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特許7273890多レンズ素子を位置合わせするためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】多レンズ素子を位置合わせするためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20230508BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20230508BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G03B17/02
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021080993
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2021179609
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】15/930,546
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504133796
【氏名又は名称】エーエスエムピーティー・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ポー・ラム・オウ
(72)【発明者】
【氏名】リアンチェン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ティン・タン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ルク・ライ
(72)【発明者】
【氏名】チ・ピウ・ウォン
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-124211(JP,A)
【文献】特開2010-230745(JP,A)
【文献】特開2010-281792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0047396(US,A1)
【文献】特表2018-533074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/18
G03B 17/02
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ組立体の中に含まれている複数のレンズ素子を位置合わせするための方法であって、
前記レンズ組立体を、前記レンズ組立体に含まれる複数のレンズ素子の少なくとも1つのレンズ素子を含む第1のレンズモジュールと、前記複数のレンズ素子の残りのレンズ素子を含む第2のレンズモジュールと、に分離するステップと、
前記第2のレンズモジュールの中に含まれている少なくとも1つのレンズ素子の光軸と前記第1のレンズモジュールの中に含まれている少なくとも1つのレンズ素子の光軸を光学検出器で測定かつ位置合わせすることによって、前記第1のレンズモジュールと前記第2のレンズモジュールとの間の粗い位置合せを行うステップと、
画像センサによりテストチャートを眺めながら、前記第1のレンズモジュール及び前記第2のレンズモジュールを前記テストチャートと前記画像センサとの間に位置決めするステップと、
前記第1のレンズモジュールと前記第2のレンズモジュールとの間の相異なる相対位置合せにおける前記テストチャートの前記画像センサからの画像品質指標を得ることによって、前記第1のレンズモジュールと前記第2のレンズモジュールとの間の精密な位置合せを行うステップと、
その後、前記画像品質指標が最適化される相対位置合せにおいて、前記第1のレンズモジュールを前記第2のレンズモジュールに固定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のレンズモジュールが、複数のレンズ素子を含み、前記第2のレンズモジュールが、単一のレンズ素子を含み、前記第2のレンズモジュールが前記第1のレンズモジュールの物側に配置されており、前記粗い位置合せを行うステップは、前記第1のレンズモジュールに含まれる、前記第2のレンズモジュールに最も近いレンズ素子の光軸と前記第2のレンズモジュールに含まれる前記単一のレンズ素子の光軸とを合わせるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粗い位置合せの前記ステップが、前記光学検出器により、前記第1のレンズモジュールの中に含まれている少なくとも1つのレンズ素子、及び前記第2のレンズモジュールの中に含まれている少なくとも1つのレンズ素子の両方の側の表面の球状輪郭を測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各少なくとも1つのレンズ素子に対して、
