(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】印刷機の照明装置および検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20230508BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20230508BHJP
【FI】
G01N21/84 E
F21V29/503
(21)【出願番号】P 2020571288
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004799
(87)【国際公開番号】W WO2020162593
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2019021242
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000184735
【氏名又は名称】株式会社小森コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】津村 祐助
(72)【発明者】
【氏名】千葉 丈士
(72)【発明者】
【氏名】山本 修
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159941(WO,A1)
【文献】特開2016-198899(JP,A)
【文献】特開平6-90328(JP,A)
【文献】特開平10-322521(JP,A)
【文献】特開2017-177495(JP,A)
【文献】特開昭59-128418(JP,A)
【文献】特開2014-120409(JP,A)
【文献】特開2017-207427(JP,A)
【文献】特開2013-75519(JP,A)
【文献】特開2012-69395(JP,A)
【文献】特開2008-198478(JP,A)
【文献】特開2009-286538(JP,A)
【文献】特開2009-285909(JP,A)
【文献】特開2010-735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0046233(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
B41F 21/00-B41F 35/06
B41J 2/00-B41J 2/215
F21S 2/00
F21S 8/00
F21V 23/00-F21V 99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されているシートまたはウェブに光を照射する
印刷機の照明装置であって、
光源と、
印刷が施されたシートまたはウェブと対向する端部にシートまたはウェブの幅方向にライン状に開口する照射口と、
前記光源に冷却風を供給するエアー吹出し部材とを備え、
シートまたはウェブにはカラーバーが印刷され、
前記照射口は、第1の板状部と第2の板状部が互いに平行に向かい合った平行部の間に形成され、
前記照射口の、シートまたはウェブの前記幅方向とは直交する方向の開口幅は、前記カラーバーの、シートまたはウェブの前記幅方向とは直交する方向の幅より狭く、
前記エアー吹出し部材から吹き出されたエアーは、前記照射口から外へ排出され、
搬送されているシートまたはウェブ
の前記カラーバーにライン状の光を照射することを特徴とする
印刷機の照明装置。
【請求項2】
請求項1記載の
印刷機の照明装置において、
前記第1の板状部と前記第2の板状部は、前記光源側から前記照射口に向かうにしたがってこれら両板状部どうしの間隔が次第に狭くなるように傾斜した反射部を有していることを特徴とする
印刷機の照明装置。
【請求項3】
請求項1記載の
印刷機の照明装置において、
前記照射口がシートまたはウェブを指向する使用位置と、前記照射口がシートまたはウェブから退避する退避位置との間で揺動可能に支持されていることを特徴とする
印刷機の照明装置。
【請求項4】
請求項1記載の
印刷機の照明装置において、
さらに、
前記光源およびエアー吹出し部材を収容する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記照射口を有する遮光部材とを備え、
前記筐体は、支持用フレームを介して印刷機に支持され、
前記支持用フレームに対する前記筐体の取付け角度が調整可能であることを特徴とする
