図が
図1Aに示されている。さらなる実施形態において、イントロン配列は、約3キロベース(kb)~約6kb、約4.7kb~約6kb、約3kb~約5.5kb、または約4.7kb~5.5kbのサイズを有するrAAVベクターゲノムを保つ。TPP1コード配列を含む産生プラスミドの例は、配列番号:5に見い出され得る。別の実施形態において、産生プラスミドを改変して、ベクタープラスミド産生効率を最適化する。そのような改変には、他の中立な配列の付加、またはベクタープラスミドのスーパーコイルのレベルを変調するラムダスタッファー配列の内包が含まれる。そのような改変が本明細書において企図される。他の実施形態において、ターミネーター及び他の配列がプラスミドに含まれる。
【0063】
ある特定の実施形態において、rAAV発現カセット、ベクター(rAAVベクターなど)、ウイルス(rAAVなど)、及び/または産生プラスミドは、AAV逆位末端反復配列、TPP1をコードするコドン最適化された核酸配列、及び宿主細胞におけるコードタンパク質の発現を指揮する発現制御配列を含む。他の実施形態において、rAAV発現カセット、ウイルス、ベクター(rAAVベクターなど)、及び/または産生プラスミドは、イントロン、Kozak配列、ポリA、転写後調節エレメント等のうちの1つまたは複数をさらに含む。1つの実施形態において、転写後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)である。
【0064】
発現カセット、ベクター、及びプラスミドは、例えば本明細書において記載されるコドン最適化を含めた当技術分野において公知の技法を用いて、特異的種に対して最適化され得る他の構成要素を含む。カセット、ベクター、プラスミド、及びウイルス、または本明細書において記載される他の組成物の構成要素は、発現制御配列の一部としてプロモーター配列を含む。別の実施形態において、プロモーターは細胞特異的である。「細胞特異的」という用語は、組み換えベクターに対して選択された特定のプロモーターが、特定の細胞または組織タイプにおける最適化されたTPP1コード配列の発現を指揮し得ることを
意味する。1つの実施形態において、プロモーターは、脳室系の上皮層である上衣における導入遺伝子の発現に特異的である。別の実施形態において、プロモーターは、ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、及びミクログリアから選択される脳細胞における発現に特異的である。1つの実施形態において、プロモーターを1つまたは複数の制限部位を付加するように改変して、クローニングを容易にする。
【0065】
別の実施形態において、プロモーターは、ユビキタスまたは構成的プロモーターである。適切なプロモーターの例は、配列番号:5におけるnt3396~4061に示される配列など、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントを有するハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。別の実施形態において、プロモーターはCB7プロモーターである。他の適切なプロモーターには、ヒトβ-アクチンプロモーター、ヒト伸長因子-1αプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス40プロモーター、及び単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターが含まれる。例えば、Damdindorj et al,(August 2014)A Comparative Analysis of Constitutive Promoters Located in Adeno-Associated Viral Vectors.PLoS ONE 9(8):e106472を参照されたい。さらに他の適切なプロモーターには、ウイルスプロモーター、構成的プロモーター、調節可能なプロモーターが含まれる[例えば、WO2011/126808及びWO2013/04943を参照されたい]。あるいは、生理学的合図に応答性のプロモーターが、本明細書において記載される発現カセット、rAAVゲノム、ベクター、プラスミド、及びウイルスにおいて利用され得る。1つの実施形態において、プロモーターは、AAVベクターのサイズ制限に起因して、1000bpを下回る小さなサイズのものである。別の実施形態において、プロモーターは400bpを下回る。他のプロモーターは、当業者によって選択され得る。
【0066】
さらなる実施形態において、プロモーターは、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、ファージラムダ(PL)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、テトラサイクリン制御トランス活性化因子応答性プロモーター(tet)システム、RSV LTR、MoMLV LTR、BIV LTR、もしくはHIV LTRなどの長い末端反復(LTR)プロモーター、モロニーマウス肉腫ウイルスのU3領域プロモーター、グランザイムAプロモーター、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(複数可)、CD34プロモーター、CD8プロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、B19パルボウイルスプロモーター、PGKプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、HSP65及びHSP70プロモーターなどの熱ショックタンパク質(HSP)プロモーター、免疫グロブリンプロモーター、MMTVプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、lacプロモーター、CaMV 35Sプロモーター、ノパリンシンテターゼプロモーター、MNDプロモーター、またはMNCプロモーターから選択される。そのプロモーター配列は当業者に公知である、または文献においてもしくはデータベース、例えばGenBank、PubMed等においてなど、公的に入手可能である。
【0067】
別の実施形態において、プロモーターは誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターは、ラパマイシン/ラパログ(rapalog)プロモーター、エクジソンプロモーター、エストロゲン応答性プロモーター、及びテトラサイクリン応答性プロモーター、またはヘテロ二量体リプレッサースイッチを含めた、公知のプロモーターから選択され得る。Sochor et al,An Autogenously Regulated Expression System for Gene Therapeutic Ocular Applications.Scientific Reports,2015 Nov 24;5:17105、及びDaber R,Lewis M.,A no
vel molecular switch.J Mol Biol.2009 Aug
28;391(4):661-70,Epub 2009 Jun 21を参照されたく、それらは両方とも参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる。
【0068】
他の実施形態において、本明細書において記載される発現カセット、ベクター、プラスミド、及びウイルスは、他の適当な転写開始、終結、エンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;TATA配列;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);イントロン;タンパク質安定性を増強する配列;ならびに所望の場合には、コードされた産物の分泌を増強する配列を含有する。発現カセットまたはベクターは、本明細書において記載されるエレメントのどれも含有しなくても、いずれかのうちの1つまたは複数を含有してもよい。
【0069】
適切なポリA配列の例には、例えば合成ポリA、またはウシ成長ホルモン(bGH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、SV40、ウサギβ-グロビン(RGB)、もしくは改変されたRGB(mRGB)由来のものが含まれる。さらなる実施形態において、ポリAは、配列番号:5のnt33~159由来の核酸配列を有する。
【0070】
適切なエンハンサーの例には、他の中でも、例えばCMVエンハンサー、RSVエンハンサー、アルファフェトプロテインエンハンサー、TTR最小プロモーター/エンハンサー、LSP(TH結合グロブリンプロモーター/アルファ1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー)、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサー、TTRエンハンサー、en34、ApoEが含まれる。
【0071】
1つの実施形態において、TPP1コード配列の上流にKozak配列を含んで、正しい開始コドンからの翻訳を増強する。別の実施形態において、CBAエクソン1及びイントロンが発現カセットに含まれる。1つの実施形態において、TPP1コード配列は、ハイブリッドニワトリβアクチン(CBA)プロモーターの制御下に置かれる。このプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー、近位ニワトリβアクチンプロモーター、及びイントロン1配列によって隣接されたCBAエクソン1からなる。
【0072】
別の実施形態において、イントロンは、CBA、ヒトベータグロビン、IVS2、SV40、bGH、アルファ-グロブリン、ベータ-グロブリン、コラーゲン、オボアルブミン、p53、またはそのフラグメントから選択される。
【0073】
1つの実施形態において、発現カセット、ベクター、プラスミド、及びウイルスは、5’ITR、ニワトリベータ-アクチン(CBA)プロモーター、CMVエンハンサー、CBAエクソン1及びイントロン、ヒトコドン最適化CLN2配列、ウサギグロビンポリA、ならびに3’ITRを含有する。さらなる実施形態において、発現カセットは、配列番号:9のnt1~4020を含む。なおさらなる実施形態において、5’ITRは配列番号:5のnt3199~nt3328の核酸配列を有し、かつ3’ITRは配列番号:5のnt248~nt377の核酸配列を有する。さらなる実施形態において、産生プラスミドは、
図1C~1Eにも示される配列番号:5の配列を有する。
【0074】
別の態様において、CLN2遺伝子における欠陥によって引き起こされるバッテン病を治療するための方法は、本明細書において記載される、TPP1をコードするベクター(rAAVなど)を、それを必要としている対象に送達することを含む。1つの実施形態において、本明細書において記載されるrAAVを用いてバッテン病を有する対象を治療する方法が提供される。
【0075】
方法において用いられる「投与すること」によって、CLN2遺伝子における欠陥を特徴とする標的選択細胞に組成物を送達することを意味する。1つの実施形態において、方法は、髄腔内注射によって組成物を送達することを伴う。別の実施形態において、対象へのICV注射が採用される。別の実施形態において、対象への髄腔内-腰部(IT-L)注射が採用される。さらに別の方法において、血管内注射が採用され得る。別の実施形態において、筋肉内注射が採用される。投与のさらに他の方法は、本開示を考慮して、当業者によって選択され得る。
【0076】
「投与すること」または「投与の経路」とは、対象への、薬学的キャリアまたは賦形剤の有りまたは無しでの、本明細書において記載される組成物の送達である。所望の場合、投与の経路は組み合わせられ得る。一部の実施形態において、投与は周期的に繰り返される。本明細書において記載される薬学的組成物は、任意の適切な経路または種々の経路の組み合わせによる、それを必要としている対象への送達のために設計される。一部の実施形態において、脳への直接送達(任意で、髄腔内、ICV、またはIT-L注射を介した)、または全身経路を介した送達、例えば血管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、及び投与の他の非経口経路が採用される。本明細書において記載される核酸分子、発現カセット、及び/またはベクターは、単一の組成物または複数の組成物で送達され得る。任意で、2種もしくはそれを上回る種類の異なるAAV、または多種ウイルスが送達され得る[例えば、WO202011/126808及びWO2013/049493を参照されたい]。別の実施形態において、多種ウイルスは、単独でまたはタンパク質と組み合わせて、種々の複製欠陥ウイルス(例えば、AAV及びアデノウイルス)を含有し得る。本明細書において使用するとき、「髄腔内送達」または「髄腔内投与」という用語は、脊柱管内への、より具体的にはクモ膜下腔内への、注射を介した薬物の投与の経路を指し、それによりそれは脳脊髄液(CSF)に達する。髄腔内送達には、腰椎穿刺、脳室内(intraventricular)穿刺(脳室内(intracerebroventricular)(ICV)を含む)、後頭下/大槽内(intracisternal)穿刺、及び/またはC1-2穿刺が含まれ得る。例えば、物質は、腰椎穿刺によってクモ膜下腔全体にわたる拡散のために導入され得る。別の例において、注射は大槽(cisterna magna)内へのものであり得る。
【0077】
本明細書において使用するとき、「大槽内送達」または「大槽内投与」という用語は、小脳延髄大槽の脳脊髄液中への直接の、より具体的には後頭下穿刺を介したまたは大槽内への直接注射によるまたは永久的に配置されたチューブを介した、薬物の投与の経路を指す。脳脊髄液中に本明細書において記載される組成物を送達するのに有用であるデバイスは、PCT/US2017/16133に記載されており、それは参照により本明細書に組み入れられる。
【0078】
薬学的組成物も本明細書において提供される。本明細書において記載される薬学的組成物は、任意の適切な経路または種々の経路の組み合わせによる、それを必要としている対象への送達のために設計される。
【0079】
さらに他の態様において、これらの核酸配列、ベクター、発現カセット、及びrAAVウイルスベクターは薬学的組成物において有用であり、それは、薬学的に許容されるキャリア、賦形剤、バッファー、希釈剤、界面活性剤、防腐剤、及び/またはアジュバント等も含む。そのような薬学的組成物を用いて、そのような組み換え操作されたAAVまたは人工AAVによる送達を通じて、宿主細胞において最適化TPP1を発現させる。
【0080】
核酸配列、ベクター、発現カセット、及びrAAVウイルスベクターを含有するこれらの薬学的組成物を調製するために、配列またはベクターまたはウイルスベクターを、好ましくは従来の方法によってコンタミネーションについて査定し、次いで患者への投与に適
した薬学的組成物に製剤化する。そのような製剤化は、pHを適当な生理学的レベルに維持するための、緩衝生理食塩水または他のバッファー、例えばHEPESなど、薬学的に及び/または生理学的に許容されるビヒクルまたはキャリアの使用、ならびに任意で、他の薬効のある作用物質、薬学的作用物質、安定剤、バッファー、キャリア、アジュバント、希釈剤、界面活性剤、または賦形剤等の使用を伴う。注射に関して、キャリアは典型的に液体である。例示的な生理学的に許容されるキャリアには、無菌の発熱物質不含水及び無菌の発熱物質不含リン酸緩衝生理食塩水が含まれる。多様なそのような公知のキャリアは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許公報第7,629,322号に提供されている。1つの実施形態において、キャリアは等張塩化ナトリウム溶液である。別の実施形態において、キャリアは平衡塩類溶液である。1つの実施形態において、キャリアはtweenを含む。ウイルスが長期間保管されることになる場合、それはグリセロールまたはTween20の存在下で凍結され得る。
【0081】
1つの例示的な具体的な実施形態において、キャリアまたは賦形剤の組成は、0.0001%~0.01%プルロニックF68(PF68)とともに180mM NaCl、10mM NaPi、pH7.3を含有する。バッファーの生理食塩水構成要素の正確な組成は、160mM~180mM NaClに及ぶ。任意で、具体的に記載されるバッファーの代わりに、異なるpHバッファー(潜在的には、HEPES、重炭酸ナトリウム、TRIS)が用いられる。さらにあるいは、0.9%NaClを含有するバッファーが有用である。
【0082】
本明細書において使用するとき、「投薬量」という用語は、治療の過程において対象に送達される総投薬量、または単一単位(または複数単位または分割投薬量)の投与で送達される量を指し得る。薬学的ウイルス組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり約1.0×109GC~約1.0×1016GCの値域内にある、本明細書において記載されるTPP1をコードするコドン最適化された核酸配列を運ぶ複製欠陥ウイルスの量を含有するように投薬量単位に製剤化され得る。1つの実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×109、2×109、3×109、4×109、5×109、6×109、7×109、8×109、または9×109GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、または9×1010GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、または9×1011GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、または9×1012GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、または9×1013GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、または9×1014GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、または9×1015GCを含有するように製剤化される。1つの実施形態において、ヒト適用に関して
、用量は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり1×1010~約1×1012GCに及び得る。すべての投薬量は、参照により本明細書に組み入れられる、例えばM.Lock et al,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131に記載されるoqPCRまたはデジタルドロップレットPCR(ddPCR)による測定を含めた、任意の公知の方法によって測定され得る。
【0083】
1つの実施形態において、バッテン患者への投与に適した水性懸濁液が提供される。懸濁液は、水性懸濁化液と、バッテン病に対する治療法として有用な本明細書において記載される組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の、グラム脳あたり約7.5×109GCまたはウイルス粒子~約1×1012GCまたはウイルス粒子とを含む。
【0084】
本発明の薬学的組成物の複数の「ブースター」投薬量を投与することも望ましくあり得る。例えば、CNS内での導入遺伝子の持続期間に応じて、最初の投与後6ヶ月間隔でまたは年1回、ブースター投薬量を送達し得る。rAAVベクターの投与によってAAV中和抗体が作り出されなかったという事実は、付加的なブースター投与を可能にするはずである。
【0085】
そのようなブースター投薬量及びそれに対する必要性は、例えばTPP1活性及び下記の実施例において記載される神経認知試験を用いて、主治医によってモニターされ得る。他の同様の試験を用いて、治療された対象の状態を経時的に判定し得る。適当な試験の選択は、主治医によって行われ得る。さらにあるいは、本発明の方法は、正常な対象に見い出されるものに近いTPP1活性レベルを可能にする、単回または複数回の感染におけるより大きな容量のウイルス含有液の注射も伴い得る。
【0086】
これら上記の用量は、患者のサイズ、用いられるウイルス力価、投与の経路、及び方法の所望される効果に応じて、値域内のすべての数を含めた約100マイクロリットル~約50mLに及ぶ多様な容量のキャリア、賦形剤、またはバッファー製剤で投与され得る。1つの実施形態において、キャリア、賦形剤、またはバッファーの容量は少なくとも約500μLである。1つの実施形態において、容量は約750μLである。別の実施形態において、容量は約1mLである。別の実施形態において、容量は約2mLである。別の実施形態において、容量は約3mLである。別の実施形態において、容量は約4mLである。別の実施形態において、容量は約5mLである。別の実施形態において、容量は約6mLである。別の実施形態において、容量は約7mLである。別の実施形態において、容量は約8mLである。別の実施形態において、容量は約9mLである。別の実施形態において、容量は約10mLである。別の実施形態において、容量は約11mLである。別の実施形態において、容量は約12mLである。別の実施形態において、容量は約13mLである。別の実施形態において、容量は約14mLである。別の実施形態において、容量は約15mLである。別の実施形態において、容量は約16mLである。別の実施形態において、容量は約17mLである。別の実施形態において、容量は約18mLである。別の実施形態において、容量は約19mLである。別の実施形態において、容量は約20mLである。別の実施形態において、容量は約21mLである。別の実施形態において、容量は約22mLである。別の実施形態において、容量は約23mLである。別の実施形態において、容量は約24mLである。別の実施形態において、容量は約25mLまたはそれを上回る量である。1つの実施形態において、最大注射容量は、総脳脊髄液容量の約10%である。
【0087】
1つの実施形態において、ウイルス構築物は、マウスなどの小動物対象に対して、約100マイクロリットルmL~約1mLの容量中少なくとも1×109~少なくとも約1×1013GCの用量で送達され得る。より大きな獣医学的対象に関しては、上で明記され
るより大きなヒト投薬量及び容量が有用である。様々な獣医学的動物への物質の投与のための優れた実践の考察に関しては、例えばDiehl et al,J.Applied
Toxicology,21:15-23(2001)を参照されたい。この文書は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0088】
最低有効濃度のウイルスまたは他の送達ビヒクルを利用して、毒性などの望ましくない効果の危険性を低下させることが望ましい。これらの値域内のさらに他の投薬量は、治療されている対象、好ましくはヒト、対象の年齢、及び障害が発生している程度を考慮して、主治医によって選択され得る。
【0089】
本明細書において記載されるさらに別の態様は、哺乳類対象におけるバッテン病を治療する、その進行を遅滞させるまたは止めるための方法である。1つの実施形態において、好ましくは生理学的に適合するキャリア、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバント中に懸濁された、CLN2の天然の、改変された、またはコドン最適化された配列を運ぶrAAVは、治療上有効量で、ヒト対象を含めた所望の対象に投与され得る。この方法は、核酸配列、発現カセット、rAAVゲノム、プラスミド、ベクターもしくはrAAVベクター、またはそれらを含有する組成物のいずれかを、それを必要としている対象に投与することを含む。1つの実施形態において、組成物は髄腔内に送達される。別の実施形態において、組成物はICVを介して送達される。さらに別の実施形態において、組成物は、バッテン病の治療に適した投与経路の組み合わせを用いて送達され、静脈内投与または他の従来的な投与経路も伴い得る。
【0090】