前記レンズ素子の第1の表面の前記球状輪郭から第1の球状中心を計算するステップと、
前記第1の表面の反対側の前記レンズ素子の第2の表面の前記球状輪郭から第2の球状中心を計算するステップと、
前記第1の球状中心と前記第2の球状中心を通る線から前記レンズ素子の前記光軸を導出するステップと、
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のレンズモジュール及び前記第2のレンズモジュールの前記少なくとも1つのレンズ素子の前記光軸を位置合わせする前記ステップが、前記第1のレンズモジュール及び前記第2のレンズモジュールの前記レンズ素子の前記第1の球状中心と前記第2の球状中心を通る前記線を同軸に位置合わせするステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光学検出器が、3次元スキャナ、またはレーザレベリングセンサを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記光学検出器が、前記少なくとも1つのレンズ素子の一方の側に位置決めされ、前記光学検出器に向いているレンズ素子の第1の表面、ならびに前記第1の表面を通して、前記第1の表面の反対側の前記レンズ素子の第2の表面の前記球状輪郭を検査し測定するように動作する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
粗い位置合せを行う前記ステップ及び精密な位置合せを行う前記ステップが、前記第1のレンズモジュールを第1のグリッパにより把持し、前記第2のレンズモジュールを第2のグリッパにより把持し、前記画像センサにより前記テストチャートを眺めながら、前記第1のグリッパ及び前記第2のグリッパにより前記第1のレンズモジュール及び前記第2のレンズモジュールを操作するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のグリッパ及び前記第2のグリッパがそれぞれ、前記第1のレンズモジュール及び前記第2のレンズモジュールを6自由度で操作するように構成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記画像センサに電気的に連接されている精密な探索結像システムにより、前記第1のレンズモジュール及び前記第2のレンズモジュールの中に含まれている前記レンズ素子を通して前記テストチャートを観察するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記精密な位置合せの過程中、前記精密な探索結像システムが、前記画像センサによって撮像される画像に関連して複数の品質パラメータを生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の品質パラメータが、光学伝達関数、変調伝達関数、空間周波数応答、コントラスト伝達関数、及びTVラインからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
単一軸に沿って移動するように構成された位置決めテーブル上に前記画像センサを位置付け、前記単一軸に沿って前記画像センサを移動させることによってスルーフォーカス走査を行って、前記画像品質指標を導出するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記画像センサが、高性能画像センサである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のレンズモジュールを前記第2のレンズモジュールに固定する前記ステップが、前記第1のレンズモジュール及び/または前記第2のレンズモジュールにおいて紫外線光活性化接着剤を施し、前記第1のレンズモジュール及び前記第2のレンズモジュールの連接表面を互いに対して貼り付け、前記紫外線光活性化接着剤を紫外線光により硬化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
最終製品の機能的画像センサが実装されるセンサボードに、前記第1のレンズモジュール及び前記第2のレンズモジュールを実装するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
