(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】化合物の不斉合成および疾患処置における使用
(51)【国際特許分類】
C07J 61/00 20060101AFI20230508BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20230508BHJP
A61K 31/569 20060101ALI20230508BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230508BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230508BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230508BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230508BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230508BHJP
A61P 5/30 20060101ALI20230508BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20230508BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230508BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
C07J61/00
A61K31/56
A61K31/569
A61K45/00
A61P1/16
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P5/30
A61P15/02
A61P19/10
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020512701
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 CN2018101629
(87)【国際公開番号】W WO2019042192
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/099221
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520065880
【氏名又は名称】ゼジアン ジャーチ ディベロップメント ファーマシューティカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ウェンピン
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-514853(JP,A)
【文献】米国特許第04522831(US,A)
【文献】仏国特許出願公開第02438055(FR,A1)
【文献】特表2002-536455(JP,A)
【文献】国際公開第2006/081152(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/097141(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0027803(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0045516(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0227841(US,A1)
【文献】国際公開第2012/083090(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/060215(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/149392(WO,A1)
【文献】Steroids,1979年,33(1),85-96
【文献】Billetin de la Societe Chimique de France,1965年,71-76
【文献】Contraception,1993年,47(5),507-514
【文献】SCiENTiFiC REPOrTs,2017年03月07日,7:43940,1-9,DOI: 10.1038/srep43940
【文献】Contraception,1989年,39(3),291-297
【文献】Steroids,2016年,115,105-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
A61K
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化15】
の実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩を立体特異的に調製するための方法であって、式中、
R
1は、-OH、-OC(O)-R
1aまたは-OC(O)R
1bCOOHであり、R
4は、-OH、-OC(O)-R
4aまたは-OC(O)R
4bCOOHであり、ここで、R
1aおよびR
4aは独立して、水素、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニルまたはC
3-C
6シクロアルキルであり、R
1bおよびR
4bは独立して、-C
1-C
6アルキル-または-C
2-C
6アルケニル-であり;
R
2およびR
5は、-C≡CHであり;
R
6およびR
7は独立して、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニルまたはC
3-C
6シクロアルキルであり;
R
8およびR
9は独立して、水素、-OH、-NH
2、-NO
3、ハロゲン、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニル、C
3-C
6シクロアルキル、C
6-C
14アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルであり、前記方法は、(a)有機金属試薬R
10-M(ここで、Mは、Li、NaまたはKであり、R
10は、-OH、ハロゲンまたはC
1-C
6アルキルで必要に応じて置換されたC
1-C
20アルキルである)の存在下で、
式(II)
【化16】
のジケトン化合物を式(III)
【化17】
のシリルアセチレン(ここで、R
a、R
bおよびR
cは、水素、-OH、-OH、ハロゲンもしくはC
1-C
6アルキルで必要に応じて置換されたC
1-C
20アルキル、-OH、ハロゲンもしくはC
1-C
6アルキルで必要に応じて置換されたC
1-C
6アルコキシ、C
3-C
6シクロアルキル、C
6-C
14アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルからなる群より独立して選択される)と反応させ
て中間体を形成することを含む、方法。
【請求項2】
R
1が、-OH、-OC(O)-R
1aまたは-OC(O)R
1bCOOHであり、R
4が、-OH、-OC(O)-R
4aまたは-OC(O)R
4bCOOHであり、ここで、R
1aおよびR
4aが独立して、水素、C
1-C
6アルキルまたはC
2-C
6アルケニルであり、R
1bおよびR
4bが独立して、-C
1-C
6アルキル-または-C
2-C
6アルケニル-であり;
R
6およびR
7が独立して、C
1-C
6アルキルまたはC
2-C
6アルケニルであり;
R
8およびR
9が独立して、水素、-OH、-NH
2、-NO
3、C
1-C
6アルキルまたはC
2-C
6アルケニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
1が-OC(O)-R
1aであり、R
4が-OC(O)-R
4aであり、R
1aおよびR
4aが両方ともエチルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R
1およびR
4が両方とも-OHである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
R
1が-OC(O)R
1bCOOHであり、R
4が-OC(O)R
4bCOOHであり、R
1bおよびR
4bが両方とも、-CH
2-、-CH
2CH
2-および-CH=CH-.エチルから独立して選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
R
6およびR
7が両方ともメチルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
R
8およびR
9が独立して、水素またはC
1-C
6アルキルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
R
8およびR
9が両方とも水素である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
R
a、R
bおよびR
cが独立して、C
1-C
6アルキルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
R
a、R
bおよびR
cがメチルであり、前記シリルアセチレンがトリメチルシリルアセチレン(TMS)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
R
10がC
1-C
6アルキルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
R
10がn-ブチルである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
MがLiである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)が前記有機金属試薬と共に添加される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(b)式(IV)
【化18】
のシリル基を
前記中間体から除去することをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記シリル基がトリメチルシリルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、フッ化水素酸およびフッ化カリウムからなる群より選択される脱保護剤と接触させることにより、前記除去工程が行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化19】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、
98%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、
99%以上、
99.5%以上または
99.9%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ステロイド様化合物の不斉合成の分野に関し、より具体的には、アノルドリンおよびその類似体のキラル化合物を調製するための方法に関する。本発明はまた、エストロゲン欠乏症状の補充処置におけるキラル化合物の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
卵巣切除(OVX)または閉経後または抗エストロゲン療法の女性におけるエストロゲン産生の減少は、数十年間にわたって生活の質に悪影響を与え得るエストロゲン欠乏症状につながる。1940年代から、エストロゲン補充療法(ERT)は、これらの症状を処置するために利用されている。
【0003】
エストロゲンは、哺乳動物の生殖および発生の間に多くの組織中でその受容体に結合して、RNA転写を調節し、細胞増殖を刺激し、代謝シグナル伝達をモジュレートする。エストロゲン結合タンパク質の3つの遺伝子が同定されており、これらの遺伝子は、エストロゲン受容体(ER)αおよびβ、ならびにGタンパク質共役型エストロゲン受容体1(GPER1)をコードする。ER-αおよびβは、類似の構造ドメインおよび機能ドメインを有し、これらのドメインは、活性化機能ドメイン1(AF-1)、DNA結合ドメイン(DBD)、二量体化ドメインおよび活性化機能ドメイン2(AF-2)(リガンド結合ドメイン(LBD)である)を含む。それらは両方とも、リガンド依存性転写因子の核スーパーファミリーに属し、高度に保存されたDBD領域およびLBD領域を有する。それらはリガンド結合の際にRNA転写を調節してリガンド-受容体複合体をもたらし、これが二量体化して核内に移動することができ、核内でエストロゲン応答遺伝子のプロモーター中に見いだされるエストロゲン応答エレメント(ERE)に結合する。このモジュレーションタイプは、典型的には、古典的エストロゲン経路と称される。ER-αおよびβはまた、膜開始エストロゲンシグナル伝達(MIES)を通じて多様な生物学的機能を調節し、そのリガンド結合ドメインとの相互作用により原形質膜と結合する。膜結合ERによるシグナル伝達の詳細な分子機構は依然として不明である。細胞増殖、マトリックス/遊走、代謝およびグルコースホメオスタシスに対する膜結合受容体により媒介されるエストロゲンのモジュレーション効果が概説されている(1、2)。さらに、ERノックアウトマウスに関する研究により、ER-αがER-βと比較して優位に機能するエストロゲン受容体であることが示されている。ER-αの3つの転写バリアント(66、46および36)が見出されている。ER-α36は、AF-1ドメインを欠き、部分的リガンド結合ドメインを含む。それは、細胞膜およびサイトゾルに局在することが見出されている。ER-α-36は、MIESをモジュレートすることが制限されており、タモキシフェン耐性がん細胞(MDA-MB-231およびHec1Aなど)中で固有に発現されることが見出されたので、膜結合ERによりモジュレートされたMIESは、ある研究者らにより見出された抗エストロゲン治療に対する抵抗性を担うと考えられる(3、4)。
【0004】
しかしながら、乳がんおよび子宮がんのリスクの増加ならびに血栓塞栓症の罹患率がERTに関連することを示す研究は、その使用の減少につながっている。エストロゲンおよびプロゲステロンの組み合わせ投与は、乳がんおよび子宮がんのリスクを予防するが、プロゲステロンの副作用、例えばめまい、吐き気、嘔吐、疲労、不安、うつ病および頭痛を引き起こす。閉経後症状は依然として、多くの高齢女性にとって問題である。したがって、エストロゲン欠乏症状の補充処置の新たな開発に関する継続的必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本出願は、一態様では、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を合成する方法を提供する。本明細書に記載される様々な実施形態によれば、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩は実質的に純粋である。
【0006】
別の態様では、個体におけるエストロゲン欠乏を処置するか、またはOVXもしくは閉経後症状を含むエストロゲン欠乏症状を予防もしくは軽減する方法であって、前記個体に、a)式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩の有効量;および必要に応じてb)選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよびアロマターゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンからなる群より選択される選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタンおよびファドロゾールからなる群より選択されるアロマターゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、エストロゲン欠乏症状は、高肝臓トリグリセリド、骨粗鬆症、外陰膣萎縮、高血中トリグリセリド、高血中グルコースおよび体重増加からなる群より選択される。
【0007】
いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩により、少なくとも1つのさらなる薬剤の副作用を軽減する方法であって、前記方法は、個体に、さらなる薬剤と組み合わせて、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤が選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよびアロマターゼ阻害剤からなる群より選択される方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はタモキシフェンである。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンからなる群より選択される選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタンおよびファドロゾールからなる群より選択されるアロマターゼ阻害剤である。
【0008】
いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は逐次投与される。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は同時投与される。
【0009】
いくつかの実施形態では、個体はヒトである。
【0010】
さらに別の態様では、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩と、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)およびアロマターゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる薬剤とを含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はタモキシフェンである。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、ラロキシフェンまたはその機能的同等物(例えば、ラロキシフェン、ラソフォキシフェンまたはバゼドキシフェンを含む)である。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、アロマターゼ阻害剤、例えばアナストロゾールまたはその機能的同等物である。
【0011】
いくつかの実施形態では、組成物中の式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩とさらなる薬物との重量比は、約1:20~約20:1(例えば、約10:1~約1:10または約1:10~約1:15を含む)である。
【0012】
本発明の医薬組成物は、単位剤形、例えば経口単位剤形、例えばカプセル、錠剤、丸薬、カプレット、ゲル、液体(例えば、懸濁液、溶液、エマルジョン)、粉末または他の粒子状物質などで存在し得る。
【0013】
また、本明細書に記載されるように、エストロゲン欠乏を処置するか、またはOVXもしくは閉経後症状を含むエストロゲン欠乏症状を予防もしくは軽減するために、本明細書に記載される医薬組成物を使用する方法が提供される。
【0014】
