(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】打楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 13/08 20200101AFI20230508BHJP
G10D 13/00 20200101ALI20230508BHJP
G10D 13/10 20200101ALI20230508BHJP
【FI】
G10D13/08 120
G10D13/00 110
G10D13/10 110
(21)【出願番号】P 2022012472
(22)【出願日】2022-01-29
(62)【分割の表示】P 2020116039の分割
【原出願日】2020-07-05
【審査請求日】2022-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】504474323
【氏名又は名称】宇野 公二
(72)【発明者】
【氏名】宇野 公二
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3003196(JP,U)
【文献】特開2022-013459(JP,A)
【文献】登録実用新案第3123274(JP,U)
【文献】実開昭60-023898(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0175535(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0016320(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0284285(US,A1)
【文献】米国特許第4974484(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/08
G10D 13/00
G10D 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部によって振動自在に支持されるおよそ板状の発音体と、
前記発音体を手で覆うように握る際に指が発音体の振動を妨げないよう防ぎ内側に前記発音体を備えるグリップ部を成すおよそ筒状の外殻と、
前記グリップ部を握って振ることで前記発音体が前記支持部に沿って移動することで、前記発音体を叩く前記外殻の内側の当たりと、
湾曲したおよそ筒状の内側に第2発音体と、
を具備
し、
前記当たりは、前記支持部を通る前記外殻の筒状の径方向断面付近の内壁から突出するよう設けられ、前記発音体の縁付近に当たることを特徴とする、
打楽器。
【請求項2】
支持部によって振動自在に支持されるおよそ板状の発音体と、
前記発音体を手で覆うように握る際に指が発音体の振動を妨げないよう防ぎ内側に前記発音体を備えるグリップ部を成すおよそ筒状の外殻と、
前記グリップ部を握って振ることで前記発音体が前記支持部に沿って移動することで、前記発音体を叩く前記外殻の内側の当たりと、
を具備し、
前記発音体を前記支持部中心に揺動させると
、前記外殻の筒状の長さ方向
に沿う中心軸を中心とする揺動よりも、前記外殻の筒状の径方向に沿い且つ前記およそ板状の発音体にも沿う中心軸を中心とする揺動の方が大きくなるよう、前記当たりで揺動範囲が制限されることを特徴とする、
打楽器。
【請求項3】
前記外殻は径の大小を有するおよそ筒状であり、筒状の長さ方向且つ大径方向におよそ沿うようにおよそ板状の前記発音体が配される、
請求項1から請求項2のいずれかに記載の打楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
打楽器においては、特許文献1の実施例のように、片面に革の張られた太鼓のような薄い円筒胴に平面放射状に複数の長穴を設け、中心に穴の開いたおよそ円板状の2枚の発音体を貫通する軸ピンによる支持部が長穴の中で発音体を支持するものや、特許文献2の実施例のように革の無いタイプのタンバリンのアイデアが知られている。
【0003】
また、打楽器においては、特許文献3の実施例のように、空気の出し入れによって畳んだり膨らませたりできる可撓性シートによる浮き輪のような構造の中に輪状の紐を通し、そこに等間隔で猫の首輪に付けられるタイプの中空球状の鈴が複数取り付けられるアイデアが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平05-052890号公報