粗い位置合せの前記ステップが、前記機能的画像センサの期待される画像面に実質的に垂直になるように前記光軸をさらに配向するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ組立体が画像センサに結合されているときに、光学システムにおける最適化された画像品質を得るためのレンズ組立体の多レンズ素子の位置合せに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンや携帯型パーソナル機器に見られるものなどのカメラモジュールの光学システムの組立体においては、カメラモジュールの光学性能または結像品質は、その光学部品の正確な位置合せに非常に頼っている。これらには、レンズ組立体と画像センサチップとの間の位置合せ、ならびにレンズ組立体の中に含まれているレンズ素子間の精密な位置合せが含まれる。
【0003】
前述の光学部品の位置合せ中、レンズ組立体を画像センサチップに最適に位置合わせするのにカメラモジュールのアクティブアライメント(Active Alignment: AA)工程が用いられる。この工程中、画像センサは、たとえば、特許文献1に記載されているように、レンズ組立体を通してテストチャートの画像を撮像するように電気的に動作する。画像センサの少なくとも中心及び周辺の領域に、最適化された画像品質が得られるカメラモジュールを生み出すために、画像センサチップを確実にレンズ組立体の結像面と精密に位置合わせするようにレンズ組立体または画像センサチップを保持する6軸運動システムを利用することがある。
【0004】
加えて、レンズ組立体自体がもたらす画像品質の低下を回避するために、各レンズ素子が正確に設計され製作される必要や、各レンズ素子の組立公差が精密に制御される必要がある。通常のレンズ組立体においては、レンズ組立体の中に含まれている個々のレンズ素子は一つ一つレンズホルダ上に実装されている。実装工程中に各レンズ素子を堅く固定するためには、それらの向きを互いに対して維持するための相異なるインターロッキング設計が必要になる。しかしながら、レンズ素子の数が増加すると、組立公差要件はより厳しくなり、そのような設計における組立誤差は制御がより難しくなる。一方、実装正確さなどの要因がもたらす蓄積された組立て誤差、及び各レンズ素子がもたらす製造不完全さに起因して、レンズ素子の通常の実装及び組立て中に、全体としてレンズ組立体の光学性能を管理することは不可能である。したがって、各レンズ組立体の中に含まれるレンズ素子の数が増加すると、レンズ組立体生産における最終歩留まり損失は、上昇傾向になる。
【0005】
図1は、インターロッキングレンズホルダ100の中に組み入れられている複数のレンズ素子を含む通常のレンズ組立体の断面図である。AA中、インターロッキングレンズホルダ100の中に実装されたレンズ素子は、センサボード102上に位置付けられている機能的画像センサ104に対して位置合わせされる。位置合せ後、インターロッキングレンズホルダ100は、センサボード102に、理想的には、機能的画像センサ104の光軸がレンズ組立体の光軸と一致して機能的画像センサ104が複数のレンズ素子によって与えられる結像面と確実に精密に位置合わせされるようにする、位置合わせされた配向で取り付けられる。しかしながら、複数のレンズ素子106、108、110、112、114が、異なって配向された光軸を個々に含むことがあり、その結果、レンズ組立体の光軸116全体が、機能的画像センサ104の光軸から過度にずれることがあり、レンズ素子の光軸116全体を機能的画像センサ104の光軸と正確に位置合わせすることは困難または不可能になる。この点においては、仮に光軸116全体が機能的画像センサ104の期待される光軸と予め位置合わせされることとした場合、レンズ組立体の光軸と機能的画像センサ104の光軸との間の位置合せは、より正確になって、インターロッキングレンズホルダ100をセンサボード102に取り付けようとするときの過度なずれを回避することが可能になる。
【0006】
したがって、レンズ組立体の所望の光軸116全体を達成するために、レンズ組立体の中に含まれている多レンズ素子を予め位置合わせするためのシステム及び方法を考案することは有益になる。