(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-02
(45)【発行日】2023-05-15
(54)【発明の名称】プレス機
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20230508BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
B30B15/00 B
(21)【出願番号】P 2022108484
(22)【出願日】2022-07-05
【審査請求日】2022-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591214527
【氏名又は名称】株式会社ジーテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【氏名又は名称】本山 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】柴田 響
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002834(JP,A)
【文献】特開2019-184380(JP,A)
【文献】特開2004-191283(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012192(WO,A1)
【文献】特開2020-153845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84ーG01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス部でプレス加工されて前記プレス部の下方の排出領域に排出されたプレス品を搬出口まで搬送する搬送部と、
前記プレス部が設置されるプレス部基礎の外側に設置された架台と、
前記架台に設置されて、前記搬送部の検査領域を撮像する撮像部と、
前記搬送部で搬送される前記プレス品が前記検査領域に到達したことを検出するセンサと、
前記センサが前記検査領域に前記プレス品が到達したことを検出すると、前記撮像部の撮像を開始して前記検査領域を通過する前記プレス品の画像を取得するコントローラと、
前記コントローラが取得した前記プレス品の画像を基に前記プレス品の外観の検査をする検査回路と、
前記検査回路による検査結果を表示するディスプレーと
を備え
、
前記架台は、前記搬送部の両脇の床の上に設置された脚、および前記搬送部をまたぐ状態に前記脚に架設された梁を備え、
前記撮像部は、
前記梁に取り付けられて前記検査領域を上方から撮像する第1カメラと、
前記梁に支持されて、前記排出領域に入り込む第1ブラケットに取り付けられ、前記検査領域を前記搬送部の上流側から撮像する第2カメラと、
前記梁に支持されて前記搬出口の方向に伸びる第2ブラケットに取り付けられ、前記検査領域を前記搬送部の下流側から撮像する第3カメラと
前記脚に取り付けられて、前記検査領域を前記搬送部の搬送方向に対して両側の側方から撮像する第4カメラおよび第5カメラと
を備え、
前記コントローラは、前記プレス品の大きさを基に、前記第1カメラ、前記第2カメラ、前記第3カメラ、前記第4カメラ、および前記第5カメラの中より撮像を開始するカメラを選択し、選択したカメラの撮像を開始して前記検査領域を通過する前記プレス品の画像を取得する
ことを特徴とするプレス機。
【請求項2】
請求項1記載のプレス機において、
前記検査回路は、前記プレス品の姿勢を前記プレス品の特徴部を基に決定することを特徴とするプレス機。
【請求項3】
請求項
2記載のプレス機において、
前記特徴部は、複数の穴の中心座標、特徴的な形状座標、部品端部形状、および色相の少なくとも1つであることを特徴とするプレス機。
【請求項4】
請求項1記載のプレス機において、
前記検査回路は、撮像された前記プレス品の画像における前記プレス品の姿勢を認識し、認識した姿勢に対応して機械学習されている機械学習データを基に前記プレス品の外観の良否判定を実施する
ことを特徴とするプレス機。
【請求項5】
請求項1記載のプレス機において、
前記架台は、床上に設置された第1脚、第2脚および前記搬送部をまたぐ状態に前記第1脚、前記第2脚に架設された一対の梁を備えることを特徴とするプレス機。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のプレス機において、
