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特許7273806ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/34 20060101AFI20230508BHJP
【FI】
C08G65/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020517583
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2018010630
(87)【国際公開番号】W WO2019066310
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】10-2017-0128260
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジェイル
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ハンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム ドゥクス
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-517071(JP,A)
【文献】特表2014-518852(JP,A)
【文献】特表2005-535744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0007043(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0277478(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0030060(US,A1)
【文献】特表平07-505178(JP,A)
【文献】米国特許第05302255(US,A)
【文献】特表2009-504880(JP,A)
【文献】米国特許第07157607(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布(Mw/Mn)が1.8~2.1であり、
数平均分子量400以下のオリゴマー含有量が0.5wt%以下である、
ポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項2】
1,3-プロパンジオール含有量が100ppmw以下である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項3】
アルデヒド含有量が300ppmw以下である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項4】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が400~4,000である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項5】
1,3-プロパンジオールを重合してポリトリメチレンエーテルグリコールを含む生成物を製造する段階(段階1)と、
前記生成物を150~250℃の温度、および0.001~2.0torrの圧力条件で蒸留して、精製されたポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する段階(段階2)と、を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【請求項6】
前記段階2の温度は160℃以上220℃以下である、
請求項5に記載のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【請求項7】
前記段階2の圧力は0.005torr以上0.1torr以下である、
請求項5に記載のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【請求項8】
前記段階2の蒸留は、薄膜蒸留(thin film evaporation)、流下液膜蒸留(falling film evaporation)、または短経路蒸留(short path evaporation)である、
請求項5に記載のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキセテン(Oxetene)または1,3-プロパンジオール(1,3-PDO)に基づくエーテル系ポリオルであるポリトリメチレンエーテルグリコール(Polytrimethylene ether glycol;PO3G)は、特有の結晶構造によって差別化されるポリウレタンの物性を付与できる。高い弾性復原力に比べて優れた機械的物性を示すPO3Gを適用したポリウレタンは、PEG(Poly ethylene glycol)、PPG(Poly propylene glycol)、PTMG(Poly tetramethylene glycol)などのような既存のポリエーテル系ポリオルとは異なる応用分野に適用できるため、その間に多くの研究が行われてきた。
【0003】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法は、大きく2種類に区分される。まず、オキセテン(Oxetene)を開環重合して製造する方法があるが、該方法は簡単な方法で製造されるが、原料の不安定性により商用化が進まず、研究領域だけに留まっている。