これらの方法における使用に関して、各投薬の容量及びウイルス力価は、本明細書においてさらに記載されるように、個々に決定される。投薬量、投与、及びレジメンは、本明細書の教示を考慮して、主治医によって決定され得る。別の実施形態において、方法は、2回またはそれを上回る回数の投薬(例えば、分割投薬)で組成物を投与することを伴う。別の実施形態において、選択された発現カセット(例えば、CLN2含有カセット)を含むrAAVの第二の投与は、より後の時点で実施される。そのような時点は、第一の投与の数週間、数ヶ月、または数年後であり得る。そのような第二の投与は、1つの実施形態において、第一の投与からのrAAVとは異なるカプシドを有するrAAVを用いて実施される。別の実施形態において、第一及び第二の投与からのrAAVは、同じカプシドを有する。
【0091】
さらに他の実施形態において、本明細書において記載される組成物は、単一の組成物または複数の組成物で送達され得る。任意で、2種もしくはそれを上回る種類の異なるAAV、または多種ウイルスが送達され得る(例えば、WO2011/126808及びWO2013/049493を参照されたい)。別の実施形態において、多種ウイルスは、種々の複製欠陥ウイルス(例えば、AAV及びアデノウイルス)を含有し得る。
【0092】
本発明によると、「治療上有効量」のhTPP1を本明細書において記載されるように送達して、所望の結果、すなわちバッテン病またはその1つもしくは複数の症状の治療を達成する。身体査定、発作査定、行動査定、及び能力査定を含む包括的システムである、統一バッテン病評定尺度(Unified Batten Disease Rating Scale)(UBDRS)が提唱されている。rarediseases.info.nih.gov/files/mink.pdfでアクセス可能なMink,J.,The Unified Batten Disease Rating Scaleを参照されたい。1つの実施形態において、治療の目標は、疾患の進行を抑えることである。これは、CLN2病評定疾患尺度またはUBDRSを用いた、症状の定量的及び定性的な評価によって査定され得る。
【0093】
別の実施形態において、方法は、付加的な試験、例えばアッセイ及び神経認知試験を実施して、治療の効力を判定することを含む。そのような試験は、上で述べられるUBDRSの一部として実施されるものを含み、限定されることなく、発話の明瞭性、挺舌、視力、調整(腕、脚、首)、強度(腕、脚)、ハンドタッピング、かかとで踏み鳴らすこと、自発運動(無動症)、常同症、ジストニア、ミオクローヌス、振戦、舞踏病、測定障害、歩行、姿勢の安定性、発作、行動及び気分、ならびに全体的な健康状態についての査定を含む。
【0094】
本明細書において記載される方法の1つの実施形態において、本明細書において記載される組成物の1回限りの送達、例えば最適化されたCLN2カセットの1回のAAV送達は、対象におけるバッテン病を治療することにおいて有用である。本明細書において記載される方法の別の実施形態において、本明細書において記載される組成物の1回限りの送達、例えば最適化されたCLN2カセットの1回のAAV送達は、CLN2欠陥を有する対象におけるバッテン病を予防することにおいて有用である。
【0095】
ゆえに、1つの実施形態において、組成物は、疾患発症前に投与される。別の実施形態において、組成物は、神経学的機能障害の開始前に投与される。別の実施形態において、組成物は、神経学的機能障害の開始後に投与される。1つの実施形態において、新生児治療とは、分娩の8時間以内、最初の12時間、最初の24時間、または最初の48時間以内に、本明細書において記載されるTPP1コード配列、発現カセット、またはベクターを投与されることとして定義される。別の実施形態において、特に霊長類(ヒトまたは非ヒト)に関して、新生児送達は、約12時間~約1週間、2週間、3週間、もしくは約1ヶ月の期間以内、または約24時間~約48時間後である。別の実施形態において、組成物は、症状の発症後に送達される。1つの実施形態において、患者の治療(例えば、最初の注射)は、生後1年より前に開始される。別の実施形態において、治療は、最初の1年の後に、または最初の2~3歳の後、5歳の後、11歳の後に、またはより年長の歳に開始される。1つの実施形態において、治療は、約4歳~約12歳の年齢から開始される。1つの実施形態において、治療は、約4歳でまたはその後に開始される。1つの実施形態において、治療は、約5歳でまたはその後に開始される。1つの実施形態において、治療は、約6歳でまたはその後に開始される。1つの実施形態において、治療は、約7歳でまたはその後に開始される。1つの実施形態において、治療は、約8歳でまたはその後に開始される。1つの実施形態において、治療は、約9歳でまたはその後に開始される。1つの実施形態において、治療は、約10歳でまたはその後に開始される。1つの実施形態において、治療は、約11歳でまたはその後に開始される。1つの実施形態において、治療は、約12歳でまたはその後に開始される。しかしながら、治療は、約15、約20、約25、約30、約35、もしくは約40歳でまたはその後に開始され得る。1つの実施形態において、子宮内治療とは、胎児に本明細書において記載される組成物を投与することとして定義される。例えば、David et al,Recombinant adeno-associated virus-mediated in utero gene transfer gives therapeutic transgene expression in the sheep,Hum Gene Ther.2011 Apr;22(4):419-26.doi:10.1089/hum.2010.007.Epub 2011 Feb 2を参照されたく、それは参照により本明細書に組み入れられる。
【0096】
別の実施形態において、組成物は、後日に再投与される。任意で、1回を上回る回数の再投与が認められる。そのような再投与は、同じタイプのベクター、異なるウイルスベクターを用いた、または本明細書において記載される非ウイルス性送達を介したものであり得る。
【0097】
本明細書において記載される治療の目標には、バッテン病の進行を抑えるまたは止めることが含まれる。治療の望ましい結果には、限定されることなく、UBDRSの査定スコアのいずれかの増加、TPP1活性または発現レベルの増加、神経認知試験によって判定される運動機能の増加(またはその機能障害の進行の低下)、及びMRIによる皮質体積の増加(またはその機能障害の進行の低下)が含まれる。所望の結果には、筋肉衰弱を低下させること、筋肉の強度及び調整を増加させること、または呼吸器の健康状態を維持することもしくは増加させること、または振戦もしくは痙攣を低下させることが含まれる。他の所望の評価項目は、医師によって決定され得る。
【0098】
さらに別の実施形態において、上で記載される方法のいずれかは、別の療法、すなわち二次療法と組み合わせて実施される。二次療法は、これらの変異もしくは欠陥、またはそれに伴う影響のいずれかを阻止する、食い止める、または改善するのを助ける、任意の現在公知のまたは未知の療法であり得る。二次療法は、上で記載される組成物の投与の前に、それと同時に、または後に施され得る。1つの実施形態において、二次療法は、神経栄養因子、抗酸化物質、抗アポトーシス剤の投与など、網膜細胞の健康状態を維持するための非特異的な手法を伴う。非特異的な手法は、タンパク質、組み換えDNA、組み換えウイルスベクター、幹細胞、胎児組織、または遺伝子改変細胞の注射を通じて達成される。後者には、カプセル化されている遺伝子改変細胞が含まれ得る。1つの実施形態において、二次療法は脳室内セルリポナーゼアルファ(BMN 190)である。Schulz et al,Intracerebroventricular cerliponase alfa(BMN 190) in children with CLN2 disease:results from a phase 1/2 open label,dose-escalation study,J Inherit Metab Disease,39:S51を参照されたく、それは参照により本明細書に組み入れられる。推奨投薬量は、隔週で投与される30~300mg ICV注入である。
【0099】
1つの実施形態において、組み換えrAAVを作出する方法は、上で記載されるAAV発現カセットを含有するプラスミドを獲得すること、及び感染性AAVエンベロープまたはカプシド内へのAAVウイルスゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なウイルス配列の存在下で、当該プラスミドを運ぶパッケージング細胞を培養することを含む。rAAVベクター作出の具体的な方法は上で記載されており、上で及び下記の実施例において記載される発現カセット及びゲノムにおけるコドン最適化CLN2を送達し得るrAAVベクターを作出する際に採用され得る。
【0100】
本発明のある特定の実施形態において、対象はバッテン病を有し、それを治療するために本発明の構成要素、組成物、及び方法は設計される。本明細書において使用するとき、本明細書において用いられる「対象」という用語は、ヒト、獣医学的動物または家畜、飼いならされた動物またはペット、及び臨床研究に通常用いられる動物を含めた、哺乳類動物を意味する。1つの実施形態において、これらの方法及び組成物の対象はヒトである。さらに他の適切な対象には、限定されることなく、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、非ヒト霊長類等が含まれる。本明細書において使用するとき、「対象」という用語は、「患者」と互換可能に用いられる。
【0101】
本明細書において使用するとき、「治療」または「治療すること」という用語は、バッテン病の1つまたは複数の症状を改善する目的で、本明細書において記載される1種または複数種の化合物または組成物を対象に投与することを包含すると定義される。ゆえに、「治療」には、バッテン病の発症もしくは進行を低下させること、疾患を予防すること、疾患症状の重症度を低下させること、または神経学的機能障害の進行を含めたそれらの進行を遅滞させること、疾患症状を取り除くこと、疾患の発症を遅らせること、または所定の対象における疾患の進行もしくは療法の効力をモニターすることのうちの1つまたは複
数が含まれ得る。
【0102】
1つの態様において、機能的TPP1タンパク質をコードするコード配列が提供される。「機能的hTPP1」によって、疾患と関連しない天然TPP1タンパク質またはその天然バリアントもしくは多型の生物学的活性レベルの少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはほぼ同じ、または100%を上回る割合を提供するTPP1タンパク質をコードする遺伝子を意味する。
【0103】
インビトロでTPP1発現及び活性レベルを測定するための多様なアッセイが存在する。例えば、下記の実施例2を参照されたい。本明細書において記載される方法は、バッテン病またはその症状の治療に対する他の任意の療法とも組み合わせられ得る。CLN2病の管理は複雑である。患者は、高い症状負荷及び急速な機能衰退に起因して、広範な集学的医療を要し、家族は広範な心理社会的サポートを要するが、現在この状況に対する管理指針は存在しない。例えば、Williams et al,Management strategies for CLN2 disease,Pediatric Neurology 69(2017)102e112を参照されたく、それは参照により本明細書に組み入れられる。しかしながら、ある特定の実施形態において、標準治療には、脳室内セルリポナーゼアルファ(BMN 190)が含まれ得る。Schulz et al,Intracerebroventricular cerliponase alfa(BMN 190) in children with CLN2 disease:results from a phase 1/2 open label,dose-escalation study,J Inherit Metab Disease,39:S51を参照されたく、それは参照により本明細書に組み入れられる。推奨投薬量は、隔週で投与される30~300mg ICV注入である。
【0104】
ある特定の実施形態において、AAV9.CLN2ベクターを産生する。いくつかの適切な精製法が選択され得る。適切な精製法の例は、例えば、「Scalable Purification Method for AAV9」と題した、2016年12月9日に出願された国際特許出願第PCT/US2016/065970号、ならびにその優先権文書である2016年4月13日に出願された米国特許出願第62/322,071号及び2015年12月11日に出願された第62/226,357号に記載されており、それは参照により本明細書に組み入れられる。
【0105】
AAVウイルスベクターの場合、ゲノムコピー(「GC」)の定量が、製剤に含有される用量の測定基準として用いられ得る。当技術分野において公知の任意の方法を用いて、本発明の複製欠陥ウイルス組成物のゲノムコピー(GC)数を決定し得る。AAV GC数の滴定を実施するための1つの方法は以下のとおりである:精製されたAAVベクターサンプルをまずDNaseで処理して、混入している宿主DNAを産生工程から排除する。次いで、DNase耐性粒子を熱処理に供して、カプシドからゲノムを放出する。次いで、放出されたゲノムを、ウイルスゲノムの特異的領域(例えば、ポリAシグナル)を標的にするプライマー/プローブセットを用いたリアルタイムPCRによって定量化する。ゲノムコピーを決定するための別の適切な方法は、定量PCR(qPCR)、特に最適化qPCRまたはデジタルドロップレットPCRである[編集に先立って2013年12月13日にオンラインで公開された、Lock Martin,et al,Human Gene Therapy Methods.April 2014,25(2):115-125.doi:10.1089/hgtb.2013.131]。あるいは、ViroCyt3100、つまりフローサイトメトリーが粒子定量に用いられ得る。別の方法において、最適化されたTPP1コード配列をコードする核酸配列を運ぶ組み換えアデノ随伴ウイルスの有効用量は、S.K.McLaughlin et al,1988 J.Virol.,62:1963に記載されているように測定され、それは参照によりそ
の全体として組み入れられる。
【0106】
複製欠陥ウイルス組成物は、ヒト患者に対して、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた約1.0×109GC~約9×1015GC(体重が70kgの平均的対象を治療するために)、好ましくは1.0×1012GC~1.0×1014GCの値域内にある複製欠陥ウイルスの量を含有するように投薬量単位に製剤化され得る。1つの実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×109、2×109、3×109、4×109、5×109、6×109、7×109、8×109、または9×109GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、または9×1010GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、または9×1011GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、または9×1012GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、または9×1013GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、または9×1014GCを含有するように製剤化される。別の実施形態において、組成物は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、または9×1015GCを含有するように製剤化される。1つの実施形態において、ヒト適用に関して、用量は、値域内のすべての整数または部分的な量を含めた、投薬あたり1×1010~約1×1015GCに及び得る。
【0107】
ある特定の実施形態において、用量は、約1×109GC/g脳質量~約1×1012GC/g脳質量の値域内にあり得る。ある特定の実施形態において、用量は、約3×1010GC/g脳質量~約3×1011GC/g脳質量の値域内にあり得る。ある特定の実施形態において、用量は、約5×1010GC/g脳質量~約1.85×1011GC/g脳質量の値域内にあり得る。
【0108】
1つの実施形態において、ウイルス構築物は、少なくとも約1×109GC~約1×1015、または約1×1011~5×1013GCの用量で送達され得る。これらの用量及び濃度の送達のための適切な容量は、当業者によって決定され得る。例えば、約1μL~150mLの容量が選択され得、成人にはより高い容量が選択される。典型的に、生まれたばかりの乳児に関して、適切な容量は約0.5mL~約10mLであり、より年長の乳児に関しては、約0.5mL~約15mLが選択され得る。幼児に関しては、約0.5mL~約20mLの容量が選択され得る。小児に関しては、最高で約30mLの容量が選択され得る。10代前半及び10代に関しては、最高で約50mLの容量が選択され得る。さらに他の実施形態において、患者は、約5mL~約15mL、または約7.5mL~約10mLの容量で髄腔内投与を受け得る。投薬量は、任意の副作用に対する治療的有益性のバランスを取るように調整され、そのような投薬量は、組み換えベクターが採用される治療的適用に応じて変動し得る。
【0109】
上記の組み換えベクターは、公開された方法に従って宿主細胞に送達され得る。ある特定の実施形態において、ヒト患者への投与に関して、rAAVは、適切には、生理食塩水、界面活性剤、及び生理学的に適合する塩または塩の混合物を含有する水溶液中に懸濁される。適切には、製剤は、生理学的に許容されるpHに、例えばpH6~9、またはpH6.5~7.5、pH7.0~7.7、またはpH7.2~7.8の値域内に調整される。脳脊髄液のpHは約7.28~約7.32であることから、髄腔内送達に関しては、この値域内のpHが所望され得る;一方で、静脈内送達に関しては、6.8~約7.2のpHが所望され得る。しかしながら、送達の他の経路には、最も広い値域及びこれらの部分値域内の他のpHが選択され得る。
【0110】
適切な界面活性剤または界面活性剤の組み合わせは、非毒性である非イオン性界面活性剤の中から選択され得る。1つの実施形態において、例えば、中性pHを有し、8400の平均分子量を有するポロキサマー188としても知られるプルロニック(登録商標)F68(BASF)など、第一級ヒドロキシル基で終結する二官能性ブロック共重合体界面活性剤が選択される。他の界面活性剤及び他のポロキサマー、すなわちポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2本の親水性鎖によって隣接されたポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心の疎水性鎖から構成される非イオン性トリブロック共重合体、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-1ヒドロキシステアレート)、LABRASOL(ポリオキシカプリル酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、及びポリエチレングリコールが選択され得る。1つの実施形態において、製剤はポロキサマーを含有する。これらのコポリマーは、「P」(ポロキサマーに関して)、それに続く3つの数字で一般に名前を付され:最初の2つの数字×100はポリオキシプロピレンコアのおよその分子質量を与え、最後の数字×10はポリオキシエチレン含有量パーセンテージを与える。1つの実施形態において、ポロキサマー188が選択される。界面活性剤は、懸濁液の最高で約0.0005%~約0.001%の量で存在し得る。
【0111】
1つの例において、製剤は、例えば、水中に塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、デキストロース、硫酸マグネシウム(例えば、硫酸マグネシウム・7H2O)、塩化カリウム、塩化カルシウム(例えば、塩化カルシウム・2H2O)、二塩基性リン酸ナトリウム、及びその混合物のうちの1種または複数種を含む緩衝生理食塩溶液を含有し得る。適切には、髄腔内送達に関して、オスモル濃度は、脳脊髄液と適合する値域内にある(例えば、約275~約290);例えば、emedicine.medscape.com/article/2093316-overviewを参照されたい。任意で、髄腔内送達に関して、市販の希釈剤が懸濁化剤として、または別の懸濁化剤及び他の任意の賦形剤と組み合わせて用いられ得る。例えば、Elliotts B(登録商標)solution(Lukare Medical)を参照されたい。他の実施形態において、製剤は、1種または複数種の透過増強剤を含有し得る。適切な透過増強剤の例には、例えばマンニトール、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、またはEDTAが含まれ得る。
【0112】
別の実施形態において、組成物は、キャリア、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントを含む。適切なキャリアは、導入ウイルスが向けられる適応症を考慮して、当業者によって容易に選択され得る。例えば、1つの適切なキャリアには生理食塩水が含まれ、それは多様な緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)とともに製剤化され得る。他の例示的なキャリアには、無菌の生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、落花生油、ごま油、及び水が含まれる。バッ
ファー/キャリアは、rAAVが注入チューブにくっつくのを阻止するがインビボでのrAAV結合活性を妨げない構成要素を含むべきである。
【0113】
任意で、本発明の組成物は、rAAV及びキャリア(複数可)に加えて、防腐剤などの他の従来的な薬学的成分、または化学安定剤を含有し得る。適切な例示的な防腐剤には、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールが含まれる。適切な化学安定剤には、ゼラチン及びアルブミンが含まれる。
【0114】
本発明に従った組成物は、上で規定されるものなど、薬学的に許容されるキャリアを含み得る。適切には、本明細書において記載される組成物は、薬学的に適切なキャリア中に懸濁された、及び/または注射、浸透圧ポンプ、髄腔内カテーテルを介した対象への送達のために、または別のデバイスもしくは経路による送達のために設計された適切な賦形剤と混和された、有効量の1種または複数種のAAVを含む。1つの例において、組成物は髄腔内送達のために製剤化される。1つの実施形態において、髄腔内送達は、脊柱管内、例えばクモ膜下腔内への注射を包含する。1つの実施形態において、送達の経路は脳室内注射(ICV)である。別の実施形態において、送達の経路は髄腔内-腰部(IT-L)送達である。
【0115】
本明細書において記載されるウイルスベクターは、それを必要としている対象(例えば、ヒト患者)にhTPP1を送達するための、対象に機能的TPP1を供給するための、及び/またはバッテン病を治療するための医薬を調製することにおいて用いられ得る。治療の過程は、任意で、同じウイルスベクター(例えば、AAV9ベクター)または異なるウイルスベクター(例えば、AAV9及びAAVrh10)の反復投与を伴い得る。本明細書において記載されるウイルスベクター及び非ウイルス性送達システムを用いた、さらに他の組み合わせが選択され得る。
【0116】
本明細書において記載されるhTPP1 cDNA配列は、当技術分野において周知の技法を用いて、インビトロ及び合成で作出され得る。例えば、Xiong et al,PCR-based accurate synthesis of long DNA
sequences,Nature Protocols 1,791-797(2006)によって記載されるように、長いDNA配列のPCRに基づく精確な合成(PAS)法が利用され得る。二重非対称PCRと重複伸長PCR法とを組み合わせた方法が、Young and Dong,Two-step total gene synthesis method,Nucleic Acids Res.2004;32(7):e59によって記載されている。Gordeeva et al,J Microbiol Methods.Improved PCR-based gene synthesis method and its application to the Citrobacter freundii phytase gene codon modification.2010 May;81(2):147-52.Epub 2010 Mar 10も参照されたく;以下のpatents on oligonucleotide synthesis and gene synthesis,Gene