前記検査回路は、前記プレス品の外観の検査結果をもとに、前記プレス部の動作を制御することを特徴とするプレス機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばダッシュボードロアなどの自動車の部品の製造では、プレス成形されてプレス機より搬出された部品の外観検査を、人手により実施している。プレス成形された部品は、14~25個/分程度の生産速度で、プレス機から搬出されるため、人手による処理速度では対応に限界があり、多くの人手を要するなど、多くの問題がある。このため、部品の外観検査を機械化することが検討されている。この種の外観検査を機械化する場合、一般に、検査対象の部品をカメラで撮像して画像を取得し、得られた画像を演算処理することで検査が実施される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単純にプレス機にカメラを取り付けただけでは、プレス機が稼働している状態では、大きな振動が発生しているため、カメラにより検査対象を正確に撮像できない場合が発生し、検査に支障が出る場合がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、稼働しているプレス機から発生する振動の影響を抑制して外観検査が実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプレス機は、プレス部でプレス加工されてプレス部の下方の排出領域に排出されたプレス品を搬出口まで搬送する搬送部と、プレス部の外側に設置された架台と、架台に設置されて、搬送部の検査領域を撮像する撮像部と、搬送部で搬送されるプレス品が検査領域に到達したことを検出するセンサと、センサが検査領域にプレス品が到達したことを検出すると、撮像部の撮像を開始して検査領域を通過するプレス品の画像を取得するコントローラと、コントローラが取得したプレス品の画像を基にプレス品の外観の検査をする検査回路と、検査回路による検査結果を表示するディスプレーとを備える。
【0007】
上記プレス機の一構成例において、架台は、搬送部の両脇の床の上に設置された脚、および搬送部をまたぐ状態に脚に架設された梁を備え、撮像部は、梁に取り付けられて検査領域を上方から撮像する第1カメラと、梁に支持されて、排出領域に入り込む第1ブラケットに取り付けられ、検査領域を搬送部の上流側から撮像する第2カメラと、梁に支持されて搬出口の方向に伸びる第2ブラケットに取り付けられ、検査領域を搬送部の下流側から撮像する第3カメラと脚に取り付けられて、検査領域を搬送部の搬送方向に対して両側の側方から撮像する第4カメラおよび第5カメラとを備える。
【0008】
上記プレス機の一構成例において、検査回路は、プレス品の姿勢をプレス品の特徴部を基に決定する。
【0009】
上記プレス機の一構成例において、前記特徴部は、複数の穴の中心座標、特徴的な形状座標、部品端部形状、および色相の少なくとも1つである。
【0010】
上記プレス機の一構成例において、検査回路は、撮像されたプレス品の画像におけるプレス品の姿勢を認識し、認識した姿勢に対応して機械学習されている機械学習データを基にプレス品の外観の良否判定を実施する。
【0011】
上記プレス機の一構成例において、検査回路は、プレス品の外観の検査結果をもとに、プレス部の動作を制御する。
【0012】
上記プレス機の一構成例において、コントローラは、プレス品の識別情報を基に、第1カメラ、第2カメラ、第3カメラ、第4カメラ、および第5カメラの中より撮像を開始するカメラを選択し、選択したカメラの撮像を開始して検査領域を通過するプレス品の画像を取得する。
【0013】
上記プレス機の一構成例において、架台は、床上に設置された第1脚、第2脚および搬送部をまたぐ状態に第1脚、第2脚に架設された一対の梁を備える。
【0014】
検査装置は、検査対象のプレス品を撮像するカメラと、カメラの撮像を開始してプレス品の画像を取得するコントローラと、コントローラが取得したプレス品の画像を基にプレス品の外観の検査をする検査回路とを備え、検査回路は、撮像されたプレス品の画像におけるプレス品の姿勢を認識し、認識した姿勢に対応して機械学習されている機械学習データを基にプレス品の外観の良否判定を実施する。
【0015】