【0004】
他の方法としては、1,3-プロパンジオールから縮合重合反応で製造する方法がある。該方法は、オキセテン(Oxetene)を開環重合して製造する方法に比べて多少複雑であるが、比較的温和な重合条件で製造が可能である。前記方法が開示されている文献としては、米国特許第6977291号および米国特許第7745668号が挙げられる。
【0005】
一方、前記特許に記載された通り、1,3-プロパンジオールから縮合重合反応によりポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する場合、いくつかの問題点がある。まず、前記縮合重合反応は1,3-プロパンジオールを酸触媒下で長時間反応させることであるが、これにより、各種副産物と低分子量のオリゴマーが共に製造される。このような物質はポリトリメチレンエーテルグリコールとは異なる極性を有し、偏在化した分布を表し、これは分子量分布と分子量のばらつきをもたらす。
【0006】
また、前記副産物は、ほとんどアルデヒド系の副産物であって、それ自体からも不快な臭いがし、また、ポリトリメチレンエーテルグリコールの色相、および後加工反応において反応速度と選択度に悪影響を与え、また、1,3-プロパンジオールとサイクリックオリゴマー(cyclic oligomer)を形成する。サイクリックオリゴマーは、1,3-プロパンジオールの分子構造に起因する側面が大きい。類似の例として、1,3-プロパンジオールを使用するポリエステルであるPTTの製造においても、1,3-プロパンジオールの分子構造に起因したサイクリックオリゴマーが過多に形成され、これは高分子重合度と最終加工に多くの問題をもたらし、その円滑な除去のために固相重合工程が適用されることもある。ポリトリメチレンエーテルグリコールの場合にも、残存するサイクリックオリゴマーはこれを使用して製造した物品の機械的物性を低下させ、それに製品表面への移動(migration)現象をもたらすことができる。
【0007】
したがって、1,3-プロパンジオールから縮合重合反応からポリトリメチレンエーテルグリコールを製造した後、生成物から各種副産物とオリゴマーを除去するためのポリトリメチレンエーテルグリコールの精製が必要であり、そのために一般的に蒸留工程を適用することが考えられる。しかし、ポリトリメチレンエーテルグリコールのようなポリオル高分子の場合、高温に長期間露出すると熱的酸化(thermal oxidation)が発生する問題がある。
【0008】
そこで、本発明者らは、高温に長時間露出せずともポリトリメチレンエーテルグリコールを精製できる方法を鋭意研究した結果、後述のように特定条件の蒸留を適用する場合、上記問題を解決できることを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高温に長時間露出せずともポリトリメチレンエーテルグリコール生成物から各種副産物およびオリゴマーを除去できる、ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法、およびこれにより製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、分子量分布(Mw/Mn)が1.8~2.1であり、数平均分子量400以下のオリゴマー含有量が0.5wt%以下である、ポリトリメチレンエーテルグリコールを提供する。
【0011】
1,3-プロパンジオールから縮合重合反応を通じてポリトリメチレンエーテルグリコールを製造すると分子量分布が広いポリトリメチレンエーテルグリコールが製造され、また、各種副産物と低分子量のオリゴマーが製造される。前記広い分子量分布は主に製造されたオリゴマーに起因し、これはポリトリメチレンエーテルグリコールを使用した物品の物性のばらつきをもたらして、ポリトリメチレンエーテルグリコールの応用分野を制限する。また、前記各種副産物の殆どはアルデヒド系化合物であって、ポリトリメチレンエーテルグリコールの物性に悪影響を与えるだけでなく、それ自体からも不快な臭いがし、ポリトリメチレンエーテルグリコールを使用した後加工反応において反応速度と選択度に悪影響を与え、ポリトリメチレンエーテルグリコールの色相にもよくない影響を与える。
【0012】
したがって、1,3-プロパンジオールから縮合重合反応を通じて製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールを精製する過程が必要である。このため、通常、蒸留工程によりこれを精製しているが、精製工程ではポリトリメチレンエーテルグリコールが高温で長期滞留することになり、熱的酸化(thermal oxidation)が発生する問題がある。
【0013】
そこで、本発明では、後述のように蒸留工程を適用してポリトリメチレンエーテルグリコールが高温で長期滞留せずともポリトリメチレンエーテルグリコールを精製する方法を提供する。また、前記のような方法により、各種副産物と低分子量のオリゴマーが除去されて、精製されたポリトリメチレンエーテルグリコールは、分子量分布が狭くて分子量のばらつきを減らすことができるという特徴がある。
【0014】
また、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールにおいて、数平均分子量400以下のオリゴマー含有量が0.5wt%以下であり、好ましくは0.4wt%以下、0.3wt%以下、0.2wt%以下、または0.1wt%以下である。
【0015】
