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  • -ねじ継ぎ手を締め付けるための電動工具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】ねじ継ぎ手を締め付けるための電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20230508BHJP
   B25B 21/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B25B23/14 620F
B25B23/14 610B
B25B21/00 M
B25B21/00 510B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020560126
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019058744
(87)【国際公開番号】W WO2019206609
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】1830145-7
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】レンブロム ヨーアン
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン リーサ エリーカ
(72)【発明者】
【氏名】ランツ ゴラン シバート
(72)【発明者】
【氏名】ノードストレーム タル ヨハンナ
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-054704(JP,A)
【文献】特開2015-089580(JP,A)
【文献】特開2002-346944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0001446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
B25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ継ぎ手を締め付けるための電動工具(10)であって、
前記電動工具(10)はハウジング(11)を含み、
前記ハウジング(11)は、
電気モータ(12)と、
前記電気モータ(12)に駆動的に接続された入力かさ歯車(17a)、及び、電動工具(10)の出力シャフト(16)に駆動的に接続された出力かさ歯車(17b)を含むアングル歯車(17)と、
前記入力かさ歯車(17a)の前のバックトルク応答値を測定するために配置されたバックトルク変換器(20)と、
前記出力かさ歯車(17b)の後のフロントトルクトルク応答値を測定するために配置されたフロントトルク変換器(21)と、
を封入し、
前記フロントトルク変換器(21)は、前記ハウジングに応答トルクを伝達するように配置され、かつフロントトルク変換器値を発生させるように配置されたフロント歪み測定センサを担持するフロントトルク伝達要素と、
フロントトルク変換器値を増幅するように配置され、かつフロント歪み測定センサの近くに配置されたフロント増幅器と、を含む、
ことを特徴とする電動工具(10)。
【請求項2】
電動工具(10)が手持ち式電動工具である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具(10)。
【請求項3】
前記バックトルク変換器(20)は、前記ハウジングに応答トルクを伝達して戻すように配置され、かつバックトルク変換器値を発生させるように配置されたバック歪み測定センサを担持するバックトルク伝達要素を含む、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動工具(10)。
【請求項4】
バックトルク変換器値を増幅するように配置され、かつバック歪み測定センサの近くに配置されたバック増幅器を更に含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動工具(10)。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の前記電動工具(10)を制御するように構成された、
電動工具コントローラ。
【請求項6】
前記フロントトルク変換器値又は前記バックトルク変換器値に基づいて前記電動工具(10)によって実行される締め付けを制御し、かつ該締め付けを制御するのに使用されない該フロントトルク変換器値又は該バックトルク変換器値に基づいて該締め付けをモニタするように作動することを特徴とする、
請求項3又は4に記載の電動工具(10)を制御するように構成された電動工具コントローラ。
【請求項7】