上記検査装置の一構成例において、検査回路は、撮像されたプレス品の画像におけるプレス品の特徴部を抽出し、抽出した特徴部を基にプレス品の姿勢を認識する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、プレス部の外側に設置した架台に撮像部を取り付けるので、稼働しているプレス部から発生する振動の影響を抑制して外観検査が実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るプレス機の構成を示す構成図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施の形態に係るプレス機の一部構成を示す構成図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の実施の形態に係るプレス機の一部構成を示す構成図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の実施の形態に係るプレス機の一部構成を示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、検査回路107における良否判定を説明する説明図である。
【
図3B】
図3Bは、検査回路107における良否判定を説明する説明図である。
【
図3C】
図3Cは、検査回路107における良否判定を説明する説明図である。
【
図3D】
図3Dは、検査回路107における良否判定を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、検査回路107における認識した姿勢に対応した良否判定を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係るプレス機について
図1,
図2A,
図2B,
図2Cを参照して説明する。
図2Aは、プレス機の一部を、搬送部102の搬送方向に平行な横の方向から見た側面図である。また、
図2Bは、プレス機の一部を、搬送部102の搬送方向に垂直な正面の方向から見た側面図である。
図1に示すように、このプレス機は、プレス部101、搬送部102、架台103、撮像部104、センサ105、コントローラ106、検査回路107、およびディスプレー108を備える。撮像部104、コントローラ106、検査回路107により検査装置が構成されている。なお、一般には、プレス部101と搬送部102とによりプレス機が構成されている。
【0019】
プレス部101は、例えば、トランスファープレスによりダッシュボードロアパネルなど車体パネルのプレス加工を実施する。搬送部102は、プレス部101でプレス加工されてプレス部101の下方の排出領域151に排出されたプレス品131を搬出口153まで搬送する。プレス品131は、検査対象となる。搬送部102は、例えば、ベルトコンベアである。また、搬送部102は、チェーンコンベア、ローラーコンベア、スクリューコンベア、エアーフローティングコンベアでもよい。
【0020】
例えば、プレス部101が、トランスファープレス式の場合、プレス部101は、単工程型が順番に並ぶプレス領域を備え、プレス領域において順次にプレス加工が実施される。プレス領域では、1つのプレス加工が終了すると、プレス品131はロボットアームなどの搬送機構で次のプレス工程へ進む。全てのプレス加工が終了したプレス品131は、搬送機構により、プレス領域の下方に配置されている搬送部102の排出領域151に落下され、搬出口153まで搬送される。
図1では、プレス部101(プレス領域)と排出領域151とが、平面視で重なっているように示しているが、プレス領域と排出領域151とが、平面視で異なる領域に配置される構成とすることができる。
【0021】
架台103は、プレス部101の外側に配置されている。例えば、よく知られているように、プレス部101は、プレス部基礎162の上に配置される。架台103は、プレス部101が設置されるプレス部基礎162の外側の床161の上に配置することができる。撮像部104は、架台103に設置されて、搬送部102の検査領域152を撮像する。搬送部102の検査領域152を撮像することで、搬送部102を搬送されている検査対象のプレス品131が撮像される。このように、プレス部101の外側に設置される架台103に撮像部104を取り付けるので、稼働しているプレス部101(プレス機)から発生する振動の影響を抑制して外観検査が実施できる。
【0022】
例えば、プレス部101は、プレス部基礎162の上に設置されているため、プレス振動はプレス部基礎162から床161に分散・減衰して伝達する。プレス部101の外側の床161に設置される架台103へ伝わる振動は、分散・減衰されているため微小であり、撮像部104の撮像に影響はない。
【0023】
また、架台103は、防振機構や免震機構の上に設置することができる。防振機構や免震機構は、床161と架台103との間に配置することができる。防振機構や免震機構を用いることで、稼働しているプレス部101から発生する振動の影響が、さらに効果的に抑制できるようになる。防振機構は、振動が伝わり難くするための構造を備えるものである。防振機構は、例えば、ゴムなどの防振材料や油圧機構などから構成することができる。