印刷機の照明装置。
【請求項5】
請求項1~
請求項4のいずれか一つに記載された
印刷機の照明装置と、
シートまたはウェブに印刷されたカラーバーをシートまたはウェブの搬送中に前記照明装置の光が照射された状態で撮像する撮像部と、
シートまたはウェブの種類を検知する種類検知部と、
前記撮像部によって撮像された画像データの色測定値を取得する取得部と、
シートまたはウェブの種類毎に補正値を記憶した記憶部と、
前記種類検知部によって検知されたシートまたはウェブの種類に対応する前記補正値を前記記憶部から読み出し、前記取得部が取得した前記色測定値と前記補正値とを用いて前記カラーバーの濃度値を演算によって求める演算部と、
前記濃度値を判定基準値と比較して良否判定を行う判定部とを備えていることを特徴とする検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートまたはウェブに印刷された絵柄に光を照射する照明装置およびこの照明装置を備えた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷機としては、インライン濃度測定装置と呼ばれる装置で印刷後の色の濃度を測定し、この濃度を用いて印刷の良否を判定する検査装置を備えたものがある。従来のインライン濃度測定装置は、例えば特許文献1に記載されている。
特許文献1に開示されたインライン濃度測定装置は、印刷後に搬送されているシート状物のカラーバーをカメラで撮像し、得られた画像データの色測定値(RGB値)を演算によって換算濃度値に換算する。この換算濃度値と、予め定めた判定基準となる基準濃度値との差が許容範囲内にある場合に検査装置によって良好であると判定される。
【0003】
色測定値を換算濃度値に換算するためには、換算式が用いられる。この換算式は、カラーバーを専用の自走式濃度計で読み取って得られた基準濃度値と、このカラーバーをカメラによって撮像して得られた画像データの色測定値(以下においては基準色測定値という)とを使用して作成されている。換算式は、基準色測定値から基準濃度値が算出されるような数式である。
【0004】
カメラで撮像して得られた画像データは、カラーバーの周辺の絵柄の影響を受ける。このため、印刷されている絵柄が変わると、基準濃度値でカラーバーが印刷されていても、カメラで撮像された画像データの色測定値が基準色測定値とは異なるようになる。よってこの場合は、カラーバーの色測定値を正確に測定することが出来なくなり、それに従って、換算式を用いて求める換算濃度値も正確に求めることが出来なくなる。このため、印刷機のジョブが切り替わり、印刷物の絵柄が変わった場合に、再度、カラーバーを専用の自走式濃度計で読み取って得られた基準濃度値と、このカラーバーをカメラによって撮像して得られた画像データの基準色測定値とを使用して換算式を作成しなおさなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のインライン濃度測定装置では、カメラで撮像して得られた画像データがカラーバーの周辺の絵柄の影響を受けるために、印刷ジョブ切り替えの際にその都度、換算式を作成しなおさなければならなかった。このため、印刷ジョブを切り替えるときの効率が悪くなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、シートまたはウェブの検査領域のみに光を照射することが可能な照明装置を提供することである。また、本発明の別の目的は、印刷ジョブを切り替えるときの効率を高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る照明装置は、搬送されているシートまたはウェブに光を照射する照明装置であって、光源と、シートまたはウェブと対向する端部にシートまたはウェブの幅方向にライン状に開口する照射口とを備え、前記照射口は、第1の板状部と第2の板状部が互いに平行に向かい合った平行部の間に形成され、搬送されているシートまたはウェブにライン状の光を照射するものである。
【0009】
