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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】空気タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20230508BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B60C11/12 C
B60C11/03 300E
B60C11/03 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020541426
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 FR2019050175
(87)【国際公開番号】W WO2019145656
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】1870086
(32)【優先日】2018-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ブロワン ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ボヌトン カンタン
(72)【発明者】
【氏名】カヴロ マリオン
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/072404(WO,A1)
【文献】実開昭61-143904(JP,U)
【文献】国際公開第2017/187960(WO,A1)
【文献】特開昭63-068407(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02965925(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00775600(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00729854(EP,A1)
【文献】特開平08-058314(JP,A)
【文献】中国実用新案第207128509(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03-11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのエッジ(2)、中心(3)、及び円周方向に配置された複数のブロック(10)を備えるトレッド(1)を有するタイヤであって、前記ブロックの各々は、前記エッジ(2)の一方から前記トレッドの前記中心(3)に向かって斜め方向に延び、前記複数のブロック(10)は、少なくとも2つの隣接するブロック(11、12)を備え、前記隣接するブロックの各隣接するブロックは、前記ブロックの長さ方向に沿って延びる少なくとも1つのサイプ(20、21、23)を有し、前記隣接するブロック(11、12)の各々は、前記ブロックに属する前記サイプの長さの総和に対応する全体的サイプ長さLGIを有し、
前記少なくとも2つの隣接するブロックの、前記サイプに対して横方向に測定された各幅(LB11、LB12)は相違し、かつ、前記少なくとも2つの隣接するブロックの各全体的サイプ長さLGIは相違し、
前記隣接するブロック(11、12)の各々に関して、前記ブロックの長さ方向に沿って延びる前記サイプの数である前記ブロックのサイプ数Nib、及び、前記ブロックの幅(LB11、LB12)は、3.5mm<LB/(Nib+1)<7mmとなるように選択されることを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記サイプ(20、21、23)は、前記ブロック(10)の各々を少なくとも2つのブロック部分に分割し、分割線は、実質的に前記ブロックの長さ方向に沿って延びる、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記隣接するブロック(11、12)のうちの少なくとも1つのブロックは、第1のサイプ(21)及び第2のサイプ(23)を備え、前記サイプの各々は、前記ブロックの長さに沿って延び、前記第1のサイプ(21)は深さHGEを有し、前記第1のサイプは、深部に拡大部(22)を有し、前記第2のサイプ(23)は深さHLを有し、0.1HGE<HL<0.9HGEである、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第2のサイプ(23)は深さHLを有し、0.4HGE<HL<0.6HGEである、請求項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