【文献】実全昭60-122987号公報
【文献】実開平07-014491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
打楽器においては、使わないときは不意に触って痛いようなエッジなどの露出が少なくて埃が溜まりにくくて掃除がしやすくてコンパクトで、気分が高揚してきて使うときにはすぐにさっとグリップ部を握って演奏しやすいものが求められている。しかし、特許文献1や特許文献2の実施例だと発音体のエッジだらけで置き場所や掃除に困るし、特許文献3の実施例だと、握ると変形しやすい浮き輪のようなグリップ部内の発音体である鈴に可撓性シートを介して触ってしまうことで発音体の響きをミュートしてしまうことになり、それを防ぐ為にグリップの径を大きくすると握りにくくなるし、発音体を小さくすると欲しい音量や音色が得られなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態図等を用いて以下に説明するが、これは本発明の内容をより把握しやすいようにする為で、添付の特許請求の範囲を縮小するものではない。
【0007】
発明1係る打楽器は、例えば
図1から
図5のように、
支持部12によって振動自在に支持されるおよそ板状の発音体1と、
発音体1を手で覆うように握る際に指が発音体1の振動を妨げないよう防ぎ内側に発音体1を備えるグリップ部8を成すおよそ筒状の外殻7と、
グリップ部8を握って振ることで発音体1が支持部12に沿って移動することで、発音体1を叩く外殻7の内側の当たり17と、
湾曲したおよそ筒状の内側に発音体2と、
を具備
し、
当たり17は、支持部12を通る外殻7の筒状の径方向の図2のような断面付近の内壁から突出するよう設けられ、発音体1の縁付近に当たることを特徴とする、
打楽器である。
【0008】
発明2に係る打楽器は、例えば
図1から
図5の組み、又は
図6のように、
支持部12によって振動自在に支持されるおよそ板状の発音体1と、
発音体1を手で覆うように握る際に指が発音体1の振動を妨げないよう防ぎ内側に発音体1を備えるグリップ部8を成すおよそ筒状の外殻7と、
グリップ部8を握って振ることで発音体1が支持部12に沿って移動することで、発音体1を叩く外殻7の内側の当たり17と、
を具備し、
発音体1を支持部12中心に揺動させると
、外殻7の筒状の長さ方向
に沿う中心軸を中心とする揺動よりも、外殻7の筒状の径方向に沿い且つおよそ板状の発音体1にも沿う中心軸を中心とする揺動の方が大きくなるよう、当たり17で揺動範囲が制限されることを特徴とする、
打楽器である。
【0009】
発明3に係る打楽器は、発明1から2のいずれかの打楽器において、
外殻7は径の大小を有するおよそ筒状であり、筒状の長さ方向且つ大径方向におよそ沿うようにおよそ板状の発音体1が配される、
打楽器である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明では、およそ板状で大きな音量が得られやすい高感度の発音体1を用いても外殻7に守られておよそ板状のエッジが露出せず、外殻7をグリップ部8として握っても発音体1の当たり17があることで意図せぬ部分に発音体1が当たることによるミュートや雑音の発生を極力防ぐような設計が容易となる。
【0011】
また、本発明の効果に加えて、発音体1が発する音波がおよそ筒状の内部を通ってグリップ部8を握った手に邪魔されない位置の外殻7から積極的に透過させるような設計が容易となり、且つおよそ板状の発音体1が筒状の長さ方向に沿うように配されることから、当たり17の位置を最適化しやすくなって発音体1の面積を確保したままグリップ部8が握りやすいように径を小さく且つ軽量で振りやすくするような設計が容易となる。
【0012】
また、本発明の効果に加えて、発音体1が発する音波は手が覆っていない所の貫通穴から積極的に透過するような設計が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の第三角法による正面図と底面図
【
図6】第2実施形態の第三角法による正面図と底面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態を
図1から
図5に基づいて説明する。
【0015】