本発明に係る検査装置は、前記発明の照明装置と、シートまたはウェブに印刷されたカラーバーをシートまたはウェブの搬送中に前記照明装置の光が照射された状態で撮像する撮像部と、シートまたはウェブの種類を検知する種類検知部と、前記撮像部によって撮像された画像データの色測定値を取得する取得部と、シートまたはウェブの種類毎に補正値を記憶した記憶部と、前記種類検知部によって検知されたシートまたはウェブの種類に対応する前記補正値を前記記憶部から読み出し、前記取得部が取得した前記測定値と前記補正値とを用いて前記カラーバーの濃度値を演算によって求める演算部と、前記濃度値を判定基準値と比較して良否判定を行う判定部とを備えているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、シートまたはウェブの検査領域のみに照明装置の光を照射することができる。このため、カラーバーを撮像するにあたっては、カラーバーの周辺の絵柄の影響を受けることなくカラーバーを撮像装置によって撮像することができ、撮像によりカラーバーの本来の色の画像データが得られる。したがって、印刷ジョブ切り替えの際に換算式を作成しなおすことが不要になるから、印刷ジョブを切り替えるときの効率が高くなる照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明に係る照明装置および検査装置を備えた巻紙オフセット印刷機の側面図である。
【
図2】
図2は、印刷機の一部を拡大して示す側面図である。
【
図4】
図4は、照明装置をカメラ側から見た背面図である。
【
図6】
図6は、
図4における照明装置のVI-VI線断面図である。
【
図8】
図8は、検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、他の実施の形態を示す枚葉オフセット印刷機の側面図である。
【
図10】
図10は、枚葉オフセット印刷機の要部を拡大して示す側面図である。
【
図11】
図11は、他の実施の形態を示す枚葉オフセット印刷機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る照明装置および検査装置の一実施の形態を
図1~
図8を参照して詳細に説明する。この実施の形態においては、本発明を巻紙オフセット印刷機に適用する例を示す。
【0013】
図1に示す巻紙オフセット印刷機1は、
図1において最も左側にウェブ供給部2を有し、このウェブ供給部2から
図1において右側にウェブ3を送るものである。ウェブ供給部2の右隣にはインフィールド部4が設けられ、さらにその右隣には印刷部5が設けられている。印刷部5は、第1~第4の印刷ユニット6~9でそれぞれウェブ3の表裏両面に印刷を施す。印刷部5よりウェブ3の搬送方向下流側には、乾燥部10と、冷却部11と、折機12とがこの順序で並べて設けられている。冷却部11の上方にはウェブパス部13が設けられている。ウェブ3は、ウェブパス部13から折機12に送られる。
【0014】
ウェブパス部13は、
図2に示すように、複数のローラ21にウェブ3を巻掛けて上方に送る構成が採られている。ウェブパス部13の下部には、本発明に係る検査装置22(
図8参照)の一部を構成する二つの照明装置23と、二つのカメラ24とが設けられている。照明装置23とカメラ24は、ウェブパス部13内で上下方向に離れた2箇所にそれぞれ配置されている。下側の照明装置23は、ウェブパス部13内を上方に進むウェブ3の表面に斜め上方から光を照射する。上側の照明装置23は、ウェブパス部13内を上方に進むウェブ3の裏面に斜め上方から光を照射する。
【0015】
下側のカメラ24は、下側の照明装置23によって光が照射されたウェブ3を水平方向から撮像し、画像データを後述する制御装置25(
図8参照)に送る。制御装置25の構成は後述する。上側のカメラ24は、上側の照明装置23によって光が照射されたウェブ3を水平方向から撮像し、画像データを制御装置25に送る。これらのカメラ24は、それぞれラインカメラからなり、ウェブ3の幅方向の一端から他端まで同時に撮像できるものである。
【0016】
この実施の形態によるカメラ24は、
図3に示すように、ウェブ3の印刷部3aの近傍の余白部分に設けられているカラーバー26を撮像する。
図3は、切断されたウェブ3の端部を示している。カラーバー26は、所定の幅D1でウェブ3の幅方向(
図3においては左右方向)の一端部から他端部まで延びており、この幅方向に並ぶ多数のカラーパッチ26aによって構成されている。各カラーパッチ26aは、第1~第4の印刷ユニット6~9で色の濃度が所定の濃度となるように、例えば100%となるように印刷されている。
【0017】
照明装置23は、
図4に示すように、カメラ側から見てウェブ3の幅方向(