そうすることで、レンズ組立体に対する機能的画像センサ104の位置合せを確実にして、結果的に生じる製品の最適な画像品質を得ることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第9,009,952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、レンズ組立体の中に含まれている多レンズ素子を位置合わせするための方法を提供することを目指すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、レンズ組立体の中に含まれている多レンズ素子を位置合わせするための方法を提供し、この方法は、レンズ組立体を少なくとも1つのレンズ素子を含む第1のレンズモジュール、及び少なくとも1つの他のレンズ素子を含む第2のレンズモジュールに分離するステップと、第1のレンズモジュールの中に含まれている少なくとも1つのレンズ素子の光軸を第2のレンズモジュールの中に含まれている少なくとも1つのレンズ素子の光軸と位置合わせすることによって、第1のレンズモジュールと第2のレンズモジュールとの間の粗い位置合せを行うステップと、画像センサによりテストチャートを眺めながら、第1のレンズモジュール及び第2のレンズモジュールをテストチャートと画像センサとの間に位置決めするステップと、第1のレンズモジュールと第2のレンズモジュールとの間の相異なる相対位置合せにおけるテストチャートの画像センサからの画像品質指標を得ることによって、第1のレンズモジュールと第2のレンズモジュールとの間の精密な位置合せを行うステップと、その後、画像品質指標が最適化される相対位置合せにおいて、第1のレンズモジュールを第2のレンズモジュールに固定するステップと、を含む。
【0010】
本明細書において以降、便宜上、本発明の特定の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照することによって、より詳細に本発明について述べることとする。図面及び関連の説明の具体性は、特許請求の範囲によって定義される本発明の広範な特定の一般性に優先するものと理解すべきではない。
【0011】
次に、本発明によるレンズ素子を位置合わせするための例示的な工程について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】インターロッキングレンズホルダの中に組み入れられた複数のレンズ素子を含む通常のレンズ組立体の断面図である。
図2】本発明の好ましい実施形態による位置合せ工程を実施するために、レンズ素子のうちの1つがインターロッキングレンズホルダから取り出されているレンズ組立体の断面図である。
図3A】インターロッキングレンズホルダの中に含まれている少なくとも1つのレンズ素子の球状表面を測定する光学検出器の等角図である。
図3B】脱着されたレンズ素子の球状表面を測定する光学検出器の等角図である。
図4A】インターロッキングレンズホルダの中に含まれているレンズ素子の測定された球状輪郭を示す図である。
図4B】脱着されたレンズ素子の測定された球状輪郭を示す図である。
図5】本発明の好ましい実施形態による位置合せ工程を行うのに使用され得るレンズ位置合せ装置のレイアウトを示す図である。
図6】例示的な位置合せ工程を示すフローチャートである。
図7】接着剤ディスペンサがインターロッキングレンズホルダ上に接着剤を施している状態を示す図である。
図8】脱着されたレンズ素子が、位置合わせされた位置でインターロッキングレンズホルダに固定されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2は、本発明の好ましい実施形態による位置合せ工程を実施するために、レンズ素子のうちの1つ24がインターロッキングレンズホルダ10から取り出されているレンズ組立体の断面図である。例示の実施形態におけるレンズ組立体全体が、5つのレンズ素子16、18、20、22、24を含む。これらのレンズ素子のうちの4つ16、18、20、22は、インターロッキングレンズホルダ10の中に組み入れられ、インターロッキングレンズホルダ10は、センサボードに取り付けられるように構成されており、そのセンサボードの上に、機能的画像センサ104が、レンズ組立体の中の組み合わさったレンズ素子16、18、20、22、24と位置合わせされた後、位置付けられる。
【0014】
図2に示されているように、この実施形態においては、レンズ組立体の中に含まれているレンズ素子のうちの1つ24が、インターロッキングレンズホルダ10から脱着されており、代わりに、別個の脱着されたレンズホルダ26において組み入れられて、別個のレンズモジュールを形成する。これにより、脱着されたレンズ素子24を他方のレンズモジュールの中の複数の他のレンズ素子16、18、20、22に対して予め位置合わせして、レンズ組立体の光軸28全体を機能的画像センサ104の期待される光軸とできるだけ予め位置合わせすることが可能になる。概して、レンズ組立体全体は、最終的には、最終製品内の機能的画像センサが実装されるセンサボード上に実装されることになるので、光軸28全体は、そのような機能的画像センサ104の画像面に実質的に垂直にすべきである。このことは、レンズ組立体と、組み立てられた最終カメラモジュール製品内のレンズ素子とともに使用されることになる機能的画像センサとの間のより正確な位置合せを確実にすることに役立つことになる。