本発明のこれらのおよび他の態様および利点は、後述の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになる。本明細書に記載される様々な実施形態の特性の1つ、一部または全部を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成し得ることを理解すべきである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
式(I):
【化15】
の実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩を立体特異的に調製するための方法であって、式中、
R
1
は、-OH、-OC(O)-R
1a
または-OC(O)R
1b
COOHであり、R
4
は、-OH、-OC(O)-R
4a
または-OC(O)R
4b
COOHであり、ここで、R
1a
およびR
4a
は独立して、水素、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり、R
1b
およびR
4b
は独立して、-C
1
-C
6
アルキル-または-C
2
-C
6
アルケニル-であり;
R
2
およびR
5
は、-C≡CHであり;
R
6
およびR
7
は独立して、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり;
R
8
およびR
9
は独立して、水素、-OH、-NH
2
、-NO
3
、ハロゲン、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニル、C
3
-C
6
シクロアルキル、C
6
-C
14
アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルであり、前記方法は、(a)有機金属試薬R
10
-M(ここで、Mは、Li、NaまたはKであり、R
10
は、-OH、ハロゲンまたはC
1
-C
6
アルキルで必要に応じて置換されたC
1
-C
20
アルキルである)の存在下で、
式(II)
【化16】
のジケトン化合物を式(III)
【化17】
のシリルアセチレン(ここで、R
a
、R
b
およびR
c
は、水素、-OH、-OH、ハロゲンもしくはC
1
-C
6
アルキルで必要に応じて置換されたC
1
-C
20
アルキル、-OH、ハロゲンもしくはC
1
-C
6
アルキルで必要に応じて置換されたC
1
-C
6
アルコキシ、C
3
-C
6
シクロアルキル、C
6
-C
14
アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルからなる群より独立して選択される)と反応させることを含む、方法。
(項目2)
R
1
が、-OH、-OC(O)-R
1a
または-OC(O)R
1b
COOHであり、R
4
が、-OH、-OC(O)-R
4a
または-OC(O)R
4b
COOHであり、ここで、R
1a
およびR
4a
が独立して、水素、C
1
-C
6
アルキルまたはC
2
-C
6
アルケニルであり、R
1b
およびR
4b
が独立して、-C
1
-C
6
アルキル-または-C
2
-C
6
アルケニル-であり;
R
6
およびR
7
が独立して、C
1
-C
6
アルキルまたはC
2
-C
6
アルケニルであり;
R
8
およびR
9
が独立して、水素、-OH、-NH
2
、-NO
3
、C
1
-C
6
アルキルまたはC
2
-C
6
アルケニルである、項目1に記載の方法。
(項目3)
R
1
が-OC(O)-R
1a
であり、R
4
が-OC(O)-R
4a
であり、R
1a
およびR
4a
が両方ともエチルである、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
R
1
およびR
4
が両方とも-OHである、項目1または2に記載の方法。
(項目5)
R
1
が-OC(O)R
1b
COOHであり、R
4
が-OC(O)R
4b
COOHであり、R
1b
およびR
4b
が両方とも、-CH
2
-、-CH
2
CH
2
-および-CH=CH-.エチルから独立して選択される、項目1または2に記載の方法。
(項目6)
R
6
およびR
7
が両方ともメチルである、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
R
8
およびR
9
が独立して、水素またはC
1
-C
6
アルキルである、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
R
8
およびR
9
が両方とも水素である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
R
a
、R
b
およびR
c
が独立して、C
1
-C
6
アルキルである、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
R
a
、R
b
およびR
c
がメチルであり、前記シリルアセチレンがトリメチルシリルアセチレン(TMS)である、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
R
10
がC
1
-C
6
アルキルである、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
R
10
がn-ブチルである、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
MがLiである、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)が前記有機金属試薬と共に添加される、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
(b)式(IV)
【化18】
のシリル基を除去することをさらに含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記シリル基がトリメチルシリルである、項目15に記載の方法。
(項目17)
テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、フッ化水素酸およびフッ化カリウムからなる群より選択される脱保護剤と接触させることにより、前記除去工程が行われる、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化19】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、約98%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、約約99%以上、約99.5%以上または約99.9%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
個体におけるエストロゲン欠乏の処置の方法であって、前記個体に、式(I):
【化20】
の実質的に純粋なジアステレオマー化合物(式中、
R
1
は、-OH、-OC(O)-R
1a
または-OC(O)R
1b
COOHであり、R
4
は、-OH、-OC(O)-R
4a
または-OC(O)R
4b
COOHであり、ここで、R
1a
およびR
4a
は独立して、水素、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり、R
1b
およびR
4b
は独立して、-C
1
-C
6
アルキル-または-C
2
-C
6
アルケニル-であり;
R
2
およびR
5
は、-C≡CHであり;
R
6
およびR
7
は独立して、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり;
R
8
およびR
9
は独立して、水素、-OH、-NH
2
、-NO
3
、ハロゲン、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニル、C
3
-C
6
シクロアルキル、C
6
-C
14
アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルである)またはその塩の有効量を投与することを含む、方法。
(項目22)
個体におけるエストロゲン欠乏症状を予防または軽減する方法であって、前記個体に、式(I):
【化21】
の実質的に純粋なジアステレオマー化合物(式中、
R
1
は、-OH、-OC(O)-R
1a
または-OC(O)R
1b
COOHであり、R
4
は、-OH、-OC(O)-R
4a
または-OC(O)R
4b
COOHであり、ここで、R
1a
およびR
4a
は独立して、水素、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり、R
1b
およびR
4b
は独立して、-C
1
-C
6
アルキル-または-C
2
-C
6
アルケニル-であり;
R
2
およびR
5
は、-C≡CHであり;
R
6
およびR
7
は独立して、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり;
R
8
およびR
9
は独立して、水素、-OH、-NH
2
、-NO
3
、ハロゲン、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニル、C
3
-C
6
シクロアルキル、C
6
-C
14
アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルである)またはその塩の有効量を投与することを含む、方法。
(項目23)
エストロゲン欠乏症状が、高肝臓トリグリセリド、骨粗鬆症、外陰膣萎縮、高血中トリグリセリド、高血中グルコースおよび体重増加からなる群より選択される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記個体に少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することをさらに含む、項目22に記載の方法であって、前記さらなる薬剤が、選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよびアロマターゼ阻害剤からなる群より選択される、方法。
(項目25)
前記さらなる薬剤がタモキシフェンである、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記さらなる薬剤が、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンからなる群より選択される、項目24に記載の方法。
(項目27)
エストロゲン欠乏症状が、高肝臓トリグリセリド、骨粗鬆症、外陰膣萎縮、高血中トリグリセリド、高血中グルコースおよび体重増加からなる群より選択される、項目24~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
式(I)の前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩および前記さらなる薬剤を逐次投与する、項目24~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
式(I)の前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩および前記さらなる薬剤を同時投与する、項目24~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
個体における少なくとも1つのさらなる薬剤の副作用を軽減する方法であって、前記方法が、前記個体に、前記さらなる薬剤と組み合わせて式(I):
【化22】
の実質的に純粋なジアステレオマー化合物(式中、
R
1
は、-OH、-OC(O)-R
1a
または-OC(O)R
1b
COOHであり、R
4
は、-OH、-OC(O)-R
4a
または-OC(O)R
4b
COOHであり、ここで、R
1a
およびR
4a
は独立して、水素、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり、R
1b
およびR
4b
は独立して、-C
1
-C
6
アルキル-または-C
2
-C
6
アルケニル-であり;
R
2
およびR
5
は、-C≡CHであり;
R
6
およびR
7
は独立して、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり;
R
8
およびR
9
は独立して、水素、-OH、-NH
2
、-NO
3
、ハロゲン、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニル、C
3
-C
6
シクロアルキル、C
6
-C
14
アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルである)またはその塩の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤が、選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよびアロマターゼ阻害剤からなる群より選択される、方法。
(項目31)
前記さらなる薬剤がタモキシフェンである、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記個体がヒトである、項目21~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
R
1
が、-OH、-OC(O)-R
1a
または-OC(O)R
1b
COOHであり、R
4
が、-OH、-OC(O)-R
4a
または-OC(O)R
4b
COOHであり、ここで、R
1a
およびR
4a
が独立して、水素、C
1
-C
6
アルキルまたはC
2
-C
6
アルケニルであり、R
1b
およびR
4b
が独立して、-C
1
-C
6
アルキル-または-C
2
-C
6
アルケニル-であり;
R
6
およびR
7
が独立して、C
1
-C
6
アルキルまたはC
2
-C
6
アルケニルであり;
R
8
およびR
9
が独立して、水素、-OH、-NH
2
、-NO
3
、C
1
-C
6
アルキルまたはC
2
-C
6
アルケニルである、項目21~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
R
1
が-OC(O)-R
1a
であり、R
4
が-OC(O)-R
4a
であり、R
1a
およびR
4a
が両方ともエチルである、項目21~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
R
1
およびR
4
が両方とも-OHである、項目21~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
R
1
が-OC(O)R
1b
COOHであり、R
4
が-OC(O)R
4b
COOHであり、R
1b
およびR
4b
が両方とも、-CH
2
-、-CH
2
CH
2
-および-CH=CH-から独立して選択される、項目21~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
R
6
およびR
7
が両方ともメチルである、項目21~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
R
8
およびR
9
が独立して、水素またはC
1
-C
6
アルキルである、項目21~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
R
8
およびR
9
が両方とも水素である、項目21~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化23】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目21~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、約98%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、項目21~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、約99%以上、約99.5%以上または約99.9%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、項目21~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
式(I):
【化24】
の実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩を含む医薬組成物であって、式中、
R
1
は、-OHまたは-OC(O)-R
1a
であり、R
4
は、-OHまたは-OC(O)-R
4a
であり、ここで、R
1a
およびR
4a
は独立して、水素、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり;R
2
およびR
5
は、-C≡CHであり;
R
6
およびR
7
は独立して、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニルまたはC
3
-C
6
シクロアルキルであり;
R
8
およびR
9
は独立して、水素、-OH、-NH
2
、-NO
3
、ハロゲン、C
1
-C
6
アルキル、C
2
-C
6
アルケニル、C
2
-C
6
アルキニル、C
3
-C
6
シクロアルキル、C
6
-C
14
アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルである、医薬組成物。
(項目44)
少なくとも1つのさらなる薬剤をさらに含む項目43に記載の医薬組成物であって、前記さらなる薬剤が、選択的エストロゲン受容体モジュレーターおよびアロマターゼ阻害剤からなる群より選択される、医薬組成物。
(項目45)
前記さらなる薬剤がタモキシフェンである、項目44に記載の医薬組成物。
(項目46)
前記さらなる薬剤が、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンからなる群より選択される、項目44に記載の医薬組成物。
(項目47)
前記さらなる薬剤がアロマターゼ阻害剤である、項目44に記載の医薬組成物。
(項目48)
前記アロマターゼ阻害剤がアナストロゾールである、項目47に記載の医薬組成物。
(項目49)
前記アロマターゼ阻害剤が、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタンおよびファドロゾールからなる群より選択される、項目47に記載の医薬組成物。
(項目50)