前記フロントトルク変換器値と前記バックトルク変換器値がトルク差限界値を超える時に締め付けを終了するように更に作動する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の電動工具(10)を制御するように構成された電動工具コントローラ。
【請求項8】
前記トルク差限界値を取り出すように更に作動する、
ことを特徴とする請求項7に記載の電動工具コントローラ。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の電動工具コントローラを更に含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動工具(10)。
【請求項10】
請求項5から請求項8のいずれか1項に従って前記電動工具コントローラ内で稼働する時に該電動工具コントローラに作動させるコンピュータプログラム、を含む、
ことを特徴とするコンピュータ可読ストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、ねじ継ぎ手を締め付けるための電動工具に関する。特に、精度の向上した電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
継ぎ手を締め付けるのに使用される電動レンチ及びナットランナーのようなトルク送出電動工具の産業用途では、継ぎ手が満足な程度まで締結されたことを検証するために、加えられたトルクをモニタすることが重要である。多くの場合に、予め決められた締め付け力を継ぎ手の中に導入することが望ましい。しかし、通常は、締め付け力をモニタすることは困難であり、従って、代わりに、特定のターゲットトルクを継ぎ手に導入するために締め付けを制御することが慣例である。
【0003】
送出トルクのモニタに関連する困難は、継ぎ手内の摩擦に起因してかつ予測不能な方式でモニタ値の精度に影響する工具の内側の歯車リップルなどに起因して損失が存在することである。継ぎ手内の摩擦は、異なる継ぎ手間で大きく変化する場合があるが、特定条件で特定継ぎ手に関して一定であると仮定することができ、実験により又は継ぎ手の締め付け中のリアルタイムモニタによりその両方で特定継ぎ手に対して摩擦を推定する方式が存在する。
【0004】
電動工具の内側の歯車リップルなどに起因する変動は、予測することがより困難である。歯車リップルに起因する変動はまた、電動工具の状態と共に変化する。電動工具の状態が低下した時に、電動工具の歯車リップルは、多くの場合に増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、正確な出力トルクを送出するようになった、かつ電動工具が点検を必要とする時を検出するようになった改善された電動工具の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、歯車リップルなどに起因する変動がより少ない正確な出力トルクを送出するための電動工具を提供することである。この目的は、電動工具のハウジングがバックトルク変換器とフロントトルク変換器の両方を封入する本発明の開示の例示的実施形態によって達成される。バックトルク変換器は、アングル歯車の一方の側に設けられる。そしてフロントトルク変換器は、アングル歯車の他方の側に設けられる。アングル歯車の各側に1つの2つのトルク変換器を有することにより、より正確なトルク結果を得ることが可能である。これは、取り分け、フロントトルク変換器が出力シャフト上の出力トルクをより正確に測定することができるからである。
【0007】
すなわち、本発明の開示の第1の態様は、ねじ継ぎ手を締め付けるための電動工具に関する。電動工具は、ハウジングを含む。ハウジングは、電気モータと、電気モータに駆動的に接続された入力かさ歯車及び電動工具の出力シャフトに駆動的に接続された出力かさ歯車を含むアングル歯車とを封入する。ハウジングは、更に、入力かさ歯車の前のバックトルク応答値を測定するために配置されたバックトルク変換器を封入する。電動工具は、出力かさ歯車の後のフロントトルクトルク応答値を測定するために配置されたフロントトルク変換器を更に含む。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、図面から及び図示の実施形態の詳細説明から明らかであろう。
【0009】
以下の詳細説明では、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の特定の実施形態による電動工具10の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1では、本発明の特定の実施形態による電動工具10が概略で示されている。電動工具10は、ハウジング11を含む。ハウジング11は、電気モータ12を封入する。ハウジング11は、更に、電気モータ12に駆動的に接続された入力かさ歯車17aと電動工具10の出力シャフト16に駆動的に接続された出力かさ歯車17bとを含むアングル歯車17を封入する。ハウジング11は、更に、入力かさ歯車17aの前のバックトルク応答値を測定するために配置されたバックトルク変換器20を封入する。言い換えると、一実施形態では、バックトルク変換器20は、モータ12と入力かさ歯車17aの間のバックトルク応答値を測定するように配置される。ハウジング11によって同じく封入されるのは、出力かさ歯車17bの後のフロントトルクトルク応答値を測定するために配置されたフロントトルク変換器21である。言い換えると、一実施形態では、フロントトルク変換器21は、出力かさ歯車17bから伝達されるフロントトルクトルク応答値を測定するように配置される。