図4においては左右方向)の一端側から他端側まで延びる細長い形状に形成されており、長手方向の両端部が印刷機1の一対のフレーム31,32に支持用フレーム33を介して取付けられている。支持用フレーム33は、印刷機1の一対のフレーム31,32の間に架け渡されており、これらのフレーム31,32にそれぞれ支軸34を介して揺動可能に支持されている。支軸34は、支持用フレーム33の下端部に接続されている。このため、支持用フレーム33は、
図5に示すように、
図5中に実線で示す使用位置と、
図5中に二点鎖線で示す退避位置との間で揺動可能である。
【0018】
フレーム31,32には、支持用フレーム33の位置を規定するために、上部ストッパー35と下部ストッパー36とが設けられている。上部ストッパー35は、支持用フレームが使用位置からウェブ3側に倒れることを規制している。使用位置にある支持用フレーム33の上端部には、フレーム31,32の係合部材37(
図4参照)に着脱可能に係合するロックピン38が設けられている。ロックピン38が係合部材37に挿入されて係合することにより、支持用フレーム33が使用位置に保持される。ロックピン38が係合部材37から引き抜かれて係合が解除されることにより、支持用フレーム33が使用位置から退避位置に向けて揺動可能になる。この実施の形態による支持用フレーム33は、揺動時に作業者(図示せず)が両手で把持するためのハンドル39を備えている。
下部ストッパー36は、退避位置に揺動した支持用フレーム33を下方から支え、支持用フレーム33が退避位置から下方に揺動することを規制する。
【0019】
照明装置23は、
図6に示すように、一側部が開口した箱状の筐体41と、この筐体41の開口部に取付けられた遮光部材42と、筐体41の中に収容された、光源43を有する発光器44などを備えている。
筐体41は、
図4に示すように、ウェブ3の幅方向に長く形成されている。ウェブ3の長手方向において、筐体41の長さは、ウェブ3の幅より長い。この筐体41は、長手方向の両端部が支持用フレーム33にそれぞれブラケット45(
図5参照)を介して取付けられている。筐体41のブラケット45への取付けは、
図5に示すように、ブラケット45を貫通する複数の取付用ボルト46を筐体41に螺着することによって行われている。この実施の形態においては、筐体41の取付け角度を変えることができるように、ブラケット45に取付用ボルト46を通すための円弧状の長穴47が形成されている。
【0020】
遮光部材42は、
図6に示すように、ウェブ3と対向する端部にウェブ3の幅方向にライン状に開口する照射口61を有している。この実施の形態による遮光部材42は、
図6において筐体41の上部に取付けられた第1の板状部62と、
図6において筐体41の下部に取付けられた第2の板状部63とを有している。
これらの一対の第1および第2の板状部62,63は、それぞれ金属製の板を所定の形状に曲げて互いに平行となるように形成されている。また、これらの第1および第2の板状部62,63は、ウェブ3の幅方向において、筐体41と同一の長さに形成されている。
【0021】
さらに、第1および第2の板状部62,63は、光源43側から照射口61に向かうにしたがってこれら両板状部62,63どうしの間隔が次第に狭くなるように傾斜した第1および第2の反射部62a,63aと、これらの第1および第2の反射部62a,63aの先端から発光器44の光軸Cと平行に延びる第1および第2の平行部62b,63bとを有している。
照射口61は、第1の板状部62と第2の板状部63が互いに平行に向かい合った第1の平行部62bと第2の平行部63bとの間に形成されている。
第1の平行部62bと第2の平行部63bとの間隔、すなわち照射口61の、ウェブ3の幅方向とは直交する方向の開口幅D2は、前記カラーバー26の、ウェブ3の幅方向とは直交する方向の幅D1(
図3参照)より狭い。このため、照射口61は、カラーバー26の幅D1より細いライン状の光を照射する。
【0022】
発光器44は、光源43と、筐体41の開口部側に位置するレンズ64と、光源43の近傍に位置するエアー吹出し部材65とを備えている。
光源43は、多数のLED43aによって構成されている。これらのLED43aは、光軸Cが基板66と垂直になるようにそれぞれ基板66に実装されており、筐体41の長手方向の全域に所定の間隔をおいて並ぶように設けられている。
レンズ64は、光源43の光が遮光部材42内の全域に拡散されるように構成されている。このレンズ64によって拡散された光は、その一部が直接照射口61に向かい、他の大部分が第1および第2の反射部62a,63aで反射して照射口61に向かう。このため、照射口61からは光軸Cと平行あるいは略平行な方向に光が照射され、ウェブ3に幅方向とは直交する方向において幅が狭いライン状の光が照射されるようになる。