前記組成物中の式(I)の前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩と前記さらなる薬剤との重量比が約20:1~約1:20である、項目44~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目51)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化25】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目44~50のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目52)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、約98%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、項目43~51のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目53)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、約99%以上、約99.5%以上または約99.9%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、項目43~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目54)
前記エストロゲン欠乏症状が高肝臓トリグリセリドであり、前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化26】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目22に記載の方法。
(項目55)
前記エストロゲン欠乏症状が高血中トリグリセリドであり、前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化27】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目22に記載の方法。
(項目56)
前記エストロゲン欠乏症状が骨粗鬆症であり、前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化28】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目22に記載の方法。
(項目57)
前記エストロゲン欠乏症状が外陰膣萎縮であり、前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化29】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目22に記載の方法。
(項目58)
前記エストロゲン欠乏症状が高血中グルコースであり、前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化30】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目22に記載の方法。
(項目59)
前記エストロゲン欠乏症状が体重増加であり、前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、式(Ia)
【化31】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目22に記載の方法。
(項目60)
前記さらなる薬剤がタモキシフェンであり、前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、タモキシフェンと組み合わせた式(Ia)
【化32】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目30に記載の方法。
(項目61)
前記さらなる薬剤がアロマターゼ阻害剤であり、前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、前記アロマターゼ阻害剤と組み合わせた式(Ia)
【化33】
の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)である、項目30に記載の方法。
(項目62)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、約98%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、項目54~61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記実質的に純粋なジアステレオマー化合物が、約99%以上、約99.5%以上または約99.9%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する、項目54~62のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】シリカゲルを使用したα-アノルドリンおよびβ-アノルドリンの分離。(
図1A)合成方法Iの生成物からのα-アノルドリン(画分1(F1))およびβ-アノルドリン(画分2(F2))の分離。(
図1B)α-アノルドリン(画分1(F1))のみが合成方法IIの生成物中にある。
【0016】
【
図2A】(
図2A)α-アノルドリン((2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン)および(
図2B)β-アノルドリン((2β,17α)-ジエチニル-(2α,17β)ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン)のNMR分析。
【
図2B】(
図2A)α-アノルドリン((2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン)および(
図2B)β-アノルドリン((2β,17α)-ジエチニル-(2α,17β)ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン)のNMR分析。
【0017】
【
図3A】低投与量のα-アノルドリン(α-ANO)は、偽群と比較して、OVX雌マウスの子宮萎縮を予防しなかった。(
図3A)薬物で3か月間処置したマウス子宮のパラフィン包埋H&E切片(倍率20倍)。(
図3B)(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、マウス子宮の湿重量の統計分析。N=12。(
図3C、
図3Dおよび
図3E)それぞれ、(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、EECのマウス子宮の高さ(μm)(
図3Cに示されている)、直径(mm)(
図3Dに示されている)および環状筋の厚さ(μm)(
図3Eに示されている)の統計分析。N=12。
【
図3B】低投与量のα-アノルドリン(α-ANO)は、偽群と比較して、OVX雌マウスの子宮萎縮を予防しなかった。(
図3A)薬物で3か月間処置したマウス子宮のパラフィン包埋H&E切片(倍率20倍)。(
図3B)(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、マウス子宮の湿重量の統計分析。N=12。(
図3C、
図3Dおよび
図3E)それぞれ、(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、EECのマウス子宮の高さ(μm)(
図3Cに示されている)、直径(mm)(
図3Dに示されている)および環状筋の厚さ(μm)(
図3Eに示されている)の統計分析。N=12。
【
図3C】低投与量のα-アノルドリン(α-ANO)は、偽群と比較して、OVX雌マウスの子宮萎縮を予防しなかった。(
図3A)薬物で3か月間処置したマウス子宮のパラフィン包埋H&E切片(倍率20倍)。(
図3B)(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、マウス子宮の湿重量の統計分析。N=12。(
図3C、
図3Dおよび
図3E)それぞれ、(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、EECのマウス子宮の高さ(μm)(
図3Cに示されている)、直径(mm)(
図3Dに示されている)および環状筋の厚さ(μm)(
図3Eに示されている)の統計分析。N=12。
【
図3D】低投与量のα-アノルドリン(α-ANO)は、偽群と比較して、OVX雌マウスの子宮萎縮を予防しなかった。(
図3A)薬物で3か月間処置したマウス子宮のパラフィン包埋H&E切片(倍率20倍)。(
図3B)(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、マウス子宮の湿重量の統計分析。N=12。(
図3C、
図3Dおよび
図3E)それぞれ、(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、EECのマウス子宮の高さ(μm)(
図3Cに示されている)、直径(mm)(
図3Dに示されている)および環状筋の厚さ(μm)(
図3Eに示されている)の統計分析。N=12。
【
図3E】低投与量のα-アノルドリン(α-ANO)は、偽群と比較して、OVX雌マウスの子宮萎縮を予防しなかった。(
図3A)薬物で3か月間処置したマウス子宮のパラフィン包埋H&E切片(倍率20倍)。(
図3B)(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、マウス子宮の湿重量の統計分析。N=12。(
図3C、
図3Dおよび
図3E)それぞれ、(
図3A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、EECのマウス子宮の高さ(μm)(
図3Cに示されている)、直径(mm)(
図3Dに示されている)および環状筋の厚さ(μm)(
図3Eに示されている)の統計分析。N=12。
【0018】
【
図4A】α-アノルドリン(α-ANO)は、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリン(β-ANO)と比較して、外陰膣萎縮を予防する投与量依存的活性を示す。(
図4A)薬物で3か月間処置したマウス膣のパラフィン包埋H&E切片(倍率20倍)。(
図4Bおよび
図4C)(
図4A)のようにそれぞれH&E染色切片から測定した場合の、それぞれマウス子宮の湿重量(mg)(
図4Bに示されている)および外陰膣壁の厚さ(μm)(
図4Cに示されている)の統計分析。N=12。
【
図4B】α-アノルドリン(α-ANO)は、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリン(β-ANO)と比較して、外陰膣萎縮を予防する投与量依存的活性を示す。(
図4A)薬物で3か月間処置したマウス膣のパラフィン包埋H&E切片(倍率20倍)。(
図4Bおよび
図4C)(
図4A)のようにそれぞれH&E染色切片から測定した場合の、それぞれマウス子宮の湿重量(mg)(
図4Bに示されている)および外陰膣壁の厚さ(μm)(
図4Cに示されている)の統計分析。N=12。
【
図4C】α-アノルドリン(α-ANO)は、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリン(β-ANO)と比較して、外陰膣萎縮を予防する投与量依存的活性を示す。(
図4A)薬物で3か月間処置したマウス膣のパラフィン包埋H&E切片(倍率20倍)。(
図4Bおよび
図4C)(
図4A)のようにそれぞれH&E染色切片から測定した場合の、それぞれマウス子宮の湿重量(mg)(
図4Bに示されている)および外陰膣壁の厚さ(μm)(
図4Cに示されている)の統計分析。N=12。
【0019】
【
図5A】α-アノルドリンは、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリンと比較して、血中グルコース、TGの量および体重を減少させる投与量依存的活性を示す。(
図5A)血中グルコース(上パネル)およびトリグリセリド(TG)(下パネル)の量の統計分析。N=12。(
図5B)薬物投与後のマウスの体重(g)の統計分析。N=12。(
図5C)マウスの初期体重(g)の統計分析。N=12。NSは、有意差がないことを意味する。(
図5D)マウスによる毎日の食物摂取。N=12。NSは、有意差がないことを意味する。
【
図5B】α-アノルドリンは、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリンと比較して、血中グルコース、TGの量および体重を減少させる投与量依存的活性を示す。(
図5A)血中グルコース(上パネル)およびトリグリセリド(TG)(下パネル)の量の統計分析。N=12。(
図5B)薬物投与後のマウスの体重(g)の統計分析。N=12。(
図5C)マウスの初期体重(g)の統計分析。N=12。NSは、有意差がないことを意味する。(
図5D)マウスによる毎日の食物摂取。N=12。NSは、有意差がないことを意味する。
【
図5C】α-アノルドリンは、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリンと比較して、血中グルコース、TGの量および体重を減少させる投与量依存的活性を示す。(
図5A)血中グルコース(上パネル)およびトリグリセリド(TG)(下パネル)の量の統計分析。N=12。(
図5B)薬物投与後のマウスの体重(g)の統計分析。N=12。(
図5C)マウスの初期体重(g)の統計分析。N=12。NSは、有意差がないことを意味する。(
図5D)マウスによる毎日の食物摂取。N=12。NSは、有意差がないことを意味する。
【
図5D】α-アノルドリンは、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリンと比較して、血中グルコース、TGの量および体重を減少させる投与量依存的活性を示す。(
図5A)血中グルコース(上パネル)およびトリグリセリド(TG)(下パネル)の量の統計分析。N=12。(
図5B)薬物投与後のマウスの体重(g)の統計分析。N=12。(
図5C)マウスの初期体重(g)の統計分析。N=12。NSは、有意差がないことを意味する。(
図5D)マウスによる毎日の食物摂取。N=12。NSは、有意差がないことを意味する。
【0020】
【
図6】α-アノルドリン(α-ANO)は、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリン(β-ANO)と比較して、肝臓におけるTG蓄積を予防する投与量依存的活性を示す。(
図6A)薬物で4週間処置したマウス肝臓のパラフィン包埋H&E切片(倍率10倍)。(
図6B)(
図6A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、マウス肝臓におけるTG量(mg/g)の統計分析。N=12。
【0021】
【
図7】マイクロCT結果は、α-アノルドリンが、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリンと比較して、骨粗鬆症を予防するのにより高い活性であることを示す。(
図7A)α-アノルドリンは、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリンと比較して、骨平均密度(BMD)の喪失を予防する、より高い活性を示す。N=12。(
図7B)α-アノルドリンは、OVX雌マウスにおいて、β-アノルドリンと比較して、骨量(BV)/骨梁量(TV)(BV/TV)の比の減少を予防する、より高い活性を示す。N=12。
【0022】
【
図8A】α-アノルドリンは、タモキシフェン誘発性子宮EEC有糸分裂を阻害する。TAMまたはa-ANOまたはb-ANO:マウスをタモキシフェン(TAM)またはα-アノルドリン(a-ANO)またはβ-アノルドリン(b-ANO)のみで処置した。TAM+a-ANOまたはTAM+b-ANOマウスを、それぞれタモキシフェンおよびα-アノルドリンまたはβ-アノルドリンの組み合わせで処置した。ブランクマウスをビヒクルで処置した。(
図8A)薬物で6か月間処置したマウス子宮由来のEECのパラフィン包埋H&E切片(倍率200倍)。(
図8B)(A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、EECの高さ(μm)の統計分析。N=6。**はP<0.01を意味する。
【
図8B】α-アノルドリンは、タモキシフェン誘発性子宮EEC有糸分裂を阻害する。TAMまたはa-ANOまたはb-ANO:マウスをタモキシフェン(TAM)またはα-アノルドリン(a-ANO)またはβ-アノルドリン(b-ANO)のみで処置した。TAM+a-ANOまたはTAM+b-ANOマウスを、それぞれタモキシフェンおよびα-アノルドリンまたはβ-アノルドリンの組み合わせで処置した。ブランクマウスをビヒクルで処置した。(
図8A)薬物で6か月間処置したマウス子宮由来のEECのパラフィン包埋H&E切片(倍率200倍)。(
図8B)(A)のようにH&E染色切片から測定した場合の、EECの高さ(μm)の統計分析。N=6。**はP<0.01を意味する。
【0023】
【
図9】α-アノルドリンは、タモキシフェン誘発性NASHを阻害する。TAMまたはa-ANOまたはb-ANO:マウスをタモキシフェン(TAM)またはα-アノルドリン(a-ANO)またはβ-アノルドリン(b-ANO)のみで処置した。TAM+a-ANOまたはTAM+b-ANOマウスを、それぞれタモキシフェンおよびα-アノルドリンまたはβ-アノルドリンの組み合わせで処置した。ブランクマウスをビヒクルで処置した。(
図9A)薬物で処置した正常マウス肝臓のパラフィン包埋H&E切片(倍率40倍)。(
図9B)(A)のように、肝臓トリグリセリド(TG)含有量の統計分析;N=6;*および**はそれぞれP<0.05およびP<0.01を意味する。
【0024】
【
図10】マイクロCT結果は、α-アノルドリンが骨のアナストロゾール誘発性骨粗鬆症を抑制することを示す。ANA:マウスをアナストロゾール(ANA)のみで処置した。ANA+a-ANOまたはANA+b-ANO:マウスを、それぞれ、アナストロゾールと等量のα-アノルドリンまたはβ-アノルドリンとの組み合わせで処置した。ブランクマウスをビヒクルで処置した。(
図10A)α-アノルドリンは、骨平均密度(BMD)のアナストロゾール誘発性喪失を抑制する。N=6。**はP<0.01を示す。(
図10B)α-アノルドリンは、骨量(BV)/骨梁量(TV)(BV/TV)の比のアナストロゾール誘発性減少を抑制する。N=6。**はP<0.01を示す。(
図10C)α-アノルドリンは、骨梁数(Tb.N)のアナストロゾール誘発性減少を抑制する。N=6。**はP<0.01を示す。
【0025】
【
図11】α-アノルドリンは、アナストロゾール誘発性膣萎縮を抑制する。ANA:マウスをアナストロゾール(ANA)のみで処置した。ANA+a-ANOまたはANA+b-ANO:マウスを、それぞれ、アナストロゾールと等量のα-アノルドリンまたはβ-アノルドリンとの組み合わせで処置した。ブランクマウスをビヒクルで処置した。(
図11A)薬物で処置した正常マウス膣のパラフィン包埋H&E切片(倍率40倍)。(
図11Bおよび
図11C)(
図11A)のように、それぞれ外陰膣の湿重量(mg)(
図11Bに示されている)および環状筋の厚さ(μm)(
図11Cに示されている)の統計分析(
図11A);N=6。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本出願は、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を合成する方法を提供する。また、個体におけるエストロゲン欠乏の処置、またはOVXもしくは閉経後症状を含むエストロゲン欠乏症状の予防もしくは軽減における、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩の使用が提供される。加えて、エストロゲン欠乏の処置、副作用の軽減、またはOVXもしくは閉経後症状を含むOVXもしくは閉経後症状を含むエストロゲン欠乏症状、例えば高肝臓トリグリセリド、骨粗鬆症、外陰膣萎縮、高血中トリグリセリド、高血中グルコースおよび体重増加の予防もしくは軽減のためにさらなる薬剤と併せて式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を投与することを含む併用療法のための組成物が提供される。