Seq.2012 Apr;6(1):10-21;US8008005;及びUS7985565も参照されたい。これらの文書のそれぞれは、参照により本明細書に組み入れられる。加えて、PCRを介してDNAを作出するためのキット及びプロトコールは市販されている。これらは、限定されることなく、Taqポリメラーゼ;OneTaq(登録商標)(New England Biolabs);Q5(登録商標)High-Fidelity DNAポリメラーゼ(New England Biolabs);及びGoTaq(登録商標)G2ポリメラーゼ(Promega)を含めた、ポリメラーゼの使用を含む。DNAは、本明細書において記載されるhOTC配列を含有するプラスミ
ドをトランスフェクトされた細胞からも作出され得る。キット及びプロトコールは公知であり、市販されており、限定されることなく、QIAGENプラスミドキット;Chargeswitch(登録商標)Pro Filterプラスミドキット(Invitrogen);及びGenElute(商標)プラスミドキット(Sigma Aldrich)を含む。本明細書において有用な他の技法には、熱サイクルの必要性を排除する配列特異的等温増幅法が含まれる。熱の代わりに、これらの方法は、典型的に、Bst DNA Polymerase,Large Fragment(New England Biolabs)のような鎖置換DNAポリメラーゼを採用して、二重鎖DNAを分離する。DNAは、RNA依存性DNAポリメラーゼである逆転写酵素(RT)の使用を介した増幅によりRNA分子からも作出され得る。RTは、元のRNA鋳型に相補的であり、cDNAと呼ばれるDNAの鎖を重合させる。次いで、このcDNAは、PCRまたは上で概説される等温法によりさらに増幅され得る。特注DNAは、限定されることなく、GenScript;GENEWIZ(登録商標);GeneArt(登録商標)(Life Technologies);及びIntegrated DNA Technologiesを含めた会社から、商業的にも作出され得る。
【0117】
「発現」という用語は、本明細書においてその最も広い意味で用いられ、RNAの産生、またはRNA及びタンパク質の産生を含む。RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、特にペプチドまたはタンパク質の産生に関する。発現は一過性であり得るまたは安定であり得る。
【0118】
本発明の文脈における「翻訳」という用語は、リボソームにおける工程に関し、mRNA鎖はアミノ酸配列の組み立てを制御して、タンパク質またはペプチドを作出する。
【0119】
「a」または「an」という用語は、1つまたは複数を指すことに留意されるべきである。
【0120】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」という単語は、排他的ではなく内包的と解釈されるべきである。「なる(consist)」、「なる(consisting)」という単語、及びその異形は、内包的ではなく排他的と解釈されるべきである。本明細書における様々な実施形態は、「含む(comprising)」という言語を用いて提示されているものの、他の状況下で、関連する実施形態は、「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」という言語を用いて解釈され及び記載されることも意図される。
【0121】
本明細書において使用するとき、「疾患」、「障害」、及び「病状」は、対象における異常な状態を示すために互換可能に用いられる。
【0122】
本明細書において使用するとき、「約(about)」または「約(~)」という用語は、別様に指定されていない限り、与えられた参照からの10%の変動を意味する。
【0123】
本明細書において用いられる「調節」という用語またはその変形は、組成物が、生物学的経路の1種または複数種の構成要素を阻害し得る能力を指す。
【0124】
本明細書において別様に定義されていない限り、本明細書において用いられる技術的及び科学的な用語は、当業者によって、及び本出願において用いられる用語の多くへの一般的指針を当業者に提供する公開されたテキストへの参照によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は単なる例示であり、本発明を限定することを意図されるわけではない。
【0126】
実施例1:AAV.hTPP1coベクター
ヒト(h)TPP1をコードするコドン最適化されたcDNAを、最適なコドン使用法に対して特注で設計し、合成した。次いで、
図1Fに示され及び配列番号:3として再現されるhTPP1co cDNAを、サイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー(C4)とニワトリベータアクチンプロモーターとの間のハイブリッドであるCB7プロモーターによって推進される導入遺伝子発現カセット内に置き、一方でこのプロモーターからの転写は、ニワトリベータアクチンイントロン(CI)の存在によって増強される(
図1A及び1B)。発現カセットに対するポリAシグナルは、ウサギベータ-グロビン(RBG)ポリAである。
【0127】
AAV.hTPP1coベクター(AAV.CB7.CI.hTPP1co.RBG)の6841bp産生プラスミドを、AAV2由来ITRによって隣接された本明細書において記載されるhTPP1co発現カセット、ならびに選択マーカーとしてのアンピシリンに対する耐性を用いて構築した(
図1B)。カナマイシンに対する耐性を有する類似のAAV.hTPP1co産生プラスミドも構築した。両プラスミドに由来するベクターは、本明細書において記載されるhTPP1co発現カセットに隣接するAAV2由来ITRを有する一本鎖DNAゲノムであった。
【0128】
AAV.hTPP1coベクターを三重トランスフェクションによって作製し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び0.001%プルロニックF68(PF68)からなる賦形剤中に製剤化した。例えば、Mizukami,Hiroaki,et al.,A Protocol for AAV vector production and purification,Diss.Division of Genetic Therapeutics,Center for Molecular Medicine,1998を参照されたい。産生されたベクターのゲノム力価を、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)により決定した。例えば、M.Lock et al,Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照されたい。
【0129】
実施例2:AAV.hTPP1coベクターのインビトロ発現
AAV.hTPP1coを、インビトロでの機能的TPP1の発現について試験した。HEK293細胞を6ウェルプレートに播種した。約90%コンフルエンスに達した時点で、細胞に5μgのAAV.hTPP1coベクターまたはDNAなしをトランスフェクトした。72時間後、細胞培養物の上清を収穫し、TPP1活性/酵素アッセイのために処理した。
【0130】
TPP1アッセイに関して、蛍光発生基質AAF-AMC(Bachem、カタログ#I-1415、DMSO中に溶解された10mM)を、pH5.0にて50mM酢酸ナトリウム及び100mM塩化ナトリウムを含有するアッセイバッファー中に500μMに希釈した。まず、50μLの試験サンプル(上清)を、黒色ウェルプレートに二つ組で載せた。500μM基質の50μLを各ウェルに添加して、機能的TPP1によって触媒される、基質を産物に変換する反応を開始させ、蛍光産物AMCが放出された。サンプルからの蛍光シグナルの強度を、蛍光マイクロプレートリーダーによりカイネティックモードで10分間モニターした(発光波長を460nmに設定し、一方で励起波長を380nmに設定した)。7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC、Thermo Fisher #A191)を蛍光参照標準物質として利用した。放出された蛍光産物の濃度を、アッセ
イバッファー中に希釈されたAMCの検量線に基づいて算出し、次いで
図2にプロットした。
【0131】
10分間の観察期間中、AAV.hTPP1coをトランスフェクトされた細胞培養物からの上清は、蛍光シグナルの着実でかつ急激な増加を示し(CB7.CLN2、
図2における上の線)、一方でトランスフェクトされていない細胞からの上清は、わずかな増加を示しただけであった(モック、
図2における下の線)。この結果は、AAV.hTPP1coベクターが、機能的なヒトTPP1タンパク質をインビトロで発現させ得ることを示した。
【0132】
実施例3:AAV.hTPP1coベクターのインビボ発現
本明細書において記載されるAAV.hTPP1coベクターのインビボ発現を査定するために、10匹のC57Bl/6J野生型雄マウスに、本明細書において記載されるAAV.hTPP1coを脳室内投与により1×1011GCで注射した。マウスを12時間の明/12時間の暗サイクルに保ち、食糧/水を自由に提供した。注射なしの10匹の野生型雄マウスが対照として働いた。注射の14日後に、すべてのマウスを屠殺し、剖検を実施した。TPP1の発現及び顕在的毒性を評価した。
【0133】
マウス脳におけるTPP1の発現を査定するために、上で記載されるマウスの脳サンプルを収穫し、MPS(登録商標)組織溶解バッファー中でホモジナイズした。脳溶解物中のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸アッセイ(BCAアッセイ)によって決定した。脳溶解物のTPP1酵素活性を実施例2に記載されるように測定し、単位/h/μg脳タンパク質に対して正規化した。基質ありかつ脳溶解物なしでインキュベートされたアッセイバッファーが、陰性対照として働いた。結果を
図3Aにプロットした。注射なしの野生型マウスの脳溶解物(WT、
図3A)は、陰性対照(ブランク、
図3A)と比較してTPP1酵素活性を示し、一方で最も高いレベルのTPP1酵素活性は、AAV.hTPP1coで処理されたマウスにおいて観察された(WT+1e11、
図3A)。
【0134】
上で記載される試験された動物の脳脊髄液(CSF、
図3B)、血清(
図3C)、及び肝臓(
図3D)を用いて、TPP1酵素活性についての並行調査を実施した。回収中に血液で汚染したCSFサンプルは、測定から除外された。肝臓サンプルに関する結果を、BCAアッセイによって決定される単位/h/μg肝臓タンパク質に対して正規化し、一方でCSF及び血清サンプルに関するものを、アッセイに用いられた試験サンプルの単位/h/μl液体容量に対して正規化した。処理なしのマウス(WT)と比較して、AAV.hTPP1coを注射されたマウスのTPP1酵素活性の増加が、CSF(WT+1e11、
図3B)、血清(WT+1e11、
図3C)、及び肝臓(WT+1e11、
図3D)において観察された。
【0135】
上記を考慮して、本明細書において記載されるAAV.hTPP1coの注射は、インビボにおける機能的ヒトTPP1の発現をもたらした。
【0136】
脳、眼、肝臓、肺、腎臓、及び筋肉など、試験されたマウスの組織及び臓器も回収し、形態学及び損傷応答マーカー(GFAP等)の免疫染色など、毒性評価のために処理した。
【0137】
実施例4:TPP1ノックアウト(KO)マウス/マウスモデルにおけるAAV.hTPP1coベクター
AAV.hTPP1co注射の効力を査定するために、TPP1ノックアウト(KO)マウスを獲得し、食糧/水が自由に提供される12時間の明/12時間の暗サイクルで維持した。2~3ヶ月齢の雌TPP1 KOマウス(KOマウス)を利用した。5匹のマウ
スに、1×1011GCのAAV.hTPP1coベクターを脳室内投与により注射し、一方で4匹のマウスに、対照としてのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を注射した。試験されたマウスの体重をモニターし及び記録した。脳、CSF、血清、及び肝臓からのサンプルのTPP1酵素活性を測定した。リポフスチン自家蛍光、及びGFAP発現によって査定されるアストロサイトーシスなどの脳組織学を評価した。ロータロッド、振戦スコアリング、及び造巣などの機能試験及び行動試験を実施した。
【0138】
CLN2病のTpp1m1jマウスモデルは科学文献において広範に記載されていないものの、Karst et al.(2016)及び自然病歴調査からの使用可能なデータにより、Tpp1m1jマウスモデルは、標的患者集団の特徴的な特質の多くを再現する、CLN2病の生物学的に関連した動物モデルであることが確立されている。Tpp1m1jマウスモデルは、可溶性リソソーム酵素TPP1をコードするCLN2遺伝子のエクソン8の下流にあるスプライスドナー部位における単一ヌクレオチド変異により生じる。この変異の結果として、Tpp1m1jマウスは、脳組織において検出不能なレベルのTPP1酵素活性、ならびにCLN2病を有するヒトと同様の病態生理、表現型、及び死亡率を呈する。CNS組織における炎症及びグリア細胞活性化は、このマウスモデルおいて早くも1ヶ月齢で始まるように見え、一方でリポフスチンの蓄積は、ニューロンにおいて2ヶ月齢までに検出可能である。その後、動物は、脳、脊髄、及び運動ニューロンにおける進行性の神経変性を呈する。Tpp1m1jマウスは、持続性振戦、神経行動学的機能の減退、及び体重減少に経時的に進行する前に、2ヶ月齢で開始する間欠性振戦及び猫背の姿勢を初めに示す。発作及び死亡は早くも3.5ヶ月齢で観察され、100%の死亡率が6ヶ月齢までに観察される(Karst et al.,2016;非公開データ)。要約すると、Tpp1m1Jマウスモデルは、CLN2病の生物学的に関連した動物モデルであり、Tpp1tm1Plobマウス(Sleat et al.,2004)及びTPP1ヌルのダックスフント(Awano et al.,2006)モデルを含めた、他の確立されたマウス及びイヌモデルに非常に類似している。
【0139】
イヌ及びマウスモデルを含めた、CLN2病のいくつかの報告された動物モデルが存在する。科学文献において最もよく特徴付けされているものは、ダックスフントの集団において最初に報告されたTPP1ヌルのイヌモデルである(Awano et al.,2006)。イヌTPP1(ヒトCLN2のイヌオルソログ)のエクソン4における単一ヌクレオチド欠失、及び未成熟終止コドンによる予想されるフレームシフト変異の結果として、罹患したイヌは、欠損したTPP1酵素活性(脳組織において、<1%WTレベル)、全般性ミオクローヌス発作(ジアゼパムに応答性)、網膜変性及び視力喪失、進行性の神経学的徴候(嘔吐、振戦、学習性指令(learned command)への非応答性、固有受容性運動失調(proprioceptive ataxia)、脅威応答の非対称性低下、小脳性運動失調、運動機能不全、多動性、頭部のミオクローヌス、認知機能の減少)、ならびに早期死亡(約10~12ヶ月齢)を含めた、CLN2病を有するヒトの臨床的及び生化学的兆候の多くを呈する。神経細胞喪失、白質の枯渇、進行性の脳萎縮、及び特徴的な曲線様物質からなる自家蛍光性貯蔵顆粒のリソソーム蓄積を含めた、ヒトにおけるCLN2病と合致した広範な神経病理も顕著である。しかしながら、飼育制約及びこの動物の極めて限定された使用可能性は、AAV9.CB7.hCLN2に対する前臨床試験プログラムにおけるTPP1ヌルのイヌモデルの使用に課題をもたらす。
【0140】
科学文献におけるCLN2病の最もよく報告されるマウスモデルは、Dr.Peter
Lobelによって開発されたTpp1tm1Plobマウスモデルである(Sleat et al.,2004)。このモデルにおいて、CLN2遺伝子は、イントロン11にネオマイシンカセットを持つ。結果として、これらの動物の脳において検出可能なTPP1酵素活性はない。このモデルにおける病態生理学的及び神経行動学的な変化は、進行性の神経学的徴候(損なわれた運動機能、振戦、発作)、広範な神経病理(進行性のリ
ソソーム蓄積及び脳における炎症、広範囲にわたる軸索変性)、及び寿命の短縮(約6ヶ月)を含めた、ヒトにおけるCLN2病を反映する。Tpp1tm1Plobマウスモデルは、数々の臨床病期プログラムの前臨床試験プログラムに組み入れられている(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT00151216、NCT01414985、NCT01161576;Passini et al.,2005;Passini et al.,2006;Sondhi et al.,2007;Sondhi et al.,2008)。しかしながら、Tpp1tm1Plobマウスモデルは市販されておらず、ゆえに、AAV9.CB7.hCLN2に対する前臨床試験プログラムに組み入れられるのは実現可能ではなかった。
【0141】
Tpp1tm1Plobマウスモデルに非常に類似しているCLN2病のTpp1m1jマウスモデルは、Jackson Laboratoriesを通じて市販されている。このマウスモデルは、CLN2遺伝子のエクソン8の下流にあるスプライスドナー部位における単一ヌクレオチド変異により生じる。この変異の結果として、Tpp1m1jマウスは、脳組織において検出不能なレベルのTPP1酵素活性、ならびにCLN2病を有するヒトと同様の病態生理、表現型、及び死亡率を呈する(Karst et al.,2016)。
【0142】
自然病歴調査を行って、Tpp1m1jマウスモデルをさらに特徴付けした。簡潔には、1ヶ月齢(n=20)、3ヶ月齢(n=20)、及び5.5ヶ月齢(n=20)の時点における(実現可能なものとして、生存動物の)予定された屠殺を有して、野生型(n=40)及びTpp1m1jマウス(n=60)を、疾患表現型(体重、臨床観察、生存率)の進行についてモニターして、脳組織におけるTPP1酵素活性及び組織病理(リソソーム貯蔵物質の蓄積、アストロサイトーシス)を評価した。簡潔には、ケージ側での観察により、Tpp1m1jマウスの大多数において2ヶ月齢の時点で中程度の歩行異常及び/または振戦の発症が明らかになり、一方で少数の動物は、他の臨床症状の発症前に、全般性致死性発作を経験するように見えた。臨床観察をすると、運動協調性のわずかな機能障害がTpp1m1jマウスにおいて3ヶ月齢の時点で観察された。早くも3.5ヶ月齢で始まる、痙攣大発作または全般性間代性強直性発作が、動物の大多数において観察された。発作は、ケージ変化の間、大きな騒音、及び闘争などの環境ストレスによって引き起こされる及び/または増幅されるように見えた(留意すべきは、大きな騒音などの環境刺激によって誘発される明らかな致死性驚愕発作の報告例は、Tpp1tm1Plobマウスモデルにおいても報告されていることである(Sleat et al.,2004))。概して、Tpp1m1jマウスは、運動性の減少、漸進的な体重減少、餌を食べることができないこと、部分的次いで全般性の振戦、発作、及び早期死亡(6ヶ月齢までに100%の死亡率;
図15)を含めた、症状の発症後に急速な悪化を示した。生存曲線の明らかな性別特異的差異は、闘争に起因した雄動物における環境刺激誘発性致死性発作のより高い発生率の結果であると仮説される。
【0143】
TPP1酵素活性を、Sohar et al.(Sohar et al.,2000)によるプロトコールの改変版を用いて、Tpp1m1jマウスの脳及び肝臓において測定した。データは、すべての時点で、すべての試験された組織においていかなる残存TPP1活性もないことを裏付けている(
図16)。
【0144】
皮質、海馬、脳幹、及び小脳を1、3、及び5.5ヶ月齢の時点で収穫し、処理して、神経病理、及び疾患の進行に対するマーカーとしてのリソソーム貯蔵物質の蓄積を分析した。CNS組織は進行性のリソソーム蓄積及び神経病理を示し、それは5.5ヶ月の時点における終末期疾患で際立った(データ示さず)。簡潔には、H&E染色した切片に関して、脳は1ヶ月齢の時点で目立ったことはなかった(一方で、GFAP免疫染色をすると、軽度のアストロサイトーシスがすでに存在した)。3ヶ月齢の時点で、大型の脳幹ニュ
ーロンにおける好酸性貯蔵物質、皮質におけるグリオーシス、及び脳の多数の領域における広範囲にわたるアストロサイトーシスを含めた、神経病理の数々の測定が観察された。5.5ヶ月齢の時点で、脳全域の広範囲にわたるかつ著しいアストロサイトーシスに加えて、錐体皮質ニューロン及び脳幹大型ニューロンにおいて貯蔵病理が著しかった。貯蔵物質は、特に脳幹において、蛍光灯(染色なし)の下で容易に明らかであった。
【0145】
内因性の神経欠陥の他に、多くのLSD(CLN2病を含む)に共通する別の出現因子は、ニューロンの生存に負の影響を与え得及び進行性の神経変性に寄与し得る神経炎症である。ミクログリア及びアストロサイト活性化は、CNSに影響を及ぼす多くのLSDの証であり、それは、最終的なニューロン喪失が生じる領域にしばしば先行し及びそれを予測する(Bosch et al.,2015)。ゆえに、アストロサイトーシスの客観的定量を可能にするために、スコアリングシステムをGFAP染色に基づいて開発した(すなわち、GFAPスコア)。GFAPスコアを、20×倍率視野あたりの活性化アストロサイト(抗GFAP抗体で染色される)の平均数として定義した。この自然病歴調査では、GFAPスコアを、1、3、及び5.5ヶ月齢の時点で海馬及び皮質において算出した。結果は、疾患の進行と一致するGFAPの進行性の蓄積を示している(
図17)。アストロサイトーシスは、それが、貯蔵蓄積(それは3ヶ月齢で検出された)の前に観察されたことから、ニューロン貯蔵蓄積よりも神経病理のより高感度のマーカーであるように見える。リポフスチン蓄積を検出するために用いられる方法(免疫組織化学によるシグナル増幅なしの非特異的色素)の感度は、GFAP染色と比べて減少するが、皮質及び海馬における早くも1ヶ月齢でのアストロサイトーシスの観察は、CLN2病におけるニューロンの死の主な原因としての炎症の仮説上の役割と合致する。要約すると、Tpp1m1Jマウスモデルは、CLN2病の生物学的に関連した動物モデルであり、Tpp1tm1Plobマウス(Sleat et al.,2004)及びTPP1ヌルのダックスフント(Awano et al.,2006)動物モデルを含めた、他の確立されたマウス及びイヌモデルに非常に類似している。Tpp1m1jマウスは、臨床症状の発症時の若年齢、異常な表現型の急速な進行、及び寿命の短縮、ならびに同様の病態生理学的、生化学的、及び機能的な変化を含めた、ヒトにおけるCLN2病の特徴的な特質を呈する。Tpp1m1jマウスにおける生後1週間(及びおそらく出生前)で開始して、TPP1酵素活性の欠損は、ニューロンの細胞質における、リポフスチン顆粒としても知られる、リソソーム消化の脂質含有残留物の蓄積に至る。ニューロンの細胞質におけるリポフスチン蓄積はH&E染色によって明らかとなり、アストロサイト活性化またはアストロサイトーシスの増加(神経炎症の指標)と相関する。その後、Tpp1m1jマウスは、運動機能の進行性の悪化及び歩行異常、振戦、発作、体重減少及び食べることができないこと、ならびに早期死亡を経験する。
【0146】
A.重量
1×10
11GCのAAV.hTPP1coベクターを注射された5匹のTPP1 KOマウスの体重を、注射後の約14日ごとにモニターした(
図11に示される線によってつながれた閉じた四角形)。PBSのみを注射された3匹のTPP1 KOマウスが対照として働いた(
図11における線によってつながれた閉じた丸)。ゆえに、調査の間に死んだ第四のTPP1 KOマウスはここから除外された。注射後4日目の時点での体重は、処理されたマウスと対照との間で同等であったが、一方で1×10
11GCのAAV9.CB7.CI.hCLN2co.RBGでの処理は、KO雌における体重増大を助長するように見えた。
【0147】
B.TPP1酵素活性
PBS(
図10、KO+PBS、n=4)または1×10
11GC AAV9.CB7.CI.hCLN2co.RBG(
図10、KO+1e11、n=5)をICV注射されたTPP1 KO雌の血清におけるTPP1酵素活性を測定した。実施例3に記載される