【0015】
高生産性を伴ってレンズ組立体のレンズ素子16、18、20、22、24間のそのような位置合せを達成するためには、まず、レンズ素子間の粗い位置合せを行うべきである。粗い位置合せは、脱着されたレンズ素子24の光軸とレンズ組立体の中の残りのレンズ素子の光軸とを迅速に位置合わせすることを目的としており、レンズ素子の多表面の光学的検出によって行うことができる。また、そのような粗い位置合せは、それらの光軸を最終カメラモジュール製品内の機能的画像センサの期待される画像面に実質的に垂直になるように配向すべきである。ただし、そのような粗い位置合せは、それぞれの光軸のおおよその位置合せを達成するのに使用されるが、それ自体は、正確さは十分でなく、より高い程度の正確さまで位置合せを行うための精密な位置合せを後で実施すべきである。
【0016】
図3Aは、粗い位置合せ工程に関して、インターロッキングレンズホルダ10の中に含まれている少なくとも1つのレンズ素子の球状表面を測定するのに使用される光学検出器30の等角図である。この場合においては、インターロッキングレンズホルダ10が4つの別個のレンズ素子16、18、20、22を含むとき、生産性を高めるために、測定は、インターロッキングレンズホルダ10の最上部端に位置付けられているレンズ素子22に対してのみ行われる。そのような測定は、レンズ素子22の両方の側の表面の球状輪郭を測定することを含む。したがって、光学検出器30は、たとえば、3次元スキャナまたはレーザレベリングセンサの形態とすることができ、直接、光学検出器30に向いているレンズ素子22の側の球状輪郭を検査し測定することができるだけでなく、レンズ素子22を「通して見て」、レンズ素子22の反対側も検査することもできる。
【0017】
したがって、この実施形態においては、最上部レンズ素子22の光軸のみが測定され、インターロッキングレンズホルダ10上に実装されているレンズ組立体の中の残りのレンズ素子16、18、20は無視される。最上部レンズ素子22とインターロッキングレンズホルダ10の中の残りのレンズ素子との間に位置合せ残余誤差がある場合には、この工程の後ほどに採用される精密な位置合せがなおも、最終アクティブアライメント工程における結像品質を最適化するように機能することになる。とはいえ、所望のサイクル時間が問題にならない場合、光学検出器30は、最上部レンズ素子22を越して見て、インターロッキングレンズホルダ10の中に含まれている他のレンズ素子16、18、20のそれぞれの球状輪郭を測定することも可能である。
【0018】
図3Bは、インターロッキングレンズホルダ10の中に含まれている最上部レンズ素子22の表面を測定することの他に、脱着されたレンズ素子24の球状表面を測定するのに使用される光学検出器30の等角図である。光学検出器30は、脱着されたレンズ素子24の一方の側に位置決めされて、光学検出器30に向いている脱着されたレンズ素子24の第1の表面の球状輪郭を検査し測定し、光学検出器30は、第1の表面を通して、第1の表面とは反対側の、脱着されたレンズ素子24の第2の表面の球状輪郭を検査し測定するようにも動作する。したがって、脱着されたレンズ素子24の球状表面の両方の側が同様に測定される。
【0019】
図4Aは、インターロッキングレンズホルダ10の中に含まれている最上部レンズ素子22の測定された球状輪郭を示している。最上部レンズ素子22の第1の側の第1の球状輪郭S1及び第2の側の第2の球状輪郭S2が得られる。第1の球状輪郭S1に基づいて、第1の球状輪郭S1から計算される第1の球状中心C1が得られる。同様に、第2の球状輪郭S2に基づいて、第2の球状輪郭S2から計算される第2の球状中心C2がさらに得られる。したがって、最上部レンズ素子22のおおよその光軸32が、C1とC2を通る線になるように決定される。
【0020】
図4Bは、脱着されたレンズホルダ26において組み入れられている脱着されたレンズ素子24の測定された球状輪郭を示している。脱着されたレンズ素子24の第1の側の第1の球状輪郭S1及び第2の側の第2の球状輪郭S2が得られる。第1の球状輪郭S1に基づいて、第1の球状輪郭S1から計算される第1の球状中心C1が導出される。同様に、第2の球状輪郭S2に基づいて、第2の球状輪郭S2から計算される第2の球状中心C2も導出される。したがって、脱着されたレンズ素子24のおおよその光軸34が、C1とC2を通る線になるように決定される。粗い位置合せを目的として、最上部レンズ素子22の光軸32が、脱着されたレンズ素子24の光軸34と同軸上に配置されて、光軸32、34が同軸上に位置合わせされるようにすべきである。
【0021】