【0027】
本発明は、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩のユニークな特性および作用機構の発見に基づく。本出願では、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩は、他の式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、β-アノルドリン)またはその塩と比較して、膜結合エストロゲン結合タンパク質のより活性な選択的エストロゲン受容体モジュレーターであることが認識された。式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩の有益な効果としては、i)OVXもしくは閉経後症状を含むエストロゲン欠乏症状、例えば高肝臓トリグリセリド、骨粗鬆症、外陰膣萎縮、高血中トリグリセリド、高血中グルコースおよび体重増加の予防または軽減につながるアゴニストとしてのエストロゲン代謝効果のモジュレーション、ii)タモキシフェンおよびアナストロゾールなどの薬物による有害効果(骨粗鬆症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、臓器萎縮および子宮内膜がんが挙げられる)の中和が挙げられ得る。
定義
【0028】
当業者が認識するように、立体化学において、それらの原子の空間的配置のみが異なる2つまたはそれより多くの化合物はそれぞれ、ジアステレオマーとみなされる。
【0029】
一態様では、本出願の方法により調製される化合物またはその塩は、実質的に純粋なジアステレオマーであり得る。本明細書に詳述される化合物またはその塩を含む組成物、例えば実質的に純粋なジアステレオマー化合物を含む組成物が提供される。「実質的に純粋なジアステレオマー」は、わずかな量の不純物を含有する化合物を意図し、不純物は、特定のジアステレオマー化合物以外のジアステレオマーを意味する。いくつかの実施形態では、ジアステレオマーまたはその塩の割合が約98%以上である実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩が提供される。本出願によれば、割合は、約99%、約99.5%または約99.9%以上であり得る。
【0030】
本明細書に記載される併用療法の方法は、さらなる薬剤と併せて1つの薬剤または組成物を投与することを必要とすると当業者により理解されるはずである。「と併せて」は、別の処置モダリティに加えて、一つの処置モダリティを投与すること、例えば、同じ個体への第2の薬剤の投与に加えて式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を投与することを指す。したがって、「と併せて」は、個体への他の処置モダリティの送達の前に、その間にまたはその後に、一つの処置モダリティを投与することを指す。
【0031】
本明細書に記載される方法は、一般に、疾患の処置に有用である。本明細書で使用される場合、「処置」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。増殖性疾患の病理学的結果の軽減もまた、「処置」に包含される。本発明の方法は、処置のこれらの態様のいずれか1つまたはそれよりも多くを企図する。
【0032】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、特定の障害、状態または疾患を処置する、例えばその症状の1つまたはそれよりも多くを改善し、緩和し、軽減し、そして/または遅延させるために十分な化合物または組成物の量を指す。がんに関して、有効量は、腫瘍の縮小および/もしくは腫瘍の成長速度の減少(例えば、腫瘍成長を抑える)を引き起こすために、または他の望ましくない細胞増殖を予防するもしくは遅延させるために十分な量を含む。
【0033】
「個体」という用語は、ヒトを含む哺乳動物である。個体としては、限定されないが、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類または霊長類が挙げられる。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は動物である。
【0034】
本出願で使用される場合、「アルキル」は、直鎖または分枝鎖状飽和炭化水素を指す。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~20個の炭素原子を有するものである(「C1-C20アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~12個の炭素原子(すなわち、(C1-C12アルキル))、または1~10個の炭素原子(すなわち、(C1-C10アルキル))、または1~8個の炭素原子(すなわち、(C1-C8アルキル))、または1~6個の炭素原子(すなわち、(C1-C6アルキル))、または1~4個の炭素原子(すなわち、(C1-C4アルキル))を有する。適切なアルキル基の例としては、限定されないが、メチル(Me、-CH3)、エチル(Et、-CH2CH3)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチル(n-Bu、n-ブチル、-CH2CH2CH2CH3)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu、i-ブチル、-CH2CH(CH3)2)、2-ブチル(s-Bu、s-ブチル、-CH(CH3)CH2CH3)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu、t-ブチル、-C(CH3)3)、1-ペンチル(n-ペンチル、-CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH2CH3)、3-ペンチル(-CH(CH2CH3)2)、2-メチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH2CH3)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH3)CH(CH3)2)、3-メチル-1-ブチル(-CH2CH2CH(CH3)2)、2-メチル-1-ブチル(-CH2CH(CH3)CH2CH3)、1-ヘキシル(-CH2CH2CH2CH2CH2CH3)、2-ヘキシル(-CH(CH3)CH2CH2CH2CH3)、3-ヘキシル(-CH(CH2CH3)(CH2CH2CH3))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CH3)2CH2CH2CH3)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH3)CH2CH(CH3)2)、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH3)(CH2CH3)2)、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CH2CH3)CH(CH3)2)、2,3-ジメチル-2-ブチル(-C(CH3)2CH(CH3)2)、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH3)C(CH3)3およびオクチル(-(CH2)7CH3)が挙げられる。
【0035】
「-アルキル-」は、上記アルキルに由来する二価ラジカルを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、-アルキル-は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも5個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子;少なくとも12個の炭素原子;少なくとも20個の炭素原子;もしくは少なくとも40個の炭素原子;または1~40個の炭素原子、1~30個の炭素原子、1~25個の炭素原子、1~20個の炭素原子、5~20個の炭素原子、12~20個の炭素原子もしくは14~18個の炭素原子を有する。-アルキル-の例としては、限定されないが、例えば、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)などの基が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖状炭化水素を指す。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、2~12個の炭素原子(すなわち、C2-C12アルケニル)、または2~10個の炭素原子(すなわち、C2-C10アルケニル)、または2~8個の炭素原子(すなわち、C2-C8アルケニル)、または2~6個の炭素原子(すなわち、C2-C6アルケニル)、または2~4個の炭素原子(すなわち、C2-C4アルケニル)を有する。適切なアルケニル基の例としては、限定されないが、エチレンまたはビニル(-CH=CH2)、アリル(-CH2CH=CH2)および5-ヘキセニル(-CH2CH2CH2CH2CH=CH2)が挙げられる。
【0037】
「-アルケニル-」は、上記アルケニルに由来する二価ラジカルを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、-アルケニル-は、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも5個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも10個の炭素原子;少なくとも12個の炭素原子;少なくとも20個の炭素原子;もしくは少なくとも40個の炭素原子;または1~40個の炭素原子、1~30個の炭素原子、1~25個の炭素原子、1~20個の炭素原子、5~20個の炭素原子、12~20個の炭素原子もしくは14~18個の炭素原子を有する。例として、-アルケニル-は、-CH=CH-であり得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」は、少なくとも1つのアセチレン性不飽和部位を有する(すなわち、式C≡Cの少なくとも1つの部分を有する)不飽和直鎖または分枝鎖状一価炭化水素鎖またはその組み合わせを指す。アルキニル基は、指定された数の炭素原子を有し得る(すなわち、C2-C20は、2~20個の炭素原子を意味する)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、2~12個の炭素原子(すなわち、「C2-C12アルキニル」)を有する、2~10個の炭素原子(すなわち、「C2-C10アルキニル」)を有する、2~8個の炭素原子(すなわち、「C2-C8アルキニル」)を有する、2~6個の炭素原子(すなわち、「C2-C6アルキニル」)を有する、または2~4個の炭素原子(すなわち、「C2-C4アルキニル」)を有するものである。アルキニルの例としては、限定されないが、例えば、エチニル(またはアセチレニル)、プロパ-1-イニル、プロパ-2-イニル(またはプロパルギル)、ブタ-1-イニル、ブタ-2-イニル、ブタ-3-イニルなどの基、それらのホモログおよび異性体などが挙げられる。
【0039】
「アリール」という用語は、多価不飽和芳香族炭化水素基を指し、それを含む。アリールは、さらに縮合されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび/またはヘテロシクリル環を含むさらなる縮合環(例えば、1~3個の環)を含有し得る。一変形形態では、アリール基は、6~14個の環炭素原子を含有する。アリール基の例としては、限定されないが、フェニル、ナフチル、ビフェニルなどが挙げられる。
【0040】
「シクロアルキル」という用語は、完全飽和、一不飽和または多不飽和であり得るが非芳香族であり、指定された数の炭素原子(例えば、C1-C10は、1~10個の炭素を意味する)を有する環状一価炭化水素構造を指し、それを含む。シクロアルキルは、シクロヘキシルなどの1個の環、またはアダマンチルなどの複数の環からなり得るが、アリール基を除く。1個を超える環を含むシクロアルキルは、縮合、スピロまたは架橋またはそれらの組み合わせであり得る。好ましいシクロアルキルは、3~13個の環炭素原子を有する環状炭化水素である。より好ましいシクロアルキルは、3~8個の環炭素原子を有する環状炭化水素である(「C3-C8シクロアルキル」)。シクロアルキルの例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチル、ノルボルニルなどが挙げられる。
【0041】
「ハロ」または「ハロゲン」は、原子番号9~85を有する17族の元素を指す。好ましいハロ基としては、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードが挙げられる。残基が1つを超えるハロゲンで置換される場合、それは、結合したハロゲン部分の数に対応する接頭辞を使用することにより称され得る。例えば、ジハロアリール、ジハロアルキル、トリハロアリールなどは、2つ(「ジ」)または3つ(「トリ」)のハロ基(これらは、必ずしも同じハロではなくてもよい)で置換されたアリールおよびアルキルを指す;したがって、4-クロロ-3-フルオロフェニルは、ジハロアリールの範囲内である。各水素がハロ基で置き換えられたアルキル基は、「ペルハロアルキル」と称される。好ましいペルハロアルキル基は、トリフルオロアルキル(-CF3)である。同様に、「ペルハロアルコキシ」は、アルコキシ基のアルキル部分を構成する炭化水素中の各Hがハロゲンに取って代わられたアルコキシ基を指す。ペルハロアルコキシ基の例は、トリフルオロメトキシ(-OCF3)である。
【0042】
「ヘテロアリール」という用語は、1~10個の環炭素原子と、限定されないが窒素、酸素および硫黄などのヘテロ原子を含む少なくとも1個の環ヘテロ原子とを有する不飽和芳香族環式基を指し、それを含み、ここで、窒素および硫黄原子は必要に応じて酸化され、窒素原子は必要に応じて四級化される。ヘテロアリール基は、環炭素または環ヘテロ原子において分子の残部に結合され得る。ヘテロアリールは、さらに縮合されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび/またはヘテロシクリル環を含むさらなる縮合環(例えば、1~3個の環)を含有し得る。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピリジル、ピリミジル、チオフェニル、フラニル、チアゾリルなどが挙げられる。
【0043】
「複素環」または「ヘテロシクリル」という用語は、1~10個の環炭素原子と、例えば窒素、硫黄または酸素などの1~4個の環ヘテロ原子とを有する飽和または不飽和非芳香族基を指し、ここで、窒素および硫黄原子は必要に応じて酸化され、窒素原子は必要に応じて四級化される。ヘテロシクリル基は、単環または複数の縮合環を有し得るが、ヘテロアリール基を除く。1個を超える環を含む複素環は、縮合、スピロまたは架橋またはそれらの任意の組み合わせであり得る。縮合環系では、縮合環の1個またはそれよりも多くは、アリールまたはヘテロアリールであり得る。ヘテロシクリル基の例としては、限定されないが、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、2,3-ジヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イルなどが挙げられる。
【0044】
特に指定がない限り、「必要に応じて置換された」は、基が置換されていなくてもよく、その基について列挙されている置換基の1つまたはそれよりも多く(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つ)で置換されていてもよいことを意味し、置換基は、同じものまたは異なるものであり得る。一実施形態では、必要に応じて置換された基は、1つの置換基を有する。別の実施形態では、必要に応じて置換された基は、2つの置換基を有する。別の実施形態では、必要に応じて置換される基は、3つの置換基を有する。別の実施形態では、必要に応じて置換された基は、4つの置換基を有する。いくつかの実施形態では、必要に応じて置換された基は、1~2つ、2~5つ、3~5つ、2~3つ、2~4つ、3~4つ、1~3つ、1~4つまたは1~5つの置換基を有する。
【0045】
「薬学的に許容され得る担体」は、活性成分以外の医薬製剤中の成分であって、被験体に対して非毒性である成分を指す。薬学的に許容され得る担体としては、限定されないが、緩衝液、賦形剤、安定剤または保存剤が挙げられる。
【0046】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、「からなる」および/または「から本質的になる」の態様および実施形態を含むと理解される。
【0047】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象にする変動を含む(およびそれを説明する)。例えば、「約X」に関する記載は、「X」の記載を含む。
【0048】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「or」および「the」という単数形は、文脈上特に明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
化合物および合成
【0049】
本開示は、記載されている化合物の特定の立体化学形態を含む。立体化学では、それらの原子の空間的配置のみが異なる2つまたはそれより多くの化合物はそれぞれ、ジアステレオマーとみなされる。本明細書に詳述されるジアステレオマー化合物は、実質的に純粋であり得る。
【0050】
一般に言えば、化合物の特定の異性体を得るために、クロマトグラフィー、再結晶および他の従来の分離手順が、中間体または最終生成物と共に使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に詳述されるジアステレオマー化合物は、ジアステレオマーの混合物からジアステレオマー化合物が分離される分割により調製され得る。他の実施形態では、ジアステレオマー化合物は、実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩が得られる不斉合成により調製される。
【0051】
いくつかの態様では、本開示は、実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩をもたらす不斉合成を記載する。実質的に純粋なジアステレオマー形態の化合物またはその塩を調製する方法が本明細書で提供される。
【0052】
本発明によれば、化合物は、本明細書に詳述されるステロイド様化合物である。例えば、アノルドリンは、ステロイド様エストロゲンである。いくつかの実施形態では、ジアステレオマー化合物は、α-アノルドリン、(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン)である。