、注射なしの(
図10、WT、n=2)または1×10
11GC AAV9.CB7.CI.hCLN2co.RBG(
図10、WT+1e11、n=2)をICV注射された野生型雄マウスを、精確な比較のために同時に試験した。
【0148】
TPP1酵素活性を血清において測定し、実施例2に記載されるアッセイに用いられた血清の容量で割ることによって、単位/μL/hに対して正規化した。AAV.hTPP1coでの注射後、雌KOマウスは、雄野生型マウスとは対照的に、血清においてTPP1酵素活性の上昇を示さなかった(
図10)。
【0149】
C.脳組織学
PBSまたは1×1011GC AAV9.CB7.CI.hCLN2co.RBGでのICV注射の60日後、動物を安楽死させ、脳、肺、肝臓、筋肉、及び腎臓などの組織を収穫した。脳サンプルを切片化し、さらなる組織学的分析のために採取した。
【0150】
皮質及び視床を、アストロサイト活性化のマーカーであるGFAP(グリア線維性酸性タンパク質)に対して免疫組織化学によって染色した。アストロサイトーシスとしても知られるアストロサイト活性化は、NCLにおけるニューロンの死/喪失の主な原因の1つである。WT動物は、皮質及び視床において比較的わずかなGFAP染色を示した(示されず)。PBS処理されたノックアウトは、皮質及び視床において劇的に増加したGFAP染色を示した(示されず)。1×1011GC AAV9.CB7.CI.hCLN2co.RBGで処理されたノックアウトは、皮質及び視床の両方においてGFAP染色の改善を示すように見えた(示されず)。
【0151】
D.機能試験及び行動試験
a.造巣
PBS(n=4)または1×1011GCのAAV9.CB7.CI.hCLN2co.RBG(n=5)をICV注射されたTPP1 KO雌を集団で飼育した。動物を新しいケージに住まわせ、ケージ変化の24時間後に、ネストレットを造巣の徴候について観察した。
【0152】
PBSで処理されたKO雌は、それらのネストレットをビリビリに引き裂く及び巣を造る最小限の徴候を示し、それは、Peter LobelモデルにおけるRon Crystalによって記載された観察結果と合致している。1×1011GC AAV9.CB7.CI.hCLN2co.RBGで処理されたKO雌は、それらのネストレットをビリビリに引き裂き及び正常な巣を造り、マウスの正常な行動の向上を立証した。造巣試験は、定量目的のために1匹を上回る数のマウスに対して実施されている。
【0153】
b.ロッキングロータロッド試験
PBS(n=4)または1×1011GCのAAV9.CB7.CI.hCLN2co.RBG(n=5)をICV注射されたTPP1 KO雌は、下記のプロトコールに従ってロッキングロータロッド試験を受けた。
【0154】
ロータロッド試験に関して、マウスを、1回の馴化及びロッキングロータロッドセッション、次いでその後3回の訓練セッション(運動学習及びロッキングロータロッドを含む)という連続4日間ロータロッドに供した。「落下する」までの潜時の増加は、学習が生じたことを示す。訓練及び試験の日の時間周期を同じに保ち、それは午前8時~午後12時であった。1日目に、2回の試行を一定の低速(5rpm)で実施して、マウスを装置に馴化させた。マウスを5rpmでのロータロッド走行に120秒間置いた。マウスが落ちた場合、動物をロッド上に戻した。2回の試行の間に、2分間の休憩を許した。ロータロッドを5rpmでの一定速度モードに設定した。同日、ロッキングロータロッドセッシ
ョンを、馴化後すぐに開始した(その間に2分間の休憩を許した)。ロータロッドを、合計180秒間、1回転おきに逆回転する10rpmに設定した。マウスが落ちた場合または180秒後に、試行を終結した。3分間の試行間間隔(ITI)の後、第二の試行を実施した。もう3分間のITIの後、第三の最後の試行を実施した。ロータロッド設定を、1回の完全な回転後に逆回転する10rpmでのロッキングモードに設定した。
【0155】
3ヶ月齢の動物を試験し、注射日(D0)ならびに注射後60日目(約5ヶ月齢、D60)に開始した。各マウスを、D0に3回及びD60に3回試験した。各群に関してロータロッド上で過ごした時間として秒で測定される、落下するまでの潜時の平均を
図12Aにプロットした。D60に、PBS(KO+PBS、
図12Aにおける線によってつながれた閉じた丸、n=4)と、AAV.hTPP1coで処理されたKO(KO+1e11GC、
図12Aにおける線によってつながれた閉じた四角形、n=4)との間で有意な差は観察されなかった。
【0156】
c.加速式ロータロッド試験
PBS(n=4)または1×1011GCのAAV9.CB7.CI.hCLN2co.RBG(n=5)をICV注射されたTPP1 KO雌は、下記のプロトコールに従って加速式ロータロッド試験を受けた。
【0157】
マウスを、1回の馴化及びロッキングロータロッドセッション、次いでその後3回の訓練セッション(運動学習及び加速式ロータロッドを含む)という連続4日間ロータロッドに供した。「落下する」までの潜時の増加は、学習が生じたことを示した。訓練及び試験の日の時間周期を同じに保ち、それは午前8時~午後12時であった。1日目に、2回の試行を一定の低速(5rpm)で実施して、マウスを装置に馴化させた。次いで、マウスを5rpmでのロータロッド走行に120秒間置いた。マウスが落ちた場合、動物をロッド上に戻した。2回の試行の間に、2分間の休憩を許した。ロータロッドを5rpmでの一定速度モードに設定した。2~4日目に、マウスを加速式ロータロッドに供した。ロータロッドを、300秒間にわたって5rpmから40rpmに加速するように設定した。マウスが落ちた場合、しがみつきながら1回の受け身の完全な回転をした場合、または300秒後に、試行を終結した。5分間のITIの後、第二の試行を実施した。もう5分間のITIの後、第三の最後の試行を実施した。このセッションの間、ロータロッドを、300秒間の5から40rpmへの加速式傾斜モードに設定した。
【0158】
3ヶ月齢の動物を試験し、注射日(D0)ならびに注射後60日目(約5ヶ月齢、D60)に開始した。各マウスを、D0に3回及びD60に3回試験した。各群に関してロータロッド上で過ごした時間として秒で測定される、落下するまでの潜時の平均を
図12B(D0)及び12C(D60)にプロットした。D60の試験の間、AAV.hTPP1coで処理されたKOにおいて2日目の訓練日に学習の向上が観察された。
【0159】
実施例5:用量効力
実験を実施して、様々な用量でのAAV.hTPP1co注射の効力及び毒性を査定した。TPP1ノックアウト(KO)マウス及び野生型マウスを、食糧/水が自由に提供される12時間の明/12時間の暗サイクルで維持した。1ヶ月齢のTPP1 KOマウスに、3×109(低用量)または3×1011(高用量)GCの、上で記載されるAAV.hTPP1coを脳室内投与により注射した。TPP1 KO及び野生型マウスにPBSも注射し、対照として働いた。各群は、10匹の雄及び10匹の雌動物を含有した。試験されたマウスの生存及び体重をモニターし及び記録した。脳、CSF、血清、及び肝臓からのサンプルのTPP1酵素活性を測定した。リポフスチン自家蛍光、及びGFAP発現によって査定されるアストロサイトーシスなどの脳組織学を評価した。運動協調性アッセイなどの機能試験及び行動試験を実施した。さらに、抗TPP1免疫応答も評価した。
【0160】
A.生存曲線及び体重
生存を毎日モニターし、動物を、それらが重量の20%を喪失した場合に安楽死させた。生存曲線を
図4Aにプロットし、一方で各試験群に関する生存週中央値を算出し、
図4Bに列挙した。高用量で処理された動物の死亡は、1匹の雌を例外として、観察期間中に検出されなかった。低用量で処理されたすべての動物及び未処理KOは死んで発見された。雄KOマウスの生存週中央値は15であり、一方で雌KOマウスは、24週の生存時間中央値を示した。3×10
9GCのAAV.hTPP1coで処理されたKOマウスにおいて、雄の生存期間中央値は16週であり、一方で雌の1匹は19週であった(
図4B)。
【0161】
高用量のAAV9.CB7.hCLN2を投与された動物は、野生型対照と比較して運動学習(小脳機能)の正常化、ならびに劇的に増加した生存率(注射後30週の時点で85%の生存率対対照動物における0%の生存率)を呈した(
図4A’)。低用量(7.5×109GC/g脳質量)のAAV9.CB7.hCLN2を投与されたTpp1m1jマウスにおいて、生存率または生物活性の他の測定において有益性があるようには見えず、低用量及び対照動物の両方において、約17週間の観察される生存期間中央値を有した。
【0162】
上で記載されるすべての試験された動物の体重を
図5にプロットした。高用量で処理された動物は、KOと比較して中程度の体重減少を示した。
【0163】
B.運動協調性アッセイ
NCLはCNS疾患であり、ニューロンの死は運動機能に影響を及ぼす。疾患表現型を評価するために、マウスを、実施例4に記載されるようにロータロッドで運動協調性について試験した。マウスを、1ヶ月齢から3週間ごとにこのプロトコールで訓練した。ロータロッド上で過ごした時間で秒で測定される落下するまでの潜時を記録した。療法の90日後に開始する試験の3日目における試行3の結果を
図6にプロットした。未処理と高用量で処理されたKOとの間に有意な差が観察され、一方で、WTと高用量で処理されたKOとの間で同じ身体能力が観察された。これらの結果は、高用量療法が、TPP1 KOマウスにおける疾患表現型を補うことを立証した。
【0164】
C.抗TPP1免疫応答
上で記載されるAAV.hTPP1coの毒性及び酵素補正を評価するために、TPP1に対する免疫応答を評価した。ICV注射後70日の時点で、本実施例において上で記載される3.3ヶ月齢のマウスから血を抜き取った。産生された血清を抗TPP1抗体の存在について試験して、TPP1タンパク質に対する免疫応答を評価した。
【0165】
免疫応答を、下で記載されるようにELISAによって測定した。pH7.5のTPP1タンパク質を、常用PBS中に2.5μg/mlの最終濃度に希釈した。ELISAプレートをコーティングするために、50μLの希釈されたTPP1を各ウェルに載せ、蓋をしたプレートを低温室で一晩保った。翌日、バッファーBによる5回の洗浄をプレート洗浄器で実施した。200μlのブロッキング溶液(PBS中に希釈された2%(100mlあたり2g)ウシ血清アルブミン(BSA))を各ウェルに添加し、室温で最低でも1時間インキュベートして、プレートの非特異的結合部位をブロッキングした。プレートを反転させかつしっかりと振とうすることによって、ブロッキング溶液を除去した。回収した血清を常用PBS中に千倍希釈し、各ウェルに50μlのそのような希釈された血清を載せた。PBSのみのウェルが陰性対照として働き、一方で陽性サンプルを1/10、1/30、1/90、1/270、1/810、1/2430、及び1/7290で希釈して、検量線を作出した。試験された各血清に対して二つ組または三つ組を実施した。室
温で2時間のインキュベーション後、バッファーBでの5回の洗浄をプレート洗浄器で実施した。
【0166】
抗TPP1 IgGを試験するために、HRP抱合ヤギ抗マウスIgG抗体である一次抗体を、ブロッキングバッファー中に1:10,000で希釈した。100μLの調製された一次抗体を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。バッファーBでの5回の洗浄をプレート洗浄器で実施した。150μl HRP基質(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、TMB)を各ウェルに載せた。検出可能な色を発色させるために、暗所で1~30分間インキュベートさせた。必要であれば優しくピペッティングしながら、50μl停止バッファー(硫酸)を各ウェルに添加した。450nmにおけるシグナルを、プレートリーダーを用いて測定した。
【0167】
抗TPP1 IgMを検出するために、上で記載される同じプロトコールを、以下の改変を有して実施した。一次抗体はヤギ抗マウスIgMであった。一次抗体とのインキュベーションの後、バッファーBでの5回の洗浄を実施し、その後に、ブロッキングバッファー中に1:10,000で希釈された100μl HRP抱合抗ヤギ二次抗体との30分間のインキュベーションが続いた。
【0168】
低用量で処理された雄及び雌KOマウス、ならびに高用量で処理された雌マウスの両方とも、TPP1に対して強い免疫応答を示し(
図7A)、この免疫応答が治療用量とは無関係であることを立証した。高用量のAAV.hTPP1coベクターで処理された雄KOは、中程度の免疫応答を示した。同じ血清における付随的TPP1酵素活性を、実施例2及び4に記載されるように測定し、
図7B及び
図20にプロットした。酵素活性は、抗TPP1抗体の存在と逆相関した。それにもかかわらず、実施例5に示されるように、雄及び雌の高用量の間で治療効力の差は観察されず、抗TPP1免疫応答の負の影響がないことを示唆した。
【0169】
D.TPP1酵素活性
種々の臓器におけるTPP1酵素活性を評価するために、ならびに罹患組織(大部分は脳)における酵素補正を査定するために、TPP1酵素活性を、実施例2及び4に記載されるように測定した。実施例4に記載されるように、皮質、ならびに側脳室(LV)、海馬、及び視床の一部を含む区画(
図9においてLV区画と名前を付されている)などの脳組織を収穫し、切開し、及び処理した。TPP1活性は、3ヶ月齢の雄及び雌TPP1 KOマウスにおいて観察されず、ゆえに、KOにおいて残存TPP1が完全にないことを示すベースラインとして用いられ、一方で1ヶ月齢の野生型マウスは、正常でかつ検出可能なレベルのTPP1活性を示した(
図8)。野生型マウスならびにPBSのみを注射されたKOにおいて、小脳及び肝臓を含めた他の臓器において、同様の結果が観察された(
図9)。比較のために、上で記載される3×10
11GCのAAV.hTPP1coで処理されたTPP1酵素活性も測定し、
図9にプロットした。試験された3つの異なる臓器において(LV区画、小脳、及び肝臓)、高用量ベクターで処理されたKOは、野生型よりも多くのTPP1活性を提供し、一方でPBSを注射されたKOのTPP1活性レベルは低いままであり、ゆえに
図9に示されるすべてのサンプルから差し引かれ、hAAV.hTPP1coで処理されたKOマウスにおける細胞内酵素補正の成功及び健常な表現型が立証された。
【0170】
高用量動物において、TPP1酵素活性(AAV9.CB7.hCLN2によってコードされる酵素)は、注射後30週の時点で、大脳、小脳、及び肝臓において超生理学的なレベルまで増加した(
図20)。
【0171】
E.組織学的分析
脳におけるAAV.hTPP1coのICV注射の生物活性及び効力を査定するために、試験されたマウスの脳サンプルを、活性化アストロサイト/アストロサイトーシスのマーカーであるGFAPに対して免疫組織化学により染色した。画像は示されず。1ヶ月齢の野生型マウスの皮質及び視床の両方ともGFAPを示さなかったが、KO動物の対応するサンプルは、1ヶ月齢の時点でアストロサイトーシスを有することが観察され、TPP1変異に起因したニューロンにおける脂質の蓄積によってアストロサイトが活性化され、そのようなアストロサイトーシスの進行は1ヶ月齢またはそれよりも早くに開始することが示された。KOマウスにおいて、成長すると、アストロサイトーシスは増加し続けた。3ヶ月齢の時点で、さらに上昇したレベルのGFAPが、KOマウスにおける皮質及び視床の両方において検出された。
図4に示される生存曲線において、KO動物の死亡は3.5ヶ月齢で開始することが観察され、それは、NCL患者及び動物モデルの脳の種々の部分において観察される活性化アストロサイトとニューロンの死との間の報告されるつながりと合致している。ゆえに、このニューロン喪失が、KOにおいて観察される振戦及び運動協調性異常という疾患表現型を付与した。この結論は、実施例4に記載されるようにPBSを注射され及び死んで発見された3.5ヶ月齢のKOマウスの側脳室に近接した海馬区画におけるGFAP免疫染色により観察された大規模なアストロサイトーシスによってさらに支持された。
【0172】
さらに、GFAP染色を、上で記載される1×10
11GCのAAV.hTPP1coで処理されたKO動物、ならびにPBSを注射された野生型及びKOマウスの脳サンプルを用いて、4.5ヶ月齢の時点でのみ実施した。AAV.hTPP1coで処理されたマウスの脳は、野生型と同様の観察結果を有してアストロサイトーシスがなく、AAV.hTPP1co療法が、活性化アストロサイトを制御するだけでなく積極的に抑制もすることを示した。アストロサイトーシスの定量を実施する。高用量の動物において、脳ニューロンは、注射後30週の時点で、アストロサイトーシス(神経炎症のマーカー)及び基質のリソソーム蓄積における補正を呈した(
図9)。
【0173】
上記を考慮すると、TPP1 KOマウスの酵素活性及び生理学的表現型は、AAV.CB7.CI.hTPP1co.RBGの投与により回復することに成功した。
【0174】
実施例6:製造
簡潔には、マスターセルバンク(MCB)からのHEK293細胞に3種のプラスミドをトランスフェクトして、パッケージされたベクターゲノムを産生する:CLN2発現カセットを含有するプラスミド、ならびにAAV9カプシドタンパク質及び複製エレメントをコードする2種のヘルパープラスミド。ウイルスベクター産物を含有する細胞培養上清を収穫し、浄化し、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって濃縮し、その後にアフィニティー及びアニオン交換(AEX)クロマトグラフィーが続く。AEX画分をプールし、TFFを繰り返して、精製された原薬(bulk drug substance)(BDS)を産生し、最終製剤バッファーで濃度を調整し(希釈またはTFFによる濃縮)、その後に滅菌濾過及びバイアル内への充填が続くことによって、そこから薬物製品が産生される。AAV9.CB7.hCLN2 BDS及び最終薬物製品(FDP)の製造工程は、安全性、同一性、品質、純度、ならびにBDS及びFDPの効能を確保するための現行適正製造基準(cGMP)を用いて、受託製造機関(複数可)(CMO)で実施される。
【0175】
細胞培養及び収穫
細胞培養及び収穫製造工程は、4つの主な製造ステップ:細胞の播種及び拡張、一過性のトランスフェクション、ベクター収穫、ならびにベクター浄化、を含む。これらの工程ステップは、概略工程フロー図に描かれている。
【0176】
細胞の播種及び拡張:要件を満たしたHEK293細胞株を産生工程に用いる。MCBはWuXi AppTecで産生され、十分に特徴付けされた。ベクター産生に用いられる細胞培養を、1本の融解したMCBバイアルから開始し、拡張する。Tフラスコ及び10層の細胞培養チャンバー(CS-10)を用いて、細胞を拡張しておよそ1.4×1010個細胞の総生細胞数を達成する。次第により大きな表面積(1×T-75、4×T-225、2×CS-10、及び14×CS-10)を用いて、培養を4段階で拡張する。第一段階において、細胞をコンフルエントになるまで3~4日間成長させ、次いで次の段階に継代する。後続の段階において、細胞を4~5日間成長させ、次いで継代する。この拡張は、BDSロットあたりのベクター産生に対して最高で50個の36層の細胞培養容器(HS-36)に播種するのに十分な細胞質量が作出されるのを可能にする。拡張工程を通じて、10%ガンマ照射したUSから調達されたウシ胎仔血清(FBS)を補給したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)から構成される培地中で細胞を培養した。利用された細胞は足場依存性であり、細胞解離は、動物性産物不含の細胞解離試薬であるTrypLE Selectを用いて遂行される。細胞播種は、無菌の単回使用の使い捨てバイオプロセス用バッグ及びチューブセットを用いて遂行される。細胞を5%(±0.5%)CO2大気中37℃(±2℃)で維持する。バイアル融解から50個のHS-36の接種までの総処理時間は、15~20日間である。
【0177】
一過性のトランスフェクション:成長(DMEM培地+10%FBS)の4日後、HS-36細胞培養培地を新鮮な血清不含DMEM培地で置き換え、最適化されたポリエチレンイミン(PEI)に基づくトランスフェクション法を用いて3種の産生プラスミドをトランスフェクトする。十分なDNAプラスミドトランスフェクション複合体を、生物学的安全キャビネット(BSC)内で調製して、最高で50個のHS-36(BDSバッチあたり)にトランスフェクトする。まず、7.9mgのpAAV.CB7.CI.CLN2.RBG.KanRベクターゲノムプラスミド、158mgのpAdDeltaF6、79mgのpAAV29KanRGXRep2 AAVプラスミド、及びPEI(PEIPro、PolyPlus Transfection SA)を含有する、DNA/PEI混合物を調製する。混合した後、溶液を室温で25分間休ませ、次いで血清不含培地に添加して反応をクエンチングし、次いでHS-36に添加する。トランスフェクション混合物をHS-36の全36層間で均等化し、細胞を5%(±0.5%)CO2大気中37℃(±2℃)で5日間インキュベートする。
【0178】
ベクター収穫:上清を使い捨てバイオプロセス用バッグに無菌的にポンプで送り込むことによって、細胞培養上清をHS-36から収穫する。回収後、収穫物質にMgCl2を2mMの最終濃度まで補給し(ベンゾナーゼの補因子)、ベンゾナーゼヌクレアーゼを≧25単位/mLの最終濃度まで添加する。収穫物質(使い捨てバイオプロセス用バッグ中)を混合し、37℃で2時間インキュベートして、トランスフェクション手順の結果として収穫物中に存在する残存する細胞DNA及びプラスミドDNAの酵素消化に十分な時間を提供する。このステップを実施して、最終的なベクター薬物製品における残存DNAの量を最小限に抑える。インキュベーション期間の後、NaClを500mMの最終濃度まで添加して消化を終わらせ、濾過及び下流のタンジェンシャルフロー濾過(TFF)の間の産物の回収を助ける。
【0179】
ベクター浄化:ペリスタルティックポンプによって推進される無菌の密閉式チューブ及びバッグセットとして、直列に接続されたSartoguardポリエーテルスルホン(PES)カプセルフィルター(1.2/0.2μm;Sartorius Stedim
Biotech Inc.)を用いて、ベンゾナーゼ処理された収穫物質から細胞及び細胞残屑を除去する。バイオバーデン低減濾過は、フィルタートレーンの終端で、上流の産生工程の間に潜在的に導入される任意のバイオバーデンが下流の精製前に低減されることを確保する。
【0180】
ベクター精製工程
精製工程は、下で詳細に記載される4つの主な製造ステップ:TFFによる濃縮及びバッファー交換、アフィニティークロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、ならびにTFFによる濃縮及びバッファー交換、を含む。
【0181】
タンジェンシャルフロー濾過による濃縮及びバッファー交換:浄化産物の容量低下(10倍)は、特注の無菌の密閉式バイオプロセス用チューブ、バッグ、及び膜セットを用いたTFFによって達成される。TFFの原理は、適切な多孔度(100kDa)の膜に平行して、圧力下で溶液を流すことである。圧力差により、より小さなサイズの分子は膜を通り抜けかつ廃棄流に効果的に入り、一方で膜の細孔よりも大きな分子は保持される。溶液を再循環させることによって、平行した流れは膜表面を一掃し、膜の細孔が詰まるのを阻止する。適当な膜の細孔サイズ及び表面積を選定することによって、液体サンプルは容量を急速に低下させ得、一方で所望の分子は保持され及び濃縮される。TFF適用における透析濾過は、液体が膜を通過し及び廃棄流に移るのと同じ速度で再循環サンプルに新鮮なバッファーを添加することを伴う。透析濾過の容量が増加するにつれて、増加量の小分子が、再循環サンプルから除去される。これは、浄化産物のわずかな精製をもたらし、後続のアフィニティーカラムクロマトグラフィーステップと適合するバッファー交換も達成する。したがって、100kDaのPES膜を濃縮に用い、次いでそれを、20mM Tris、400mM NaCl、pH7.5から構成されるバッファーの≧3.3容量で透析濾過する。透析濾過産物を、次いで2~8℃で≧16時間保管し、次いで1.2/0.2μm深度フィルターカプセルでさらに浄化して、任意の沈殿物質を除去する。収穫、浄化、及び濃縮ステップのための処理時間はおよそ2日間である。
【0182】