【0024】
例えば、架台は103、搬送部102の両脇の床161の上に設置された第1脚111a、第2脚111b、および搬送部192をまたぐ状態に第1脚111a、第2脚111bに架設された前後一対の梁112を備えることができる。このような門型の架台103は、床161から第1脚111a、第2脚111bに伝達される振動を相殺するように 、梁112がたわむことで吸収できるので、撮像部104の振動がより効果的に抑制できる。例えば、防振機構や免震機構を用いる場合、この上に第1脚111a、第2脚111bを設置する。
【0025】
撮像部104は、第1カメラ121、第2カメラ122、第3カメラ123、第4カメラ124、および第5カメラ125から構成することができる。また、各カメラが撮像する方向を照明する照明装置を、各カメラとともに設けることができる。
【0026】
第1カメラ121は、梁112に取り付けられて検査領域152を上方から撮像する。第2カメラ122は、梁112に支持されて、排出領域151に入り込む第1ブラケット114に取り付けられ、検査領域152を搬送部102の上流側から撮像する。第3カメラ123は、梁112に支持されて搬出口153の方向に伸びる第2ブラケット115に取り付けられ、検査領域152を搬送部102の下流側から撮像する。
【0027】
第4カメラ124は、第1脚111aに取り付けられている。第5カメラ125は、第2脚111bに取り付けられている。第4カメラ124および第5カメラ125により、検査領域152を搬送部102の搬送方向に対して両側の側方から撮像する。なお、各カメラは、1台ずつに限るものではなく、2台ずつ、3台ずつとすることができる。多数のカメラを用いることで、プレス品131がダッシュボードロアパネルのような車体大型部品の場合も、この全面を撮像して外観の良否判定が可能となる。
【0028】
ところで、ダッシュボードロアパネルのような大型のプレス品の場合、高さがあり形状も複雑なためより多くのカメラが必要となるが、カメラの台数が増えるほど検査のための情報処理に時間がかかるため品質検査にかかる時間は長くなる。しかしながら、大型のプレス品の場合、1つのプレス品に要するプレス処理時間が長いため、単位時間あたりに搬送部102に排出されるプレス品の数が少ない。このため、搬送部102における搬送速度は低速となる。このように、大型のプレス品の場合、搬送速度が低速であるため、多くのカメラを用いた品質検査の実施が可能となる。
【0029】
一方、小型のプレス品の場合、1つのプレス品に要するプレス処理時間が短いため、単位時間あたりに搬送部102に排出されるプレス品の数が少ない。このため、搬送部102における搬送速度は高速となる。しかしながら、小型のプレス品の場合、品質検査に必要なカメラの台数は少なくて済む。例えば、2台のカメラで品質検査を実施することができる。このように、カメラの台数を少なくすれば、検査のための情報処理が短時間で済むため、プレス品が比較的速い速度で搬送されていても、品質検査が完了できる。
【0030】
上述したように、プレス品の状態により用いるカメラの数を可変とすることで、適切な検査が実施できる。例えば、コントローラ106は、プレス品131の識別情報を基に、第1カメラ121、第2カメラ122、第3カメラ123、第4カメラ124、および第5カメラ125の中より、撮像を開始するカメラを選択し、選択したカメラの撮像を開始して検査領域を通過するプレス品131の画像を取得することができる。
【0031】
このように構成したコントローラ106を用いることで、例えば、大型のプレス品131で特徴部が縦壁にある場合、上方のカメラ(第1カメラ121)には特徴部が映らないので第2カメラ122,第3カメラ123、第4カメラ124,第5125など、側方や前後のカメラを使用する。また、プレス品131が大型で特徴部が多数ある場合、第1カメラ121,第2カメラ122,第3カメラ123,第4カメラ124,第5カメラ125すべてを選択して使用する。また、プレス品131が小型や平たいものであれば、第1カメラ121のみを用いて撮像した画像により、検査を実施することができる。
【0032】
ここで、第1脚111a、第2脚111b、および梁112に、搬送部102の搬送方向に所定の幅を持たせることで、第1ブラケット114、第2ブラケット115を、より強固に梁112に固定することが可能となる。また、第1脚111a、第2脚111b、および梁112の組を、搬送部102の搬送方向に所定の間隔を開けて、2組設けることもできる。この場合、第1ブラケット114、第2ブラケット115を、2つの梁112に架設させることで、第1ブラケット114、第2ブラケット115における振動が抑制できる。