【0053】
いくつかの実施形態では、ジアステレオマー化合物は、式(I)の構造:
【化1】
(式中、
R
1は、-OH、-OC(O)-R
1aまたは-OC(O)R
1bCOOHであり、R
4は、-OH、-OC(O)-R
4aまたは-OC(O)R
4bCOOHであり、ここで、R
1aおよびR
4aは独立して、水素、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニルまたはC
3-C
6シクロアルキルであり、R
1bおよびR
4bは独立して、-C
1-C
6アルキル-または-C
2-C
6アルケニル-であり;
R
2およびR
5は、-C≡CHであり;
R
6およびR
7は独立して、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニルまたはC
3-C
6シクロアルキルであり;
R
8およびR
9は独立して、水素、-OH、-NH
2、-NO
3、ハロゲン、C
1-C
6アルキル、C
2-C
6アルケニル、C
2-C
6アルキニル、C
3-C
6シクロアルキル、C
6-C
14アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルである)またはその塩を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、R1はヒドロキシルである。
【0055】
いくつかの実施形態では、R1は-OC(O)R1aであり、ここで、R1aはC1-C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R1aはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチルである。いくつかの実施形態では、R1aはC1-C3アルキルまたはC1-C2アルキルである。いくつかの実施形態では、R1aはエチルである。
【0056】
いくつかの実施形態では、R1は-OC(O)R1bCOOHであり、ここで、R1bは-C1-C6アルキル-である。いくつかの実施形態では、R1は-OC(O)R1bCOOHであり、ここで、R1bは-C2-C6アルケニル-である。いくつかの実施形態では、R1は-OC(O)R1bCOOHであり、ここで、R1bはメチレン(すなわち、-CH2-)であり、R1は-OC(O)CH2COOHである。塩形態のいくつかの例として、特定の実施形態では、R1は-OC(O)CH2COOLi、-OC(O)CH2COONaまたは-OC(O)CH2COOKである。いくつかの実施形態では、R1は-OC(O)R1bCOOHであり、ここで、R1bはエチレン(すなわち、-CH2CH2-)であり、R1は-OC(O)CH2CH2COOHである。特定の実施形態では、R1は-OC(O)CH2CH2COOLi、-OC(O)CH2CH2COONaまたは-OC(O)CH2CH2COOKである。いくつかの実施形態では、R1は-OC(O)R1bCOOHであり、ここで、R1bは-CH=CH-であり、R1は-OC(O)CH=CHCOOHである。特定の実施形態では、R1は-OC(O)CH=CHCOOLi、-OC(O)CH=CHCOONaまたは-OC(O)CH=CHCOOKである。
【0057】
いくつかの実施形態では、R4はヒドロキシルである。
【0058】
いくつかの実施形態では、R4は-OC(O)R4aであり、ここで、R4aはC1-C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R4aはC1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチルである。いくつかの実施形態では、R4aはC1-C3アルキルまたはC1-C2アルキルである。いくつかの実施形態では、R4aはエチルである。
【0059】
いくつかの実施形態では、R4は-OC(O)R4bCOOHであり、ここで、R4bは-C1-C6アルキル-である。いくつかの実施形態では、R4は-OC(O)R4bCOOHであり、ここで、R4bは-C2-C6アルケニル-である。いくつかの実施形態では、R4は-OC(O)R4bCOOHであり、ここで、R4bはメチレン(すなわち、-CH2-)であり、R4は-OC(O)CH2COOHである。塩形態のいくつかの例として、特定の実施形態では、R4は-OC(O)CH2COOLi、-OC(O)CH2COONaまたは-OC(O)CH2COOKである。いくつかの実施形態では、R4は-OC(O)R4bCOOHであり、ここで、R4bはエチレン(すなわち、-CH2CH2-)であり、R1は-OC(O)CH2CH2COOHである。特定の実施形態では、R4は-OC(O)CH2CH2COOLi、-OC(O)CH2CH2COONaまたは-OC(O)CH2CH2COOKである。いくつかの実施形態では、R4は-OC(O)R4bCOOHであり、ここで、R4bは-CH=CH-であり、R4は-OC(O)CH=CHCOOHである。特定の実施形態では、R4は-OC(O)CH=CHCOOLi、-OC(O)CH=CHCOONaまたは-OC(O)CH=CHCOOKである。
【0060】
いくつかの実施形態では、R6はC1-C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R6はC2-C6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R7はC1-C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R7はC2-C6アルケニルである。R6およびR7は同じものでもよく、同じものでなくともよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、R8は水素、-OH、-NH2、-NO3、ハロゲン、C1-C6アルキルまたはC2-C6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R8は水素である。いくつかの実施形態では、R8はC1-C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R9は水素、-OH、-NH2、-NO3、ハロゲン、C1-C6アルキルまたはC2-C6アルケニルである。いくつかの実施形態では、R9は水素である。いくつかの実施形態では、R9はC1-C6アルキルである。R8およびR9は同じものでもよく、同じものでなくともよい。
【0062】
本明細書に記載される実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩は、有機金属試薬R
10-Mの存在下で、式(II)のジケトン化合物
【化2】
(ここで、R
6、R
7、R
8およびR
9は、式(I)について定義されるとおりである)を式(III)
【化3】
のシリルアセチレンと反応させることを含む方法を使用して調製され得る。
【0063】
式(II)のジケトン化合物のR6、R7、R8およびR9は、上記で定義されるとおりであり、化合物の様々な実施形態では、式(I)の構造を有する。
【0064】
以下の実施例に示されている方法IIの反応工程III-2に関して、α-アノルドリンを調製する例示的なプロセスは、ジケトン生成物(c)をシリルアセチレン、トリメチルシリルアセチレン(TMS)と反応させることを含む。本出願では、シリルアセチレンは、本明細書に記載される脱ケトン化合物の不斉アルキニル化に使用され得ることが認識された。いかなる特定の理論にも縛られないが、2つの末端アルキンが脱ケトン化合物の2つのカルボニル基に1つずつ付加すると考えられる。
【0065】
式(III)のシリルアセチレンのRa、RbおよびRcは、同じものまたは異なるものであり得る。いくつかの実施形態では、Ra、RbおよびRcは、水素、-OH、-OH、ハロゲンまたはC1-C6アルキルで必要に応じて置換されたC1-C20アルキル、-OH、ハロゲンまたはC1-C6アルキルで必要に応じて置換されたC1-C6アルコキシ、C3-C6シクロアルキル、C6-C14アリール、5~6員ヘテロアリールまたは3~6員ヘテロシクリルからなる群より独立して選択される。いくつかの実施形態では、Ra、RbおよびRcは独立して、-OH、ハロゲンまたはC1-C6アルキルで必要に応じて置換されたC1-C20アルキルである。いくつかの実施形態では、Ra、RbおよびRcは独立して、C1-C6アルキル、例えばメチル、エチル、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CH2CH2CH3)、2-プロピル(i-Pr、i-プロピル、-CH(CH3)2)、1-ブチルである。いくつかの実施形態では、Ra、RbおよびRcはメチルであり、したがって、シリルアセチレンはトリメチルシリルアセチレン(TMS)である。いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、Ra、RbおよびRcの1つまたは複数は、立体障害を作り出す大きなサイズを有し、これが、一つのジアステレオマーを、別のものより優先的に形成することをもたらすと考えられる。
【0066】
本方法にしたがって使用される有機金属試薬は、R10-M(ここで、Mは金属である)と定義される。例として、R10-Mはn-ブチルリチウムである。
【0067】
いくつかの実施形態では、MはLi、NaまたはKである。いくつかの実施形態では、MはLiである。
【0068】
いくつかの実施形態では、R10は、-OH、ハロゲンまたはC1-C6アルキルで必要に応じて置換されたC1-C20アルキルである。いくつかの実施形態では、R10はC1-C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R10はn-ブチルである。
【0069】
いくつかの実施形態では、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)は、有機金属試薬と共に添加される。
【0070】
様々な実施形態では、本明細書で提供される方法は、有機溶媒の存在下で行われる。適切な有機溶媒の非限定的なリストとしては、限定されないが、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニルトリル、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシドおよびトルエンが挙げられる。
【0071】
本明細書で提供される方法は、比較的低い反応温度で行われる。反応温度は、約0℃~約-100℃の温度の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、反応温度は約-20℃~約-90℃である。いくつかの実施形態では、反応温度は約-40℃~約-80℃である。いくつかの実施形態では、反応温度は約-30℃~約-50℃である。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態によれば、実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩を立体特異的に調製するための方法は、式(IV)のシリル基:
【化4】
を除去することをさらに含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、除去工程は、脱保護剤と接触させることにより行われる。適切な脱保護剤の非限定的なリストとしては、限定されないが、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、フッ化水素酸およびフッ化カリウムが挙げられる。
医薬組成物および製剤
【0074】
本開示は、本明細書に記載される化合物の特定のジアステレオマー形態を含む。本明細書で言及される化合物の塩、例えば薬学的に許容され得る塩も提供される。ジアステレオマー化合物の結晶形または非結晶形などのジアステレオマー化合物のすべての形態も本発明に包含される。本発明のジアステレオマー化合物またはその塩を含む組成物、例えば実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩の組成物も意図される。
【0075】
本明細書に詳述されるジアステレオマー化合物のいずれかの医薬組成物は、本開示に包含される。本開示は、式(I)の実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩と、薬学的に許容され得る担体または賦形剤とを含む医薬組成物を含む。一態様では、塩は薬学的に許容され得る塩である。例えば、塩は、酸付加塩、例えば無機酸または有機酸と形成される塩である。医薬組成物は、経口投与、口腔投与、非経口投与、経鼻投与、局所投与もしくは直腸投与のための適切な形態、または吸入による投与に適切な形態をとり得る。
【0076】
一変形形態では、実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩は、個体への投与のために調製された合成生成物である。別の変形形態では、実質的に純粋なジアステレオマー化合物またはその塩を含有する組成物が提供される。別の変形形態では、本開示は、本明細書に詳述される化合物と薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物を包含する。
【0077】
本明細書に詳述されるジアステレオマー化合物またはその塩は、経口送達、粘膜(例えば、経鼻、舌下、膣、口腔または直腸)送達、非経口(例えば、筋肉内、皮下または静脈内)送達、局所送達または経皮送達の形態を含む任意の利用可能な送達経路のために製剤化され得る。ジアステレオマー化合物またはその塩は、限定されないが、錠剤、カプレット、カプセル(例えば、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセル)、カシェ、トローチ、ロゼンジ、ガム、分散液、坐薬、軟膏、カタプラズム(湿布)、ペースト、粉末、ドレッシング、クリーム、溶液、パッチ、エアロゾル(例えば、鼻スプレーまたは吸入器)、ゲル、懸濁液(例えば、水性または非水性液体懸濁液、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョン)、溶液およびエリキシルを含む送達形態を提供するための適切な担体と共に製剤化され得る。
【0078】
本明細書に記載されるジアステレオマー化合物またはその塩は、活性成分としての化合物またはその塩を薬学的に許容され得る担体、例えば上述のものと組み合わせることにより、医薬製剤などの製剤の調製において使用され得る。システムの治療形態(例えば、経皮パッチ対経口錠剤)に応じて、担体は様々な形態であり得る。加えて、医薬製剤は、保存剤、可溶化剤、安定剤、再湿潤剤、乳化剤、甘味料、色素、調整剤および浸透圧調整のための塩、緩衝液、コーティング剤または抗酸化剤を含有し得る。化合物を含む製剤はまた、有益な治療特性を有する他の物質を含有し得る。医薬製剤は、公知の薬学的方法により調製され得る。適切な製剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,20th ed.(2000)(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるジアステレオマー化合物は、一般に許容される経口組成物、例えばハードシェルもしくはソフトシェル、エマルジョンまたは懸濁液中の錠剤、コーティング錠剤およびゲルカプセルの形態で個体に投与され得る。このような組成物の調製に使用され得る担体の例は、ラクトース、コーンスターチまたはその誘導体、タルク、ステアラートまたはその塩などである。ソフトシェルを有するゲルカプセルに対して許容され得る担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオールなどである。加えて、医薬製剤は、保存剤、可溶化剤、安定剤、再湿潤剤、乳化剤、甘味料、色素、調整剤および浸透圧調整のための塩、緩衝液、コーティング剤または抗酸化剤を含有し得る。
【0080】
本明細書に記載されるジアステレオマー化合物またはその塩のいずれかは、記載されている任意の剤形の錠剤で製剤化され得、例えば、本明細書に記載される化合物またはその薬学的に許容され得る塩は、10mg錠剤として製剤化され得る。
使用方法
【0081】
本明細書に詳述される化合物および組成物、例えば、本明細書で提供される式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩と、薬学的に許容され得る担体または賦形剤とを含む医薬組成物は、本明細書で提供される投与および処置の方法において使用され得る。
【0082】
エストロゲン欠乏は、不妊症、早期老化、骨粗鬆症および心血管疾患などの多くの健康状態の発症に関連する。卵巣切除(OVX)または閉経後の個体は、典型的には、エストロゲン欠乏を患っている。本明細書に記載されるエストロゲン欠乏症状としては、限定されないが、骨粗鬆症、脂肪肝、体重増加、高血中トリグリセリドおよび血中グルコースならびに臓器萎縮(例えば、腎臓、筋肉および外陰膣の萎縮)が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、個体におけるエストロゲン欠乏の処置の方法であって、前記個体に式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0084】
いくつかの実施形態では、個体におけるエストロゲン欠乏症状を予防または軽減する方法であって、前記個体に式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、高肝臓トリグリセリド、骨粗鬆症、外陰膣萎縮、高血中トリグリセリド、高血中グルコースおよび体重増加からなる群より選択されるエストロゲン欠乏症状を予防または軽減する方法が提供される。
【0085】
いかなる特定の理論にも縛られないが、本明細書に詳述される式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩は、他の立体化学形態が有しない治療効果を有することが観察される。したがって、本出願に詳述される式(I)のジアステレオマー化合物、その組成物および方法は、式(I)の化合物の他の立体化学形態または立体化学混合物と比較して有利な治療効果を有し得る。1つの具体例として、2アルファ-(α-)および2ベータ-(β-)アノルドリンという名称の2つのキラルアノルドリン化合物が見出された(18、19)。本発明のいくつかの実施形態によれば、α-アノルドリンは、エストロゲン欠乏の処置において、およびエストロゲン欠乏症状の予防または軽減において治療効果を有するが、β-アノルドリンは、これらの処置において最小の治療効果も有しない。
【0086】
いくつかの態様では、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を1つまたはそれより多くのさらなる薬剤と共投与(これは、(別個または同時であり得る)する併用療法が本明細書で提供される。例えば、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩および1つまたはそれより多くのさらなる薬剤は、(例えば、本明細書に記載される医薬組成物などの単一組成物で)同時投与される。加えてまたはあるいは、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩および1つまたはそれより多くのさらなる薬剤は逐次投与され得、例えば、1つまたはそれより多くのさらなる薬剤が最初に投与され、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩が次に投与されるか、または式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩が最初に投与され、1つまたはそれより多くのさらなる薬剤が次に投与される。