アフィニティークロマトグラフィー:透析濾過産物を、その後、AAV9血清型を効率的に捕捉するPOROS(登録商標)CaptureSelect(登録商標)AAV9アフィニティーマトリックス(Life Technologies)に適用する。これらのイオン条件下で、残存する細胞DNA及びタンパク質の相当なパーセンテージがカラムを素通りし、一方でAAV9粒子は効率的に捕捉される。適用後、カラムを2種のバッファー(20mM Tris、1M NaCl、pH7.5、及び20mM Tris、400mM NaCl、pH7.5)を用いて洗浄して、さらなる供給不純物(feed
impurities)を除去し、その後に低pHの段階溶出(400mM NaCl、20mMクエン酸ナトリウム、pH2.5)が続く。溶出物を、溶出物の10%容量での中和バッファー(200mMビストリスプロパン、0.01%プルロニックF68、pH10.2)の添加によって直ちに中和する。アフィニティークロマトグラフィーステップのための処理時間は1日未満である。さらなる処理の前に、工程中間物は2~8℃で一晩保たれ得る。
【0183】
アニオン交換クロマトグラフィー:空のAAV粒子を含めた工程間不純物のさらなる低下を達成するために、アニオン交換クロマトグラフィーステップが採用される。このステップに関しては、POROS-AAV9溶出プールを50倍希釈して(20mMビストリスプロパン、0.001%プルロニック(登録商標)F68、pH10.2)、イオン強度を低下させて、CIMmultus QAモノリスマトリックス(BIA Separations)への結合を可能にする。低塩での洗浄後(20mMビストリスプロパン、10mM NaCl、pH10.2)、ベクター産物を、60カラム容量(CV)のNaCl線形塩勾配(20mMビストリスプロパン、0.001%プルロニックF68、pH10.2中、10~190mM NaCl)を用いて溶出する。この浅い塩勾配は、ベクターゲノムを含有する粒子(完全粒子)からベクターゲノムを含まないカプシド粒子(空の粒子)を分離し、完全カプシドに富んだ調製物をもたらす。画分を、3.7%容量の1Mビストリス、0.27%プルロニックF68、pH6.3を含有するバッグ中に回収し
て、バッグへの非特異的結合及び高pHへの曝露の長さをそれぞれ最小限に抑える。適当なピーク画分を回収し及びプールする。アニオン交換クロマトグラフィーステップのための処理時間は1日未満である。さらなる処理の前に、工程中間物は2~8℃で一晩保たれ得る。
【0184】
中空糸タンジェンシャルフロー濾過による濃縮及びバッファー交換:プールされたアニオン交換中間物を、TFFを用いることによって濃縮し及びバッファー交換する。このステップでは、100kDa膜の中空糸TFF膜が用いられる。ステップの間、産物は、決定された標的濃度に至る。この濃縮ステップの後、4容量の製剤バッファーでの透析濾過によってバッファー交換を達成する。0.45/0.22μm濾過の後、サンプルをBDS試験のために取り出す。濃縮及びバッファー交換ステップのための処理時間は1日未満である。
【0185】
充填及び保管:濾過及びサンプリングの後、BDSをポリプロピレンボトルに充填し、FDP処理のための放出まで、隔離場所で≦-60℃で凍結して保管する。
【表1】
【0186】
融解及びプール:BDSの凍結したアリコートを室温で融解する。複数のBDSバッチをプールし得、旋回により混合し得る。融解したBDSは、2~8℃で一晩保たれ得る。
【0187】
TFFまたは希釈による任意の濃縮:BDSを、中空糸TFFを用いて濃縮してまたは製剤バッファーで希釈して、所望の濃度(GC/mLで)を達成し得る。任意の濃縮ステップは、100kDa中空糸TFF膜によるTFFを用いて実施され、BDS工程における中空糸TFF濃縮ステップと同一である。濃縮されたDP中間物は、2~8℃で一晩保たれ得る。
【0188】
滅菌濾過:DP中間物のバイオバーデンサンプルを、濾過の直前に採取する。あらかじめ滅菌された部品を用いて、DPを0.22μm濾過する。0.22μmフィルター(Fluorodyne IIを備えたPall miniKleenpak 20)を製剤バッファーで洗い流し、次いで水気を切る。次いで、DP中間物を濾過し、フィルターメーカーによって使用前完全性試験されているフィルターを、DPをバイアル内に充填する前に、使用後完全性試験する。フィルターが使用後完全性試験に落第した場合、濾過された中間物は、異なるフィルターを用いて再濾過され得る。
【0189】
充填、保管、及び輸送:濾過されたDPを、ペリスタルティックポンプを用いてCZバイアル内に充填する。初回バイアルは、試験のために最適された容量で充填される(例えば、10mLバイアル中1mL)。これらは、無菌性、内毒素、及び他の放出または安定性試験に用いられる。充填容量は、次のセットのバイアルに対して増加し(例えば、10
mLバイアル中5mL)、それが臨床において用いられる。最終セットのバイアルは、再度、より低い容量で充填され(例えば、10mLバイアル中1mL)、無菌性、内毒素、及び他の放出または安定性試験に用いられる。あらかじめ規定された間隔で、重量チェックを実施する。バイアルに蓋をし及び圧着し、次いで100%目視点検し、ラベルし、箱の中にパッケージし、及び≦-60℃で凍結する。
【0190】
臨床現場への配送に関しては、箱の中に事前にパッケージされたFDPバイアルを、温度ロガーを備えたあらかじめ認可を受けた段ボール配送箱の中に入れる。箱にドライアイスを詰めて、≦-60℃の配送温度を維持する。配送物が受領されると、温度ロガーを読み取って、配送中に温度逸脱がないことを確認する。
【0191】
実施例7:将来的調査
提案される調査では、AAV9.CB7.hCLN2を、2×1010GC/g脳質量~最大実現可能用量(MFD)の7.5×1011GC/g脳質量(解剖学的制約に起因して)の用量レベル域で、4週齢のマウスにICV注射により投与する。動物の半分を、対照動物において予想される神経病理及び死亡と一致する注射後60日の時点で屠殺し、TPP1酵素活性、リソソーム貯蔵物質の蓄積及び貯蔵病理、ならびにアストロサイトーシスを含めた生物活性について評価する。動物の残りを、疾患表現型(臨床観察時の振戦及び/または歩行異常によって規定される)の発症までの時間について評価し、対照動物において100%の死亡率が予想される時点を超える注射後最高で210日間の長期生存について追跡する。
【0192】
パイロット調査において行われたように、提案される調査では、AAV9.CB7.hCLN2をTpp1m1jマウスにICV注射により投与する、なぜなら、i)解剖学的制約及び動物福祉への懸念に起因して、IC注射はTpp1m1jマウスにおいて実現可能ではなく;ならびにii)マウスにおけるICV注射、ならびにイヌ、ブタ、及び非ヒト霊長類(NHP)におけるIC注射の後の、AAV9ベクターに基づく産物の生体内分布(BD)及び導入遺伝子発現プロファイルは同等であることが示されている(Haurigot et al.,2013;Hinderer et al.,2017;McLean et al.,2014;非公開データ)(第3.4.2.5節を参照されたい)ためである。重要なことには、これらの類似点には、ベクターBDの主要標的組織ならびにそれに続くCNS(脳、脊髄)及び末梢組織(肝臓、脾臓)における導入遺伝子発現が含まれ、それにより、標的及び非標的組織の両方における導入遺伝子の発現/過剰発現についての査定が可能となる。ゆえに、AAV9.CB7.hCLN2のICV注射後のTpp1m1jマウスにおいて作出される薬理学データは、標的患者集団における臨床シナリオ及び計画されたIC ROAに関連している。
【0193】
実施例8:前臨床調査
AAV9.CB7.hCLN2に対する提案される前臨床試験プログラムは、CLN2病のTpp1m1jマウスモデルにおいて行われるハイブリッド薬理学/毒物学調査を含む。複数の用量レベルでICV注射によりAAV9.CB7.hCLN2を投与されたマウスを、以下のように複数の時点で安全性について評価する。
・臨床観察(ケージ側、毎日)
・体重(週1回)
・臨床病理(d60、d90、d210)
・血清における液性免疫応答(血清中の抗hTPP1抗体、ELISA)(ベースライン、d14、d60、d210)
・臓器重量(d60、d90、d210)
・肉眼的病理及び組織の包括的リストの組織病理(d60、d90、d210)
【0194】
一般的に、ハイブリッド調査設計は、臨床背景における製品の安全性及び生物活性に影響を与え得る、標的患者集団の局所微小環境及び病態生理学的状態を再現する疾患背景における試験品目の安全性についての評価を容易にする。ゆえに、提案されるハイブリッド薬理学/毒物学調査から作出される安全性/毒物学データは、AAV9.CB7.hCLN2の安全性プロファイルに関する重要な情報を提供すると期待される。機関指導勧告によると、「生物活性及び安全性についての査定に選択される動物種は、臨床試験設計を導くデータを作出するために、ヒトにおいて予想されるものと同様の、治験用[製品]に対する生物学的応答を示すべきである」。それゆえ、CLN2病のTpp1m1jマウスモデルの選択は、AAV9.CB7.hCLN2の安全性についての評価に適当である。
【0195】
罹患したTpp1m1jマウスにおける基礎病理及び早期死亡は、潜在的な試験品目関連効果をマスクし得る、ならびに環境刺激誘発性致死性発作に対するTpp1m1jマウスの感受性に起因して、一部の安全性査定(連続出血など)を実施し得る能力は限定され得るという懸念を含めて、Tpp1m1jマウスにおいて安全性を査定する上でのいくつかの潜在的な課題が存在する。これらの懸念が経験によって証明され、かつTpp1m1jマウス安全性データが規制要件を満たすのに十分であると見なされない場合、付加的なGLP準拠の毒物学調査がC57Bl/6マウスにおいて行われる。C57Bl/6マウスは、AAV9.CB7.hCLN2に伴う潜在的毒性を検出するのに適当であると見なされる、なぜなら、i)C57Bl/6マウスは、薬理学査定において用いられるTpp1m1jマウスモデルのバックグラウンド系統であり;ii)マウスにおけるICV注射及び大型動物におけるIC注射の後の、AAV9ベクターに基づく産物の生体内分布及び導入遺伝子発現プロファイルの同等性が確立されており;iii)健常マウスにおいて安全性査定を実施する実現可能性は、Tpp1m1jマウスなどにおける動物取扱懸念または環境刺激誘発性致死性発作に対する感受性によって限定されず;ならびにiv)健常マウスにおけるGLP準拠の安全性/毒物学調査の実行は、実現可能であり、十分に確立されており、かつ統計学的に堅牢であるためである。
【0196】
この潜在的なGLP安全性/毒物学調査では、AAV9.CB7.hCLN2を、7.5×1010、2×1011、及びMFDの7.5×1011GC/g脳質量の用量レベルで、4週齢のC57Bl/6マウスにICV注射により投与し、マウスを複数の時点で安全性/毒性について評価する。Tpp1m1jマウスにおけるAAV9ベクター生体内分布の速度論及び疾患表現型の進行と一致するように、計画された予定された屠殺(注射後30日及び90日)及び調査継続期間(注射後90日間)を選択した。安全性査定は、臨床観察、体重、臨床病理、免疫原性、肉眼的病理、及び組織の包括的リストの組織病理を含む。
【0197】
イヌ及びマウスモデルを含めた、CLN2病のいくつかの報告された動物モデルが存在する。科学文献において最もよく特徴付けされているものは、ダックスフントの集団において最初に報告されたTPP1ヌルのイヌモデル(Awano et al.,2006)であるが、とはいえ、この動物モデルの限定された使用可能性及び飼育制約は、前臨床試験におけるその使用の実現可能性を厳しく制限する。科学文献におけるCLN2病の最もよく報告されるマウスモデルは、Tpp1tm1Plobマウスモデル(Sleat et al.,2004)であるが、とはいえ、このマウスモデルは現在市販されておらず、ゆえに前臨床試験における使用に関して実現可能ではない。Tpp1tm1Plobマウス及びTPP1ヌルのイヌモデルに非常に類似している、CLN2病のTpp1m1jマウスモデルは市販されており、ヒトにおけるCLN2病の特徴的な特質を反復する。このTpp1m1jマウスモデルは、CLN2遺伝子のエクソン8の下流にあるスプライスドナー部位における単一ヌクレオチド変異により生じる。この変異の結果として、Tpp1m1jマウスは、脳組織において検出不能なレベルのTPP1酵素活性、ならびにCLN2病を有するヒトと同様の病態生理、表現型、及び死亡率を呈する(Karst e
t al.,2016;自然病歴調査からの非公開データ)。
【0198】
CLN2病の生物学的に関連したマウスモデル(Tpp1m1jマウス)において行われた完了したパイロット調査は、CLN2病の治療のためのコドン最適化されたCLN2導入遺伝子のAAV9媒介性送達の科学的論拠への予備的支持を提供する。完了したパイロット調査では、4週齢のTpp1m1jマウスに、AAV9.CB7.hCLN2を7.5×109GC/g脳質量(低用量)または7.5×1011GC/g脳質量(高用量)のいずれかの用量レベルでICV注射により投与し、動物を、注射後30週間、疾患の進行及び生物活性についてモニターした。高用量のAAV9.CB7.hCLN2を投与された動物は、野生型対照と比較して運動学習(小脳機能)の正常化、ならびに劇的に増加した生存率(注射後30週の時点で85%の生存率対対照動物における0%の生存率)を呈した。すべての生存動物を、TPP1酵素活性及び組織病理についての評価のために、注射後30日の時点で屠殺した。高用量動物において、TPP1酵素活性(AAV9.CB7.hCLN2によってコードされる酵素)は、大脳、小脳、及び肝臓において超生理学的なレベルまで増加し、脳ニューロンは、アストロサイトーシス及び基質のリソソーム蓄積における補正を呈した。低用量(7.5×109GC/g脳質量)のAAV9.CB7.hCLN2を投与されたTpp1m1jにおいて、生存率または生物活性の他の測定において有益性があるようには見えず、低用量及び対照動物の両方において、約17週間の観察される生存期間中央値を有した。
【0199】
パイロット調査では、AAV9.CB7.hCLN2を、計画された臨床的IC投与経路(ROA)とは異なるICV注射によりTpp1m1jマウスに投与した(ならびに、最も信頼できる薬理学及び安全性/毒物学調査のために計画される)。しかしながら、解剖学的制約及び動物福祉への懸念に起因して、IC注射はTpp1m1jマウスにおいて実現可能ではない。IC投与は、臨床においてICVに勝るいくつかの利点を付与するものの、複数の動物調査からのデータは、マウスにおけるICV注射、ならびにイヌ、ブタ、及び非ヒト霊長類(NHP)におけるIC注射の後の、AAV9ベクターに基づく産物の同様の生体内分布(BD)及び導入遺伝子発現プロファイルを示している(Haurigot et al.,2013;Hinderer et al.,2017;McLean et al.,2014;非公開データ)。ゆえに、AAV9.CB7.hCLN2のICV注射後のTpp1m1jマウスにおいて作出される薬理学データは、標的患者集団における臨床シナリオ及び計画されたIC ROAに関連している。
【0200】
パイロット調査から作出されたデータ、ならびに類似のAAV9ベクターに基づく産物の前臨床試験プログラムからのプラットフォームデータを用いて、CLN2病の生物学的に関連したマウスモデルであるTpp1m1jマウスにおける、計画されたINDにより可能となるハイブリッド薬理学/毒物学調査の設計に情報を与えた。提案される調査では、AAV9.CB7.hCLN2を、2×1010GC/g脳質量~MFDの7.5×1011GC/g脳質量のベクター用量レベル域で、4週齢のマウスにICV注射により投与する。動物を、複数の時点で生物活性及び/または安全性/毒性の数々の測定について評価する。この調査から作出されるデータを用いて、標的患者集団におけるAAV9.CB7.hCLN2の投与についての安全でかつ効力のある開始臨床用量レベルを選択し、及び望ましい有益性:危険性プロファイルを支持する。
【0201】
動物取扱及び福祉への懸念(すなわち、連続出血など、Tpp1m1jマウスおいて一部の安全性査定を行う上での潜在的な課題)に起因して、計画されたハイブリッド薬理学/毒物学調査から十分な安全性データが獲得され得ない事象において、データは、C57Bl/6マウスにおけるGLP準拠の安全性/毒物学調査におけるAAV9.CB7.hCLN2のICV投与後に作出される付加的な安全性データによって補完され得る。C57Bl/6マウスは、AAV9.CB7.hCLN2に伴う潜在的毒性を検出するのに適
当であると見なされる、なぜなら、i)C57Bl/6マウスは、薬理学査定において用いられるTpp1m1jマウスモデルのバックグラウンド系統であり;ii)マウスにおけるICV注射及び大型動物におけるIC注射の後の、AAV9ベクターに基づく産物の生体内分布及び導入遺伝子発現プロファイルの同等性が確立されており;iii)健常マウスにおいて安全性査定(例えば、連続出血)を実施する実現可能性は、Tpp1m1jマウスなどにおける動物取扱懸念または環境刺激誘発性致死性発作に対する感受性によって限定されず;ならびにiv)健常マウスにおけるGLP準拠の安全性/毒物学調査の実行は、実現可能であり、十分に確立されており、かつ統計学的に堅牢であるためである。
【0202】
この潜在的なGLP安全性/毒物学調査では、AAV9.CB7.hCLN2を、7.5×1010、2×1011、またはMFDの7.5×1011GC/g脳質量の用量レベルで、4週齢のC57Bl/6マウスにICV注射により投与し、マウスを複数の時点で安全性/毒性について評価する。Tpp1m1jマウスにおけるAAV9ベクター生体内分布の速度論及び疾患表現型の進行と一致するように、計画された予定された屠殺(注射後30日及び90日の時点)及び調査継続期間(注射後90日間)を選択した。安全性査定は、臨床観察、体重、臨床病理、免疫原性、肉眼的病理、及び組織の包括的リストの組織病理を含む。
【0203】
概念実証(POC)及び薬理学
CLN2病を治療するための、CNSにおける増加するTPP1酵素活性に対する科学的論拠
CLN2病に対する治療としてTPP1酵素活性の増加を標的にすることに対する科学的論拠は、CLN2病の治療におけるERT、及びBrineura(登録商標)の投与を用いた前臨床及び臨床経験によって支持される(Katz et al.,2014;Brineura(登録商標)、FDA承認審査概要;Brineura(登録商標)EPAR;Schulz et al.,2016)。永久埋め込み型デバイスを介したBrineura(登録商標)の側脳室への隔週注入は、CLN2病を有する患者における運動機能を安定させるとFDAによって判定され、一方でEMAは、言語技能にもプラスの影響があると判定した。Brineura(登録商標)のCSF及びリソソーム半減期は、それぞれ7時間及び11.5日間であると推定され;結果として、上昇したTPP1酵素活性レベル(及びおそらく臨床的有益性)を維持するためにBrineura(登録商標)の反復注入が必要である。ゆえに、ERTの反復投与に伴う重い患者負担及び罹患率なく、CNSにおいて永続性がありかつ長期にわたるTPP1酵素活性を提供し得る新しい療法に対する満たされていない必要性が残る。
【0204】
CLN2病を治療するための、CLN2のAAV9媒介性遺伝子導入に対する科学的論拠
CNSを標的にし得るAAVベクターに基づく産物の能力は、単一遺伝子CNS疾患の数々のモデルにおいて立証されており、第一世代のAAVベクターに基づく産物を評価するいくつかの早期ヒト試験は、脳へのベクター送達の安全性を示している(Bartus
et al.,2014;Janson et al.,2002;Kaplitt et al.,2007;Mandel et al.,2004)。しかしながら、これら第一世代のAAVベクターの低い形質導入効率を含めた多くの因子が、動物モデルにおいて観察される生物活性の臨床への移転を妨げた。第二世代のAAVベクターの到来とともに、脳への遺伝子導入の潜在性が大きく高まっている。特に、CNSを選択的に標的にし得及び高効率で広範囲にわたる遺伝子導入を達成し得るAAV9ベクターに基づく産物の能力は、齧歯類、ネコ、イヌ、NHPにおいて立証されている(Foust et al.,2010;Gray et al.,2013;Hinderer et al.,2014;Hinderer et al.,2014b;Hinderer et
al.,2016;Hinderer,2016b;Haurigot et al.
,2013;Bucher et al.,2014;Passini et al.,2014;Hinderer et al.,2017;
図15)。この能力は、バリアントCLN6病、脊髄性筋萎縮症I型、巨大軸索ニューロパチー、MPS I、MPS IIIa、及びMPS IIIbを含めた、多様な適応症に対してAAV9ベクターに基づく産物を評価する数々の臨床試験の開始につながっている。
【0205】
CNSへのCLN2導入遺伝子(可溶性TPP1をコードする)のAAV媒介性送達の成功も、疾患のマウス及びイヌモデル、ならびに健常なラット及びNHPにおいて行われた数々の動物調査において立証されている(Hacket et al.,2005;Sondhi et al.,2005;Sondhi et al.,2012)。CNSにおいて堅牢でかつ持続的なレベルのTPP1酵素活性を誘導し得る、疾患の発症を遅らせ得る、ならびにICV注入及び直接線条体または小脳注射後の生存率を増加させ得る、CLN2を発現するAAV2ベクターの能力は、CLN2病のマウス及びイヌモデルにおいて立証された(Haskell et al.,2003;Katz et al.,2015;Katz et al.,2017)。同様に、CLN2病のマウスモデル(Tpp1tm1Plobマウス)において行われた動物調査は、直接頭蓋内注射後にCNSにCLN2導入遺伝子を送達し得るAAV5及びAAVrh10ベクターの両方の能力を立証し、結果として生じるTPP1発現及び酵素活性の増加、神経行動学的機能の向上、ならびに全体的生存率の向上を有した(Passini et al.,2005;Passini et al.,2006;Sondhi et al.,2007;Sondhi et al.,2008)。これらの効果は、マウスにおいて年齢依存的であるように見え;2日齢でAAVrh10ベクターに基づく産物を投与された新生仔CLN2マウス(Tpp1tm1Plobマウスモデル;Sleat et al.,2004)は、3週齢及び7週齢で当該産物を与えられたマウスと比較して、持続的なTPP1発現ならびに神経行動学的機能及び生存率の付随的向上を示した(
図14;Sondhi
et al.,2008)。
【0206】
これらの有望な動物データは、CLN2病を有する患者における複数の臨床試験の開始を支持した(ClinicalTrial.gov識別番号:NCT00151216、NCT01414985、NCT01161576)。第1相臨床試験において、CNL2を組み入れたAAV2ベクターに基づく産物を、CLN2病を有する10人の対象に、6つの穿頭孔を通じた直接頭蓋内注射によりCNSにおける12箇所に投与した。改変版ハンブルクLINCL臨床評定尺度による運動機能、発作活動、及び言語技能についての査定は、遺伝子療法が、12ヶ月及び18ヶ月の追跡調査の両方における、同時対照の対象と比較した神経学的状態の統計的に有意なより穏やかな衰退と関連付けられることを示した(Worgall et al.,2008;Human Gene Therapy,2004)。同一の導入遺伝子を送達するAAVrh10ベクターに基づく産物を評価する後続の臨床試験は、CLN2導入遺伝子のAAVrh10ベクター媒介性送達が、AAV2、AAV5、及びAAV8ベクターに基づく産物と比較して、CLN2(Tpp1tm1Plob)マウスにおけるCNSにおいてより大きなベクターBDをもたらすという動物調査における観察結果に基づいて開始された(Sondhi et al.,2007)(この試験からの臨床データは入手不可である)。まとめると、これらの前臨床及び臨床経験は、CLN2病を治療するための、CNSへのCLN2導入遺伝子のAAV媒介性送達の科学的論拠を支持するが;しかしながら、これらのAAV2及びAAVrh10ベクターに基づく手法は、CNSを標的にする一連の侵襲的頭蓋内注射を組み入れ、臨床試験において疾患の進行を止めることに失敗した。
【0207】
これらの問題に対処するために、AAV9.CB7.hCLN2を開発した。AAV9.CB7.hCLN2に組み入れられるAAV9血清型は、非侵襲的IC注射後の、CLN2導入遺伝子の効率的な形質導入及びCNSにおける広範囲にわたる生体内分布を可能