1のサイプ(21)の深さHGEは、6mmから8mmの間である、請求項3又は4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1のサイプ(21)は、前記ブロックを2つのハーフブロックに分割する、請求項3から5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記隣接するブロック(11、12)のうちの少なくとも一方は、実質的に前記トレッド(1)の前記エッジ(2)の所まで延びている、請求項1からのいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記トレッドの前記エッジ(2)の所まで延びている前記隣接するブロック(11、12)は、少なくとも1つのブロックを2つの軸方向に相隔たる部分に分離する溝(5)を備える、請求項に記載のタイヤ。
【請求項9】
各ブロックにおける前記溝(5)により分離された各部分は、異なる数のサイプ(20、21、23)を備える、請求項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記トレッド(1)は方向性がある、請求項1からのいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのエッジ、中心、及び円周方向に配置された複数のブロックを備えるトレッドを有するタイヤに関し、各ブロックは、エッジの一方からトレッドの中心に向かって斜め方向に延び、複数のブロックは、少なくとも2つの隣接するブロックを備え、2つの隣接するブロックの各隣接するブロックは、ブロックの長さに沿って延びる少なくとも1つのサイプを有する。
【背景技術】
【0002】
仏国特許第2998511号には、溝によって離隔された複数のブロックを有するスノータイヤ用のトレッドが記載されている。ブロックは、サイプを備えている。ブロックは、所定の深さから始まるコンプレックスサイプと呼ばれる複数の部分に分離されたサイプを備えている。断面で見ると、各コンプレックスサイプは、トレッドの走行表面から半径方向に延びる第1の直線状部分、及び第1の部分の延長部をなしていて、各々が端部を有する少なくとも2つの枝部を備えた第2の部分を有する。トレッドは、各々がコンプレックスサイプの各枝部の間に延びる空所を有する。各空所は、枝部の端部と同じ高さ位置に位置した底部を有する。トレッドの空所及び溝は、トレッドが摩耗の終わりに35%以上の表面グルービング率を有するよう構成されている。さらに、2つの隣接するコンプレックスサイプの2つの枝部の間の距離Dは、少なくとも2mmに等しい。
【0003】
この実施形態は、所定の摩耗レベルから、雪で覆われた路面上での性能を改善するための空所を形成するのを可能にする。
【0004】
米国出願公開第2007/095447号には、溝を備えたブロックを有するタイヤトレッドが記載されている。新品状態のブロックの表面の下方で、溝は拡大部を有し、トレッドの摩耗が拡大部に達した際に拡大溝を形成するようになっている。
【0005】
これらの全ての実施形態は、摩耗の過程でタイヤの性能を高めるのを可能にする。しかしながら、製造業者は、特に冬用タイヤも関して、特に雨、雪、氷、もちろん乾燥した路面に関して考慮すべき非常に変化しやすい走行条件という理由で、条件が非常に厳しい場合に常に性能向上を模索している。これらの広範な条件を考慮することは、特定の条件で上手く機能する解決策は、場合によっては他の条件では悪い結果をもたらすという理由で特に注意を要する。さらに、騒音に関する要件もますます厳しくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】仏国特許第2998511号
【文献】米国出願公開第2007095447号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、広範な態様にわたって改善された性能を可能にするタイヤトレッドに関するニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
最初に、本発明の第1の目的は、トレッドが走行中に発生する騒音を低減するのを可能にするタイヤを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、乾いた路面上での性能を維持しながら雪で覆われた路面/濡れた路面上でのグリップに関して優れた折り合いを得ることを可能にするトレッドを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、耐久性を改善するのを可能にするタイヤ用トレッドを提供することにある。