【0033】
また、搬送の距離が限られている搬送部102の中で検査を実施するため、検査領域152の長さも限られることになる。この中で、第1ブラケット114を用い、プレス部101、排出領域151の側に入り込むようにカメラを設置することで、搬送部102におけるより広い領域を検査領域152とすることができる。この結果、大小様々な部品を検査対象とすることができる。また、第1ブラケット114を用い、プレス部101、排出領域151の側に入り込むようにカメラを設置するため、大型で複雑な形状をもつプレス品131をプレス部101の側から撮像することができる。
【0034】
センサ105は、搬送部102で搬送されるプレス品131が検査領域152に到達したことを検出する。コントローラ106は、検査領域152にプレス品131が到達したことをセンサ105が検出すると、撮像部104の撮像を開始して検査領域152を通過するプレス品131の画像を取得する。
【0035】
検査回路107は、コントローラ106が取得したプレス品131の画像を基にプレス品131の外観の検査をする。検査回路107は、登録されている良品画像と、撮像された画像とを比較することで、プレス品131の良否判定を実施する。例えば、検査回路107は、良品とすることができるプレス品131を撮像した不良画像と、不良品とすることができるプレス品131を撮像した良品画像とから、機械学習により作製されている判定モデルを用いることで、プレス品131の良否判定を実施する。
【0036】
ところで、プレス加工されたプレス品はロボットアーム(不図示)により取り出されて、排出領域151において搬送部102の上に落下させて排出する。このため、搬送部102の上に落下してくるプレス品131は、一定の姿勢となっていない。撮像された画像を基に良否を判定する場合、一般には、一定の姿勢となっていることが判定の処理速度や判定の精度の点で望ましい。このため、例えば、撮像のための位置決め機構を設けることが考えられる。しかしながら、このような位置決め機構を用いて位置決め工程を設けると、生産性の低下を招くことになる。
【0037】
判定の処理速度や判定の精度を低下させることなく、さらに、生産性の低下を招くことなく良否判定をするために、検査回路107は、撮像されたプレス品131の画像におけるプレス品131の姿勢を認識し、認識した姿勢に対応して機械学習されている機械学習データを基にプレス品131の外観の良否判定を実施する。例えば、検査回路107は、撮像されたプレス品131の画像におけるプレス品131の特徴部を抽出し、抽出した特徴部を基にプレス品131の姿勢を認識することができる。
【0038】
特徴部としては、第1に、部品端部形状(エッジ部)と色相が例示できる。また、特徴部としては、第2に、部品孔位置と顕著に目立つ形状が例示できる。また、特徴部としては、第3に、全体形状が例示できる。特に、部品孔位置と顕著に目立つ形状などを特徴部とすることで、情報処理量が少なく処理速度の向上が図れる。また、特徴部として、各カメラの撮像範囲で唯一無二の箇所を選定することで、検査対象がどのプレス品かの特定が可能となる。
【0039】
ここで、良否判定の一例について、
図3A,
図3B,
図4A,
図4Bを参照して説明する。以下では、プレス品131として、ダッシュボードロアを例に説明する。
【0040】
例えば、カメラで撮像できる撮像範囲201におけるOKプレス品131aの画像より、特徴的な部分である穴位置や形状線などの組み合わせによる特徴部202を決定する。また、OKプレス品131aを様々な姿勢の状態で撮像した結果に対し、決定されている特徴部202の座標を基に姿勢の情報を関連付け、姿勢ごとにOK判定モデルを作成して検査回路107に学習させる(
図3A、
図3B)。様々な姿勢で撮像した結果において、姿勢ごとに特徴部202の撮像画像内の座標位置が異なる。従って、撮像範囲201の中における特徴部202の座標情報より、撮像対象の姿勢が特定できる。
【0041】
また、不良プレス品131bを様々な姿勢の状態で撮像した結果に対し、決定されている特徴部202の座標を基に姿勢の情報を関連付け、姿勢ごとにNG判定モデルを作成して検査回路107に学習させる(
図3c、
図3D)。例えば、撮像した画像と、姿勢が一致するOK判定モデルとを画像解析ソフトにより比較することで、撮像したプレス品が不良であることを判定し、対応する画像から得られる判定モデルを、NG判定モデルとすることができる。また、人為的に決定した不良プレス品131bを用いることもできる。