加えて、粗い位置合せ工程中、各レンズモジュールの光軸32、34はまた、理想的には、システムによって与えられる基準に位置合わせすべきである。これに基づいて、2つのレンズモジュールと光軸28全体との間の相対光学シフトは、AAを行うための画像センサの所望の結像面と見当合わせするように調整される。
【0022】
そのため、粗い探索システム(search system)は、各レンズ表面の曲率を測定する光学的手法を利用して、それによって、各レンズ表面の球状中心を決定する。各レンズ素子22、24における両方のレンズ表面の球状中心C1、C2に基づいて、各レンズ素子22、24の光軸32、34が決定され得る。
【0023】
図5は、本発明の好ましい実施形態による位置合せ工程を行うのに使用され得るレンズ位置合せ装置38のレイアウトを示している。レンズ位置合せ装置38は、2つのレンズモジュールを迅速に位置合わせして、レンズ組立体の最良のレンズ結像品質全体を達成するための解決策をもたらす。
【0024】
例示のレンズ位置合せ装置38においては、12軸ハンドリングシステムが第1のレンズモジュール及び第2のレンズモジュールを保持し操作し、それぞれのレンズモジュールのそれぞれを6自由度(degrees-of-freedom: DoF)で調整することができる(すなわち、各レンズモジュールは、X、Y、Z方向及び回転方向に調整可能である)。要約すると、粗い探索システムは、まず、第1のモジュール及び第2のモジュールの光軸32、34における偏心シフトをミクロンレベルオーダーの正確さで、及び傾斜または回転シフトを数分角で測定する。測定フィードバックから、ハンドリングシステムは、各レンズモジュールを6DoFで粗く位置合わせすることができる。
【0025】
次に、高性能画像センサ及びテストチャートを含む精密な探索システムを利用して、2つのレンズモジュールに関する結像品質指標を得る。精密な探索システムにおける結像品質は、2つのレンズモジュールのサブミクロンレベルオーダーの偏心シフト及び秒角レベルオーダーの傾斜シフトにおいて高感度であるので、結像品質フィードバックから、ハンドリングシステムは、非常に精密な精度で2つのレンズモジュールを位置合わせすることができる。両方のレンズモジュールの互いに対する最適な位置合せ位置を達成した後、接着剤がレンズモジュールの連接表面に施されることになり、レンズモジュールは、互いに固定される。
【0026】
より詳細には、レンズ位置合せ装置38は、インターロッキングレンズホルダ10を把持するための第1のグリッパ40、及び脱着されたレンズホルダ26を把持するための第2のグリッパ42を有する。第1のグリッパ40及び第2のグリッパ42はそれぞれ、インターロッキングレンズホルダ10及び脱着されたレンズホルダ26を6自由度で配向して、インターロッキングレンズホルダ10の中に組み入れられている多レンズ素子と、脱着されたレンズホルダ26において組み入れられている脱着されたレンズ素子24とを位置合わせすることができる。したがって、第1のグリッパ40と第2のグリッパ42が組み合わさることにより、レンズ位置合せ装置38は、レンズ素子16、18、20、22、24を12自由度で操作し位置合わせすることが可能になる。
【0027】
第1のグリッパ40と第2のグリッパ42は、それらのそれぞれの移動を制御するためのマスター制御システム46に動作可能なように連接されている。粗い探索システム48は、粗い探索中、最上部レンズ素子22の光軸32、及び脱着されたレンズ素子24の光軸34に関するデータを提供して、マスター制御システム46は、第1のグリッパ40及び第2のグリッパ42に、光軸32、34を互いに同軸になるように操作するように命令する。そうするために、光学検出器30は、図3A図3B図4A、及び図4Bに関して説明したように、最上部レンズ素子22及び脱着されたレンズ素子24の球状表面輪郭S1、S2を測定するために、第1のレンズモジュール(インターロッキングレンズホルダ10の中に含まれているレンズ素子を含む)及び第2のレンズモジュール(脱着されたレンズホルダ26を含む)の上にそれぞれ位置決め可能である。
【0028】
精密な位置合せを行うために、マスター制御システム46に動作可能なように連接されている精密な探索結像システム50も存在する。精密な探索結像システム50は、画像センサ14に電気的に連接され、この画像センサ14は、第1の及び第2のレンズモジュールの中に含まれているレンズ素子16、18、20、22、24を通してテストチャート44を眺め、または観察するのに利用される。テストチャート44は、脱着されたレンズ素子24からのテストチャート44の視野が角度θを有するように配置される。
【0029】