【0012】
本発明の開示の例示的実施形態による一般的な考えは、バックトルク変換器20とフロントトルク変換器21の両方がハウジング11に封入された電動工具10を提供することである。1つの利点は、全ての部品がハウジングに封入されるので、電動工具10を手持ち式にすることができることである。全ての要素をこのハウジング11に封入させることによる別の利点は、全ての部品がハウジング11に封入されるので、取り付けと物流管理がより容易であることである。
【0013】
バックトルク変換器20は、アングル歯車17の後側に設けられる。そしてフロントトルク変換器21は、アングル歯車17の前側に設けられる。アングル歯車17の各側に1つの2つのトルク変換器20,21を有することにより、より正確なトルク結果を得ることが可能である。これは、取り分け、フロントトルク変換器21が出力シャフト16上の出力トルクをより正確に測定することができるからである。
【0014】
本発明の開示の一例示的実施形態により、電動工具10は、手持ち式電動工具10である。一例示的実施形態により、電動工具10のハウジング11は、オペレータにとって保持するのがより人間工学的であるように成形される。この実施形態による利点は、電動工具10がより人間工学的になることである。オペレータの負傷のリスクは、それによって低減される。
【0015】
本発明の開示の一例示的実施形態では、フロントトルク変換器21は、ハウジング11に応答トルクを伝達するように配置され、かつフロントトルク変換器値を発生させるように配置されたフロント歪み測定センサ(図示しない)を担持するフロントトルク伝達要素(図示しない)を含む。
【0016】
本発明の開示の更に別の例示的実施形態では、バックトルク変換器20は、ハウジング11に応答トルクを伝達して戻すように配置され、かつバックトルク変換器値を発生させるように配置されたバック歪み測定センサ(図示しない)を担持するバックトルク伝達要素(図示しない)を含む。
【0017】
本発明の開示の一例示的実施形態では、電動工具10は、バックトルク変換器値を増幅するように配置され、かつバック歪み測定センサの近くに配置されたバック増幅器を含む。
【0018】
本発明の開示の一例示的実施形態により、電動工具10は、フロントトルク変換器値を増幅するように配置され、かつフロント歪み測定センサの近くに配置されたフロント増幅器を更に含む。
【0019】
本発明の開示の別の例示的実施形態により、電動工具10は、更に、フロントトルク変換器値とバックトルク変換器値がフロントトルク変換器値とバックトルク変換器値の間の差であるトルク差限界値を超える時に締め付けを終了するように作動する。
【0020】
本発明の開示の更に別の例示的実施形態では、電動工具10は、更に、トルク差限界値を取り出すように作動する。
【0021】
本発明の開示は、更に、上述の例示的実施形態のいずれかによる電動工具10を制御するように構成された電動工具コントローラ(図示しない)に関する。
【0022】
本発明の開示の一例示的実施形態では、電動工具コントローラは、フロントトルク変換器値又はバックトルク変換器値に基づいて電動工具10によって実行される締め付けを制御し、かつ締め付けを制御するのに使用されないフロントトルク変換器値又はバックトルク変換器値に基づいて締め付けをモニタするように作動する。
【0023】
本発明の開示の別の例示的実施形態により、電動工具コントローラは、更に、フロントトルク変換器値とバックトルク変換器値がフロントトルク変換器値とバックトルク変換器値の間の差であるトルク差限界値を超える時に締め付けを終了するように作動する。
【0024】
本発明の開示の更に別の例示的実施形態では、電動工具コントローラは、更に、トルク差限界値を取り出すように作動する。
【0025】
本発明の開示の別の例示的実施形態により、電動工具は、上述の実施形態のいずれかによる電動工具コントローラを更に含む。
【0026】
本発明の開示は、電動工具コントローラ内で稼働する時に電動工具コントローラに上述の実施形態のいずれかに従って作動させるコンピュータプログラムを含むコンピュータ可読ストレージ媒体にも関する。
【0027】
以上、本発明を特定の実施形態を参照して説明した。しかし、本発明は、これらの実施形態に制限されない。本発明は以下の特許請求の範囲によって定められるその保護範囲内に更に別の実施形態を含むことは当業者には明らかにである。
【符号の説明】
【0028】
10 電動工具
11 ハウジング
17a 入力かさ歯車
17b 出力かさ歯車
20 バックトルク変換器
図1