【0023】
エアー吹出し部材65は、図示していないエアー供給源から送られたエアーが吹き出すものである。このエアー吹出し部材65は、LED43aを挟む両側に配置され、エアーがLED43aに吹付けられるように筐体41に支持されている。LED43aにエアーが吹付けられることにより、LED43aが冷却される。なお、このエアー吹出し部材65は、
図6中に二点鎖線で示すように、基板66の裏面にエアーが吹付けられるように配置してもよい。
エアー吹出し部材65から吹き出したエアーは、遮光部材42内を通って照射口61から照明装置23の外に排出されるため、照射口61からエアーが吹き出すこととなり、照射口61の近傍は、常にエアーが流れている状態になる。これにより、ウェブ3から生じた紙粉や、第1~第4の印刷ユニット6~9で生じたインキミストなどが、照射口61から遮光部材42内に入ってレンズ64や光源43に付着してしまったり、照射口61の先端部に付着して照射口61を塞いでしまったりすることを防ぐ。
【0024】
カメラ24は、
図7に示すように、印刷機1の一対のフレーム31,32に架け渡された支持部材67に取付けられており、ウェブ3の幅方向の中央部と対応する位置に配置されている。
検査装置22は、
図8に示すように、印刷機1の動作を制御する制御装置25の一部と、上述した照明装置23およびカメラ24と、後述する自走式濃度計71と、表示装置72などを備えている。自走式濃度計71は、印刷部3a(
図3参照)毎に分断されたウェブ3の基準となるカラーバー26を専用の画像読取り器(図示せず)で読取り、この画像読取り機で得られた画像データから各カラーパッチ26aの色の濃度を測定する。測定結果は、基準濃度値として制御装置25に送られる。表示装置72は、印刷機1の運転状況や各種のアラームなどが表示される。
【0025】
制御装置25は、印刷部73と、検査部74と、記憶部75と、判定部76とを備えている。印刷部73は、印刷機1の駆動用モータ(図示せず)や各種のアクチュエータの動作を制御する。
検査部74は、照明部81と、撮像部82と、取得部83と、演算部84と、種類検知部85とを備えている。
照明部81は、光源43の点灯、消灯を切り替える。撮像部82は、カメラ24と、カメラ24の撮像動作を制御する回路(図示せず)などによって構成され、ウェブ3の搬送中にカラーバー26をカメラ24によって撮像する。
【0026】
取得部83は、カメラ24によって撮像された画像データの色測定値(RGB値)を取得する。ここでいう画像データは、カラーバー26のカラーパッチ26a毎の画像データである。
演算部84は、予め用意されている換算式86と、記憶部75に保存されている補正値87とを使用して演算を行う。この換算式86は、自走式濃度計71で測定された基準のカラーバー26と同等のカラーバー26をカメラ24で撮像して得られた基準の色測定値から、自走式濃度計71で測定された基準濃度値が算出されるような数式である。この換算式86は、本発明の出願人が先に出願した例えば特開2013-75519号公報に記載されている数式と同等の数式を用いることができる。この換算式86を用いることにより、基準ではないカラーバー26を撮像して得られた色測定値から濃度値を換算することができる。この演算により求めた濃度値を以下においては「換算濃度値」という。
【0027】
補正値87は、ウェブ3の種類毎に定められている。ウェブ3の種類が異なると、同一の濃度で印刷されているにもかかわらず、カメラ24で撮像した色測定値に基づく換算濃度値で基準濃度値と比較すると異なるようになる。補正値87は、このようなウェブ3の種類に起因して異なる演算結果を補正するための値である。すなわち、カメラ24で撮像して得られた実際の画像データの色測定値と、上述した換算式86および補正値87とを使用して演算部84が演算をすることにより、補正値87で補正された補正済みの換算濃度値が得られる。
ウェブ3の種類のデータは、印刷部73が印刷動作を制御するために用いる基本のデータに含まれている。種類検知部85は、この基本のデータからウェブ3の種類のデータを読み出す。
【0028】
記憶部75は、ウェブ3の種類毎の上述した補正値87を補正処理テーブルとして記憶している。