にする。CLN2病を有する患者において、CNS内の細胞へのTPP1をコードするCLN2導入遺伝子の非侵襲的送達は、分泌型TPP1の永久的供給源を潜在的に提供し得、ゆえにTPP1酵素活性を回復させ、CNS全体にわたる細胞の長期補正を可能にする。種々の量のTPP1を発現するマウスCLN2変異体を評価した動物調査からの公開データに基づき、低レベルのTPP1酵素活性でさえ、疾患の発症を劇的に遅らせ及び生存率を増加させるのに十分であるように見える:脳における正常TPP1活性のおよそ3%が、正常レベルの約0.2%を発現するマウスと比較して、疾患の発症を遅らせ及び約9ヶ月の中央値まで寿命を倍増させ;正常TPP1活性の6%の発現は、罹患していないマウスのものに迫る約20ヶ月の寿命中央値を有して、疾患を劇的に弱めた(Sleat et al.,2008)。CLN2病を有する患者からの付加的な臨床データは、CLN2におけるある特定の変異が、TPP1酵素活性の不完全な喪失(少なくとも末梢組織における)及びその後長引く表現型につながり得ることを示唆する(Sleat et al.,1999;Bessa et al.,2008;Schulz et al.,2013)。ゆえに、標的患者集団におけるわずかなレベルのTPP1酵素活性でさえ、臨床上意義があり得る。
【0208】
実施例9:NHPにおけるAAV9の生体内分布/安全性
IC注射後のAAV9ベクターに基づく産物の生体内分布(BD)は、類似の産物に対する前臨床試験プログラムの一部として、注射後最高で2年間、ネコ、イヌ、及びNHPを含めた複数の種において特徴付けされている。要約すると、類似のAAV9ベクターに基づく産物は、多様な動物種における大槽内(IC)注射の後、脳及び脊髄において広く分布し及び持続した。複数の用量レベルを評価した場合、ベクター組織レベルはほぼ用量依存的であった。肝臓及び脾臓へのベクター分布は、概して、脳において観察されたものと同じぐらい高く、ときにはそれよりも高かった。CNS及び肝臓以外の組織におけるベクター濃度は、調査内及び調査間の両方で非常に変動的であったが、評価された組織の大多数がベクターを含有した。全体として、複数の調査にわたって回収されたデータは、CNS(脳、脊髄)及び末梢(肝臓、脾臓)における広い分布を有して、AAV9ベクターに基づく産物に対して合致したBDプロファイル(速度論及び標的組織/臓器)を示した。
【0209】
類似のAAV9ベクターに基づく産物(及びそれらの動物類似体)のBDに関するこれら既存のデータは、AAV9.CB7.hCLN2に適用可能である、なぜなら、当該産物は類似しており、ウイルス媒介性ベクターのBDは、主に導入遺伝子とは無関係であると思われるためである(Brandon et al.,2010;Tiesjema et al.,2010;Gonin et al.,2004;Cearley et
al.,2006;Zincarelli et al.,2008)。
【0210】
計画された臨床的投与経路(ROA)である大槽内(IC)注射(大槽内への画像誘導による後頭下穿刺を介したクモ膜下腔送達)の安全性は、類似のAAV9ベクターに基づく産物に対する前臨床試験プログラムの一部として行われたGLP準拠のNHP調査からの安全性データに基づく。簡潔には、投与処置はすべての動物において忍容性が良好であり;IC注射後14、30、または90日の時点で、いかなる動物においても投与処置に関係した臨床的、肉眼的、または組織学的な所見はなかった。
【0211】
計画された臨床試験における免疫抑制の使用に対する科学的論拠は、一部には、少なくとも部分的に免疫介在性であるように見えるが、とはいえいかなる観察された臨床的異常とも関連付けられない所見である、類似のAAV9ベクターに基づく産物を投与されたNHPのCNS及び後根神経節における最小限に軽度の軸索変性症及び神経変性の組織病理学的な所見に基づく。
【0212】
実施例10:臨床試験
「AAV9.CB7.hCLN2遺伝子療法:大槽内(IC)注射による単回投与処置の間の、CLN2病を有する小児科患者に対する、遅発性乳児型神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2)を有する小児科対象における非盲検の多施設での逐次的単回大槽内用量漸増調査(AAV9.CB7.hCLN2 Gene Therapy:An Open-Label,Multicenter,Sequential Single Intracistemal Dose Escalation Study in Pediatric Subjects with Late-Infantile Neuronal Ceroid Lipofuscinosis Type 2(CLN2)
to pediatric patients with CLN2 disease
during a single administration procedure via intracistemal(IC) injection)」と題されたFIH臨床試験において。当該試験は、2つのパートから構成される。
【0213】
試験のパートIにおいて、主要な焦点は安全性及び忍容性にあり、最高で2つの用量レベルが保守的な用量漸増設計の一部として計画され、IT ERT(Brineura(登録商標))での治療中に3~5のベースラインCRS(組み合わせた運動及び言語ドメイン)スコアを有する≧2歳である対象が、最低8週間離れて逐次的に登録され、安全性委員会審査が進行中である。定期的なIT ERT注入の直前に、CSFにおけるTPP1酵素活性のトラフレベルを測定する。トラフTPP1活性(すなわち、先行ERT注入からの任意の残存活性)は、Brineura(登録商標)の短い半減期に基づき、進行中のERT治療から検出不能である/低いと予想され、一方で遺伝子療法からの持続的TPP1活性は、AAV9.CB7.hCLN2の注射後1~4週間まで測定可能であると予想される。トラフTPP1活性(すなわち、AAV9.CB7.hCLN2の投与後に形質導入された細胞からのTPP1の分泌)が測定可能であり次第、内部安全性委員会(ISC)は、ある特定のあらかじめ指定された基準が満たされた場合(例えば、まだ特定されていないが、安定したCRSの適切性、持続的なTPP1酵素活性などの基準が考慮されている)、後続のIT ERT注入を中断すると決断し得る。対象は、最低でも、AAV9.CB7.hCLN2の注射後2週及び4週の時点でIT ERTを受け、8週目の来院前に最高で4週間IT ERTを絶たれる。2人の対象は、第一の用量レベルで投薬される。
【0214】
調査のパートIIにおいて、外部独立データモニタリング委員会(IDMC)は、第一の投薬コホートと同じ様式でより高い用量レベルで2人の対象に投薬することに進むことが安全であるかどうかを判定する。最高忍容用量コホートは、最高で合計13人の付加的な対象まで拡張され得、IT ERT治療された対象及びIT ERTナイーブの対象の両方の患者集団を含む(
図6)。組み入れ/除外基準は、CLN2病CRSに関する3~5のスコアを含めて、その他の点でこの拡張集団において同じままである。臨床上適当なIT ERT「レスキュー」注入を決める基準は、以前にIT ERTで治療された患者に対して前向きに規定される。
【0215】
提案される臨床試験では、CSFにおけるTPP1酵素活性、ならびに、i)CLN2病CRSの6ポイントの組み合わせた言語及び運動ドメインにおいて、逆転しない(持続的な)2カテゴリー衰退(すなわち、言語及び運動ドメインのそれぞれにおいて1つ、または運動ドメインのみで2つ)を有しない対象(Steinfeld et al.,2002);ならびにii)「レスキュー」IT ERT注入を有しない対象、として定義される応答者としてカテゴリー分けされる対象の割合を含めた、効力についての複数の測定が評価される。2組の患者集団(すなわち、IT ERTナイーブ及びIT ERT治療された)が、パートIIの拡張コホートにおいて計画され、IT ERTナイーブの対象は72週間追跡され、IT ERT治療された対象は80週間追跡され、組み合わせた
2つの患者集団を自然病歴コホートと比較する。これら2つの集団を組み合わせる主な理由は、一般的なCLN2病の希少性、及びBrineura(登録商標)の近年の承認後のIT ERTナイーブの患者のさらなる低下に起因して、試験登録を促すためである。
【0216】
IT ERT治療された患者における任意の残存ERTの潜在的な影響、ならびにAAV9.CB7.hCLN2の安全性及び生物活性についての査定に対する潜在的交絡効果に起因して、「ウォッシュアウト」期間が調査設計に組み入れられる。CSF及び血漿におけるBrineura(登録商標)に関する薬物動態(PK)データは、CSF及びリソソームにおけるそれぞれおよそ7時間及び11.5日間の半減期を有して、明らかな蓄積またはPK時間依存性がないことを示唆し(Brineura(登録商標)EPAR)、ゆえに、IT ERTの中断後最高で4週間という提案される「ウォッシュアウト」期間は適当である。
【0217】
言語技能及び発達についての査定は、CLN2病進行の主要な構成要素であり、ゆえにCRSに組み入れられる(Steinfeld et al.,2002)。CRSの6ポイントの組み合わせた言語及び運動ドメイン(それは、Brineura(登録商標)販売申請の審査中にFDA/CDERによって特定された[Brineura(登録商標)、FDA承認審査概要])のうちの言語ドメインの利用性に関する任意の懸念に対処するために、包括的な緩和計画を実行して潜在的バイアスを除去する。
【0218】
FDAは、希少疾患に対する薬物開発を促す複数の機会を提供し、産業界に対するFDAドラフトガイダンス:Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologies-2014において欠損遺伝子の標的化に具体的に対処している。このガイダンスは、希少遺伝子疾患に対する製品の登録を支持するのに十分であり得る評価項目に関連したいくつかの洞察も提供し、「一部のよく理解された酵素欠損に関して、欠損した酵素の補充は臨床的有益性を確実に予測する」と述べている。これは、導入遺伝子発現活性を確実に示す遺伝子療法が、21 CFR 314、subpart Hの下での加速した承認のための基準を満たし得ることを示唆する。さらには、この主張に基づき、欠損した酵素レベルが公知の病因につながり、かつそれらの補正または正常化が、臨床上意義のある効果と関連付けられる疾患に対して、早期承認の評価項目に対する論証がなされ得る。
【0219】
以前に承認されたERTの背景において、酵素レベル(典型的に副次的評価項目)と臨床上意義のある転帰(先行する主要評価項目)との間の相関関係はすでに確立されている。これらの場合、CLN2病を含めた多くのLSDなどにおいて、機能する遺伝子コピーの送達の成功及びその後の導入遺伝子産物の発現は、臨床転帰の観察される向上に十分に先立って、早期の時点で顕著である(CSFリソソーム貯蔵物質の低下または酵素活性の測定結果などにより)。これは、遺伝子療法後の酵素活性が、臨床的有益性の代理として用いられ得ることを示唆する。Brineura(登録商標)に対する承認審査概要文書に伴うFDAディレクターメモにおいて近年述べられているように、提案される承認の根拠としての酵素活性の使用はFDA前例とも合致しており、それは、「CLN2はTPP1の欠損に特異的に寄与するため、TPP1の補充が持続的であるまたは治療が疾患の過程において早期に始められる場合、その兆候の逆転または予防は理論的に可能である」と述べている。それゆえ、TTP1活性を評価項目として用いる潜在性は、FDAガイダンスと合致する。
【0220】
提案される臨床試験では、CSFにおけるTPP1酵素活性の継続的測定、ならびにCLN2病CRSの6ポイントの組み合わせた言語及び運動ドメインにおける安定化を含めた、効力についての複数の測定が評価される。リソソーム貯蔵物質の病的蓄積及びCLN2病の公知の病因を予防することにおけるTPP1酵素活性の確立された役割に基づき、
TPP1活性の大幅でかつ持続的な増加は、神経行動学的機能における長期安定化を予測する可能性が高い。種々の量のTPP1を発現するマウスCLN2変異体を評価した調査からのデータに基づき、正常の3~6%のTPP1酵素活性レベルが、疾患の発症を劇的に遅らせ及び生存率を増加させるのに十分であるように見える(Sleat et al.,2008)。CLN2病を有する患者からの付加的な臨床データは、CLN2におけるある特定の変異が、TPP1酵素活性の不完全な喪失(少なくとも末梢組織における)及びその後長引く表現型につながることを示唆する(Sleat et al.,1999;Bessa et al.,2008;Schulz et al.,2013)。さらに、永久埋め込み型デバイスを介したCSFへの隔週注入として投与される、組み換えTPP1(Brineura(登録商標)、セルリポナーゼアルファ、BioMarin Pharmaceuticals)を用いたERTは、i)FDAによる96週間の調査期間にわたる運動機能の衰退;ならびにii)EMAによる48週間の調査期間にわたる運動及び言語機能の両方の衰退、を安定化させると判定された。AAV9.CB7.hCLN2は、CNSにおけるTPP1の効率的でかつ持続的な発現のために設計され、CFSへのAAV9.CB7.hCLN2の1回限りの送達は、TPP1酵素の長期供給源を提供し、ならびに満たされていない高い必要性を有するこの希少遺伝子疾患における疾患の進行及び神経認知の衰退を止める(または大幅に遅らせる)潜在性を有する。ゆえに、臨床データが、臨床上意義のあるCRSにおける安定化のより長期にわたる向上を示唆する、早期の時点でのCSFにおけるTPP1酵素活性の大幅でかつ継続的な測定結果を示す場合、将来的な販売申請におけるAAV9.CB7.hCLN2の効力への主要な支持を提供するこれらのデータの妥当性がFDAとともに議論される。
【0221】
実施例11:完了したパイロット調査
Tpp1m1jマウスにおけるパイロット用量域調査(調査#W2553)を含めた、いくつかのインビトロ及びインビボ前臨床研究及びパイロット調査を行って、臨床候補を選択し、AAV9.CB7.hCLN2の生物活性に関する予備的データを回収した(研究及びパイロット調査はINDに要約される)。調査#W2553では、1ヶ月齢のTpp1m1jマウスに、7.5×109GC/g脳質量(低用量;n=10/性別)または7.5×1011GC/g脳質量(高用量;n=10/性別)のいずれかの用量レベルで合計5μlの容量のAAV9.CB7.hCLN2をICV注射により投与した。ノックアウト(n=10/性別)及び野生型対照(n=10/性別)動物には、PBSをICV注射により投与した。動物を、注射後30週間、疾患の進行及び生存率についてモニターし;臨床観察、体重、ロータロッドに基づく神経行動学アッセイ(運動協調性及び運動学習)、ヒトTPP1導入遺伝子産物に対する液性免疫応答、脳及び肝臓におけるTPP1酵素活性、アストロサイトーシス、基質のリソソーム蓄積、ならびに生存率を含めた、安全性及び生物活性の予備的測定結果を複数の時点で回収した。
【0222】
振戦及び歩行異常を、Tpp1m1j対照群及び低用量群における動物において、毎日の臨床観察時に定性的に書き留め、注射後8週間頃に始まり及び調査の継続期間に進行的に増悪した。環境刺激誘発性発作は、未処理KO及び低用量で処理されたKOに対してそれぞれ13~17週齢で目に見えるようになった。運動協調性及び運動学習についての査定を実施して、注射後7、11、及び20週の時点での生存動物における神経行動学的機能を評価した。注射後11週の時点で実施された運動協調性アッセイ(落下するまでの潜時を査定するロッキングロータロッド上での180秒間の試行;10rpm)において、低用量群及びTpp1m1j対照群における動物は、高用量群及び野生型対照群における動物と比較して、機能の減少を呈するように見えた(
図18A)。注射後20週の時点で実施された運動学習アッセイ(連続3日間にわたる加速式ロータロッド上での300秒間の試行;5~40rpm)において、野生型群及び高用量群における生存動物の間に差があるようには見えず(
図18B)、それは、このパイロット調査におけるAAV9.CB7.hCLN2の投与後の小脳機能衰退の阻止を示唆する。他の時点における神経行動学
的機能についての評価は、非常に変動的であった(データ示さず)。
【0223】
このパイロット調査からのデータは、小脳機能衰退の阻止に対するAAV9.CB7.hCLN2の効果を示唆するものの、これら神経行動学的アッセイの利用性はTpp1m1jマウスにおいて限定されている。早期死亡は、より遅い時点におけるTpp1m1j対照動物の評価を妨げ、臨床観察時の明らかに損なわれた機能(例えば、著名な歩行異常及び振戦)にもかかわらず、データはこれらのアッセイにおいて非常に変動的であるように見えた。疾患発症から早期死亡までの急速な進行、ならびに動物取扱の間の環境刺激誘発性致死性発作の潜在性はさらなる課題をもたらす。
【0224】
全体として、Tpp1m1j対照及び低用量動物の間で生存率の差はなく、一方ですべての高用量動物は、自然病歴データに基づくTpp1m1jマウスの予想生存期間中央値を超えて生存した。注射後30週の時点で、低用量群及びTpp1m1j対照群における0%に対して、高用量群における生存率は85%(10/10匹雄;7/10匹雌)であった(
図4A)。すべての生存動物を、組織病理のために注射後30週の時点で剖検した。
【0225】
注射後30週の時点におけるすべての生存動物を安楽死させ(すなわち、高用量群及びWT対照群のみ;Tpp1m1j対照群または低用量群から生存した動物はいなかった)、TPP1酵素活性、炎症(アストロサイトーシス)、及びリソソームにおける基質の蓄積についての評価のために組織を収穫した。まとめると、データは、i)血清における野生型レベル(データ示さず)ならびに大脳、小脳、及び肝臓における超生理学的レベル(
図19及び20)へのTPP1酵素活性の増加;ii)脳のいくつかの部分における、最も際立って海馬(
図21A)及び皮質(
図21B)におけるアストロサイトーシスのほぼ完全な補正(
図21Cは脳幹を示している);ならびにiii)3つの異なる技法により示される、ニューロンにおける異常なリソソーム貯蔵表現型の定性的補正(データ示さず)を含めた、AAV9.CB7.hCLN2の生物活性の付加的な証拠を提供する。脳幹ニューロンにおけるリソソーム貯蔵は、3つの異なる技法:自家蛍光、H&E、及び過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色、を用いて可視化され得る。注射後30週の時点における、野生型対照マウス及び高用量のAAV9-hCLN2を投与されたTpp1m1jマウスからの代表的な画像を獲得した(示さず)。5.5ヶ月齢の時点における、Tpp1m1j対照マウス(「KO」と印される)からの代表的な画像を獲得した(示さず)。これら3つの異なる技法は、リソソーム蓄積の同様のパターンを示している。異常な貯蔵は、Tpp1m1j対照マウスのニューロンに蓄積し、高用量動物において補正されるように見える。これらの技法は単に定性的であるが、注射後30週の時点で、高用量動物の脳幹の大型ニューロンにおけるリソソーム貯蔵の低下は容易に検出された。肝臓への生体内分布が観察され(データ示さず)、細胞形質導入のレベルは、肝臓及び血清の両方においてTPP1酵素活性と相関するように見えた。このパイロット調査において、他の組織は生体内分布について評価されなかった。
【0226】
ヒトTPP1導入遺伝子産物に対する液性免疫応答を、Tpp1m1jマウスにおけるAAV9.CB7.hCLN2の注射後3、10、及び30週の時点で、ELISAを用いて血清において査定した。データは持続的な免疫応答を示したが、とはいえレベルは非常に変動的であるように見え;ヒトTPP1導入遺伝子産物に対する液性免疫応答は、注射後10週の時点で低用量雄において最も高く見え、注射後10及び30週の両方の時点で高用量雄において最小限の応答のみが観察され;高用量群内では、抗TPP1免疫応答も、注射後10及び30週の両方の時点で雄よりも雌において高かった。これらのパイロットデータは、マウスにおけるAAV9.CB7.hCLN2生体内分布及び導入遺伝子発現またはその後の部分的忍容性における潜在的な性別特異的差異を示唆し得る。マウスにおけるAAVベクターに基づく産物の肝臓形質導入効率はテストステロン依存的であり
得るといういくつかの証拠があるが(Davidoff,2003)、とはいえこのパイロット調査における変動的なデータは、AAV9.CB7.hCLN2の生体内分布プロファイルまたは免疫原性における任意の性別特異的差異よりも、動物におけるヒトタンパク質に対する免疫応答の評価への課題(ならびに、ヒト臨床シナリオへのそれらの解釈可能性及び適用可能性における課題)をより例示する可能性が高い。それにもかかわらず、任意の潜在的な性別特異的差異、具体的には生物活性または免疫原性に対する任意の効果を、計画されたINDにより可能となるハイブリッド薬理学/毒物学調査においてさらに評価する。
【0227】
実施例12:脳室内(ICV)及び大槽内(IC)投与の経路の比較可能性
Tpp1m1jマウスモデルにおいて行われたパイロット調査では、AAV9.CB7.hCLN2をICV注射により投与した。この投与の経路は、計画された臨床的IC投与経路とは異なるが、しかしながら、IC注射はTpp1m1jマウスにおいて実現可能ではない。IC注射処置の間、小容量のCSFを引き抜いて、CSFコンパートメントにおける圧力を減少させ及び大槽における正しい針の配置を確認する必要がある。マウスにおける比較的少ないCSF容量に起因して、正しい針の配置は、CSFを引き抜くことによって確認され得ない。ゆえに、注射前に筋膜と筋肉とを解離して硬膜を曝露する必要がある。この外科的処置は時間がかかり、マウスにおける処置誘発性運動機能障害及び/または病変の危険性を提示する。
【0228】
IC注射がTpp1m1jマウスにおいて実現可能でないことを考慮して、大型動物におけるIC注射及びマウスにおけるICV投与の後の、AAV9ベクターに基づく産物の生体内分布及び導入遺伝子発現プロファイルの類似性に起因して、ICV投与経路を薬理学/毒物学調査に選択した。
【0229】
類似のAAV9ベクターに基づく産物に対する前臨床試験プログラムにおいて、生体内分布プロファイル(標的組織/臓器)は、マウスにおけるICV注射及びNHPにおけるIC注射のいずれかの後で同等であることが示された。同様に、Haurigot et
al.,(2013)によって公開された調査では、IC(n=1)またはICV(n=2)注射のいずれかによる2×1013vg/動物のAAV9.GFPベクターのCSF送達後のイヌにおいて、AAV9ベクター生体内分布及びGFP mRNA発現が比較された。CNS及び体細胞器官におけるAAV9ベクター生体内分布及び導入遺伝子発現プロファイルについての比較分析は、いずれかの送達の経路を用いたベクター形質導入プロファイルの大きな差を示唆しなかった。
【0230】
ゆえに、AAV9.CB7.hCLN2のICV注射後のTpp1m1jマウスにおいて作出される薬理学/毒物学データは、標的患者集団における臨床シナリオ及び計画されたIC投与経路に関連している。
【0231】
実施例13:CLN2病のTpp1m1jマウスモデルにおける計画されたハイブリッド薬理学/毒物学調査
AAV9.CB7.hCLN2に対する提案される前臨床試験プログラムは、CLN2病のTpp1m1jマウスモデルにおいて行われる、INDにより可能となるハイブリッド薬理学/毒物学調査を含む。一般的に、ハイブリッド調査設計は、臨床背景における製品の安全性及び生物活性に影響を与え得る、標的患者集団の局所微小環境及び病態生理学的状態を再現する疾患背景における試験品目の安全性及び生物活性についての評価を容易にする。結果として、ハイブリッド調査において作出されるデータは、健常動物において行われる調査から獲得されるデータよりも関連している場合が多い。ゆえに、提案されるハイブリッド薬理学/毒物学調査から作出されるデータは、安全でかつ効力のある初回臨床用量レベルの選択に情報を与えるのに役立つ。
【0232】
提案される調査では、AAV9.CB7.hCLN2を、2×1010GC/g脳質量~MFDの7.5×1011GC/g脳質量の用量レベル域で、4週齢のマウスにICV注射により投与する。動物の半分を、対照動物において予想される神経病理及び死亡と一致する注射後60日の時点で屠殺し、TPP1酵素活性、リソソーム貯蔵物質の蓄積及び貯蔵病理、ならびにアストロサイトーシスを含めた生物活性について評価する。動物の残りを、疾患表現型(臨床観察時の発作、振戦、及び/または歩行異常によって規定される)の発症までの時間について評価し、対照動物において100%の死亡率が予想される時点を超える注射後最高で210日間の長期生存について追跡する。すべてのマウスを、実現可能なものとして、複数の時点で安全性の限定された査定について評価する。