図1のように、打楽器全体としての厚み方向が短軸になるおよそ楕円断面のトーラス形状の外殻7の厚み方向の正面側9及び背面側10は同一形状のプラスチック製で、トーラス形状の外周の合わせ目14と内周の合わせ目15で当接している。また、トーラス形状は中空構造であり、およそ楕円断面の筒状の長さ方向の両端をつないでトーラス形状にしたような形状である。また、正面側9と背面側10の大半には音波を積極的に透過する為の小さな貫通穴が沢山開けられているが、外殻7は発音体1を覆っていると言えるだろう。また、外殻7の内側に配される発音体1付近をグリップ部8として、中央穴13に指を通して巻き回すように握って振った際に、発音体1が発する音波は手が覆っていない所の貫通穴から積極的に透過するし、グリップ部8がおよそ楕円形なので打楽器全体が滑って回転してしまいにくく、且つ楕円形の長軸を直径とする円形と比較して周長が小さくなるので、グリップ部8を握り込みやすくなっている。また、発音体1から6が中央穴13を中心に60度ピッチで外殻7の内側に配置されており、筒状の長さ方向且つ大径(長軸)方向におよそ沿うように、およそ円板状の発音体1から6はそれぞれ配されている。また、トーラス形状の外周の一か所に小さな平面11が設けられており、平面11を接地面として机などの水平面に置くとこの打楽器は自立するので、置き場所に困らず、使いたいときにさっと外殻7を握ればそこがグリップ部になるし、置いている際も降り注ぐ埃が沢山の貫通穴に入り込みにくくなる。
また、
図1のA-A線断面図である
図2のように、中心に穴の開いた発音体1は同一形状の発音体20と背面同士が合わさる配置で、両者の中心の穴を貫通する軸ピンによる支持部12によって振動及び揺動可能に支持されており、グリップ部8を握って振ることで、外殻7の正面側9の内壁の合わせ目14付近に設けられた当たり17と、合わせ目15付近に設けられた当たり16に、発音体1の正面の縁付近が当たることで発音体1が振動し、わずかに遅れて発音体20の背面が発音体1の背面に当たることで更に両者は振動し、タンバリンらしいキャラクターのある大きな発音となる。続いて逆方向の当たり18及び19に発音体20が当たることで同様の発音サイクルが続く。また発音体2の背面にも発音体21が配され、発音体3から6の背面にも同様にそれぞれ発音体が配され、同様の構造で発音するので、合計12枚の発音体による大きな発音となる。ここで、軸ピンによる支持部12の両端を支える為に正面側9及び背面側10の内壁からそれぞれ突出するボスの先端部を当たりにして当たり16から19よりも先に発音体1及び20に当てると、支持部12付近を先に叩くことになりミュート気味の音になってしまうので、やはり支持部12から遠い縁付近を叩くように当たりを設けるのが良いだろう。
また、
図3のように指が入りにくい程度のスリット24を、合わせ目14があった所に設けて音波を放出しやすくしても、外殻7は発音体1をおよそ覆っていると言えるだろうが、埃の侵入や握りやすさを考慮するとスリット24は無い方が良いだろう。
また、
図1のB-B線断面図である
図4のように、発音体1及び20が支持部12の中央にある安静状態から、
図5のような発音体1及び20が支持部12を中心に揺動し当たり17及び19で制限された瞬間の状態になると、およそ楕円筒状の短軸両端付近の内壁に発音体1及び20が当たらないようにして雑音やミュートを防いでいる。これは円板を斜めにすると縁が楕円筒内壁に沿うという特徴を利用して巧みに防いでいるのである。
また、例えば外殻7の正面側9に中央穴13を塞ぐように革を張っても良いだろう。
【0016】
本発明の第2実施形態は第1実施形態と共通する部分が多いので、主に違いについて
図6に基づいて説明する。
【0017】
図1のようなトーラス形状ではなく棒状で全体がグリップ部8のようであり、断面形状は
図2や
図4とほぼ同じである。発音体1から3と背面合わせでペアとなる3枚で、合計6枚が外殻7に覆われている。また、棒状の両端がそれぞれ水平面に立て置く為の平面11及び25となっている。
全体を握ってより軽い力で手軽に使えるし、衣服のポケットなどに入れてポケットを叩いても発音するので、複数使えば楽しさが増幅されるのである。
【符号の説明】
【0018】
1,2,3,4,5,6,
20,21. 発音体
7. 外殻
8. グリップ部
9. 正面側
10. 背面側
11,25. 平面
12. 支持部
13. 中央穴
14,15. 合わせ目
16,17,18,19,
22,23. 当たり
24. スリット