精密な位置合せの過程において、精密な探索結像システム50は、画像センサ14によって撮像された画像との関連で様々な品質パラメータを生成する。そのような品質パラメータとしては、光学伝達関数(optical transfer function: OTF)、変調伝達関数(modulation transfer function: MTF)、空間周波数応答(spatial frequency Response: SFR)、コントラスト伝達関数(contrast transfer function: CTF)、TVライン、または結像システムの分解能を表すことができる当技術分野において知られている任意の他の評価方法を挙げることができるが、これらの限定するものではない。その上、より正確な品質パラメータを得るためには、好ましくは、使用される画像センサ14は、既知の、好ましくは優れた品質の標準センサである高性能画像センサとすべきであり、このセンサは、位置合わせされることになるすべてのレンズ素子が測定されて比較され得る基準点として機能する。
【0030】
具体的には、精密な探索結像システム50は、単一の軸に沿ってテストチャート44に向かってまたはテストチャート44から離れて移動するように構成された位置決めテーブル45を有する。画像センサ14は、位置決めテーブル45上に位置付けられている。図5においては、これは、センサボード12の垂直な単軸運動によって表されている。精密な探索結像システム50によって画像センサ14をスルーフォーカス走査することにより、複数の結像品質曲線(MTF、SFR、または相対照度曲線など)は、テストチャート44の画像に関連して得ることができる。これらの結像品質曲線に基づいて、特定のレンズ結像品質指標(ピークMTF、結像面傾斜、レンズ場曲率傾き、サジタル及びタンジェンシャルMTFピーク分離など)が導出され得る。
【0031】
概して、各レンズ素子の設計は、第1のレンズモジュール及び第2のレンズモジュールに関連する偏心、傾斜、及び間隙シフトに基づいて、結像品質変動の特定の光学モデルを有する。したがって、前述した光学モデルから、第1のレンズモジュールと第2のレンズモジュールとの間のわずかなシフトでさえも計算することができ、レンズモジュールは、互いに対してさらに位置合わせすることができる。
【0032】
図6は、例示的な位置合せ工程を示すフローチャートである。ステップ60において、第1のグリッパ40及び第2のグリッパ42を含むハンドリングシステムは、インターロッキングレンズホルダ10の中に組み入れられているレンズ素子16、18、20、22を含む第1のレンズモジュールと、第2のレンズモジュール、この場合には、脱着されたレンズホルダ26において組み入れられている脱着されたレンズ素子24とを保持する。ステップ62において、光学検出器30は、上述した粗い位置合せ工程などの工程中、最上部レンズ素子22及び脱着されたレンズ素子24の光軸32、34を測定する。
【0033】
ステップ64において、光軸32、34が所定の仕様の範囲内まで軸方向に位置合わせされていない場合には、ステップ66において、ハンドリングシステムは、レンズ素子22、24をさらに調整して、それらの光軸をより良く位置合わせしてから、位置合せが再度、確認される。一旦、粗い位置合せが所定の仕様の範囲内にあると決定されると、ステップ68において、ハンドリングシステムは、精密な探索を行う過程において、レンズ結像品質指標を測定する。レンズ結像品質指標は、上記に提示したように、画像センサ14によって取り込まれる品質パラメータのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0034】
ステップ70において、第1のグリッパ40及び第2のグリッパ42は、得られたレンズ結像品質指標に基づいて、レンズ素子22、24を互いに対して移動させ調整する。ステップ72において、レンズ素子22、24間の相互シフトにより、画像品質が所定の品質要件の範囲内にあるかどうかが判定される。そうでない場合には、ステップ74において、ハンドリングシステムは、レンズ素子22、24を互いに対してさらに細かく位置合わせしてから、レンズ素子22、24間の相互シフトにより、画像品質が所定の品質要件の範囲内にあるかどうかを再度、確認することになる。
【0035】
ステップ76において、一旦、所望の画像品質が得られると、グルーなどの接着剤が、第1のレンズモジュールと第2のレンズモジュールとの間に施される。レンズモジュールが、ステップ78において、硬化によって互いに対して固定された後、組立は完了する(ステップ80)。
【0036】