また、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールにおいて、1,3-プロパンジオール含有量が100ppmw以下であり、好ましくは90ppmw以下、80ppmw以下、70ppmw以下、60ppmw以下、50ppmw以下、または40ppmw以下である。
【0016】
また、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールにおいて、アルデヒド含有量が300ppmw以下であり、好ましくは200ppmw以下、150ppmw以下、100ppmw以下、90ppmw以下、80ppmw以下、70ppmw以下、60ppmw以下、50ppmw以下、または40ppmw以下である。前記アルデヒドとは、アルデヒド基を含む化合物を指すもので、後述する実施例と同様にカルボニル基の分析を通じて測定できる。
【0017】
また、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は400~4,000である。
【0018】
また、本発明は、下記の段階を含む上述のポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法を提供する:
1,3-プロパンジオールを重合してポリトリメチレンエーテルグリコールを含む生成物を製造する段階(段階1);
前記生成物を150~250℃の温度、および0.001~2.0torrの圧力条件で蒸留して、精製されたポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する段階(段階2)。
【0019】
そこで、各段階別に本発明を詳しく説明する。
【0020】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造段階(段階1)
本発明の段階1は、1,3-プロパンジオールを重合してポリトリメチレンエーテルグリコールを含む生成物を製造する段階である。
【0021】
前記段階1では、1,3-プロパンジオールからポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する反応であればその反応条件は特に限定されず、好ましくは重縮合触媒を使用して1,3-プロパンジオールを重縮合してポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する。
【0022】
具体的には、前記重縮合触媒としては、触媒はルイス(Lewis)酸、ブレンステッド(Bronsted)酸、超酸(super acid)およびこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、触媒は無機酸、有機スルホン酸、ヘテロ多酸および金属塩からなる群から選択される。最も好ましくは、触媒は硫酸、フルオロスルホン酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ホスホタングステン酸、ホスホモリブデン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンスルホン酸、ビスマストリフレート、イットリウムトリフレート、イッテルビウムトリフレート、ネオジムトリフレート、ランタントリフレート、スカンジウムトリフレートおよびジルコニウムトリフレートからなる群から選択される。触媒はまた、ゼオライト、フッ素化アルミナ、酸処理シリカ、酸処理シリカ-アルミナ、ヘテロ多酸、ならびにジルコニア、チタニア、アルミナおよび/またはシリカ上に担持されたヘテロ多酸からなる群から選択される。より好ましくは、重縮合触媒として硫酸を使用する。
【0023】
前記触媒は、反応混合物重量の0.1~20wt%の濃度で使用することが好ましく、より好ましくは1~5wt%である。
【0024】
また、好ましくは前記重縮合は150℃~250℃で行い、より好ましくは160℃~220℃で行う。また、前記反応は、非活性気体の存在下で行うことが好ましく、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0025】
また、前記縮重合以降はポリトリメチレンエーテルグリコールに結合した酸を除去するために加水分解反応をさらに行うことができる。また、前記加水分解反応に続いて、中和反応をさらに行うことができる。
【0026】
蒸留段階(段階2)
本発明の段階2は、前記段階1の生成物を蒸留して各種副産物と低分子量のオリゴマーを除去する段階である。
【0027】
上述のように、ポリトリメチレンエーテルグリコールを高温に長期滞留させて蒸留する場合、熱的酸化の問題が発生するため、本発明では相対的に低い温度で早い時間内に精製するという特徴がある。
【0028】
このため、好ましくは、前記蒸留は、薄膜蒸留(thin filme vaporation)、流下液膜蒸留(falling filme vaporation)、または短経路蒸留(short path evaporation)を使用する。また、前記のため、それぞれ薄膜蒸留器、流下液膜蒸留器、および短経路蒸留器を使用する。前記蒸留は、分離しようとする混合物を薄い薄膜に作り、熱源と接触する表面積を高めることを利用したものである。例えば、薄膜蒸留の場合、薄膜蒸留器内部に流入した混合物が物理的力(例えば、wiper)によって薄膜蒸留器内部の壁面に薄い薄膜を形成することになり、ここに熱源(例えば、heating media)を通じて適正温度を適用して蒸留する。また、薄膜蒸留器内部の圧力を下げると、物質の蒸気圧が低くなって本来の沸点より低い温度で蒸発が起こるという利点がある。また、薄膜蒸留器内部には蒸発された物質を回収するための凝縮器(condenser)を備えることができる。