【0233】
パイロット調査からのデータは、Tpp1m1jマウスにおける小脳機能衰退の阻止に対するAAV9.CB7.hCLN2の効果を示唆したものの、これら神経行動学的アッセイの利用性は限定されており、長期生存に関するデータは、生物活性についてのより客観的測定であると見なされる。ゆえに、パイロット調査において用いられた神経行動学的アッセイは、この調査の設計に組み入れられなかった。具体的には、早期死亡は、より遅い時点におけるTpp1m1j対照マウスの評価を妨げ、臨床観察時の明らかに損なわれた機能(例えば、著名な歩行異常及び振戦)にもかかわらず、パイロット調査からのデータは非常に変動的であるように見えた。疾患発症から早期死亡までの急速な進行、ならびに動物取扱の間の環境刺激誘発性致死性発作の潜在性は、Tpp1m1jマウスにおいてこれらの査定を行うことにとってさらなる課題をもたらす。
【0234】
限定された組織入手可能性、及び環境刺激誘発性致死性驚愕発作に対するTpp1m1jマウスの感受性(それは、連続出血など、動物取扱を要する生存中安全性査定を実施し得る能力を限定し得る)に起因して、すべての群における安全性及び生物活性についてのすべての提案される測定結果を回収することは実現可能ではない。ゆえに、生物活性についての査定を群1~6において優先し、安全性/毒物学についての査定を群7~9において優先する。
【0235】
提案される調査のための主要な設計要素、及びそれらの科学的論拠の考察が下記で提供される。
1)疾患の動物モデル:Tpp1m1jマウスモデルは、CLN2病の生物学的に関連したマウスモデルである。
2)試験品目:意図される臨床用製品及び製剤(バッファー/希釈剤)を評価する。
3)用量レベル域:2×1010GC/g脳質量~7.5×1011GC/g脳質量の値域内にある複数の用量レベルを評価して、最小有効用量(MED)及び無毒性量(no-observed-adverse-effect-level)(NOAEL)を特定する。パイロット調査において、7.5×109GC/g脳質量の用量レベルでAAV9.CB7.hCLN2を投与されたTpp1m1jマウスにおいて、生存率または生物活性の他の測定において有益性があるようには見えなかった。ICV投与経路(ROA)を利用するTpp1m1jマウスにおけるMFDは、7.5×1011GC/g脳質量である。
4)脳室内(ICV)投与経路(ROA):IC及びICV経路間の類似性についての詳細な説明に関しては第3.4.2.5節をぜひ参照されたく、それは、計画された臨床シナリオへのマウスにおけるICV経路の適用可能性を支持する。IC注射処置の重大な安全性は、IND#17565の下で行われたNHP調査において以前に確立された。
5)予定された屠殺及び調査継続期間:Tpp1m1jマウスモデルにおける疾患表現型の発症(疾患発症は、歩行異常、振戦、発作、及び突然死によって特徴付けされる)、ならびに予想される神経病理及び早期死亡とそれぞれ一致するように、注射後60日及び90日の時点における予定された屠殺を選択した。自然病歴データに基づき、いかなるTp
p1m1j対照マウスも、注射後210日の時点における最終的な予定される屠殺までは生存しないと予想される。
6)薬理学/生物活性評価項目:生物活性を評価する定量的評価項目には、疾患表現型(臨床観察時の歩行異常及び/または振戦によって規定される)の発症までの時間、注射後60日の時点でのアストロサイトーシス補正、体重変化(週1回測定される)、注射後60日の時点での脳組織におけるTPP1酵素活性、及び注射後210日までの生存率、が含まれる。剖検(注射後60日)の時点で、リソソーム貯蔵補正の定性的組織学、ならびに大脳、小脳、肝臓、及び血清におけるTPP1酵素活性は、生物活性についての付加的な測定結果を提供する。パイロット調査からのデータは、神経行動学的測定(ロータロッドに基づくアッセイ)が、Tpp1m1jマウスモデルにおける利用性が限定されていることを示し;ゆえに、これらの査定はこの調査の設計に組み入れられていない。
7)安全性/毒性評価項目:対照マウス、及び最高用量レベル(MFD)でICV注射によりAAV9.CB7.hCLN2を投与されたTpp1m1jマウスを、以下のように複数の時点で安全性及び免疫原性について評価する。
・臨床観察(ケージ側での罹患率及び死亡率の検査、毎日)
・詳細な臨床観察(週1回)
・体重(週1回)
・完全な臨床病理(d30、d90)
・免疫原性(血清中の抗TPP1抗体、ELISA)(ベースライン、d14、d60、d210)
・臓器重量(d60、d90)
・肉眼的病理、ならびに組織の包括的リスト及び巨視的異常を示す任意の組織の組織病理(d60、d90)
8)免疫原性査定:液性免疫応答(hTPP1に対する血清抗体)を、ベースラインならびに注射後14、60、及び210日の時点で評価する。マウスにおける導入遺伝子産物に対する液性免疫応答は、NHPにおいて観察される応答と相関することが示されている(データ示さず)。しかしながら、細胞性免疫応答(すなわち、インターフェロンガンマT細胞ELISPOTアッセイ)は、アッセイをランするほど十分なPBMCを全血から単離することは技術的に実現可能でないため、マウスにおいてそれほど情報を与えない。この理由のために、マウスにおけるELISPOTアッセイは、脾細胞を用いて実施される必要があるが、しかしながら、NHPから単離された脾細胞におけるT細胞応答の評価を含む以前の調査からのデータは、同じNHP由来のPBMCにおいて獲得されたデータと相関しなかった。ゆえに、T細胞免疫応答の評価は調査設計に組み入れられない。
9)予定外の死亡:剖検及び他の査定を、必要に応じてすべての予定外の死亡に対して実施して、死亡の原因を判定する。
【0236】
実施例14:安全性/毒物学及び生体内分布
C57Bl/6マウスにおける潜在的GLP安全性/毒物学調査
AAV9.CB7.hCLN2に対する提案される前臨床試験プログラムは、CLN2病のTpp1m1jマウスモデルにおいて行われるハイブリッド薬理学/毒物学調査を含む。最高でMFDまでの複数の用量レベルでICV注射によりAAV9.CB7.hCLN2を投与されたマウスを、以下のように、生存中の複数の時点及び予定された屠殺の時点で安全性について評価する。
・臨床観察(ケージ側、毎日)
・体重(週1回)
・臨床病理(d60、d90、d210)
・血清における液性免疫応答(血清中の抗hTPP1抗体、ELISA)(ベースライン、d14、d60、d210)
・臓器重量(d60、d90、d210)
・任意の生存動物に対する肉眼的病理及び組織の包括的リストの組織病理(d60、d9
0、d210)(対照動物において、6ヶ月齢までに100%の死亡率が予想される)
【0237】
一般的に、ハイブリッド調査設計は、臨床背景における製品の安全性及び生物活性に影響を与え得る、標的患者集団の局所微小環境及び病態生理学的状態を再現する疾患背景における試験品目の安全性についての評価を容易にする。ゆえに、提案されるハイブリッド薬理学/毒物学調査から作出される安全性/毒物学データは、AAV9.CB7.hCLN2の安全性プロファイルに関する重要な情報を提供すると期待される。機関指導勧告によると、「生物活性及び安全性についての査定に選択される動物種は、臨床試験設計を導くデータを作出するために、ヒトにおいて予想されるものと同様の、治験用[製品]に対する生物学的応答を示すべきである」。それゆえ、CLN2病のTpp1m1jマウスモデルの選択は、AAV9.CB7.hCLN2の安全性についての評価に適当である。
【0238】
罹患したTpp1m1jマウスにおける基礎病理及び早期死亡は、潜在的な試験品目関連効果をマスクし得る、ならびに環境刺激誘発性致死性発作に対するTpp1m1jマウスの感受性に起因して、一部の安全性査定(連続出血など)を実施し得る能力は限定され得るという懸念を含めて、Tpp1m1jマウスにおいて安全性を査定する上でのいくつかの潜在的な課題が存在する。これらの懸念が経験によって証明され、かつTpp1m1jマウス安全性データが規制要件を満たすのに十分であると見なされない場合、付加的なGLP準拠の毒物学調査がC57Bl/6マウスにおいて行われる。C57Bl/6マウスは、AAV9.CB7.hCLN2に伴う潜在的毒性を検出するのに適当であると見なされる、なぜなら、i)C57Bl/6マウスは、薬理学査定において用いられるTpp1m1jマウスモデルのバックグラウンド系統であり;ii)マウスにおけるICV注射及び大型動物におけるIC注射の後の、AAV9ベクターに基づく産物の生体内分布及び導入遺伝子発現プロファイルの同等性が確立されており;iii)健常マウスにおいて安全性査定を実施する実現可能性は、Tpp1m1jマウスなどにおける動物取扱懸念または環境刺激誘発性致死性発作に対する感受性によって限定されず;ならびにiv)健常マウスにおけるGLP準拠の安全性/毒物学調査の実行は、実現可能であり、十分に確立されており、かつ統計学的に堅牢であるためである。代替種としてのラットの選択は潜在的に適当であり、計画された臨床的IC ROA(それはマウスにおいて実現可能でない)の組み入れを理論的に可能にするが、しかしながら、この種は、AAV9.CB7.hCLN2に対する前臨床試験プログラムにおけるその使用を支持するのに十分なほど特徴付けされていない(例えば、CSFへの送達後のAAV9ベクターに基づく産物の生体内分布プロファイル)。
【0239】
この潜在的なGLP安全性/毒物学調査では、AAV9.CB7.hCLN2を、7.5×1010、2×1011、及びMFDの7.5×1011GC/g脳質量の用量レベルで、4週齢のC57Bl/6マウスにICV注射により投与し、マウスを複数の時点で安全性/毒性について評価する。Tpp1m1jマウスにおけるAAV9ベクター生体内分布の速度論及び疾患表現型の進行と一致するように、計画された予定された屠殺(注射後30日及び90日)及び調査継続期間(注射後90日間)を選択した。安全性査定は、臨床観察、体重、臨床病理、免疫原性、肉眼的病理、及び組織の包括的リストの組織病理を含む。提案されるIC ROAの安全性は、IND#17565の下でNHPにおいて行われた調査において以前に確立されている。
【0240】
大槽内注射によるAAV9.CB7.hCLN2の投与についての科学的論拠及び安全性
限られたCSFコンパートメント内の標的CNS組織へのベクターの直接的でかつ非侵襲的な送達を可能にする、AAV9.CB7.hCLN2に対する投与の経路(ROA)として大槽内(IC)注射を選択した(Hinderer et al.,2014b;Hinderer et al.,2017;IND#17565)。AAV9ベクター
に基づく産物の静脈内送達も、CNS内の細胞を標的にすることが示されているものの、CSFへの送達は、より低いベクター用量レベルで及び末梢臓器のより低い形質導入で、脳におけるより効率的な形質導入を達成することが示されている(Nathwani et al.,2011;Gray et al.,2013;Hinderer et al.,2014;Hinderer et al.,2014b)。
【0241】
大槽内への画像誘導による後頭下穿刺を介したIC注射(すなわち、計画された臨床的ROA)についての最も信頼できる安全性査定は、類似のAAV9ベクターに基づく産物に対する前臨床試験プログラムの一部として行われたGLP準拠のNHP調査において以前に評価された。簡潔には、投与処置は、複数の調査にわたってすべての動物において忍容性が良好であり;IC注射後14、30、または90日の時点で、いかなる動物においても投与処置に関係した臨床的、肉眼的、または組織学的な所見はなかった。完全な前臨床調査報告(及び入手可能な臨床データ)は、IND提出の際に提供される。
【0242】
IC注射後のAAV9ベクターに基づく産物に対する既存の生体内分布データ
標的患者集団におけるIC注射後のAAV9.CB7.hCLN2の可能性のある生体内分布プロファイルは、類似のAAV9ベクターに基づく産物に対して作出された既存の生体内分布データから情報を得ている。例えば、類似のAAV9ベクターに基づく産物の生体内分布は、IC注射後最高で2年間、ネコ、イヌ、及びNHPを含めた複数の種において包括的に特徴付けされており、生体内分布についての最も信頼できる査定は、FDA/CBER/OTATの投入で設計されたGLP準拠のNHP調査(PTS#PS002653及びPTS#PS002919)において行われた。要約すると、これらの産物は、多様な動物種におけるIC注射の後、脳及び脊髄において広く分布し及び持続することが示された。複数の用量レベルを評価した場合、ベクター組織レベルはほぼ用量依存的であった。肝臓及び脾臓へのベクター分布は、概して、脳において観察されたものと同じぐらい高く、ときにはそれよりも高く;限定されたデータは、CNS発現に対する観察可能な効果はなかったものの、AAV9に対する既存の力価が末梢組織ベクター発現を低下させ得ることを示唆する。CNS及び肝臓以外の組織におけるベクター濃度は、調査内及び調査間の両方で非常に変動的であったが、評価されたすべての組織がベクターを含有した。さらに、ベクター発現は、NHPにおける生体内分布についての最も信頼できる査定において、投与後最高で6ヶ月間、意義があるほどに変化しなかった。
【0243】
全体として、AAV9ベクターに基づく産物に関する生体内分布プロファイル(標的組織/臓器、及び生体内分布の速度論)は、複数の種及び調査にわたって合致していることが示されている。
【0244】
実施例15:臨床試験
臨床開発プログラム及び計画された中核的臨床試験の概略
AAV9.CB7.hCLN2に対する提案される臨床開発プログラムは、2つのパートで行われる単一試験を含む(
図26;
図27)。詳細な梗概は第4節に提供されている。
【0245】
試験のパートIにおいて、主要な焦点は安全性及び忍容性にあり、最高で2つの用量レベルが保守的な用量漸増設計の一部として計画され、IT ERT(Brineura(登録商標))での治療中に3~5のベースラインCRS(組み合わせた運動及び言語ドメイン)スコアを有する≧2歳である対象が、最低8週間離れて逐次的に登録され、ISC審査が進行中である。2人の対象は第一の用量レベルで投薬され、安全性についての評価の後、外部IDMCは、より高い用量レベルで2人の対象に投薬することに進むことが安全であるかどうかを判定する。
【0246】
調査のパートIIにおいて、最高忍容用量コホートは、最高で合計15人の対象まで拡張され得、IT ERT治療された対象及びIT ERTナイーブの対象の両方の患者集団を含む。組み入れ/除外基準は、CLN2病CRSに関する3~5のスコアを含めて、その他の点でこの拡張集団において同じままである。
【0247】
試験のパートIにおいて、効力パラメーターが測定されるものの、焦点は安全性及び忍容性にある。第一の投薬コホートにおいて、IT ERT中の2人の適格な対象が、最低8週間離れて逐次的に登録されて、効力のある用量であると予想されるより低い用量を受ける。各対象はスクリーニングを経験し(-35日目~-1日目)、適格である場合、1日目にAAV9.CB7.hCLN2の単回IC投薬を受け、観察のために投薬後およそ30~36時間病院に滞在する。対象は、スクリーニングの間2週間ごとにかつAAV9.CB7.hCLN2の投与後最高で8週間まで、IT ERTを受け続ける。IT ERT注入の直前に、CSF TPP1活性のトラフレベルを測定する。トラフTPP1活性は、注入から検出不能であると予想され、一方で遺伝子療法からのTPP1活性は、投与後1~4週間測定可能であると予想される。トラフTPP1活性が測定可能であり次第及びあらかじめ指定された基準が満たされた場合には、ISCは、ある特定のあらかじめ指定された基準が満たされた場合に、IT ERT注入を停止すると決断し得る。対象は、最低でも、AAV9.CB7.hCLN2後2週及び4週の時点でIT ERTを受け、8週目の来院前に最高で4週間IT ERTを絶たれる。ISCは、この対象に対する最初の8週間の間に獲得された安全性データ(8週目の来院中に獲得されたデータを含む)を審査し、安全性懸念がない場合、次の対象が登録され得る。第二の対象は、いつIT
ERTを中断するかを決定することにおいて同じ工程を経験する。安全性審査要因(SRT)が観察されない場合(表35)、第二の対象に対する最高で8週目の来院までかつ8週目の来院を含んで獲得されたすべての安全性データはIDMCによって評価される。任意の事象が停止規則の基準を満たす場合、すべての安全性データについての完全な審査が実施されるまで、任意の新たな対象の投薬は保留される。投薬コホートの終わりの時点で計画されるまたはSRTによって要求されるかどうかにかかわらない任意の所定のIDMC会議で、IDMCは、試験を停止する、現在の用量で付加的な対象に投薬する、次の投薬コホートに進む、またはより低い用量で進むことを勧告し得る。リアルタイムで、投薬された各対象の安全性及び忍容性を以下のように査定する。
【表2】
【0248】
決断が第二の投薬コホートに進むことである場合、パートIにおけるIT ERT中の後続の2人の適格な対象は、初回投薬コホートと同じ投薬スキームに従い、後続の各患者の投薬は、先の対象に対する最初の8週間の間に獲得されたすべての安全性データ(8週目の来院中に獲得されたデータを含む)が審査された後に生じる。SRTが観察されない場合、第二の対象に対する最高で8週目の来院までかつ8週目の来院を含んで獲得されたすべての安全性データはIDMCによって評価される。
【0249】
IDMCが、試験のパートIIに進むことが安全であると判定した場合には、IT ERTを受けているところであるまたはIT ERTにナイーブであるおよそ13人の付加的な対象が、競合的でかつ平行した様式で登録される。計画された年2回のIDMC会議があるが、ISCはIDMC会議をいつでも要求することを決断し得、それは登録を止めることも伴い得る。
【0250】
現在IT ERT中であるそうした対象は、適当なあらかじめ指定された基準が満たされた場合(例えば、安定したCRS、遺伝子療法からのCSF TPP1活性の証拠、及び他の基準が考慮されている)、AAV9.CB7.hCLN2療法のおよそ4~6週間後にERTを中断することを求められる。変化が観察される場合、CRS(運動及び言語ドメイン)を8週間ごとにまたはより高頻度に測定する。IT ERTを再開するための具体的なガイドラインは、プロトコール開発時に前向きに規定され、CRSスコアの変化、ならびに治験責任医師自身の臨床評価及び判断に基づく可能性が高い。後者に関して、CRS測定に近接した種々の臨床状況(例えば、病気、発作頻度)はスコアに影響を与え
得、疾患の進行を反映しない可能性があり;ゆえに、治療的介入(例えば、発作医薬の変更)及び付加的な試験を実施して、CRSスコアにおける可逆性を査定し得る。
【0251】
IC空間へのベクターの適用は、ヒトにおいてこれまで行われたことがないため、この処置の危険性はまだ判定されていない。当該処置は、もともと、いかなる画像化もせずに実施された1919年に記載された。20人の対象における43例の処置の症例シリーズは深刻な合併症を報告しておらず、技法が慎重な執刀医の管理下において安全であることを証明するであろうと結論付けた(Ayer et al.,1920)。最小限を上回る危険性を表す後頭下穿刺による、潜在的に深刻な合併症がある。しかしながら、プロトコールは、これらの危険性を最小限に抑える徹底的な緩和ストラテジーを提案する。彼らの病歴及び手術歴またはMRIに存在する解剖学的異常に基づき、合併症の危険性がより高くあり得る患者は調査から除外される。さらに、スクリーニング期間の間に獲得されたMRI画像は、参加施設の神経放射線科医/神経外科医のグループによって審査され、危険性をさらに最小限に抑えるCT誘導の下で行われる処置を進めるには意見の一致が要される。計画された臨床試験においてこの処置を実施する医師には訓練プログラムも要される。全体として、予想は、本発明者らが見なし得る危険性が、頭痛及び注射部位反応を含めた、腰椎穿刺で見られるものによく似ているということである。
【0252】
治療用導入遺伝子を搭載したAAV血清型の臨床的安全性及び効力は、リポタンパク質リパーゼ欠損症に適応される、EMEAにより承認された遺伝子療法GLYBERA(登録商標)(アリポジーンティパルボベク;GLYBERA SmPC,2016)において立証されている。遺伝型の失明(MacLaren et al.,2014;Maquire et al.,2008)、B型血友病(Nathwani et al.,2014)、及び他の多くの疾患適応症(Luo et al.,2015)に対するAAVベクターを用いた臨床試験経験は、AAV遺伝子療法の安全性及び潜在的効力に対する付加的な支持を提供する。AAV9を含めたAAVを利用したいくつかの進行中の遺伝子療法調査がある。しかしながら、AAV媒介性遺伝子導入の長期にわたる危険性に対処する直接的臨床データは限定されており、長期にわたる危険性は未知のままである。
【0253】
IS療法が本調査において実行され、コルチコステロイド(1日目投薬前に1回メチルプレドニゾロン10mg/kg静脈内[IV]、及び2日目に0.5mg/kg/日で開始し、漸減しながら12週目までに中断する経口プレドニゾン)、タクロリムス(2~4ng/mLの標的血中レベルで2日目~24週目、及び24週目~32週目の間の8週間にわたって漸減する、経口で[PO]、0.5mg/kgを1日2回[BID])、及びシロリムス(-2日目に4時間ごと×3回の投薬の1mg/m2の負荷用量、次いで-1日目から:48週目まで1~3ng/mlの標的血中レベルでのBIO投薬に分割されるシロリムス0.5mg/m2/日)を含む。
【0254】
免疫抑制は、安全性及び効力の両方に対するAAV及び/または導入遺伝子への免疫応答の影響を最小限に抑えるために、他のCNS指向性AAV遺伝子療法調査に含まれており、安全でかつ忍容性が良好であるように見える。Lysogene(AAVrh.10ベクターに基づく産物を開発している)及びuniQure(AAV5ベクターに基づく産物を開発している)の2社は、プレドニゾロン、MMF、及びカルシニューリン阻害剤であるタクロリムスのISレジメンを利用した、サンフィリポ症候群(MPS III)を有する患者における臨床試験を行った。Lysogeneは、遺伝子療法後3年間にわたる安全性データにより、良好な忍容性、注射産物に関係した有害事象(AE)がないこと、及び免疫抑制薬に関係した毒性の生物学的徴候がないことが示されたことを報告した(Tardieu et al.,2017)。同様に、uniQureは、遺伝子療法後1年間にわたって、治験療法または処置に関係した局所炎症または他の安全性懸念がないことを報告した(UniQure,2015)。
【0255】
進行中のAAV9媒介性IT遺伝子導入調査において、GAN遺伝子に少なくとも1つのミスセンス変異を有するGAN患者は、コルチコステロイド単独でのISを受け、一方でヌル変異を有する1人の患者は、コルチコステロイド、タクロリムス、及びシロリムスでのISを受けて、適応性抗導入遺伝子応答のより高い潜在的危険性を最小限に抑えた(Bharucha-Goebel et al.,2017)。今までのところ、当該療法は、臨床上忍容性が良好であることが報告されており、CSF及び末梢AAV9 NAB力価の両方における観察される上昇、ならびにCSF髄液細胞増加は、臨床的安全性に影響を与えるようには見えない。
【0256】
提案される調査において、ISレジメンは、使用にとって適切であると見なされ、以下の理由で計画されている。
・とりわけ遺伝子産物の完全な欠如をもたらし得る遺伝子変異を有する患者において、TPP1に対する潜在的に過剰な免疫応答を阻止するまたは最小限に抑えるため。そのような免疫応答は、導入遺伝子を発現する組織に対する過敏性反応または免疫介在性反応の危険性を増加させ得る。
・AAV9.CB7.hCLN2及び/またはIT ERTの生物活性を潜在的に低下させ得る、TPP1に対するNAbの形成またはTPP1に対するNAbの増加(既存のNAbを有する可能性が高いERT中の患者における)を阻止するため。
【0257】
コルチコステロイドは、慎重に、AAV治療後早期に見られ得る即時の炎症の程度を低下させ、ゆえに組織損傷を引き起こし得る炎症応答の能力を最小限に抑え、ならびにT細胞及びB細胞媒介性適応免疫応答をプライムする。タクロリムスはカルシニューリン阻害剤であり、それはT細胞活性化におけるかなり早期のステップを遮断し、損なわれたサイトカイン産生、ならびにT細胞の拡張及びエフェクター細胞への分化の遮断につながる。それは、主に肝臓及び腎臓移植において、ステロイド及びMMFとともに移植後レジメンの一部としてルーチン的に用いられる(Scalea et al.,2016)。タクロリムスは、導入遺伝子などの外因性抗原に対するT細胞媒介性免疫応答を阻止するために使用可能な有効な薬物である。導入遺伝子に対するB細胞抗体産生にはT細胞ヘルプも要されるため、この作用物質は、細胞媒介性免疫及び液性免疫の両方を遮断するのに有効であると予想され得る。