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、2つのエッジ、中心、及び円周方向に配置された複数のブロックを備えるトレッドを有するタイヤを提供し、ブロックの各々は、エッジの一方からトレッドの中心に向かって斜め方向に延び、複数のブロックは、少なくとも2つの隣接するブロックを備え、隣接するブロックの各隣接するブロックは、ブロックの長さに沿って延びる少なくとも1つのサイプを有し、隣接するブロックの各々は、ブロックに属するサイプの長さの総和に対応する全体的サイプ長さLGIを有し、隣接するブロックの各幅LB11、LB12は相違しかつ隣接するブロックの各全体的サイプ長さLGIは相違する。
【0012】
このような構成は、共振周波数を最小にすることで、走行中に発生する騒音を低減することを可能にする。幅が低減されたブロックに関して、各サイプの間に十分な空間を維持し、結果的に薄肉領域におけるブロック部分の可能性のある断裂に関連するリスクを回避しながら、剛性レベルを維持するのを可能にするために、この場合長さを低減することでサイプの長さが適合される。このようなサイプの配置は、雪で覆われた路面上での良好なグリップレベルを得ることも可能にする。
【0013】
斜め方向は、タイヤの円周方向の中心に対して30度から60度、より好ましくは約45度であることが理解される。
【0014】
ブロックの幅を得るために、好ましくは、ブロックの始点、終点、及び中点で、サイプに対して横方向に測定されたブロックの幅の平均値が決定される。
【0015】
1つの好都合な実施形態によれば、サイプは、ブロックの各々を2つのハーフブロックに分割し、分割線は、実質的にブロックの長手方向である。
【0016】
好都合には、隣接するブロックの各々に関して、ブロックのサイプ数Nib及び幅LB11、LB12は、3.5mm<LB/(Nib+1)<7mmとなるように選択される。
【0017】
この特徴は、実質的に各ブロックの間の剛性を維持することを可能にする。雪で覆われた又は濡れた路面上での性能が好ましくなる。
【0018】
他の好都合な実施形態によれば、隣接するブロックのうちの少なくとも1つのブロックは、第1のサイプ及び第2のサイプを備え、サイプの各々は、ブロックの長さに沿って延び、第1のサイプは深さHGEを有し、第1のサイプは、深部に拡大部を有し、第2のサイプは深さHLを有し、0.1HGE<HL<0.9HGEである。
【0019】
拡大部は、例えば涙滴形状を形成するために、サイプの拡大領域を徐々に広げることで、トレッドの進行した摩耗レベル時を含む摩耗時にタイヤの特性及び性能を維持することを可能にする。深部に拡大部をもたない第2のサイプは、好都合には実質的に矩形形状を形成する。この種の形状は、ブロックの良好な剛性レベルを維持しながら雪で覆われた路面での良好なグリップ特性を得るためにサイプの密度を調整するのを可能にする。
【0020】
好都合な変形例によれば、第2のサイプは深さHLを有し、0.4HGE<HL<0.6HGEである。
【0021】
さらに好都合な変形例によれば、第1のサイプの深さHGEは、6mmから8mmの間である。このような深さは、極度の摩耗の場合でも特性を延ばすことを可能にする。
【0022】
1つの好都合な変形例によれば、第1のサイプは、ブロックを2つのハーフブロックに分割する。このような分割は、ハーフブロックの各々の性能を最適にするのを可能にする。
【0023】
さらに好都合な実施形態によれば、隣接するブロックのうちの少なくとも一方は、実質的にトレッドのエッジの所まで延びる。
【0024】
変形例において、トレッドのエッジの所まで延びている隣接するブロックは、少なくとも1つのブロックを2つの軸方向に相隔たる部分に分離する溝を備える。
【0025】
他の好都合な実施形態によれば、隣接するブロックの各部分は、異なる数のサイプを備える。
好都合には、トレッドは方向性がある。
【0026】
全ての実施形態の詳細は、非限定的な実施例を与える図1-6で補われる以下の説明で提示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】トレッドパターンブロックの実施例の概略断面図である。
図2】実質的に第1の例示的な実施形態に関する接触面に対応するトレッドの一部の概略図である。
図3】実質的に第2の例示的な実施形態に関する接触面に対応するトレッドの一部の概略図である。
図4】実質的に図3の実施例の変形例の実施形態に関する接触面に対応するトレッドの一部の概略図である。
図5】実質的に図3の実施例の変形例の実施形態に関する接触面に対応するトレッドの一部の概略図である。