【0087】
本開示は、エストロゲン欠乏の処置の方法、ならびにエストロゲン欠乏症状を予防または軽減する方法であって、少なくとも1つのさらなる薬剤と組み合わせて、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を投与することを含む方法を含む。さらなる薬剤は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)およびアロマターゼ阻害剤であり得る。
【0088】
現在、SERMは、乳がん、骨粗鬆症および閉経後症状の処置として使用されており、これは、これらの薬物が、標的組織に応じてエストロゲンのアゴニストおよびアンタゴニストとして作用し得るという特徴を有するからである。本発明によれば、適切なSERMとしては、限定されないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に詳述されるジアステレオマー化合物またはその塩と組み合わせて使用されるSERMは、タモキシフェンである。いくつかの実施形態では、本明細書に詳述されるジアステレオマー化合物またはその塩と組み合わせて使用されるSERMは、ラロキシフェンまたはその機能的同等物である。本明細書で使用される「その機能的同等物」は、ラロキシフェンと同じ機構を通して機能する化合物を指す。例えば、ラロキシフェンの機能的同等物としては、限定されないが、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンが挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態では、エストロゲン欠乏の処置の方法は、少なくとも1つのSERMと組み合わせて、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、エストロゲン欠乏症状を予防または軽減する方法は、少なくとも1つのSERMと組み合わせて、ジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を投与することを含む。
【0090】
「アロマターゼ阻害剤」は、アロマターゼ活性を阻害する薬剤のクラスを指す。アロマターゼ阻害剤は、外部テストステロンを用いるサイクル中のエストロゲン変換の増加を減少させるために、閉経後女性における乳がんおよび卵巣がんの処置において使用されている。適切なアロマターゼ阻害剤としては、限定されないが、アナストロゾール(Arimidex)、レトロゾール(Femara)、エキセメスタン(Aromasin)、ボロゾール(Rivizor)、フォルメスタン(Lentaron)およびファドロゾール(Afema)が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に詳述されるジアステレオマー化合物またはその塩と組み合わせて使用されるアロマターゼ阻害剤は、アナストロゾールである。
【0091】
いくつかの実施形態では、エストロゲン欠乏の処置の方法は、少なくとも1つのアロマターゼ阻害剤と組み合わせて、式(I)のジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を投与することを含む。いくつかの実施形態では、エストロゲン欠乏症状を予防または軽減する方法は、少なくとも1つのアロマターゼ阻害剤と組み合わせて、ジアステレオマー化合物(例えば、α-アノルドリン)またはその塩を投与することを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、個体における骨粗鬆症を予防または軽減する方法であって、前記個体に式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0093】
いくつかの実施形態では、個体における骨粗鬆症を予防または軽減する方法であって、前記方法は、前記個体にa)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量;およびb)少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤がラロキシフェンまたはその機能的同等物である方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はラロキシフェンである。
【0094】
いくつかの実施形態では、個体における骨粗鬆症を予防または軽減する方法であって、前記方法は、前記個体にa)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量;およびb)少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤がアロマターゼ阻害剤である方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はアナストロゾールである。
【0095】
いくつかの実施形態では、骨粗鬆症を予防または軽減する上記方法は、個体に有効量のカルシウムを投与することをさらに含む。カルシウムの適切な量としては、限定されないが、約0.25~約500mg/日、例えば約10~約200mg/日、約50~約1500mg/日が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記方法は、個体に有効量のビタミンDを投与することをさらに含む。ビタミンDの適切な量としては、限定されないが、約400~約800IU/日、例えば約500~約600IU/日が挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態では、個体における高肝臓トリグリセリドを予防または軽減する方法であって、前記個体に式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0097】
いくつかの実施形態では、個体における高肝臓トリグリセリドを予防または軽減する方法であって、前記方法は、前記個体にa)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量;およびb)少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤がラロキシフェンまたはその機能的同等物である方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はラロキシフェンである。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンからなる群より選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、個体における高血中グルコースを予防または軽減する方法であって、前記個体に式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0099】
いくつかの実施形態では、個体における高血中グルコースを予防または軽減する方法であって、前記方法は、前記個体にa)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量;およびb)少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤がラロキシフェンまたはその機能的同等物である方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はラロキシフェンである。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンからなる群より選択される。
【0100】
いくつかの実施形態では、個体における外陰膣萎縮を予防または軽減する方法であって、前記個体に式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0101】
いくつかの実施形態では、個体における外陰膣萎縮を予防または軽減する方法であって、前記方法は、前記個体にa)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量;およびb)少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤がラロキシフェンまたはその機能的同等物である方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はラロキシフェンである。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンからなる群より選択される。
【0102】
いくつかの実施形態では、個体における外陰膣萎縮を予防または軽減する方法であって、前記方法は、前記個体にa)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量;およびb)少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤がアロマターゼ阻害剤である方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、限定されないが、アナストロゾールまたはその機能的同等物からなる群より選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、個体における体重増加を予防または軽減する方法であって、前記個体に式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0104】
いくつかの実施形態では、個体における体重増加を予防または軽減する方法であって、前記方法は、前記個体にa)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量;およびb)少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤がラロキシフェンまたはその機能的同等物である方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はラロキシフェンである。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンからなる群より選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、個体における高血中トリグリセリドを予防または軽減する方法であって、前記個体に式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量を投与することを含む方法が提供される。
【0106】
いくつかの実施形態では、個体における高血中トリグリセリドを予防または軽減する方法であって、前記方法は、前記個体にa)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量;およびb)少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量を投与することを含み、前記さらなる薬剤がラロキシフェンまたはその機能的同等物である方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤はラロキシフェンである。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、バゼドキシフェン、アルゾキシフェン、オルメロキシフェン、オスペミフェンおよびレボルメロキシフェンからなる群より選択される。
【0107】
特定の実施形態では、個体における高肝臓トリグリセリドを予防または軽減する方法であって、前記個体に、式(Ia)の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)
【化5】
である、実質的に純粋なジアステレオマー化合物の有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0108】
特定の実施形態では、個体における高血中トリグリセリドを予防または軽減する方法であって、前記個体に、式(Ia)の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)
【化6】
である、実質的に純粋なジアステレオマー化合物の有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0109】
特定の実施形態では、個体における骨粗鬆症を予防または軽減する方法であって、前記個体に、式(Ia)の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)
【化7】
である、実質的に純粋なジアステレオマー化合物の有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0110】
特定の実施形態では、個体における外陰膣萎縮を予防または軽減する方法であって、前記個体に、式(Ia)の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)
【化8】
である、実質的に純粋なジアステレオマー化合物の有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0111】
特定の実施形態では、個体における高血中グルコースを予防または軽減する方法であって、前記個体に、式(Ia)の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)
【化9】
である、実質的に純粋なジアステレオマー化合物の有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0112】
特定の実施形態では、個体における体重増加を予防または軽減する方法であって、前記個体に、式(Ia)の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)
【化10】
である、実質的に純粋なジアステレオマー化合物の有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0113】
上記方法では、実質的に純粋なジアステレオマー化合物は、約98%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する。
【0114】
上記方法では、実質的に純粋なジアステレオマー化合物は、約99%以上、約99.5%以上または約99.9%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する。
【0115】
しかしながら、伝統的なエストロゲン補充療法(ERT)、アロマターゼ阻害剤およびSERMで見られる副作用は依然として、一部の研究者にとって懸念である(12)。タモキシフェンは、乳がん患者を処置するためのエストロゲン古典的経路のアンタゴニストとして市販され、ER-α36のアゴニストとしても報告されており、潜在的に抗エストロゲン治療抵抗性を引き起こす一方で、子宮内膜上皮細胞の成長を刺激し、その結果子宮内膜がんをもたらす(7、8)。ラロキシフェンは、タモキシフェンのアップグレードバージョンとして市販され、副作用がより少なく、閉経後の症状、例えば骨粗鬆症を予防するという利点があった。しかしながら、ラロキシフェンは、依然としてタモキシフェン処置と共通の重篤な副作用、例えば血栓塞栓症および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を引き起こし得る(9、10)。ラロキシフェンまたはタモキシフェンのいずれかにより引き起こされる副作用に関与する詳細な機構は依然として不明である。イプリフラボンは、植物ホルモンの誘導体であり、その代謝産物はE2より低い親和性でER-αLBDに結合し、低いエストロゲン様作用を示す。イプリフラボンおよびイソフラボンの代謝産物は、ER-βおよびE2に対する結合親和性および活性を示し、これらの代謝産物は、いくつかの国では骨粗鬆症を予防するための医薬として利用されている。少なくとも1つの臨床試験では、それらの有効性は裏付けられなかった(11)。また、閉経後女性におけるER陽性乳がんについて、アロマターゼ阻害剤が上市された。それはまた、骨におけるエストロゲンの合成を阻害して、骨粗鬆症をもたらした。
【0116】
個体における少なくとも1つのさらなる薬剤の副作用を軽減する方法であって、前記少なくとも1つのさらなる薬剤と組み合わせて使用される場合に、前記個体に式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、タモキシフェンと組み合わせて使用される式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩は、タモキシフェンの副作用を軽減し得る。例えば、本出願では、タモキシフェンと組み合わせて使用したα-アノルドリンはタモキシフェンの副作用を軽減して、エストロゲン欠乏の処置のための有効な併用療法またはエストロゲン欠乏症状の予防もしくは軽減をもたらすことが観察されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアロマターゼ阻害剤と組み合わせて使用される式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩は、アロマターゼ阻害剤の副作用を軽減し得る。
【0117】
特定の実施形態では、個体におけるタモキシフェンの副作用を軽減する方法であって、前記個体に、タモキシフェンと組み合わせて、式(Ia)の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)
【化11】
である、実質的に純粋なジアステレオマー化合物の有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0118】
特定の実施形態では、個体における少なくとも1つのアロマターゼ阻害剤の副作用を軽減する方法であって、前記個体に、前記アロマターゼ阻害剤と組み合わせて、式(Ia)の(2α,17α)-ジエチニル-(2β,17β)-ジオール-ジプロピオネート-A-ノル-5α-アンドロスタン(α-アノルドリン)
【化12】
である、実質的に純粋なジアステレオマー化合物の有効量を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0119】
上記方法では、実質的に純粋なジアステレオマー化合物は、約98%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する。
【0120】
上記方法では、実質的に純粋なジアステレオマー化合物は、約99%以上、約99.5%以上または約99.9%以上のジアステレオマー過剰率(de)を有する。
投与様式
【0121】