判定部76は、補正済みの換算濃度値と予め定めた判定の基準となる基準濃度値(判定基準値)とをカラーパッチ26a毎に比較し、これらの値の差が許容範囲内であれば良であると判定し、許容範囲外であれば不良と判定する。判定部76は、この良否判定の判定結果を表示装置72に表示する。
【0029】
このように構成された検査装置22を有する印刷機1において、ウェブ3に印刷が行われると、ウェブパス部13でカメラ24によってカラーバー26が撮像され、この撮像により得られた画像データに基づいて判定部76がインキの濃度の良否判定を行う。
この良否判定は、カメラ24で撮像して得られた実際の画像データの色測定値と、換算式86と、現在のウェブ3の種類に対応する補正値87とを用いて演算部84が求めた補正済みの換算濃度値と、判定の基準となる基準濃度値とを判定部76が比較して行われる。
【0030】
カメラ24で撮像して得られた実際の画像データの色測定値は、第1~第4の印刷ユニット6~9でインキ供給量が変わらなければ、ウェブ3に印刷されている絵柄が変わったとしても変化することはない。この理由は、照明装置23でウェブ3のカラーバー26にライン状の光を照射しており、カラーバー26のみに照明装置23の光を照射することができるからである。このため、カラーバー26の周辺の絵柄の影響を受けることなくカラーバー26をカメラ24によって撮像することができ、撮像によりカラーバー26の本来の色の画像データが得られる。
【0031】
絵柄が変わったとしてもカメラ24で撮像した画像データの色測定値が変わらないことは、従来の装置で行っていた換算式を求めなおすことが不要になることを意味する。したがって、この実施の形態によれば、印刷ジョブ切り替えの際に換算式を求めなおすことが不要になるから、印刷ジョブを切り替えるときの効率が高くなる照明装置を提供することができる。
【0032】
この実施の形態による照射口61は、第1の板状部62と第2の板状部63が互いに平行に向かい合った第1の平行部62bと第2の平行部63bとの間に形成されている。このため、光軸Cと平行あるいは略平行ではない光が第1の板状部62と第2の板状部63とによって遮られるようになるから、実質的に平行光がカラーバー26に照射されるようになる。
【0033】
この結果、照明装置23の照明がカラーバー部分のみに照射され、カラーバー26の周辺の絵柄からの拡散光の影響を受けることがなくなる。このため、高精度な濃度測定が可能となり、換算式を求めなおす頻度を低減できるから、無駄になるウェブ3を節約できるし、本印刷に移行するまでの準備に要する作業時間を節約することができる。
【0034】
この実施の形態による照明装置23は、エアー吹出し部材65を備えている。このため、レンズ64や光源43、照射口61へのインキミストや紙粉などの汚れの付着を防ぐことができ、メンテナンス頻度を低減できるとともに、検査性能および濃度測定の性能を高く保つことが可能になる。
また、この照明装置23は、エアー吹出し部材65を備えているから、光源43(LED43a)を冷却風で冷却して輝度変化を少なく抑えることができる。
【0035】
この実施の形態による第1の板状部62と第2の板状部63は、光源43側から照射口61に向かうにしたがってこれら両板状部62,63どうしの間隔が次第に狭くなるように傾斜した第1および第2の反射部62a,63aを有している。
このため、照射口61からカラーバー26に向けて強い(明るい)光を照射することが可能になるから、カラーバー26と周辺の絵柄との明暗差が大きくなり、撮像にあたって周辺の絵柄の影響をより一層受け難くなる。したがって、自走式濃度計71で測定された基準濃度値に近い濃度値がカメラ24を使用して得られるようになり、判定部76による判定結果の信頼性が高くなる。
【0036】
この実施の形態による照射口61の、ウェブ3の幅方向とは直交する方向の開口幅D2は、カラーバー26の、ウェブ3の幅方向とは直交する方向の幅D1より狭い。この照明装置23によれば、カラーバー26のみが照明され、安定したスリット光源が生じるようになる。したがって、濃度の良否判定の精度が更に高くなる。
【0037】
この実施の形態による検査装置22において、印刷ジョブが変わってウェブ3の種類が変わった場合は、種類検知部85が新たなウェブ3の種類を検知する。そして、演算部84がこのウェブ3の種類に応じた補正値87と、新しいウェブ3に印刷されたカラーバー26をカメラ24で撮像して得られた色測定値と、換算式86とを用いて新しいウェブ3に対応した補正済みの換算濃度値を求める。