図6】複数のサイプを備えるトレッドブロックの概略図であり、サイプの各々の長さが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図2は、タイヤのトレッド1の一部を示す第1の実施例の概略図である。このトレッドは、2つのエッジ2、中心3、及びトレッドにわたって円周方向に配置された複数のブロック10を有する。ブロック10は、好都合には、中心3に対して所定の傾斜、例えば30度から60度の間、より好ましくは45度の傾斜で配置されている。以下、この傾斜はブロックの斜め方向と呼ぶ。
【0029】
この実施形態において、ブロック10は、トレッドのエッジ2に対して僅かにオフセットして始まる。次に、ブロックは中心3に向かって延びる。複数のブロック10は、少なくとも2つの隣接するブロック11及び12を備える。ブロック11はブロック幅LB11であり、ブロック12はブロック幅LB12である。これらのブロックの各々は、ブロックの長さに沿って延びる少なくとも1つのサイプ20、21、23を備える。
【0030】
図2の実施例から、また図3から5の実施例からも分かるように、2つの隣接するブロック11及び12の幅LB11及びLB12は異なっている。図示の実施例において、幅LB11は幅LB12よりも大きい。
【0031】
また、これらの図面により、この2つの隣接するブロック11及び12のサイプ数Nibが異なることを確認することができる。2つの隣接するブロック11及び12の各々に関して、サイプ数Nib並びにブロックの幅LB11及びLB12は、寸法関係:3.5mm<LB/(Nib+1)<7mmに従って選択される。
【0032】
図2の実施例において、ブロック11に沿って延びる2つのサイプがあり、これらのブロックを4つの伸長及び平行部分に分割する。3つのサイプ20を備えるブロック10の実施例を通る断面を示す図1から分かるように、第1のサイプ21と呼ばれる中央サイプは、深さHGEでありかつ最深部に拡大部22を有する。第1のサイプ21は、ブロックを2つのハーフブロックに分割する。
【0033】
第2のサイプ23と呼ばれる側方サイプは深さHLである。深さHL及びHGEは、好都合には関係:0.1HGE<HL<0.9HGEに従って設けられる。変形例として、この関係は、0.4HGE<HL<0.6HGEにさらに制限される。
【0034】
第1のサイプ21の深さHGEは、6mmから8mmの間である。
【0035】
図3は、タイヤの第2の実施形態の概略図であり、2つの隣接するブロック11及び12のうちの少なくとも一方は、実質的にトレッド1のエッジ2の一方の所まで延びている。図示の実施例において、ブロック10の全てはエッジ2の所まで延びている。ブロックの軸方向外側部は、僅かに湾曲しているので、ブロックの軸方向外側端は円周方向中心3に対して実質的に直交する。
【0036】
図4は、図3の実施形態の変形例を構成するタイヤの第3の実施形態の概略図であり、溝5は、ブロックを軸方向に相隔たる2つの部分に離隔する。この例示的な実施形態において、サイプの数はブロックの両方で同一である。幅LB11の最も幅広のブロック11は、図1のブロックに示すような配置の3つのサイプを備える。幅LB12の最も幅狭なブロック12は、拡大部22の有無にかかわらず単一のサイプを有する。
【0037】
図5は、他の実施形態の変形例を示し、隣接するブロックの各部分は、異なる数のサイプ20、21、23を備える。サイプは拡大部22を有することができ又は有しなくてもよい。この実施例において、最も幅広の中央ブロックは3つのサイプを備え、最も幅広の側方ブロック11は2つのサイプを備える。最も幅狭な中央ブロックは単一のサイプを有し、最も幅狭な側方ブロック12は2つのサイプを有する。
【0038】
ブロックのサイプの各々の長さの総和に対応するブロックの全体的サイプ長さLGIは、横軸(タイヤの中心3に直交する)上への合計長さの投影を考慮する。図6は、中央サイプ21及び2つの側方サイプ23を有するトレッドブロック11の概略図である。各サイプの長さは、以下の通りである。すなわち、図面中の下部サイプ23の長さLia、ブロックの中央サイプ21の長さLib、及び図面中の上部サイプ23の長さLicである。従って、図6のブロック11の全体的サイプ長さLGIは、長さの総和Lia+Lib+Licである。
【0039】
単一のサイプ20を有するブロック12に関して、ブロックの全体的サイプ長さLGIは、この単一のサイプに対応し、横軸(タイヤの中心3に直交する)上への合計長さの投影を考慮する。図2は、ブロック12の長さLGIの例を示す。
【0040】
図示の種々の実施例において、トレッド1は好都合には方向性がある。
【符号の説明】
【0041】
1 トレッド
2 トレッドエッジ
3 トレッド中心
4 斜め溝
10 ブロック
11、12 隣接するブロック
20 サイプ
21 拡大部を有するサイプ
22 拡大部
23 拡大部のないサイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6