併用療法の文脈では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤を含む組成物は、同時に(すなわち、同時投与)および/または逐次に(すなわち、逐次投与)投与され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤(本明細書に記載される特定の薬剤を含む)は同時投与される。「同時投与」という用語は、本明細書で使用される場合、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤が、約15分以下(例えば、約10分以下、約5分以下または約1分以下のいずれか)の時間間隔で投与されることを意味する。薬物が同時投与される場合、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は、同じ組成物(例えば、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の両方を含む組成物、例えば、本明細書に含まれる医薬組成物)または別個の組成物(例えば、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は別個の組成物に含められる)に含められ得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は逐次投与される。「逐次投与」という用語は、本明細書で使用される場合、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤が、約15分を超える(例えば、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分またはそれより長い時間のいずれかを超える)時間間隔で投与されることを意味する。最初に、式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩またはさらなる薬剤のいずれかが投与され得る。式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は別個の組成物に含有され、これらが同じまたは異なるパッケージに入れられ得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の投与は同時であり、すなわち、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の投与期間は互いに重複する。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩は、さらなる薬剤の投与前に、少なくとも1サイクル(例えば、少なくとも2、3または4サイクルのいずれか)で投与される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、少なくとも1、2、3または4週間のいずれかにわたって投与される。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の投与は、ほぼ同時に(例えば、1、2、3、4、5、6または7日のいずれか1つの期間内に)開始される。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の投与は、ほぼ同時に(例えば、1、2、3、4、5、6または7日のいずれか1つの期間内に)終了される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤の投与は、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の投与終了後(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12か月間のいずれか1つの期間にわたって)継続される。いくつかの実施形態では、さらなる薬剤の投与は、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の投与開始後(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11か月またはweか月のいずれか1つの期間後に)開始される。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の投与は、ほぼ同時に開始および終了される。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の投与はほぼ同時に開始され、さらなる薬剤の投与は、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の投与終了後(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12か月間のいずれか1つの期間にわたって)継続される。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の投与はほぼ同時に停止され、さらなる薬剤の投与は、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の投与開始後に(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11か月またはweか月のいずれか1つの期間後に)開始される。
【0125】
式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩および/またはさらなる薬剤の投与頻度は、投与する医師の判断に基づいて処置の過程で調整され得る。別個に投与される場合、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は、異なる投与頻度または間隔で投与され得る。例えば、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩は毎週投与され得る一方で、さらなる薬剤はより高い頻度またはより低い頻度で投与され得る。徐放を達成するための様々な製剤およびデバイスは当技術分野で公知である。例示的な投与頻度は本明細書でさらに提供されている。
【0126】
式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は、同じ投与経路または異なる投与経路を使用して投与され得る。例示的な投与経路は本明細書でさらに提供されている。いくつかの実施形態では(同時投与および逐次投与の両方について)、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は、所定の比で投与される。例えば、いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の重量比は約1対1である。いくつかの実施形態では、重量比は、約0.001対約1~約1000対約1または約0.01対約1~100対約1であり得る。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の重量比は、約100:1、約50:1、約30:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1および約1:1のいずれかより小さい。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の重量比は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約30:1、約50:1、約100:1のいずれかより大きい。他の比が企図される。
【0127】
式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩および/またはさらなる薬剤に必要な用量は、各薬剤が単独で投与される場合に通常必要とされる用量より低い場合がある(しかし、必ずしもそうではない)。したがって、いくつかの実施形態では、治療量未満の式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩および/またはさらなる薬剤が投与される。「治療量未満」または「治療レベル未満」は、治療量より少ない(すなわち、式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩および/またはさらなる薬剤が単独で投与される場合に通常使用される量より少ない)量を指す。減少は、所定の投与で投与される量および/または所定の期間にわたって投与される量(頻度の減少)に関して反映され得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、同程度の処置をもたらすために必要な式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の通常用量の少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれを超えるパーセンテージのいずれかの減少を可能にするように、十分なさらなる薬剤が投与される。いくつかの実施形態では、同程度の処置をもたらすために必要なさらなる薬剤の通常用量の少なくとも約5%、約10%、約20%、約30%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれを超えるパーセンテージのいずれかの減少を可能にするように、十分な式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩が投与される。
【0129】
いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の両方の用量は、単独で投与される場合の各々の対応する通常用量と比較して減少する。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は両方とも、治療量未満(すなわち、減少したレベル)で投与される。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩および/またはさらなる薬剤の用量は、確立された最大毒性用量(MTD)よりも実質的に低い。例えば、式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩および/またはさらなる薬剤の用量は、MTDの約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満または約10%未満である。
【0130】
いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩の用量および/またはさらなる薬剤の用量は、各薬剤が単独で投与される場合に通常必要な用量よりも高い。例えば、いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩および/またはさらなる薬剤の用量は、確立された最大毒性用量(MTD)よりも実質的に高い。例えば、式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩および/またはさらなる薬剤の用量は、単独で投与される場合の薬剤のMTDの約50%、約40%、約30%、約20%または約10%を超える。
【0131】
いくつかの実施形態では、(単独のまたはさらなる薬剤と組み合わせた)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の量は、以下の範囲のいずれかに含まれる:約0.1~約0.5mg、約0.5~約5mg、約5~約10mg、約10~約15mg、約15~約20mg、約20~約25mg、約20~約50mg、約25~約50mg、約50~約75mg、約50~約100mg、約75~約100mg、約100~約125mg、約125~約150mg、約150~約175mg、約175~約200mg、約200~約225mg、約225~約250mg、約250~約300mg、約300~約350mg、約350~約400mg、約400~約450mgまたは約450~約500mg。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩(例えば、単位剤形)の量は、約5mg~約500mg、例えば約30mg~約300mgまたは約50mg~約200mgの範囲である。
【0132】
いくつかの実施形態では、(単独のまたはさらなる薬剤と組み合わせた)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の量は、少なくとも約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.25mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3.5mg/kg、約5mg/kg、約6.5mg/kg、約7.5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kgまたは約20mg/kgのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、(単独のまたはさらなる薬剤と組み合わせた)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の量は、少なくとも約0.01mg/kg/日、約0.05mg/kg/日、約0.1mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約1mg/kg/日、約2.5mg/kg/日、約3.5mg/kg/日、約5mg/kg/日、約6.5mg/kg/日、約7.5mg/kg/日、約10mg/kg/日、約15mg/kg/日または約20mg/kg/日のいずれかを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、さらなる薬剤の量は、少なくとも約0.01mg/kg、約0.05mg/kg、約0.1mg/kg、約0.25mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約3.5mg/kg、約5mg/kg、約6.5mg/kg、約7.5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kgまたは約20mg/kgのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、(単独のまたはさらなる薬剤と組み合わせた)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の量は、少なくとも約0.01mg/kg/日、約0.05mg/kg/日、約0.1mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約1mg/kg/日、約2.5mg/kg/日、約3.5mg/kg/日、約5mg/kg/日、約6.5mg/kg/日、約7.5mg/kg/日、約10mg/kg/日、約15mg/kg/日または約20mg/kg/日のいずれかを含む。
【0134】
式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩(およびさらなる薬剤)の例示的な投与頻度としては、限定されないが、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、6週間ごとに1回または8週間ごとに1回が挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1週間に約1回、約2回、約3回、約4回、約5回、約6回または約7回(すなわち、毎日)、毎日約3回または毎日約2回のいずれかで投与される。いくつかの実施形態では、各投与間の間隔は、約6か月間、約3か月間、約1か月間、約20日間、約15日間、約12日間、約10日間、約9日間、約8日間、約7日間、約6日間、約5日間、約4日間、約3日間、約2日間または約1日間のいずれかより短い。いくつかの実施形態では、各投与間の間隔は、約1か月間、約2か月間、約3か月間、約4か月間、約5か月間、約6か月間、約8か月間または約12か月間のいずれかより長い。いくつかの実施形態では、投与スケジュールにおいて休止期間はない。いくつかの実施形態では、各投与間の間隔は、約1週間以下である。
【0135】
式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩(およびさらなる薬剤)の投与は、長期間、例えば約1か月間~最大約7年間にわたって延長され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、約24、約30、約36、約48、約60、約72または約84か月間のいずれかの期間にわたって投与される。
【0136】
いくつかの実施形態では、個体は、少なくとも約1回、約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、約7回、約8回、約9回または約10回の処置サイクルのいずれかで処置される。
【0137】
さらなる薬剤の投与頻度は、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の投与頻度と同じであっても、異なってもよい。例示的な頻度は上記で提供されている。
【0138】
本明細書に記載される式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩(およびさらなる薬剤)は、例えば、経口、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、吸入、小胞内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、髄腔内、経粘膜および経皮を含む様々な経路を介して個体(例えば、ヒト)に投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物の徐放製剤が使用され得る。
【0139】
本明細書に記載される投与構成の組み合わせが使用され得る。本明細書に記載される併用療法は単独で、または別の治療、例えば手術、照射、化学療法、免疫療法および遺伝子療法などと併せて実施され得る。加えて、増殖性疾患を発症するより高いリスクを有する者は、疾患の発症を阻害し、またはおよび/または遅延させるための処置を受け得る。
【0140】
当業者により理解されるように、さらなる薬剤の適切な用量は、さらなる薬剤が単独でまたはさらなる薬剤と組み合わせて投与される臨床治療において既に使用されているものに近い。投与量の変化は、処置されている状態に応じて起こる可能性がある。上記のように、いくつかの実施形態では、さらなる薬剤は、減少したレベルで投与され得る。
キットおよび医薬
【0141】
本発明はまた、本明細書に記載される方法に有用な医薬、キットおよび単位投与量を提供する。医薬としての使用および/または医薬の製造のための使用の文脈にかかわらず、本明細書に記載される任意の使用も提供される。
【0142】
いくつかの実施形態では、組成物は、単位剤形(経口単位剤形など)で存在し得る。適切な単位剤形としては、限定されないが、カプセル、錠剤、丸薬、カプレット、ゲル、液体(例えば、懸濁液、溶液、エマルジョン)、粉末または他の粒子状物質などが挙げられる。
【0143】
いくつかの実施形態では、組成物中の式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩および少なくとも1つのさらなる薬剤の重量比は、約1:1である。いくつかの実施形態では、重量比は、約0.001対約1~約1000対約1または約0.01対約1~100対約1である。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の重量比は、約100:1、約50:1、約30:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1および約1:1のいずれかより小さい。いくつかの実施形態では、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤の重量比は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約30:1、約50:1、約100:1のいずれかより大きい。いくつかの実施形態では、組成物中の式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩とさらなる薬剤との重量比は、約1:20~約20:1(例えば、約10:1~約1:10または約1:10~約1:15を含む)である。