【0029】
また、前記蒸留を用いると、分離しようとする混合物を連続的に適用できるという利点がある。具体的には、分離しようとする混合物を前記蒸留器の上部に連続的に投入し、前記蒸留器の下部に精製された混合物を回収することができる。
【0030】
一方、本発明では、前記蒸留のために、前記段階1の生成物を150~250℃の温度、および0.001~2.0torrの圧力条件で蒸留する。
【0031】
前記温度は、蒸留のための温度であって、蒸留器外壁に備えられた熱源(例えば、heating media)を通じて調節することができる。前記温度が150℃未満の場合には蒸留の効果が微小であり、各種副産物と低分子量のオリゴマーを除去しにくいという問題がある。また、前記温度が250℃を超過すると、ポリトリメチレンエーテルグリコールの熱的酸化が発生するという問題がある。好ましくは、前記温度は160℃以上、または170℃以上であり、240℃以下、230℃以下、または220℃以下である。
【0032】
また、前記圧力は、蒸留器内部の圧力であって、分離しようとする物質の蒸気圧を下げるため、例えば、蒸留器内部と連結された真空ポンプを通して調節することができる。前記圧力が0.001torr未満である場合は、このような圧力を保持することが難しいだけでなく、各物質の蒸気圧が過度に低くなって分離効率が低下するおそれがある。また、前記圧力が2.0torr超過である場合には、各物質の蒸気圧を下げる効果が微小で、なお分離効率が低下するおそれがある。好ましくは、前記圧力は0.005torr以上、または0.01torr以上であり、1.5torr以下、1.0torr以下、0.9torr以下、0.8torr以下、0.7torr以下、0.6torr以下、0.5torr以下、0.4torr以下、0.3torr以下、0.2torr以下、または0.1torr以下である。
【0033】
一方、前記蒸留器内で揮発した各種副産物および低分子量のオリゴマーは、凝縮器を通して蒸留器の下部に排出され、これを通じて残りの精製された混合物を別に回収することができる。
【0034】
上述した本発明による製造方法によって製造される精製されたポリトリメチレンエーテルグリコールは、各種副産物および低分子量のオリゴマーを除去する効果がある。
【0035】
このような効果によって、前記段階1の生成物に比べて精製されたポリトリメチレンエーテルグリコールは分子量分布が狭くなり、低分子量のオリゴマーおよび各種副産物の含有量が低くなり、それに精製されたポリトリメチレンエーテルグリコール間の数平均分子量のばらつきが少なくなる効果がある。
【0036】
さらに、後述する実施例に示すように、前記段階1で製造したポリトリメチレンエーテルグリコールを一定量ずつ分離した多数のサンプルを分析すると、サンプル間の数平均分子量などのばらつきが大きく示されたが、前記段階2でのように蒸留すると、このようなサンプル間のばらつきが顕著に縮まることを確認することができた。
【0037】
したがって、本発明により各種副産物などを除去し、また、数平均分子量などが均一なポリトリメチレンエーテルグリコールを製造することができる。
【発明の効果】
【0038】
上述のように、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法は、高温に長時間露出せずとも、ポリトリメチレンエーテルグリコール生成物から各種副産物およびオリゴマーを効果的に除去することにより、各種副産物と低分子量のオリゴマーが除去されて、分子量のばらつきを減らすことができるという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、下記実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
【0040】
実施例
(段階1)
1,3-プロパンジオール(15kg)および硫酸(150g)を20Lの二重ジャケット付き反応器に充填した後、35時間窒素雰囲気下で166±1℃で加熱して重合物を製造し、副産物は上部コンデンサを通して除去した。製造された重合物の粘度は2300cps(at25℃)であった。以降、脱イオン水(5kg)を添加し、生成された混合物を窒素雰囲気下で95℃で4時間維持して、重合時に形成された酸エステルを加水分解した。加水分解後、1,000mLの脱イオン水中の124gのCa(OH)を添加し、窒素ストリーム下で攪拌しながら混合物を80℃で加熱した。中和を3時間続け、次いで生成物を減圧下で2時間、110℃で乾燥させ、Nutche filterを使用してろ過して、総8.7kgのポリトリメチレンエーテルグリコール生成物を得た。
【0041】
前記生成物をそれぞれ1kgずつ小分けして9個のサンプル(#1~9)を製造し、それぞれについて下記の物性を測定した。
【0042】
(1)OHVおよび末端基の平均分子量(Mn)
実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコール6gとアセチル化試薬(acetic anhydride/pyridine=10/40vol%)15mLを、100mLのフラスコに入れ、100℃で30分間還流雰囲気下で反応させた。反応後、常温に冷却し、純水50mLを注入した。前記で製造された反応物を自動滴定装置(製造会社:metrohm、Titrino716)を用いて、0.5ノルマル濃度のKOHで滴定反応を実施した。OHVは、下記数式1により計算した。