したがって、この実施の形態によれば、印刷資材(ウェブ3)は変わらずに絵柄だけが変わる場合だけではなく、印刷資材が変わる場合であっても、補正処理を行わずに濃度測定を行うことができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
照明装置は
図9および
図10に示すように構成することができる。これらの図において、
図1~
図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図9に示す印刷機91は、枚葉オフセット印刷機で、
図9の右側の端部にシート92を供給するシート供給部93が設けられている。この印刷機1は、第1~第6の印刷ユニット94~99を有する印刷部100と、この印刷部100よりシート92の搬送方向下流側に位置するコーティング部101と、このコーティング部101でコーティングされたシート92を乾燥させて排紙パイル102に排出するシート排出部103とを備えている。第1~第6の印刷ユニット94~99は、シート92の一方の面に印刷を施す。
【0039】
この実施の形態においては、コーティング部101の圧胴104と対向する位置に本発明に係る照明装置23が配置されている。この実施の形態による照明装置23は、
図10に示すように、圧胴104の真上に配置され、圧胴104によって搬送されるシート92の上面(印刷面)にライン状の光を照射する。圧胴104から上方に離間した位置にカメラ24が設けられている。
この実施の形態においては、シート92のカラーバー26を周囲の絵柄の影響を受けることなくカメラ24で撮像することができる。したがって、この実施の形態によれば、枚葉オフセット印刷機1の印刷ジョブを切り替えるときの効率が高くなる。
【0040】
(第3の実施の形態)
照明装置は
図11に示すように構成することができる。
図11において、
図1~
図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図11に示す印刷機111は、枚葉オフセット印刷機で、
図11の右側の端部にシート112を供給するシート供給部113が設けられている。この印刷機111は、両面印刷を行う印刷部114と、この印刷部114よりシート112の搬送方向下流側に設けられた検査部115と、この検査部115で検査されたシート112をチェーン式の搬送装置116で送って複数のデリバリーパイル117~119に排出するシート排出部120とを備えている。
【0041】
印刷部114は、シート112の表面に印刷を施す第1~第5の表印刷ユニット121~125と、シート112の裏面に印刷を施す第1~第5の裏印刷ユニット126~130とを備えている。
検査部115は、上流側表検査ユニット131および上流側裏検査ユニット132と、下流側表検査ユニット133と下流側裏検査ユニット134とを備えている。
上流側表検査ユニット131と上流側裏検査ユニット132は、可視光カメラ135でシート112の印刷品質の検査とカラーバー26の濃度検査とを行う。この実施の形態においては、この可視光カメラ135で撮像するシート112に本発明の照明装置23でライン状の光を照射する。可視光カメラ135は、第1の実施の形態を採るときに用いたカメラ24と同等のものである。
【0042】
下流側表検査ユニット133と下流側裏検査ユニット134は、紫外光カメラ136でシート112の印刷品質の検査を行う。
この実施の形態によれば、シート112の表面と裏面の両方においてインキの濃度検査を行うことができる。しかも、カラーバー26の周辺の絵柄の影響を受けることなく可視光カメラ135でカラーバー26を撮像できるから、この枚葉オフセット印刷機111の印刷ジョブを切り替えるときの効率が高くなる。
【0043】
上述した各実施の形態においては、カラーバーを撮像してインキの濃度を検査する濃度検査装置に本発明の照明装置を用いる場合の例について記載した。しかし、本発明の照明装置は、このような限定にとらわれることなく、印刷した絵柄部分の印刷の欠落や汚れの付着などの印刷不良の有無を検査する絵柄検査装置に用いても良い。この場合でも検査領域はライン状の狭い領域に対して光が照射されることで、非検査領域の絵柄の影響を受けずに検査領域が強調され、従来の広範囲を照射する光による検査よりも高精度に印刷不良を検出することができる。
【符号の説明】
【0044】
3…ウェブ、23…照明装置、43…光源、61…照射口、62…第1の板状部、62b…第1の平行部、63…第2の板状部、63b…第2の平行部、92,112…シート。