【0258】
ラパマイシンとしても知られるシロリムス(RAPAMUNE(登録商標)USPI,2017)は、カルシニューリン阻害剤のものとは異なるメカニズムを介して作用し;それは、細胞内シグナル伝達及び代謝経路を遮断することによって、サイトカインがT細胞の拡張及び成熟を促進し得る能力を阻害する。しかしながら、その正味の効果は、同じ細胞過程の多くを標的にすることである。それは、移植後ISにおいてもよく用いられる(Zhao et al.,2016)。加えて、非臨床及び臨床調査により、シロリムスは調節性Tリンパ球(Treg)の相対的温存を提供し得、それにより、リバウンド免疫反応なく薬物の離脱を可能にし得ることが示唆される(Hendrix et al.,2009;Ma et al.,2009;Mingozzi et al.,2007;Singh et al.,2014)。遺伝子療法文献、及びタクロリムスで最初に治療される対象となる患者に対する固形臓器移植臨床試験の両方に前例があり、次いで、免疫抑制効力の優れた持続を有して、ラパマイシンへの「変換」の成功を有する(El-Agroudy et al.,2017)。
【0259】
様々な免疫抑制剤に対する療法の継続期間は、ヒト移植におけるそれらの使用の成功、及びMPS IIIまたはGAN遺伝子療法調査に利用された設計に部分的に基づく。対象を、調査の間、とりわけISを低下させるまたは中断する際に、任意のAEについて実験室検査及び臨床検査によって綿密にモニターする。
【0260】
以下の評価項目が提案される。
安全性査定:
・AAV9.CB7.hCLN2投薬後の安全性:AE、SAE、実験室評価、バイタルサイン、ECG、EEG、身体検査、視力、発達の診査事項、及び神経学的査定
・免疫原性測定
・AAV9に対する中和抗体、ならびにCSF及び血漿におけるTPP1に対する結合抗体
・酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイ:AAV9及びTPP1に対するT細胞応答
・ウイルス排出:CSF、血清、及び尿中のベクター濃度
効力査定:
・血漿及びCSFにおけるTPP1活性
・自然病歴コホートと比較した、CRSの6ポイントの組み合わせた言語及び運動ドメインにおいて、逆転しない(持続的な)2カテゴリー衰退(すなわち、言語及び運動ドメインのそれぞれにおいて1つ、または運動ドメインのみで2つ)を有しない対象、ならびにAAV9.CB7.hCLN2後に、IT ERTナイーブの対象に対して72週間及びIT ERT治療された対象に対して80週間を通じてレスキュー医薬なしの対象の割合・自然病歴コホートと比較した、CRSの6ポイントの組み合わせた言語及び運動ドメインにおいて、逆転しない(持続的な)2カテゴリー衰退(すなわち、言語及び運動ドメインのそれぞれにおいて1つ、または運動ドメインのみで2つ)を有しない対象、ならびにAAV9.CB7.hCLN2後の96週間(IT ERTナイーブ)/104週間(IT ERT治療された)を通じてレスキュー医薬なしの対象の割合
・自然病歴コホートと比較した、AAV9.CB7.hCLN2後の72週間(IT ERTナイーブ)/80週間(IT ERT治療された)、及び96週間(IT ERTナイーブ)/104週間(IT ERT治療された)を通じた、CRSの6ポイントの組み合わせた言語及び運動ドメインにおける衰退の平均速度、ならびにベースラインからの変化
・自然病歴コホートと比較した、AAV9.CB7.hCLN2投薬後の72週間(IT
ERTナイーブ)/80週間(IT ERT治療された)、及び96週間(IT ERTナイーブ)/104週間(IT ERT治療された)を通じた、CRSの組み合わせた及び個々の構成要素(運動、言語、視力、発作ドメイン)における衰退の平均速度、ならびにベースラインからの変化
・CRSの6ポイントの組み合わせた運動及び/または言語ドメインにおける、逆転しない2カテゴリー衰退までの時間
・知能指数(IQ)のための検証された機器(ウェクスラー短縮版知能尺度[WASI-II])
・ヴァインランド適応行動尺度、第2版(VABS-II)からの親報告
・MRIによる灰白質及び白質ならびにCSF脳室の容量分析
・SD-OCTによる網膜厚
・QOL測定:小児生命の質目録(Pediatric Quality of Life Inventory)(PedsQL)総合的コア尺度(Generic Core
Scales)及びCLN-2特異的補足;乳幼児生命の質質問票(Infant Toddler Quality of Life Questionnaire)(商標)(ITQOL)
【0261】
提案される臨床試験では、CSFにおけるTPP1酵素活性、ならびに、i)CLN2病CRSの6ポイントの組み合わせた言語及び運動ドメインにおいて、逆転しない(持続的な)2カテゴリー衰退(すなわち、言語及び運動ドメインのそれぞれにおいて1つ、または運動ドメインのみで2つ)を有しない対象(Steinfeld et al.,2
002);ならびにii)「レスキュー」IT ERT注入を有しない対象、として定義される応答者としてカテゴリー分けされる対象の割合を含めた、効力についての複数の測定が評価される。2組の患者集団(すなわち、IT ERTナイーブ及びIT ERT治療された)が、パートIIの拡張コホートにおいて計画され、IT ERTナイーブの対象は72週間追跡され、IT ERT治療された対象は80週間追跡され、組み合わせた2つの患者集団を自然病歴コホートと比較する。これら2つの集団を組み合わせる主な理由は、一般的なCLN2病の希少性、及びBrineura(登録商標)の近年の承認後のIT ERTナイーブの患者のさらなる低下に起因して、試験登録を促すためである。IT ERT治療された患者における任意の残存ERTの潜在的な影響、ならびにAAV9.CB7.hCLN2についての査定に対する潜在的交絡効果に起因して、「ウォッシュアウト」期間が調査設計に組み入れられる。CSF及び血漿におけるBrineura(登録商標)に関するPKデータは、CSF及びリソソームにおけるそれぞれおよそ7時間及び11.5日間の半減期を有して、明らかな蓄積またはPK時間依存性がないことを示唆し(Brineura(登録商標)EPAR)、ゆえに、IT ERTの中断後最高で4週間という提案される「ウォッシュアウト」期間は適当である。AAV9.CB7.hCLN2高用量群における組み合わせたIT ERTナイーブの対象及びIT ERT治療された対象と、外部の自然病歴対照群における最も近い1-1でマッチした対象とを比較することによって、応答者分析を用いて分析を行う。マクネマー正確検定を実施して、マッチした集団を分析する。自然病歴対照群からの1-1でマッチした対象を、ベースラインCLN2スコア、±6ヶ月齢、及び共通の遺伝子型に基づいて選択する。1つを上回る数のマッチが生じる場合、以下の順序(1)詳細な遺伝子型及び(2)性別で、付加的な基準に対してさらにマッチさせることによって選択を狭める。この分析を、IT ERTナイーブの対象に対して72週の時点で、及びIT ERT治療された対象に対して80週の時点で実施する。ベースラインCRS(組み合わせた運動及び言語ドメイン)スコアは、AAV9.CB7.hCLN2群に対するAAV9.CB7.hCLN2注射前である。自然病歴対照群におけるマッチした対象に対する72週を通じたデータを分析に用いる。
【0262】
米国におけるBrineura(登録商標)の承認は、96週の期間にわたり、CLN2病CRSの運動ドメインにおいて、逆転しない(持続的な)2カテゴリー(生の)衰退がないまたは0の逆転しないスコアを有する対象の割合についての主要効力評価項目に基づいた。BioMarin Pharmaceuticalsによるもともと提案された主要効力評価項目は、48週間にわたり、運動-言語総スコアにおいて、逆転しない(持続的な)2ポイントレート(傾き)の衰退がないまたは0のスコアを有する対象の割合であった。機関は、運動-言語総スコアを用いることに同意せず、運動ドメインのみの使用を勧告した。主要効力分析のための時点も、48週から、効力の実質的な証拠が48週及び72週の時点で見い出されなくなった後の、96週に修正された。対照的に、Brineura(登録商標)は、歴史的な自然病歴データと比較して、48週の調査期間中に、CLN2病CRSの組み合わせた運動及び言語ドメインに関する2ポイント衰退を有しなかった対象の割合に基づいて、EMAによって承認された。いくつかの感度及び支持的分析もこれらの結果を裏付けた。
【0263】
機関は、Brineura(登録商標)販売申請における種々の調査にわたって用いられるCLN2病CRSの比較可能性に対するいくつか懸念を提起した(Brineura(登録商標)、FDA承認審査概要)。臨床転帰査定審査において特定された最初の重要な問題は、用いられる記述子の潜在的差異により、それ自体が、とりわけ「2」というスコア前後の定性的記述子の引用される例において、特定のスコアが臨床上何を意味するかについての明確な理解に役立ち得ないという懸念であった。機関によって特定された第二の問題は、i)自然病歴調査における対象が、実演査定及び二次的供給元(例えば、カルテ、親との面談等)を通じて遡及的及び前向きの両方で臨床医によって評定され、一方で
Brineura(登録商標)中核的調査における対象は、実演査定のみを通じて前向きに臨床医によって評定された、という評定の異なる方法;ならびにii)CLN2 CRS尺度が、自然病歴調査及びBrineura(登録商標)中核的調査において、それぞれおよそ12週間及び8週間ごとに査定された、という査定の異なるスケジュール、の両方をめぐるものであった。本発明者らは、機関の審査から、自然病歴調査及びBrineura(登録商標)中核的調査において用いられたCLN2尺度への評定の相違があったように、映像比較可能性調査からの知見も、CLN2運動-言語総スコアにおける言語項目の使用を支持しなかったと理解する。言語項目とのより大きな不一致があることが観察された。
【0264】
言語技能及び発達についての査定は、CLN2病患者集団において重大であり、ゆえに、AAV9.CB7.hCLN2の計画された臨床試験におけるCRSに組み入れられる。言語ドメイン(それは、Brineura(登録商標)販売申請の審査中にFDA/CDERによって特定された[Brineura(登録商標)、FDA承認審査概要])を組み入れる利用性に関する潜在的懸念に対処するために、緩和計画を実行して、このツールを用いた潜在的バイアスを除去する。具体的には、
・一貫性のある言語ドメイン評定により、各調査内及び調査間の運動-言語総スコアの解釈及び直接比較が容易になり得るように、自然病歴調査において用いられる言語ドメイン評定についての元の記述テキストを用いる。
・評価は、複数の独立した盲検検査官による、映像査定の複数の無作為審査を組み入れ、各対象に対する複数の審査のうちの1つのみが、正しい/本当の時系列で完了する(他の審査は、映像査定の無作為に並べ替えた順序で実施される(及び破棄される))。このようにして、縦断的でかつ個体間のスコアリングが、いかなる潜在的バイアスも導入せずに、同じ検査官によって実施される。
【0265】
サンプルサイズ算出は、自然病歴コホートと比較した、CRSの6ポイントの組み合わせた言語及び運動ドメインにおいて、逆転しない(持続的な)2カテゴリー衰退(すなわち、言語及び運動ドメインのそれぞれにおいて1つ、または運動ドメインのみで2つ)を有しない対象、ならびにAAV9.CB7.hCLN2後に、IT ERTナイーブの対象に対して72週間及びIT ERT治療された対象に対して80週間を通じてレスキュー医薬なしの対象の割合に対して、マクネマー正確検定を用いて実施されている。第一のコホートにおける2人の適格な対象に加えて、高用量のAAV9.CB7.hCLN2群における合計15人の対象が、IT ERTナイーブの対象に対して72週及びIT ERT治療された対象に対して80週の時点で、応答者の割合における60%前後の差を検出することを要され、自然病歴対照群、ならびにIT ERTナイーブ及びIT ERT治療されたAAV9.CB7.hCLN2群においてそれぞれ35%及び95%前後の応答率、0.05の両側有意水準、ならびに80%検出力が推測された。自然病歴対照群における72週の時点での35%の応答率は、48週の時点で45%の応答率が報告されたBrineura(登録商標)調査結果に基づいて推定された。
【0266】
データの全体に基づく臨床効力の確立
FDAは、希少疾患に対する薬物開発を促す複数の機会を提供し、産業界に対するFDAドラフトガイダンス:Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologies-2014において欠損遺伝子の標的化に具体的に対処している。このガイダンスは、希少遺伝子疾患に対する製品の登録を支持するのに十分であり得る評価項目に関連したいくつかの洞察も提供し、「一部のよく理解された酵素欠損に関して、欠損した酵素の補充は臨床的有益性を確実に予測する」と述べている。これは、導入遺伝子発現活性を確実に示す遺伝子療法が、21 CFR 314、subpart Hの下での加速した承認のための基準を満たし得ることを示唆する。さらには、この主張に基づき、欠損した酵素レベルが公知の病因に
つながり、かつそれらの補正または正常化が、臨床上意義のある効果と関連付けられる疾患に対して、早期承認の評価項目に対する論証がなされ得る。
【0267】
以前に承認されたERTの背景において、酵素レベル(典型的に副次的評価項目)と臨床上意義のある転帰(先行する主要評価項目)との間の相関関係はすでに確立されている。これらの場合、CLN2病を含めた多くのLSDなどにおいて、機能する遺伝子コピーの送達の成功及びその後の導入遺伝子産物の発現は、臨床転帰の観察される向上に十分に先立って、早期の時点で顕著である(CSFリソソーム貯蔵物質の低下または酵素活性の測定結果などにより)。これは、遺伝子療法後の酵素活性が、臨床的有益性の代理として用いられ得ることを示唆する。Brineura(登録商標)の承認におけるFDAディレクターメモにおいて近年述べられているように、提案される承認の根拠としての酵素活性の使用はFDA前例とも合致しており、それは、「CLN2はTPP1の欠損に特異的に寄与するため、TPP1の補充が持続的であるまたは治療が疾患の過程において早期に始められる場合、その兆候の逆転または予防は理論的に可能である」と応答の持続期間の承認可能性を取り上げている。それゆえ、TTP1活性を評価項目として用いる潜在性は、FDAガイダンスと合致する。
【0268】
リソソーム貯蔵物質の病的蓄積及びCLN2病の公知の病因を予防することにおけるTPP1酵素活性の確立された役割に基づき、TPP1活性の大幅でかつ持続的な増加は、神経行動学的機能における長期安定化を予測する可能性が高い。種々の量のTPP1を発現するマウスCLN2変異体を評価した調査からのデータに基づき、正常の3~6%のTPP1酵素活性レベルが、疾患の発症を劇的に遅らせ及び生存率を増加させるのに十分であるように見える(Sleat et al.,2008)。CLN2病を有する患者からの付加的な臨床データは、CLN2におけるある特定の変異が、TPP1酵素活性の不完全な喪失(少なくとも末梢組織における)及びその後長引く表現型につながることを示唆する(Sleat et al.,1999;Bessa et al.,2008;Schulz et al.,2013)。さらに、永久埋め込み型デバイスを介したCSFへの隔週注入として投与される、組み換えTPP1(Brineura(登録商標)、セルリポナーゼアルファ、BioMarin Pharmaceuticals)を用いたERTは、i)FDAによる96週間の調査期間にわたる運動機能の衰退;ならびにii)EMAによる48週間の調査期間にわたる運動及び言語機能の両方の衰退、を安定化させると判定された。AAV9.CB7.hCLN2は、CNSにおけるTPP1の効率的でかつ持続的な発現のために設計され、CFSへのAAV9.CB7.hCLN2の1回限りの送達は、TPP1酵素の長期供給源を提供し、ならびに満たされていない高い必要性を有するこの希少遺伝子疾患における疾患の進行及び神経認知の衰退を止める(または大幅に遅らせる)潜在性を有する。ゆえに、臨床データが、臨床上意義のあるCRSにおける安定化のより長期にわたる向上を示唆する、早期の時点でのCSFにおけるTPP1酵素活性の大幅でかつ継続的な増加を示す場合、将来的な販売申請におけるAAV9.CB7.hCLN2の効力への主要な支持を提供するこれらのデータの妥当性がFDAとともに議論される。
【0269】
実施例16:デジタル生態動物園(digital vivarium)を用いた、バッテンマウスにおける脳室内AAV9.hCLN2co効力についての査定
バッテン病の一形態であるCLN2病は、可溶性酵素トリペプチジルペプチダーゼ-1(TPP1)をコードする遺伝子における変異によって引き起こされる神経変性リソソーム貯蔵障害である。当該疾患は、小児期中期までの死亡前に、発作及び運動失調を有する、2~4歳での早期発症を特徴とする。組み換えTPP1(Brineura(登録商標)、BioMarin Pharmaceuticals)を用いた酵素補充療法(ERT)が近年承認され、永久埋め込み型デバイスを介した側脳室への隔週注入として投与されている。組み換え酵素の短い半減期に起因して、反復注入が必要である。ゆえに、反復
投与に伴う重い負担なく、患者において持続的なTPP1酵素活性を提供し得る療法に対する重大な満たされていない必要性が残る。
【0270】
これに対処するために、本発明者らは、CLN2病のマウスモデルであるTPP1m1J変異体において、ヒトTPP1をコードする脳室内(ICV)AAV9の効力を査定する調査を行った。TPP1m1Jマウスは、寿命の短縮、発作、または異常歩行など、ヒト疾患のほとんどの特質を反復する。しかしながら、このモデルにおける神経行動学的機能の客観的モニタリングは、それらが3ヶ月齢以降にストレス誘発性致死性発作を起こしやすく、かつこの歳より前にいかなる測定可能な欠損も提示しないことから困難である。これを回避するために、本発明者らは、デジタル生態動物園(Vium,Inc.)におけるバイアスのない非侵襲的フルタイムモニタリングシステムを用いた。この技術は、いかなるオペレーター操縦もなく、単独で飼育されたマウスのホームケージにおける連続的記録を可能にし、ゆえにストレス及び外部バイアスを限定する。7週齢のC57Bl/6
TPP1m1JKOマウスは、右脳室に3×1011GCのAAV9-hCLNcoの単回投薬を受け;ビヒクルを注射されたWT同腹仔及びTPP1m1Jマウスを対照として用いた。記録は処理の2週間後に開始し、屠殺または予定外の死亡まで続いた。ICV注射後16週の調査終結時に、剖検を実施し、脳及び肝臓をサンプリングした。
【0271】
すべてのマウスは、以下のパラメーター:
-夜間動作
-日常動作
-呼吸速度
-概日リズム
の連続的記録を有して、Viumスマートハウスで単独で飼育された。
【0272】
加えて、週1回の臨床観察及び体重を文書で記録した。記録は、AAV9-hCLNco ICV注射の2週間後(9週齢)に開始し、予定された屠殺(注射後16週、23週齢)までまたは予定外の死亡の場合にはその前まで続いた。調査を通じて、死亡及び瀕死動物の安楽死を記録した。ICV注射後16週の予定された調査終結時に、残った動物において剖検を実施し、脳及び肝臓重量を記録し、ならびに脳及び肝臓における組織病理についての査定を行った。
【0273】
すべての未処理KO動物は、振戦、猫背の姿勢、異常歩行、もしくは発作を有する、または瀕死で発見されもしくは死んで発見され、一方でベクター処理されたKO動物の54%は、調査を通じて目立ったことはなかった。ビヒクル処理されたすべてのKOは、早くも14.9週に開始する報告された臨床徴候を有し、一方でベクター処理されたKOの54%(13匹のうちの7匹)は、調査を通じて臨床上目立ったことはなかった。最初の臨床事象時の平均齢は、KOビヒクル処理された動物において16.1週、及び臨床事象が記録された6ベクター処理されたKOにおいて18.6週であり;7ベクター処理されたKOは、臨床事象を有しなかった。処理は、すべての動物において忍容性が良好であり、肝臓において超生理学的TPP1活性をもたらし、及びKOマウスの寿命を増加させた。最終評価項目の時点(23週齢)で、未処理KOマウスの0%に対して、処理されたKOの62%が生存した(
図22B)。ベクターは、臨床事象の発生を遅らせかつ減少させた(表2)。ベクター処理されたマウスの寿命は有意に増加した(
図25A及び25B)。ビヒクル処理された動物の生存期間中央値は、KO雄において17.6週、及びKO雌において17.4週であった(単独で飼育された未処理TPP1m1Jマウスの生存期間に対する性別効果なし)(
図22A)。死亡は、臨床上目に見える徴候の発症の平均1.5週間後に生じた。最終屠殺評価項目の時点(注射後16週、23週齢)で、処理された雄の57%(7匹のうちの4匹)及び処理された雌の67%(6匹のうちの4匹)が生存し、一方ですべての未処理KOマウスは19週齢までに死亡した(
図22A及び22B)。
処理されたKOマウス及びビヒクル処理されたKOマウスの生存曲線の比較は、処理された動物における生存率の統計的に有意な増加を示している(ログ-ランク・マンテル-コックス検定、p<0.0001)。
【表3】
【0274】
さらに、AAV9.CB7.hTPP1coベクターは、疾患に関連した体重減少を阻止した(
図23A及び23B)。処理は、二相性概日動作プロファイル(データ示さず)、及び週平均夜間動作(
図24)を保存した。WT及び処理されたKO動物の両方とも、明確な二相性概日動作プロファイルを示し、一方でビヒクル処理されたマウスは、16週齢前後で二相性プロファイルを失い始めた。スマートケージを用いた動作の連続的記録により、14.7週齢から以降のビヒクル処理されたTPP1m1Jマウスにおける、その他の点では無症状のマウスにおける、神経行動学的機能障害の検出が可能となった(
図24)。呼吸速度は、すべての群において同等であった(示さず)。
【0275】
デジタル生態動物園によって可能となった反復測定を活用すると、線形混合効果モデリングを用いた夜間動作速度についての統計分析は、14.7週齢で開始する、ベクター処理されたKOマウスにおける有意な治療的有益性を示し、一方で最初の臨床事象時の平均齢は16.1週であった。これは、KOマウスが、肉眼で目に見える臨床徴候の発症に先行する神経行動学的機能障害を有すること、及び処理がこの機能障害をレスキューしたことを立証している。神経行動学的パラメーターのレスキューに対応して、神経炎症のマーカーであるアストロサイトーシス(
図25A及び25B)は、ベクター処理された動物において減少した。
【0276】
結局のところ、これらの結果は、神経行動学的兆候を阻止する、生存率を増加させる、生命の質を維持する、及びCLN2病に関係した神経炎症をレスキューする、AAV9媒介性遺伝子療法の治療効力を立証している。最先端のデジタル生態動物園を用いて、本発明者らは、このモデルにおける客観的な早期の効力読み取りを提供する、発症前マウスにおける概日リズム異常の存在も立証した。このパイロット調査は、脳脊髄液中へのAAV9の単回投与が、CLN2病の治療に対する反復ERTの代替策であり得ることを示唆する。
【0277】
2018年4月3日に出願された米国仮特許出願第62/652,006号、2017年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/599,816号、及び2017年5月11日に出願された米国仮特許出願第62/504,817号がそうであるように、本明細書において引用されるすべての公開された文書は、参照により本明細書に組み入れ
られる。同様に、本明細書において参照され及び添付の配列表に登場する配列番号は、参照により組み入れられる。本発明は特定の実施形態を参照して記載されているものの、本発明の精神から逸脱することなく改変が加えられ得ることが解されるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の内に入ることが意図される。
【0278】
(配列表フリーテキスト)
以下の情報は、数字識別子<223>の下でのフリーテキストを含有する配列に対して提供される。
【表4】
【配列表】