【0043】
【数1】
【0044】
上記数式1中、
56.11は、KOHの分子量を意味し、
0.5は、KOHのノルマル濃度を意味し、
Aは、blank testに使用されたNaOH溶液の分注量であり、
Bは、sample滴定に使用されたNaOH溶液の分注量である。
【0045】
前記測定されたOHVは、下記数式2により末端基の平均分子量(Mn)に換算した。
【0046】
【数2】
【0047】
上記数式2中、
56.11は、KOHの分子量を意味し、
2は、PO3Gの官能基数を意味する。
【0048】
(2)分子量分布(Mw/Mn)およびオリゴマー含有量(wt%)
実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコールを1%の重量濃度でTHF(tetrahydrofuran)に溶解し、Gel permeation chromatography(製造会社:WATERS、モデル:Alliance、Detecter:2414 RI Detector、Column:Strygel HR0.5/1/4)を用いて、Polyethylene glycolを標準物質として、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ算出した。このように測定されたMwおよびMnから分子量分布値とMn400以下の低分子量Oligomerの含有量を計算した。
【0049】
(3)カルボニル含有量(carbonyl value;ppmw)
実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコールを1%の重量濃度でメタノールに溶解し、これをUV spectrometry(製造会社:Varian、モデル:Cary300)を用いて測定した。測定されたCarbonyl吸光度は、standard reference(butyl aldehyde)を濃度に応じて2,4-Dinitrophenyl hydrazone誘導体に変換させて測定した検量データに合わせてカルボニル含有量を計算した。
【0050】
(4)PDO(1,3-プロパンジオール)含有量(wt%)
実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコール約0.5gをメタノール10mLに溶解した後、ガスクロマトグラフィー(model:agilent7890、column:DB-WAX)を用いて測定し、1,3-PDO約1gをメタノール10mLに溶解した後、濃度に応じてさらに希釈してstandard referenceとして測定して、ポリトリメチレンエーテルグリコールに含まれている1,3-PDO含有量を計算した。
【0051】
前記結果を下記表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
上記表1に示したように、同様の方法で製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールであるにもかかわらず、ポリトリメチレンエーテルグリコールと、1,3-プロパンジオール、およびオリゴマーの極性差によって各成分別分布の偏在化が確認された。特に、数平均分子量は最大175Daltonまでばらつきが発生し、分子量分布も各サンプル別に異なることが確認された。
【0054】
(段階2)
Lab scale薄膜蒸留装置を用いて、前記段階1で得られた各サンプルに対して精製を行った。具体的には、前記薄膜蒸留装置は、VTA社製のVKL-70-4modelで、condenserがdistillation column内部に設置されているShort path distillation typeであって、evaporation diameterおよびsurface areaがそれぞれ70mmおよび0.04mであった。Hot oil systemによってdistillation column jacketが適正温度にsettingされ、vacuum pumpによってcolumn内部が0.001~0.1torr水準の真空度が形成されると、前記で製造された各サンプルをdistillation上部に適正なfeed rateを投入した。この時、wiperが装着されているmechanical stirrerによりポリトリメチレンエーテルグリコールはcolumn内部で均一な厚さを有する薄膜として形成され、揮発した低分子量物質は内部のcondenserで凝縮されてdistillate側に排出し、精製ポリトリメチレンエーテルグリコールをresidueとして排出した。
【0055】
前記各サンプル別に適用した薄膜蒸留条件は下記表2のとおりであり、排出した精製ポリトリメチレンエーテルグリコールに対して前記段階1と同様の方法で物性を測定してその結果を下記表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
上記表2に示したように、薄膜蒸留工程を適用することによって、OligomerおよびPDOの含有量が低くなり、ポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量のばらつきが50dalton以下に低くなることを確認することができた。また、アルデヒド含有量を示すカルボニル価(carbonyl value)も大きく低くなって反応副産物の残留量も顕著に低くなることを確認することができた。