【0144】
別の態様では、別個の容器または同じ容器のいずれかに式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤を含むキットが提供される。本発明のキットは、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩(または単位剤形および/もしくは製品)および/または少なくとも1つのさらなる薬剤を含む1つまたはそれより多くの容器を含み、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかにしたがって使用するための説明書をさらに含む。キットは、処置に適切な個体の選択に関する説明をさらに含み得る。本発明のキットで供給される説明書は、典型的には、ラベル上の説明書または添付文書(例えば、キットに含まれる用紙)であるが、機械可読説明書(例えば、磁気記憶ディスクまたは光学記憶ディスク上にある説明書)も許容され得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、キットは、a)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量と、b)タモキシフェン、ラロキシフェンまたはその機能的同等物およびアロマターゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量とを含む。いくつかの実施形態では、キットは、a)式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の有効量と、b)タモキシフェン、ラロキシフェンまたはその機能的同等物およびアロマターゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる薬剤の有効量と、c)がんの処置(または本明細書に記載される他の使用)のために、式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤を同時に、逐次にまたは共に投与するための説明書とを含む。
【0146】
式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩およびさらなる薬剤は、別個の容器または単一の容器中に存在し得る。キットは、1つの別個の組成物を含み得るか、または1つの組成物が式(I)のジアステレオマー化合物もしくはその塩を含み、1つの組成物がさらなる薬剤を含む2つもしくはそれより多くの組成物を含み得ると理解される。
【0147】
本発明のキットは、適切にパッケージングされている。適切なパッケージングとしては、限定されないが、バイアル、ボトル、ジャーおよびフレキシブルパッケージング(例えば、密封されたMylarまたはプラスチック製のバッグ)などが挙げられる。キットは、必要に応じて、緩衝液および解釈情報などのさらなる構成要素を提供し得る。したがって、本出願はまた、バイアル(例えば、密封バイアル)、ボトル、ジャーおよびフレキシブルパッケージングなどを含む製品を提供する。
【0148】
式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩の使用に関する説明書は、一般に、目的の処置のための投与量、投与スケジュールおよび投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、大量パッケージ(例えば、複数回投与パッケージ)または単位用量未満であり得る。例えば、長期間(例えば1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3か月間、4か月間、5か月間、7か月間、8か月間、9か月間またはそれを超える期間のいずれか)にわたる個体の有効な処置を提供するために十分な投与量の本明細書に開示される式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩を含有するキットが提供され得る。キットはまた、複数の単位用量の式(I)のジアステレオマー化合物またはその塩と、医薬組成物と、使用説明書とを含み得、薬局、例えば病院の薬局および調剤薬局における保存および使用に十分な量でパッケージングされ得る。
【0149】
当業者は、本発明の範囲および趣旨の範囲内においていくつかの実施形態が可能であると認識する。以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をより詳細に記載する。以下の実施例は本発明をさらに例証するが、当然のことながら、決してその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0150】
本発明をある程度詳細に説明および例示したが、本開示はほんの一例としてなされたものであり、特許請求の範囲に規定されるように、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、部分の組み合わせおよび取り合わせの多数の変更が行われ得ると理解される。
実施例1:合成例
【0151】
α-アノルドリンの化学合成は、本明細書に組み込まれる(スキームIに示されている)以下の方法I、または米国特許第5,001,120号およびOrganic Letters, 2007, 9(9); 1643-6の出版物の参照による方法II(スキームII)に詳述されている工程を使用して、記載されるように調製され得る。
【化13】
【0152】
反応工程I:ジョーンズ試薬の調製:57gのCrO3を400mlのH2Oに溶かし、次いで、85mlのH2SO4をゆっくりと添加した。次いで、得られたジョーンズ試薬を40℃に冷却した。50gの5α-アンドロスタンおよび200mlの酢酸を1L三つ口フラスコに加えた。混合物を55~60℃に温め、撹拌し、窒素雰囲気下で溶解させた。ジョーンズ試薬を1時間以内に滴下により添加した。反応温度を90℃に上昇させ、1時間反応させ、酢酸を減圧下で蒸留した。残渣を濾過し、H2Oで洗浄し、乾燥させて、50gの二酸生成物(b)を得た。
【0153】
反応工程I:ジョーンズ試薬の調製:57gのCrO3を400mlのH2Oに溶かし、次いで、85mlのH2SO4をゆっくりと添加した。次いで、得られたジョーンズ試薬を40℃に冷却した。50gの5α-アンドロスタンおよび200mlの酢酸を1L三つ口フラスコに加えた。混合物を55~60℃に温め、撹拌し、窒素雰囲気下で溶解させた。ジョーンズ試薬を1時間以内に滴下により添加した。反応温度を90℃に上昇させ、1時間反応させ、酢酸を減圧下で蒸留した。残渣を濾過し、H2Oで洗浄し、乾燥させて、50gの二酸生成物(b)を得た。
【0154】
反応工程II:30gの二酸生成物(b)および600mLの無水酢酸を1L三つ口フラスコ中で溶解させ、24gの酢酸ナトリウムに添加し、撹拌し、4時間還流した。残渣を濾過し、乾燥させて、18gのジケトン生成物(c)を得た。
【0155】
反応工程III-1およびIV-1:カリウムアセチレン試薬の調製:15gのKOH溶液(20%w/w)を250mL三つ口フラスコ中で4℃に冷却し、アセチレンを注入して安定質量にした。6gのジケトン生成物(c)を42mLのTHFに溶解させ、次いで、三つ口フラスコに25℃で2時間かけて加えた。生成物をH2Oで希釈し、HClで酸性化した。残渣を濾過し、H2Oで洗浄し、乾燥させて、5.9gの2,17α-ジエチニル-A-ノル-5a-アンドロスタン-2,17β-ジオール生成物(e)を得た。
【0156】
反応工程V:2.8gの2,17α-ジエチニル-A-ノル-5a-アンドロスタン-2,17βジオール生成物(e)、4.5mLのプロピオン酸および7.8mLのプロピオン酸無水物を100mLフラスコ中で混合し、次いで、3時間撹拌した。30mLのH2Oおよび40mLの酢酸エチルをフラスコに加え、撹拌し、水および有機相を分離した。有機相を水で5回洗浄し、10mLのn-ヘキサンを添加した。残渣を濾過し、乾燥させて、生成物α-アノルドリンおよびβ-アノルドリン(それぞれ、fαおよびfβ)の2.0gの混合物を得た。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態によれば、α-アノルドリンの不斉合成は、(スキームIIに示されているとおり)以下の方法IIに詳述されている工程を使用して、記載されているように調製され得る。
【化14】
【0158】
方法Iと同様に、上記反応工程IおよびIIを使用して、ジケトン生成物(c)を調製した。
【0159】
反応工程III-2:6mLの乾燥THF、9.2mLのトリメチルシリルアセチレン(TMS)を乾燥250mL三つ口フラスコに加え、次いで、-40~-80℃に冷却し、20mLのn-buLiを溶液に添加し、30分間撹拌した。7mLのテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)、方法Iの反応工程IIからの6gのジケトン生成物(c)を42mLのTHFに溶解させ、次いで、-40~-80℃に冷却した。2つの溶液を一つに混合し、一晩反応させる。NH4Cl溶液により、反応を停止させた。100mlの酢酸エチルをフラスコに加え、5分間撹拌した。有機相を乾燥させて、4.8gの生成物(d-2)を得た。
【0160】
反応工程IV-2:4.8gの生成物(d-2)を、15mlのTHFおよび17mlのテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)溶液の混合物に溶解させて、3時間反応させた。THFを蒸留した。2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5a-アンドロスタン-2β,17β-ジオール生成物α-アノルジオール(e-2)を酢酸エチルに溶解させた。有機溶液を蒸留水で3回洗浄した。酢酸エチルを除去した後、3.5gの2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5a-アンドロスタン-2β,17β-ジオール生成物、α-アノルジオール(e-2)を得た。
【0161】
反応工程V:2.8gの2α,17α-ジエチニル-A-ノル-5a-アンドロスタン-2β,17β-ジオール生成物(e-2)、4.5mLのプロピオン酸および7.8mLのプロピオン酸無水物を100mLフラスコ中で混合し、次いで、3時間撹拌した。30mLのH2Oおよび40mLの酢酸エチルをフラスコに加え、撹拌し、水および有機相を分離した。有機相を蒸留水で5回洗浄し、10mLのn-ヘキサンを添加した。残渣を濾過し、乾燥させて、生成物α-アノルドリン(fα)の混合物2.0gを得た。
【0162】
シリカゲルクロマトグラフィー分析により、方法IIを使用して、1つのジアステレオマー化合物のみが合成されたことが示された(
図1B)。対照的に、方法Iを使用したところ、ジアステレオマー化合物の混合物が合成された(
図1A)。
【0163】
NMR分析:画分1(F1)および画分2(F2)を収集し、NMR分析のためにCCl
4(50mg/mL)に溶解させる。
図2Aおよび
図2Bにより、それぞれ画分1(F1)からのα-アノルドリンおよび画分2(F2)からのβ-アノルドリンが示された。
実施例2:α-アノルドリンまたはβ-アノルドリンの効果
【0164】
この実施例では、エストロゲンによりモジュレートされる代謝シグナル伝達および組織萎縮に対するα-およびβ-アノルドリンのエストロゲン効果が研究により示されている。7週齢マウスの卵巣を外科的に切除した。手術の1週間後、マウスにイソフラボン、α-アノルドリンまたはβ-アノルドリンを食物により与えた。体重、血中グルコースおよび食物摂取を毎月測定した。3か月後、マウスを屠殺した。脚および脊椎骨、肝臓、子宮および膣を回収した。
【0165】
子宮および膣の湿重量ならびにH&E染色により、β-アノルドリンではなくα-アノルドリンが外陰膣萎縮を予防したことが示された(
図4)。α-アノルドリン処置OVXマウスは、β-アノルドリンにより処置したマウスおよびブランク群と比較して、より弱い子宮内萎縮症状を示した(
図3)。α-アノルドリンは、β-アノルドリンと比較して、より低い血中グルコース、TGおよび体重(
図5Aおよび
図5B)をそれぞれ示したが、初期体重および食物摂取(
図5Cおよび
図5D)はそれぞれ有意差がなかった。これらのデータにより、差異はエネルギー消費の変化によるものであったことが示された。肝臓H&E切片および統計分析により、β-アノルドリンではなくα-アノルドリンが、OVXマウスにおける肝臓TG量を減少させたことが示された(
図6)。マイクロCT結果は、β-アノルドリンではなくα-アノルドリンが、OVXマウスにおける骨粗鬆症を予防したことを示している(
図7)。
【0166】
タモキシフェンは、陽性発現ERを有する乳がん患者のための最初のFDA承認薬であった。しかしながら、タモキシフェンはまた、子宮内膜がんおよびNASHなどの副作用を誘発する。重要なことに、ER陽性(ER+)がんを有する女性の場合、タモキシフェン処置を5年で中止するのではなく最大10年間継続することが、特に10年後に再発および死亡率のさらなる減少をもたらす。本発明者らは、アノルドリンが、タモキシフェン誘発性子宮内膜上皮細胞(EEC)有糸分裂を排除し得ることを見出した。本発明者らは、α-アノルドリンまたはβ-アノルドリンがタモキシフェン誘発性EEC有糸分裂を排除するかをさらに試験した。イソフラボン(ブランク)、α-アノルドリン(a-ANO)、β-アノルドリン(b-ANO)、α-アノルドリン+タモキシフェン(TAM+a-ANO)、β-アノルドリン+タモキシフェン(TAM+b-ANO)またはタモキシフェン(TAM)を含有する食物を7週齢マウスに6か月間与えた。次いで、マウスを屠殺して、子宮および肝臓を回収した。子宮および肝臓組織を固定した。
【0167】
H&E染色切片により、TAM+b-ANOおよびTAM群におけるEECは、TAM+a-ANOおよび偽群における滑らかな単層のEECと比較して粗くて有糸分裂的であり(
図8A)、TAM+b-ANOおよびTAM群の肝細胞における脂肪沈着は、TAM+a-ANOおよび偽群の肝細胞と比較して高度であることが示された(
図9A)。H&E染色切片の統計分析により、β-アノルドリンではなくα-アノルドリンが、タモキシフェン誘発性EEC有糸分裂(
図8B)およびNASH(
図9B)を阻害したことが示された。
【0168】
アロマターゼ阻害剤を、閉経後女性におけるER陽性乳房に投与した。それはまた、組織萎縮および骨粗鬆症などの副作用を誘発した。アナストロゾールはアロマターゼ阻害剤である。それを、閉経後女性におけるER陽性乳がんに投与した。アナストロゾール(ANA)もまた、膣萎縮および骨粗鬆症を誘発した。外陰膣萎縮は、通常、膣および尿路の感染をもたらす。例として、本発明者らは、α-アノルドリンまたはβ-アノルドリンがアナストロゾール誘発性子宮および外陰膣萎縮ならびに骨粗鬆症を排除するかを試験した。イソフラボン(ブランク)、α-アノルドリン(a-ANO)、β-アノルドリン(b-ANO)、α-アノルドリン+アナストロゾール(ANA+a-ANO)、β-アノルドリン+アナストロゾール(ANA+b-ANO)またはアナストロゾール(ANA)を含有する食物を7週齢マウスに6か月間与えた。次いで、マウスを屠殺して、膣、脚および脊椎骨を回収した。組織をパラホルムアルデヒドで固定した。マイクロCT結果により、β-アノルドリンではなくα-アノルドリンがアナストロゾール誘発性骨粗鬆症を抑制したことが示された(
図10A、
図10Bおよび
図10C)。膣の湿重量および外陰膣のH&E染色切片の統計分析により、β-アノルドリンではなくα-アノルドリンがアナストロゾール誘発性膣萎縮を抑制したことが示された(
図11A、
図11Bおよび
図11C)。
実施例3:材料および材料調製方法
【0169】
タモキシフェンおよびアナストロゾール(MPG USPグレード)は、Okahata(Shanghai)Trading Co.,Ltdから提供された。エピアンドロステロン(Epiandrostenestone)は、Jiangsu Jiaerke Pharmaceuticals Group,LTDから購入した。他の化合物はすべて、SigmaまたはAladdinから購入した。マウスの食物は、Trophic Animal Feed High-tech Co.,Ltd,Nantong,Chinaにより作製された。マウスは、BK animal Inc.から購入した。動物実験は、Southern Center of Pesticide Research,Shanghaiにおいて実施した。
【0170】
グルコース濃度アッセイ:製造業者の指示(Yicheng,Beijing)にしたがってグルコースアッセイキットを使用して、培地またはマウス尾由来全血中のグルコース濃度を測定した。
【0171】
卵巣切除(OVX)マウスモデルの構築および薬物の投与:6週齢マウスの卵巣を手術により切除した。手術の3日後、毎日の胃管注射により、または食物と混合して、薬物を投与した。
【0172】
パラフィン切片の調製およびHE染色:手術によりマウスの組織を切除し、1×DPBS中4%パラホルムアルデヒド(Beijing Solar Bioscience&Technology co.,Ltd)を使用して固定した。パラフィン切片の調製およびHE染色は、BK animal model,Inc.のGLP研究所により実施された。
【0173】
マウス肝臓におけるTGの測定:手術により30~50mgのマウス肝臓を切除し、1mlのクロロホルム:メタノール(2:1)混合物中でホモジナイズし、0.5mlのddH2Oを使用して抽出した。有機相を新たなチューブに移し、風乾した。製造業者の指示にしたがってキットを使用して、TGの量を測定した。内部標準対照を使用して、誤差を補正した。
【0174】
EECの高さ、子宮の直径および環状筋の厚さの測定:パラフィン包埋H&Eマウス子宮切片の倍率20~200倍のEEC画像から、EECの高さを測定した。
【0175】
外陰膣壁の厚さの測定:中心部で膣を切断した。H&E切片の調製のために、子宮部位および外陰膣部位を両方とも同じ方向でパラフィンに包埋した。パラフィン包埋H&Eマウス膣切片の倍率40倍の画像から、外陰膣壁の厚さを測定した。
【0176】
マイクロCTを使用した骨密度アッセイ:3%ホルムアルデヒドを含有する1×DPBSで大腿骨を2週間固定した。1週間後、固定液を交換した。Siemens InveonマイクロCTにより、大腿骨の密度を測定した。Inveon Research Workplace(IRW)を使用して、以下の測定条件でHU2000値を分析した:80KVP、500mA、露出時間1500ミリ秒;CCD読み出し設定:アキシャル2048、ビニング2048;FOVトランスアキシャル:19.03mm、アキシャル:19.03mm、ピクセルサイズ:9.29μm。
【0177】
統計分析:表および図では、平均+STDEVとして結果を表した。アスタリスクは、両側スチューデントt検定を使用して計算した統計的有意差を示す。
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