図7は、接着剤ディスペンサ90がインターロッキングレンズホルダ10上に接着剤92を施している状態を示している。接着剤92は、紫外線光活性化接着剤とすることができる。図8においては、脱着されたレンズホルダ26において組み入れられている脱着されたレンズ素子24は、脱着されたレンズホルダ26を接着剤92上に置くことによって、他のレンズ素子16、18、20、22に固定されている。接着剤92が紫外線光活性化接着剤である場合、脱着されたレンズホルダ26とインターロッキングレンズホルダ10との間の接着は、紫外線照明システム94を使用して接着剤92を硬化することによって、(脱着されたレンズ素子24が、位置合わせされた位置にある状態で)固化される。
【0037】
結論として、本発明による位置合せ方法は、レンズ組立体を構成するように組み合わさる第1のレンズモジュールと第2のレンズモジュールとのスピーディーな位置合せのための体系定な方法を提供する。それは、二重経路位置合せ手法によるハードウェアシステムと、第1のレンズモジュール及び第2のレンズモジュールを互いに対して別個に保持し操作する2つの6軸運動システムを含むハンドリングシステムとを提示する。二重経路位置合せ手法は、粗い探索工程と、次いで、2つのレンズモジュールの相対位置をX、Y、Z方向及び回転方向に迅速に位置合わせする精密な探索工程とを組み合わせる。粗い探索システムは、2つのレンズモジュールの光軸をサブミリメートルレベルからミクロンレベルの正確さまで速やかに測定し、位置合わせする。精密な探索システムは、テストチャート及び高性能画像センサ14を含み、高性能画像センサ14は、レンズ結像品質測定のための位置決めテーブル上に設置され、結像品質指標からの閉ループフィードバックが得られる。そのため、位置合せの正確さは、サブミクロンレベルの正確さまでさらに向上し得る。最後に、接着剤塗布システムを採用して、それぞれのレンズモジュールの連接表面間に紫外線グルーまたは紫外線/サーマルグルーなどの接着剤を施す。前記グルーを硬化するために、紫外線照明システム94が、2つのレンズモジュールの連接表面上のグルーを硬化して、レンズ組立体の構成を完了する。
【0038】
上記に説明した本発明の実施形態による方法が、歩留まり向上、正確さ、及び速度の利点を提案していることを認識すべきである。
【0039】
歩留まり向上は、レンズシステム設計が多数のレンズ素子を有するときに、低い歩留まりをもたらす従来のレンズ組立工程と比較して達成可能である。本発明の方法は、正確なレンズ結像品質測定を含むAA工程を実施することによって、歩留まりを有意に向上させることができる。
【0040】
精度は、高性能画像センサ14から得られる結像品質により第1のレンズモジュールと第2のレンズモジュールとのわずかな位置ずれが明らかになるとき、向上する。その上、少なくとも1つの運動軸に沿うスルーフォーカス走査手法を含むレンズ位置合せ装置38の12軸ハンドリングシステムは、第1のレンズモジュールと第2のレンズモジュールとの間のいかなる位置ずれも調整するための高い精密運動及び十分なDoFをもたらす。
【0041】
さらには、二重経路位置合せ手法は、第1のレンズモジュール及び第2のレンズモジュールの高速な粗い位置合せを可能にし、その間に、それぞれのレンズ素子の光軸が測定され位置合わせされる。各レンズ素子の光軸32、34のそのような粗い探索は、撮像すべき画像を1つしか必要とせず、短い画像撮像時間フレーム内で効果的に完了することができる。粗い探索システムには、光軸を測定するのにレンズの回転または走査などの追加の移動が何ら必要ないので、位置合せのこの部分は、多レンズ素子を位置合わせするのに採用されている従来の手法よりもはるかに速く完了することができる一方、その後、位置合せをさらにより精密にするために、精密な探索が行われる。
【0042】
本明細書において説明した本発明は、具体的に説明したもの以外の変形形態、変更形態、及び/または追加形態が可能であり、本発明が、上記の説明の趣旨及び範囲内にあるすべてのそのような変形形態、変更形態、及び/または追加形態を含むことを理解されたい。
【符号の説明】
【0043】
10 インターロッキングレンズホルダ
12 センサボード
14 画像センサ
16 レンズ素子
18 レンズ素子
20 レンズ素子
22 レンズ素子
24 レンズ素子
26 レンズホルダ
28 光軸
30 光学検出器
32 光軸
34 光軸
38 レンズ位置合せ装置
40 グリッパ
42 グリッパ
44 テストチャート
45 位置決めテーブル
46 マスター制御システム
48 粗い探索システム
50 精密な探索結像システム
90 接着剤ディスペンサ
92 接着剤
94 紫外線照明システム
100 インターロッキングレンズホルダ
102 センサボード
104 機能的画像センサ
106 レンズ素子
108 レンズ素子
110 レンズ素子
112 レンズ素子
114 レンズ素子
116 光軸
C1、C2 球状中心
S1、S2 球状輪郭
θ 角度
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8