【0042】
上述した姿勢ごとのOK判定モデル、NG判定モデルの作成を、各カメラの撮像結果において行う。
【0043】
実際の検査においては、検査画像に対し、特徴部から決定される姿勢に対応するOK判定モデル,NG判定モデルを選択する。
【0044】
例えば、
図4に示すように、プレス品画像301と正常な特徴部302とによる第1姿勢のOKモデル(a-1)に対し、形状が違う特徴部302aによるNGモデル(b-1)、位置がずれた特徴部302bによるNGモデル(c-1)、亀裂303があるNGモデル(d-1)が設定できる。
【0045】
また、プレス品画像301と正常な特徴部302とによる第2姿勢のOKモデル(a-2)に対し、形状が違う特徴部302aによるNGモデル(b-2)、位置がずれた特徴部302bによるNGモデル(c-2)、亀裂303があるNGモデル(d-2)が設定できる。
【0046】
また、プレス品画像301と正常な特徴部302とによる第3姿勢のOKモデル(a-3)に対し、形状が違う特徴部302aによるNGモデル(b-3)、位置がずれた特徴部302bによるNGモデル(c-3)、亀裂303があるNGモデル(d-3)が設定できる。
【0047】
検査対象画像に対し、選択されたOK判定モデルおよびNG判定モデルの各々と比較する。比較の結果、NG判定モデルとの一致度の方が高い場合、NG判定とする。姿勢の種類をより多くしてより多くの判定モデルを学習させることで、判定精度の向上が図れる。同様に、欠肉・割れ・突き破り等の不良がどこに発生するかは分からないため、NG品が出るたびにそのデータをNG判定モデルとして設定することで学習させて判定精度の向上を図れる。
【0048】
特に、第1カメラ121、第2カメラ122、第3カメラ123、第4カメラ124、および第5カメラ125を用い、検査領域152を、上方、側方、上流側、下流側の各々から撮像した複数の画像を用いることにより、検査回路107における姿勢の認識が、より高い精度で実施できる。また、プレス品が大型であっても、プレス品の全域を小さな領域で外観検査でき、搬送部(検査領域)を短縮できる。
【0049】
また、検査回路107は、プレス品131の外観の検査結果を基に、プレス部101の動作を制御することができる。例えば、判定結果が不良とされた場合、検査回路107は、プレス部101の動作を停止する。また、検査回路107は、搬送部102の動作を停止する。このようにプレス部101の動作を停止することで、さらなる不良品の発生を抑制することができる。
【0050】
また、検査回路107による検査結果は、ディスプレー108に表示される。例えば、判定結果が不良とされた場合、プレス品131の不良と判定された部分が、枠で囲われた状態でディスプレー108に表示される。作業者がディスプレー108の表示を確認することで、不良品を除外できるとともに、作業者がその他の検査項目を確認することで、カメラの負担を軽減し、より高速の検査が可能となり生産性が向上できる。また、ディスプレー108に表示された不良の情報を基に、プレス加工の条件変更などのプレス部の制御変更を実施することもできる。
【0051】
なお、検査回路107は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)、主記憶装置、および外部記憶装置などを備えたコンピュータ機器とし、主記憶装置に展開されたプログラムによりCPUが動作する(プログラムを実行する)ことで、上述した検査回路107の各機能が実現されるようにすることができる。上記プログラムは、検査回路107の機能をコンピュータが実行するためのプログラムである。
【0052】
以上に説明したように、本発明によれば、床の上に防振機構を介して設置した架台に撮像部を取り付けるので、稼働しているプレス部から発生する振動の影響を抑制して外観検査が実施できる。プレス部から発生する振動を抑制できるので、プレス部の近傍で撮像が可能となり、検査装置を含めたプレス機の小型化が可能となる。
【0053】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されるが、以下には限られない。
【0054】
[付記1]
プレス部でプレス加工されて前記プレス部の下方の排出領域に排出されたプレス品を搬出口まで搬送する搬送部と、
前記プレス部の外側に設置された架台と、
前記架台に設置されて、前記搬送部の検査領域を撮像する撮像部と、
前記搬送部で搬送される前記プレス品が前記検査領域に到達したことを検出するセンサと、
前記センサが前記検査領域に前記プレス品が到達したことを検出すると、前記撮像部の撮像を開始して前記検査領域を通過する前記プレス品の画像を取得するコントローラと、
前記コントローラが取得した前記プレス品の画像を基に前記プレス品の外観の検査をする検査回路と、
前記検査回路による検査結果を表示するディスプレーと
を備えるプレス機。
【0055】
[付記2]
付記1記載のプレス機において、
前記架台は、前記搬送部の両脇の床の上に設置された脚、および前記搬送部をまたぐ状態に前記脚に架設された梁を備え、
前記撮像部は、
前記梁に取り付けられて前記検査領域を上方から撮像する第1カメラと、
前記梁に支持されて、前記排出領域に入り込む第1ブラケットに取り付けられ、前記検査領域を前記搬送部の上流側から撮像する第2カメラと、
前記梁に支持されて前記搬出口の方向に伸びる第2ブラケットに取り付けられ、前記検査領域を前記搬送部の下流側から撮像する第3カメラと
前記脚に取り付けられて、前記検査領域を前記搬送部の搬送方向に対して両側の側方から撮像する第4カメラおよび第5カメラと
を備えることを特徴とするプレス機。
【0056】
[付記3]
付記2記載のプレス機において、
前記コントローラは、前記プレス品の識別情報を基に、前記第1カメラ、前記第2カメラ、前記第3カメラ、前記第4カメラ、および前記第5カメラの中より撮像を開始するカメラを選択し、選択したカメラの撮像を開始して前記検査領域を通過する前記プレス品の画像を取得する
ことを特徴とする検査回路。
【0057】
[付記4]
付記1~3のいずれか1項に記載のプレス機において、
前記検査回路は、前記プレス品の姿勢を前記プレス品の特徴部を基に決定することを特徴とするプレス機。
【0058】
[付記5]
付記4記載のプレス機において、
前記特徴部は、複数の穴の中心座標、特徴的な形状座標、部品端部形状、および色相の少なくとも1つであることを特徴とするプレス機。
【0059】
[付記6]
付記1~5のいずれか1項に記載のプレス機において、
前記検査回路は、撮像された前記プレス品の画像における前記プレス品の姿勢を認識し、認識した姿勢に対応して機械学習されている機械学習データを基に前記プレス品の外観の良否判定を実施する
ことを特徴とするプレス機。
【0060】
[付記7]
付記1記載のプレス機において、
前記架台は、床上に設置された第1脚、第2脚および前記搬送部をまたぐ状態に前記第1脚、前記第2脚に架設された一対の梁を備えることを特徴とする検査装置。
【0061】
[付記8]
付記1~7のいずれか1項に記載のプレス機において、
前記検査回路は、前記プレス品の外観の検査結果をもとに、前記プレス部の動作を制御することを特徴とするプレス機。
【0062】
[付記9]
検査対象のプレス品を撮像するカメラと、
前記カメラの撮像を開始して前記プレス品の画像を取得するコントローラと、
前記コントローラが取得した前記プレス品の画像を基に前記プレス品の外観の検査をする検査回路と
を備え、
前記検査回路は、撮像された前記プレス品の画像における前記プレス品の姿勢を認識し、認識した姿勢に対応して機械学習されている機械学習データを基に前記プレス品の外観の良否判定を実施する
ことを特徴とする検査装置。
【0063】
[付記10]
付記9記載の検査装置において、
前記検査回路は、撮像された前記プレス品の画像における前記プレス品の特徴部を抽出し、抽出した特徴部を基に前記プレス品の姿勢を認識することを特徴とする検査装置。
【0064】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0065】
101…プレス部、102…搬送部、103…架台、104…撮像部、105…センサ、106…コントローラ、107…検査回路、108…ディスプレー、111a…第1脚、111b…第2脚、112…梁、113…防振機構、114…第1ブラケット、115…第2ブラケット、121…第1カメラ、122…第2カメラ、123…第3カメラ、124…第4カメラ、125…第5カメラ、151…排出領域、152…検査領域、153…搬出口、161…床。
【要約】
【課題】稼働しているプレス機から発生する振動の影響を抑制して外観検査が実施できるようにする。
【解決手段】このプレス機は、プレス部101、搬送部102、架台103、撮像部104、センサ105、コントローラ106、検査回路107、およびディスプレー108を備える。架台103は、プレス部101の外側に配置されている。架台103は、搬送部102の両脇の床161の上に設置された第1脚111a、第2脚111b、および搬送部102をまたぐ状態に第1脚111a、第2脚111bに架設された梁112を備える。搬送部102の両脇の床161の上に設置した架台103に撮像部104を取り付ける。
【選択図】
図1